説明

車輪用軸受装置

【課題】ハブ軸の端面と、等速ジョイントの外輪の端面との両サイドスプラインを噛み合わせる動作によってハブ軸と等速ジョイントの外輪とを調心する車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】ハブ軸13と等速ジョイント50の外輪60とが連結ボルト70によって連結される。ハブ軸13の端面と、等速ジョイント50の外輪60の端面には、ハブ軸13と等速ジョイント50の外輪60とをトルク伝達可能に接続する両サイドスプラインが形成される。一方のサイドスプラインの歯先面と、他方のサイドスプラインの歯底面とは、ハブ軸13の中心軸線に直交する面に対し傾斜したテーパ面に形成される。テーパ面をなす歯先面と歯底面との相互の接触によってハブ軸13と、等速ジョイント50の外輪60とを調芯させる。ハブ軸13の端部には、内輪21を固定するかしめ部17が形成される。かしめ部17の端面にサイドスプラインが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車輪が取り付けられるハブホイールのハブ軸と等速ジョイントの外輪とが連結ボルトによって連結された車輪用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車輪用軸受装置においては、例えば、特許文献1に開示されてた構造のものが知られている。
これにおいては、図6に示すように、ハブホイール210と等速ジョイント250とをトルク伝達可能に接続するために、ハブホイール210のハブ軸213の端面と、この端面に突き合わされる等速ジョイント250の外輪260の端壁部261の端面に、相互に噛み合うことでハブホイール210と等速ジョイント250とをトルク伝達する両サイドスプライン(サイドフェーススプライン)280、290が形成される。
また、ハブホイール210のハブ軸213と等速ジョイント250の外輪260とを連結するために、等速ジョイント250の外輪260の端壁部261に、連結ボルト270の雄ねじ部273に対応する雌ねじ263が形成される一方、ハブ軸213の中心部には連結ボルト270の軸部272が挿通される中心孔214が形成される。
そして、両サイドスプライン280、290を噛み合わせた状態で、ハブ軸213の外側から中心孔214を通して連結ボルト270の軸部272が挿通され、この軸部272の雄ねじ部273が外輪260の端壁部261の雌ねじ263に締め付けられることで、ハブホイール210のハブ軸213と等速ジョイント250の外輪260とが連結される。
また、両サイドスプライン280、290のうち、等速ジョイント250の外輪260の端壁部261のサイドスプライン280の歯先面283と、ハブ軸213のサイドスプライン290の歯底面292は、ハブ軸213の中心軸線に直交する面と平行する面(垂直面)上に形成されている。
そして、連結ボルト270を締め付けてハブホイール210のハブ軸213と等速ジョイント250の外輪260とを連結した状態では、両サイドスプライン280、290の歯先面283と歯底面292とが接触する。さらに、等速ジョイント250側のサイドスプライン280の歯底面282と、ハブ軸213側のサイドスプライン290の歯先面293とは非接触でこれら両者間には隙間S’が存在する。
【特許文献1】特開昭57−178903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に開示された車輪用軸受装置においては、両サイドスプライン280、290を噛み合わせ、連結ボルト270を締め付けてハブホイール210のハブ軸213と等速ジョイント250の外輪260とを芯合わせ(同一中心軸線上に位置合わせ)して連結することが厄介であり、ハブホイール210のハブ軸213と等速ジョイント250の外輪260とが芯ずれする(相互の中心軸線がずれる)ことが想定される。この芯ずれは振動や異音の発生原因となる。
