説明

転がり軸受

【課題】冷却性能を向上することができる転がり軸受を提供する。
【解決手段】複数の転動体3を保持手段5により環状の軌道輪2に沿って転動可能に所定の隙間をあけて保持する転がり軸受1において、転動体3又は保持手段5の少なくともいずれか一方は、金属又は樹脂の母相61に炭素繊維62が配置された炭素繊維複合材料6により形成され、炭素繊維62は、一端が転動体3の転動面3aと保持手段5とが接触可能な接触部51に設けられ、他端が転動面3aと保持手段5とが接触不能な放熱部52に設けられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受に関し、特に、複数の転動体が軌道輪に沿って転動自在に設けられる転がり軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の転がり軸受では、回転軸の外周面と外輪の内周面との間に潤滑油を介して複数の転動体を配置することで、この回転軸を回転自在に支持している。このような転がり軸受として、例えば、特許文献1には、外輪、転動体、保持器の表面全体にDLC(Diamond−Like−Carbon)層を形成することで、耐摩耗性や耐焼き付き性を向上させる転がり軸受が開示されている。また、他の構成の従来の転がり軸受として、例えば、特許文献2には、円周方向複数個所にニードルを保持自在なポケットが設けられたニードル用保持器であって、20〜45重量%の強化繊維を含有した合成樹脂により造られており、且つ、軸方向側面に凹溝が形成されているニードル用保持器を備えることで、十分な耐焼き付き性と耐摩耗性との確保を図ったニードル軸受が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−301225号公報
【特許文献2】特開2004−52796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された転がり軸受では、外輪、転動体、保持器の表面全体に硬度が非常に高いDLC層が形成されていることから、例えば、転動体と保持器同士が衝突し合い、非常に硬いもの同士が攻撃し合うことでお互いの摩耗を促進してしまい、結果的に、DLC層が早期に摩滅し、最終的には焼き付きに至るおそれがある。そして、外輪、転動体、保持器の表面全体にDLC層が形成されることで、このDLC層により断熱が促進され、摺動部分の温度上昇が大きくなってしまうおそれがある。すなわち、放熱性が悪化することで冷却性能が低下し、これにより、例えば、この摺動部分への潤滑油供給量が多量に必要になり、ひいては、転動体がこの潤滑油を引きずる量が増大することで、フリクションが増大してしまうおそれがあった。また、特許文献2に記載されたニードル軸受では、十分な耐焼き付き性と耐摩耗性との確保することを目的としているが、冷却性能の向上には言及されておらず、このニードル軸受での冷却性能を向上させることについては改善の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、冷却性能を向上することができる転がり軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明による転がり軸受は、複数の転動体を保持手段により環状の軌道輪に沿って転動可能に所定の隙間をあけて保持する転がり軸受において、前記転動体又は前記保持手段の少なくともいずれか一方は、金属又は樹脂の母相に炭素繊維が配置された炭素繊維複合材料により形成され、前記炭素繊維は、一端が前記転動体の転動面と前記保持手段とが接触可能な接触部に設けられ、他端が前記転動面と前記保持手段とが接触不能な放熱部に設けられることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明による転がり軸受では、前記接触部及び前記放熱部は、前記保持手段に設けられることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明による転がり軸受では、前記保持手段は、転動不能に設けられると共に隣接する前記転動体同士の前記軌道輪周方向に対する接触を規制するセパレート部と、周方向に対向する前記セパレート部により区画されると共に前記転動体を個別に収容する転動体収容部とを有し、前記炭素繊維の一端が設けられる前記接触部は、前記セパレート部において前記転動体収容部に面して設けられることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明による転がり軸受では、前記炭素繊維の他端が設けられる前記放熱部は、前記セパレート部において前記軌道輪の周方向に沿った面に設けられることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明による転がり軸受では、前記軌道輪は、前記転動体が転動可能な内側軌道面と、該内側軌道面の径方向外方に設けられ前記転動体が転動可能な外側軌道面とを有し、前記炭素繊維の他端が設けられる前記放熱部は、少なくとも前記セパレート部において前記外側軌道面と対向する面に設けられることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明による転がり軸受では、前記保持手段は、前記軌道輪の周方向に沿って設けられる一対の環状部を有し、前記セパレート部は、該一対の環状部の間に軸線方向に沿って掛け渡されるように設けられ、前記炭素繊維の他端が設けられる前記放熱部は、前記環状部の軸線方向側面に設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明による転がり軸受では、前記接触部及び前記放熱部は、円柱状に形成される前記転動体に設けられることを特徴とする。
【0013】
請求項8に係る発明による転がり軸受では、前記転動体は、前記中心軸線方向中央部に設けられ前記軌道輪が形成する軌道面に接触可能な前記転動面と、前記中心軸線方向両端部に設けられ前記軌道面に接触不能なクラウニング部とを有し、前記炭素繊維の一端が設けられる前記接触部は、前記転動面に設けられる一方、前記炭素繊維の他端が設けられる前記放熱部は、前記転動体の前記中心軸線方向端面に設けられることを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項9に係る発明による転がり軸受は、環状の軌道輪に沿って転動可能であると共に、金属又は樹脂の母相に炭素繊維が配置された炭素繊維複合材料により円柱状に形成される複数の転動体を備え、前記炭素繊維は、両端がそれぞれ前記転動体の中心軸線方向両端面に設けられることを特徴とする。
【0015】
請求項10に係る発明による転がり軸受では、前記炭素繊維は、繊維の伸長方向が前記転動体の中心軸線方向に沿って設定されることを特徴とする。
【0016】
請求項11に係る発明による転がり軸受では、複数の前記転動体を前記軌道輪に沿って所定の隙間をあけて保持する保持手段を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項12に係る発明による転がり軸受では、前記炭素繊維は、繊維の伸長方向における熱伝導率が前記母相よりも高い炭素繊維であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る転がり軸受によれば、転動体の転動面又は保持手段を、母相に炭素繊維が配置された炭素繊維複合材料により形成し、この炭素繊維の配列を適正に設定することで、冷却性能を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明に係る転がり軸受の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の実施例1に係る軸受の径方向の部分断面図、図2は、本発明の実施例1に係る軸受の径方向の概略断面図、図3は、本発明の実施例1に係る軸受の切欠斜視図、図4は、本発明の実施例1に係る軸受の軸線方向の部分断面図、図5は、本発明の実施例1に係る軸受における回転軸回転速度と保持器温度との関係を示す線図である。
