説明

車速信号供給装置、カーナビゲーションシステム、及び、これらを含む自動車

【課題】カーナビゲーション装置の自車位置精度の高精度化を達成し、取り付け作業を容易に行い、且、非純正カーナビゲーション装置に車速信号を供給することができる車速信号供給装置、カーナビゲーションシステム、及び、これらを含む自動車これらを用いた車載電子機器を提供する。
【解決手段】車速信号供給装置1を構成するセンサ部10は、車輪60の軸回転を検出して車速信号S11を生成し、変換した車速信号S11を無線送信する。受信部は、車速信号S11を受信し、受信した車速信号S11を、車載LANを経由せずにカーナビゲーション装置4に供給する。本発明に係る車速信号供給装置1は、カーナビゲーション装置4と組み合わされてカーナビゲーションシステムを構成する。カーナビゲーション装置4は、受信部20と電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車速信号供給装置、カーナビゲーションシステム、及び、これらを含む自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、カーナビゲーション装置は、特許文献1に記載されているようなハイブリッド測位方式が主流となっている。ハイブリッド測位方式のカーナビゲーション装置によると、平地ではGPS(Global Positioning System)のGPS衛星電波を受信して自車位置を算出し、トンネル内などGPS衛星電波の届かない場所にあっては車速センサなど各種車載センサの出力信号から自車位置を算出する。
【0003】
そして、車載LAN(Local Area Network)通信は、上述したような車載センサの増加、及び、車載電子機器の進展にともない、データの高速転送化の観点から、車載LAN通信の多重化が進められている。車載LAN多重通信では、車速信号は、車載装置のための種々のトリガ信号として用いられるから、車速信号の高精度化が要求される。
【0004】
ところが、車載LAN通信のサンプリング又は自車位置更新のタイミングなどの影響により、特に低速時には、期待される精度の車速信号が得られないことがある。その結果、例えば、トンネルで渋滞に巻き込まれた場合、カーナビゲーション装置の自車位置表示に重大な誤差が生じる。
【0005】
また、車載LAN多重通信を構成する車内配線と、各種車載電子機器とは、当該自動車メーカーの独自の規格に基づく純正品で統一されており、これらは車両製造工程において車体と一体的に構成されている。
【0006】
他方、カーナビゲーション装置は、新製品開発が著しい分野であって、車両製造時に取り付けられた純正カーナビゲーション装置を、市販されている最新型の非純正カーナビゲーション装置に取り換えたいという市場のニーズは非常に高い。
【0007】
しかし、非純正カーナビゲーション装置は、必ずしも純正車内配線に接続可能であるとは限らない。純正車内配線に接続することができない場合、非純正カーナビゲーション装置は、車速信号に基づく自律航法を行えないこととなる。
【0008】
しかも、非純正カーナビゲーション装置の多くは、アナログ信号に対応した仕様となっている。一方、純正車載LAN多重通信は、デジタル信号に対応した仕様となっている。従って、非純正カーナビゲーション装置では、純正車載LAN多重通信から供給される車速信号(デジタル信号)に基づく自律航法を行えないこととなる。
【0009】
そこで、純正車速センサとは別に非純正車速センサを新たに追加し、この非純正車速センサで変換した車速信号を、非純正カーナビゲーション装置に供給することも考えられる。しかし、純正車内配線に対して、非純正車速センサ、及び、非純正カーナビゲーション装置を追加接続する作業は極めて困難である。
【特許文献1】特開平09−005093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、カーナビゲーション装置の自車位置精度の高精度化を達成することができる車速信号供給装置、カーナビゲーションシステム、及び、これらを含む自動車を提供することである。
【0011】
本発明のもう1つの課題は、取り付け作業を容易に行うことができる車速信号供給装置、カーナビゲーションシステム、及び、これらを含む自動車を提供することである。
【0012】
本発明の更にもう一つの課題は、非純正カーナビゲーション装置に車速信号を供給することができる車速信号供給装置、カーナビゲーションシステム、及び、これらを含む自動車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するため、本発明に係る車速信号供給装置は、センサ部と、受信部とを含む。センサ部は、車輪の軸回転を検出して車速信号を生成し、生成した車速信号を無線送信する。受信部は、車速信号を受信し、受信した車速信号を、車載LANを経由せずにカーナビゲーション装置に供給する。