【0004】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、ハブ軸の端面と、等速ジョイントの外輪の端面との両サイドスプラインを噛み合わせる動作によってハブホイールのハブ軸と等速ジョイントの外輪とを調心することができる車輪用軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、この発明の請求項1に係る車輪用軸受装置は、車輪が取り付けられるハブホイールのハブ軸と等速ジョイントの外輪とが連結ボルトの締め付けによって連結された車輪用軸受装置であって、
前記ハブ軸の端面と、この端面に突き合わされる前記等速ジョイントの外輪の端面には、相互に噛み合うことで前記ハブホイールのハブ軸と前記等速ジョイントの外輪とをトルク伝達可能に接続する両サイドスプラインが形成され、
前記両サイドスプラインのうち、一方のサイドスプラインの歯先面と、他方のサイドスプラインの歯底面とは、前記等速ジョイントの揺動中心を中心とする円弧面にそれぞれ形成され、
前記円弧面をなす歯先面と歯底面との相互の接触によって前記ハブホイールのハブ軸と、等速ジョイントの外輪とを調芯させる構成にしてあることを特徴とする。
【0006】
前記構成によると、等速ジョイントの外輪側のサイドスプラインとハブ軸側のサイドスプラインとを噛み合わせながら等速ジョイントの外輪とハブ軸とを連結ボルトの締め付けて連結すると、両サイドスプラインの歯先面と歯底面とが等速ジョイントの揺動中心を中心とする円弧面で接触して噛み合わされる。これら両円弧面の接触によって、ハブホイールのハブ軸と等速ジョイントの外輪とを同一中心軸線上に調心することができるため、芯ずれが原因となる振動や異音の発生を防止することができる。
また、両サイドスプラインの歯先面と歯底面とを円弧面で接触させることによって、図6に示す従来のハブ軸の中心軸線に直交する面と平行する面で接触させる場合と比べ、噛み合いの接触面積を増大させることができ、トルク伝達性にも優れる。
また、車両走行時等において、等速ジョイントの揺動中心を支点として等速ジョイントの外輪の中心軸線に対しハブ軸の中心軸線が相対的に傾く方向へ荷重が作用したときには、その荷重を両サイドスプラインの歯先面と歯底面と円弧面の接触面全体で分散して受けることができる。このため、前記荷重が両サイドスプラインの外周部分の一部に集中して作用することを回避することができ耐久性にも優れる。
【0007】
請求項2に係る車輪用軸受装置は、車輪が取り付けられるハブホイールのハブ軸と等速ジョイントの外輪とが連結ボルトの締め付けによって連結された車輪用軸受装置であって、
前記ハブ軸の端面と、この端面に突き合わされる前記等速ジョイントの外輪の端面には、相互に噛み合うことで前記ハブホイールのハブ軸と前記等速ジョイントの外輪とをトルク伝達可能に接続する両サイドスプラインが形成され、
前記両サイドスプラインのうち、一方のサイドスプラインの歯先面と、他方のサイドスプラインの歯底面とは、前記ハブ軸の中心軸線に直交する面に対し傾斜したテーパ面にそれぞれ形成され、
前記テーパ面をなす歯先面と歯底面との相互の接触によって前記ハブホイールのハブ軸と、等速ジョイントの外輪とを調芯させる構成にしてあることを特徴とする。
【0008】
前記構成によると、等速ジョイントの外輪側のサイドスプラインとハブ軸側のサイドスプラインとを噛み合わせながら等速ジョイントの外輪とハブ軸とを連結ボルトの締め付けて連結すると、両サイドスプラインの歯先面と歯底面とをテーパ面で接触して噛み合わされる。
両サイドスプラインの歯先面と歯底面とのテーパ面の接触によって、ハブホイールのハブ軸と等速ジョイントの外輪とを同一中心軸線上に調心することができるため、芯ずれが原因となる振動や異音の発生を防止することができる。
また、両サイドスプラインの歯先面と歯底面とをテーパ面で接触させることによって、従来のハブ軸の中心軸線に直交する面と平行する面で接触させる場合と比べ、噛み合いの接触面積を増大させることができ、トルク伝達性にも優れる。
【0009】
請求項3に係る車輪用軸受装置は、請求項1又は2に記載の車輪用軸受装置であって、
ハブホイールのハブ軸の端部は、半径方向外方へかしめられて転がり軸受の内輪を固定するかしめ部が形成され、このかしめ部の端面にサイドスプラインが形成されていることを特徴とする。
【0010】
