説明

車道のカーブ区間のカット軌跡を求める方法および制御装置

ここで提案されているのは、車両(326)による車道のカーブ区間(320)のカットを可能にするカーブ軌跡を求める方法である。ここではカーブ区間(320)についての情報を受信し、セグメント長および開始点曲率を有する少なくとも1つの曲線セグメントにこのカーブ区間を分割(320)する。ただしこの曲線セグメントは、直線セグメントであるか、円弧セグメントであるか、または曲率が曲線セグメントの弧長の関数である曲線セグメントである。ここでは上記の少なくとも1つの曲線セグメントからカット軌跡(330)を求めて、このカット軌跡が、上記カーブ区間(320)の所定の点において、前記レーンの中央(328)を基準にしてあらかじめ設定した偏差量(332)を有するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来の技術
本発明は、請求項1および15に記載された車道のカーブ区間の軌跡を求める方法と、請求項13に記載された制御装置と、請求項14に記載されたコンピュータプログラム製品とに関する。
【0002】
レーンキーピングサポート(LKS Lane Keeping Support)とは、車両を車道に維持する際に所期の操舵トルクによって運転者をサポートするレーン維持システムのことである。最初のLKSシステムはすでに欧州市場に導入されている。これらのLKSシステムには、レーン識別システムが含まれており、このレーン識別システムにより、車両の前のレーン経過、例えば曲率および曲率変化と、レーンにおける車両の相対的な位置、例えば横方向間隔および差分角とを求めることができる。このために車両の前の交通空間が、ビデオカメラによって検出されてグレイ値画像が制御装置において評価される。場合によってレーン情報を求める際に他の周囲センサのデータならびにデジタル地図から得られる情報も取り入れて、上記のビデオベースのレーン情報をサポートおよび拡張することができる。
【0003】
DE 10 2005 056 211 A1には、車両の横方向運動を制御する方法が記載されており、ここでは、前方にあるレーンの経過を、少なくとも見通し距離まで検出し、制御ユニットを用いて車両に対する目標軌跡を計画している。
【0004】
発明の開示
このようなことを背景として、本発明により、独立請求項に記載した、車両による車道のカーブ区間のカットを可能にするカット軌跡を求める方法と、さらにこの方法を使用する制御装置と、最後に相応するコンピュータプログラム製品とが提供される。有利な実施形態は、各従属請求項および以下の説明に記載されている。
【0005】
レーン経過に基づき、また走行状態量に基づき、車両の実際の走行状況に依存して目標軌跡を求めて、連続的な操舵介入により、この車両を確実に上記のレーン内で導くことができる。この軌跡は、左および右のレーン境界間の中央に存在し得る。したがってここでは道路構造上の諸条件および殊にカーブとは無関係に車道中央に制御することができるのである。これは運転者を不快にする。それは、これがこの運転者自身の走行特性に相応しないからである。
【0006】
自分のレーンにおいて十分に幅の広いカーブを通過する場合、運転者は直観的にこれらのカーブをカットしようとする。この走行特性は無意識的なものではあるが、カーブにおける道路幅によってサポートされる。上記のようなカーブカットを行う理由は、運転者に作用する横方向加速度が不快であり、したがってこれを低減したいことによるのである。運転者は、カーブ曲率を低減することよってこれを達成するが、これは、運転者が、カーブをカットすることにより、すなわちカーブがまだはじまらないうちにハンドルを切り始めて、自動車を早期にカーブに「切り込む」ことによって行われるのである。これにより、上記のカーブは、車道縁部に向かってカットされ、このカーブを通過するために比較的小さい最大操舵角しか必要でなくなる。このことはカーブ曲率が小さくなることに相応する。これによって第1の走行快適さが増大し、また走行安全性も高まるのである。
【0007】
本発明によるアプローチは、例えばLKSシステムによって実行することができ、また自分のレーン内でのカーブカットができることからその利益を引き出すことができる。
【0008】
本発明の基礎にある知識は、車両のレーン維持システムに対して軌跡を計画する際に上記のカーブカットの可否を考慮できることである。
【0009】
本発明の核心をなすのは、車両を横方向誘導する走行アシストシステムによる応用において、自分のレーンにおいてカーブをカットするためのアルゴリズムである。これによってカーブにおける安定性を高め、また一層の快適さを達成することができる。
【0010】
本発明によれば、アルゴリズムにより、自分のレーン内でのカーブカットを可能にすることができる。ここでこのアルゴルズムには、所定の見通し距離で水平方向の区間経過が既知である。上記のカーブカットは、運転者に対する尺度を運転者自身でパラメタ化することができ、これによってカーブにおけるこの運転者固有の走行の仕方を模擬することができる。ここから一層快適な走行感覚および一層の走行安全性が得られるのである。
【0011】
有利にもあらゆる種類のカーブを通過する際の横方向加速度を系統的に低減することができる。ここではアルゴリズムにより、所定の境界内で軌跡を計画して、カーブが容易にかつこの運転者によって快適にカットされるようにする。これにより、車両搭乗者に対して安全性および快適性が得られる。
【0012】
さらには人間の操舵特性および「道路設備ガイドライン(RAS Richtlinie fuer die Anlag von Strassen)」を考慮して上記のレーンを計画することができる。このことが意味するのは、クロソイドセグメントを用いて上記の軌跡を計画できることである。殊に上記の連続した道路曲率経過を維持して、最善な操舵特性かつ運転者の操舵特性に近い操舵特性を達成することができる。不自然な操舵運動は行われず、したがって一定かつ均一に増大または減少する操舵角だけが使用されることを意味するのである。すなわち、例えばカーブへの進入に対して一定の操舵角変化速度が得られるのである。これにより、人間のそれに近い快適な車両横方向誘導が得られる。
【0013】
また、カーブにおける車道の拡がりを有効に利用できることも有利である。上記のカーブカットの度合いは、運転者の望みに自分で設定可能であり、これは走行中にも可能である。上記のシステムが走行する軌跡は、運転者行動によって決定できることにより、顧客のLKSシステムに対する受容を増進することができる。
【0014】
ビデオベースのレーン識別および位置測定ならびにデジタル地図があれば、既存のセンサだけを使用することができる。
【0015】
本発明により、車両によるレーンのカーブ区間のカットを可能にする軌跡を求める方法が提供され、この方法にはつぎのステップが含まれている。すなわち、インタフェースを介して上記のカーブ区間についての情報を受信するステップと、
直線長を有する直線セグメントと、クロソイド長、クロソイド開始点曲率およびクロソイドパラメタを有するクロソイドセグメントと、円弧長および円弧曲率を有する円弧セグメントとに上記のカーブ区間を分割するステップと、
直線セグメントに対する直線軌跡と、クロソイドセグメントに対するクロソイド軌跡と、円弧セグメントに対する円弧軌跡とを設定ルールに基づいて求めるステップを有しており、ここでこの設定ルールは、上記の直線長、クロソイド長、クロソイド開始点曲率、クロソイドパラメタ、円弧長および円弧曲率を設定して、上記のクロソイド軌跡の曲率および円弧軌跡の曲率がそれぞれ、上記のカーブ区間の最大曲率よりも小さくなるように構成されており、
上記の直線軌跡、クロソイド軌跡および円弧軌跡からカット軌跡を求めるステップとを有する。
【0016】
ここでカーブ区間とは、走行方向に見て車両の前にありかつ曲がっている車道区間のことである。
【0017】
カーブ区間についての情報により、例えば、このカーブ区間の経過、例えば区間にわたるこのカーブ区間内の曲率の経過、このカーブ区間の固有の特徴、またはこのカーブ区間におけるレーンの幅の経過を定めることができる。上記のカーブ区間についての情報は、前を見通す周囲センサシステムによって、または相応する車道情報を有するデータベースによって供給することの可能な情報とすることができる。固有のカーブ区間の位置をつきとめるため、位置決定システムから供給される情報を使用することができる。上記のクロソイドセグメントは、曲率経過が線形に増大する接続弧とすることができる。この場合にこのクロソイドパラメタにより、曲率経過の傾きを定義することができる。上記の円弧セグメントは、均一の曲率半径を有することができる。上記のクロソイドセグメントおよび円弧セグメントの曲率方向は、上記のカーブ区間の曲率方向に相応させることが可能である。したがって上記のカーブ区間は、上記の直線セグメント、クロソイドセグメントおよび円弧セグメントによって表すことができる。上記のカット軌跡は、上記のカーブ区間を通る車両の運動コースを表し得る。ここでこのカット軌跡は、上記のカーブ区間を通るレーンの中央を通る軌跡よりも小さい最大曲率半径を有し得る。これにより、仮想的なセンターラインに沿ってこのカーブを曲がるのではなく、このカーブはカットされることなになるのである。
【0018】