【0014】
上述した車速信号供給装置は、カーナビゲーション装置と組み合わされてカーナビゲーションシステムを構成する。本発明に係るカーナビゲーションシステムにおいて、カーナビゲーション装置は、受信部に接続されている。
【0015】
上述した構造によると、本発明に係る車速信号供給装置を構成するセンサ部は、車速信号を、受信部に無線送信するから、取り付け作業を容易に行うことができる。
【0016】
また、車速信号は、車載LANを経由せずにカーナビゲーション装置に供給されるから、カーナビゲーション装置の自車位置精度の高精度化を達成することができる。
【0017】
さらに、車速信号は、車載LANを経由せずにカーナビゲーション装置に供給されるから、自動車メーカーによって車両製造時に取り付けられている純正カーナビゲーション装置を、市販の非純正カーナビゲーション装置に取り替えて、使用することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)カーナビゲーション装置の自車位置精度の高精度化を達成することができる車速信号供給装置、カーナビゲーションシステム、及び、これらを含む自動車を提供することができる。
(2)取り付け作業を容易に行うことができる車速信号供給装置、カーナビゲーションシステム、及び、これらを含む自動車を提供することができる。
(3)非純正カーナビゲーション装置に車速信号を供給することができる車速信号供給装置、カーナビゲーションシステム、及び、これらを含む自動車を提供することができる。
【0019】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係る車速信号供給装置の構成を示す図である。図1の車速信号供給装置は、カーナビゲーション装置に用いられるものであって、センサ部10と、受信部20とを含む。
【0021】
センサ部10は、車輪の軸回転を検出して車速信号S11を生成し、この車速信号S11を無線送信する。より具体的に説明すると、図1のセンサ部10は、車速センサ部11と、第1の信号処理部13と、第1の出力端子14と、送信用アンテナ16とを有している。センサ部10は、好ましくは車輪に取り付けられる。
【0022】
車速センサ部11は、車輪の軸回転を検出して車速信号S11を生成するものであって、好ましくは回転センサや、ジャイロセンサを用いることができ、より好ましくは圧電振動ジャイロセンサを用いることができる。
【0023】
車速センサ部11で変換される車速信号S11は、例えば、車輪の軸回転スピードが上昇すれば周波数が高くなり、車輪の軸回転スピードが低下すれば周波数が低くなるようなものである。車速信号S11は、接続されるカーナビゲーション装置の仕様に応じて、矩形波、又は、交流波形のいずれでもよい。
【0024】
車速センサ部11は、得られた車速信号S11を第1の信号処理部13に供給する。第1の信号処理部13は、車速センサ部11から供給された車速信号S11を、無線信号S13に変換し、変換した無線信号S13を第1の出力端子14に接続された送信用アンテナ16から無線送信する。
【0025】
受信部20は、車速信号(S11)を受信し、受信した車速信号(S11)を、車載LAN(Local Area Network)を経由せずにカーナビゲーション装置に供給する。より詳細に説明すると、図1の受信部20は、受信用アンテナ26と、第2の入力端子21と、第2の信号処理部23と、第2の出力端子24とを有している。受信部20は、好ましくは車体に取り付けられ、より好ましくは車内空間に取り付けられている。
【0026】
受信部20は、送信用アンテナ16から無線送信された無線信号S13を、受信用アンテナ26で受信する。受信用アンテナ26で受信された無線信号S13は、第2の入力端子21を通して第2の信号処理部23に取り込まれる。
【0027】
第2の信号処理部23は、第2の入力端子21から供給された無線信号S13を、車速信号S11に変換(復調)する。車速信号S11は、第2の出力端子24に供給される。第2の出力端子24は、車速信号S11を、自動車メーカーによって車両製造時に取り付けられている純正車載LANを経由せずに、カーナビゲーション装置に供給する。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態に係るカーナビゲーションシステムの構成を示す図、図3は図2に示したカーナビゲーションシステムを有する自動車について、一部を省略して示す図である。図2及び図3において、図1に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。図2のカーナビゲーションシステムは、図1を参照して説明した車速信号供給装置1と、カーナビゲーション装置4とを含む。
【0029】
