車載装置
【課題】運転手の操作忘れや運行状況の変化に対応して車両の位置管理を行う。
【解決手段】車両の現在位置を管理システムに送信する車載機において、予め設定された時間、走行距離など判定基準値を所定の周期で経過情報と比較観測し、判定条件を満たしたと判定され且つ位置情報送信の操作がされていない場合には、位置情報を管理システムに自動送信する。判定基準値、自動送信判定モードを管理システムから設定可能とし、運行状況に応じて車両の位置管理を低通信コストで効率よく行える。
【解決手段】車両の現在位置を管理システムに送信する車載機において、予め設定された時間、走行距離など判定基準値を所定の周期で経過情報と比較観測し、判定条件を満たしたと判定され且つ位置情報送信の操作がされていない場合には、位置情報を管理システムに自動送信する。判定基準値、自動送信判定モードを管理システムから設定可能とし、運行状況に応じて車両の位置管理を低通信コストで効率よく行える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路線バスなどの車両運行管理技術に関するものであり、特に、車両の位置情報を管理システムに通知する車載装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
路線バスなどの予め決められたルートを走行する車両の位置を管理システム側で把握しバスの停留所にバスの走行位置を表示させるなどのために、運転手が停留所に停車/発車する毎又は停留所を通過する毎にバスの位置情報送信をバスの車載装置に指示して現在の位置情報を管理システムに通知することが従来から行われている。
車両の位置の通知を受けた管理システム側では、車両がどの停留所付近にいるかを把握できるので、例えば、車両の進行方向にある停留所の表示装置に車両がどの停留所を通過したかという情報や到着予定時刻等を表示することができる(例えば特許文献1、特許文献2参照)。なお、管理システム側では、車両がどの停留所付近に到達したかを把握することが重要となる。
【特許文献1】特開2004−70766号公報
【特許文献2】特開2005−346198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
運転手がその都度位置情報の送信を指示する方式では、運転手が位置情報の送信を怠ると、管理システム側ではバスの位置を把握できないことになる。特に、停留所で乗降客がいない場合には、送信忘れが発生しやすくなる。
【0004】
運転手による位置情報の送信忘れに対処するため、バスの車載装置に停留所の位置情報をセンタ装置からダウンロードし、車載装置で周期的に検知したバスの位置情報と停留所の位置情報とを比較することにより、停留所付近で自動的に位置情報を送信し、運転手が位置情報の送信指示を不要としているシステムがある。
【0005】
しかし、このシステムでは、運転手による送信忘れには対処できるが、1)1台の車両に複数の路線・系統を運行させ車両運用の効率化が図られると、各バスでは、始発駅で路線情報を管理システムからダウンロードしなければならず、運転手による始発駅での準備作業の負担が増加する、2)運行する系統におけるバス停の位置情報などのデータ(数MB〜数十MBになることもある)をダウンロードするため多量の通信コストがかかる、3)道路工事などによる停留所位置の移動・イベントなどによる一時的な路線変更などがある運行系統において発生すると、管理システムではその都度停留所位置データの修正などを行わなければならず、そのためのメンテナンスコストがかかる、といった問題点がある。
【0006】
さらに、上記のようなシステムでは、バスが停留所位置に到達したなど予め設定された状態にならないと位置情報が管理システムに送信されず、道路が渋滞している場合などには、長時間にわたってバスの位置情報を管理システム側で把握できないことも発生する。
【0007】
停留所の位置などに関わりなく、一定時間あるいは一定距離毎にバスの位置情報を管理システムに送信することによりこれらの問題の一部は解決できる。しかし、このような方式を用いて管理システム側で車両が停留所付近に到達したことを把握するためには、一定時間もしくは一定走行距離をある程度短くする必要があり、また、停留所間の区間距離の長短の差が大きい系統では、不必要な位置情報転送が発生し、情報送信パケット量の増加に伴う通信コストが増大するという問題がある。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、管理システムでの停留所情報のメンテナンス、始発時の作業、バスと管理システム間の通信コストの増加を防止し、運転手による位置情報の送信指示(例えば、送信指示のボタンの操作、音声の発生)忘れがあっても車両の位置管理を継続することを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、車両に搭載される車載装置であり、当該車両の位置情報を取得する手段を有し、前記車両の操作者による車両位置情報送信指示を検知すると、前記取得した位置情報をネットワーク接続された管理システムに送信する手段を有する車載装置であって、前記操作者による車両位置情報送信指示がされていない状態で車両位置の自動送信の要否を判定するために使用する判定基準情報の種類を一つ又は複数指定する自動送信モードと前記判定基準情報に対応する値である判定基準値とを格納する判定基準情報格納手段と、前記自動送信モードで指定される前記判定基準情報について前記管理システムに前記車両の位置情報を送信した後の経過値を経過判定情報として算出し、当該算出した経過判定情報と前記判定基準情報に対応する判定基準値とを所定の周期で比較し、所定の判定条件を満たすかどうかを判定する判定手段と、前記判定手段により、前記経過判定情報が前記判定条件を満たしていると判定された場合又は車両の操作者による車両位置情報送信指示を検知した場合には、前記車両の位置情報を含む所定の情報を管理システムに送信する手段とを備えたことを特徴とする車載装置により解決できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、位置情報送信を検知してから次に運転手による車両の位置情報送信指示を検知しないまま経過判定時刻または経過判定距離が経過したなど所定の判定条件が満たされた場合に、前記車両の位置情報を管理システムに送信するので、系統情報データのダウンロードや、一定時間/一定走行距離毎での管理システムへの情報送信による通信料を低減できるとともに、運転手が位置情報の送信を忘れた場合であっても車両の位置管理を継続することが可能になる。
【0011】
また、渋滞に遭遇した場合など、運転手がバス停以外で位置情報送信指示の操作をしなくとも、時間経過など所定の条件が満たされると、当該車両の位置情報が自動的に管理システムに送信されるため、運転者は渋滞であるからといって送信指示の要否判断・操作をする必要も無く、車両の運行状況を管理システムに報告でき、停留所への到着遅れの原因(道路の渋滞による)や、到着予想時間などの表示のための情報を取得できる。
【0012】
さらに、管理システムからの指示で、或いは運転者により、自動送信のモード(経過時間、走行距離、一定エリアへの到着/からの離脱、或いはこれらの組合せ)を設定できるため、車両の運行系統、走行道路の状態(一般道、高速道路、道路渋滞の多少など)に応じて自動送信モードを選択して設定でき、運行管理により有効な位置情報を車両から管理システムに送信できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下で説明する各実施の形態では、車両がバスである場合を例に説明する。
【0014】
(概要構成)
図1に本発明の実施の形態における位置情報管理システムの構成を示す。図1に示すように、本実施の形態の位置情報管理システムは、各バスに搭載されるバスシステム1と、管理システム2とを備え、バスシステム1と管理システム2は、パケット網21によって接続されている。
【0015】
本実施の形態では、バスが停留所付近に到達したとき、或いは、停留所から発車したときに、運転手がバスシステム1の車載機を操作する等により、バスシステム1が取得したバスの位置情報をパケット網21を介して管理システム2に通知する。管理システム2では、バスシステム1から受信したバスの位置情報などに基き、停留所へのバス運行状況表示、遅れによる代替バスの手配など、バスの運行を管理する。また、管理システム2は、位置情報を受信したバスに対して、必要に応じて、次の位置情報送信の契機や位置情報送信のために必要な情報をパケット網21を介して送信する。このように、バスシステム1と管理システム2間で情報をパケット網21を介して授受して、各バスの運行を管理する位置情報管理システムが構成される。
【0016】
なお、以下、本明細書では、特に断り書きの無い場合、「車両(バス)の位置情報」を単に「位置情報」と表記する。
【0017】
(バスシステムの構成)
図2に、バスに備えられるバスシステム1の詳細構成を示す。図2に示すように、バスシステム1は、運転手が操作するボタン3、ボタン3の操作と連動して停留所に関する車内案内等の音声を発生する音声合成装置4、管理システム2との通信を行う通信装置5、GPS衛星から自車両の位置情報を取得するGPS装置6、及び車載機8を備えている。図2に示すように、車載機8には、音声合成装置4、通信装置5、及びGPS装置6が接続されている。
【0018】