【0021】
図2、図3、図4に示すように、実施例1に係る転がり軸受としての軸受1は、環状の軌道輪2に沿って複数の転動体3を有する転動手段としての転動部4が転動自在に設けられ、例えば、内燃機関のカムシャフトやクランクシャフトなどの種々の回転軸を回転自在に支持するものである。以下、本実施例の軸受1は、内燃機関のカムシャフトを回転自在に支持する転がり軸受に適用するものとして説明するが、これに限らず、種々の装置の回転軸を支持する転がり軸受にも適用可能である。
【0022】
なお、以下の説明において特に断りのない限り、「軸受の軸線方向」とは軸受1が支持する回転軸の軸線方向をいい、「軸受の径方向」とは軸線方向と直交する方向をいい、「軸受の周方向」とは回転軸線を回転の中心として回転する方向をいう。
【0023】
軸受1は、シリンダヘッドに取り付けられたカムジャーナル等の支持部に対して相対移動しないように設けられ、内燃機関のカムシャフトの回転軸2gをこの支持部に回転自在に支持する。内燃機関のカムシャフトは、内燃機関の燃焼室を開閉する弁体としての吸気弁や排気弁を開閉駆動するためのもので、この回転軸2g周りに複数のカムを有している。そして、このカムシャフトは、内燃機関のピストンの往復運動に伴って回転可能なクランクシャフトとタイミングチェーン等を介して連動可能となっている。すなわち、カムシャフトは、クランクシャフトに同期して回転する。
【0024】
軸受1は、上述の環状の軌道輪2と、この軌道輪2に沿って転動可能な複数の転動体3を有する転動部4と、複数の転動体3を軌道輪2に沿って所定の隙間をあけて保持する保持手段としての保持器5を備える。
【0025】
軌道輪2は、内輪2aと、この内輪2aの外方に設けられる外輪2bとによって構成される。内輪2aは、円環状に形成され回転軸2gの外周面にこの回転軸2gと共に回転可能に設けられると共に、その中心軸線が回転軸2gの中心軸線と一致するように設けられる。この回転軸2gは、円柱状に形成され上述のカムシャフトの軸をなす。外輪2bは、カムジャーナル等の支持部に対して相対移動しないように設けられる。さらに、外輪2bは、円環状に形成されこの内輪2aの外周面に沿って設けられると共に、その中心軸線が内輪2aの中心軸線と一致するように設けられる。すなわち、内輪2a、外輪2b及び回転軸2gとは、同軸に設けられる。
【0026】
さらに具体的には、内輪2aは、その外周面に周方向に沿って内側軌道面2cが形成される一方、外輪2bは、その内周面に周方向に沿って外側軌道面2dが形成される。すなわち、外側軌道面2dは、内側軌道面2cの径方向外方に設けられる。そして、内輪2aと外輪2bとは、内側軌道面2cと外側軌道面2dとの間に環状空間を画成し、この環状空間に転動部4が設けられる。また、外側軌道面2dの軸線方向両側方には、径方向内方に突出するツバ2eが形成されている。言い換えれば、外側軌道面2dは、外輪2bの内周面に凹部状に形成されている。さらに、内側軌道面2cの軸線方向の一側方には、径方向外方に突出するツバ2fが形成されている。言い換えれば、内側軌道面2cは、内輪2aの外周面に凹部状に形成されている。
【0027】
転動部4は、複数の転動体3を有する。本実施例の各転動体3は、円筒状ころが用いられその外周面に転動面3aが形成される。複数の転動体3は、内側軌道面2cと外側軌道面2dとの間の環状空間に、その中心軸線(転動中心)の方向が軸受1の軸線方向と平行となるように設けられる。また、複数の転動体3は、この環状空間に保持器5により内側軌道面2c、外側軌道面2dの周方向に沿って所定間隔、ここでは等間隔で配置される。そして、各転動体3は、この保持器5によりその外周面としての転動面3aが内側軌道面2c、外側軌道面2dに接触可能に配置されると共にその両端面が外輪2bのツバ2e、一方の端面が内輪2aのツバ2fに当接可能に配置される。したがって、複数の転動体3は、転動面3aが内側軌道面2c、外側軌道面2dに接触することでこの内側軌道面2c、外側軌道面2dに沿って環状空間を転動することができると共に、その端面がツバ2e、ツバ2fに当接することで軸線方向に脱落することが防止される。
【0028】
各転動体3は、さらに具体的には、その外周面に、上述の転動面3aと、クラウニング部3bとを有する。転動面3aは、転動体3の中心軸線方向中央部に設けられ、上述したように、軌道輪2が形成する内側軌道面2c、外側軌道面2dに接触可能に形成される一方、クラウニング部3bは、転動体3の中心軸線方向両端部に設けられ内側軌道面2c、外側軌道面2dに接触不能に形成される。クラウニング部3bは、転動面3aが形成される外周面と中心軸線方向の両端面3c(底面)とが交わる部分を曲面状に角をおとすようにして形成される。これにより、各転動体3がアキシアル方向(軸線方向)に揺動しても、この曲面状に角を落として形成されるクラウニング部3bにて、転動体3のエッジによる内側軌道面2c、外側軌道面2dへ傷つけや転動体3自体の破損を防止することができる。
【0029】
保持器5は、上述したように複数の転動体3を軌道輪2に沿って等間隔で保持する。さらに、保持器5は、一対の環状部5aと、複数の柱状のセパレート部5bと、複数のスリット状の転動体収容部5cとを有する。
【0030】
一対の環状部5aは、軸線方向に沿って対をなすと共に互いに軌道輪2の軸線と同軸に設けられる。すなわち、各環状部5aは、内側軌道面2cと外側軌道面2dとの間の環状空間において、内輪2a、外輪2bの中心軸線と同軸に配置される。そして、各環状部5aは、その外周面が外側軌道面2d両側の各ツバ2eに対向して当接可能に周方向に連続すると共にその内周面が内側軌道面2cに対向して配置される。また、一方の環状部5aの内周面は、内側軌道面2cのツバ2fに対向して当接可能である。そして、各環状部5aは、保持器5全体を複数の転動体3と共に内側軌道面2c、外側軌道面2dに沿って案内支持する。
【0031】
各セパレート部5bは、一対の環状部5a間に軸線方向に沿って掛け渡されるように架設される。セパレート部5bは、両端が各環状部5aに固定されることで転動不能に設けられる。そして、セパレート部5bは、隣接する転動体3の間に位置すると共に周方向に所定の間隔(保持する転動体3の外径に応じた間隔)で等間隔に複数設けられる。
【0032】
各転動体収容部5cは、軸線方向に対して対向する一対の環状部5aと、周方向に対して隣接する一対のセパレート部5bにより区画された空間である。各転動体収容部5cは、転動体3の軸線(転動中心)方向が軸受1の軸線方向と平行となるようにそれぞれ1つの転動体3を個別に収容し、各転動体3を内側軌道面2c、外側軌道面2dの周方向に沿って転動自在に保持する。なお、保持器5は、全体を一体で形成してもよいし、各部を別体に形成してもよい。
【0033】
