説明

軟質樹脂からなる大粒径球状微粒子およびその製造方法

【課題】比較的大きな粒径(例えば、平均粒子径20μm以上)を有し、不純物の含有量が高いレベルで低減された粒子(特に球状粒子)を提供する。
【解決手段】樹脂などのポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)で構成された粒子状の分散相が、オリゴ糖などの水溶性の乳化媒体(B)で構成されたマトリックスに分散している分散体であって、前記成分(A)と前記乳化媒体(B)とで構成された組成物の溶融混練温度において、せん断速度126sec-1で測定した成分(A)のせん断粘度ηAと乳化媒体(B)のせん断粘度ηBとの比ηA/ηBが5/1以上である分散体から、前記乳化媒体(B)を溶出する。前記分散体において、成分(A)と乳化媒体(B)との割合は、前者/後者(重量比)=35/65〜1/99程度であってもよい。得られた微粒子は粒子径が20μm以上であり体積弾性率が20MPa以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RPT成型法に好適な軟質な樹脂からなる軟質でかつ大粒径な真球状の微粒子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂粒子を製造する方法としては、機械的な粉砕法、例えば、樹脂や樹脂組成物を、クラッシャーなどで粗粉砕した後、ジェットミルなどを用いて微粉砕し、その後風力分級機などにより分級する方法が利用されている。しかし、このような方法では、製造機器が高価であることに加え、得られた粒子も不定形で、粒子サイズにばらつきがある。樹脂粒子のサイズを揃えるためには、分級する必要があり、分級により、利用できないサイズの樹脂粒子が大量に生成するため、経済的にも不利である。また、粒子同士のブロッキング、分散性、流動性などの観点から、球状の粒子が好ましいものの、機械的な粉砕法では、球状の微粒子を得ることは不可能である。
そして、本願の様な微粒子の用途のひとつとして、近年は、樹脂微粒子の用途として、RPT成型法(Rapid Prototyping Transforming :レーザー焼結法)という樹脂成形方法が実用化されている。RPT法とは光造形(Stereo Lithography:SL)法によるラピッドプロトタイプ装置で、1991年頃から実用化されている。従来のSL法では、紫外線硬化型樹脂を利用するため、樹脂が限定されるとともに、光硬化性樹脂の硬化物が硬くて脆いため、SL法で得られた成形品は、デザイン的な観点から外観を確認できるものの、機械的強度などの試験に供することができない。
【0003】
これに対して、粉体材料を使用し、レーザービーム加熱により粉末粒子を相互に溶融させて結合し、積層しつつ造形を行うRPT法(レーザー焼結法)が提案されている。
例えば特許第3634969号(特許文献1)には、ナイロン樹脂粒子を用いたRPT成形法が記載されている。
RPT法による成形体の製造は、レーザー焼結させるためのチャンバー内で上下動が可能な受け皿(部品ヘッド)上に樹脂微粒子を薄い層(スライス)として広げる工程と、この微粒子層をチャンバーごと、樹脂の可塑化温度より僅かに低い温度まで加熱する工程と、コンピュータ制御により成形体の断面形状に従ってレーザー光線の照射部分が移動可能な制御装置を用いて、レーザー光線を照射し粉末粒子を溶融させる工程と、前記スライスの厚みに相当する層厚の値だけ、部品ヘッドを下方に移動させる工程と、新たな樹脂微粒子の層(スライス)を部品ヘッドに広げる工程と、前記と同様に、成形品の断面形状に従ってレーザー光線を照射する工程とで構成されており、これらの工程を繰り返し、成形体の断面形状に対応させたレーザー光線によるスキャンが終了する。照射が終了すると、部品ヘッドにはスライスの積層体に対応して溶融した樹脂微粒子で形成された固化成形体が形成される。RPT成形法で重要なスライス工程(樹脂微粒子の薄層を形成する工程)では、樹脂微粒子を薄くかつ均一な層(スライス)として形成するため、ローラー状の「供給ベッド」から部品ベッド上に樹脂微粒子を供給又は送出し、粉体を部品ベッド上に所定の厚み(数十μm〜百数十μm)の薄く均等な層を形成している。このような成形方法では、射出成形などと異なり、金型の抜き口を考慮することなく、自由な形状の成形体を形成できる。
【0004】
そして、上記の特許文献1に記載されている通り、RPT法に用いられる熱可塑性樹脂微粒子としては、粉砕法で得られたナイロン12の微粒子が多く用いられている。しかし、樹脂粒子の形状が不定形であったり、粒径のバラツキが大きいと、均一なスライスを形成できない。特に形状が真球でないと樹脂同士の滑り性が劣り、ローラー状の「供給ベッド」によりスライスを形成する過程で、既に成形された成形断面に樹脂粒子による応力が作用し、成形断面がずれたりする場合があるという問題点があった。
【0005】
したがって粉砕法により得られたナイロン樹脂の微粒子の様に、粒子形状が不均一(特に鋭角部が存在する不定形状)であり、大粒子も存在するような微粒子ではなく、また、分級により粒子径の大きい粒子を除去したとしても、依然として粒子形状は不定形でような微粒子ではない真球状の熱可塑性微粒子、好ましくは粒子の弾性率が小さい微粒子が求められていたがそのようものはなかった。
そのため、粉砕法によるナイロン樹脂の微粒子をRPT法に用いても、成形品がスライス過程で位置ずれし、成形体の寸法精度を高めることができないなどの問題点を解決することができなかった。
【0006】
上記のような真球状の微粒子を得る方法として、特公昭45−29832号公報(特許文献2)にはラウリルラクタムをパラフィン中に加熱溶解し、アルカリ性触媒、助触媒、および更に分散剤として炭素数11以上の脂肪族モノカルボン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩を添加してなる系を攪拌下に130度以上ポリマの融点以下の温度で重合することによりナイロン12微細な粉末あるいは粒状物を製造する方法が記載されている。そして実施例には例えば16メッシュ(粒径0.991mmに相当)以上70%、16から100メッシュ(粒径0.147mmに相当)30%の粒子が得られた記載がある。
この方法によれば確かに球状の微粒子を得ることができるが、得られた球状粒子は、上記の通り粒径の分布が大きい。このためRPT成形法に適用した場合には、やはり上記の問題点が生じる。
【0007】
また、特開平10−176065号公報(特許文献3)には、微粉末化する熱可塑性樹脂(a)に、他の1種類以上の熱可塑性樹脂(b)を溶融混練することにより、樹脂(a)が分散相、樹脂(b)が連続相を構成する樹脂組成物を得て、樹脂(a)は溶解せず、樹脂(b)が溶解するような溶媒で前記樹脂組成物を洗浄することにより、樹脂(a)の球状微粒子を得る方法が開示されている。
【0008】
この方法では、溶融状態で分散体を得て、冷却する過程において、連続相を形成する樹脂成分の緩和速度が遅いため、比較的大きい粒子径[例えば、20μm以上(20〜2000μm程度)]を得ようとする場合、球状粒子(特に真球状)を得ることが困難である。また、大きな粒子を得るために、冷却速度を落としたり、分散体を構成する樹脂成分の固化温度以上で分散体をアニールするなどの手段をとると、得られた分散相が再凝集してしまい粒子を形成しないなどの問題が発生する。さらに、この方法を用いると、分散相の粒子径が大きくなるほど、分散相の内部にさらに連続相を形成している成分が存在する可能性が増すため、目的の樹脂成分のみで構成された大粒径の粒子を安定的に得ることが困難である。また、連続相を形成する樹脂は、製品となる樹脂微粒子にはなんら関与しないため、最終的に回収されるか、あるいは溶解状態のまま廃棄されることになる。しかし、溶液中の樹脂を回収することは、非常に困難であるばかりか、樹脂微粒子の製造コストを上昇させる要因となる。また、樹脂溶液を廃液としてそのまま廃棄した場合、環境への悪影響も懸念される。
【0009】
また、特開2004−51942号公報(特許文献4)には、樹脂成分(A)及び水溶性乳化媒体(B)で構成された分散体であって、乳化媒体(B)が、少なくともオリゴ糖(B1)で構成されている分散体、および前記分散体から乳化媒体(B)を溶出し、樹脂成分(A)で構成された成形体を製造する方法が開示されている。この文献には、(i)前記乳化媒体(B)が、海島構造における連続相または共連続相を形成していてもよいこと、(iii)前記分散体は、樹脂成分(A)と乳化媒体(B)とを混練することにより調製できることが記載されている。しかし、この文献の方法でも、比較的大粒径の球状粒子を得ることは困難である。また、この文献の方法では、粒子径を大きくすると、乳化媒体(B)が粒子に取り込まれやすくなる。
【0010】
そして更に、微粒子にした場合に粒子の体積弾性率が小さい粒子は更に、RPT成形法に適用するのに好適である。すなわち、粒子にした場合の体積弾性率が低いと、粒子それ自体が柔らかいことを示し、その結果としてRPT成形法でのスライス形成時に均一なスライスが形成できるし、また得られたRPT成形品もまた柔らかいものにすることができる。
柔らかい粒子すなわち体積弾性率が低い粒子を得ようとする場合には、その微粒子化される樹脂は柔らかいゴム弾性を示すものを用いるのが良い。
しかしながら、上記の微粉末化する熱可塑性樹脂(a)に、他の1種類以上の熱可塑性樹脂(b)を溶融混練することにより、樹脂(a)が分散相、樹脂(b)が連続相を構成する樹脂組成物を得てこれを微粒子にする方法において、熱可塑性樹脂(a)これらの柔軟な樹脂を採用しても、良好な微粒子にはできない。なぜならば、柔軟な樹脂、言い換えればゴム弾性を示す樹脂は多くの場合溶融時の粘度が高く、微粒子化が困難である。
【特許文献1】特許公報 第3634969号
【特許文献2】特公昭45−29832号公報(発明の詳細な説明、実施例1)
【特許文献3】特開平10−176065号公報(請求項1)
【特許文献4】特開2004−51942号公報(請求項1、25、段落番号[01 03])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、安定して、比較的大きな粒径の球状粒子(特に樹脂粒子)を得るのに有用な有機組成物及び分散体、有機固体粒子の製造方法、並びに有機固体粒子を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、比較的大きな粒径であっても、粒子に含まれる不純物の量が著しく低減された有機固体粒子(特に樹脂粒子)を製造するのに有用な有機組成物及び分散体、有機固体粒子の製造方法、並びに有機固体粒子を提供することにある。
