説明

転倒警報機能付き携帯機

【課題】転倒時と類似した姿勢で作業などをしている場合の使用方法を改善し、所持者側での煩わしい動きを不要にした転倒警報機能付き携帯機を提供する。
【解決手段】転倒検知部10からの転倒検知信号を検出した場合、判別用タイマ12によって設定した判別用第一設定時限内で転倒検知信号が継続するかどうかを監視し、継続した場合、スピーカ8から確認コールを出力し、判別用タイマ12で予め設定した判定用第二設定時限内に通知キャンセル部14が操作されない場合、所持者が転倒したと最終判定し、記憶部6に予め登録した通知先を抽出し転倒通知メールなどで通知する。一方、確認コールを聞いた所持者が通知キャンセル部14を操作した場合、転倒ではないと最終判断し、転倒通知は行わずリセット用タイマ13による時限カウントを開始し、予め設定したリセット用設定時限の経過後にリセット開始部15からリセット開始指令を与えて、タイマ12,13と転倒検知部10のリセット処理を行って転倒検出を再開させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所持者の転倒時にその旨を関係者に自動通報する転倒警報機能付き携帯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の転倒警報機能付き携帯機は、転倒検知部によって一定以上の傾きを転倒検知信号として検出し、この転倒検知信号の継続時間が予め設定した判別用タイマの設定時限を越えて継続した場合に転倒があったと判断し、予め登録したメール送信先メールアドレスを読み出して転倒通知メールを送信し、一方、予め設定した設定時限に達する前に転倒検出信号が無くなった場合には誤検出と判断して、判定用タイマや転倒検知部をリセットして転倒検知を再開するようにしている(例えば、特許文献1を参照)。また、この転倒警報機能付き携帯機の説明の中には、転倒検知部により所持者の転倒を検出したときに、予め保持していた確認コールデータを読み出し、スピーカから所持者への確認コールを行うことについての言及もある。
【特許文献1】特開2005−303864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の転倒警報機能付き携帯機は、転倒状態に類似した使用形態、例えば、一定以上の傾きを検知して作動する転倒検知部を使用した場合には、転倒検知されるような姿勢で継続した作業を行っているときについて十分な検討がなされていなかった。つまり、携帯機の通常使用ではほぼ垂直状態であるが、転倒時には所定以上の傾斜となるのを転倒検知部で検出し、その転倒検知信号が所定時間継続するかどうかで転倒状態を判別するようにした方式の転倒警報機能付き携帯機では、判定用タイマで予め設定した設定時限に達する前に転倒検知信号が無くなった場合、誤検出と判断して何等かのタイミングで判定用タイマや転倒検知部をリセットして転倒検知を再開することになるが、転倒検知されるような姿勢が継続していた場合、繰り返し誤検知の転倒検出信号が発せられることになってしまう。このような誤検知を所持者側で避けるには、意図的に転倒検知信号を無くすために同様の姿勢による作業を継続しないで、時々転倒検出信号を無くすように作業姿勢を変える必要があり、煩わしい動きが必要な使用形態になってしまう。
【0004】
本発明の目的は、転倒時と類似した姿勢で作業などをしている場合の使用方法を改善し、所持者側での煩わしい動きを不要にした転倒警報機能付き携帯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために、転倒検知部からの転倒検知信号と、判別用タイマで設定した設定時限とを用いて転倒状態の判定を行い、転倒したと判定したとき記憶部に予め登録した通知先を抽出して転倒通知を送信し、一方、転倒していないと判定したときリセット開始部からのリセット信号で前記転倒検知部をリセットして前記転倒検知部による検知を再開するように構成した転倒警報機能付き携帯機において、転倒していないと判定した後に作動するリセット用タイマを設け、このリセット用タイマによってリセット用設定時限を経過したとき、前記リセット開始部からのリセット信号を前記転倒検知部、前記判別用タイマおよび前記リセット用タイマに与えるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明による転倒警報機能付き携帯機は、実際の転倒が発