上記のように構成される軸受1は、内輪2aの内側軌道面2cと外輪2bの外側軌道面2dとの間の環状空間において、複数の転動体3が潤滑油を介して内側軌道面2c、外側軌道面2dに接触してこの内側軌道面2c、外側軌道面2d上を転動(自転)しながら内側軌道面2c、外側軌道面2dに沿って公転する。つまり、軸受1は、軌道輪2の内側軌道面2c、外側軌道面2dと各転動体3の転動面3aとが摺動することでこの内輪2aと共に回転する回転軸2gを外輪2bに対して回転自在に支持する。このとき、保持器5は、内輪2aの外輪2bに対する相対的な回転に伴って環状部5aにより内側軌道面2c、外側軌道面2dに沿って案内されると共に、各転動体収容部5c内に収容した各転動体3を軌道輪2に沿って等間隔に保持しながら軌道輪2に対して相対的に回転する。そして、保持器5は、セパレート部5bにより隣接する転動体3同士の周方向に対する接触を規制する。この間、この軸受1は、内側軌道面2c、外側軌道面2dと当接する転動体3の転動面3aにより負荷荷重としてラジアル荷重(軸線方向に直角な方向、すなわち径方向の荷重)を受けることができると共に、ツバ2e、ツバ2fと当接する転動体3の端面部により負荷荷重として若干のアキシアル荷重(軸線方向の荷重)も受けることができる。
【0034】
ところで、この種の転がり軸受では、従来、例えば、外輪、転動体、保持器の表面全体にDLC(Diamond−Like−Carbon)層を形成することで、耐摩耗性や耐焼き付き性を向上させるものがあった。ところが、この場合、外輪、転動体、保持器の表面全体に硬度が非常に高いDLC層が形成されていることから、例えば、転動体と保持器同士が衝突し合い、非常に硬いもの同士が攻撃し合うことでお互いの摩耗を促進してしまい、結果的に、DLC層が早期に摩滅し、最終的には焼き付きに至るおそれがある。そして、外輪、転動体、保持器の表面全体にDLC層が形成されることで、このDLC層により断熱が促進され保持器等の放熱性が悪くなり、摺動部分の温度上昇が大きくなってしまうおそれがある。すなわち、放熱性が悪化することで冷却性能が低下し、これにより、例えば、この摺動部分への潤滑油供給量が多量に必要になり、ひいては、転動体がこの潤滑油を引きずる量が増大することで、フリクションが増大してしまうおそれがあった。
【0035】
そこで、本実施例の軸受1では、図1に示すように、保持器5を、母相61に炭素繊維62が配置された炭素繊維複合材料6により形成し、この炭素繊維62の配列を適正に設定することで、冷却性能の向上を図っている。
【0036】
ここで、まず、炭素繊維複合材料6について説明する。この炭素繊維複合材料6は、炭素繊維62を金属又は樹脂の母相61中へ配置することで、炭素繊維62単体や母相61となる金属又は樹脂単体よりも優れた性能を発揮させるものである。本実施例に係る炭素繊維複合材料6では、母相61となる金属又は樹脂単体よりも高い熱伝導率を発揮する。そして、この炭素繊維複合材料6において、母相61を金属としたものが、いわゆるCFRM(Carbon Fiber Reinforced Metal)である一方、母相61を樹脂としたものが、いわゆるCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)である。CFRMとCFRPとでは、軸受1の軽量化の点ではCFRPの方が優れる一方、熱伝導率の点では、CFRMの方が優れる。以下、この炭素繊維複合材料6は、母相61に金属を用いたCFRMの場合で説明するが、母相61に樹脂を用いたCFRPとしてもよい。
【0037】
炭素繊維複合材料6の母相61は、例えば、Cu、Al、Ag、Mg、W、Mo、Zn、又はこれらの合金を用いることができる。これらの材料で、熱伝導率の高いものを母相61として用いれば、炭素繊維複合材料6全体の熱伝導率を高くすることができる。
【0038】
一方、炭素繊維複合材料6の炭素繊維62は、繊維の伸長方向における熱伝導率が、上記金属の母相61よりも高い炭素繊維が用いられる。これによって、この炭素繊維複合材料6は、母相61が単体では達成できない、高い熱伝導率を有する。このような炭素繊維62としては、例えば、ピッチ系の炭素繊維がある。ピッチ系の炭素繊維は、石油、石炭、コールタール等の複生成物を原料とした炭素繊維である。ピッチ系の炭素繊維は、熱伝導率の高いものが得られるという特徴があり、例えば、熱伝導率が500W/m・K程度のものが得られる。この熱伝導率は、最も熱伝導率の高い銅(Cu、400W/m・K)よりも高い熱伝導率である。なお、金属の種類によって母相61の熱伝導率は変化するので、母相61の熱伝導率に応じて、好適な熱伝導率に調整したピッチ系の炭素繊維を用いることが望ましい。炭素繊維62は、熱伝導率が240W/m・K以上2000W/m・K以下の範囲のものが使用でき、熱伝導率が400W/m・K以上1300W/m・K以下の範囲のものが好ましく、熱伝導率が500W/m・K以上1000W/m・K以下の範囲のものがより好ましく使用できる。このような範囲であれば、炭素繊維複合材料6の熱伝導率を効果的に向上させることができる。
【0039】
そして、この炭素繊維複合材料6は、例えば、めっき法を用いて炭素繊維62の表面を母相61で被覆して、母相61の被覆層を形成する。めっき法を用いれば、束になっている炭素繊維62の隅々までめっき液が付着するため、母相61の被覆層の厚さを均一に、かつ確実に形成するためには好ましい。また、めっき法によれば、簡単に、かつ安価に母相61の被覆層を形成することができる。本実施例では、炭素繊維複合材料6は、ピッチ系の炭素繊維62に銅めっきを施した上に、さらに銀めっきを施すことで、なじみがよくなり、摺動特性を向上させている。
【0040】
なお、母相61の被覆層を形成する手法はめっき法に限られるものではなく、例えば、PVD(Physical Vapor Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、その他の薄膜形成方法を用いることができる。母相61の被覆層を形成する手法は、母相61の種類に応じて使い分けることができ、例えば、めっき法の適用が困難な材料に対しては、他の手法(例えばPVD法やCVD法)を適用することができる。
【0041】
また、この炭素繊維複合材料6は、図1においては、説明を分かり易くするため、複数の炭素繊維62間に隙間を有するように模式的に図示しているが、実際には、炭素繊維62の密度が非常に高く、母相61の部分は極微小である。そして、炭素繊維複合材料6の全体積に対する炭素繊維62の体積の比率(体積比)は、炭素繊維複合材料6の全体積に対する炭素繊維62の体積の割合(体積率)を向上させることで、炭素繊維複合材料6における熱伝導率を向上させた上で、炭素繊維複合材料6をより軽量化することができる。以下で説明する図6乃至図8も同様である。
【0042】
上記のように構成される炭素繊維複合材料6において、炭素繊維62は、繊維の伸長方向における熱伝導率が、繊維の伸長方向と直交する方向における熱伝導率よりも極めて大きく、繊維の伸長方向に対しては高熱伝導材料として機能する。このため、この炭素繊維複合材料6は、伸長方向において高熱伝導率を有するこの炭素繊維62の作用により、例えば、高温部分から低温部分へ熱を運搬する伝熱素子として用いることができる。すなわち、炭素繊維62は、熱の移動方向に方向性があり、これを利用して、繊維の伸長方向に向かって一方向に熱を運搬することができる。一方、炭素繊維62は、繊維の伸長方向と直交する方向における熱伝導率が極めて小さく、炭素繊維複合材料6において、炭素繊維62の伸長方向以外の方向(繊維の伸長方向と交差する方向)には、ほとんど熱は移動せず、言い換えれば、隣接する炭素繊維62同士の間での熱の移動はほとんどなく、前記伸長方向以外の方向に対する熱の逃げが低減される。これによって、この炭素繊維複合材料6は、炭素繊維62の伸長方向に対して、効率よく熱を運搬することができる一方、炭素繊維62の伸長方向と交差する方向に対して、高い断熱性を実現することができる。