GPS装置6は、GPS衛星からのデータを受信し、バスの位置情報を生成して車載機8に送信する。通信装置5はパケット網21を介して管理システム2と車載機8間の通信制御を行う。音声合成装置4には車内向け案内情報が運行系統に応じて保存されており、バスの運転手がボタン3を押下すると予め用意されたシーケンスに従って、案内情報(到着する停留所の名前、次に到着する停留所の名前など)を音声にして出力する。また、到着又は発車の案内情報出力と同期して、バスの位置情報送信指示の信号を車載機8に出力する。出力する案内情報と位置情報送信指示との関係は予めプログラムしておくことで実現できる。車載機8は、GPS装置6や音声合成装置4、バスに通常備えられている走行距離を算出する機器等(以下、バス機器と呼ぶ)と連動して、バス位置情報の送信の要否判定や通信装置5を介して管理システム2への位置情報送信を行う。
【0019】
図3に車載機8の詳細な構成を示す。車載機8は、位置情報送信指示検出部81、送受信部82、位置情報受信部83、制御部84、情報格納部85、判定部86を有している。
【0020】
位置情報送信指示検出部81は、運転手のボタン3の操作により、音声合成装置4からの位置情報送信指示信号を検出し、指示信号の有無を制御部84に出力する。
【0021】
送受信部82は、制御部84と外部の通信装置5とが通信するためのデータの成型、授受を行う。
【0022】
位置情報受信部83は、GPS装置6から所定の周期でバスの位置情報を取得・保持し、制御部84に出力する。
【0023】
情報格納部85は、バスが運行する系統番号、バスの識別情報(ID)、位置情報送信に関わる自動送信モード、位置情報送信指示検出部81からの位置情報送信が無くても位置情報を送信するための各自動送信モードでの送信判定基準値などを記録保持する。これらの情報は、バスの始発時に管理システム2からダウンロードあるいは運転手による外部記憶装置からの複写などの手段で初期設定される。また、運行中、管理システム2との通信結果により内容が適宜更新される。
【0024】
図4Aに情報格納部85に記録保持されるデータ例を示す。図4Aに示すごとく、当該バスを管理システム2が識別するための識別情報(バス系統番号、バスID)、自動送信に関するモードである自動送信モード、自動送信モードに対応した判定基準値で構成される。各判定基準値については後に詳細に説明する。
【0025】
情報格納部85に格納されている情報は車載機8の電源投入時や始発時の初期設定時に通信装置5を介して管理システム2から受信し若しくは、図示していないバスの操作パネルから制御部84を経由して設定される。
【0026】
図3に示す判定部86は、位置比較部861、時間比較部862、距離比較部863を有している。判定部86は、制御部84から指定される自動送信モードに応じて、位置比較部861、時間比較部862、距離比較部863のいずれか1つまたは複数を活性化させる。活性化された1つまたは複数の比較部は、情報格納部85から自動送信モードに対応した必要な判定基準値を読み出し、所定の周期でバスの運行状態(経過判定情報)と読み出した判定基準値とを比較することによって位置情報送信の要否を判定して、結果を制御部84に出力する。
【0027】
位置比較部861は、情報格納部85に判定基準値として格納されている判定エリア情報(例えば、中心位置と半径)と位置情報受信部83に保持されている現在の位置情報とを所定の周期で比較し、現在の位置情報がエリア情報に示されるエリア内に入っているかという判定条件を満たすか否かの判定結果を制御部84に出力する。
【0028】
時間比較部862は、初期化指示の後にバスの運行に伴い経過した時間、即ち経過判定時間(経過判定情報)と、情報格納部85に判定基準値として格納されている判定基準時間とを所定の周期で比較し、経過判定時間が判定基準時間を超えたかという判定条件を満たしているか否かを示す判定結果を制御部84に出力する。なお、初期化指示とは、位置情報を管理システムに送信した後などに制御部84から受ける指示であり、初期化指示により、経過判定情報が初期化される(例えば0になる)。
【0029】
距離比較部863は、バスの走行距離をバス機器から取得し、初期化指示後にバスが走行した距離即ち経過判定距離と、情報格納部85から判定基準値として格納されている判定基準距離とを所定の周期で比較し、経過判定距離が判定基準距離を超えたかという判定条件を満たしているか否かを示す判定結果を制御部84に出力する。
【0030】
上記のとおり、時間比較部862、距離比較部863では、制御部84からの指示により、経過判定時間及び経過判定距離を初期設定し、経過時間などの判定を再開する。初期設定は、運転手によるボタン操作や判定部86の判定結果で位置情報を管理システム2に送信した契機、車載機8への初期設定指示を契機として制御部84から指示される。初期設定時、新たな判定基準値を管理システム2から受信して判定基準値が更新されている場合(つまり、後に説明する管理モードM0−2がONの場合)は、判定基準値を情報格納部85から読み出し設定する。例えば、エリアでの判定を行うモードの場合、位置情報送信に応じて次の判定基準エリアを管理システム2から受信し、位置比較部861に設定する。
【0031】
制御部84は、バスの位置情報送信の要否を位置情報送信指示検出部81又は判定部86から受信し、送信要の場合は、情報格納部85にあるバスの属性情報(走行している系統番号、バスID)、位置情報受信部83に保持されている位置情報を編集して送受信部82を経由して通信装置5に出力し、さらに、判定部86に位置情報の送信完了(初期設定指示)を通知する。
【0032】
また、制御部84は、位置情報を送信する時点において、車載機8が、管理システム2から自動送信モードや判定基準値を受信して更新するモード(管理モードM0−1または管理モードM0−2がON)にある場合、位置情報送信への応答として、管理システム2から自動送信モード、判定基準値を受信し、情報格納部85に格納し、判定部86に自動送信モードを通知し、対応する比較部を活性化させる。
【0033】
車載機8は、CPU、記憶装置等を備えた一般的なコンピュータに、各機能部の処理を実行するためのプログラムを搭載することにより実現される。もちろん、汎用のコンピュータを用いる代わりに、専用のハードウェアを用いて実現することもできる。なお、車載機8は、GPS装置6からの位置情報を取得して情報格納部85に蓄積する機能部や電源部等も含むが当該機能は従来技術で実現できるので特に図示していない。
【0034】
運転手がバスを起動させた段階でバスシステムを構成する全ての装置の電源が入り、車載機8が起動する。車載機8が起動すると、情報格納部85に事前に格納されている、或いは起動に伴って実行される管理システム2との交信で管理システム2から受信した、バスの属性情報(運行する系統、バスID)、自動送信モード、判定基準情報の設定値(判定基準値)が制御部84、判定部86に読み込まれる。
【0035】
自動送信モードは、バスの運転手により、ボタン3が押下されて位置情報の送信指示が無くとも、所定の条件を満たした場合にバスの位置情報を管理システム2に送信するために設けているモードである。
【0036】
図4Bに自動送信モードの例を示す。自動送信モードには、運転手がボタン操作で位置情報の送信を指示しなくても位置情報を送信することを判定するための基準となる判定基準情報(経過時間、走行距離など)を指定する基本モード、管理システム2から受信する基本モードで既に設定された基本モードを更新していくモードを示す管理モードM0−1、各基本モードにおける判定基準値を管理システム2から受信する判定基準値で更新していくモードを示す管理モードM0−2とがある。
【0037】
各モードは、例えば、図4Aに示すデータにおける所定のビット位置でのビットのON/OFFで設定することができる。例えば、管理モード(M0−1)に対応するビット位置のビットがON(1)であれば、管理モード(M0−1)が有効であることを示す。また、各基本モードに対応付けて当該基本モードの判定基準値が情報格納部85に格納される。判定基準値は、それに対応する基本モードがONのときだけ格納してもよいし、ON/OFFにかかわらず格納することとしてもよい。なお、車載機8と管理システム2との交信により、管理システム2は車載機8に設定されている自動送信モード及び判定基準値を把握している。これにより、例えば、管理システム2は管理モードMO−1がONであることを把握して、基本モードを更新するための処理を実行することができる。また、この場合、車載機8側では管理モードMO−1がONであることを把握して、管理システム2から送信されてくる情報を待機することができる。以下、各モードについて説明する。
【0038】
基本モードM1は、初期化指示後次の初期化指示前に経過判定時間が判定基準値である判定基準時間を経過する都度、その時の位置情報を管理システム2に送信するモードである。本モードが設定されていると、運転手がボタン操作で位置情報の送信を指示しなくても、経過判定時間が判定基準時間を経過したことが時間比較部862で検知されると、制御部84に管理システム2に向けての位置情報送信指示が出される。
【0039】
基本モードM2は、初期化指示後次の初期化指示前に経過判定時間が判定基準距離を超える都度、その時の位置情報を管理システム2に送信するモードである。
【0040】
基本モードM3は、初期化指示後次の初期化指示前に設定されているエリア(本実施例の場合は、中心の緯度、経度と半径で規程される円形)に車両が入った場合若しくはエリアから出た場合に、その時の位置情報を管理システム2に送信するモードである。