ここでは上記の設定ルールを構成して、あらかじめ求めた境界条件または設定可能な境界条件、例えば上記のカット軌跡とレーン中央との間の最大の偏差量に基づいて、上記のクロソイド長、クロソイド曲率、円弧長および円弧曲率などの設定可能なパラメタが設定できるようにする。このために適当な設定アルゴリズムを使用することができる。ここでは上記の設定ルールを構成して、上記のパラメタのうちの1つまたは複数またはすべてのパラメタが設定されるようにすることができる。これらのパラメタにより、上記の直線軌跡、クロソイド軌跡および円弧軌跡の経過を設定することができる。上記のカット軌跡は、上記の直線軌跡、クロソイド軌跡および円弧軌跡を互いに接続して並べることによって作成することができる。
【0019】
上記のクロソイドセグメントおよび円弧セグメントに加えてさらに上記のカーブ区間を、直線長を有する直線セグメントに分割することができる。これに相応して上記の直線セグメントに対する直線軌跡を上記の設定ルールに基づいて求めることができる。ここでこの設定ルールはつぎのように構成される。すなわち上記の直線長が設定されて、上記のクロソイド軌跡の最大曲率および円弧軌跡の曲率がそれぞれ、上記のカーブ区間の最大曲率よりも小さくなるように上記の設定ルールが構成されるのである。この場合、上記のカット軌跡は、上記の直線軌跡、クロソイド軌跡および円弧軌跡から求めることができる。この直線セグメントにより、例えば、カーブ入口またはカーブ出口が本発明によるアプローチにしたがって置き換えられる。以下の実施形態および実施例において上記の直線セグメントを引き合いに出した場合であっても、相応するこの実施例は、この直線セグメントがなくても実施可能である。例えば、いわゆる非対称のカーブまたはいわゆるS字カーブを置き換える場合にはふつう直線セグメントは不要である。
【0020】
非対称なカーブはつぎのような特徴を有する。すなわち、符号は同じだが曲率の異なる2つの円弧セグメントが、1つのクロソイドセグメントによって互いに接続されるという特徴を有するのである。これに対してS字カーブでは、符号の異なる2つの円弧セグメントが1つのクロソイドセグメントによって互いに接続される。
【0021】
上記の設定ルールはつぎのように構成することができる。すなわち上記の直線軌跡、クロソイド軌跡および円弧軌跡を求めて、上記のカット軌跡が、上記のカーブ区間の頂点において、カーブ内側に向かって、レーン中央における軌跡を基準としてあらかじめ設定した偏差量を有するように構成することできるのである。このあらかじめ設定した偏差量は、固定にまたは運転者があらかじめ設定することができる。ここでこのあらかじめ設定される偏差量は、殊に上記の頂点におけるレーンの幅に依存して変化し得る。このあらかじめ設定される偏差量はまた、車両速度および上記のカーブ区間の最大曲率に依存して選択することもできる。
【0022】
さらに上記の設定ルールを構成して、上記の直線軌跡、クロソイド軌跡および円弧軌跡を求め、上記のカット軌跡の開始点の角度方向が、上記のレーン中央における軌跡の開始点の角度方向に相応し、かつこのカット軌跡の終点の角度方向が、上記のレーン中央における軌跡の終点の角度方向に相応するようにすることができる。
【0023】
これにより、上記のカーブ区間の開始点および終点におけるがくんとした操舵運動を回避することができる。このアプローチが意味するのは、上記の直線軌跡、クロソイド軌跡および円弧軌跡を上記の設定ルールにしたがって求めて、車両が上記のカット軌跡に相応して上記のカーブ区間を通る場合、この車両が、レーン中央における軌跡に相応してこのカーブ区間を通る場合と同じヨー角変化を受けるようにすることできることである。
【0024】
このために例えば上記の設定ルールを構成して、車両速度およびこのカーブ区間の曲率を考慮して上記の直線軌跡、クロソイド軌跡および円弧軌跡が求めることができる。したがってカット軌跡を求めるため、実際に則したパラメタを取り入れることができるのである。
【0025】
本発明の別の核心的なアイデアは、カーブのイン側走行にある。これによって純粋なカーブカットを上回って上記の車両軌跡の半径をさらに大きくすることができ、しかも利用可能な全体レーン幅を最適に利用することにより、または場合によって実際のカーブの前後の車道空間も最適に利用することによって半径をさらに大きくすることができる。
【0026】
カーブのイン側を走行するこのアプローチはつぎのような知識に基づいている。すなわち、走行特性は、走行する半径が大きければ大きいほど、ないしは車両の軌跡の走行する曲率が小さければ小さいほどそれだけ乗客に対してフレンドリーになるという知識に基づいているのである。
【0027】
曲率が一層小さいことにより、搭乗者に加わる横方向加速度および力の作用が小さくなる。有利にもこれによって安全性が高まる。それはこの車両がコースから外れる確率が小さくなるからである。さらに乗客の快適さが高まる。それは、身体に作用する側方の力が小さくなるからである。択一的にはカーブを通過する際の速度を高めることも可能である。
【0028】
カーブのイン側走行を考慮するため、本発明ではさらに、軌跡を求める方法の1つの実施形態が提供され、ここでは設定ルールを構成して、上記のカーブ区間に直接続いている領域において別の1つの直線軌跡、別の1つのクロソイド軌跡および別の1つの円弧軌跡を求めて、この領域において別の1つのカット軌跡が、レーン中央を基準としてあらかじめ設定した別の偏差量を有するようにする。これによってカーブのイン側走行およびアウト側走行が可能になり、全体的なカーブ軌跡に対して上記の曲率をさらに小さくすることができる。したがって言い換えると上記の設定ルールを構成して、少なくとも1つの別のクロソイド軌跡またはカーブ軌跡を求めることができ、ただしこの軌跡は、上記のカーブ区間の曲率方向とは逆向きの曲率方向を有する。この場合、上記のカット軌跡は、上記の直線軌跡、クロソイド軌跡、円弧軌跡および上記の少なくとも1つの別のクロソイド軌跡から求めることができる。
【0029】
さらに本発明の方法には、種々異なる実施形態において、上記のカット軌跡に基づく車両の横方向誘導を求めるステップが含まれており、この横方向誘導は、上記のカーブ区間を通るカット軌跡に沿って車両を制御するのに適したものである。これにより、本発明による方法は有利にもレーン維持システムに使用可能である。
【0030】
複雑な車道経過を描けるようにするため、本発明の方法には1つの区間部分を多数のカーブ区間に分割するステップを含めることができ、ここでこのカーブ区間は、カーブ入口、非対称のカーブ、S字カーブおよび/またはカーブ出口とすることができる。多数のカーブ区間のカーブ区間毎に、先行する請求項に記載したカット軌跡を求めることができ、複数のカーブ区間の複数のカット軌跡を互いに接続して並べることにより、上記の区間部分に対して1つの軌跡を形成することができる。この際には個々のカット軌跡を順次に、すなわち1つずつ求めることができる。ここでは繰り返しは必要ないのである。
【0031】
さらに本発明により、車両によるレーンのカーブ区間のカットを可能にするカット軌跡を求める方法が提供され、この方法にはつぎのステップが含まれている。すなわち、インタフェースを介して上記のカーブ区間についての情報を受信するステップと、
セグメント長および開始点曲率を有する少なくとも1つの曲線セグメントに上記のカーブ区間を分割するステップを有しており、ただしこの曲線セグメントは、直線セグメントであるか、円弧セグメントであるか、または曲率が曲線セグメントの弧長の関数である曲線セグメントであり、
上記の少なくとも1つの曲線セグメントからカット軌跡を求めて、このカット軌跡が、上記カーブ区間の所定の点において、レーン中央を基準としてあらかじめ設定した偏差量を有するようにするステップとを有する。
【0032】
上記の弧長の関数は、導関数とすることができる。例えば、上記の曲率は、弧長の第2次導関数とすることが可能である。上記の所定の点とは、上記のカーブ区間の頂点、中点とすることができるか、または別の有利な点とすることができる。この方法は、適当な最適化法を使用することによって変えることができる。上記の曲線セグメントは、円セグメント、クロソイドセグメント、スプラインセグメントおよび/またはベジエセグメントを含むことができる。以下の実施形態および実施例において上記の直線セグメントを引き合いに出した場合であっても、相応するこれらの実施例は、この直線セグメントがなくても実施可能である。例えば、いわゆる非対称のカーブまたはいわゆるS字カーブを置き換える場合にはふつう直線セグメントは不要である。
【0033】
上記のカット軌跡には、セグメント長および開始点曲率を有する少なくとも1つの軌跡セグメントを含めることができ、この軌跡セグメントは、直線セグメントであるか、円弧セグメントであるか、または曲率が軌跡セグメントの弧長の関数である曲線セグメントである。
【0034】
ここでは上記のカット軌跡を求めて、このカット軌跡の最大曲率が、上記カーブ区間の最大曲率よりも小さくなるようにする。
【0035】
1つの実施形態によれば、上記のカーブ区間は、セグメント長および開始点曲率を有する複数の曲線セグメントに分割することができ、ただし、開始点曲率は、先行する曲線セグメントの終点曲率に等しく、この曲線セグメントの曲率は、直線セグメントまたは円弧セグメントの形態の曲線セグメントの弧長にわたって一定であるか、ないしクロソイドセグメントの形態の曲線セグメントの弧長に伴って線形に変化する。
【0036】