更に、本発明の目的はRPT成形法に用いた場合に好適な、真球状でかつ粒子の弾性率が低い微粒子提供することであり、このような微粒子を用いて得られたRPT成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、水溶性の乳化媒体と、溶融可能な有機固体成分(特に樹脂)とを溶融混練して得られる分散体から、前記乳化媒体を除去して前記有機固体成分の粒子(有機固体粒子)を得る方法において、溶融温度(溶融加工時の温度)での有機固体成分の粘度(せん断粘度)ηAと乳化媒体の粘度ηBとの比ηA/ηBを一定値以上にすることにより、軟質樹脂であっても安定して大粒径の粒子が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の組成物(有機組成物)は、軟質樹脂好ましくはポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)と、水溶性の乳化媒体(B)とで構成された組成物であって、この組成物の溶融混練温度において、せん断速度126sec-1で測定した有機固体成分(A)のせん断粘度ηAと乳化媒体(B)のせん断粘度ηBとの比ηA/ηBが5/1以上である。前記比ηA/ηBは10/1以上であってもよく、前記ηBは、1Pa・sec以上であってもよい。
【0015】
前記ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)は、樹脂成分であってもよく、好ましくは、ポリアミド系樹脂で構成されていてもよい。前記乳化媒体(B)は、、少なくともオリゴ糖(B1)で構成されていてもよい。特に、前記乳化媒体(B)は、オリゴ糖(B1)とこのオリゴ糖(B1)を可塑化するための水溶性可塑化成分(B2)とで構成されていてもよい。前記可塑化成分(B2)は、例えば、糖類及び糖アルコールから選択された少なくとも一種で構成されていてもよい。前記オリゴ糖(B1)と前記可塑化成分(B2)との割合(重量比)は、例えば、オリゴ糖(B1)/可塑化成分(B2)=99/1〜40/60程度である。また、前記組成物において、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)と乳化媒体(B)との割合は、前者/後者(重量比)=35/65〜1/99程度であっても
よい。
【0016】
代表的な前記組成物には、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)が樹脂成分であり、乳化媒体(B)がオリゴ糖(B1)と糖類及び糖アルコールから選択された少なくとも一種の水溶性可塑化成分(B2)とで構成されており、ηA/ηBが15/1以上であり、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)と乳化媒体(B)との割合が、前者/後者(重量比)=28/72〜10/90程度である
組成物などが含まれる。
【0017】
前記組成物は、有機固体成分を分散相、乳化媒体をマトリックス(連続相)とする分散体を得るのに有用である。そのため、本発明には、前記ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)で構成された粒子状の分散相が、前記乳化媒体(B)で構成されたマトリックスに分散している分散体であって、前記ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)と前記乳化媒体(B)とで構成された組成物の溶融混練温度において、せん断速度126sec-1で測定したポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)のせん断粘度ηAと乳化媒体(B)のせん断粘度ηBとの比ηA/ηBが5/1以上である分散体も含まれる。前記分散相の平均粒子径は、例えば、20μm以上であってもよく、また、前記分散相は、長径と短径との長さ比(長径/短径)=1.5/1〜1/1を有する球状分散相であってもよい。
【0018】
本発明の分散体は、乳化媒体(B)を除去することにより、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)で構成された粒子を得るのに有用である。そのため、本発明には、前記分散体から乳化媒体(B)を溶出させてポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)で構成された粒子(有機固体粒子)を製造する方法、およびこの製造方法により得られる粒子も含まれる。このような本発明の粒子は、溶融混練を経るにもかかわらず(さらには粒径が比較的大きいにもかかわらず)、粒子内部に取り込まれる乳化媒体の量が著しく少ない。例えば、前記粒子の断面積全体に対する乳化媒体の断面積の割合は、10%以下であってもよい(又は前記粒子中に含まれる乳化媒体の割合が粒子の断面積において、10%以下であってもよい)
【発明の効果】
【0019】
本発明では、溶融温度(溶融加工時の温度)において、特定の粘度比を示す有機固体成分と乳化媒体とを組み合わせるので、軟質樹脂であっても安定して、比較的大きな粒径の球状粒子(特に樹脂粒子)を得ることができる。また、本発明では、比較的大きな粒径であっても、粒子に含まれる不純物の量が著しく低減された有機固体粒子(特に樹脂粒子)を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[組成物]
本発明の組成物(有機組成物)は、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)と、水溶性の乳化媒体(B)(以下、水溶性乳化媒体、乳化媒体などということがある)とで構成されている。このような組成物は、混練(溶融混練)などにより、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)を含む分散相と、前記乳化媒体(B)を含むマトリックスとで構成された分散体を生成し、この分散体から乳化媒体(B)を溶出して、粒子を得るのに有用である。
【0021】
そして、本発明の組成物(および分散体)において、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)と乳化媒体(B)とは異なる溶融粘度(せん断粘度)を有している。溶融粘度の相違は、前記ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)のせん断粘度ηAと前記乳化媒体(B)のせん断粘度ηBとの比ηA/ηBで表すことができ、本発明では、このせん断粘度比を大きくすることにより、比較的大きい粒径の粒子を安定して得ることができる。
【0022】
具体的には、本発明の組成物は、溶融混練温度(所定の溶融混練温度)において、せん断速度126sec-1で測定したポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)のせん断粘度ηAと乳化媒体(B)のせん断粘度ηBとの比ηA/ηBが、5/1以上(例えば、7/500程度)の範囲から選択でき、例えば、7.5/1以上(例えば、9/1〜400/1程度)、好ましくは10/1以上(例えば、12/1〜300/1程度)、さらに好ましくは15/1以上(例えば、16/1〜200/1程度)、特に20/1以上(例えば、22/1〜150/1程度)であってもよく、通常、18/1〜100/1(例えば、20/1〜80/1程度)であってもよい。前記粘度比が小さすぎる場合は、比較的大きな粒子を得ることができない。また、粘度比が大きすぎる場合は、溶融混練時に分散相を形成する軟質樹脂好ましくはポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)に混練のせん断が伝わりにくいため、粒子状の分散相を得ることが困難になる場合がある。
【0023】
なお、押出機などの代表的な加工機のせん断速度は、通常、10〜1000sec-1(例えば、50〜200sec-1)程度であると思われる。そのため、本発明では、代表的な条件として、せん断速度126sec-1を採用している。また、前記溶融混練温度は、有機固体成分の種類に応じて適宜選択でき、有機固体成分が樹脂の場合は、樹脂の成形加工温度範囲(例えば、140〜240℃程度)で選択すればよい。なお、前記組成物の溶融混練温度における各成分のせん断粘度は、慣用の方法で測定でき、例えば、所定の孔径および長さを有するキャピラリを用いて、せん断速度126sec-1で測定したときのせん断粘度を測定してもよい。
【0024】
(軟質樹脂)
本発明においてポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)としては、通常、水溶性の乳化媒体(B)に対して非相溶の成分又は疎水性の成分(非水溶性成分)が使用できる。
ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)としては、高分子化合物(樹脂)を用いる場合が多い。樹脂は、通常、室温(15〜25℃程度)で固体であり、融点を有する場合、その融点は、例えば、40〜280℃、好ましくは50〜270℃、さらに好ましくは70〜260℃程度であってもよく、本発明では、100〜260℃程度の比較的高い融点を有する樹脂も使用できる。また、融点を有さない非晶質樹脂の場合は、そのガラス転移点温度は、40〜280℃(好ましくは50〜270℃、さらに好ましくは70〜260℃)程度であってもよく、本発明では、100〜260℃の比較的高いガラス転移点温度を有する樹脂も使用できる。なお、溶融可能な樹脂は、通常、水溶性の乳化媒体(B)に対して非相溶性の樹脂又は完全疎水性の樹脂である。
【0025】
軟質樹脂は、ラジカル重合型樹脂、付加重合型の樹脂、開環重合型の樹脂であってもよい。このような軟質樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ハロゲン含有ビニル系樹脂、ビニルエステル系樹脂又はその誘導体(例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系樹脂など)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、生分解性樹脂[例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂(例えば、ポリ乳酸系樹脂やポリC3-12ラクトン系樹脂など)、ポリエステルアミドなどの生分解性ポリエステル系樹脂]であってもよい。
これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、水溶性助剤との溶融混練を容易にするために、アミノ基、ヒドロキシル基やカルボキシル基などの親水性基を有する樹脂を使用してもよい。さらに、軟質樹脂としては、ハードセグメントとソフトセグメントとで構成されたブロック共重合体(熱可塑性エラストマーなど)を用いることもできるが、このようなブロック共重合体は溶融粘度が高く、粒子径を制御し難い場合がある。 好ましい軟質樹脂は、共重合ポリエステルまたはポリアミド共重合体である。
【0026】
(1)共重合ポリエステル樹脂
上記の共重合ポリエステル樹脂としては、脂肪族ポリエステルの脂肪族ジカルボン酸成分の一部を芳香族ジカルボン酸成分で置換した脂肪族−芳香族共重合ポリエステル、特に脂肪族−芳香族ランダム共重合
脂肪族−芳香族共重合ポリエステルは、芳香族ポリエステルの融点を低下又は脂肪族ポリエステルの融点を高めるため、ホットメルト接着剤の分野で用いられ、近年は生分解性の点でも着目されている。 脂肪族−芳香族共重合ポリエステルのジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール(1,4−ブタンジオール)、1,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2-10アルカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコールなどが例示できる。これらのジオール成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ジオール成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールなどの直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルカンジオール、ジエチレングリコールを含むのが好ましい。特に、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールを主たるジオール成分として用いるのが好ましい。 脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC2-10アルカン−ジカルボン酸などが例示できる。これらの脂肪族ジカルボン酸成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、少なくともC2-8アルカン−ジカルボン酸(特にコハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、中でもアジピン酸)を用いる場合が多い。
【0027】
芳香族ジカルボン酸成分としては、アレーンジカルボン酸又はその酸無水物、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのベンゼンジカルボン酸、ナフトエ酸などのナフタレンジカルボン酸などが例示できる。これらの芳香族ジカルボン酸成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。芳香族ジカルボン酸成分としては、少なくともベンゼンジカルボン酸(特にテレフタル酸)を用いる場合が多い。 なお、必要により、分子量の調整や分岐構造の導入などにより共重合ポリエステルの特性を調整するため、C3-12ラクトン(例えば、カプロラクトンなど)、オキシカルボン酸(例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ安息香酸など)、脂環族又は芳香族ジオール(水素化ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体など)、ポリオール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど)、脂環族ジカルボン酸(ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ヘット酸、無水ハイミック酸など)、ポリカルボン酸(無水トリメリット酸など)を使用してもよい。これらの任意成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。 脂肪族−芳香族共重合ポリエステルは、ポリブチレンアジペートブチレンテレフタレート共重合体(PBAT)などとして、BASF社より商品名「Ecoflex」(登録商標)などとして入手できる。
ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)は、通常、室温(15〜25℃程度)で固体であり、低分子化合物であってもよく、高分子化合物(又は樹脂)であってもよい。ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)の融点は、40〜280℃(好ましくは50〜270℃、さらに好ましくは70〜210℃)程度であってもよく、100〜260℃程度の比較的高い融点を有する化合物も使用できる。
本発明では、このような低分子有機固体成分であっても、前記乳化媒体(B)と組み合わせることにより、粒子(特に真球状の粒子)として得ることができるので、低分子ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)の取扱い性を向上できる。
【0028】
(2)ポリアミド系樹脂
ポリアミド系樹脂としては、例えば、脂肪族ポリアミド系樹脂、脂環族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂などが挙げられ、通常、脂肪族ポリアミド系樹脂が使用される。これらのポリアミド系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
脂肪族ポリアミド系樹脂としては、脂肪族ジアミン成分(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC4-10アルキレンジアミン)と脂肪族ジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC4-20アルキレンジカルボン酸など)との縮合物(例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1212など)、ラクタム(ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのC4-20ラクタムなど)又はアミノカルボン酸(ω−アミノウンデカン酸などの炭素数C4-20アミノカルボン酸など)の単独又は共重合体(例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/11、ポリアミド6/12など)、これらのポリアミド成分が共重合したコポリアミド(例えば、ポリアミド66/11,ポリアミド66/12など)などが挙げられる。ポリアミド系樹脂のジカルボン酸成分はダイマー酸単位を含んでいてもよい。さらに、ポリアミド系樹脂は生分解性を有していてもよい。
【0029】
樹脂成分の熱変形温度(例えば、JIS K 7206で規定されるビカット軟化点)は、60〜300℃の範囲から選択でき、例えば、80〜260℃、好ましくは100〜240℃(例えば110〜240℃)、さらに好ましくは120〜230℃(例えば130〜220℃)程度である。
【0030】
軟質樹脂成分の平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量、又は粘度平均分子量で、例えば、500,000以下(例えば、10,000〜500,000程度)、好ましくは10,000〜400,000程度、さらに好ましくは50,000〜350,000程度であってもよい。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量の測定が困難なセルロース誘導体などの熱可塑性樹脂については、粘度平均分子量を採用できる。なお、樹脂成分の重量平均分子量は、樹脂成分の混練時間や混練温度などによっても調節できる。
【0031】
なお、前記組成物におけるポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)のせん断粘度ηAは、有機固体成分の種類にもよるが、温度190℃及びせん断速度126sec-1の条件で測定したとき、例えば、30〜50000Pa・sec、好ましくは40〜10000Pa・sec、さらに好ましくは50〜3000Pa・sec(例えば、70〜2000Pa・sec)程度であってもよい。
【0032】
(水溶性の乳化媒体(B))
本発明の組成物(又は分散体)では、乳化媒体として水溶性の乳化媒体(水溶性化合物)を使用することにより、有機固体成分(特に樹脂)に対する親和性を下げて、球状の粒子を効率よく得ることができ、しかも、有機固体成分(特に樹脂)内部への乳化媒体への取り込みを抑制できる。また、水溶性の乳化媒体を使用することにより、粒子化過程における乳化媒体の除去を簡便に行うことができる。
【0033】
水溶性の乳化媒体(B)は、通常、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)を分散可能な成分であればよい。すなわち、前記乳化媒体成分(B)は、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)に対して、通常、相溶性を有しない(又は非相溶性の)成分であればよい。なお、乳化媒体(B)は、通常、固体(常温で固体)である。このような固体の乳化媒体は、固体であれば、液体の乳化媒体を含んでいてもよい。なお、乳化媒体と有機固体成分とを組み合わせて分散体を形成した後、後述するように、適宜溶出又は洗浄などの方法により、有機固体粒子(樹脂粒子など)を形成できる。
【0034】
水溶性の乳化媒体(又はマトリックス成分)としては、例えば、水溶性樹脂[例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体など)、ビニルアルコール系重合体(例えば、ポリビニルアルコールなど)、水溶性アクリル系樹脂、水溶性スチレン系樹脂、ポリビニルピロリドンなどの水溶性合成樹脂;セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースなどのアルキル−ヒドロキシアルキルセルロースなどのヒドロキシル基を有するセルロース誘導体、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース、エチルセルロースなどのアルキルセルロースなどのセルロースエーテル類など)など]、糖類又はその誘導体[例えば、単糖類(例えば、グルコースなど)、オリゴ糖、多糖類(例えば、デンプンなど)、糖アルコールなど]などが挙げられる。これらの乳化媒体は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0035】