生していないと判定したときに作動開始するリセット用タイマで予め設定したリセット用設定時限を経過したとき、リセット開始部からの開始信号によって転倒検知部のリセット処理を行ってその検知を再開するため、リセット用タイマによるリセット用設定時限だけ転倒検知部のリセットが遅延され、しかも確実にリセット処理を開始させることができるようになり、所持者が誤検出を生じさせるような姿勢での作業などを継続している場合でも、高い頻度で誤検知を繰り返すことが無くなり、同時に所持者に煩わしい使用形態を強いることなく、使い勝手を大幅に改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態による転倒警報機能付き携帯機を示すブロック構成図である。
転倒警報機能付き携帯機1は、アンテナ2を介して無線信号の送受信を行う無線I/F3と、文字入力や電話操作や各種サービス情報を取得するために使用するプッシュボタンなどの操作部4と、通話管理情報や操作内容やメール情報の表示などを行う表示部5と、携帯電話機としての通信および処理用ソフトウェアを記憶すると共に、転倒したときの確認コールデータ、転倒通知メールのメール内容データおよびそのメール送信先メールアドレスなどを記憶した記憶部6と、上述した各構成要素の制御および記憶部6内に格納したソフトウェアに基づいて各種処理動作、例えば記憶部6に格納された転倒検知プログラムを作動させたときその転倒検知プログラムに基づいて各種処理を行う制御部7と、受信した音声無線信号や記憶部に格納した確認コールデータなどを処理した後に音声再生するスピーカ8と、所持者の音声を取り込むマイク9と、所持者が転倒したことを検出して転倒検知信号を出力する転倒検知部10と、転倒状態と最終判定されたときGPS信号に基づいて位置情報を取得するGPS受信機11と、転倒状態の検出を補足判別するために使用する判別用タイマ12と、転倒検知部10のリセット処理を開始するタイミングのために使用するリセット用タイマ13と、スピーカ8から確認コールが出力されたときに実際には転倒していないので転倒検知プログラムに基づく転倒通知をキャンセルしたい場合に所持者が操作する通知キャンセル部14と、リセット用タイマ13によるリセット用設定時限が経過したときに転倒検知部10およびタイマ12,13のリセットを開始する指示を与えるリセット開始部15とを備えている。このような転倒警報機能付き携帯機1は、携帯電話機やPHS機によって構成することができる。
【0008】
上述した転倒警報機能付き携帯機1の所持者が老人や身障者で、転倒したことを通知する相手が家族などである場合、上述した転倒警報機能付き携帯機1と、家族などが所持して転倒警報機能付き携帯機1からの転倒通知メールを受信する受信用携帯機または専用表示装置と、両携帯機間を接続する公共通信網とからシステムを構成する。一方、転倒警報機能付き携帯機1の所持者が構内作業者などで、転倒を通知する相手がセンタ管理者である場合、複数の上述した転倒警報機能付き携帯機1と、各転倒警報機能付き携帯機1からの転倒通知メールの送信先を識別しながら受信可能なサーバと、このサーバが受信した転倒通知メールを表示する表示装置と、これら両者を接続する自営通信網やPBXなどからシステムを構成することもできる。
【0009】
転倒警報機能付き携帯機1の所持者が転倒したことを検出する転倒検知部10としては種々の構成が考えられるが、ここでは、ホルダを使用して通常の保持状態をほぼ垂直と規定して一定以上の傾きを検出するものとし、この種の転倒検知部10による転倒検知精度をさらに高めるために詳細を後述する判別用タイマ12と通知キャンセル部14とを追加している。また転倒警報機能付き携帯機1からの転倒通知メールには、時刻、転倒した旨の連絡の他に、GPS受信機11で取得したGPS信号に基づく所持者の所在位置である転倒位置等を含めている。また通知キャンセル部14としては、専用の操作釦や操作キーとして新たに追加しても良いし既設のいずれかの操作釦や操作キーでも良く、確認コールを出力した後の判別用タイマ12によって定めた設定時限内にそれが操作された場合に、転倒検知プログラムに基づく通知をキャンセルする信号として用いるものである。
【0010】
次に、上述した転倒警報機能付き携帯機1による転倒検知処理動作を図2に示したフローチャートを用いて説明する。