上記のカット軌跡は、セグメント長および開始点曲率を有する複数の軌跡セグメントに分割することができ、ただし、開始点曲率は、先行する軌跡セグメントの終点曲率に等しく、また軌跡セグメントの曲率は、直線セグメントまたは円弧セグメントの形態の軌跡セグメントの弧長にわたって一定であるか、ないしはクロソイドセグメントの形態の軌跡セグメントの弧長に伴って線形に変化する。
【0037】
また上記の直線長、クロソイド長、このクロソイドの開始点曲率、クロソイドパラメタ、円弧長おびよび円弧曲率を設定して、上記のクロソイド軌跡の最大曲率および円弧軌跡の曲率が、上記のカーブ区間の最大曲率よりもそれぞれ小さく、また直線セグメントに対応付けられる直線軌跡を求め、クロソイドセグメントに対応付けられるクロソイド軌跡を求め、円弧セグメントに対応付けられる円弧軌跡を求め、また上記のカット軌跡(330)を上記の直線軌跡と、クロソイド軌跡と、円弧軌跡とから求めこともできる。
【0038】
さらに上記の直線軌跡、クロソイド軌跡および円弧軌跡を求めて、上記のカット軌跡が、頂点、中点またはカーブ区間の別の適当な点において、カーブ内側に向かって、レーン中央を基準としてあらかじめ設定した偏差量を有するようにすることができる。
【0039】
さらに上記の直線軌跡、クロソイド軌跡および円弧軌跡を求めて、カット軌跡の開始点における角度方向が、レーン中央の開始点における角度方向に等しく、またカット軌跡の終点における角度方向が、レーン中央の終点における角度方向に等しくなるようにすることができる。
【0040】
上記の直線軌跡、クロソイド軌跡および円弧軌跡は、車両速度およびカーブ区間の曲率を考慮して求めることができる。
【0041】
上記のカーブ区間に直接続いている領域において、別の直線軌跡、別のクロソイド軌跡および別の円弧軌跡を求めて、別のカット軌跡がこの領域において、レーン中央を基準としてあらかじめ設定した別の偏差量を有するようにすることができる。
【0042】
さらに本発明の方法には、上記のカット軌跡に基づく車両の横方向誘導を求めるステップが含まれており、この横方向誘導は、上記のカーブ区間を通して上記のカット軌跡に沿って車両を制御するのに適している。
【0043】
また上記の方法は、上記の車道の区間部分を複数のカーブ区間に分割するステップを有しており、これらのカーブ区間は、カーブ入口、閉じたまたは開いたカーブ、S字カーブおよび/またはカーブ出口であり、複数のカーブ区間のカーブ区間毎に、先行する請求項のうちのいずれか1項に記載のカット軌跡を求め、複数のカーブ区間のカット軌跡を互いに接続して並べることにより、上記の区間部分に対する軌跡を形成する。
【0044】
さらに本発明により、本発明による方法のステップを実行するかないしは実施するように構成された制御装置が提供される。制御装置の形態をした本発明のこの変形実施形態により、本発明の基礎にある課題を迅速かつ効率的に解決することができる。
【0045】
ここで制御装置とは、センサ信号を処理し、これに依存して制御信号を出力する電気装置のことである。この制御装置は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアで構成することの可能なインタフェースを有することができる。ハードウェアで構成する際には、上記のインタフェースを、例えば、いわゆるシステムASICの一部とすることができ、このシステムASICには上記の制御装置の種々異なる機能が含まれる。しかしながら上記のインタフェースが、固有の集積回路であるか、またはこのインタフェースを少なくとも部分的にディスクリート素子から構成することも可能である。ソフトウェアで構成する場合、上記のインタフェースはソフトウェアモジュールとすることができ、このソフトウェアモジュールは、例えば別のソフトウェアモジュールに加えて、マイクロコントローラに設けられる。
【0046】
プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品を有利であり、ここでこのプログラムコードは、半導体記憶装置、固定ディスク記憶装置または光学式記憶装置などの機械読み出し可能な媒体に記憶されて、このプログラムが制御装置で実行される場合、上で説明した複数の実施形態のうちのいずれか1つに記載した方法を実施するために使用される。
【0047】
以下では添付の図面に基づき、例示によって本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】軌跡計画部の構成を示すブロック回路図である。
【図2】本発明の方法の流れ図である。
【図3】本発明の1つの実施例にしたがい、カーブカットを略示する図である。
【図4】本発明による4つの基本エレメントの概略を示す図である。
【図5】本発明の別の1つの実施例にしたがい、カーブカットを略示する図である。
【図6】カーブのイン側を走行する1つの実施例にしたがい、カーブ軌跡を略示する図である。
【図7】本発明の別の1つの実施例にしたがい、境界条件および副条件の定式化を説明する図である。
【図8】本発明の別の実施例にしたがい、軌跡計画をx−y座標系で示す図である。
【図9】軌跡の境界条件をx−y座標系で示す図である。
【図10】軌跡の境界条件をx−y座標系で示す別の図である。
【図11】カーブ入口に対する軌跡計画の結果を示す図である。
【図12】カーブ出口に対する軌跡計画の結果を示す図である。
【図13】非対称カーブに対する軌跡計画の結果を示す図である。
【図14】S字カーブに対する軌跡計画の結果を示す図である。
【0049】
本発明の有利な実施例の以下の説明において、種々異なる図に示されかつ類似の作用を有するエレレメントに対し、同じまたは類似の参照符号を使用し、またこれらのエレメントを繰り返して説明することは省略する。
【0050】
図1には、本発明の1つの実施例にしたがい、軌跡計画部の構成が示されている。ここに示されているのは、車両センサシステム102、横方向誘導部104および操舵アクチュエータ106である。横方向誘導部104は、軌跡計画部112および操舵制御器114を有することできる。
【0051】
上記の車両センサシステムは、軌跡計画部112に適した複数の情報を検出してこれらを横方向誘導部104に供給するように構成されている。軌跡計画部112および操舵制御器は互いに結合することができる。横方向誘導部104は、軌跡を求めてこの軌跡に相応する操舵情報を操舵アクチュエータ106に供給するために構成することができる。
【0052】
軌跡計画部112は、LKSシステムに組み込むことができ、また横方向制御器104に対する目標設定値として軌跡を求めることができる。
【0053】
デジタル地図および実際の車両位置から、車両の前にある区間経過を求めることができる。この区間経過は部分毎に、直線セグメント、クロソイドセグメントおよび円弧セグメントの形態で軌跡計画部112に通知することできる。これらの幾何学形状を選択する理由は、これらの幾何学形状により、連続した直線的な曲率経過が保証されるからである。クロソイドは、直線および円弧の異なる2つの一定の曲率値を接続する弧である。
【0054】
デジタル地図から得られる上記のデータは、例えば車両に配置された前方を見通すビデオシステムのビデオデータと融合させることができる。これは、例えば、地図資料が旧くなった場合またはGPS受信状態が悪い場合に有用であり、地図データと、実際の曲率経過との一時的な偏差を補償することができる。これにより、変更された入力データが十分迅速に考慮され、本発明による軌跡計画を走行中に1秒当たりに複数回周期的に実行することできる。
【0055】
デジタル地図のおかげで理論的には無制限である見通し距離の利点を最大限に利用するため、つぎの区間部分を前もって計画する。すなわち、所定の区間経過の場合、上記の実際の偏差量に前もって作用を及ぼすことができる。すなわち、将来のカーブ部分に不利な、上記のカーブの頂点における偏差量は、前もって補正することできるのである。この機能は、車両の前のカーブ部分に対する速度推奨と極めて良好に組み合わせることができる。
【0056】
横方向誘導部104および殊に軌跡計画部112を構成して、本発明による方法を実行するかまたこれを実施して軌跡を求めることができる。
【0057】
図2には、本発明の1つの実施例にしたがい、本発明による方法の流れ図が示されている。この方法は、インタフェースを介してカーブ部分についての情報を受信するためのステップ212を含むことができる。この情報は、例えば、図1に示した車両センサシステムによって供給することができる。別のステップ214では上記の曲線部分をクロソイドセグメントと、円弧セグメントと、場合によっては直線セグメントとに分割することができる。別のステップ216では、個々のセグメントに対して軌跡を求めることができる。本発明では、軌跡の長さおよび曲率を求めて、別のステップ218において個々の軌跡から全体軌跡を求めることができる。ステップ216は、スキップすることができる。カーブ部分のレーン中央に延在する軌跡と比べて、上記の全体軌跡は、より小さい最大曲率を有することができる。これは、ステップ216において、相応する設定値にしたがって上記の軌跡の長さおよび曲率を求めることによって達成することができる。上記の全体軌跡は、車両を制御するためのベースとして、レーン維持システムによって使用することができる。
【0058】