なお、乳化媒体(B)は、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)との混練温度において、有機固体成分(特に、樹脂)と溶融混練するという観点から、溶融混練に適した比較的高い粘度を有するのが好ましい。なお、乳化媒体が溶融混練に適した溶融粘度を有しているかどうかは、溶融混練を行う温度における乳化媒体のせん断粘度を目安にしてもよく、例えば、溶融混練において妥当なせん断速度範囲(例えば、10〜1000Pa・sec程度)から任意のせん断速度を選択し、前記溶融温度、せん断速度におけるせん断粘度を、回転式レオメーターやキャピラリーレオメーターなどを用いて測定した測定値を目安にしてもよい。
【0036】
ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)
具体的には、前記乳化媒体は、前記組成物の溶融混練温度において、せん断速度126sec-1で測定したせん断粘度ηBが、例えば、0.5Pa・sec以上、好ましくは1Pa・sec以上、さらに好ましくは1.5Pa・sec以上であってもよい。せん断粘度が小さすぎる場合は、混練時に混練のせん断が系全体に伝わらず、分散相である樹脂相を粒子化することが困難になる。乳化媒体のせん断粘度の上限については特に制限はないが、一般的に溶融混練に用いる装置の混練力の上限などに鑑みて、通常は、50kPa・sec以下、好ましくは10kPa・sec以下、さらに好ましくは7kPa・sec以下、特に5kPa・sec以下である。通常、前記せん断粘度ηBは、例えば、0.5〜1000Pa・sec、好ましくは0.8〜600Pa・sec(例えば、1〜500Pa・sec)、さらに好ましくは1.2〜400Pa・sec(例えば、1.5〜350Pa・sec)、特に1.5〜300Pa・sec(例えば、1.6〜200Pa・sec)程度であってもよい。
【0037】
このような溶融粘度特性を有する水溶性乳化媒体(B)を用いると、乳化媒体(B)の分離を防止しつつ樹脂成分などのポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)との組成物を均一に溶融混練可能であり、前記ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)を効率よく粒子状に形成できる。また、押出機やニーダーなどの汎用的な樹脂加工装置を用いて成形しやすくなる。さらに、成形装置において、ベント部やフィードブロック、ダイスなどの継ぎ目部から水溶性乳化媒体(B)が流出することがなく、スクリューの空転を防止しつつ、混練力を前記組成物に有効に作用させることができる。
【0038】
上記を満たす、水溶性の乳化媒体としては、例えば、オリゴ糖(又はその組成物)などが挙げられる。オリゴ糖は、溶融状態では分子間の水素結合の作用により、上記のような高い粘度を有しているため、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)との混練に好適な高い粘度を発揮することができる。
【0039】
そのため、前記乳化媒体は、少なくともオリゴ糖(B1)で構成してもよい。また、オリゴ糖の熱溶融特性を調整するため、乳化媒体は、さらに前記オリゴ糖を可塑化するための可塑化成分(B2)を含んでいてもよい。オリゴ糖(B1)と水溶性可塑化成分(B2)とを組み合わせると、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)との混練において、水溶性の乳化媒体(B)の粘度を調整できる。なお、水溶性乳化媒体は、有機固体成分と組み合わせて分散体を形成した後、適宜溶出又は洗浄することにより有機固体粒子(樹脂粒子など)を形成できる。 そのため、前記乳化媒体は、少なくともオリゴ糖(B1)で構成してもよい。また、オリゴ糖の熱溶融特性を調整するため、乳化媒体は、さらに前記オリゴ糖を可塑化するための可塑化成分(B2)を含んでいてもよい。オリゴ糖(B1)と水溶性可塑化成分(B2)とを組み合わせると、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)との混練において、水溶性の乳化媒体(B)の粘度を調整できる。なお、水溶性乳化媒体は、有機固体成分と組み合わせて分散体を形成した後、適宜溶出又は洗浄することにより有機固体粒子(樹脂粒子など)を形成できる。
【0040】
(B1)オリゴ糖 オリゴ糖(B1)は、2〜10分子の単糖類が、グリコシド結合を介して脱水縮合したホモオリゴ糖と、少なくとも2種類以上の単糖類及び/又は糖アルコールが、2〜10分子グリコシド結合を介して脱水縮合したヘテロオリゴ糖とに大別される。オリゴ糖(B1)としては、例えば、二糖類〜十糖類が挙げられ、通常、二糖類〜六糖類のオリゴ糖が使用される。オリゴ糖は、通常、常温で固体である。なお、これらのオリゴ糖は、無水物でもよい。また、オリゴ糖において、単糖類と糖アルコールとが結合していてもよい。なお、オリゴ糖は複数の糖成分で構成されたオリゴ糖組成物であってもよい。このようなオリゴ糖組成物であっても単にオリゴ糖という場合がある。オリゴ糖(又はオリゴ糖組成物)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0041】
二糖類としては、トレハロース(例えば、α,α−トレハロース、β,β−トレハロース、α,β−トレハロースなど)、コージービオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオースなどのホモオリゴ糖;ラクトース、スクロース、パラチノース、メリビオース、ルチノース、プリメベロース、ツラノースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
【0042】
三糖類としては、マルトトリオース、イソマルトトリオース、パノース、セロトリオースなどのホモオリゴ糖;マンニノトリオース、ソラトリオース、メレジトース、プランテオース、ゲンチアノース、ウンベリフェロース、ラクトスクロース、ラフィノースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
【0043】
四糖類としては、マルトテトラオース、イソマルトテトラオースなどのホモオリゴ糖;スタキオース、セロテトラオース、スコロドース、リキノース、パノースの還元末端に糖又は糖アルコールが結合したテトラオースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
これらの四糖類のうち、パノースの還元末端に単糖類又は糖アルコールが結合したテトラオースは、例えば、特開平10−215892号公報に開示されており、パノースの還元末端に、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、アラビノースなどの単糖類や、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールなどの糖アルコールが結合したテトラオースが例示できる。
【0044】
五糖類としては、マルトペンタオース、イソマルトペンタオースなどのホモオリゴ糖;パノースの還元末端に二糖類が結合したペンタオースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。パノースの還元末端に二糖類が結合したペンタオースは、例えば、特開平10−215892号公報に開示されており、パノースの還元末端に、スクロース、ラクトース、セロビオース、トレハロースなどの二糖類が結合したペンタオースが例示できる。
【0045】
六糖類としては、マルトヘキサオース、イソマルトヘキサオースなどのホモオリゴ糖などが挙げられる。
【0046】
オリゴ糖は、有機固体成分との溶融混練性の観点から、少なくとも四糖類で構成されているのが好ましい。
オリゴ糖は、多糖類の分解により生成するオリゴ糖組成物であってもよい。オリゴ糖組成物は、通常、四糖類を含んでいる。オリゴ糖組成物としては、例えば、デンプン糖(デンプン糖化物)、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、フルクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖などが挙げられる。
【0047】
例えば、デンプン糖は、デンプンに酸又はグルコアミラーゼなどを作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、複数個のグルコースが結合したオリゴ糖の混合物であってもよい。デンプン糖としては、例えば、東和化成工業(株)製の還元デンプン糖化物(商品名:PO−10、四糖類の含有量90重量%以上)などが挙げられる。
【0048】
ガラクトオリゴ糖は、ラクトースにβ−ガラクトシダーゼなどを作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、ガラクトシルラクトースとガラクトース−(グルコース)nの混合物(nは1〜4の整数)であってもよい。
【0049】
カップリングシュガーは、デンプンとスクロースにシクロデキストリン合成酵素(CGTase)を作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、(グルコース)n−スクロースの混合物(nは1〜4の整数)であってもよい。
【0050】
フルクトオリゴ糖(フラクトオリゴ糖)は、砂糖にフルクトフラノシダーゼを作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、スクロース−(フルクトース)nの混合物(nは1〜4の整数)であってもよい。
【0051】
これらのオリゴ糖組成物において、溶融混練での急激な粘度低下を防止するため、オリゴ糖組成物中の三糖類、四糖類(特に四糖類)の含有量は、例えば、60重量%以上(例えば、60〜100重量%程度)、好ましくは70重量%以上(例えば、70〜100重量%程度)、さらに好ましくは80重量%以上(例えば、80〜100重量%程度)、特に90重量%以上(例えば、90〜100重量%程度)であってもよい。