制御部7が転倒検知プログラムに基づく機能を開始すると、ステップS1で転倒検知部10からの転倒検知信号の有無を監視する。転倒検知部10からの転倒検知信号を検出した場合、ステップS2で判別用タイマ12による時限カウントを開始させる。ステップS3では、判別用タイマ12による判定用第一設定時限内で転倒検知信号が継続しているか否かを判定し、判定用第一設定時限内で転倒検知信号が継続していないときは一時的な検出とし、一方、判定用第一設定時限内で転倒検知信号が継続しているときは転倒の可能性があると判断する。後者の転倒の可能性があると判断した場合、ステップS4で確認コールを行う。この確認コールは、記憶部6から確認コールデータを抽出し、スピーカ8から「大丈夫ですか」という音声を出力しても良いし、他の出力音と区別可能なパターン音を出力して所持者に実際に転倒しているかどうかの確認操作を促すものでも良い。ステップS5では、判別用タイマ12による判定用第二設定時限内に確認コールに対して所持者が通知キャンセル部14を操作して実際には転倒していないことを知らせる応答があるかどうかを監視する。
【0011】
この確認コールを聞いた所持者が実際には転倒していない場合、通知キャンセル部14を操作してキャンセルするが、所持者が実際に転倒している場合、道理にかなった判定用第二設定時限が経過しても通知キャンセル部14を操作することができない。従って、ステップS3およびステップS5の判定によって、転倒検知部10からの転倒検知信号が実際の転倒を検出したものか、それとも実際には転倒していないが所持者の一時的な姿勢などによって検出したものかを判別することができる。
【0012】
確認コールに対する反応としての通知キャンセル部14の操作がなく、しかも判別用タイマ12で予め設定した判定用第二設定時限が経過した場合、所持者が転倒したと最終判定し、ステップS6でGPS受信機11で取得したGPS信号に基づいて所持者の所在位置である転倒位置を算出し、ステップS7で記憶部6から予め登録したメール内容データに先の転倒位置情報や時刻を付加して転倒通知メールを作成し、記憶部6に予め登録したメール送信先メールアドレスを抽出してその受信用携帯機などに転倒通知メールを送信する。
【0013】
この転倒通知メールは、受信用携帯機や専用表示装置によって受信され、表示部にメール内容などを表示させ、受信用携帯機や専用表示装置の利用者がこれを見て、転倒警報機能付き携帯機1の所持者が転倒したとの情報を容易に入手し、ふさわしく対処することができる。
【0014】
一方、ステップS4での確認コールを聞いた所持者が実際には転倒していない場合、転倒検知部10が実際には転倒ではない状況を検出したと認識して通知キャンセル部14を操作する。所持者が通知キャンセル部14を操作した場合、ステップS6およびステップS7による転倒通知メール作成および発信処理はキャンセルされて行われない。しかし、ステップS5で通知キャンセル部14の操作が検出されるため、続くステップS8ではリセット用タイマ13による時限カウントが開始される。ステップS9では、リセット用タイマ13で予め設定したリセット用設定時限がカウントされたかどうかが監視されており、リセット用設定時限が経過したと判定すると、ステップS10でリセット開始部15からリセット開始指令が与えられてプログラムに従ってリセット処理が開始され、判別用タイマ12、リセット用タイマ13および転倒検知部10がリセットされ、転倒検知部10による転倒検知が再開される。このリセット用タイマ13によって、リセット用設定時限だけ転倒検知部10による転倒検知が再開されるまでの時間が確実に遅延されるため、従来のように誤検出を繰り返すことがない。しかも、リセット用設定時限の経過後には他の要素の影響を受けることなく確実にリセット処理を行うことができる。
【0015】
この実施の形態による転倒警報機能付き携帯機1では、ステップS3で転倒検知信号が判定用第一設定時限内で継続して検出されたときにステップS4で所持者への確認コールを行い、この確認コールに対して実際の転倒でない場合には所持者がキャンセル操作できるように通知キャンセル部14を有する構成としたため、転倒検知部10による誤検出、例えば、転倒状態に類似した姿勢での作業を連続して行っているために検出した場合でも、これを通知キャンセル部14の操作によって誤検知と判定して転倒通知をキャンセルすることができるようになり、この種の誤検知を排除して検知精度を高めることができる。一方、所持者が実際に転倒して通知キャンセル部14を操作できないような状況は、転倒検知部10による転倒検知信号が判別用タイマ12による判定用第一設定時限内で継続していることと、判別用タイマ12による判定用第二設定時限内で通知キャンセル部14の操作がないことによって確実に検出される。しかも所持者側では、この種の誤検知を自ら排除するために時々姿勢を変えるような煩わしい行為を強制されることがなくなり、単に通知キャンセル部14の操作だけで済むため取り扱いが非常に簡単になる。