図3には、本発明の1つの実施例にしたがい、カーブカットの経過が示されている。ここに示されているのは、第1レーン322および第2レーン324を有する車道のカーブ部分320である。車両326は、第1レーン312上を移動している。車両312は、第1レーン322の中央に延在する軌跡328に沿って移動することができる。本発明では、横方向偏差量332を有するカーブカットを可能にするカット軌跡330を求める。ここで偏差量332は、レーン328の中央からの横方向偏差量または横方向間隔を表す。横方向偏差量332に起因して、カット軌跡330は、レーン328の中央のカーブ内側に延在している。横方向偏差量332は、カット軌跡330の経過にわたって変化し、例えばカーブ部分の頂点320において最大になり得る。例えば偏差量332の大きさは、カーブ部分320の開始点から出発して上記の頂点まで連続して増大し、引き続いてカーブ部分320の終点まで連続して減少し得る。カーブ部分320の開始点および終点において偏差量332は「ゼロ」を取り得る。
【0059】
この場合には本発明のアルゴリズムにより、カーブ320を通過する際に軌跡330の曲率が、カーブ経過328に比べて系統的に減少しまた同時にレーン中央に対して所定の間隔332が維持されるようにする。
【0060】
曲線はつぎのように構成される。すなわち、直線の後、上記の曲率値がまず、弧長と共に線形に増大し(クロソイドを有するカーブ入口)、つぎに一定にとどまる(頂点を有する円弧)かまたはそれぞれクロソイドセグメントに結び付いている別の曲率に達し、再び減少する(クロソイドを有するカーブ出口)ように構成されるのである。したがって1つのカーブに対する曲線パラメタの個数は決まっていないのである。最も簡単なカーブは、(両端に直線がない)3つのセグメントからなり、S字カーブは5つのセグメント(クロソイド−円弧−クロソイド−円弧−クロソイド)からなる。閉じたカーブまたは開いたカーブも同様に(両端に直線のない)5つのセグメントからなるが、これらのセグメントは、すべて同じ曲率符号を有する。ここではさらに非対称のカーブおよびS字カーブが組み合わさり、したがって一層多くの個数のカーブパラメタを有する別のカーブ経過が考えられる。このため、上記の軌跡の計画は、連続する曲線セグメントに対して個別に行わなければならないのである。
【0061】
この意味で上記のカットカーブの計画はつねに、直線または円弧、クロソイド、円弧または直線からなるカーブの部分に対して行われる。ここから4つのケース(いわゆる基本エレメント)が得られ、これらの基本エレメントは互いに結合されて、考えられ得るあらゆる道路経過を表すことができるのである。
【0062】
図4には、本発明の種々異なる実施例にしたがい、4つの基本エレメントが示されており、ここではこれらの4つの基本エレメントはそれぞれ、図の上側部分においてそれぞれx−y座標で示されており、またこの図は、図の下側部分において相応する曲率データを有しており、これらの曲率データは、上記の経路にわたる曲率経過を表している。
【0063】
第1基本エレメントはカーブ入口441を、第2基本エレメントは非対称の曲線443を、第3基本エレメントはS字曲線445を、また第4基本エレメントはカーブ出口447をそれぞれ表している。
【0064】
カーブ入口441では、上記の複数のエレメントは、直線、クロソイドおよび円弧が互い接続されて固定されており、またカーブ出口447では、円弧、クロソイドおよび別の直線が互い接続されて固定されている。非対称の曲線443は、1つの円弧と、1つのクロソイドと、1つの円弧とからなる。したがって閉じるかまたは広がりかつ同じ曲率符号を有する複数のカーブが表される。S字曲線445は、同じ複数のエレメントから組み立てられ、これらのエレメントの違いは、クロソイド部分において曲率がゼロ通過を有しており、符号は変わるが、曲率変化は引き続き一定のままであることである。したがって簡単な右カーブの場合には2つの基本エレメントが必要である。このカーブ入口に対する第1基本エレメントは、有利には上記の円弧の半分(この曲線の頂点)にまで達するここでは必ずしも上記の円弧の半分で複数の基本エレメントを解く必要はない。この解かれる箇所は、1つのパラメタによってあらかじめ設定することも可能である。上記のカーブ出口用の第2基本エレメントは、有利には上記の同じ円弧の半分よりも後ろで、先行する基本エレメントに継ぎ目なしに続いており、上記の直線まで到達している。非対称曲線およびS字曲線に対して同じようにし、これらの曲線は、互いに組み合わせることができ、またカーブ入口によって始まり、カーブ出口で終了するはずである。
【0065】
したがって上記の軌跡計画の問題は、上記の4つの基本エレメント内でそれぞれ、上記の曲率記述のための6つのパラメタ(S1,K1),(S2,K2),(S3,K3)および対応する境界条件および副条件に還元することができるのである。上記の境界条件によって保証しなければならないのは、上記の基本エレメントが互いに接続されて固定されたものがx−y記述において連続かつ微分可能であることである。さらにs−κ記述において同じヨー角を有することおよび連続性を保証しなければならない。これにより、上記の軌跡計画の個々の基本エレメントへのモジュラ化に一貫性が得られる。
【0066】
上記の境界条件により、上記の曲率が低減され、また上記のカーブの形状が維持されたままになる。上記の基本エレメント内の計画はつぎのように行われる。すなわち、上記のカーブカットに対し、上記の頂点における上記のレーン中央からの最大の横方向偏差量値が、パラメタ化可能な尺度として選択されるように行われるのである。上記の自由な6つのパラメタを選択して、これらが上記の軌跡の終点によって達成されなければならないようにする。これによって1つの点が確定する。すなわち、ここで上記のカーブ入口に対して生成すべき上記の軌跡が、上記のカーブの頂点において、レーンの中央軌跡と同じヨー角でこの点を交差するようにするのである。以下で一層正確に説明する別の仮定の下で、最大曲率の小さい新たな交点が得られ、したがって横方向加速度が所期のように低減されて走行快適さが高められる。
【0067】
カーブ入口441に対し、軌跡451の経過と、上記の経路にわたる曲率経過452を有する座標系とを示す。この座標系では、横座標に道のりsが、または縦座標には曲率κがプロットされている。軌跡451は、第1領域において曲率を有しておらず、中央の領域において線形に増大する曲率を有しており、また終点領域においてゼロではない一定の曲率値を有する。
【0068】
非対称の曲線443に対し、軌跡453の経過と、上記の経路にわたる曲率経過454を有する座標系とが示されている。軌跡453は、第1領域においてゼロではない一定の曲率値を有しており、中央の領域において線形に増大する曲率を有しており、また終点領域においてゼロではない一定の曲率値を有する。
【0069】
非対称の曲線445に対し、軌跡455の経過と、上記の経路にわたる曲率経過456を有する座標系とが示されている。軌跡455は、第1領域においてゼロではない一定の第1曲率値を有しており、中央の領域において線形に増大する曲率を有しており、また終点領域においてゼロではない一定の第2曲率値を有する。第1曲率値および第2曲率値の符号は異なる。それは、S字曲線445の曲がっている方向は、上記の経路にわたる経過中に逆転しているからである。
【0070】
カーブ出口447に対し、軌跡457の経過と、上記の経路にわたる曲率経過458を有する座標系とが示されている。軌跡457は、第1領域においてゼロではない一定の曲率値を有しており、中央の領域において線形に減少する曲率を有しており、また終点領域において曲率を有しない。
【0071】
上記の曲線経過は、単に例示的に選択したものである。したがって曲率値は、負の符号を有することもある。例えば、非対称の曲線442およびS字曲線445では、上記の曲率経過454,456の中央の領域は、線形に減少することもあり、したがって一般的に言えば線形に変化することもある。
【0072】
したがって1つの道路経過を上記の4つの基本エレメントに、すなわちカーブ入口441と、カーブ出口447と、同じ曲率符号443を有する曲率の変化する曲線部分(非対称の曲線部分)と、異なる曲率符号445を有する曲率の変化する曲線部分(S字曲線部分)とに分割することができるのである。
【0073】
上記の4つの基本エレメント441,443,445,447はそれぞれ、3つの幾何学形状から組み立てることができ、ここでは2つの異なる曲率値の間の移行部としてつねにクロソイドセグメントを使用して、連続した曲率値経過が保証されるようにする。上記の基本エレメント441,443,445,447はそれぞれ個別に処理される。すなわち、1つのアルゴリズムによって上記のカーブを適当にカットすることができる1つの軌跡が求められ、またこれらの基本エレメントは、上記の区間経過に相応して互い接続されて並んでいるのである。継ぎ目がなくかつ滑らかな移行部を保証するため、個々の基本エレメント441,443,445,447を処理するため、所定の副条件を満たさなければならない。
【0074】
図5にはカーブ入口の例でカーブのカットが示されている。
【0075】
上側の部分図には軌跡528と、計画したカット軌跡530と、横方向偏差量532とが示されている。軌跡528は、例えばレーン中央に沿った実際のカーブ経過に相応することが可能である。軌跡528は、3つの部分に分けられ、第1部分は曲率を有しておらず、第2部分は線形に増大する曲率を有しており、また第3部分は一定かつ最大の曲率を有する。カット軌跡530は、軌跡528の最大曲率よりも小さい最大曲率を有している。偏差量532は、曲線終点の方向に増大しており、2つの軌跡528,530の終点において値A_sを有する。
【0076】