【0052】
オリゴ糖は還元型(マルトース型)であってもよく、非還元型(トレハロース型)であってもよいが、還元型のオリゴ糖は、耐熱性に優れるため好ましい。
【0053】
還元型のオリゴ糖としては、遊離のアルデヒド基又はケトン基を有し、還元性を示す糖であれば、特に限定されず、例えば、コージービオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、パラチノース、メリビオース、ルチノース、プリメベロース、ツラノースなどの二糖類;マルトトリオース、イソマルトトリオース、パノース、セロトリオース、マンニノトリオース、ソラトリオースなどの三糖類;マルトテトラオース、イソマルトテトラオース、セロテトラオース、リキノースなどの四糖類;マルトペンタオース、イソマルトペンタオースなどの五糖類;マルトヘキサオース、イソマルトヘキサオースなどの六糖類などが挙げられる。
【0054】
一般的に、前記オリゴ糖は、天然物である多糖類の誘導体あるいはそれらの還元によって製造される天然物由来の製造物であるため、環境への負荷を低減できる。
【0055】
混練により、効果的に有機固体成分と乳化媒体とを分散させるためには、オリゴ糖の粘度は高いのが望ましい。具体的には、B型粘度計を用いて温度25℃で測定したとき、オリゴ糖の50重量%水溶液の粘度は、1Pa・s以上(例えば、1〜500Pa・s程度)、好ましくは2Pa・s以上(例えば、2〜250Pa・s、特に3〜100Pa・s程度)、さらに好ましくは4Pa・s以上(例えば、4〜50Pa・s程度)、特に6Pa・s以上(例えば、6〜50Pa・s程度)であり、高粘度オリゴ糖を用いることが望ましい。
【0056】
また、オリゴ糖(B1)の融点又は軟化点は、有機固体成分(樹脂成分など)(A)の熱変形温度(例えば、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)の融点又は軟化点、JIS K 7206で規定されるビカット軟化点)より高いのが好ましい。なお、オリゴ糖の種類[例えば、還元デンプン糖化物などのデンプン糖など]によっては、融点又は軟化点を示さず、分解(熱分解)する場合がある。このような場合、分解温度をオリゴ糖(B1)の「融点又は軟化点」としてもよい。
【0057】
オリゴ糖(B1)の融点又は軟化点と、有機固体成分(樹脂成分など)(A)の熱変形温度との温度差は、例えば、1℃以上(例えば、1〜80℃程度)、好ましくは10℃以上(例えば、10〜70℃程度)、さらに好ましくは15℃以上(例えば、15〜60℃程度)である。オリゴ糖(B1)の融点又は軟化点は、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)の種類などに応じて、70〜300℃の範囲で選択でき、例えば、90〜290℃、好ましくは100〜280℃(例えば、110〜270℃)、さらに好ましくは120〜260℃(例えば、130〜260℃)程度であってもよい。なお、一般にオリゴ糖の無水物は、高い融点又は軟化点を示す。例えば、トレハロースの場合、二水化物の融点は97℃であるが、無水物の融点は203℃である。オリゴ糖の融点又は軟化点が有機固体成分(樹脂成分など)(A)の熱変形温度より高いと、溶融混練でのオリゴ糖の急激な粘度低下を防止できるだけでなく、オリゴ糖の熱劣化も抑制できる。
【0058】
(B2)水溶性可塑化成分 水溶性可塑化成分(B2)としては、オリゴ糖(B1)が水和して水飴状態となる現象を発現できるものであればよく、例えば、糖類、糖アルコールなどが使用できる。これらの可塑化成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0059】
(a)糖類 糖類としては、オリゴ糖(B1)を有効に可塑化するために、通常、単糖類及び/又は二糖類が使用される。これらの糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0060】
単糖類としては、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、オクトース、ノノース、デコースなどが挙げられる。これらの化合物は、アルドースやケトースであってもよく、ジアルドース(糖の誘導体であって炭素鎖両末端がアルデヒド基である化合物、例えば、テトラアセチルガラクトヘキソジアルドース、イドヘキソジアルドース、キシロペントドアルドース等)、複数のカルボニル基を有する単糖類(オソン、オノース等のアルドアルコケトース等)、メチル基を有する単糖類(アルトロメチロースなどのメチル糖等)、アシル基(特にアセチル基などのC2-4アシル基等)を有する単糖類(前記アルドースのアセチル体、例えば、アルデヒドグルコースペンタアセチル化合物などのアセチル体など)、カルボキシル基が導入された糖類(糖酸またはウロン酸等)、チオ糖、アミノ糖、デオキシ糖などであってもよい。
【0061】
このような単糖類の具体例としては、例えば、テトロース(エリトロース、トレオロース等)、ペントース(アラビノース、リボース、リキソース、デオキシリボース、キシロース等)、ヘキソース(アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、フコース、ラムノース、タロース、ガラクチュロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン等)などが例示できる。
【0062】
また、単糖類は、ヘミアセタール結合により環状構造を形成した環状異性体であってもよい。単糖類は、旋光性を有している必要はないが、D形、L形、DL形のいずれであってもよい。これらの単糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0063】
二糖類としては、オリゴ糖(B1)を可塑化できるものであれば、特に制限されず、例えば、前記二糖類のうち、低融点または低軟化点を有する二糖類(例えば、ゲンチオビオース、メリビオース、トレハロース(二水化物)など)、前記単糖類のホモ及びヘテロ二糖類に相当する二糖類(例えば、グルクロン酸とグルコースとがα−1,6グリコシド結合したグルクロノグルコースなどのアルドビオウロン酸など)が例示できる。
【0064】
糖類は、熱安定性に優れるため、還元糖が好ましく、そのような糖類としては、遊離の単糖類の他、前記二糖類のうち、低融点又は低軟化点の還元糖(例えば、ゲンチオビオース、メリビオースなど)が挙げられる。
【0065】
(b)糖アルコール 糖アルコールとしては、アルジトール(グリシトール)などの鎖状糖アルコールであってもよく、イノシットなどの環式糖アルコールであってもよいが、通常は、鎖状糖アルコールが使用される。これらの糖アルコールは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0066】
鎖状糖アルコールとしては、テトリトール(トレイトール、エリスリトールなど)、ペンチトール[ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール(アドニトール)、キシリトール、リキシトールなど]、ヘキシトール[ソルビトール、マンニトール、イジトール、グリトール、タリトール、ズルシトール(ガラクチトール)、アロズルシトール(アリトール)、アルスリトールなど]、ヘプチトール、オクチトール、ノニトール、デキトール、及びドデキトールなどが挙げられる。
【0067】
これらの糖アルコールのうち、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール及びマンニトールが好ましい。糖アルコールは、エリスリトール、ペンタエリスリトール、キシリトールから選択された少なくとも1つの糖アルコールを含む場合が多い。
【0068】
可塑化成分(B2)は、常温(例えば、15〜20℃程度)で液体(シロップ状)であってもよいが、取扱い性などの点から、通常、固体である場合が多い。乳化媒体(B)をオリゴ糖(B1)と可塑化成分(B2)とで構成すると、オリゴ糖(B1)が明瞭な融点や軟化点を示さない熱分解性オリゴ糖であっても、有効に可塑化又は軟化できる。
【0069】
可塑化成分(B2)の融点又は軟化点は、通常、有機固体成分(樹脂成分など)(A)の熱変形温度(例えば、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)の融点又は軟化点、JIS K 7206で規定されるビカット軟化点)以下である。なお、可塑化成分の中には、高融点(例えば200℃以上)を有するにも拘わらず、オリゴ糖と共存すると、実際の融点よりも低い温度で融解する物質が存在する。例えば、ペンタエリスリトールは、実際の融点(260℃)より低温(例えば160〜180℃程度)でオリゴ糖に対する可塑化効果を発揮するとともに、自身も融解状態となる。このような高融点の可塑化成分は、単独では有機固体成分(樹脂成分など)の熱変形温度において融解しないため利用できないが、オリゴ糖と組み合わせることによって有効に利用できる。なお、実際の融点より低温でオリゴ糖に対する可塑化効果を発揮する可塑化成分(例えば、ペンタエリスリトールなど)においては、オリゴ糖に対して可塑化効果を発揮する温度を、可塑化成分(B2)の「融点又は軟化点」としてもよい。
【0070】
乳化媒体(B)の融点又は軟化点は、有機固体成分(樹脂成分など)(A)の熱変形温度以上であってもよく、熱変形温度以下であってもよい。ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)及び乳化媒体(B)は、少なくとも混練温度(又は成形加工温度)において溶融又は軟化すればよい。例えば、乳化媒体(B)の融点又は軟化点と、有機固体成分(樹脂成分など)(A)の熱変形温度との温度差は、0〜100℃の範囲で選択してもよく、例えば、3〜80℃(例えば3〜55℃)、好ましくは5〜60℃(例えば、5〜45℃)、さらに好ましくは5〜40℃(例えば、10〜35℃)程度であってもよい。なお、乳化媒体(B)の融点又は軟化点と、有機固体成分(樹脂成分など)(A)の熱変形温度との温度差が小さい場合(例えば前記温度差が0〜20℃程度である場合)、固化速度の高い乳化媒体(B)(例えば、糖成分)により短時間で分散形態を固定化できるという利点がある。
【0071】