カーナビゲーション装置4は、車載LANを経由せずに、受信部20と電気的に接続されている。図2のカーナビゲーション装置4は、第4の入力端子40を有し、第4の入力端子40は、受信部20の第2の出力端子24に、ケーブル等の配線L1で接続されており、受信部20から供給された車速信号S11が有線伝送方式により供給される。
【0030】
図2のカーナビゲーションシステムが、実際に自動車に取り付けられる構成について、図3を参照すると、車速信号供給装置1を構成するセンサ部10は車輪60に取り付けられており、受信部20は車体6の車内空間(例えば運転席近傍)に取り付けられている。カーナビゲーション装置4は、運転席近傍に取り付けられ、受信部20と配線L1で有線接続されている。
【0031】
従来のカーナビゲーション装置は、純正車載LAN多重通信によって車速信号S11が供給されるから、多重化に係るサンプリング、又は、更新のタイミングにより車速信号S11の精度が低下する。その結果、当該車両が、例えばGPS衛星電波の届かないトンネルで渋滞に巻き込まれた場合、自車位置表示に重大な誤差が生じる。
【0032】
これに対して、本発明に係るカーナビゲーションシステムにおいて、センサ部10で生成された車速信号S11は、純正車載LANを構成する純正車内配線を経由せずに、カーナビゲーション装置4に供給されるから、高精度の車速信号S11をカーナビゲーション装置4に供給することができる。従って、カーナビゲーション装置4の自車位置精度を高精度化することができる。
【0033】
しかも、車速信号S11は、純正車内配線を経由せずに、専用配線L1を通じてカーナビゲーション装置4に供給されるから、自動車メーカーによって車両製造時に取り付けられている純正カーナビゲーション装置を、市販の非純正カーナビゲーション装置4に取り替えて、使用することができる。
【0034】
非純正カーナビゲーション装置4は、必ずしも純正車内配線に接続可能であるとは限らないから、従来は、自律航法に必要な車速信号(S11)を受け取ることができなかった。また仮に、非純正カーナビゲーション装置を純正車内配線に接続することができたとしても、非純正カーナビゲーション装置の多くは、アナログ信号に基づき動作する仕様となっており、純正車載LAN多重通信により伝送されている車速信号(S11)を利用することができなかった。
【0035】
これに対し、本発明では、車速信号S11は、受信部20は配線L1を通じてカーナビゲーション装置4に接続されている、非純正カーナビゲーション装置4に高精度の車速信号S11を供給することができるとともに、非純正カーナビゲーション装置の仕様に則した車速信号S11を供給することができる。
【0036】
次に、従来の車載機器は、リブメータ裏やAV裏のコネクタから車速信号(S11)を得ていた。その結果、非純正カーナビゲーション装置のための非純正車速センサを後付しようとしても、高密度化された車内配線に追加配線するのが難しい。しかも、配線の引き回しをするためには、エンジンルームの周壁など車体に穴を開けなければならず、取り付け作業が困難であった。
【0037】
これに対して、本発明において、センサ部10、及び、受信部20は、車速信号S11を無線にて送受信するから、センサ部10、及び、受信部20の取り付け作業を容易に行うことができる。例えば、車速信号供給装置1のセンサ部10は、車輪60に取り付けられる。この構成によると、センサ部10の取り付け作業を容易に行うことができる。
【0038】
図4は、本発明のもう一つの実施形態に係るカーナビゲーションシステムの構成を示す図である。図4において、図1乃至図3に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0039】
図4のカーナビゲーションシステムを構成する車速信号供給装置1において、センサ部10は、タイヤ内の充填空気圧を検出してタイヤ空気圧信号を生成し、得られたタイヤ空気圧信号を無線送信する。より詳細に説明すると図4の車速信号供給装置1は、センサ部10と、受信部20とを有する。
【0040】
センサ部10は、車速センサ部11と、タイヤ空気圧センサ部12と、第1の信号処理部13とを有し、好ましくは車輪(60)に取り付けられ、より好ましくはホイールバルブ(空気注入口)に埋設されている。
【0041】
車速センサ部11は、車輪60の軸回転を検出して車速信号S11を生成し、この車速信号S11を第1の信号処理部13に供給する。タイヤ空気圧センサ部12は、タイヤ内の充填空気圧が規定値以下に低下したことを検出したとき、タイヤ空気圧信号S12を生成し、このタイヤ空気圧信号S12を第1の信号処理部13に供給する。もっとも、タイヤ空気圧センサ部12は、タイヤの充填空気圧が規定値の範囲内にあることを検出してタイヤ空気圧信号S12を生成してもよい。
【0042】