【0041】
基本モードM4は、上記基本モードのM1からM3の組合せで位置情報の送信要否を判断するモードであり、例えば、指定した時間又は距離のいずれか一方が判定基準値となったら、その時の位置情報を送信したり、時間と距離の両方が判定基準値となった場合に位置情報を送信する、というように、基本モードM1,M2,M3の論理式で表される。本モードでは、時間、距離、エリアについて比較部861、862,863で夫々評価し、その結果をM4で指定される論理式を満足するか否かで位置情報の送信要否を判定する。
【0042】
次に管理モードM0−1について説明する。位置情報送信時に本モードが「ON」の場合、管理システム2は、位置情報を受信したことに応じて、基本モードを車載機8に送信する。車載機8は管理システム2から受信する基本モードを用いて既にある基本モードを更新し、更新された基本モードに従った判定基準値を用いて次の位置情報送信の要否判定を行う。
【0043】
管理システム2は、例えば、バスの位置情報からバスが通過している道路の種類を判定し、一般道ではM3(エリア)を設定し、高速道路を走行しているときにはM1(時間)またはM2(距離)にモードを設定するなどの処理を行うことができる。
【0044】
本モードが「OFF」の場合は、初期設定時のモードもしくは本モードが「ON」のときに最後に更新されたモードが有効となる。なお、本モード自身は管理システム2からもしくは車載機8において適宜変更可能である。
【0045】
管理モードM0−2(判定基準値変更)は、判定基準(基本モード)の変更は無いが、判定基準値が管理システム2から更新されるモードである。つまり、本モードが「ON」である場合、車載機8は、位置情報送信後に管理システム2から受信する判定基準値に従って次の判定を行う。例えば、運行している系統で、バス停間の距離に大きな差が有る場合(バス停間が接近している区域と離れている区域の両方が1つの系統に含まれる場合)、区域を跨るときに判定基準値を更新することにより、運転手の位置情報送信操作忘れがあっても、管理システムで、比較的良い精度でバスの運行位置を把握できる。
【0046】
なお、管理モードM0−1がONでかつ管理モードM0−2がONのときは、位置情報送信の後に管理システム2から基本モードと判定基準値が管理システム2から送られ、車載機8は、受信した基本モードとそれに対応する判定基準値に基づき次の判定を行うことになる。また、管理モードM0−1がOFFでかつ管理モードMO−2がONのときは、位置情報送信の後に管理システム2から現在の基本モードに対応する判定基準値が送られ、車載機8は、受信した判定基準値に基づき次の判定を行うことになる。
【0047】
(管理システムの構成)
管理システム2のシステム構成を図5に示す。図5に示すように、管理システム2は、パケット網21を経由しバスシステム1との通信を行い、バスの位置管理に関する処理を行う管理サーバ22と、管理サーバ22で処理を行うために用いる情報を蓄積したデータベースサーバ23とを備えている。
【0048】
図6に、データベースサーバ23に蓄積される情報の例を示す。図6に示すように、管理システム2内のデータベースサーバ23には、バスシステムから送信される位置情報をバス毎に格納するための位置情報管理テーブル(図6A)、バスの運行系統番号毎に停留所番号を対応付けて保持する系統テーブル(図6B)、停留所番号毎に中心座標(緯度、経度)及び範囲半径を対応付けて管理する範囲テーブル(図6C)が蓄積されている。
【0049】
(位置情報管理システムの動作)
次に、本実施の形態における車載機と位置情報管理システムの動作を、図7のシーケンスチャートを参照して説明する。
【0050】
バスが起動した後、バスシステムの車載機8において、運転手が設定した外部記憶装置からの読み込み、運転手による操作パネルからのデータ入力、管理システム2からパケット網21を経由してのデータダウンロード等の手段により、これから運行する系統番号、自車両ID、自動送信モード、判定基準値などの設定情報(例えば、図4A)が情報格納部85、判定部86などに設定され、また、経過判定情報がリセットされるなど各部の初期設定動作が実行される。さらに、GPS装置6を用いてGPS衛星から、一定時間間隔(例えば毎秒)でバスの現在位置の緯度・経度の取得を開始する(ステップ701,ステップ711)。
【0051】
始発の準備が完了すると運転手は、操作パネルなどにより車載機8に始発する旨を指示し、車載機8は、始発情報(上記の設定情報を含む)を管理システム2に送信する(ステップ702)。管理システム2は当該車両について当該系統での運行管理を開始する(ステップ712)。
【0052】
バスが始発の停留所を出発し運行開始すると、制御部84は所定の時間間隔で、位置情報送信指示検出部81もしくは判定部86からの位置情報送信イベントの有無をチェックする(ステップ703)。
【0053】
制御部84は、位置情報送信イベントを検出すると、位置情報受信部83から位置情報を取得し、情報格納部85から車両ID、自動送信モードなどの情報を読み出し、位置情報送信データを編集し、送受信部82、通信装置5からパケット網21を介して管理システム2に向けて送信する(ステップ704)。図8に位置情報送信データの構成例を示す。図8に示すように、位置情報送信データは系統番号、車輌ID、位置情報、送信契機、設定されている自動送信モード、及び判定基準値を含む。送信契機は、ボタン操作が位置情報送信の契機になったのか、それとも自動送信モードに基づく自動判定が位置情報送信の契機になったのかを示す情報であり、例えば、ボタン操作の場合は1、自動判定の場合は2が設定される。また、自動送信モードは、位置情報送信時点で情報格納部85に設定されいるモードを示し、各モードがONかOFFかを示す情報を含む。もしくは、ONであるモードの識別情報を含む。また、判定基準値はONである各基本モードに対応するものである。
【0054】
管理システム2は、バスから位置情報を受信すると、車両(バス)運行情報を更新し、関連システム(バス停留所へのバス位置表示など)に送信する(ステップ713)。
【0055】
また、管理システム2は、位置情報の送信を受けた車両の位置、運行している系統、これまでの運行状況(予定通り、遅れなど)、管理モードに応じて予めプログラムなどで設定されている内容に基き、自動送信モード、判定基準値の変更要否を判定し、判定結果に基づく変更内容を当該位置情報を送信してきた車両に返送する(ステップ714)。図9に、管理システム2から車載機8への位置情報受信への応答データ例を示す。
【0056】
例えば、位置情報を車載機8が送信した時点での判定基準が時間であり、なおかつ、管理モードM0−1がON、管理モードM0−1がONである場合において、管理システム2が、バスの運行状況もしくは外部から取得する道路情報に基づき、バスが渋滞の中を走行していると判断した場合、管理システム2は、判定基準を距離とするモード(M2)と、判定基準距離を車載機8に送信する。車載機8では、次の自動送信判定を走行距離に基づき行うことになる。
【0057】
位置情報を送信した車載機8では、前回の位置情報送信からの時間、距離などの経過判定情報をリセットするとともに、管理モードMO−1もしくはMO−2がONのときには管理システム2からの自動送信モードもしくは判定基準値の変更指示を待ち、自動送信モード等の変更指示を受信した場合は、管理システム2から受信した情報に基き、情報格納部85、判定部86などに記録されている判定基準値などを更新し、位置情報送信イベント検出ステップに引き継ぐ(ステップ705)。
【0058】
上記の処理動作において、運転手がボタン操作をすることを認識しているにもかかわらず、ボタン操作の前に自動判定で位置情報を送信することをできるだけ回避するために、管理モードM0−2がOFFの場合は、判定基準時間を長めの時間に設定することが望ましい。例えば、各停留所区間の所要走行時間のうちの最も長い所要走行時間に設定する。同様に、判定基準距離も長めの距離に設定することが望ましい。例えば、各停留所区間の距離のうちの最も長い距離に設定する。また、判定基準情報がエリアである場合、位置情報送信前に位置比較部861によりバスがエリア内にあると判定された場合でも、予め決められた時間もしくは距離を走行するまでは、ボタン操作による位置情報送信指示を待つこととするのが望ましい。
【0059】
また、管理モードM0−2をONとすることにより、管理システム2は位置情報を受信する度にその位置に適した判定基準時間もしくは判定基準距離を車載機8に送信することができる。この場合、管理システム2のデータベースサーバ23が図10に示すテーブルを系統番号毎に備えている。このテーブルは、区間と、その区間を構成する隣接する停留所番号の組と、その区間での予定走行距離と予定走行時間を含む。
【0060】
管理システム2は、車載機8から位置情報を受信する度に、その位置情報に対応する停留所番号を範囲テーブルから取得し、区間毎の予定走行時間もしくは予定走行距離と、区間を構成する停留所番号の組の情報とから、取得した停留所番号が示す停留所から次の停留所までの予定走行時間または予定走行距離に予め定めた余裕時間または余裕走行距離を加えた値を、更新すべき判定基準値として車載機8に送信し、車載機8はその判定基準値を用いて次の判定を行う。
【0061】