横座標には弧長sがプロットされている。このことは曲率経過570,572には当てはまるが、軌跡528,530には当てはまらない。
【0077】
図の下側部分には座標系が示されており、ここでは横座標には道のりsが、または縦座標には曲率κがプロットされている。ここに示されているのは、第1部分561と、第2部分562と、第3部分563とが示されており、これらの部分は、軌跡528の相応する部分またはカット軌跡530の相応する部分に対応し得る。この座標系には軌跡528に対する曲率経過570と、カット軌跡530に対する曲率経過572とが示されている。第1部分561において2つの曲率経過570,572はゼロに等しい。ふつう第1部分561においてカット軌跡530に対する曲率経過572の直線の長さは、軌跡528に対する曲率経過570の直線の長さよりも短い。第2部分562において曲率経過570は、曲率経過572よりも傾きが小さい。第3部分563では、上記の計画したカット軌跡530に対応付けられている曲率経過570において、上記の最大の曲線曲率の、曲率経過572に対する減少分575が示されている。
【0078】
カット軌跡530を求めるため、まず上記の頂点において、目標とする偏差量532 A_sを定め、引き続いて第3部分563における円弧の長さまたは最大の曲率経過を定めることができる。ここから出発して第2部分562におけるクロソイドセグメントの長さおよび曲率経過を求めることができ、最終的に第1部分561における直線セグメントの長さを求めることができるため、所定の副条件が満たされ、軌跡528,530の開始部分の偏差量および角度方向が一致する。
【0079】
したがって曲線頂点において所定の偏差量値532を達成するため、例えば直線、クロソイドおよび円弧からなるカーブ入口としての上記の基本エレメントに対し、上記の3つのセグメントの長さと、クロソイドないしは円弧の曲率とを変化させることができる。このことは図5に示した通りである。
【0080】
それぞれ目標とした曲線頂点における偏差量値A_s 532は、このカーブの最大曲率およびカーブ速度に依存し得る。図示した曲線経過530を得るためには、つぎの条件を守らなければならない。第1の条件は、計画が終了した基本エレメントを継ぎ目なしに上記の軌跡経過にはめ込めることである。別の条件は、上記の継ぎ目における移行がそれぞれ滑らかであることであり、このことが意味するのは、上記のカット軌跡が、車道中央における軌跡と同じヨー角変化を車両において発生させることである。さらに上記の操舵角は、自然な運動だけで得られるようにする。すなわち、上記の操舵角経過は、時間において連続かつ近似的に線形に、すなわち操舵速度が同じままで増大ないしは減少するようにするのである。また上記の計画したカットカーブにより、基本的に上記の区間経過がコピーされて、カット軌跡530の有利な経過が保証されるようにする。最後の条件は、保証されかつ低減された曲率および操舵運動を有するカーブカットが行われ、この際に車両が、いかなる時点にも上記のレーンを逸脱しないようにすることである。
【0081】
個々の曲率部分および軌跡経過530への作用は、図5において部分561,562,563に示されている。第3部分563では最大カーブ入口曲率が低減されて、セグメント長さが維持される(上記のカット軌跡と類似の経過)。この結果、第2部分562におけるクロソイドセグメントが長くなり、上記の継ぎ目において滑らかな経過が保証される(同じヨー角)。第1部分561における直線セグメントは短くなり、これによって偏差点が位置決めされる。このカーブ部分において自由にパラメタ化可能な残った値は、第3部分563における円弧の長さおよびカーブ頂点A_sにおける所望の偏差532の長さである。最大カーブ曲率を低減する1つの解がつねに存在する。
【0082】
上記の軌跡計画部は、上記のレーン中央からの維持すべき横方向間隔と、上記の計画した軌跡曲率と、上記の車道中央に対して計画した角度とを新たな設定値としてLKS制御器に転送することができる。これらのデータはさらに、車両内部のビデオセンサシステムからのレーン情報と突き合わせて、エラーを有する地図情報を補正することができる。
【0083】
上記の車両が上記の計画した曲線に追従する場合、一層少ない曲率で、ひいては一層小さい操舵運動で一層大きな横方向偏差が得られる。またこれにより、上記の電気操舵アクチュエータに対する一層少ない操舵コストが得られる。
【0084】
図6aおよび6bは、本発明の別の実施例に対するものであり、ここではカーブのイン側走行が行われる。このカーブのイン側走行は、軌跡半径を最小化するために行われ、場合によっては内側に切れ込んで行われる。これは別の複数の実施例に記載されている通りである。
【0085】
図6Aには本発明の1つの実施例にしたがい、カーブ軌跡630が略示されており、ここではカーブのイン側走行が行われている。ここではこのカーブのイン側走行は、全体カーブ軌跡に対する曲率を最小化するために行われる。位置631ではレーンの外側位置632に到達するため、右にハンドルが切られる。ここにはさらに一層内側になる頂点633が示されている。カーブ終了部634では、このカーブの最もアウト側走行が行われ、引き続いてレーン中央への戻し走行635が行われる。これにより、さらに曲率を最小化することができ、イン側走行が行わない場合よりもさらに最小化される。
【0086】
以下では上記の境界条件および副条件を定式化し、上記の個々のセグメント(直線、クロソイド、円弧)がなぜまたどのように上記の4つの基本エレメントに処理されて、ここからどのような結果が得られるかを示す。
【0087】
基本エレメントは、6つのパラメタ(s1,κ1),(s2,κ2)および(s3,κ3)からなる。これらのパラメタを変化させることにより、上記の区間経過から出発して、図7に示したようにx−y経過およびs−κ経過における所要の条件を満たす軌跡を形成する。
【0088】
図6bには、本発明の別の実施例にしたがい、図6aに示したカーブ軌跡630の別の略図が示されている。
【0089】
ここに示されているのは、中央線によって分離される2つのレーンを有する車道部分である。この車道部分はカーブを有する。カーブ軌跡630は、ところどころカーブ外側のレーン上に延在している。さらにカット軌跡330が示されており、このカット軌跡は、図3に基づいて説明した実施例に相応して求めることができる。このカーブでは、実際のカーブの開始点KAと、このカーブの終了点KEとがマークされている。カーブ軌跡630上には開始点Aと、曲率の第1変曲点WP1と、第1垂線の足FP1と、カーブの頂点IPと、第2垂線の足FP2と、曲率の第2変曲点WP2とがプロットされている。
【0090】
有効な軌跡半径は、つぎのようにして低減することができる。すなわち、カーブ軌跡630の垂線の足FP1,FP2が図3に示したようにレーンの中央にあるのではなく、できるだけ遠く車道の外側縁部の傍にあるようにして、接続するカーブ軌跡630が、一層大きな半径を得るようにすることによって低減することができるのである。このためにはカーブの開始点KBの前およびカーブの終了点KEの後ろに上記の垂線の足FP1,FP2を同時に配置して上記のカーブを仮想的に延長しなければならない。これに相応して垂線の足FP1,FP2は同時に、上記の外側のレーン側に最も近い軌跡点でもある。この間隔はパラメタ化可能であるか、または例えば運転者によって調整可能でもある。同様に、車両が隣レーンに最も近くなるカーブの頂点IPにおける間隔も(カット軌跡330の頂点を求めるのと類似して)調整可能である。
【0091】
上記の端部において点A,FP,Eなどをどのように選択して配置するかは、道路のトポロジから得られる。目標は、上記の境界条件下で最終的に走行するカーブ軌跡630の最大軌跡曲率を最小化することである。
【0092】
したがって上記の全体軌跡には付加的に点Aと点WP1とを両端とする振り出しセグメントと、点WP2と点Eとを両端とする再捕捉セグメントとが1つずつ含まれているのである。上記の振り出しのセグメントとは、上記のカーブのイン側走行のことであり、ここではまずメインのカーブ方向とは逆に走行して、外側の車道縁部に達する。同様に上記の再捕捉は、上記のレーンの中央に向かって行われる。
【0093】
したがって上記のメインのカーブを通過するための曲線セグメントは、すなわち上記の曲率の第1変曲点WP1と第2変曲点WP2との間で、上記のカーブそのものの長さよりも長い円弧を走行するのである。曲線セグメントによって示される上記のセグメントは、1つまたは複数のクロソイドセグメントまたは別の関数部分によって表すことも可能である。
【0094】
図6に示したイン側走行の方法論は、別の実施例に対しても拡張として使用することができる。この際にはカット軌跡630は、付加的なクロソイドセグメントおよび円弧セグメントを有するカーブ軌跡630によって置き換えられることになる。
【0095】
図7には、上記の境界条件および副条件の定式化に対する説明図が示されている。上側の領域にはレーン中央328のx−y経過と、計画した軌跡330の経過とが示されている。下側の領域にはレーン中央328に対する曲線経過570と、上記の計画した軌跡330に対するカーブ経過572とを有するs−κ経過が示されている。
【0096】
