説明

車輪位置決め機構

【課題】 本発明は、走行型ロボットに対する車輪位置決め機構に関し、より詳細には走行型ロボットの駆動輪に当接して走行型ロボットの進入方向および左右の位置ずれを自動修正する車輪位置決め機構に関する。
【解決手段】 本発明の車輪位置決め機構は、走行型ロボットの駆動輪の間隔に合わせて所定形状の2個の穴が形成された位置決め台と、フラットローラとテーパローラとを配置した2連ローラとを有し、2連ローラは位置決め台の穴に回転軸を相対して配置され、2連ローラの上部は位置決め台の上面から所定高さ露出して駆動輪に当接して回転可能とし、テーパローラは位置決め台の外側に対して大きいローラ径となる向きに配置され、さらにフラットローラに対して走行型ロボットの進入側に配置する、よう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行型ロボットに対する車輪位置決め機構に関し、より詳細には走行型ロボットの駆動輪に当接して走行型ロボットの進入方向および左右の位置ずれを自動修正する車輪位置決め機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットの開発は目ざましいものがあり、産業の場から生活や公共の場に利用が拡大され身近なものとなりつつある。そのような場においてもロボットの利用は多岐に渡っており、利用目的に応じて要求される形状や機能は異っている。中でも自律的に走行するロボット(以降、自律走行型ロボット、または単に走行型ロボットと言う)は、その利用分野としてサービスロボットやホームロボットとしての利用が期待されている。
【0003】
一般に、自律走行型ロボットは2次電池を搭載し、この2次電池を動力源として車輪を駆動して走行する。走行に際しては、搭載している視覚センサや距離センサ、車輪エンコーダを用いて現在位置の認識や周辺環境の認識を行い、走行経路を逐次算出して目的位置まで移動する。搭載している2次電池の残容量は常時モニタリングされ、所定の残容量になると充電ステーションまで自走し、充電装置に接続して充電を行う。充電の方法は、充電装置の電極端子とロボットの電極端子とを直接接触させて充電装置から直流電流の供給を受ける方法、あるいは充電装置に備えられた1次コイル(給電コイル)から電磁誘導によりロボットに備えられた2次コイル(充電コイル)に高周波電流を発生させ、これを直流に変換して充電を行う方法がある。後者の電磁誘導による方法は1次コイルと2次コイルを近接させるだけでよい。充電に際しては、充電装置の給電部とロボットの充電部の位置を正確に合わせることが必要である。位置ずれが生じていると、電極端子間の接続ができなかったり、電磁誘導による方法では受電効率が低下する等の問題が起こる場合がある。
【0004】
図7は、自律走行型ロボットが充電ステーションで充電する例を示している。この例は電磁誘導により充電を行う方式であり、充電ステーション500は自律走行型ロボット400に電力を供給する1次コイルからなる給電部510を備え、この給電部510の高さに合わせては自律走行型ロボット400の背面下部に2次コイルを含む充電部410を備えている。自律走行型ロボット400は充電ステーション500が設置されている場所まで自走すると向きを変えて充電部410が給電部510に正しく対向するように位置決めを行う。このとき、前述した視覚センサ、距離センサおよび車輪エンコーダを用いて、充電部410と給電部510間の前後の位置および左右の位置が予め定めた範囲内に位置するよう位置決めがなされる。位置ずれが生じた場合は、前後移動と切り返し動作を行って再度位置決めを試みることになる。
【0005】
充電ステーションへのロボットの進入角度を容易に修正し、充電端子を確実に接続する方法が提案されてきる。この方法は、充電ステーションの床面にアイドローラを配置し、このアイドローラに当接したロボットの駆動輪により進入角度を修正するものである(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−231448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に述べたように、自律走行型ロボットが充電を行う場合には、自律走行型ロボットを充電ステーションに向きと前後左右の位置を正しく位置決めする必要がある。このために視覚センサや距離センサ等を用いて厳密な制御を行う必要があり、複雑な制御はコストアップ要因になっている。また、位置ずれが生じた場合は、自律走行型ロボットは再度位置決めを行うこと(リトライ)を行うことになるが、これに要する時間のロスが発生する、という問題もある。