【0016】
また、確認コールに対する通知キャンセル部14の操作があって誤検知であったと最終判断した場合でも、転倒検知部10をリセットして検知を再開するタイミングを十分考慮する必要がある。つまり、この転倒検知部10による検知再開は、リセット用タイマ13によるリセット用設定時限を考慮せずに、直ちに与えられる転倒検知部10のリセット信号に基づいて行うと、確認コールに対して応答した後も転倒時と類似の姿勢で作業などを継続している場合、転倒検知部10の検知が再開すると再び上述した検出と、確認コールが繰り返されてしまう。このため所持者は、その都度、通知キャンセル部14を操作しなければならない。
【0017】
しかしながら、この実施の形態による転倒警報機能付き携帯機では、誤検知と最終判定した後にカウントを開始するリセット用タイマ13と、このリセット用タイマ13によるリセット用設定時限の経過後に転倒検知部10のリセット処理を開始する信号を与えるリセット開始部15とを設けているため、リセット用タイマ13によるリセット用設定時限によって転倒検知部10のリセットが遅延されるようになる。このため、検知再開によって直ちに再び転倒検知されることになる状況、つまり、所持者が誤検出を生じさせるような姿勢での作業などを継続している場合でも、遅延された分だけ検知頻度を軽減することができる。従って、高頻度での誤検知を繰り返すことが無くなり、同時に所持者に通知キャンセル部14の操作を繰り返すなど煩わしい使用形態を強いることなく、使い勝手を大幅に改善することができる。しかも、転倒検知部10による検知再開はリセット用設定時限経過後にリセット開始部15によって確実に実施されるので、検知再開後に発生するかも知れない転倒事故を転倒検知部10で確実に検出することができるようになる。
【0018】
上述したステップS3の判定で、転倒検知信号の継続時間が判定用第一設定時限よりも短い場合、所持者の一時的な作業姿勢が転倒検知信号を発生させたもので誤検出と判定し、ステップS8に進み、先の場合と同様にリセット用設定時限を経過した後、リセット開始部15からの信号でリセット処理が行われる。この場合も、リセット用設定時限経過後に転倒検知部10での転倒検知が再開されるので、直ちに転倒検知部10での転倒検知を再開する方式に比べて誤検出を繰り返す頻度を軽減することができる。
【0019】
次に、本発明の他の実施の形態による転倒警報機能付き携帯機について説明する。
この実施の形態における転倒警報機能付き携帯機は、図1に示した通知キャンセル部14を省略し、転倒検知部10による転倒検知信号と、判別用タイマ12における上述の判定時間として設定した判定用第一設定時限とを使用し、転倒検知部10で検出した転倒検知信号が第一設定時限で規定した所定時間継続するかどうかで実際に転倒が生じたか否かを最終判別するようにした方式に適用したものである。通知キャンセル部14を除いてほぼ同様の構成であるから、図1を兼用しながら図3の転倒検知処理動作を示すフローチャートについて説明する。
【0020】
ステップS1では転倒検知部10からの転倒検知信号の有無を監視する。転倒検知部10からの転倒検知信号を検出した場合、ステップS2で判別用タイマ12による時限カウント動作を開始させる。続くステップS3では、判別用タイマ12で予め設定した判定用第一設定時限内で転倒検知信号が継続的に検知されているかどうかを監視する。このときの判定用第一設定時限は図2に示したものとは別個に設定しても良い。このステップS3による監視の結果、転倒検知部10からの転倒検知信号が所定時間継続して検知された場合、実際の転倒が生じていると最終判定し、一方、転倒検知信号が所定時間内に無くなった場合、実際の転倒ではなく一時的な転倒のような状態から正常状態へ復帰したと最終判定する。
【0021】
判定用第一設定時限内にほぼ連続的に転倒検知信号が検出された場合は、所持者が転倒したと最終判定し、ステップS6でGPS受信機11で取得したGPS信号に基づいて所持者の所在位置である転倒位置を算出し、ステップS7で記憶部6から予め登録したメール内容データおよびそのメール送信先メールアドレスを抽出し、先の転倒位置情報や時刻を含めた転倒通知メールを作成し、それをメール送信先メールアドレスの受信用携帯機や専用表示装置へ送信する。