観察対象の基本エレメントの開始点ないし終了点において、先行する基本エレメント/後続の基本エレメントとの接続条件を満たさなければならない。これはつぎのようにして行われる。1つのカーブにおいて上記の基本エレメントが、上記の曲率セグメント(直線、クロソイド、円弧)によって識別される。上記のカーブ入口は、上記の曲率を最小化しかつ上記のセグメント長を適合させることによって変更される。したがって上記の計算した頂点は、上記のカーブ入口軌跡の終点として得られる。このことは図8に示した通りである。
【0097】
図8にはx−y座標系において軌跡計画が示されており、ここでは上記の計画軌跡T330が区間S328から得られる。これに対する基本的な前提は、上記の軌跡Tと区間Sとが同じ開始点を有することである。これを行うのが、連続かつ微分可能なx−y経過を座標原点において保証する座標変換である。
【0098】
軌跡Tの終点は、最大の横方向偏差量と、区間Sの終点とをベクトル的に直角に加算することにより、すなわち、
T−(xs+Ax)=0 (4.8)
T−(ys+Ay)=0 (4.9)
によって得られる。
【0099】
ここでAxおよびAyは、x−y座標系におけるAs,maxの成分であり、また
x=−sgn(κ3)・sin(ΨE)・As,max (4.10)
y=sgn(κ3)・cos(ΨE)・As,max (4.11)
と定義され、ただしΨEは、上記の基本エレメントにおける区間の終点におけるヨー角である。新たな頂点Tにおけるヨー角が、旧い頂点Sにおけるヨー角と同じままであるという付加的な前提の下でこの方程式を解く。この前提条件は、殊に、上記のカーブ形状および基本エレメントにおける軌跡経過のモジュラ性を維持するために重要である。上記のカーブのつぎの部分には、最適化のため、上記の頂点における偏差量と、上記の円弧の新たな曲率とが共に与えられる。つぎのカーブ区間の最適化により、これらの値が考慮されて、それ自体で頂点における新たな曲率と、適合するセグメント長とが計算される。x−y経過における上記の副条件はつぎのようにして得られる。上記の最大の偏差量は、上記の軌跡の頂点にあり、また予想される横方向加速度および人的要因に依存するようにする。上記の頂点の位置は、上記の区間経過を基本セグメントに分割することによって設定される。複数のテスト走行から明らかになったのは、上記圧倒的な個数のケースにおいて上記の円弧部分の中央において、最大の横方向偏差量が得られたことである。上記の基本エレメントは、この考察にしたがって確定され、ひいては上記の軌跡の頂点も確定される。上記の頂点の位置は、パラメタ化可能のままであり、これによって軌跡計画を種々異なる要求/運転者タイプに適合させることができる。上記の軌跡形状を設定するためのチューニングパラメタとして、円弧長の選択を使用することができる。上記のカーブ形状に最も影響与えるセグメント、すなわち最大の曲率を有するセグメントの長さをつねに一定に維持することが考えられる。残りの条件の自由度が処理されない場合、基本エレメントに応じて上記の条件を補足的に使用することができる。
【0100】
上記のs−κ−経過において定式化しなければならない上記の副条件は、上記の最大曲率を低減することである。この条件は、
κ3<κ3S (4.12)
によって置き換えられる。ただしκ3Sは、第3区間セグメントの曲率である。さらに上記のRASを設定することにより、上記の曲率経過において連続性が得られる。したがって
κ2<κ3 (4.13)
である。
【0101】
上記の境界条件は、上記の4つの基本エレメントに区間経過を分割することにより、ひいては軌跡経過も分割することによって得られる。これらをつねに互いに接続できるようにするため、x−y経過およびs−κ経過においてつぎの手段を講じなければならない。上記の軌跡のx−y−経過は、上記の区間と同様に連続かつ微分可能でなければならない。このことは図9に示した通りである。連続した経過のため、式(4.8)および(4.9)が満たされるようにする。上記の微分可能性は、後続の基本エレメント901の軌跡のx−y経過が、先行する基本エレメント903に同じ角度で固定されることによって得られる。この要求は、図10においてs−κ経過について示されている。
【0102】
図10には上記の軌跡のx−y−経過における境界条件が示されている。連続した経過のため、式(4.8)および(4.9)を満たすようにする。上記の微分可能性は、後続の基本エレメント901の軌跡のx−y経過が、先行する基本エレメント903に同じ角度で固定されることによって得られる。
【0103】
上記のs−κ−経過を連続にし、これにより、先行する基本エレメントの終点曲率を有する第1曲率値κ1を確定する。
【0104】
さらに上記の軌跡は、上記の基本エレメントの区間と同じヨー角を有し、これによって基本エレメントの開始点および終点とが同じ角度に設定されるようにしなければならない。この条件はs−κ−経過において簡単に変換可能である。それは、ヨー角に対し、
【数1】

が成り立つからであり、ただしlは、前の曲率経過の長さを表す。このことが意味するのは、カーブ入口の場合、κ2の下の三角形およびκ3の下の四角形とが一緒になって、κ2sおよびκ3sの下の面積と同じ面積を有しなければならないことである。ここでは
【数2】

が得られ、ただし、上記の軌跡に対して

が、また上記の区間に対して

が成り立ち、またi=1,2,3である。
【0105】
これにより、上記の軌跡における条件が一般的に確定する。これらの条件はそれぞれ、個々の基本エレメントにおける適用に対してつぎのように適合化される。
【0106】
以下では上記の4つの基本エレメントを個別に論述する。上記のそれぞれ3つのセグメントの各々は、長さおよび終点曲率において設定した境界条件および副条件にしたがって変化させなければならない。しかもこれらの条件が、上記の4つのエレメントに一貫して適用できるように変化させなければならないのである。したがってここでは上記の条件を1つのアルゴズムに置き換えることを説明する。
【0107】
まず上記の基本エレメントであるカーブ入口に対する軌跡経過を説明する。
【0108】
カーブの第1部分はつねにカーブ入口であり、これはパラメタ(s1s,κ1s)を有する直線と、(s2s,κ2s)vを有するクロソイドと、(s3s,κ3s)を有する円弧とからなる。これらの3つのセグメントは、終点曲率および長さによって表されるため、デカルト座標および完全なカーブ入口軌跡のヨー角を計算することができる。ここで注意すべきであるのは、上記の基本エレメントを形成する際には第1セグメントおよび第3セグメントを半分にして、カーブ区間が、カーブ入口の前および後で同じ長さで固定でき、これによってカーブ頂点が、円弧の中点上にあり、かつこの軌跡の終点を表すようにすることである。
【0109】
ここでの問題は、開始点として座標原点を有しかつ終点として点

を有する軌跡を見つけることであり、すなわち、
T−(xs+Ax)=0(4.16)
T−(ys+Ay)=0(4.17)
であり、ただしxT=fx(s1,s2,s3,k3)およびyT=fy(s2,s3,k3)であり、このことはx−y−経過において連続性に対する境界条件を満たすことを意味する。
【0110】
上記のパラメタκ1は、上記の副条件に起因してすでにk1=0に確定しており、またκ2=κ3である。
【0111】
境界条件とは、上記の軌跡の終点におけるヨー角が、区間のヨー角と同じことである。これについては式(4.14)を参照されたい。この条件は、
0.5・s2κ3+s3κ3−0.5・s2Sκ3S−s3Sκ3S=0 (4.18)
【数3】

と書き換えることができる。
【0112】
これにより、これまでのすべての境界条件および副条件が満たされる。残っているのはyT=fy(κ2,κ3)である。
【0113】
円弧s3の長さは、自由なパラメタとして残っており、これを設定して、上記の軌跡形状が上記のカーブの形状に類似するようにする。これにより
3=s3S (4.20)
である。
ここでは方程式
T(κ3)−(ys+Ay)=0(4.21)
T(s1)−(xs+Ax)=0(4.22)
を解いて曲率値κ3および長さ値s1を探す。
【0114】
関数fyは、三つ組s2,s3,κ3に対して一意の解を有する。これにより、xT=fx(s1)が成り立つ。したがって式(4.17)が満たされた後、上記の軌跡の正しいx値は、s1を介して明に設定することができる。それは、これがy値には影響を与えないからである。
【0115】
1Sの長さから生じ得る制限は、あらかじめ定めた横方向偏差量を達成できないことである。これは少なくとも、上記のカーブをカットするのに使用できる長さでなければならない。式(4.19)を考察すると、この理由は明らかである。上記のヨー角条件によれば、κ3が小さくなるのに伴い、クロソイドの長さs2を大きくしなければならない。上記のカーブカットにより、上記の基本エレメントの全長が短くなり、このことはs1をさらに短くすることになる。したがって長さs1は、頂点偏差量As,maxに対してカーブに典型的な上限を求める際に使用されるのである。
【0116】
式(4.21)を解くために、変更可能パラメタとしてκ3が残っており、これは、ゼロ位置を探すため、開始値
κ3*=κ3S (4.23)
に設定される。このようにゼロ位置を探索することにより、副条件としてκ3<κ3Sが得られる。
【0117】
図11にはカーブ入口1101に対する軌跡計画の結果として得られる相対的な横方向偏差量1102と、曲率経過1003と、ヨー角経過1104とが示されている。
【0118】
以下では基本エレメントであるカーブ出口に対する軌跡計画を説明する。
【0119】
