説明

車載装置のハードウエアテスト方法及び製品用ソフトウエア書き込み方法

【課題】マイクロコンピュータに大容量のROMを搭載することを不要としてコストダウンをもたらし、且つ、テストモード用端子を不要として小型化を促進する。
【解決手段】外部接続用コネクタ33に接続されたフラッシュROM/EEPROMライタ5によって、CAN通信を利用して、マイクロコンピュータ31のフラッシュROM32bにテストモード用ソフトウエアを書き込む。次に、マイクロコンピュータ31は、フラッシュROM32bへ書き込まれたテストモード用ソフトウエアに基づいて、ハードウエアテストを実行する。ハードウエアテストが終了すると、外部接続用コネクタ33を再度フラッシュROM/EEPROMライタ5に接続する。そして、製品用ソフトウエアを、外部接続用コネクタ33を介してCAN通信を利用して、マイクロコンピュータ31に転送してEEPROM32に書き込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置のハードウエアテスト方法及び製品用ソフトウエア書き込み方法に関し、特に、車内LANインターフェースを有効に利用した車載装置のハードウエアテスト方法及び製品用ソフトウエア書き込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、メータ装置をはじめとする車載装置では、出荷前に車載装置のハードウエアテストが実行されると共に製品用ソフトウエアの書き込みが行われる。図5は、従来のメータ装置に含まれるメータ基板上の概略構成を示すブロック図である。図6は、従来のテスト及び書込工程を示すフローチャートである。
【0003】
図5に示すように、メータ基板90には、マイクロコンピュータ91、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)92、外部接続用コネクタ93、EEPROM書込用端子94及びテストモード用端子95が搭載されている。マイクロコンピュータ91は、マスクROM91a及び図示しないCPUCentral Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)を含み、このメータ基板90を含むメータ装置の制御を司る。EEPROM92には、製品用ソフトウエアが格納される。
【0004】
また、外部接続用コネクタ93には車内LANや外部装置が接続可能であり、EEPROM書込用端子94にはEEPROMライタ9が接続される。テストモード用端子95は、グランドに落とすことによって、マイクロコンピュータ91をテストモードに設定するためのものである。
【0005】
ハードウエアテスト及び製品ソフトウエア書込時においては、図6に示すように、ステップS901において、EEPROM書込用端子94をEEPROMライタ9に接続する。次に、ステップS902において、この製品用ソフトウエアを、EEPROM書込用端子94を介して、EEPROM92に書き込み、ステップS903において、製品用ソフトウエアの書き込みが終了する。
【0006】
次に、ステップS904において、メータ基板90上のテストモード用端子95をグランドに接続することによって、マイクロコンピュータ91をテストモードに設定する。そして、ステップS905において、マイクロコンピュータ91は、マスクROM91aに予め格納されているテストモード用ソフトウエアに基づいて、ハードウエアテストを実行し、ステップS906において、ハードウエアテストが終了する。なお、ハードウエアテストでは、LCD(Liquid Crystal Display)のセグメント表示や指針動作、インジケータの動作チェック等が行われる。
【0007】
なお、この出願の発明に直接関連する先行技術文献はないが、一般的な集積回路のセルフテスト方法は例えば以下の特許文献に示されている。
【特許文献1】特表2002−521674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上述の従来の構成及び工程によるテスト及び書込方法では、メータ基板90に、EEPROM書込用端子94及びテストモード用端子95が必要となり、小型化への障害となる。また、マイクロコンピュータ91に搭載されるROMは、マスクROM91aであるため、予めこのROM91a上にテストモード用ソフトウエアを格納しておく必要がある。したがって、マスクROM91a上にテストモード用ソフトウエアの格納領域を確保しておく必要があるため、大容量のマスクROM91aが必要となり、コストアップを招いていた。
【0009】
よって本発明は、上述した現状に鑑み、マイクロコンピュータに大容量のROMを搭載することを不要としてコストダウンをもたらし、且つ、テストモード用端子を不要として小型化を促進することができる車載装置のハードウエアテスト方法及び製品用ソフトウエア書き込み方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の車載装置のハードウエアテスト方法は、車内LAN及び書込装置に接続可能な外部接続用コネクタと、車内LANインターフェース及びフラッシュROMを搭載するマイクロコンピュータと、製品用ソフトウエアが書き込まれるEEPROMと、を有する車載装置のハードウエアテストを実行する方法であって、前記外部接続用コネクタに接続された前記書込装置によって、前記車内LANインターフェースを介して、前記フラッシュROMに前記ハードウエアテストに関するソフトウエアを書き込み、この書き込んだソフトウエアを用いて前記ハードウエアテストを実行する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項1記載の発明によれば、外部接続用コネクタに接続された書込装置によって、車内LANインターフェースを介してフラッシュROMにハードウエアテストに関するソフトウエアが書き込まれ、この書き込まれたソフトウエアを用いてハードウエアテストが実行される。