【0022】
このメールが受信用携帯機や専用表示装置によって受信されると、表示部に転倒通知メールの内容などを表示させ、受信用携帯機や専用表示装置の利用者がこれを見て、転倒警報機能付き携帯機の所持者が転倒したとの情報を容易に入手することができ、その後、ふさわしい対応をすることができる。
【0023】
一方、ステップS3における判定の結果、判定用第一設定時限内に転倒検知信号が無くなったときは、実際の転倒ではなかったと最終判断し、ステップS6およびステップS7による転倒通知メールの作成および送信は行わず、続くステップS8でリセット用タイマ13による時限カウントを開始する。ステップS9では、リセット用タイマ13で予め設定したリセット用設定時限がカウントされたかどうかを監視し、リセット用設定時限が経過したと判定したとき、ステップS10でリセット開始部15が作動してリセット開始信号が与えられ、判別用タイマ12、リセット用タイマ13および転倒検知部10のリセット処理が行われ、転倒検知部10による転倒検知が再開される。
【0024】
ここで説明した転倒警報機能付き携帯機1は、判定用第一設定時限内に転倒検知信号が継続的に検出している場合に、その所持者が転倒したと最終判断するようにし、判定用第一設定時限内に転倒検知信号が無くなった場合には誤検出と最終判定する方式であるが、この種のものでも転倒検知部10をリセットして検知を再開するタイミングを十分考慮しなければならない。つまり、リセット用タイマ13がない場合、誤検出と判定された後に携帯機の傾斜が元に戻ったことを検知してリセット開始部からリセット処理を開始させて転倒検知部10による検知を再開するようにすることが考えられるが、先の実施の形態でも述べたように携帯機所持者が転倒時と類似の姿勢で作業などを継続していると、携帯機の傾斜が元に戻らずリセット処理は行われないので転倒検知部10による検知は再開せず、その後に実際の転倒事故が発生しても、転倒検知部10でこれを検出することができない状況が生じてしまう。
【0025】
しかし、この実施の形態による転倒警報機能付き携帯機1は、転倒検知部10からの転倒検知信号と判別用タイマ12の判定用第一設定時限とにより誤検出と最終判定した後に、カウントを開始するリセット用タイマ13を設け、このリセット用タイマ13によるリセット用設定時限をカウントした後にリセット開始部15から開始指令を与えて転倒検知部10をリセットするようにしたため、リセット用タイマ13によるリセット用設定時限によって転倒検知部10のリセットが設定時間だけ遅延されるようになり、所持者が誤検出を生じさせるような姿勢での作業などを継続している場合でも、従来のように誤検知を繰り返すことが無くなり、同時に所持者に誤検知を避けるために姿勢を変えるなどの煩わしい使用形態を強いることなく、使い勝手を大幅に改善することができる。また、転倒検知部10による検知再開はリセット用設定時限経過後に確実に実施されるので、その後に発生する転倒事故を転倒検知部10で確実に検出することができるようになる。
【0026】
上述した各実施の形態による転倒警報機能付き携帯機1は、その転倒検知部10として、通常の使用形態ではほぼ垂直状態を保持するようにするという前提で、携帯機の傾きが所定角度以上になったことを検知する傾きセンサーを例示したが、その他の変動要素によって転倒状態を検出するようにしても良く、また、その他の変動要素を複数組み合わて転倒状態を検出するようにしても良い。いずれの場合も、転倒状態検出が最終的に誤検出と判定された後にリセット用設定時限をカウントするリセット用タイマ13と、このリセット用タイマ13がリセット用設定時限を経過したときリセット信号を与えるリセット開始部15とを設けることによって、同様の効果を得ることができる。
【0027】