カーブ出口は、上記のカーブ入口とは鏡映対称に、円弧、クロソイドおよび直線のセグメントが相互に接続されて並び合うことによって構成される。プログラミングコストを低く維持するため、カーブ出口に対する軌跡サーチの問題を変換して、カーブ入口として処理する。これは、第1および第3セグメントを交換して上記のクロソイドを相応に回転することによって行われる。これらのセグメントは、直線(s1s,κ1s)、クロソイド(s2s,κ2s)および円弧(s3s,κ3s)としてパラメタ化される。
【0120】
LKS制御器に対して上記の経路について新たな偏差量を求めなければならないため、上記の軌跡計画の後、上記の偏差量ベクトルおよび経路ベクトルを逆変換する必要がある。このため、これらのベクトルを後ろから前に再記憶する。上記の経路ベクトルは、付加的にオフセットを処理する必要があり、これによって最初のエントリが座標原点にあるようにする。曲率データおよびヨー角データに対してもこのことは相応に当てはまる。
【0121】
上記のカーブ出口軌跡を求める方法と、カーブ入口における方法との違いは、ここではカーブ頂点における偏差量As,maxおよび最小化された曲率κ3がすでに設定されていることである。上記の軌跡に対し、カーブ出口の前および後ろでカーブ部分に対して連続かつ滑らか接続が得られるという条件だけを設定すればよい。2つの曲率パラメタは、κ1=0およびκ2=κ3によってすでに設定されている。
【0122】
x−y−経過における連続性を満たすことにより、
T−(xs+Ax)=0(4.24)
T−(ys+Ay)=0(4.25)
となる。ただしxT=fx(s1,s2,s3)およびyT=fy(s2,s3)である。
【0123】
上記のカット軌跡の変換された開始点は、カーブ中央レーンの直線セグメント上にあり、また上記の終点は、カーブ頂点上に、すなわち前のカーブ区間の終点上になければならない。
【0124】
パラメタs2は、上記のヨー角条件を満たすために使用される。ここでは
0.5・s2κ3+s3κ3−0.5・s2sκ3s−s3sκ3s=0 (4.26)
【数4】

が得られる。
【0125】
カーブ入口の場合と同様に、上記の式(4.25)がパラメタs1に依存しないことに起因してこれが解かれる。この場合にこれは上記の式(4.25)がs1について明に解かれる前に行われる。
【0126】
この場合に(4.25)におけるゼロ位置の探索は、開始条件
3*=S3,0 (4.28)
によって初期化することができる。
【0127】
(4.25)を解くことによってs2およびs3を見つけた後、(4.25)を解くことによってsを求めることができる。
【0128】
図12には軌跡計画の結果として、区間誘導1201と、相対的な横方向偏差量1202と、曲率経過1203と、ヨー角経過1204とが示されている。
【0129】
以下では、基本エレメントである非対称カーブに対する軌跡計画を説明する。
【0130】
ここで非対称カーブとは、ゼロでない区分的に一定の曲率経過を有するカーブのことである。使用される幾何学的なエレメントは、円弧(s1s,κ1s)、クロソイド(s2s,κ2s)および第2の円弧(s3s,κ3s)である。ここでは曲率κ1Sおよびκ3Sはおなじ符号を有する。基本の式としてここでもx−y経過に対する連続性条件を選択する、すなわち、
T−(xs+Ax)=0(4.29)
T−(ys+Ay)=0(4.30)
であり、ただしxT=fx(s1,s2,s3)およびyT=fy(s1,s2,s3,κ3)が成り立つ。
【0131】
上記の軌跡の第1円弧部分における曲率κ1は、すでに前の軌跡部分によって設定される。ここでは上記部分カーブを形成するための4つの自由度が(s1,s2,s3,κ3)で残っている。上記のxy−経過およびs−κ−経過における上記の連続性条件の他の条件として残っているのは、ヨー角条件および上記のカーブ形状を維持したままにしたいという要求である。ここでは2つの式のパラメタを互いに無関係に求めなければならない。
【0132】
上記の軌跡の開始点は、前のカット軌跡の頂点であり、また終点は、As,maxによって求められる新たな頂点である。
【0133】
上記のヨー角条件は、
11+0.5・s2(k1+k3)+s33−s1s1s−0.5・s2s(k1s+k3s)−s3s3s (4.31)
【数5】

となる。
【0134】
非対称なカーブとは、閉じたカーブかまたは開いたカーブとすることできる。上記の軌跡が道路に類似した経過を有するようにしたいという条件を満たすため、|κ1S|<|κ3S|である閉じたカーブでは、最後に残ったs3における自由度を、
3=s3S (4.33)
に確定させる。
択一的に|κ1S|>|κ3S|である開いたカーブでは、上記のパラメタを使用し、これによって
1=S1S (4.34)
が得られる。
【0135】
この自由度は、上記のカーブ進入に対してチューニングパラメタとして使用して、テスト走行に対する上記の計画した軌跡を付加的にパラメタ化することができる。
【0136】
上記の連立方程式(4.29)および(4.30)は、2次元のゼロ位置を探索を行うことによって解かれ、
T(s1,κ3)−(xs+Ax)=0
T(s1,κ3)−(ys+Ay)=0 (4.35)
である。
ここから、閉じたカーブの場合に対し、s1およびκ3に対するゼロ位置探索が得られ、これはつぎの開始条件
1*=s1S (4.36)
κ3*=κ3S (4.37)
を有する。
【0137】
この方程式は、上記の副条件κ3<κ3Sを考慮して解くべきである。
【0138】
上記のカーブ入口の場合と同様に第2円弧セグメントの長さs3を長さs3Sとする。また曲率κ3を減少させて所定のx−y座標値が得られかどうかを試行する。ここではさらに別の1つのパラメタを取り込む必要があり、上記のカーブ出口と同様にこれは第1円弧セグメントの長さs1である。
【0139】
上記の2つの場合のようにクロソイドの長さs2にわたって正しいヨー角が設定される。したがって非対称カーブに対するゼロ位置探索は、2つの変数のゼロ位置探索から組み立てられ、ただしこの提起された問題の解は、カーブ入口およびカーブ出口に対する問題の解を合成することからなるのである。
【0140】
図13には非対称カーブ1301に対する軌跡計画の結果として、閉じたカーブの相対的な横方向偏差量1302と、曲率経過1303と、ヨー角経過1304とが示されている。
【0141】
以下では、基本エレメントであるS字カーブに対する軌跡計画を説明する。
【0142】
このS字カーブと上記の非対称カーブとの違いは、ここでは2つの円弧の曲率が異なる符号を有することである。このカーブは、円弧(s1s,κ1s)、クロソイド(s2s,κ2s)および第2の円弧(s3s,κ3s)によってパラメタ化される。
【0143】
基本方程式としてここでもx−y−経過に対する連続性条件を選択する。すなわち、
T−(xs+Ax)=0 (4.38)
T−(ys+Ay)=0 (4.39)
であり、ただしxT=fx(s1,s2,s3)およびyT=fy(s1,s2,s3,κ3)が成り立つ。
【0144】
上記の軌跡の第1円弧部分の曲率κ1は、すでに前の軌跡部分によって設定される。ここでは上記の軌跡を形成するために上記の4つの自由度(s1,s2,s3,κ3)が残っている。上記のx−y−経過およびs−κ−経過における上記の連続性条件の他に別の条件として残っているのは、ヨー角条件および上記のカーブ形状を維持したままにしたいという要求である。この条件の定式化は、上記の定式化とは異なる。それは、S字カーブでは円弧部分は、曲率経過およびx−y−経過においてほぼ点対称であることが多いからである。したがってクロソイドの長さを一定に維持するのに対し、他のものを変化させることは有意義ではない。それは、これによって軌跡形状がカーブ形状から大きく偏差してしまうことになるからである。2つの方程式のパラメタは、非対称カーブの場合と同様にここでも互いに依存して求めなければならない。
【0145】
1つの自由度により、上記のヨー角条件が満たされる。
F=slκl+0.5・s2(κ1+κ3)+s3κ3 (4.40)
s=s1sκ1s+0.5・s2s(κ1s+κ3s)+s3sκ3s (4.41)
F=Fs (4.42)
が成り立つはずであり、ただしFおよびFSは、上記の経路についての曲率経過の積分を表す。つぎの自由度を使用して、上記の部分カーブが上記の区間の形状を大まかに保持するための条件を満たすようにする。ここでは上記の円弧セグメントの長さが関係式
【数6】

に満たすようにする。
【0146】
ここで上記の式(4.40),(4.41)および(4.48)を(4.42)に代入すると、第1円弧部分の長さは、s2およびκ3の関数として、
【数7】

となる。
【0147】
この式において分母がゼロになる場合、式(4.42)をκ3について解き、これによって不連続箇所が存在することを回避する。これにより、上記の自由なパラメタが変化して、κ3=h(s2,s1)が成り立つ。
【0148】
残りの2つの自由度を使用して、x−y−経過における連続性条件が満たされるようにする。これによって式
T(s2,κ3)−(xs+Ax)=0
T(s2,κ3)−(ys+Ay)=0 (4.50)
が得られる。
【0149】
ここからs2およびκ3に対するゼロ位置探索が得られ、これは開始条件
2*=s2s (4.51)
κ3*=κ3s (4.52)
を有する。
【0150】
この方程式は、上記の副条件κ3<κ3Sを考慮して解かれる。
【0151】