【0043】
そして、本実施例の軸受1では、上述したように、保持器5をこの炭素繊維複合材料6により形成すると共に、炭素繊維62の配列を適正に設定することで、軸受1における摺動部分の冷却性能の向上を図っている。
【0044】
本実施例では、炭素繊維複合材料6の炭素繊維62は、保持器5において、一端が転動体3の転動面3aと接触可能な接触部51に設けられる一方、他端が転動体3の転動面3aと接触不能な放熱部52に設けられる。
【0045】
さらに具体的には、接触部51と放熱部52とは、ともにセパレート部5bに設けられ、接触部51は、セパレート部5bの径方向に沿った面に設けられる一方、放熱部52は、セパレート部5bの周方向に沿った面に設けられる。すなわち、接触部51は、保持器5の各セパレート部5bにおいて、上述した転動体収容部5c(図3、図4参照)に面し、この転動体収容部5cに対向する両端面に設けられる。一方、放熱部52は、各セパレート部5bにおいて、内側軌道面2c又は外側軌道面2dと対向する内周面及び外周面に設けられる。上述したように、このセパレート部5bは、接触部51にて、隣接する転動体3同士の周方向に対する接触を規制している。
【0046】
したがって、炭素繊維複合材料6の各炭素繊維62は、一端が保持器5の各セパレート部5bにおいて転動体3の転動面3aと接触し摺動する接触部51に設けられる一方、他端が転動体3の転動面3aには接触しない放熱部52に設けられる。このため、炭素繊維62は、各セパレート部5bにて、転動体3の転動面3aと接触し摺動することで発熱し高温になり易い接触部51に設けられた一端から熱を受け取り、比較的低温な放熱部52に設けられた他端でこの熱を放出する。つまり、炭素繊維62は、接触部51にて発生した熱を繊維の伸長方向に運搬し、放熱部52にて放熱する。
【0047】
そして、上記のように構成される軸受1では、例えば、保持器5が図1中左に回転すると、セパレート部5bの左側端面における接触部51に転動体3の転動面3aが接触する。そして、保持器5がさらに左回転を継続すると、セパレート部5bの接触部51は、この回転に伴ってそのまま転動体3を押しながら保持器5自体も左側に回転していく。この間、転動体3は、転動体収容部5c内で内側軌道面2c、外側軌道面2d上を転動(自転)しながら内側軌道面2c、外側軌道面2dに沿って公転する。その後、保持器5の回転が止まると、転動体3は、慣性力によりそのまま内側軌道面2c、外側軌道面2dに沿った公転を続け、今度は上述のセパレート部5bの左側に隣接するセパレート部5bの右側端面の接触部51に転動体3の転動面3aが接触する。つまり、保持器5は、セパレート部5bにより隣接する転動体3同士の周方向に対する接触を規制する。言い換えれば、転動体3は、転動体収容部5c内で隣接するセパレート部5bの各対向端面に設けられる一対の接触部51の間を往復運動する。
【0048】
この間、例えば、高回転、高負荷域でこの転動体3の転動面3aにおける面圧が高くなると発熱し易くなるが、発生した熱は、一端がセパレート部5bの接触部51に設けられ他端が放熱部52に設けられた各炭素繊維62により、比較的高温となる接触部51側から比較的低温な放熱部52側に伝熱され、内側軌道面2c又は外側軌道面2dと対向する放熱部52から内輪2a又は外輪2b側に放熱される。すなわち、転動体3、保持器5と内側軌道面2c、外側軌道面2dとの摺動や転動体3と接触部51との衝突などにより生じる発熱は、この各炭素繊維62により、繊維の一端が位置する接触部51側(転動体収容部5c側)から他端が位置する放熱部52側(内輪2a又は外輪2b側)に効率よく伝熱され良好に放熱されるので、放熱性が向上され軸受1における摺動部分等の冷却性能を向上することができ、この結果、温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0049】
すなわち、図5の線図に破線で示すように、例えば、炭素繊維複合材料6を用いない従来の保持器により軸受を構成した場合、伸長方向において高熱伝導率を有するこの炭素繊維62の作用がないため、保持器の温度上昇が比較的に大きくなる。これと比較して、図5の線図に実線で示すように、炭素繊維62により、セパレート部5bの接触部51にて、発生する熱を受け取り、この熱を積極的に放熱部52で放熱することで、冷却性能が向上され、特に高回転側で保持器5の温度上昇を効果的に抑制することができる。そして、保持器5の冷却性能を向上し、温度上昇を抑制することができることから、摺動部分への潤滑油供給量を比較的少量にすることができる。この結果、転動体3がこの潤滑油を引きずる量も減少させることができ、よって、フリクションを抑制することができる。さらに、保持器5や摺動部分の温度が高くなることが抑制されることから、潤滑油の炭化、劣化あるいは潤滑油切れを抑制することができ、この結果、摩耗や焼き付きを抑制することもできる。また、冷却性能が向上することから、軸受1の摺動部分に対する冷却用のオイル供給量を低減することもでき、この結果、例えば、内燃機関のオイルポンプの容量を減らしてフリクションを低減することも可能となる。
【0050】
また、この保持器5を形成する炭素繊維複合材料6自体も軽量で高ヤング率の物性値を有していることから、保持器5を小型化、軽量化することができる。このため、軸受1の体格も小さくできることから、軸受1の搭載性、汎用性を向上することができると共に、さらなるフリクションの低減と、保持器5と転動体3との衝突音の低減を実現することができる。
【0051】
なお、炭素繊維62の他端部が設けられる放熱部52は、セパレート部5bにおいて、内側軌道面2c又は外側軌道面2dと対向する内周面及び外周面に設けられるものとして説明した。そして、図1では、炭素繊維62の他端部は、内側軌道面2cに対向する放熱部52と、外側軌道面2dに対向する放熱部52とに均等に設けるように、すなわち、径方向に対してほぼ対称形に設けられているが、これに限らず、径方向に対して非対称形であっても良いし、どちらか一方の放熱部52にのみ炭素繊維62の他端部を設けるようにしてもよい。
【0052】
ただし、この場合、炭素繊維62の他端部が設けられる放熱部52は、少なくともセパレート部5bにおいて外側軌道面2dと対向する外周面に設けられていることが好ましい。上述したように、この内側軌道面2cは内輪2aの外周面により形成されている一方、外側軌道面2dは外輪2bの内周面により形成されている。さらに、この内輪2aは、内燃機関のカムシャフトの回転軸2gに設けられる一方、外輪2bは、カムジャーナル等の支持部に設けられている。このため、炭素繊維62により接触部51側から放熱部52側に伝熱され、放熱部52から放熱される熱は、内輪2a、回転軸2g側、すなわち、軸受1の径方向内方側に放熱され、そこで蓄熱されてしまうよりは、外輪2b、カムジャーナル側、すなわち、軸受1の径方向外方側に放熱され、外気に放熱された方が軸受1の冷却性能をより効果的に向上することが可能である。すなわち、炭素繊維62の他端は、内側軌道面2cに対向する放熱部52側より外側軌道面2dに対向する放熱部52側により多く設けることで、軸受1の冷却性能をより効果的に向上させることができる。