前記構成によると、ハブホイールのハブ軸のかしめ部の端面にサイドスプラインを形成することによって、サイドスプラインの外径寸法を大きくすることができる。そして、ハブ軸のサイドスプラインに対応する外径寸法をもって等速ジョイントの外輪の端壁部端面にサイドスプラインを形成して噛み合わせることによって、トルク伝達性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、この発明を実施するための最良の形態を実施例にしたがって説明する。
【実施例】
【0012】
(実施例1)
この発明の実施例1を図1〜図3にしたがって説明する。
図1はこの発明の実施例1に係る車輪用軸受装置を示す縦断面図である。図2は両サイドスプラインが分離した状態を拡大して示す断面図である。図3は両サイドスプラインが噛み合わされた状態を拡大して示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、この実施例1に係る車輪用軸受装置は、ハブホイール10と、転がり軸受としての複列のアンギュラ玉軸受20と、等速ジョイント50とを備えて構成されている。
ハブホイール10は、円筒状をなすハブ軸13と、ハブ軸13の一端部寄り外周面に形成されたフランジ11とを一体に有している。そして、フランジ11には、ブレーキロータ(図示しない)を間に挟んで車輪(図示しない)を取り付けるための複数本のハブボルト12が所定ピッチでかつ圧入によって固定されている。
ハブ軸13の外周には、外輪30、内輪21、転動体としての複数の玉41、42及び保持器45、46を備えた複列のアンギュラ玉軸受20が組み付けられている。
【0014】
この実施例1において、ハブ軸13は、フランジ11側に形成された大径軸部15と、大径軸部15よりも適宜に小径でかつ大径軸部15と段差部をもって連続して形成された小径軸部16とを一体に有している。そして、大径軸部15の外周面に、外輪30の一方の軌道面31に対応する軌道面22が形成されている。
さらに、外輪30の他方の軌道面32に対応する軌道面23が外周面に形成された内輪21がハブ軸13の小径軸部16の外周面に嵌込まれた後、小径軸部16の先端部が半径方向外方へかしめられてかしめ部17が形成されることによって、内輪21が段差部とかしめ部17との間に固定されている。
また、外輪30の両軌道面31、32と、ハブ軸13側の両軌道面22、23との間には各複多数個の玉41、42と、これら各複多数個の玉41、42をそれぞれ保持する保持器45、46が組み付けられる。
また、外輪30の外周面には、車両の懸架装置(図示しない)に支持された車体側部材(ナックル、又はキャリア)にボルトによって取り付けるための固定フランジ35が一体に形成されている。
【0015】
図1に示すように、等速ジョイント50は、周知のツェッパー型、バーフィールド型と呼ばれている等速ジョイントが使用されており、駆動軸51の一端部外周面に一体状に連結された内輪52と、外輪60と、これら内・外輪52、60の間に配設された複数のボール53と、これら複数のボール53を保持する保持器54を備えて構成されている。
また、等速ジョイント50の外輪60の端壁部61の中心部にはハブホイール10と等速ジョイント50とを一体状に連結するための連結ボルト70が突出されている。
【0016】
この実施例1において、連結ボルト70は、等速ジョイント50の外輪60と別体をなす頭部71と軸部72とを有する一方、等速ジョイント50の外輪60の端壁部61の中心部には貫通孔63が貫設されている。
そして、等速ジョイント50の外輪60の貫通孔63の内側開口部から連結ボルト70の軸部72が嵌挿され、頭部71の下面が端壁部61の内面に当接する位置まで軸部72の根本部の大径部72aが圧入されることによって、等速ジョイント50の外輪60の端壁部61から連結ボルト70の軸部72が突出されて固定される。連結ボルト70の軸部72の先端部には雄ねじ部73が形成され、この雄ねじ部73には締付ナット75を回り止めするためのかしめ溝74が凹設されている。
【0017】