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項2記載の車載装置の製品用ソフトウエア書き込み方法は、請求項1記載のハードウエアテスト方法による前記ハードウエアテストの実行後に、前記外部接続用コネクタに接続された書込装置によって、前記EEPROMに前記製品用ソフトウエアを書き込む、ことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、外部接続用コネクタを利用してEEPROMに製品用ソフトウエアが書き込まれる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、外部接続用コネクタに接続された書込装置によって、車内LANインターフェースを介してフラッシュROMにハードウエアテストに関するソフトウエアを書き込み、この書き込んだソフトウエアを用いてハードウエアテストを実行する。したがって、マイクロコンピュータに搭載されるROMに予めハードウエアテストに関するソフトウエアを格納する必要がなくなるため、マイクロコンピュータに大容量のROMを搭載することが不要となり、コストダウンをもたらすことができる。また、テストモード用端子が不要となるため、装置の小型化も促進される。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、外部接続用コネクタを利用してEEPROMに製品用ソフトウエアを書き込む。したがって、EEPROM書込用端子も不要となり、更にコストダウン及び装置の小型化を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、図1及び図2を用いて、本発明の前提となる車載装置の構成について説明する。図1は、車内LANとしてのCANを説明するための図である。図2は、車内LANに接続された車載装置としてのメータECUを示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、車両内には、エンジンECU(Electronic Control Unit)1、ドアECU2、メータECU3等を接続するCAN(Controller Area Network)バス4が敷設されている。CANバス4は、コストや汎用性等の観点から車内LANとして多用されているCANをプロトコルとして、エンジンECU1、ドアECU2、メータECU3等の車載装置を通信接続するものである。
【0018】
エンジンECU1、ドアECU2、メータECU3はそれぞれ、エンジン、ドア及びメータに関する制御を担う車載装置である。勿論、車内には、図示しない他種のECUもCANバス4に接続されている。
【0019】
図2に示すように、例えばメータECU3に対応するメータ基板30は、マイクロコンピュータ31、EEPROM32及び外部接続用コネクタ33を搭載しており、該外部接続用コネクタ33がCANバスコネクタ43に接続されてCANバス4に接続されている。本発明では、このような車内通信システムを前提として構成される車載装置を、ハードウエアテストや製品用ソフトウエア書き込みのために有効に利用する。
【0020】
図3は、本発明の一実施形態に係る、車載装置に含まれるメータ基板上の概略構成を示すブロック図である。図4は、本発明の一実施形態に係るテスト及び書込工程を示すフローチャートである。
【0021】
図3に示すように、メータ基板30には、マイクロコンピュータ31、EEPROM32及び外部接続用コネクタ33が搭載されている。このメータ基板30には、フラッシュROM/EEPROMライタ5(請求項の書込装置に対応)が接続可能である。
【0022】
マイクロコンピュータ31は、CANI/F(インターフェース)32a及びフラッシュROM32b、並びに図示しないCPUやRAMを含み、このメータ基板30を含むメータ装置の制御を司る。CANI/F32aは、車内LANとしてのCANを用いて他装置(ECU)と通信するためのインターフェースである。フラッシュROM32bは、データの消去、書き込みを自由に行なうことができ、電源を切っても内容が消えないメモリの一種である。
【0023】
EEPROM32は、電気的な操作によって、後からバイト単位でデータを書き換えたり、消去したりが可能なROMであり、ここでは、マイクロコンピュータ31に接続されて、製品用ソフトウエアが書き込まれる。外部接続用コネクタ33は、マイクロコンピュータ31に内部接続され、図2で示したようなCANバスコネクタ43や例えばフラッシュROM/EEPROMライタ5等が外部接続可能なコネクタである。
【0024】