図14にはS字カーブ1401に対する軌跡計画の結果として、相対的な横方向偏差量1402と、曲率経過1403と、ヨー角経過1404とが示されている。
【0152】
ここで説明しかつ図面に示した実施例は単に例示として選択したものである。種々異なる実施例を完全にまたは個々の特徴的構成について互いに組み合わせることができる。また1つの実施例を別の実施例の特徴によって補足することも可能である。
【0153】
さらに本発明による方法ステップを繰り返すことができ、また説明した順序とは異なる順序で実施することができる。
【0154】
1つの実施例に、第1の特徴と、第2の特徴とが「および/または」で結合された特徴が含まれている場合、このことは、この実施例が、1つの実施形態において第1の特徴も第2の特徴も共に有し、また別の1つの実施形態においては第1の特徴だけか、または第2の特徴だけを有することと解釈することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(326)によるレーンのカーブ区間(320)のカットを可能にするカット軌跡を求める方法において、
該方法は、つぎのステップ、すなわち、
インタフェースを介して前記カーブ区間(320)についての情報を受信(212)するステップと、
セグメント長および開始点曲率を有する少なくとも1つの曲線セグメントに前記カーブ区間を分割(214)するステップとを有しており、ただし前記曲線セグメントは、直線セグメントであるか、円弧セグメントであるか、または曲率が曲線セグメントの弧長の関数である曲線セグメントであり、
前記方法はさらに、
前記少なくとも1つの曲線セグメントからカット軌跡(330)を求めて(218)、前記カット軌跡が、前記カーブ区間(320)の所定の点において、前記レーン中央(328)を基準としてあらかじめ設定した偏差量(332)を有するようにした、ことを特徴とする、車両(326)による車道のカーブ区間(320)のカットを可能にするカット軌跡を求める方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記カット軌跡(330)には、前記セグメント長および前記開始点曲率を有する少なくとも1つの軌跡セグメントが含まれており、
当該軌跡セグメントは、直線セグメントであるか、円弧セグメントであるか、または曲率が前記軌跡セグメントの弧長の関数である曲線セグメントである、ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
前記カット軌跡を求めて、当該カット軌跡の最大曲率が、前記カーブ区間の最大曲率よりも小さくなるようにした、ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法において、
セグメント長および開始点曲率を有する複数の曲線セグメントに前記カーブ区間(320)を分割し、
ただし、前記開始点曲率は、先行する曲線セグメントの終点曲率に等しく、
当該曲線セグメントの曲率は、直線セグメントまたは円弧セグメントの形態の前記曲線セグメントの弧長にわたって一定であるか、またはクロソイドセグメントの形態の曲線セグメントの弧長に伴って線形に変化する、ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法において、
セグメント長および開始点曲率を有する複数の軌跡セグメントに前記カット軌跡(330)を分割し、
ただし、前記開始点曲率は、先行する軌跡セグメントの終点曲率に等しく、
当該軌跡セグメントの曲率は、直線セグメントまたは円弧セグメントの形態の前記軌跡セグメントの弧長にわたって一定であるか、またはクロソイドセグメントの形態の前記軌跡セグメントの弧長に伴って線形に変化する、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法において、
前記直線長、前記クロソイド長、当該クロソイドの前記開始点曲率、前記クロソイドパラメタ、前記円弧長および前記円弧曲率を設定して、前記クロソイド軌跡の最大曲率および前記円弧軌跡の曲率が、前記カーブ区間の最大曲率よりもそれぞれ小さく、
前記直線セグメントに対応付けられる直線軌跡を求め、
前記クロソイドセグメントに対応付けられるクロソイド軌跡を求め、
前記円弧セグメントに対応付けられる円弧軌跡を求め、
前記カット軌跡(330)を前記直線軌跡と、前記クロソイド軌跡と、前記円弧軌跡とから求める、ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法において、
前記直線軌跡、前記クロソイド軌跡および前記円弧軌跡を求めて、前記カット軌跡(330)が前記カーブ区間(320)の頂点において、前記曲線内側に向かって、前記レーン(328)の中央を基準としてあらかじめ設定した偏差量(332)を有するようにした、ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法において、
前記直線軌跡、前記クロソイド軌跡および前記円弧軌跡を求めて、前記カット軌跡(330)の開始点における角度方向が、前記レーン(328)中央の開始点における角度方向に等しく、
前記カット軌跡の終点における角度方向が、レーン中央の終点における角度方向に等しくなるようにした、ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法において、
車両速度およびカーブ区間曲率を考慮して前記直線軌跡、前記クロソイド軌跡および前記円弧軌跡を求める、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法において、
前記カーブ区間(320)に直接つながっている領域(631,635)において少なくとも1つの別のクロソイド軌跡(A−WP1,WP2−E)または少なくとも1つの別の円弧軌跡を求めて、別のカーブ軌跡(630)が前記領域(631,635)において、前記レーンの中央を基準にしてあらかじめ設定した別の偏差量(632,634)を有する、ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法において、
前記カット軌跡に基づく前記車両の横方向誘導を求めるステップを有しており、
前記横方向誘導は、前記カーブ区間(320)を通る前記カット軌跡に沿って前記車両(326)を制御するのに適している、ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法において、
前記車道の区間部分を複数のカーブ区間に分割するステップを有しており、
該カーブ区間は、カーブ入口(441)、閉じたまたは開いたカーブ(443)、S字カーブ(445)および/またはカーブ出口(447)であり、
複数の前記カーブ区間のカーブ区間毎に請求項1から11までのいずれか1項に記載のカット軌跡を求め、
複数の前記カーブ区間の前記カット軌跡を互いに接続させて並べることにより、前記区間部分に対する軌跡を形成する、ことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から12または15のいずれか1項に記載の方法のステップを実行するように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項14】
プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品において、
前記プログラムコードは機械読み出し可能な媒体に記憶されており、プログラムが制御装置で実行される場合、請求項1から12または15のいずれか1項に記載の方法を実行する、ことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項15】
車両(326)による車道のカーブ区間(320)のカットを可能にする軌跡を求める方法において、
該方法は、つぎのステップを含んでおり、
インタフェースを介して前記カーブ区間(320)についての情報を受信(212)するステップと、
直線長を有する直線セグメントと、クロソイド長、クロソイド開始点曲率およびクロソイドパラメタを有するクロソイドセグメントと、円弧長および円弧曲率を有する円弧セグメントとに前記カーブ区間を分割する(214)ステップと、
前記直線セグメントに対する直線軌跡と、前記クロソイドセグメントに対するクロソイド軌跡と、円弧セグメントに対する円弧軌跡とを設定ルールに基づいて求める(216)ステップを有しており、
該設定ルールは、前記直線長、前記クロソイド長、前記クロソイド開始点曲率、前記クロソイドパラメタ、前記円弧長および前記円弧曲率を設定して、前記クロソイド軌跡の曲率および前記円弧軌跡の曲率がそれぞれ、前記カーブ区間の最大曲率よりも小さくなるようにし、
前記直線軌跡、前記クロソイド軌跡および前記円弧軌跡からカット軌跡(330)を求める、ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2013−513149(P2013−513149A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541462(P2012−541462)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068530
【国際公開番号】WO2011/067252
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】