図1と図2に示すように、ハブホイール10のハブ軸13の端面(この実施例1ではハブ軸13のかしめ部17の端面)と、この端面に突き合わされる等速ジョイント50の外輪60の端壁部61の端面には、相互に噛み合うことでハブ軸13と等速ジョイント50の外輪60とをトルク伝達可能に接続する両サイドスプライン80、90が形成されている。
【0018】
図2と図3に示すように、両サイドスプライン80、90のうち、一方のサイドスプラインの歯先面と、他方のサイドスプラインの歯底面とは、等速ジョイント50の揺動中心を中心とする円弧面にそれぞれ形成されている。
この実施例1において、等速ジョイント50側のサイドスプライン90の各スプライン歯91の歯先面93と、ハブ軸13側のサイドスプライン80の各スプライン歯81の歯底面82とが等速ジョイント50の揺動中心を中心Oとする半径Rをもつ円弧面にそれぞれ形成されている。
また、等速ジョイント50側のサイドスプライン90の各スプライン歯91の歯底面92とハブ軸13側のサイドスプライン80の各スプライン歯81の歯先面83とは、ハブ軸13の中心軸線(又は等速ジョイント50の外輪60の中心軸線)に直交する面と平行する面(垂直面)上に形成されている。
そして、図3に示すように、ハブホイール10と等速ジョイント50とが連結ボルト70と締付ナット75との締め付けによって連結された状態では、円弧面をなす歯先面93と歯底面82とが相互に接触し、これによってハブ軸13と、等速ジョイント50の外輪60とが調芯される一方、垂直面をなす歯底面92と歯先面83とは非接触でこれら両者間には所定の隙間S1が設定される。
【0019】
上述したように構成されるこの実施例1に係る車輪用軸受装置において、ハブホイール10と等速ジョイント50とをトルク伝達可能に一体状に連結する場合、先ず、等速ジョイント50の外輪60の端壁部61端面から突出された連結ボルト70の軸部72をハブホイール10のハブ軸13の中心孔14の一端側(車幅方向中心側)から他端側(車幅方向外側)に向けて挿通する。
その後、ハブ軸13と等速ジョイント50の外輪60との両サイドスプライン80、90の各スプライン歯81、91を噛み合わせながら、連結ボルト70の軸部72先端部の雄ねじ部73をハブ軸13の中心孔14の他端側に突出させる。
この状態で、連結ボルト70の雄ねじ部65に締付ナット75を締め付ける。この連結ボルト70と締付ナット75による締め付けによって、両サイドスプライン80、90の各スプライン歯81、91の円弧面をなす歯先面93と歯底面82とが相互に接触し、これによってハブ軸13と、等速ジョイント50の外輪60とが調芯される。
最後に、締付ナット75端部の薄肉部76の一部が雄ねじ部73のかしめ溝74内にかしめられて回り止めされることで、ハブホイール10と等速ジョイント50とが芯合わせされた状態でトルク伝達可能に一体状に連結される(図1参照)。
【0020】
前記したようにして、両サイドスプライン80、90の各スプライン歯81、91の歯先面93と歯底面82との円弧面の接触によって、ハブ軸13と等速ジョイント50の外輪60とを同一中心軸線上に調心することができるため、芯ずれが原因となる振動や異音の発生を防止することができる。
また、両サイドスプライン80、90の各スプライン歯81、91の歯先面93と歯底面82とを円弧面で接触させることによって、図6に示す従来のハブ軸の中心軸線に直交する面と平行する面で接触させる場合と比べ、噛み合いの接触面積を増大させることができ、トルク伝達性にも優れる。
【0021】
また、車両走行時等において、等速ジョイント50の揺動中心を中心Oとして等速ジョイント50の外輪60の中心軸線に対しハブ軸13の中心軸線が相対的に傾く方向へ荷重が作用したときには、その荷重を両サイドスプライン80、90の各スプライン歯81、91の歯先面93と歯底面82との接触面(円弧面)全体で分散して受けることができる。このため、前記荷重が両サイドスプライン80、90の各スプライン歯81、91の外周部分の一部に集中して作用することを回避することができ耐久性にも優れる。
【0022】