乳化媒体(B)において、可塑化成分(B2)の割合(重量比)は、溶融混練に伴って、可塑化成分が凝集などにより局在化せず、オリゴ糖(B1)を効率的に可塑化できる量、例えば、オリゴ糖(B1)/可塑化成分(B2)=99/1〜30/70(例えば、99/1〜40/60)から選択でき、好ましくは95/5〜45/55、さらに好ましくは90/10〜50/50程度である。なお、溶融混練温度(加工温度)に応じて、オリゴ糖(B1)と可塑化成分(B2)との割合を適宜調整することにより、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)と乳化媒体(B)との混練の効率をコントロールしてもよい。例えば、比較的低温(例えば、90〜180℃程度)で溶融混練する場合などには、可塑化成分の割合を大きくすると、成分(A)及び(B)を効率よく混練することもできる。
なお、前記組成物における乳化媒体(B)のせん断粘度ηBは、有機固体成分の種類に応じて適宜選択でき、温度190℃及びせん断速度126sec-1の条件で測定したとき、例えば、0.5〜1000Pa・sec、好ましくは0.8〜600Pa・sec、さらに好ましくは1〜500Pa・sec(例えば、1.2〜400Pa・sec)、特に1.5〜300Pa・sec(例えば、1.6〜200Pa・sec)程度であってもよい。
【0072】
また、乳化媒体(B)は、B型粘度計で測定した10重量%水溶液の粘度が25℃で10mPa・sec以下(例えば、2〜10mPa・sec程度)、好ましくは7mPa・sec以下(例えば、2〜7mPa・sec程度)、さらに好ましくは5mPa・sec以下(例えば、2〜5mPa・sec程度)であり、通常、3〜7mPa・sec程度である。このように水溶性乳化媒体(B)の水溶液粘度が小さいため、水による溶出操作により、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)で構成された粒子との分離効率(又は濾過効率)を大きく向上できる。そのため、水溶性高分子を溶出する方法と異なり、水溶液の粘度を低減でき、遠心分離においては、回転数を増大させることなく短時間内にポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)で構成された粒子を分離でき、濾過分離においては、低圧かつ短時間内にポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)で構成された粒子を分離できる。そのため、エネルギー的に有利であるとともにポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)で構成された粒子の生産性を向上できる。
【0073】
このような水溶性乳化媒体(B)は、溶融粘度が高いにも拘わらず、水に対する溶解性が高く、しかも水溶液粘度が低い。しかも、樹脂成分などのポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)と溶融混練して、射出成形、押出成形などの種々の方法で、溶融成形可能である。
【0074】
ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)と乳化媒体(B)との割合(重量比)は、有機固体成分及び乳化媒体の種類や粘度、有機固体成分と乳化媒体との相溶性などに応じて選択でき、特に制限されないが、通常、成形性を損なわない割合、例えば、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)/乳化媒体(B)=55/45〜1/99、好ましくは50/50〜5/95、さらに好ましくは45/55〜10/90程度である。特に、サイズの大きな粒子を得る場合、分散相(又は粒子)中に取り込まれる乳化媒体の量を高いレベルで抑制又は防止するために、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)/乳化媒体(B)=35/65〜1/99、好ましくは30/70〜5/95、さらに好ましくは28/72〜10/90程度であってもよい。特にポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)の割合を比較的小さくすることにより、溶融時に分散相(有機固体成分)に取り込まれる乳化媒体の量を効率よく低減できる。なお、有機固体成分の比率が大きすぎると、粒子径分布が広がると共に、分散相(樹脂粒子)内部に乳化媒体が侵入しやすくなるため、コンタミネーションの原因となる虞がある。一方、有機固体成分の比率が低すぎると、経済的にデメリットとなる。
【0075】
本発明において、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)と乳化媒体(B)とは、通常、互いに異なる表面張力を有している。特に、乳化媒体(B)は、少なくともオリゴ糖(B1)や水溶性可塑化成分(B2)を含むため、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)に比べて、通常、表面張力が小さい。このように、本発明では、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)と乳化媒体(B)との表面張力の差又は比を大きくでき、分散相を表面張力の大きな有機固体成分で構成するため、分散相(又は有機固体粒子)の形状を効率よく球状にすることができる。
【0076】
ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)の表面張力と、乳化媒体(B)の表面張力との相違は、例えば、両者の水との接触角の比で表すことができる。25℃において、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)の水との接触角θAと、乳化媒体(B)の水との接触角θBとの比(θA/θB)が2以上(例えば、θA/θB=2/1〜10/1程度)、好ましくは2.5以上(例えば、θA/θB=2.5/1〜9/1程度)、さらに好ましくは3以上(例えば、θA/θB=3/1〜8/1程度)であってもよい。なお、接触角とは、室温(25℃)で有機固体成分や乳化媒体の表面上に水滴を置き、水滴の広がりが停止したときの水滴の表面と有機固体成分(又は乳化媒体)の表面との交点において、水滴に対する接線と有機固体成分(又は乳化媒体)の表面との間に形成される角のうち、水滴側の角度を指す。
【0077】
ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)の接触角θAは、例えば、40〜110°、好ましくは50〜105°、さらに好ましくは60〜105°程度であってもよい。また、乳化媒体(B)の接触角θBは、例えば、10〜25°、好ましくは10〜20°(例えば、12〜20°)、さらに好ましくは15〜20°程度であってもよい。
【0078】
本発明において、前記組成物(又は分散体)には、必要に応じて、種々の添加剤、例えば、フィラー[例えば、粉粒状フィラー又は補強剤(マイカ、クレー、タルク、ケイ酸類、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、フェライトなど)、繊維状フィラー又は補強剤(レーヨン、ナイロン、ビニロン、アラミドなどの有機繊維、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、ホイスカーなどの無機繊維)など]、可塑剤又は軟化剤、光分解性付与剤(アナターゼ型酸化チタンなど)、滑剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候(光)安定剤など)、紫外線散乱剤(酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物の粉末など)、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤[油溶性有機染料などの染料;無機又は有機顔料(例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属(粉末);マグネタイト、フェライトなどの強磁性合金(粉末);磁性酸化鉄などの強磁性金属酸化物(粉末)などの強磁性材料も含む)など]、電荷制御剤(ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、アミン系化合物などの正荷電制御剤;サリチル酸金属錯体、アゾ染料金属錯体、銅フタロシアニン染料、ニトロイミダゾール誘導体、尿素誘導体などの負電荷制御剤など)、流動化剤、ワックス類[ポリエチレンワックス、エチレン共重合体ワックス、ポリプロピレンワックスなどのオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;高級脂肪酸又はその誘導体(塩、多価アルコールエステル、アミド(高級脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどのアルキレンビス高級脂肪酸アミド、ステアロアミドエチルステアレートなどのN−(C2-6アルキル−C16-34アルカンカルボン酸エステル)C16-34アルカンカルボン酸アミドなどのエステルアミド類など)など;エステル系ワックスなど]、架橋剤、結晶核剤、抗菌剤、防腐剤などの他の添加剤を含んでいてもよい。なお、分散体においては、添加剤は、分散体を構成する分散相及びマトリックスのいずれに含有させてもよい。また、前記添加剤としては、通常、前記有機固体成分と異なる成分が使用できる。
【0079】
前記添加剤は、得られる粒子の用途などに応じて選択でき、例えば、化粧品(ファンデーション、白粉、頬紅など)などの用途では、着色剤、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系吸収剤、ケイ皮酸系吸収剤、p−アミノ安息香酸系吸収剤、サリチル酸系吸収剤、ジベンゾイルメタン系吸収剤、ウロカニン酸又はそのエステル、β−イソプロピルフラノン、β−カロチンなど)、前記紫外線散乱剤などを使用してもよい。トナーなどの画像記録材料用途では、例えば、着色剤、電荷制御剤、流動化剤、ワックス類などを用いてもよい。また、塗料などの用途では、例えば、着色剤、架橋剤、耐候(光)安定剤、紫外線吸収剤、流動化剤などを使用してもよい。また、粒子を成形材料として用いる場合は、フィラー類や耐候(光)安定剤、紫外線吸収剤、流動化剤あるいは着色剤を用いてもよい。
【0080】