第1の信号処理部13は、車速センサ部11から供給された車速信号S11、及び、タイヤ空気圧センサ部12から供給されたタイヤ空気圧信号S12を、無線信号S13に変換し、無線信号S13を第1の出力端子14に接続された送信用アンテナ16から無線送信する。
【0043】
受信部20は、無線信号S13を受信し、受信した無線信号S13を車速信号S11に変換してカーナビゲーション装置4に供給し、または、受信した無線信号S13をタイヤ空気圧信号S12に変換して異常表示装置50に供給する。より詳細に説明すると、図4の受信部20は、受信用アンテナ26と、第2の入力端子21と、第2の信号処理部23と、第2の出力端子24と、第3の出力端子25とを有し、好ましくは車体(6)に取り付けられる。
【0044】
受信部20は、送信用アンテナ16から無線送信された無線信号S13を、受信用アンテナ26で受信する。受信用アンテナ26で受信した無線信号S13は、第2の入力端子21を通じて第2の信号処理部23に供給される。
【0045】
第2の信号処理部23は、受信用アンテナ26から供給された無線信号S13を受信し、車速信号S11及びタイヤ空気圧信号S12に変換(復調)する。車速信号S11は第2の出力端子24に供給され、タイヤ空気圧信号S12は第3の出力端子25に供給される。
【0046】
第2の出力端子24は、第2の信号処理部23から供給された車速信号S11を、車載LANを経由せずに、車載LANから電気的に独立する配線L1によりカーナビゲーション装置4に供給する。
【0047】
第3の出力端子25は、第2の信号処理部23から供給されたタイヤ空気圧信号S12を、車載LANを経由せずに、車載LANから電気的に独立する配線L2により異常表示装置50に供給する。異常表示装置50は、例えば、点滅/点灯することにより、異常を検出したセンサ部10が取り付けられているタイヤの異常をドライバーに知らせる。即ち、車速信号供給装置1において、少なくともセンサ部10は、車両6に設置された全ての車輪(60)に取り付けられる。
【0048】
上述した構成によると、図1乃至図3を参照して説明した利点を全て有し、さらに、タイヤ空気圧監視システムを安価に、且、効率的に設置することができる。
【0049】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る車速信号供給装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るカーナビゲーションシステムの構成を示す図である。
【図3】図2に示したカーナビゲーションシステムを有する自動車について、一部を省略して示す図である。
【図4】本発明のもう一つの実施形態に係るカーナビゲーションシステムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 車速信号供給装置
10 センサ部
13 第1の信号処理部
20 受信部
21 第2の入力端子
23 第2の信号処理部
4 カーナビゲーション装置
5 車載LAN
50 異常表示装置
60 車輪
S11 車速信号
S12 タイヤ空気圧信号
S13 無線信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ部と、受信部とを含む車速信号供給装置であって
前記センサ部は、車輪の軸回転を検出して車速信号を生成し、生成された前記車速信号を無線送信し、
前記受信部は、前記センサ部から無線送信された前記車速信号を受信し、前記受信した前記車速信号を、車載LANを経由せずにカーナビゲーション装置に供給する、
車速信号供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車速信号供給装置であって、さらに前記センサ部は、タイヤ内の空気圧を検出して信号を生成し、前記変換した前記タイヤ空気圧信号を無線送信する、
車速信号供給装置。
【請求項3】
車速信号供給装置と、カーナビゲーション装置とを含むカーナビゲーションシステムであって、
前記車速信号供給装置は、請求項1又は2に記載されたものでなり、
前記カーナビゲーション装置は、前記受信部と電気的に接続されている、
カーナビゲーションシステム。
【請求項4】
カーナビゲーションシステムを含む自動車であって、
前記カーナビゲーションシステムは、請求項3に記載されたものでなる、
自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−117756(P2010−117756A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288549(P2008−288549)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(591173729)株式会社カナック企画 (12)
【Fターム(参考)】