このような処理により、各停留所に適した距離または時間を判定基準値として設定できるので、押し忘れでないのに押し忘れを検知してしまったり、複数停留所を押し忘れを検知することなく通過してしまうといったことを防止できる。なお、図10に示すテーブルの区間毎の予定走行時間については、例えば管理システム2が、道路の渋滞情報に基づき自動的に係数を乗じるなどして値を調節することも可能である。
【0062】
(車載機の動作)
次に、本実施の形態における車載機の動作の例を、図11のシーケンスチャートを参照して説明する。
【0063】
図7で説明したように、運行する系統番号、自動送信モード、判定基準値などを情報格納部85などに取り込み初期設定する(ステップ111)。
【0064】
始発の準備が出来たら、運転手の操作指示を検知して、系統番号、車両ID、車載機の時計の時刻、現在位置、設定されている自動送信モード、判定基準値などの始発情報を管理システム2に送信する(ステップ112)。
【0065】
始発情報が正常に送信されると、判定部86の各比較部で設定されている自動送信モードに対応した経過情報の更新及び判定基準値との比較動作が開始される。制御部84は、所定の周期で位置情報送信指示検出部81を監視し、操作者による位置情報送信指示を検出した場合は位置情報送信ステップ116に進む(ステップ113)。
【0066】
制御部84は操作者による位置情報送信指示を検出しなかった場合は、判定部86から経過判定情報の値が判定条件を満たしたことを示す判定結果の有無を監視し、判定条件を満たしたことを示す判定結果が有る場合は管理システム2への位置情報送信ステップ116に進む(ステップ114)。
【0067】
判定条件を満たしていない場合は、判定部86の各比較部は経過判定情報を更新しながら、次の監視周期を待つ(ステップ115)。
【0068】
ステップ113またはステップ114にて、管理システム2への位置情報送信が必要と判断された場合、制御部84は、系統番号、車両ID、位置情報などのデータを情報格納部85、位置情報受信部83、判定部86から収集、編集して、送受信部82を経由して管理システム2に向けて送信指示する(ステップ116)。
【0069】
判定部86の各比較部は制御部84から、位置情報を管理システム2に送信した旨の通知を受けると、経過判定情報を初期化する(ステップ117)。
【0070】
車載機8は、位置情報送信後、管理システム2から自動送信モード、判定基準値の変更を受信すると、制御部84から情報格納部85の書換えを指示し、同時に、判定部86に対して動作モード、判定基準値の更新通知を行う。判定部86は、当該更新通知を解釈し、動作モードに応じて位置比較部861、時間比較部862、距離比較部863を活性化させ、次の処理に移る(ステップ118)。なお、管理モードM0−1、管理モードM0−2のいずれもOFFの場合は、車載機8は管理システム2から自動送信モード等が送信されてくることを待つことなく、また、動作モード等を更新することなく次の処理に移る。
【0071】
制御部84は、運転手による機器操作指示や送信した位置情報の比較等により、バスの運行系統の終点まで到達していないと判定した場合は、引き続き位置情報の送信指示の監視(ステップ113)を行う(ステップ119)。
【0072】
ここで、位置比較部861、時間比較部862、距離比較部863の動作例を説明する。
【0073】
自動送信モードの基本モードとして「エリア」が設定されている場合、位置比較部861が活性化され、位置比較部861は、情報格納部85から判定基準エリア情報を読み出し、位置比較部861内の一時記憶部に保持する。所定の監視周期(この周期は、制御部84や他の比較部の監視周期と同じである必要は無い。)となった場合、位置比較部861は、位置情報受信部83から緯度、経度による位置情報を取得し、取得した位置情報が一時保持している判定基準エリア内であるか否かを判定する。判定結果と位置比較部861に指定されている判定基準(判定基準エリアに入った、判定基準エリアから出た、判定基準エリアの境界を越えてから所定の時間又は走行距離を経過したなど)とから、位置情報送信の要否を判定し、判定結果を制御部84に出力する。判定結果を出力した後は、管理システム2から次の判定基準値を受信するまで(制御部84から通知されるまで、或いは位置比較部861が適宜情報格納部85から判定基準値を読み出して、更新されたと判定するまで)、比較処理を休止する。
【0074】
次に、時間比較部862の動作の例を説明する。なお、この例は、図3を参照して説明した動作方法とは異なる処理であるが、実質的には同一の処理である。
【0075】
自動送信モードの基本モードとして「時間」が設定されている場合、時間比較部862は、情報格納部85から判定基準時間(例えば、300秒)を読み出し、経過判定情報として時間比較部862内の一時記憶部に保持する。位置情報送信要否を判定する所定の周期(この周期は、制御部84や他の比較部の監視周期と同じである必要は無い。)となった場合、経過判定情報から前記の所定の周期時間分を減算して、判定基準時間が経過したかを判定する。つまり、減算結果が0以下になったかどうかを判定する。判定基準時間を経過したと判定した場合、制御部84がその旨を識別できるように表示、通知などを行う。監視途中で、制御部84から位置情報送信による経過判定情報の初期化の指示を受けた場合は、情報格納部85から新たに判定基準値を読み出し、経過判定情報として更新、保存する。
【0076】
距離比較部863の動作も、時間比較部862の動作で、「時間」を「走行距離」に置き換えた場合と同様である。なお、距離比較部863では、経過情報が情報格納部85から設定されてからの走行距離は、バス機器から取得する。
【0077】
このような動作をする車載機8を利用した車両の位置管理システムを構築することにより、バス運転手による位置情報送信の指示忘れがあっても、始発毎にこれから運行する系統全体のバス停位置情報等多量なデータをダウンロードせずに、必要とするデータを適宜管理システムから取得して、車載機8の処理、判定結果で位置情報を管理システムに送信することができる。また、自動送信判定モードを管理システム2から設定できるので、車両が走行する系統(バス停間の距離・所要時間)、車両の走行状況(一定速度での走行(高速道路)、渋滞など)などに応じたきめ細かな監視を行うことができる。
【0078】
また、上記実施例では、バスの運行について説明したが、タクシー、宅配便、貨物運送車両、鉄道などにも広く適用でき、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施の形態における位置情報管理システムの構成図である。
【図2】実施の形態におけるバスシステムの構成図である。
【図3】実施の形態における車載機の構成図である。
【図4A】実施の形態における情報格納部の設定情報の一例を示す図である。
【図4B】実施の形態における自動送信モードの一例を示す図である。
【図5】実施の形態における管理システムの構成図である。
【図6A】実施の形態におけるデータベースサーバに蓄積される情報の例である。
【図6B】実施の形態におけるデータベースサーバに蓄積される情報の例である。
【図6C】実施の形態におけるデータベースサーバに蓄積される情報の例である。
【図7】実施の形態における車載機と位置情報管理システムの動作を示すシーケンスチャートである。
【図8】実施の形態における車載機から管理システムに送信する位置情報データの一例を示す図である。
【図9】実施の形態における管理システムから車載機に送信する自動送信モード変更指示情報の一例を示す図である。
【図10】実施の形態におけるデータベースサーバに蓄積される情報の例である。
【図11】車載機の動作を示すシーケンスチャートである。
【符号の説明】
【0080】
1 バスシステム
3 ボタン
4 音声合成装置
5 通信装置
6 GPS装置
8 車載機
81 位置情報送信指示検出部
82 送受信部
83 位置情報受信部
84 制御部
85 情報格納部
86 判定部
861 位置比較部
862 時間比較部
863 距離比較部
2 管理システム
21 パケット網
22 管理サーバ
23 データベースサーバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、路線バスなどの車両運行管理技術に関するものであり、特に、車両の位置情報を管理システムに通知する車載装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
路線バスなどの予め決められたルートを走行する車両の位置を管理システム側で把握しバスの停留所にバスの走行位置を表示させるなどのために、運転手が停留所に停車/発車する毎又は停留所を通過する毎にバスの位置情報送信をバスの車載装置に指示して現在の位置情報を管理システムに通知することが従来から行われている。
車両の位置の通知を受けた管理システム側では、車両がどの停留所付近にいるかを把握できるので、例えば、車両の進行方向にある停留所の表示装置に車両がどの停留所を通過したかという情報や到着予定時刻等を表示することができる(例えば特許文献1、特許文献2参照)。なお、管理システム側では、車両がどの停留所付近に到達したかを把握することが重要となる。
【特許文献1】特開2004−70766号公報
【特許文献2】特開2005−346198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
運転手がその都度位置情報の送信を指示する方式では、運転手が位置情報の送信を怠ると、管理システム側ではバスの位置を把握できないことになる。特に、停留所で乗降客がいない場合には、送信忘れが発生しやすくなる。