また、この実施例1においては、ハブ軸13の端部に半径方向外側へかしめによって形成されたかしめ部17の端面にサイドスプライン80を形成することによって、かしめ部17がない場合と比べサイドスプライン80の外径寸法を大きくすることができる。そして、ハブ軸13のサイドスプライン80に対応する外径寸法をもって等速ジョイント50の外輪60の端壁部61の端面にサイドスプライン90を形成して噛み合わせることによって、トルク伝達性の向上を図ることができる。
【0023】
(実施例2)
次に、この発明の実施例2を図4と図5にしたがって説明する。
図4はこの発明の実施例2に係る車輪用軸受装置の両サイドスプラインが分離した状態を拡大して示す断面図である。図5は両サイドスプラインが噛み合わされた状態を拡大して示す断面図である。
図4と図5に示すように、この実施例2においては、ハブホイール10のハブ軸13の端面(かしめ部17の端面)と、この端面に突き合わされる等速ジョイント50の外輪60の端壁部61の端面にそれぞれ形成された両サイドスプライン180、190のうち、等速ジョイント50側のサイドスプライン190の各スプライン歯191の歯先面193と、ハブ軸13側のサイドスプライン180の各スプライン歯181の歯底面182とがハブ軸13の中心軸線に直交する面に対し傾斜したテーパ面にそれぞれ形成されている。
さらに、サイドスプライン190の各スプライン歯191の歯先面193は、外径側が低く内径側に向かってしだいに高く形成されたテーパ面に形成されている。
これに対し、ハブ軸13側のサイドスプライン180の各スプライン歯181の歯底面182は外径側が浅く内径側に向かってしだいに深く形成されたテーパ面に形成されている。
【0024】
また、等速ジョイント50側のサイドスプライン190の各スプライン歯191の歯底面192とハブ軸13側のサイドスプライン180の各スプライン歯181の歯先面183とは、ハブ軸13の中心軸線(又は等速ジョイント50の外輪60の中心軸線)に直交する面と平行する面(垂直面)上に形成されている。
そして、図5に示すように、ハブホイール10と等速ジョイント50とが連結ボルト70と締付ナット(図5には示されていない)との締め付けによって連結された状態では、テーパ面をなす歯先面193と歯底面182とが相互に接触し、これによってハブ軸13と、等速ジョイント50の外輪60とが調芯される一方、垂直面をなす歯底面192と歯先面183とは非接触でこれら両者間には所定の隙間S2が設定される。
この実施例2のその他の構成は実施例1と同様に構成されるため、同一構成部分に対し同一符号を付記してその説明は省略する。
【0025】
したがって、この実施例2に係る車輪用軸受装置においては、両サイドスプライン180、190の各スプライン歯181、191の歯先面193と歯底面182とのテーパ面の接触によって、ハブ軸13と等速ジョイント50の外輪60とを同一中心軸線上に調心することができるため、芯ずれが原因となる振動や異音の発生を防止することができる。
また、両サイドスプライン180、190の各スプライン歯181、191の歯先面193と歯底面182とをテーパ面で接触させることによって、図6に示す従来のハブ軸の中心軸線に直交する面と平行する面で接触させる場合と比べ、噛み合いの接触面積を増大させることができ、トルク伝達性にも優れる。
【0026】
また、この実施例2においても、実施例1と同様にして、ハブ軸13の端部に半径方向外側へかしめによって形成されたかしめ部17の端面にサイドスプライン180を形成することによって、かしめ部17がない場合と比べサイドスプライン180の外径寸法を大きくすることができる。そして、ハブ軸13のサイドスプライン180に対応する外径寸法をもって等速ジョイント50の外輪60の端壁部61の端面にサイドスプライン190を形成して噛み合わせることによって、トルク伝達性の向上を図ることができる。
【0027】
なお、この発明は前記実施例1及び2に限定するものではない。
例えば、前記実施例1及び2においては、等速ジョイント50の外輪60の端壁部61の貫通孔63に、外輪60とは別体の連結ボルト70が圧入によって固定される場合を例示したが、外輪60の端壁部61から連結ボルトなす軸体を同一材料によって一体に突出した場合においてもこの発明を実施可能である。