また、フラッシュROM/EEPROMライタ5は、上記外部接続用コネクタ33に内部接続されて、テストモード用ソフトウエア(請求項のハードウエアテストに関するソフトウエアに対応)や製品用ソフトウエアを書き込むための装置である。
【0025】
このような構成を前提として、ハードウエアテスト及び製品ソフトウエア書込時においては、図4に示すように、ステップS1において、外部接続用コネクタ33に接続された上記フラッシュROM/EEPROMライタ5によって、CAN通信を利用して、マイクロコンピュータ31のフラッシュROM32bへ、テストモード用ソフトウエアを書き込む。なお、この書き込みが終了すると、ハードウエアテストをスムーズに行うために、外部接続用コネクタ33からフラッシュROM/EEPROMライタ5を一旦分離する。
【0026】
次に、ステップS2おいて、マイクロコンピュータ31は、フラッシュROM32bへ書き込まれたテストモード用ソフトウエアに基づいて、ハードウエアテストを実行し、ステップS3において、ハードウエアテストが終了する。なお、ハードウエアテストでは、LCDのセグメント表示や指針動作、インジケータの動作チェック等が行われる。上記ステップS1〜ステップS3によって、従来のようにメータ基板上にテストモード用端子を搭載する必要がなくなるうえにマイクロコンピュータに搭載するROMも小容量でよくなる。
【0027】
ハードウエアテストが終了すると、ステップS4において、外部接続用コネクタ33を再度フラッシュROM/EEPROMライタ5に接続する。そして、ステップS5において、製品用ソフトウエアを、外部接続用コネクタ33を介して、マイクロコンピュータ31に転送してEEPROM32に書き込み、ステップS6において、製品用ソフトウエアの書き込みが終了する。なお、ここでの書き込みにも、CAN通信が利用される。
【0028】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、マイクロコンピュータに搭載されるROMに予めテストモード用ソフトウエアを格納する必要がなくなるため、マイクロコンピュータに大容量のROMを搭載することが不要となり、コストダウンをもたらすことができる。なお、マイクロコンピュータに搭載されるROMの容量が従来と同等であるとすると、自由に使用可能な容量が増えるため、より多くのバリエーションに対応可能となり、品番削減の効果が得られる。
【0029】
また、従来のように、テストモード用端子やEEPROM書込用端子も不要となるので、更にコストダウン及び装置の小型化を促進することができる。また、基板分離時の基板配置が容易になり、メータの意匠設計の自由度が大きくなる。
【0030】
なお、上記実施形態では、車内LANとしてCANを例示したが、車内LANとしてはSWSやMUT等の他種のプロトコルであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】車内LANとしてのCANを説明するための図である。
【図2】車内LANに接続された車載装置としてのメータECUを示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る、車載装置に含まれるメータ基板上の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るテスト及び書込工程を示すフローチャートである。
【図5】従来のメータ装置に含まれるメータ基板上の概略構成を示すブロック図である。
【図6】従来のテスト及び書込工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0032】
5 フラッシュROM/EEPROMライタ(書込装置)
30 メータ基板
31 マイクロコンピュータ
32 EEPROM
32a CANインターフェース(車内LANインターフェース)
32b フラッシュROM
33 外部接続用コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内LAN及び書込装置に接続可能な外部接続用コネクタと、
車内LANインターフェース及びフラッシュROMを搭載するマイクロコンピュータと、
製品用ソフトウエアが書き込まれるEEPROMと、
を有する車載装置のハードウエアテストを実行する方法であって、
前記外部接続用コネクタに接続された前記書込装置によって、前記車内LANインターフェースを介して、前記フラッシュROMに前記ハードウエアテストに関するソフトウエアを書き込み、
この書き込んだソフトウエアを用いて前記ハードウエアテストを実行する、
ことを特徴とする車載装置のハードウエアテスト方法。
【請求項2】
請求項1記載のハードウエアテスト方法による前記ハードウエアテストの実行後に、
前記外部接続用コネクタに接続された書込装置によって、前記EEPROMに前記製品用ソフトウエアを書き込む、
ことを特徴とする車載装置の製品用ソフトウエア書き込み方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−58659(P2007−58659A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244371(P2005−244371)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】