【0004】
運転手による位置情報の送信忘れに対処するため、バスの車載装置に停留所の位置情報をセンタ装置からダウンロードし、車載装置で周期的に検知したバスの位置情報と停留所の位置情報とを比較することにより、停留所付近で自動的に位置情報を送信し、運転手が位置情報の送信指示を不要としているシステムがある。
【0005】
しかし、このシステムでは、運転手による送信忘れには対処できるが、1)1台の車両に複数の路線・系統を運行させ車両運用の効率化が図られると、各バスでは、始発駅で路線情報を管理システムからダウンロードしなければならず、運転手による始発駅での準備作業の負担が増加する、2)運行する系統におけるバス停の位置情報などのデータ(数MB〜数十MBになることもある)をダウンロードするため多量の通信コストがかかる、3)道路工事などによる停留所位置の移動・イベントなどによる一時的な路線変更などがある運行系統において発生すると、管理システムではその都度停留所位置データの修正などを行わなければならず、そのためのメンテナンスコストがかかる、といった問題点がある。
【0006】
さらに、上記のようなシステムでは、バスが停留所位置に到達したなど予め設定された状態にならないと位置情報が管理システムに送信されず、道路が渋滞している場合などには、長時間にわたってバスの位置情報を管理システム側で把握できないことも発生する。
【0007】
停留所の位置などに関わりなく、一定時間あるいは一定距離毎にバスの位置情報を管理システムに送信することによりこれらの問題の一部は解決できる。しかし、このような方式を用いて管理システム側で車両が停留所付近に到達したことを把握するためには、一定時間もしくは一定走行距離をある程度短くする必要があり、また、停留所間の区間距離の長短の差が大きい系統では、不必要な位置情報転送が発生し、情報送信パケット量の増加に伴う通信コストが増大するという問題がある。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、管理システムでの停留所情報のメンテナンス、始発時の作業、バスと管理システム間の通信コストの増加を防止し、運転手による位置情報の送信指示(例えば、送信指示のボタンの操作、音声の発生)忘れがあっても車両の位置管理を継続することを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、車両に搭載される車載装置であり、当該車両の位置情報を取得する手段を有し、前記車両の操作者による車両位置情報送信指示を検知すると、前記取得した位置情報をネットワーク接続された管理システムに送信する手段を有する車載装置であって、前記操作者による車両位置情報送信指示がされていない状態で車両位置の自動送信の要否を判定するために使用する判定基準情報の種類を一つ又は複数指定する自動送信モードと前記判定基準情報に対応する値である判定基準値とを格納する判定基準情報格納手段と、前記自動送信モードで指定される前記判定基準情報について前記管理システムに前記車両の位置情報を送信した後の経過値を経過判定情報として算出し、当該算出した経過判定情報と前記判定基準情報に対応する判定基準値とを所定の周期で比較し、所定の判定条件を満たすかどうかを判定する判定手段と、前記判定手段により、前記経過判定情報が前記判定条件を満たしていると判定された場合又は車両の操作者による車両位置情報送信指示を検知した場合には、前記車両の位置情報を含む所定の情報を管理システムに送信する手段とを備えたことを特徴とする車載装置により解決できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、位置情報送信を検知してから次に運転手による車両の位置情報送信指示を検知しないまま経過判定時刻または経過判定距離が経過したなど所定の判定条件が満たされた場合に、前記車両の位置情報を管理システムに送信するので、系統情報データのダウンロードや、一定時間/一定走行距離毎での管理システムへの情報送信による通信料を低減できるとともに、運転手が位置情報の送信を忘れた場合であっても車両の位置管理を継続することが可能になる。
【0011】
また、渋滞に遭遇した場合など、運転手がバス停以外で位置情報送信指示の操作をしなくとも、時間経過など所定の条件が満たされると、当該車両の位置情報が自動的に管理システムに送信されるため、運転者は渋滞であるからといって送信指示の要否判断・操作をする必要も無く、車両の運行状況を管理システムに報告でき、停留所への到着遅れの原因(道路の渋滞による)や、到着予想時間などの表示のための情報を取得できる。
【0012】
さらに、管理システムからの指示で、或いは運転者により、自動送信のモード(経過時間、走行距離、一定エリアへの到着/からの離脱、或いはこれらの組合せ)を設定できるため、車両の運行系統、走行道路の状態(一般道、高速道路、道路渋滞の多少など)に応じて自動送信モードを選択して設定でき、運行管理により有効な位置情報を車両から管理システムに送信できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下で説明する各実施の形態では、車両がバスである場合を例に説明する。
【0014】
(概要構成)
図1に本発明の実施の形態における位置情報管理システムの構成を示す。図1に示すように、本実施の形態の位置情報管理システムは、各バスに搭載されるバスシステム1と、管理システム2とを備え、バスシステム1と管理システム2は、パケット網21によって接続されている。
【0015】
本実施の形態では、バスが停留所付近に到達したとき、或いは、停留所から発車したときに、運転手がバスシステム1の車載機を操作する等により、バスシステム1が取得したバスの位置情報をパケット網21を介して管理システム2に通知する。管理システム2では、バスシステム1から受信したバスの位置情報などに基き、停留所へのバス運行状況表示、遅れによる代替バスの手配など、バスの運行を管理する。また、管理システム2は、位置情報を受信したバスに対して、必要に応じて、次の位置情報送信の契機や位置情報送信のために必要な情報をパケット網21を介して送信する。このように、バスシステム1と管理システム2間で情報をパケット網21を介して授受して、各バスの運行を管理する位置情報管理システムが構成される。
【0016】
なお、以下、本明細書では、特に断り書きの無い場合、「車両(バス)の位置情報」を単に「位置情報」と表記する。
【0017】
(バスシステムの構成)
図2に、バスに備えられるバスシステム1の詳細構成を示す。図2に示すように、バスシステム1は、運転手が操作するボタン3、ボタン3の操作と連動して停留所に関する車内案内等の音声を発生する音声合成装置4、管理システム2との通信を行う通信装置5、GPS衛星から自車両の位置情報を取得するGPS装置6、及び車載機8を備えている。図2に示すように、車載機8には、音声合成装置4、通信装置5、及びGPS装置6が接続されている。
【0018】
GPS装置6は、GPS衛星からのデータを受信し、バスの位置情報を生成して車載機8に送信する。通信装置5はパケット網21を介して管理システム2と車載機8間の通信制御を行う。音声合成装置4には車内向け案内情報が運行系統に応じて保存されており、バスの運転手がボタン3を押下すると予め用意されたシーケンスに従って、案内情報(到着する停留所の名前、次に到着する停留所の名前など)を音声にして出力する。また、到着又は発車の案内情報出力と同期して、バスの位置情報送信指示の信号を車載機8に出力する。出力する案内情報と位置情報送信指示との関係は予めプログラムしておくことで実現できる。車載機8は、GPS装置6や音声合成装置4、バスに通常備えられている走行距離を算出する機器等(以下、バス機器と呼ぶ)と連動して、バス位置情報の送信の要否判定や通信装置5を介して管理システム2への位置情報送信を行う。
【0019】
図3に車載機8の詳細な構成を示す。車載機8は、位置情報送信指示検出部81、送受信部82、位置情報受信部83、制御部84、情報格納部85、判定部86を有している。
【0020】
位置情報送信指示検出部81は、運転手のボタン3の操作により、音声合成装置4からの位置情報送信指示信号を検出し、指示信号の有無を制御部84に出力する。
【0021】
送受信部82は、制御部84と外部の通信装置5とが通信するためのデータの成型、授受を行う。
【0022】
位置情報受信部83は、GPS装置6から所定の周期でバスの位置情報を取得・保持し、制御部84に出力する。
【0023】
情報格納部85は、バスが運行する系統番号、バスの識別情報(ID)、位置情報送信に関わる自動送信モード、位置情報送信指示検出部81からの位置情報送信が無くても位置情報を送信するための各自動送信モードでの送信判定基準値などを記録保持する。これらの情報は、バスの始発時に管理システム2からダウンロードあるいは運転手による外部記憶装置からの複写などの手段で初期設定される。また、運行中、管理システム2との通信結果により内容が適宜更新される。
【0024】
図4Aに情報格納部85に記録保持されるデータ例を示す。図4Aに示すごとく、当該バスを管理システム2が識別するための識別情報(バス系統番号、バスID)、自動送信に関するモードである自動送信モード、自動送信モードに対応した判定基準値で構成される。各判定基準値については後に詳細に説明する。
【0025】