【0007】
特許文献1による方法は、ロボットの向きを修正する点で有効と考えられるが、左右の位置を修正する点についての考慮はされていない。また、ロボットを充電ステーションから離脱させる場合の機構についても考慮されていない。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みて樹裏のようにセンサを用いることなく、リトライが不要でロボットの向きと左右の位置ずれを自動的に修正する車輪位置決め機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)第1の発明
第1の発明の車輪位置決め機構は、左右に独立して駆動可能な2輪の駆動輪を有する走行型ロボットに対する車輪位置決め機構であり、位置決め台と2連ローラとで構成する。
【0010】
位置決め台は駆動輪の間隔に合わせて所定形状の2個の穴を上面から底面に向かって形成したものであり、2連ローラは同一のローラ径のフラットローラと、端部のローラ径が異なるテーパローラとを所定の間隔で前後に、回転軸を平行にして配置したものである。
【0011】
そして、2個の2連ローラは、それぞれが位置決め台の穴に回転軸を相対して配置し、その位置で2連ローラの上部は位置決め台の上面から所定高さ露出して走行型ロボットの駆動輪に当接して回転可能とし、テーパローラは位置決め台の外側に対して大きいローラ径となる向きに、さらにフラットローラに対して走行型ロボットの進入側に配置した、ことを特徴とする。
【0012】
第1の発明による車輪位置決め機構は例えば充電装置の前に設置され、走行して来た走行型ロボットが車輪位置決め機構の位置決め台上に進入すると、走行型ロボットの駆動輪は2連ローラの位置で正しい向きと左右位置に位置決めさせる。位置決めされた状態で走行型ロボットの充電が行なわれることになる。
(2)第2の発明
第2の発明の車輪位置決め機構は、第1の発明の車輪位置決め機構の2連ローラが進入する走行型ロボットの駆動輪に当接して自由回転し、後進する走行型ロボットの駆動輪に当接して自由回転をロックする、ことを特徴とする。
(3)第3の発明
第3の発明の車輪位置決め機構は、第1の発明のフラットローラがテーパローラに対して走行型ロボットの進入側に配置した、ことを特徴とするものである。
(4)第4の発明
第4の発明の車輪位置決め機構は、第1から第3の発明の位置決め台に配置した2連ローラのテーパローラが、それぞれが位置決め台の外側に対して小さいローラ径となる向きに配置した、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明によれば、次に示す効果が得られる。
【0014】
第1の発明により、走行型ロボットが車輪位置決め機構に斜めや左右にずれて進入しても、簡単な構造で正しい向きと左右の位置に修正することが可能な車輪位置決め機構を提供できる。
【0015】
第2の発明により、走行型ロボットが車輪位置決め機構から離脱する場合にローラの回転をロックするようにしたので、簡単な構造で走行型ロボットが車輪位置決め機構から離脱できる。
【0016】
第3の発明により、第1の発明と同様の効果がある車輪位置決め機構を提供できる。
【0017】
第4の発明により、第1の発明と同様の効果がある車輪位置決め機構を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の車輪位置決め機構の実施形態を図1〜図6を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明による車輪位置決め機構を示すもので、上の図は車輪位置決め機構の側面図(正確には下の図のA−A’断面)で、下の図は上方から見た平面図である。図1に示すように、車輪位置決め機構100は位置決め台200と2連ローラ300とで構成する。
【0020】
位置決め台200は2個の穴210、220が位置決め台200の上面から下面(底面)に向かって形成しており、後述のようにこの穴に2連ローラ300を配置する。穴210と穴220の中心の間隔dは、走行型ロボット400の2個の駆動輪420、430の間隔と等しくしてある(ここでは、駆動輪の車輪径は150mm、車輪間隔は400mmである)。位置決め台200の左端にはスロープを形成しており、走行型ロボット400が進入できにようにしている(図の矢印は走行型ロボット400の進入の方向を示している)。即ち、走行型ロボット400の車輪が位置決め台200の段差で進入を妨げられることのないようにしている。