【0053】
以上で説明した本発明の実施例に係る軸受1によれば、複数の転動体3を保持器5により環状の軌道輪2に沿って転動可能に所定の隙間をあけて保持する軸受1において、保持器5は、金属又は樹脂の母相61に炭素繊維62が配置された炭素繊維複合材料6により形成され、炭素繊維62は、一端が転動体3の転動面3aと保持器5とが接触可能な接触部51に設けられ、他端が転動面3aと保持器5とが接触不能な放熱部52に設けられる。
【0054】
したがって、保持器5を、母相61に炭素繊維62が配置された炭素繊維複合材料6により形成し、この炭素繊維62の一端を転動面3aと接触可能な接触部51に、他端を転動面3aと接触不能な放熱部52に設けたことから、転動体3、保持器5と内側軌道面2c、外側軌道面2dとの摺動や転動体3と保持器5との衝突などにより生じる熱は、この各炭素繊維62により、比較的高温となる接触部51側から、転動面3aと接触することなく比較的低温な放熱部52側に効率よく伝熱され良好に放熱されるので、放熱性が向上され軸受1における摺動部分等の冷却性能を向上することができる。
【0055】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る軸受1によれば、炭素繊維62は、繊維の伸長方向における熱伝導率が母相61よりも高い炭素繊維である。したがって、炭素繊維複合材料6が母相61と、繊維の伸長方向における熱伝導率が母相61よりも高い炭素繊維62とより構成されることから、この炭素繊維複合材料6は、繊維の伸長方向において高熱伝導率を有するこの炭素繊維62の作用により、例えば、高温部分から低温部分へ熱を運搬する伝熱素子として用いることができ、繊維の伸長方向に向かって一方向に熱を運搬することができる。一方、炭素繊維62は、繊維の伸長方向と直交する方向における熱伝導率が極めて小さいことから、炭素繊維複合材料6において、炭素繊維62の伸長方向以外の方向(繊維の伸長方向と交差する方向)に対して、高い断熱性を実現することができる。
【0056】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る軸受1によれば、接触部51及び放熱部52は、保持器5に設けられる。したがって、転動体3、保持器5と内側軌道面2c、外側軌道面2dとの摺動や転動体3と保持器5との衝突などにより生じる熱は、この保持器5内部の炭素繊維62を介して、接触部51から放熱部52に伝熱され、この放熱部52にて保持器5外部に放出することができる。また、この場合、例えば、転動体3が円筒状ころでなく、球状の転動体であっても、上記のように転動体3の摺動等により発生した熱を、保持器5内部の炭素繊維62を介して、効率的に伝熱、冷却することができる。
【0057】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る軸受1によれば、保持器5は、転動不能に設けられると共に隣接する転動体3同士の軌道輪2の周方向に対する接触を規制するセパレート部5bと、周方向に対向するセパレート部5bにより区画されると共に転動体3を個別に収容する転動体収容部5cとを有し、炭素繊維62の一端が設けられる接触部51は、セパレート部5bにおいて転動体収容部5cに面して設けられる。したがって、接触部51と転動体3の転動面3aとの接触、摺動等により発生した熱がこもりやすい転動体収容部5cに面して炭素繊維62の一端が設けられることから、炭素繊維62は温度が上昇し易い転動体収容部5cから熱を受け取り、放熱部52に伝熱しそこで放熱させることができるので、冷却性能を確実に向上することができる。
【0058】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る軸受1によれば、炭素繊維62の他端が設けられる放熱部52は、セパレート部5bにおいて軌道輪2の周方向に沿った面に設けられる。したがって、炭素繊維62が比較的高温となる接触部51側から受け取った熱は、内側軌道面2c又は外側軌道面2dと対向する放熱部52から、比較的低温となる内輪2a又は外輪2b側に放熱することができる。
【0059】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る軸受1によれば、軌道輪2は、転動体3が転動可能な内側軌道面2cと、この内側軌道面2cの径方向外方に設けられ転動体3が転動可能な外側軌道面2dとを有し、炭素繊維62の他端が設けられる放熱部52は、少なくともセパレート部5bにおいて外側軌道面2dと対向する面に設けられていることが好ましい。この場合、炭素繊維62により接触部51側から放熱部52側に伝熱され、放熱部52から放熱される熱は、軸受1の径方向外方側に放熱されることから軸受1の冷却性能をより効果的に向上することができる。
【0060】
なお、上述した本発明の実施例に係る転がり軸受は、上述した実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。以上の説明では、複数の転動体3は、円筒状ころを用いるものとして説明したが、球、細い円筒形の針状(ニードル状)ころ、円錐ころなど各種の転動体が使用可能である。すなわち、本発明において、転がり軸受とは、回転軸と外輪との間に介在させた転動体を転動させることにより、回転軸を外輪に対して相対的に回転可能に支持するものであり、上記で説明したような、いわゆる円筒ころ軸受の他にも、例えば、深溝玉軸受などの玉軸受、針状ころ軸受、円錐ころ軸受などを含む概念である。
【実施例2】
【0061】
図6は、本発明の実施例2に係る軸受の保持器における周方向の部分断面図である。実施例2に係る転がり軸受は、実施例1に係る転がり軸受と略同様の構成であるが、炭素繊維複合材料をなす炭素繊維の他端が設けられる位置が実施例1に係る転がり軸受とは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
【0062】
実施例2に係る転がり軸受としての軸受201では、図6に示すように、炭素繊維複合材料6の炭素繊維62は、保持器5において、転動体3の転動面3aと接触可能な接触部251に一端が設けられる一方、転動体3の転動面3aと接触不能な放熱部252に他端が設けられる。
【0063】
さらに具体的には、接触部251と放熱部252とは、ともに保持器5に設けられ、接触部251は、セパレート部5bの径方向に沿った面に設けられる一方、放熱部252は、環状部5aの軸線方向側面に設けられる。すなわち、接触部251は、保持器5の各セパレート部5bにおいて、上述した転動体収容部5c(図3、図4参照)に面し、この転動体収容部5cに対向する両端面に設けられる。一方、放熱部252は、保持器5の一対の環状部5aにおいて、軸線方向両側面に外気と対向するように設けられる。
【0064】
したがって、炭素繊維複合材料6の各炭素繊維62は、一端が保持器5の各セパレート部5bにおいて転動体3の転動面3aと接触し摺動する接触部251に設けられる一方、他端が転動体3の転動面3aには接触しない各環状部5aの側部の放熱部252に設けられる。このため、炭素繊維62は、各セパレート部5bにて、転動体3の転動面3aと接触し摺動することで発熱し高温になり易い接触部251に設けられた一端から熱を受け取り、比較的低温な放熱部252に設けられた他端でこの熱を放出する。つまり、炭素繊維62は、接触部251にて発生した熱を繊維の伸長方向に運搬し、放熱部252にて放熱する。
【0065】