情報格納部85に格納されている情報は車載機8の電源投入時や始発時の初期設定時に通信装置5を介して管理システム2から受信し若しくは、図示していないバスの操作パネルから制御部84を経由して設定される。
【0026】
図3に示す判定部86は、位置比較部861、時間比較部862、距離比較部863を有している。判定部86は、制御部84から指定される自動送信モードに応じて、位置比較部861、時間比較部862、距離比較部863のいずれか1つまたは複数を活性化させる。活性化された1つまたは複数の比較部は、情報格納部85から自動送信モードに対応した必要な判定基準値を読み出し、所定の周期でバスの運行状態(経過判定情報)と読み出した判定基準値とを比較することによって位置情報送信の要否を判定して、結果を制御部84に出力する。
【0027】
位置比較部861は、情報格納部85に判定基準値として格納されている判定エリア情報(例えば、中心位置と半径)と位置情報受信部83に保持されている現在の位置情報とを所定の周期で比較し、現在の位置情報がエリア情報に示されるエリア内に入っているかという判定条件を満たすか否かの判定結果を制御部84に出力する。
【0028】
時間比較部862は、初期化指示の後にバスの運行に伴い経過した時間、即ち経過判定時間(経過判定情報)と、情報格納部85に判定基準値として格納されている判定基準時間とを所定の周期で比較し、経過判定時間が判定基準時間を超えたかという判定条件を満たしているか否かを示す判定結果を制御部84に出力する。なお、初期化指示とは、位置情報を管理システムに送信した後などに制御部84から受ける指示であり、初期化指示により、経過判定情報が初期化される(例えば0になる)。
【0029】
距離比較部863は、バスの走行距離をバス機器から取得し、初期化指示後にバスが走行した距離即ち経過判定距離と、情報格納部85から判定基準値として格納されている判定基準距離とを所定の周期で比較し、経過判定距離が判定基準距離を超えたかという判定条件を満たしているか否かを示す判定結果を制御部84に出力する。
【0030】
上記のとおり、時間比較部862、距離比較部863では、制御部84からの指示により、経過判定時間及び経過判定距離を初期設定し、経過時間などの判定を再開する。初期設定は、運転手によるボタン操作や判定部86の判定結果で位置情報を管理システム2に送信した契機、車載機8への初期設定指示を契機として制御部84から指示される。初期設定時、新たな判定基準値を管理システム2から受信して判定基準値が更新されている場合(つまり、後に説明する管理モードM0−2がONの場合)は、判定基準値を情報格納部85から読み出し設定する。例えば、エリアでの判定を行うモードの場合、位置情報送信に応じて次の判定基準エリアを管理システム2から受信し、位置比較部861に設定する。
【0031】
制御部84は、バスの位置情報送信の要否を位置情報送信指示検出部81又は判定部86から受信し、送信要の場合は、情報格納部85にあるバスの属性情報(走行している系統番号、バスID)、位置情報受信部83に保持されている位置情報を編集して送受信部82を経由して通信装置5に出力し、さらに、判定部86に位置情報の送信完了(初期設定指示)を通知する。
【0032】
また、制御部84は、位置情報を送信する時点において、車載機8が、管理システム2から自動送信モードや判定基準値を受信して更新するモード(管理モードM0−1または管理モードM0−2がON)にある場合、位置情報送信への応答として、管理システム2から自動送信モード、判定基準値を受信し、情報格納部85に格納し、判定部86に自動送信モードを通知し、対応する比較部を活性化させる。
【0033】
車載機8は、CPU、記憶装置等を備えた一般的なコンピュータに、各機能部の処理を実行するためのプログラムを搭載することにより実現される。もちろん、汎用のコンピュータを用いる代わりに、専用のハードウェアを用いて実現することもできる。なお、車載機8は、GPS装置6からの位置情報を取得して情報格納部85に蓄積する機能部や電源部等も含むが当該機能は従来技術で実現できるので特に図示していない。
【0034】
運転手がバスを起動させた段階でバスシステムを構成する全ての装置の電源が入り、車載機8が起動する。車載機8が起動すると、情報格納部85に事前に格納されている、或いは起動に伴って実行される管理システム2との交信で管理システム2から受信した、バスの属性情報(運行する系統、バスID)、自動送信モード、判定基準情報の設定値(判定基準値)が制御部84、判定部86に読み込まれる。
【0035】
自動送信モードは、バスの運転手により、ボタン3が押下されて位置情報の送信指示が無くとも、所定の条件を満たした場合にバスの位置情報を管理システム2に送信するために設けているモードである。
【0036】
図4Bに自動送信モードの例を示す。自動送信モードには、運転手がボタン操作で位置情報の送信を指示しなくても位置情報を送信することを判定するための基準となる判定基準情報(経過時間、走行距離など)を指定する基本モード、管理システム2から受信する基本モードで既に設定された基本モードを更新していくモードを示す管理モードM0−1、各基本モードにおける判定基準値を管理システム2から受信する判定基準値で更新していくモードを示す管理モードM0−2とがある。
【0037】
各モードは、例えば、図4Aに示すデータにおける所定のビット位置でのビットのON/OFFで設定することができる。例えば、管理モード(M0−1)に対応するビット位置のビットがON(1)であれば、管理モード(M0−1)が有効であることを示す。また、各基本モードに対応付けて当該基本モードの判定基準値が情報格納部85に格納される。判定基準値は、それに対応する基本モードがONのときだけ格納してもよいし、ON/OFFにかかわらず格納することとしてもよい。なお、車載機8と管理システム2との交信により、管理システム2は車載機8に設定されている自動送信モード及び判定基準値を把握している。これにより、例えば、管理システム2は管理モードMO−1がONであることを把握して、基本モードを更新するための処理を実行することができる。また、この場合、車載機8側では管理モードMO−1がONであることを把握して、管理システム2から送信されてくる情報を待機することができる。以下、各モードについて説明する。
【0038】
基本モードM1は、初期化指示後次の初期化指示前に経過判定時間が判定基準値である判定基準時間を経過する都度、その時の位置情報を管理システム2に送信するモードである。本モードが設定されていると、運転手がボタン操作で位置情報の送信を指示しなくても、経過判定時間が判定基準時間を経過したことが時間比較部862で検知されると、制御部84に管理システム2に向けての位置情報送信指示が出される。
【0039】
基本モードM2は、初期化指示後次の初期化指示前に経過判定時間が判定基準距離を超える都度、その時の位置情報を管理システム2に送信するモードである。
【0040】
基本モードM3は、初期化指示後次の初期化指示前に設定されているエリア(本実施例の場合は、中心の緯度、経度と半径で規程される円形)に車両が入った場合若しくはエリアから出た場合に、その時の位置情報を管理システム2に送信するモードである。
【0041】
基本モードM4は、上記基本モードのM1からM3の組合せで位置情報の送信要否を判断するモードであり、例えば、指定した時間又は距離のいずれか一方が判定基準値となったら、その時の位置情報を送信したり、時間と距離の両方が判定基準値となった場合に位置情報を送信する、というように、基本モードM1,M2,M3の論理式で表される。本モードでは、時間、距離、エリアについて比較部861、862,863で夫々評価し、その結果をM4で指定される論理式を満足するか否かで位置情報の送信要否を判定する。
【0042】
次に管理モードM0−1について説明する。位置情報送信時に本モードが「ON」の場合、管理システム2は、位置情報を受信したことに応じて、基本モードを車載機8に送信する。車載機8は管理システム2から受信する基本モードを用いて既にある基本モードを更新し、更新された基本モードに従った判定基準値を用いて次の位置情報送信の要否判定を行う。
【0043】
管理システム2は、例えば、バスの位置情報からバスが通過している道路の種類を判定し、一般道ではM3(エリア)を設定し、高速道路を走行しているときにはM1(時間)またはM2(距離)にモードを設定するなどの処理を行うことができる。
【0044】
本モードが「OFF」の場合は、初期設定時のモードもしくは本モードが「ON」のときに最後に更新されたモードが有効となる。なお、本モード自身は管理システム2からもしくは車載機8において適宜変更可能である。
【0045】
管理モードM0−2(判定基準値変更)は、判定基準(基本モード)の変更は無いが、判定基準値が管理システム2から更新されるモードである。つまり、本モードが「ON」である場合、車載機8は、位置情報送信後に管理システム2から受信する判定基準値に従って次の判定を行う。例えば、運行している系統で、バス停間の距離に大きな差が有る場合(バス停間が接近している区域と離れている区域の両方が1つの系統に含まれる場合)、区域を跨るときに判定基準値を更新することにより、運転手の位置情報送信操作忘れがあっても、管理システムで、比較的良い精度でバスの運行位置を把握できる。
【0046】