【0021】
2連ローラ300は、同一径のフラットローラ310とテーパ形状のテーパローラ320とからなり、図1に示すようにそれぞれの回転軸311、321は平行に配置され、回転軸間の間隔はフラットローラ310とテーパローラ320とが接触しない程度の間隙(例えば、数mm)である。フラットローラ310とテーパローラ320のそれぞれの長手方向の中心は揃えられ、穴210、220の中心に合わせている。従って、2連ローラ300のフラットローラ310とテーパローラ320のそれぞれの長手方向の中心は、穴210と220の中心と一致している。ここでは、フラットローラ310のローラ径は40mm、長さ100mm、材質は硬質ウレタンゴムである。また、テーパローラ310の大きい方のローラ径は50mm、小さい方のローラ径は30mm、長さ、材質はフラットローラ310と同一である。
【0022】
穴210、220に配置した2連ローラの上部は、図に示すように位置決め台200の上面から露出して突き出している。この部分に進入した走行型ロボット400の2駆動輪が接することになる。このため、位置決め台200の高さは穴210、220に配置した2連ローラ300の大部分が埋まる寸法以上であればよい。ここでは、位置決め台200の高さを55mmとしている。
【0023】
次に、図1で説明した車輪位置決め機構100に走行型ロボット400がある角度を持って斜めに進入したり、中心から偏って進入した場合に自動的に角度や偏りを修正するメカニズムを説明する。
【0024】
まずその前に図2と図3を用いて、走行型ロボット400が車輪位置決め機構100に対して偏りなく真っ直ぐに(角度“0”)に進入する例を説明する。図2は走行型ロボット400が車輪位置決め機構100に進入しようとしている状態を示している。図2(a)は側面から見た図を示し、図2(b)は図2(a)を上から見た平面図で示すものである。走行型ロボット400は図7に示したものと同一のものであり、ここでは車輪と充電部410で構成する下部の部分を走行型ロボット400として示している(以降も、走行型ロボット400を下部の部分を走行型ロボット400として示す)。車輪は駆動輪420、430と補助輪440、450で構成し、走行型ロボット400を走行させるものは駆動輪420、430である。補助輪440、450は走行型ロボット400の前後の転倒を支えたり、段差を乗り越えるためのものである。図2(a)に示されるように、走行型ロボット400は車輪位置決め機構100のスロープがついた側から進入し2連ローラ200に向かって進む(即ち、矢印に示す方向に進む)。このとき走行型ロボット400は充電部410を先頭にして進入する(図7に示したように充電部410は走行型ロボット400の背面に位置しているので車輪位置決め機構100への進入は走行型ロボット400が後進しながら進入することになる)。
【0025】
また、車輪位置決め機構100には図2の示す位置(車輪位置決め機構100の右端部)に電磁誘導型の充電装置500を搭載している。充電装置500の給電部510は2連ローラ300の側にある。
【0026】
走行型ロボット400が図2の状態からさらに進み、駆動輪420、430が2連ローラ300上まできたときの状態が図3である。図3(a)に示すように、2連ローラ300は駆動輪420、430の回転に伴って図の矢印に示す方向に回転(空転)する。この位置で、2連ローラ300が回転するために走行型ロボット400の前進はストップすることになる。走行型ロボット400の充電部410は充電装置500の給電部510に対して一定の距離をもって左右および高さの偏りなく対向する。この状態で充電の作業を行うことになる。
【0027】
図4(a)は、走行型ロボット400が斜めに進入した状態を示す。即ち、図4(a)に示す車輪位置決め機構100の中心線Cに対して“Θ”の角度で進入した状態(矢印は進入の方向を示している)である。図4(a)の状態において、駆動輪420は2連ローラ300上にあるが、もう一方の駆動輪430は2連ローラ300上にはなく車輪位置決め機構100の上面に接した状態にある。このため、駆動輪420は2連ローラ300によってこの位置で回転したまま前方に進むことはないが、駆動輪430は車輪位置決め機構100の上面をさらに前進する。その結果、駆動輪430も2連ローラ300上に進み、図4(b)の矢印に示すように走行型ロボット400は軸旋回する。即ち、斜めに進入した走行型ロボット400は、2連ローラ300の位置で角度が修正されたことになる。
【0028】