これらの添加剤は、それぞれ有効量であればよく、例えば、有機固体成分(樹脂など)100重量部に対して、添加剤の総量は、0〜100重量部程度の範囲から選択でき、例えば、0〜50重量部(例えば、0〜30重量部)、好ましくは0.05〜20重量部(例えば、0.1〜20重量部)、さらに好ましくは0.1〜10重量部(例えば、0.5〜10重量部)程度であってもよい。
【0081】
[分散体] 本発明の分散体では、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)で構成された粒子状の分散相が、水溶性の乳化媒体(B)で構成されたマトリックスに分散している。
【0082】
本発明の分散体において、分散相の平均粒子径は、特に制限されず、用途に応じて0.05μm〜10mm程度の範囲から選択でき、0.1〜5000μm、好ましくは1〜1500μm、さらに好ましくは5〜1000μm程度であってもよい。特に、本発明では、比較的大粒径の粒子であっても安定して得ることができ、例えば、分散相の平均粒子径(体積平均粒子径など)は、10μm以上(例えば、12μm〜5mm程度)の範囲から選択でき、例えば、15μm以上(例えば、18〜2000μm程度)、好ましくは20μm以上(例えば、20〜1000μm程度)、さらに好ましくは25〜800μm(例えば、25〜700μm)、特に30〜600μm(例えば、30〜500μm)、通常30〜400μm(例えば、30〜300μm)程度であってもよい。
【0083】
[分散体および有機固体粒子の製造方法並びに有機固体粒子] 本発明の分散体は、粒状分散相を構成するポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)と、マトリックスを構成する水溶性の乳化媒体(B)とを混練(溶融混練)することにより得られる。そして、本発明の有機固体粒子は、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)で構成された粒子であり、このようにして生成した分散体から、水溶性の乳化媒体(B)を溶出させることにより得られる。
【0084】
混練は、慣用の混練機(例えば、単軸もしくは二軸スクリュー押出機、ニーダー、カレンダーロールなど)を用いて行なうことができる。また混練に先立ち、各成分は、予め凍結粉砕機などで粉体状に予備加工したり、ヘンシェルミキサー、タンブルミキサー、ボールミルなどで予備混練してもよい。
【0085】
水溶性乳化媒体は、混練物(溶融混練物)から溶出させてもよく、混練した組成物を、成形し、得られた予備成形体から溶出させてもよい。予備成形体の成形法としては、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、カレンダー成形などが挙げられ、通常、生産性や加工の容易さの点から、押出成形又は射出成形が使用される。
【0086】
予備成形体(又は分散体)の形状は、特に制限されず、0次元的形状(粒状、ペレット状など)、1次元的形状(ストランド状、棒状など)、2次元的形状(板状、シート状、フィルム状など)、3次元的形状(管状、ブロック状など)などであってもよい。乳化媒体の溶出性を考慮すると、ストランド状、棒状、シート状、又はフィルム状に加工することが望ましい。
【0087】
なお、混練温度や成形加工温度は、使用される原材料(例えば、有機固体成分及び乳化媒体)に応じて適宜設定することが可能であり、例えば、90〜300℃、好ましくは110〜260℃(例えば、170〜250℃)、さらに好ましくは140〜240℃(例えば、170〜240℃)、特に170〜230℃(例えば、180〜220℃)程度である。乳化媒体(例えば、オリゴ糖および可塑化成分)の熱分解を避けるため、混練温度や成形加工温度を230℃以下にしてもよい。また、混練時間は、例えば、10秒〜1時間の範囲から選択してもよく、通常30秒〜45分、好ましくは1〜30分(例えば、1〜10分)程度である。
【0088】
混練及び/又は成形加工により得られた溶融物(例えば、混練物、予備成形体)は、必要により適宜冷却してもよい。このように、溶融物を冷却することにより、溶融状態において、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)と、乳化媒体(B)とが相溶であっても、冷却に伴って、表面張力、結晶化などの固化速度の相違などにより分散相を形成でき、分散体を得ることもできる。
【0089】
冷却温度は、有機固体成分(樹脂成分など)(A)の熱変形温度、又は乳化媒体(B)の融点若しくは軟化点よりも少なくとも10℃程度低い温度であればよく、例えば、上記温度(有機固体成分(樹脂成分など)の熱変形温度、又は乳化媒体の融点若しくは軟化点)より10〜100℃程度低い温度、好ましくは前記温度より15〜80℃程度低い温度、さらに好ましくは前記温度より20〜60℃程度低い温度であってもよい。具体的には、例えば、冷却温度は、有機固体成分又は乳化媒体の種類に応じて5〜150℃の範囲から選択でき、例えば、10〜120℃(例えば、10〜60℃)、好ましくは15〜100℃(例えば、15〜50℃)、さらに好ましくは20〜80℃(例えば、20〜40℃)程度であってもよい。冷却時間は、有機固体成分や乳化媒体の種類、冷却温度等に応じて適宜設定でき、例えば、10秒〜20時間の広い範囲から選択してもよく、例えば、20秒〜5時間、好ましくは30秒〜2時間(例えば、30秒〜30分)、さらに好ましくは30秒〜10分程度であってもよい。
【0090】
また、有機固体成分と乳化媒体との相溶性、混練条件(例えば、混練時間、混練温度など)、成形加工温度並びに冷却条件(例えば、冷却時間、冷却温度など)を調整することにより、粒子の平均粒子径を変化させたり、粒度分布幅を狭めることもできる。
このようにして得られた分散体は、乳化媒体(B)が、海島構造における連続相を形成すると共に、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)で構成された分散相が独立した分散相を形成した相分離構造を有しており、乳化媒体を速やかに溶出又は抽出でき、前記分散相(樹脂相などの有機固体相)を粒子として得ることができる。
【0091】
水溶性乳化媒体(B)の溶出(又は洗浄)は、水性溶媒、例えば、水、水溶性溶媒(例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、エーテル類(セロソルブ、ブチルセロソルブなど)など)などを用いることにより行うことができる。これらの水性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。環境への負荷が少なく、工業コストを低減できるため、溶出溶媒として水を用いるのが好ましい。
【0092】
乳化媒体(B)の溶出は、慣用の方法、例えば、前記分散体(又は予備成形体)を、前記水性媒体中に浸漬、分散して、乳化媒体を溶出または洗浄(水性溶媒に移行)することに行うことができる。前記分散体(又は予備成形体)を水性媒体中に浸漬すると、分散体のマトリックスを形成する水溶性乳化媒体が徐々に溶出し、分散相(粒子)が、溶出液中に分散される。乳化媒体の分散及び溶出を促進するため、適宜、撹拌などを行ってもよい。
【0093】
乳化媒体は、例えば、加圧下において、溶出させてもよいが、通常、常圧下(例えば、10万Pa程度)又は減圧下において溶出できる。また、乳化媒体の溶出温度は、有機固体成分及び乳化媒体に応じて、適宜設定することができ、通常、有機固体成分の融点又は軟化点未満の温度、例えば、10〜100℃、好ましくは25〜90℃、さらに好ましくは30〜80℃(例えば、40〜80℃)程度である。前記水溶性乳化媒体は、水に易溶であるため、大量の水を必要としない。また、乳化媒体は、前記のように、通常、低分子量であるため、得られる溶出液の粘度も低く、容易に回収できる。
【0094】
有機固体粒子は、慣用の分離(回収)方法、例えば、濾過、遠心分離などを用いて前記粒子が分散された分散液から回収できる。特に、オリゴ糖などの乳化媒体の溶出により得られる溶出液は、粘度が低いため、溶出液と有機固体粒子とを容易に分離でき、有機固体粒子の回収も容易である。溶出液の粘度が高すぎると、例えば、遠心分離により有機固体粒子を分離する場合、高速回転させたり、回転時間を長くする必要が生じる虞がある。また、ろ過による分離では、高圧でろ過する必要が生じたり、ろ過時間が長くなる虞があり、エネルギー負荷、生産速度の点で不利となる虞がある。溶出液の粘度を低下させるためには、大量の水を用いて溶出する必要が生じる。
【0095】
以上のようにして得られた有機固体粒子の形状、平均粒子径は、前記分散相と同様の範囲から選択できる。また、有機固体粒子の長径と短径との比も前記分散相と同様の範囲から選択できる。なお、有機固体粒子の形状やサイズは、前記溶出溶媒(水性溶媒)にポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)が溶出しない限り、前記分散相の形状やサイズがそのまま維持される。なお、有機固体粒子は、必要に応じて、分級などの手段により、粒子サイズを揃えてもよい。
【0096】
本発明の粒子は、溶融混練法を経て得られ、しかも、比較的大きい粒子径(例えば、平均粒子径10μm以上)を有しているにもかかわらず、有機固体粒子に取り込まれる乳化媒体の量(すなわち、コンタミネーション)が少ない。例えば、前記粒子(有機固体粒子)の断面積全体に対する乳化媒体の断面積の割合は、有機固体成分の種類に応じて、10%以下(例えば、0〜9%程度)の範囲から選択でき、例えば、7%以下(例えば、0.001〜6%程度)、好ましくは5%以下(例えば、0.003〜3%程度)、さらに好ましくは1%以下(例えば、0.005〜0.5%程度)、さらに好ましくは0.1%以下(例えば、0.008〜0.08%程度)、特に0.05%以下(例えば、0.01〜0.04%程度)である。特に、本発明では、水溶性の乳化媒体に対して比較的親和性が高い有機固体成分[例えば、ポリアミド系樹脂などの極性基(又は親水性基)を有している樹脂など]であっても、上記のような範囲で粒子に取り込まれる乳化媒体の量を著しく低減できる。
【0097】
なお、得られた有機固体粒子(粒子の表面及び内部)には、乳化媒体が実質的に残留していないことが望ましいが、例えば、洗浄過程のコスト削減などの点から、乳化媒体が有機固体粒子に少量含まれていても、乳化媒体が天然物由来の化合物(食品又は食品添加物なども含む)であるため、得られた粒子に与える悪影響は小さく、安全性も高い。なお、有機固体粒子における乳化媒体(B)の割合は、例えば、3重量%以下(例えば0〜3重量%程度)、好ましくは1重量%以下(例えば、0〜1重量%程度)、さらに好ましくは0.5重量%以下(例えば、0.001〜0.5重量%程度)であってもよい。