なお、管理モードM0−1がONでかつ管理モードM0−2がONのときは、位置情報送信の後に管理システム2から基本モードと判定基準値が管理システム2から送られ、車載機8は、受信した基本モードとそれに対応する判定基準値に基づき次の判定を行うことになる。また、管理モードM0−1がOFFでかつ管理モードMO−2がONのときは、位置情報送信の後に管理システム2から現在の基本モードに対応する判定基準値が送られ、車載機8は、受信した判定基準値に基づき次の判定を行うことになる。
【0047】
(管理システムの構成)
管理システム2のシステム構成を図5に示す。図5に示すように、管理システム2は、パケット網21を経由しバスシステム1との通信を行い、バスの位置管理に関する処理を行う管理サーバ22と、管理サーバ22で処理を行うために用いる情報を蓄積したデータベースサーバ23とを備えている。
【0048】
図6に、データベースサーバ23に蓄積される情報の例を示す。図6に示すように、管理システム2内のデータベースサーバ23には、バスシステムから送信される位置情報をバス毎に格納するための位置情報管理テーブル(図6A)、バスの運行系統番号毎に停留所番号を対応付けて保持する系統テーブル(図6B)、停留所番号毎に中心座標(緯度、経度)及び範囲半径を対応付けて管理する範囲テーブル(図6C)が蓄積されている。
【0049】
(位置情報管理システムの動作)
次に、本実施の形態における車載機と位置情報管理システムの動作を、図7のシーケンスチャートを参照して説明する。
【0050】
バスが起動した後、バスシステムの車載機8において、運転手が設定した外部記憶装置からの読み込み、運転手による操作パネルからのデータ入力、管理システム2からパケット網21を経由してのデータダウンロード等の手段により、これから運行する系統番号、自車両ID、自動送信モード、判定基準値などの設定情報(例えば、図4A)が情報格納部85、判定部86などに設定され、また、経過判定情報がリセットされるなど各部の初期設定動作が実行される。さらに、GPS装置6を用いてGPS衛星から、一定時間間隔(例えば毎秒)でバスの現在位置の緯度・経度の取得を開始する(ステップ701,ステップ711)。
【0051】
始発の準備が完了すると運転手は、操作パネルなどにより車載機8に始発する旨を指示し、車載機8は、始発情報(上記の設定情報を含む)を管理システム2に送信する(ステップ702)。管理システム2は当該車両について当該系統での運行管理を開始する(ステップ712)。
【0052】
バスが始発の停留所を出発し運行開始すると、制御部84は所定の時間間隔で、位置情報送信指示検出部81もしくは判定部86からの位置情報送信イベントの有無をチェックする(ステップ703)。
【0053】
制御部84は、位置情報送信イベントを検出すると、位置情報受信部83から位置情報を取得し、情報格納部85から車両ID、自動送信モードなどの情報を読み出し、位置情報送信データを編集し、送受信部82、通信装置5からパケット網21を介して管理システム2に向けて送信する(ステップ704)。図8に位置情報送信データの構成例を示す。図8に示すように、位置情報送信データは系統番号、車輌ID、位置情報、送信契機、設定されている自動送信モード、及び判定基準値を含む。送信契機は、ボタン操作が位置情報送信の契機になったのか、それとも自動送信モードに基づく自動判定が位置情報送信の契機になったのかを示す情報であり、例えば、ボタン操作の場合は1、自動判定の場合は2が設定される。また、自動送信モードは、位置情報送信時点で情報格納部85に設定されいるモードを示し、各モードがONかOFFかを示す情報を含む。もしくは、ONであるモードの識別情報を含む。また、判定基準値はONである各基本モードに対応するものである。
【0054】
管理システム2は、バスから位置情報を受信すると、車両(バス)運行情報を更新し、関連システム(バス停留所へのバス位置表示など)に送信する(ステップ713)。
【0055】
また、管理システム2は、位置情報の送信を受けた車両の位置、運行している系統、これまでの運行状況(予定通り、遅れなど)、管理モードに応じて予めプログラムなどで設定されている内容に基き、自動送信モード、判定基準値の変更要否を判定し、判定結果に基づく変更内容を当該位置情報を送信してきた車両に返送する(ステップ714)。図9に、管理システム2から車載機8への位置情報受信への応答データ例を示す。
【0056】
例えば、位置情報を車載機8が送信した時点での判定基準が時間であり、なおかつ、管理モードM0−1がON、管理モードM0−1がONである場合において、管理システム2が、バスの運行状況もしくは外部から取得する道路情報に基づき、バスが渋滞の中を走行していると判断した場合、管理システム2は、判定基準を距離とするモード(M2)と、判定基準距離を車載機8に送信する。車載機8では、次の自動送信判定を走行距離に基づき行うことになる。
【0057】
位置情報を送信した車載機8では、前回の位置情報送信からの時間、距離などの経過判定情報をリセットするとともに、管理モードMO−1もしくはMO−2がONのときには管理システム2からの自動送信モードもしくは判定基準値の変更指示を待ち、自動送信モード等の変更指示を受信した場合は、管理システム2から受信した情報に基き、情報格納部85、判定部86などに記録されている判定基準値などを更新し、位置情報送信イベント検出ステップに引き継ぐ(ステップ705)。
【0058】
上記の処理動作において、運転手がボタン操作をすることを認識しているにもかかわらず、ボタン操作の前に自動判定で位置情報を送信することをできるだけ回避するために、管理モードM0−2がOFFの場合は、判定基準時間を長めの時間に設定することが望ましい。例えば、各停留所区間の所要走行時間のうちの最も長い所要走行時間に設定する。同様に、判定基準距離も長めの距離に設定することが望ましい。例えば、各停留所区間の距離のうちの最も長い距離に設定する。また、判定基準情報がエリアである場合、位置情報送信前に位置比較部861によりバスがエリア内にあると判定された場合でも、予め決められた時間もしくは距離を走行するまでは、ボタン操作による位置情報送信指示を待つこととするのが望ましい。
【0059】
また、管理モードM0−2をONとすることにより、管理システム2は位置情報を受信する度にその位置に適した判定基準時間もしくは判定基準距離を車載機8に送信することができる。この場合、管理システム2のデータベースサーバ23が図10に示すテーブルを系統番号毎に備えている。このテーブルは、区間と、その区間を構成する隣接する停留所番号の組と、その区間での予定走行距離と予定走行時間を含む。
【0060】
管理システム2は、車載機8から位置情報を受信する度に、その位置情報に対応する停留所番号を範囲テーブルから取得し、区間毎の予定走行時間もしくは予定走行距離と、区間を構成する停留所番号の組の情報とから、取得した停留所番号が示す停留所から次の停留所までの予定走行時間または予定走行距離に予め定めた余裕時間または余裕走行距離を加えた値を、更新すべき判定基準値として車載機8に送信し、車載機8はその判定基準値を用いて次の判定を行う。
【0061】
このような処理により、各停留所に適した距離または時間を判定基準値として設定できるので、押し忘れでないのに押し忘れを検知してしまったり、複数停留所を押し忘れを検知することなく通過してしまうといったことを防止できる。なお、図10に示すテーブルの区間毎の予定走行時間については、例えば管理システム2が、道路の渋滞情報に基づき自動的に係数を乗じるなどして値を調節することも可能である。
【0062】
(車載機の動作)
次に、本実施の形態における車載機の動作の例を、図11のシーケンスチャートを参照して説明する。
【0063】
図7で説明したように、運行する系統番号、自動送信モード、判定基準値などを情報格納部85などに取り込み初期設定する(ステップ111)。
【0064】
始発の準備が出来たら、運転手の操作指示を検知して、系統番号、車両ID、車載機の時計の時刻、現在位置、設定されている自動送信モード、判定基準値などの始発情報を管理システム2に送信する(ステップ112)。
【0065】
始発情報が正常に送信されると、判定部86の各比較部で設定されている自動送信モードに対応した経過情報の更新及び判定基準値との比較動作が開始される。制御部84は、所定の周期で位置情報送信指示検出部81を監視し、操作者による位置情報送信指示を検出した場合は位置情報送信ステップ116に進む(ステップ113)。
【0066】
制御部84は操作者による位置情報送信指示を検出しなかった場合は、判定部86から経過判定情報の値が判定条件を満たしたことを示す判定結果の有無を監視し、判定条件を満たしたことを示す判定結果が有る場合は管理システム2への位置情報送信ステップ116に進む(ステップ114)。
【0067】
判定条件を満たしていない場合は、判定部86の各比較部は経過判定情報を更新しながら、次の監視周期を待つ(ステップ115)。
【0068】
ステップ113またはステップ114にて、管理システム2への位置情報送信が必要と判断された場合、制御部84は、系統番号、車両ID、位置情報などのデータを情報格納部85、位置情報受信部83、判定部86から収集、編集して、送受信部82を経由して管理システム2に向けて送信指示する(ステップ116)。
【0069】
判定部86の各比較部は制御部84から、位置情報を管理システム2に送信した旨の通知を受けると、経過判定情報を初期化する(ステップ117)。
【0070】