続いて、走行型ロボット400が偏って進入した場合の例を示す。図5(a)に示すように、走行型ロボット400は車輪位置決め機構100の中心線Cに対して距離“d”下方に偏って進入した場合、駆動輪420の前部はフラットローラ310に接し、後部はテーパローラ320のフラットローラ310よりローラ径が太い部分に接する。駆動輪430の前部はフラットローラ310と接し、後部はテーパローラ320のフラットローラ310よりローラ径が細い部分に接する。駆動輪420と駆動輪430の後部が接しているテーパローラ320のローラ径が異なるため、両駆動輪の前後の位置がずれて、進行方向が図5(b)のX方向に傾く。駆動輪を回転させることで、Y方向に対してはローラ上で空転し、X方向に対しては位置決め台200の中心へ向かって移動する。位置決め台200の中心に近づくにつれて、X方向の傾きが「0」へ集束し、左右の移動両も「0」となる。
【0029】
テーパローラ320は図1から図5に示した配置の他に、図6に示す配置であっても同様の効果が得られる。即ち、図6(a)に示すようにフラットローラ310を進入側に配置、あるいは図6(b)に示すようにテーパローラ320の小さなローラ径を外側に配置、さらには図6(c)のようにフラットローラ310を進入側にしてテーパローラ320の小さなローラ径を外側に配置するようにしてもよい。
【0030】
また、2連ローラ300は進入する走行型ロボット400の駆動輪420、430に接して回転するが、走行型ロボット400が離脱する方向に駆動輪420、430が回転した場合は回転がロックするように例えばラチェト機構をフラットローラ310とテーパローラ320に備えている。回転のロックにより走行型ロボット400の2連ローラ300からの離脱が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による車輪位置決め機構である。
【図2】車輪位置決め機構の実施例(その1)である。
【図3】車輪位置決め機構の実施例(その2)である。
【図4】走行型ロボット進入に対する角度修正例である。
【図5】走行型ロボット進入に対する位置修正例である。
【図6】本発明による他の車輪位置決め機構例である。
【図7】従来技術による視覚センサやカメラによる車輪位置決め例である。
【符号の説明】
【0032】
100 車輪位置決め機構
200 位置決め台
210 穴
220 穴
300 2連ローラ
310 フラットローラ
311 フラットローラの回転軸
320 テーパローラ
321 テーパローラの回転軸
400 走行型ロボット
410 充電部
420 駆動輪
430 駆動輪
440 補助車輪
450 捕縄車輪
500 充電装置
510 給電部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に独立して駆動可能な2輪の駆動輪を有する走行型ロボットに対する車輪位置決め機構であって、
前記駆動輪の間隔に合わせて所定形状の2個の穴を上面から底面に向かって形成した位置決め台と、
同一のローラ径のフラットローラと、端部のローラ径が異なるテーパローラとを所定の間隔で前後に、回転軸を平行にして配置した2連ローラと、
2個の前記2連ローラは、それぞれが前記位置決め台の穴に前記回転軸を相対して配置し、該位置で該2連ローラの上部は該位置決め台の上面から所定高さ露出して該走行型ロボットの駆動輪に当接して回転可能とし、前記テーパローラは該位置決め台の外側に対して大きいローラ径となる向きに、さらに前記フラットローラに対して該走行型ロボットの進入側に配置した
ことを特徴とする車輪位置決め機構。
【請求項2】
前記2連ローラは、進入する前記走行型ロボットの駆動輪に当接して自由回転し、後進する前記走行型ロボットの駆動輪に当接して自由回転をロックする
ことを特徴とする請求項1に記載の車輪位置決め機構。
【請求項3】
前記フラットローラは、前記テーパローラに対して前記走行型ロボットの進入側に配置した
ことを特徴とする請求項1に記載の車輪位置決め機構。
【請求項4】
前記位置決め台に配置した前記2連ローラのテーパローラは、それぞれが該位置決め台の外側に対して小さいローラ径となる向きに配置した
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の車輪位置決め機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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