上記のように構成される軸受201では、一端がセパレート部5bの接触部251に設けられ他端が環状部5aの放熱部252に設けられた各炭素繊維62により、この軸受201の摺動部分にて発生する熱は、比較的高温となる接触部251側から比較的低温な放熱部252側に伝熱され、外気と対向する放熱部252から直接外気中に放熱される。すなわち、転動体3、保持器5と内側軌道面2c、外側軌道面2dとの摺動や転動体3と接触部251との衝突などにより生じる発熱は、この各炭素繊維62により、繊維の一端が位置する接触部251側(転動体収容部5c側)から他端が位置する放熱部252側(外気側)に効率よく伝熱され良好に放熱されるので、放熱性が向上され軸受201における摺動部分等の冷却性能を向上することができ、この結果、温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0066】
なお、この図6で示す軸受201では、接触部251に設けられる各炭素繊維62の一端は、接触部251における中心軸線方向中央部での密度を中心軸線方向両端部での密度より大きくしている。すなわち、接触部251において、発熱が最も多くなる転動体3の転動面3aの中心軸線方向中央部に対応する位置に炭素繊維62の一端をより多く設けることで、この転動体3の転動面3aの中心軸線方向中央部の近傍で発生する熱をより効率的に、炭素繊維62により放熱部252に伝熱させることができる。このため、冷却性能をさらに向上することができる。ただし、この炭素繊維62は、図6で示す軸受201では、中心軸線方向及びこれに直交する方向に対してほぼ対称形になるように設けられているが、これに限らず、非対称形に設けるようにしてもよい。
【0067】
以上で説明した本発明の実施例に係る軸受201によれば、複数の転動体3を保持器5により環状の軌道輪2に沿って転動可能に所定の隙間をあけて保持する軸受201において、保持器5は、金属又は樹脂の母相61に炭素繊維62が配置された炭素繊維複合材料6により形成され、炭素繊維62は、一端が転動体3の転動面3aと保持器5とが接触可能な接触部251に設けられ、他端が転動面3aと保持器5とが接触不能な放熱部252に設けられる。
【0068】
したがって、保持器5を、母相61に炭素繊維62が配置された炭素繊維複合材料6により形成し、この炭素繊維62の一端を転動面3aと接触可能な接触部251に、他端を転動面3aと接触不能な放熱部252に設けたことから、転動体3、保持器5と内側軌道面2c、外側軌道面2dとの摺動や転動体3と接触部251との衝突などにより生じる熱は、この各炭素繊維62により、比較的高温となる接触部251側から、転動面3aと接触することなく比較的低温な放熱部252側に効率よく伝熱され良好に放熱されるので、放熱性が向上され軸受201における摺動部分等の冷却性能を向上することができる。
【0069】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る軸受201によれば、保持器5は、軌道輪2の周方向に沿って設けられる一対の環状部5aを有し、セパレート部5bは、この一対の環状部5aの間に軸線方向に沿って掛け渡されるように設けられ、炭素繊維62の他端が設けられる放熱部252は、環状部5aの軸線方向側面に設けられる。したがって、炭素繊維62が比較的高温となる接触部251側から受け取った熱は、外気と対向する環状部5aの軸線方向側面の放熱部252から直接外気中に放熱されることから、軸受201における冷却性能をさらに向上することができる。
【実施例3】
【0070】
図7は、本発明の実施例3に係る軸受の保持器における周方向の部分断面図である。実施例3に係る転がり軸受は、実施例1に係る転がり軸受と略同様の構成であるが、転動体が炭素繊維複合材料により構成されている点で実施例1に係る転がり軸受とは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
【0071】
実施例3に係る転がり軸受としての軸受301では、図7に示すように、転動体3を、母相61に炭素繊維62が配置された炭素繊維複合材料6により形成し、この炭素繊維62の配列を適正に設定することで、冷却性能の向上を図っている。そして、炭素繊維複合材料6の炭素繊維62は、各転動体3において、保持器5のセパレート部5bと接触可能な転動面3aに一端が設けられる一方、中央軸線方向の両端面3cに他端が設けられる。すなわち、本実施例では、転動体3の転動面3a自体が炭素繊維62の一端を設ける本発明の接触部351に相当する一方、中央軸線方向の両端面3cが炭素繊維62の他端を設ける本発明の放熱部352に相当する。
【0072】
したがって、炭素繊維複合材料6の各炭素繊維62は、一端がセパレート部5bと接触し摺動することで発熱し易い転動面3a(接触部351)に設けられる一方、他端がセパレート部5bには接触しない転動体3の両端面3c(放熱部352)に設けられる。このため、炭素繊維62は、各セパレート部5bと接触し摺動することで発熱し高温になり易い転動面3a(接触部351)に設けられた一端から熱を受け取り、比較的低温な両端面3c(放熱部352)に設けられた他端でこの熱を放出する。つまり、炭素繊維62は、各転動体3の転動面3aにて発生した熱を繊維の伸長方向に運搬し、両端面3cにて放熱する。
【0073】
上記のように構成される軸受301では、一端が転動体3の転動面3a(接触部351)に設けられ他端が環状部5aと対向する転動体3の両端面3c(放熱部352)に設けられた各炭素繊維62により、この軸受301の摺動部分にて発生する熱は、転動体3にて比較的高温となる転動面3a(接触部351)側から比較的低温な両端面3c(放熱部352)側に伝熱され、この両端面3cから環状部5a側に放熱される。すなわち、転動体3、保持器5と内側軌道面2c、外側軌道面2dとの摺動や転動体3と保持器5との衝突などにより生じる発熱は、この各炭素繊維62により、繊維の一端が位置する転動面3a(接触部351)側から他端が位置する両端面3c(放熱部352)側に効率よく伝熱され良好に放熱されるので、放熱性が向上され軸受301における摺動部分等の冷却性能を向上することができ、この結果、温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0074】
なお、この図7で示す軸受301では、転動面3a(接触部351)に設けられる各炭素繊維62の一端は、転動面3aにおける中心軸線方向中央部での密度を中心軸線方向両端部での密度より大きくしている。すなわち、転動面3aにおいて、発熱が最も多くなる中心軸線方向中央部に炭素繊維62の一端をより多く設けることで、この転動体3の転動面3aの中心軸線方向中央部の近傍で発生する熱をより効率的に、炭素繊維62により両端面3c(放熱部352)に伝熱させることができる。このため、冷却性能をさらに向上することができる。ただし、この炭素繊維62は、図7で示す軸受301では、中心軸線方向及びこれに直交する方向に対してほぼ対称形になるように設けられているが、これに限らず、非対称形に設けるようにしてもよい。
【0075】
以上で説明した本発明の実施例に係る軸受301によれば、複数の転動体3を保持器5により環状の軌道輪2に沿って転動可能に所定の隙間をあけて保持する軸受301において、転動体3は、金属又は樹脂の母相61に炭素繊維62が配置された炭素繊維複合材料6により形成され、炭素繊維62は、一端が転動体3の転動面3aと保持器5とが接触可能な接触部351に設けられ、他端が転動面3aと保持器5とが接触不能な放熱部352に設けられる。