また上述した各実施の形態による転倒警報機能付き携帯機1は、GPS受信機11を用いて、ステップS6でGPS信号に基づいて所持者の所在地である転倒位置を算出したが、このGPS受信を受信できない建物中や地下街等の自営無線システムで使用する場合、次のように転倒位置を算出することができる。転倒警報機能付き携帯機1は基地局が定期的に送信しているエリア情報(基地局のID情報など)を検出している。そこで、最寄りの基地局経由で位置情報を管理する制御装置を設け、この制御装置に対して転倒警報機能付き携帯機1がどの基地局のエリアにいるか位置登録を行い、制御装置でこの位置情報を転倒警報機能付き携帯機1の位置情報として管理するようにする。転倒警報機能付き携帯機1が別の基地局のエリアに移動すると、新たな最寄りの基地局が送信しているエリア情報を検出し、再度、制御装置に対して位置登録を行うので、制御装置は位置情報を更新して転倒警報機能付き携帯機1の現在位置を管理することができる。また、転倒警報機能付き携帯機1が発報する場合には、位置登録を行っている基地局のエリア情報を制御装置に送信するため、このとき位置情報の更新を行うようにする。このような制御装置による転倒警報機能付き携帯機1の位置情報管理によれば、GPS受信機を使用した場合よりも位置検出精度は落ちるが、エリア情報から転倒警報機能付き携帯機1の所持者の転倒位置をエリア範囲で把握することができる。
【0028】
さらに上述した各実施の形態による転倒警報機能付き携帯機1は、その所持者が転倒したことを検出した場合、管理センタ等に対して転倒通知メールを送信するようにしているが、必ずしもメールでなく転倒警報機能付き携帯機1のID情報と位置情報などのデータを転倒通知として管理センタへ送信するようにし、管理センタで転倒通知データに基づいて表示装置に表示を行うこともできる。この場合、転倒警報機能付き携帯機1からの転倒通知は、普通の電話発信とすると共に、通常発信の電話番号とは異なり例えば「DDD」という電話番号に電話をかけ、制御装置ではこの「DDD」受信を転倒通知として判別し、RS232Cケーブルで接続したパソコンの表示装置に転倒情報および位置情報を表示させるようにすることができる。また別の例では、制御装置とパソコンの表示装置とをLAN接続し、パソコンで制御LANパケットを常時監視し、転倒警報機能付き携帯機1が位置登録したパケットを取り出して位置情報を登録するようにし、転倒警報機能付き携帯機1からの転倒通知があった場合、制御LAN上での「DDD」パケットをトリガにして表示装置に転倒情報および位置情報を表示させるようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の転倒警報機能付き携帯機は、図1に示した構成以外のものにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態による転倒警報機能付き携帯機を示すブロック構成図である。
【図2】図1に示した転倒警報機能付き携帯機の転倒検知動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の他の実施の形態による転倒警報機能付き携帯機の転倒検知動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1 転倒警報機能付き携帯機
2 アンテナ
3 無線I/F
4 操作部
5 表示部
6 記憶部
7 制御部
8 スピーカ
9 マイク
10 転倒検知部
11 GPS受信機
12 判別用タイマ
13 リセット用タイマ
14 通知キャンセル部
15 リセット開始部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転倒検知部からの転倒検知信号と、判別用タイマで設定した設定時限とを用いて転倒状態の判定を行い、転倒したと判定したとき記憶部に予め登録した通知先を抽出して転倒通知を送信し、一方、転倒していないと判定したときリセット開始部からのリセット信号で前記転倒検知部をリセットして前記転倒検知部による検知を再開するように構成した転倒警報機能付き携帯機において、転倒していないと判定した後に作動するリセット用タイマを設け、このリセット用タイマによってリセット用設定時限を経過したとき、前記リセット開始部からのリセット信号を前記転倒検知部、前記判別用タイマおよび前記リセット用タイマに与えるように構成したことを特徴とする転倒警報機能付き携帯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−61418(P2010−61418A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226715(P2008−226715)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】