【0098】
特に、分散体のマトリックスを、前記オリゴ糖などの溶出性の高い水溶性乳化媒体で構成するとともに、有機固体成分に対して親和性の低い乳化媒体を用いると、有機固体粒子における乳化媒体(B)の含有量を低減できる。例えば、有機固体粒子における乳化媒体(B)の割合は、例えば、粒子全体に対して0.1重量%以下(例えば、0.001〜0.1重量%程度)、好ましくは0.05重量%以下(例えば、0.001〜0.05重量%程度)、さらに好ましくは0.01重量%以下(例えば、0.001〜0.1重量%程度)であってもよい。
【0099】
また、有機固体粒子における乳化媒体(B)の含有量は、有機固体粒子を、水性媒体(水など)により洗浄することにより低減させることもできる。例えば、前記乳化媒体(B)の含有量は、重量基準で、10,000ppm以下(例えば、0.1〜10,000ppm程度)、好ましくは3,000ppm以下(例えば、0.5〜3,000ppm程度)、さらに好ましくは1,000ppm以下(例えば、1〜1,000ppm程度)、さらに好ましくは300ppm以下(例えば、1〜300ppm程度)に低減させることもできる。
【0100】
なお、溶媒で溶出又は抽出された乳化媒体は、慣用の分離手段(例えば、蒸留、濃縮、再結晶、乾燥(フリーズドライ)など)を用いて回収できる。そして、回収した乳化媒体は、再生して再び粒子製造プロセスに用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明では、比較的大粒径の球状粒子を効率よく得ることができる。このような本発明の粒子(着色樹脂粒子など)は、研磨剤や、造型加工(例えば、レーザー造形)用の原料素材、化粧品などの用途において利用できる。特に、着色剤、フィラーなどの添加剤を加えた樹脂粒子は、造型加工等二次加工用の素材に用いることができる。
【実施例】
【0102】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0103】
実施例1〜3および比較例1 表2に示す組成および混練温度で、樹脂と乳化媒体を含む樹脂組成物を、ヘンシェルミキサーを用いて予備混合した後、ブラベンダー(東洋精機(株)製、ラボプラストミル)により回転速度50rpm、10分間溶融混練した後、冷却して分散体を得た。
得られた分散体を25℃の純水中に浸漬し、樹脂粒子の懸濁液を得た。メンブレン膜(孔径0.45μm、ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁液から不溶分を濾別し樹脂の微粒子を回収した。回収した微粒子を、微粒子に対し重量比で20倍の蒸留水中に分散し、超音波槽において5分間超音波処理し懸濁液を得た。その後、再びメンブレン膜(孔径0.45μm、ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁液から不溶分を濾別し樹脂粒子を回収した。
回収した樹脂粒子を、熱風乾燥機中に静置して、45℃で8時間乾燥し、その後、メノウ乳鉢とすり棒を用いて目視上凝集部分がなくなるまで粉砕した。なお、実施例及び比較例では下記の成分を用いた。
【0104】
(A)樹脂
樹脂1:ポリアミド系樹脂(ダイセル・デグサ(株)製、VM251共重合、相対粘度1.5、融点125℃)
樹脂2:エコフレックス(ECOFLEX;登録商標):ECOFLEX F BX 7011,BASFジャパン(株)
(B)乳化媒体
(B1)オリゴ糖:デンプン糖(東和化成工業(株)製、還元デンプン糖化物PO−10)
(B2)水溶性可塑化成分:糖アルコール ソルビトール(東和化成工業(株)製、ソルビット)。
【0105】
樹脂、乳化媒体や樹脂粒子などの特性は以下のようにして測定した。
[粒子の外観および平均粒子径]
得られた粒子を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、FE−SEM、JSM−6700F)により観察し、表面形状及び全体形状の写真を得た。得られた走査型電子顕微鏡写真を用い、写真上に少なくとも200個の粒子が含まれるように任意のサイズの長方形を描き、その長方形内に存在する全粒子の真球換算の粒子径を算出した。得られた少なくとも200個の粒子径より、体積平均粒子径を得た。
【0106】
[粒子の断面観察、粒子断面に占める乳化媒体の面積]
得られた樹脂粒子をエポキシ樹脂系化学反応型接着剤(コニシ(株)製、ボンドクイック5)と混合して、前期樹脂粒子が分散した塊状物を作成し、マイクロトームにより厚さ約0.05〜0.2μmの超箔切片に切り出した後、断面中に乳化媒体が存在する場合には乳化媒体が除去されるよう、水上に切片を曝した後、回収してサンプルを得た。透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、TEM、JEM−1200EXII)を用いて、断面形状の電子顕微鏡写真を得た。得られた断面写真を用い、無作為に20個の粒子を選択し、各粒子の断面において乳化媒体の抽出により生じた空白部分の合計面積を測定した後、全20個の粒子の断面積の合計及び前記空白部分の面積の合計により、粒子断面に占める乳化媒体の面積比率を計算した。この面積比率が、1%未満であれば◎、1%以上10%未満であれば○、10%以上20%未満であれば△、20%以上であれば×と評価し、基準◎、○を合格とした。
【0107】
[樹脂及び乳化媒体のせん断粘度]
キャピラリーレオメーター(東洋精機(株)製、キャピログラフ)を用い、内径1mm、長さ40mmのキャピラリーを用いて、樹脂組成物において、せん断速度126sec-1における混錬温度である190℃での樹脂(A)のせん断粘度ηA及び乳化媒体(B)のせん断粘度ηBをそれぞれ測定した。
【0108】
[粒子の体積弾性率]
上記の実施例で得られた軟質樹脂粒子の体積弾性率は下記の通りの操作で測定した。まず樹脂粒子を圧力60MPaで圧縮成形してタブレット(厚み3mm×25mmφ)を成型した。このタブレットを万能引張り試験機の圧縮モードで、圧縮速度1mm/分で圧縮してせん断変形させ、荷重と圧縮量との関係に基づいて弾性変形領域での体積弾性率を算出した。
【0109】
【表1】

表1から明らかなように、樹脂の粘度と乳化媒体の粘度の比が大きい組み合わせを選択すると粒径が大きな粒子が得られ、乳化媒体の量に対する樹脂の量を少なくすると得られた樹脂粒子中に取り込まれた乳化媒体の量が減少する。
更に、樹脂粒子径を大きくすることで同一の軟質樹脂から得られた微粒子であっても体積弾性率を低くすることができる。また、共重合ポリエステル樹脂から得られた微粒子は体積弾性率が驚くほど低くかつ、体積平均粒子径も20μmを超えるものが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質樹脂から選択された成分(A)と、水溶性の乳化媒体(B)とで構成された組成物であって、この組成物の溶融混練温度において、せん断速度126sec-1で測定した有機固体成分(A)のせん断粘度ηAと乳化媒体(B)のせん断粘度ηBとの比ηA/ηBが5/1以上である組成物。
【請求項2】
軟質樹脂から選択された成分(A)がポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分であり、かつηBが1Pa・sec以上である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
軟質樹脂から選択された成分(A)がポリエステル共重合体である請求項2記載の組成物。
【請求項4】
軟質樹脂から選択された成分(A)がポリアミド共重合体で構成されている請求項2記載の組成物。
【請求項5】
乳化媒体(B)が、オリゴ糖(B1)とこのオリゴ糖(B1)を可塑化するための水溶性可塑化成分(B2)とで構成されている請求項1記載の組成物。
【請求項6】
可塑化成分(B2)が、糖類及び糖アルコールから選択された少なくとも一種で構成されている請求項5記載の組成物
【請求項7】
オリゴ糖(B1)と可塑化成分(B2)との割合(重量比)が、オリゴ糖(B1)/可塑化成分(B2)=99/1〜40/60である請求項6記載の組成物。
【請求項8】
ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)と乳化媒体(B)との割合が、前者/後者(重量比)=35/65〜1/99である請求項1記載の組成物。
【請求項9】
ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)が樹脂成分であり、乳化媒体(B)がオリゴ糖(B1)と糖類及び糖アルコールから選択された少なくとも一種の水溶性可塑化成分(B2)とで構成されており、ηA/ηBが15/1以上であり、ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)と乳化媒体(B)との割合が、前者/後者(重量比)=28/72〜10/90である請求項1記載の組成物。
【請求項10】
ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)で構成された粒子状の分散相が、水溶性の乳化媒体(B)で構成されたマトリックスに分散している分散体であって、前記ポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)と前記乳化媒体(B)とで構成された組成物の溶融混練温度において、せん断速度126sec-1で測定したポリアミド及び共重合ポリエステル樹脂などの軟質樹脂から選択された成分(A)のせん断粘度ηAと乳化媒体(B)のせん断粘度ηBとの比ηA/ηBが5/1以上である分散体。
【請求項11】
分散相が平均粒子径20μm以上であり、かつ長径と短径との長さ比(長径/短径)=1.5/1〜1/1を有する球状分散相である請求項11記載の分散体。
【請求項12】
請求項13記載の製造方法により得られるであり、得られた粒子の体積弾性率が0.1MPa以上でかつ20MPa以下であり、粒子の体積平均粒子径が20μm以上の粒子。
【請求項13】
粒子の断面積全体に対する乳化媒体の断面積の割合が10%以下である請求項12記載の粒子。
【請求項14】
請求項13に記載された微粒子を用いるRPT成形法

【公開番号】特開2007−231038(P2007−231038A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50928(P2006−50928)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】