【0076】
したがって、転動体3を、母相61に炭素繊維62が配置された炭素繊維複合材料6により形成し、この炭素繊維62の一端を保持器5のセパレート部5bと接触可能な接触部351に、他端をセパレート部5bと接触不能な放熱部352に設けたことから、転動体3、保持器5と内側軌道面2c、外側軌道面2dとの摺動や転動体3と保持器5のセパレート部5bとの衝突などにより生じる熱は、この各炭素繊維62により、比較的高温となる接触部351側から、比較的低温な放熱部352側に効率よく伝熱され良好に放熱されるので、放熱性が向上され軸受301における摺動部分等の冷却性能を向上することができる。
【0077】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る軸受301によれば、接触部351及び放熱部352は、円柱状に形成される転動体3に設けられる。したがって、転動体3、保持器5と内側軌道面2c、外側軌道面2dとの摺動や転動体3と保持器5のセパレート部5bとの衝突などにより生じる熱は、この転動体3内部の炭素繊維62を介して、接触部351から放熱部352に伝熱され、この放熱部352にて転動体3外部に放出することができる。この結果、転動体3の冷却性能を向上し、温度上昇を抑制することができる。
【0078】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る軸受301によれば、転動体3は、中心軸線方向中央部に設けられ軌道輪2が形成する内側軌道面2c、外側軌道面2dに接触可能な転動面3aと、中心軸線方向両端部に設けられ内側軌道面2c、外側軌道面2dに接触不能なクラウニング部3bとを有し、炭素繊維62の一端が設けられる接触部351は、転動面3aに設けられる一方、炭素繊維62の他端が設けられる放熱部352は、転動体3の中心軸線方向の両端面3cに設けられる。したがって、保持器5のセパレート部5bとの接触、摺動等により熱が発生しやすい転動面3a(接触部351)に炭素繊維62の一端が設けられることから、炭素繊維62は温度が上昇し易い転動面3a(接触部351)から熱を受け取り、両端面3c(放熱部352)に伝熱しそこで放熱させることができるので、冷却性能を確実に向上することができる。
【実施例4】
【0079】
図8は、本発明の実施例4に係る軸受の保持器における周方向の部分断面図である。実施例4に係る転がり軸受は、実施例3に係る転がり軸受と略同様の構成であるが、転動体を形成する炭素繊維の配置方向が実施例3に係る転がり軸受とは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
【0080】
実施例4に係る転がり軸受としての軸受401では、図8に示すように、各転動体3は、炭素繊維複合材料6により円柱状に形成され、炭素繊維複合材料6を構成する炭素繊維62は、両端がそれぞれ転動体3の中心軸線方向の両端面3cに設けられる。また、本実施例では、炭素繊維62は、繊維の伸長方向がこの転動体3の中心軸線方向に沿って平行に設定される。
【0081】
上述したように、この炭素繊維複合材料6は、炭素繊維62の伸長方向において高熱伝導率を有する一方、繊維の伸長方向と直交する方向における熱伝導率が極めて小さい。このため、炭素繊維複合材料6において、炭素繊維62の伸長方向以外の方向(繊維の伸長方向と交差する方向)に対して、高い断熱性を実現することができる。すなわち、転動体3の中心軸線方向に沿うように炭素繊維62を配置することで、転動体3の転動面3aから転動体内方側に対する断熱性が著しく向上される。これにより、この転動体3自体が高温になることを抑制することができる。このため、転動体3、保持器5と内側軌道面2c、外側軌道面2dとの摺動や転動体3と保持器5との衝突などにより生じる発熱は、転動体3の転動面3aが炭素繊維複合材料6の炭素繊維62により断熱されていることから、保持器5の環状部5aやセパレート部5b側への伝熱が促され、結果的に環状部5aやセパレート部5bから良好に放熱されるので放熱性が向上される。また、炭素繊維62の両端がそれぞれ比較的低温な両端面3cに設けられることから、この炭素繊維62自体の温度も上がりにくくなっている。この結果、軸受401における摺動部分等の冷却性能を向上することができ、温度上昇を効果的に抑制することができる。なお、この転動体3は、転動面3aのみを炭素繊維複合材料6により形成するようにしてもよい。この場合、比較的高価な炭素繊維複合材料6を用いる部分を最小限に抑制することができるので、軸受401の製造コストを低減することができる。
【0082】
以上で説明した本発明の実施例に係る軸受401によれば、環状の軌道輪2に沿って転動可能であると共に、金属又は樹脂の母相61に炭素繊維62が配置された炭素繊維複合材料6により円柱状に形成される複数の転動体3を備え、炭素繊維62は、両端がそれぞれ転動体3の前記中心軸線方向の両端面3cに設けられる。したがって、炭素繊維62の両端がそれぞれ比較的低温な転動体3の両端面3cに設けられることから、この炭素繊維62自体の温度を上がりにくくすることができ、この結果、軸受401の冷却性能を向上することができ、温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0083】
また、この転動体3を形成する炭素繊維複合材料6自体も軽量で高ヤング率の物性値を有していることから、転動体3を小型化、軽量化することができる。このため、軸受401の体格も小さくできることから、軸受401の搭載性、汎用性を向上することができると共に、さらなるフリクションの低減と、保持器5と転動体3との衝突音の低減を実現することができる。
【0084】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る軸受401によれば、炭素繊維62は、繊維の伸長方向が転動体3の中心軸線方向に沿って設定される。したがって、転動体3の転動面3aから転動体内方側に対する断熱性が著しく向上され、この結果、軸受401の冷却性能をさらに向上することができる。
【0085】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る軸受401によれば、複数の転動体3を軌道輪2に沿って所定の隙間をあけて保持する保持器5を備える。したがって、保持器5により隣接する転動体3同士の周方向に対する接触が規制されることから、隣接する転動体3の一方が他方を引きずりながら転動することを確実に防止することができる。この結果、各転動体3の転動を阻害することがなく、効果的にフリクションを低減することができる。
【0086】
なお、上述した本発明の実施例に係る転がり軸受は、上述した実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。以上の説明では、本発明の転がり軸受は、内燃機関のカムシャフトの回転軸2gをシリンダヘッドに取り付けられたカムジャーナル等の支持部に回転自在に支持するものとして説明したが、内燃機関のクランクシャフトの回転軸をシリンダブロックに取り付けられたクランクシャフトジャーナル等の支持部に回転自在に支持してもよいし、他の装置の回転軸を支持するものであってもよい。
【0087】