車載機8は、位置情報送信後、管理システム2から自動送信モード、判定基準値の変更を受信すると、制御部84から情報格納部85の書換えを指示し、同時に、判定部86に対して動作モード、判定基準値の更新通知を行う。判定部86は、当該更新通知を解釈し、動作モードに応じて位置比較部861、時間比較部862、距離比較部863を活性化させ、次の処理に移る(ステップ118)。なお、管理モードM0−1、管理モードM0−2のいずれもOFFの場合は、車載機8は管理システム2から自動送信モード等が送信されてくることを待つことなく、また、動作モード等を更新することなく次の処理に移る。
【0071】
制御部84は、運転手による機器操作指示や送信した位置情報の比較等により、バスの運行系統の終点まで到達していないと判定した場合は、引き続き位置情報の送信指示の監視(ステップ113)を行う(ステップ119)。
【0072】
ここで、位置比較部861、時間比較部862、距離比較部863の動作例を説明する。
【0073】
自動送信モードの基本モードとして「エリア」が設定されている場合、位置比較部861が活性化され、位置比較部861は、情報格納部85から判定基準エリア情報を読み出し、位置比較部861内の一時記憶部に保持する。所定の監視周期(この周期は、制御部84や他の比較部の監視周期と同じである必要は無い。)となった場合、位置比較部861は、位置情報受信部83から緯度、経度による位置情報を取得し、取得した位置情報が一時保持している判定基準エリア内であるか否かを判定する。判定結果と位置比較部861に指定されている判定基準(判定基準エリアに入った、判定基準エリアから出た、判定基準エリアの境界を越えてから所定の時間又は走行距離を経過したなど)とから、位置情報送信の要否を判定し、判定結果を制御部84に出力する。判定結果を出力した後は、管理システム2から次の判定基準値を受信するまで(制御部84から通知されるまで、或いは位置比較部861が適宜情報格納部85から判定基準値を読み出して、更新されたと判定するまで)、比較処理を休止する。
【0074】
次に、時間比較部862の動作の例を説明する。なお、この例は、図3を参照して説明した動作方法とは異なる処理であるが、実質的には同一の処理である。
【0075】
自動送信モードの基本モードとして「時間」が設定されている場合、時間比較部862は、情報格納部85から判定基準時間(例えば、300秒)を読み出し、経過判定情報として時間比較部862内の一時記憶部に保持する。位置情報送信要否を判定する所定の周期(この周期は、制御部84や他の比較部の監視周期と同じである必要は無い。)となった場合、経過判定情報から前記の所定の周期時間分を減算して、判定基準時間が経過したかを判定する。つまり、減算結果が0以下になったかどうかを判定する。判定基準時間を経過したと判定した場合、制御部84がその旨を識別できるように表示、通知などを行う。監視途中で、制御部84から位置情報送信による経過判定情報の初期化の指示を受けた場合は、情報格納部85から新たに判定基準値を読み出し、経過判定情報として更新、保存する。
【0076】
距離比較部863の動作も、時間比較部862の動作で、「時間」を「走行距離」に置き換えた場合と同様である。なお、距離比較部863では、経過情報が情報格納部85から設定されてからの走行距離は、バス機器から取得する。
【0077】
このような動作をする車載機8を利用した車両の位置管理システムを構築することにより、バス運転手による位置情報送信の指示忘れがあっても、始発毎にこれから運行する系統全体のバス停位置情報等多量なデータをダウンロードせずに、必要とするデータを適宜管理システムから取得して、車載機8の処理、判定結果で位置情報を管理システムに送信することができる。また、自動送信判定モードを管理システム2から設定できるので、車両が走行する系統(バス停間の距離・所要時間)、車両の走行状況(一定速度での走行(高速道路)、渋滞など)などに応じたきめ細かな監視を行うことができる。
【0078】
また、上記実施例では、バスの運行について説明したが、タクシー、宅配便、貨物運送車両、鉄道などにも広く適用でき、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施の形態における位置情報管理システムの構成図である。
【図2】実施の形態におけるバスシステムの構成図である。
【図3】実施の形態における車載機の構成図である。
【図4A】実施の形態における情報格納部の設定情報の一例を示す図である。
【図4B】実施の形態における自動送信モードの一例を示す図である。
【図5】実施の形態における管理システムの構成図である。
【図6A】実施の形態におけるデータベースサーバに蓄積される情報の例である。
【図6B】実施の形態におけるデータベースサーバに蓄積される情報の例である。
【図6C】実施の形態におけるデータベースサーバに蓄積される情報の例である。
【図7】実施の形態における車載機と位置情報管理システムの動作を示すシーケンスチャートである。
【図8】実施の形態における車載機から管理システムに送信する位置情報データの一例を示す図である。
【図9】実施の形態における管理システムから車載機に送信する自動送信モード変更指示情報の一例を示す図である。
【図10】実施の形態におけるデータベースサーバに蓄積される情報の例である。
【図11】車載機の動作を示すシーケンスチャートである。
【符号の説明】
【0080】
1 バスシステム
3 ボタン
4 音声合成装置
5 通信装置
6 GPS装置
8 車載機
81 位置情報送信指示検出部
82 送受信部
83 位置情報受信部
84 制御部
85 情報格納部
86 判定部
861 位置比較部
862 時間比較部
863 距離比較部
2 管理システム
21 パケット網
22 管理サーバ
23 データベースサーバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載装置であり、当該車両の位置情報を取得する手段を有し、前記車両の操作者による車両位置情報送信指示を検知すると、前記取得した位置情報をネットワーク接続された管理システムに送信する手段を有する車載装置であって、
前記操作者による車両位置情報送信指示がされていない状態で車両位置の自動送信の要否を判定するために使用する判定基準情報の種類を一つ又は複数指定する自動送信モードと前記判定基準情報に対応する値である判定基準値とを格納する判定基準情報格納手段と、
前記自動送信モードで指定される前記判定基準情報について前記管理システムに前記車両の位置情報を送信した後の経過値を経過判定情報として算出し、当該算出した経過判定情報と前記判定基準情報に対応する判定基準値とを所定の周期で比較し、所定の判定条件を満たすかどうかを判定する判定手段と、
前記判定手段により、前記経過判定情報が前記判定条件を満たしていると判定された場合又は車両の操作者による車両位置情報送信指示を検知した場合には、前記車両の位置情報を含む所定の情報を管理システムに送信する手段と
を備えたことを特徴とする車載装置。
【請求項2】
前記管理システムから、自動送信モードまたは判定基準値を受信し、受信した情報に基づき前記判定基準情報格納手段に既に格納されている自動送信モードまたは判定基準値を書き換える手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の車載装置。
【請求項1】
車両に搭載される車載装置であり、当該車両の位置情報を取得する手段を有し、前記車両の操作者による車両位置情報送信指示を検知すると、前記取得した位置情報をネットワーク接続された管理システムに送信する手段を有する車載装置であって、
前記操作者による車両位置情報送信指示がされていない状態で車両位置の自動送信の要否を判定するために使用する判定基準情報の種類を一つ又は複数指定する自動送信モードと前記判定基準情報に対応する値である判定基準値とを格納する判定基準情報格納手段と、
前記自動送信モードで指定される前記判定基準情報について前記管理システムに前記車両の位置情報を送信した後の経過値を経過判定情報として算出し、当該算出した経過判定情報と前記判定基準情報に対応する判定基準値とを所定の周期で比較し、所定の判定条件を満たすかどうかを判定する判定手段と、
前記判定手段により、前記経過判定情報が前記判定条件を満たしていると判定された場合又は車両の操作者による車両位置情報送信指示を検知した場合には、前記車両の位置情報を含む所定の情報を管理システムに送信する手段と
を備えたことを特徴とする車載装置。
【請求項2】
前記管理システムから、自動送信モードまたは判定基準値を受信し、受信した情報に基づき前記判定基準情報格納手段に既に格納されている自動送信モードまたは判定基準値を書き換える手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の車載装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−152448(P2008−152448A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338588(P2006−338588)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000102717)エヌ・ティ・ティ・ソフトウェア株式会社 (43)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000102717)エヌ・ティ・ティ・ソフトウェア株式会社 (43)
【Fターム(参考)】
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