また、等速ジョイント50の外輪60の端壁部61に雌ねじを形成し、車幅方向外側からハブ軸の中心孔を通して連結ボルトを挿通し、この連結ボルトの雄ねじ部を等速ジョイント50の外輪60の端壁部61に雌ねじ締め付ける構成にしてもこの発明を実施可能である。
また、ハブホイール側の転がり軸受としては複列のアンギュラ玉軸受20の他、複列の円すいころ軸受けを用いてもこの発明を実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施例1に係る車輪用軸受装置を示す縦断面図である。
【図2】同じく両サイドスプラインが分離した状態を拡大して示す断面図である。
【図3】同じく両サイドスプラインが噛み合わされた状態を拡大して示す断面図である。
【図4】この発明の実施例2に係る車輪用軸受装置の両サイドスプラインが分離した状態を拡大して示す断面図である。
【図5】同じく両サイドスプラインが噛み合わされた状態を拡大して示す断面図である。
【図6】従来の車輪用軸受装置を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 ハブホイール
11 フランジ
13 ハブ軸
17 かしめ部
20 複列のアンギュラ玉軸受(転がり軸受)
50 等速ジョイント
60 外輪
61 端壁部
80、90(180、190) サイドスプライン
81、91(181、191) スプライン歯
82、92(182、192) 歯底面
83、93(183、193) 歯先面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪が取り付けられるハブホイールのハブ軸と等速ジョイントの外輪とが連結ボルトの締め付けによって連結された車輪用軸受装置であって、
前記ハブ軸の端面と、この端面に突き合わされる前記等速ジョイントの外輪の端面には、相互に噛み合うことで前記ハブホイールのハブ軸と前記等速ジョイントの外輪とをトルク伝達可能に接続する両サイドスプラインが形成され、
前記両サイドスプラインのうち、一方のサイドスプラインの歯先面と、他方のサイドスプラインの歯底面とは、前記等速ジョイントの揺動中心を中心とする円弧面にそれぞれ形成され、
前記円弧面をなす歯先面と歯底面との相互の接触によって前記ハブホイールのハブ軸と、等速ジョイントの外輪とを調芯させる構成にしてあることを特徴とする車輪用軸受装置。
【請求項2】
車輪が取り付けられるハブホイールのハブ軸と等速ジョイントの外輪とが連結ボルトの締め付けによって連結された車輪用軸受装置であって、
前記ハブ軸の端面と、この端面に突き合わされる前記等速ジョイントの外輪の端面には、相互に噛み合うことで前記ハブホイールのハブ軸と前記等速ジョイントの外輪とをトルク伝達可能に接続する両サイドスプラインが形成され、
前記両サイドスプラインのうち、一方のサイドスプラインの歯先面と、他方のサイドスプラインの歯底面とは、前記ハブ軸の中心軸線に直交する面に対し傾斜したテーパ面にそれぞれ形成され、
前記テーパ面をなす歯先面と歯底面との相互の接触によって前記ハブホイールのハブ軸と、等速ジョイントの外輪とを調芯させる構成にしてあることを特徴とする車輪用軸受装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車輪用軸受装置であって、
ハブホイールのハブ軸の端部は、半径方向外方へかしめられて転がり軸受の内輪を固定するかしめ部が形成され、このかしめ部の端面にサイドスプラインが形成されていることを特徴とする車輪用軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−60193(P2013−60193A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−229603(P2012−229603)
【出願日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【分割の表示】特願2008−86743(P2008−86743)の分割
【原出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】