また、以上の説明では、軌道輪2は、内輪2aと、この内輪2aの外方に設けられる外輪2bとによって構成され、転動部4は、内輪2a外周の内側軌道面2cと外輪2b内周の外側軌道面2dとの間の環状空間に設けられるものとして説明したが、内輪2aと回転軸2gとを一体に設けてもよいし、内輪2aを設けずに、内輪2aではなくこの回転軸2gと外輪2bとによって軌道輪2を構成してもよい。この場合、内側軌道面は、回転軸2gの外周面に設けられ、転動部4は、この回転軸2g外周の内側軌道面と外輪2b内周の外側軌道面2dとの間の環状空間に設けられる。また、外輪2bは、上述したカムジャーナル等の支持部(ハウジング)と一体に形成してもよいし、この支持部(ハウジング)自体を外輪としてもよい。また、外輪2bや保持器5は、軸への取り付けを容易にするため、周方向に対して分割された複数の分割輪を円弧状に組み合わせて形成してもよい。
【0088】
また、以上の説明では、ツバ2eは、外側軌道面2dの軸線方向両側方において径方向内方に突出し、ツバ2fは、内側軌道面2cの軸線方向の一側方において径方向外方に突出するものとして説明したが、外側軌道面2dの軸線方向の一側方のみにツバ2eを設けてもよいし、内側軌道面2cの軸線方向両側方にツバ2fを設けてもよい。さらに、ツバ2e又はツバ2fのどちらか一方のみを設けるだけでもよいし、場合によっては両方設けなくともよい。
【0089】
複数の転動体3は、それぞれ転動面3aが潤滑剤を介して内側軌道面2c、外側軌道面2dに接触可能であるものとして説明した。ここで用いられる潤滑剤は、転がり軸受における焼き付き防止、フリクション低減など、軸受の性能向上、劣化防止に資する限りにおいてその材質(例えば、基油として鉱油、ジエステル油、多価エステル油、あるいはシリコン油などを使用したリチウム系グリースなど)及び態様(例えば、気体、液体、固体、又は半固体など)は限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上のように、本発明に係る転がり軸受は、冷却性能を向上するものであり、内燃機関に用いる転がり軸受以外にも種々の転がり軸受に適用して好適である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施例1に係る軸受の径方向の部分断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る軸受の径方向の概略断面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る軸受の切欠斜視図である。
【図4】本発明の実施例1に係る軸受の軸線方向の部分断面図である。
【図5】本発明の実施例1に係る軸受における回転軸回転速度と保持器温度との関係を示す線図である。
【図6】本発明の実施例2に係る軸受の保持器における周方向の部分断面図である。
【図7】本発明の実施例3に係る軸受の保持器における周方向の部分断面図である。
【図8】本発明の実施例4に係る軸受の保持器における周方向の部分断面図である。
【符号の説明】
【0092】
1、201、301、401 軸受(転がり軸受)
2 軌道輪
2a 内輪
2b 外輪
2c 内側軌道面
2d 外側軌道面
2e、2f ツバ
2g 回転軸
3 転動体
3a 転動面
3b クラウニング部
3c 端面
4 転動部
5 保持器(保持手段)
6 炭素繊維複合材料
5a 環状部
5b セパレート部
5c 転動体収容部
51、251、351 接触部
52、252、352 放熱部
61 母相
62 炭素繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の転動体を保持手段により環状の軌道輪に沿って転動可能に所定の隙間をあけて保持する転がり軸受において、
前記転動体又は前記保持手段の少なくともいずれか一方は、金属又は樹脂の母相に炭素繊維が配置された炭素繊維複合材料により形成され、
前記炭素繊維は、一端が前記転動体の転動面と前記保持手段とが接触可能な接触部に設けられ、他端が前記転動面と前記保持手段とが接触不能な放熱部に設けられることを特徴とする、
転がり軸受。
【請求項2】
前記接触部及び前記放熱部は、前記保持手段に設けられることを特徴とする、
請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
前記保持手段は、転動不能に設けられると共に隣接する前記転動体同士の前記軌道輪周方向に対する接触を規制するセパレート部と、周方向に対向する前記セパレート部により区画されると共に前記転動体を個別に収容する転動体収容部とを有し、
前記炭素繊維の一端が設けられる前記接触部は、前記セパレート部において前記転動体収容部に面して設けられることを特徴とする、
請求項2に記載の転がり軸受。
【請求項4】
前記炭素繊維の他端が設けられる前記放熱部は、前記セパレート部において前記軌道輪の周方向に沿った面に設けられることを特徴とする、
請求項3に記載の転がり軸受。
【請求項5】
前記軌道輪は、前記転動体が転動可能な内側軌道面と、該内側軌道面の径方向外方に設けられ前記転動体が転動可能な外側軌道面とを有し、
前記炭素繊維の他端が設けられる前記放熱部は、少なくとも前記セパレート部において前記外側軌道面と対向する面に設けられることを特徴とする、
請求項4に記載の転がり軸受。
【請求項6】
前記保持手段は、前記軌道輪の周方向に沿って設けられる一対の環状部を有し、前記セパレート部は、該一対の環状部の間に軸線方向に沿って掛け渡されるように設けられ、
前記炭素繊維の他端が設けられる前記放熱部は、前記環状部の軸線方向側面に設けられることを特徴とする、
請求項3に記載の転がり軸受。
【請求項7】
前記接触部及び前記放熱部は、円柱状に形成される前記転動体に設けられることを特徴とする、
請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項8】
前記転動体は、前記中心軸線方向中央部に設けられ前記軌道輪が形成する軌道面に接触可能な前記転動面と、前記中心軸線方向両端部に設けられ前記軌道面に接触不能なクラウニング部とを有し、
前記炭素繊維の一端が設けられる前記接触部は、前記転動面に設けられる一方、
前記炭素繊維の他端が設けられる前記放熱部は、前記転動体の前記中心軸線方向端面に設けられることを特徴とする、
請求項7に記載の転がり軸受。
【請求項9】
環状の軌道輪に沿って転動可能であると共に、金属又は樹脂の母相に炭素繊維が配置された炭素繊維複合材料により円柱状に形成される複数の転動体を備え、
前記炭素繊維は、両端がそれぞれ前記転動体の中心軸線方向両端面に設けられることを特徴とする、
転がり軸受。
【請求項10】
前記炭素繊維は、繊維の伸長方向が前記転動体の中心軸線方向に沿って設定されることを特徴とする、
請求項9に記載の転がり軸受。
【請求項11】
複数の前記転動体を前記軌道輪に沿って所定の隙間をあけて保持する保持手段を備えることを特徴とする、
請求項9又は請求項10に記載の転がり軸受。
【請求項12】
前記炭素繊維は、繊維の伸長方向における熱伝導率が前記母相よりも高い炭素繊維であることを特徴とする、
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−14174(P2009−14174A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179748(P2007−179748)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(000215785)帝国ピストンリング株式会社 (80)
【Fターム(参考)】