説明

転写シート

【課題】 耐磨耗性、耐薬品性、装飾性等に優れた表面を持つ成形品を低コストで得ることができ、かつ成形品曲面部においてクラック、皺などを発生させない転写シートを提供する。
【解決手段】 基材シートの少なくとも片面に、転写時の熱により部分的に発泡する発泡層が設けられ、前記発泡層の基材シートを有さない側または基材シートの発泡層を有さない側に、少なくとも接着層を有することを特徴とする転写シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐磨耗性、耐薬品性、装飾性等に優れた表面を持つ成形品を低コストで得ることができ、かつ成形品曲面部においてクラック、皺などを発生させない転写シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耐摩耗性、耐薬品性、装飾性等に優れた表面を持つ成形品を得るための成形品の表面改質方法として転写シートを成形品表面に転写する方法がある。具体的には、剥離性を有する基材シート上に形成した保護層および装飾層を成形品表面に接着させたあと、基材シートを剥離する転写法や、基材シート上に保護層および装飾層が形成されたシートを成形品表面に接着させるラミネート法である。転写シートの転写手段として、熱プレス転写方式、真空加圧転写方式、射出成形金型内成形同時転写方式などがある。
表面に凹凸のあるエンボス成形品や板材表面、立体形状を有する成形品への転写シートの転写において、凹凸部分や曲面部分などの3次元形状を有する部分で、クラックや皺などの転写不良を改善するために、発泡フィルムや発泡層を有する転写シートが用いられている(特許文献1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−176109号公報
【特許文献2】特開2006−315407号公報
【特許文献3】特開平10−309896号公報
【特許文献4】特開平05−139097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成型品への転写シートの転写において、従来の発泡シートや発泡層を用いた転写シートでは、クラックや皺などの転写不良を十分に改善できない場合があった。特に複雑形状、深絞り形状、曲率半径の小さい曲面形状などを有する部分等において転写不良が発生した。
例えば、特許文献1〜3のように転写前に予め発泡している発泡シートや発泡層を有する転写シートでは、転写性を上げるためクッション性を上げると抗張力や相関強度が低下したり、転写時の熱や圧力で発泡構造がつぶれていまい効果が得られない場合があった。
また、転写時の熱で発泡する発泡層を有する転写シートでも同様な転写不良が発生する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、転写不良が発生しやすい複雑形状、深絞り形状、曲率半径の小さい曲面形状などを有する部分およびその周辺部のみを、転写時の熱により部分的に発泡させることにより、転写性を改善できることを見出した。すなわち、発泡圧力が部分的に加えられることにより、転写不良が発生しやすい部分での転写圧力が上昇するため、転写シートの成形品への形状追随性がよくなる結果だと考えられる。本発明は、以下の[1]〜[4]の構成を採用した。
【0006】
[1]基材シートの少なくとも片面に、転写時の熱により部分的に発泡する発泡層が設けられ、前記発泡層の基材シートを有さない側または基材シートの発泡層を有さない側に、少なくとも接着層を有することを特徴とする転写シート。
[2]上記[1]に記載の発泡層が、活性エネルギー線の作用によって酸を発生する酸発生剤または塩基を発生する塩基発生剤を含有し、さらに、酸または塩基と反応して一種類以上の低沸点揮発性物質を分解脱離する分解発泡性官能基を有する化合物を含有する発泡性組成物に、活性エネルギー線を部分的に照射し、加熱することにより部分的に発泡することを特徴とする転写シート。
[3]発泡層の基材シートを有さない側または発泡層を有さない基材シート上に、剥離層を有する[1]および/または[2]に記載の転写シート。
[4]基材シートの少なくとも片面に、装飾層を有する[1]〜[3]のいずれかに記載の転写シート。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、耐磨耗性、耐薬品性、装飾性等に優れた表面を持つ成形品を低コストで得ることができ、かつ複雑形状、深絞り形状、曲率半径の小さい曲面形状などを有する成形品曲面部においてもクラック、皺などを発生させない転写シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の転写シートの一例を示す模式断面図
【図2】本発明の転写シートの他の例を示す模式断面図
【図3】本発明の転写シートの他の例を示す模式断面図
【図4】本発明の転写シートの他の例を示す模式断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図示に従って実施形態の一例を説明する。
図1は、本発明に係る転写シートの一例を示す模式断面図であり、図2〜図4は本発明に係る転写シートの他の例を示す模式断面図である。
<転写シート>
まず、図1に示した本発明の転写シート8について説明する。
(基材シート)
基材シート1としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などの樹脂シート、アルミニウム箔、銅箔などの金属箔、グラシン紙、コート紙、セロハンなどのセルロース系シート、あるいは以上の各シートの複合体などを用いることができる。
(剥離層)
剥離層5は、基材シート1上に転写層7を形成する前に形成する。基材シート1から転写層7の剥離性が良い場合には、剥離層5を形成せず、基材シート上に転写層7を直接設けてもよい。剥離層5は、転写後に基材シート1を剥離した際に、基材シート1とともに転写層5から離型する。
剥離層の材質としては、例えば、メラミン樹脂系剥離剤、アクリル樹脂系剥離剤、シリコーン樹脂系剥離剤、フッ素樹脂系剥離剤、セルロース誘導体系剥離剤、尿素樹脂系剥離剤、ポリオレフィン樹脂系剥離剤、パラフィン系剥離剤およびこれらの複合型剥離剤などを用いることができる。また、剥離層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、スプレーコート法、リップコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。また、剥離層5は0.1〜5μm、好ましくは0.1〜2μmの厚さに形成する。0.1μmを下回ると十分な剥離性が得られず、5μmを上回るとコスト高となる。
【0010】
(保護層)
保護層3は、転写後に基材シート1を剥離した際に基材シート1または剥離層から剥離して転写物の最外層となり、薬品や摩擦から成形品7や装飾層3を保護するための層である。保護層3の材質としては、耐摩耗性や耐薬品性など保護能力に優れる、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂およびこれらの複合材料も用いることができる。中でも活性エネルギー線硬化型アクリル樹脂が好ましい。また、保護層3の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、リップコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。一般に、保護層3は0.5〜30μm、好ましくは1〜6μmの厚さに形成する。保護層3の厚さが0.5μmを下回ると耐摩耗性、耐薬品性が弱く、30μmを上回るとコスト高となり、また箔切れが悪くなり不必要な部分に保護層3が残ってバリとなる。
【0011】
(装飾層)
装飾層6は、保護層3の上に、通常は印刷層として形成する。印刷層の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。装飾層6の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法などを用いるとよい。
特に、多色刷りや階調表現を行うには、オフセット印刷法やグラビア印刷法が適している。また、単色の場合には、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、リップコート法などのコート法を採用することもできる。装飾層6は、表現したい装飾に応じて、全面的に設ける場合や部分的に設ける場合もある。また、装飾層6は、金属蒸着層からなるもの、あるいは印刷層と金属蒸着層との組み合わせからなるものでもよいし、合成皮革等の凹凸形状を有したり、ソフトな触感が得られる等、装飾機能を持っている層でもよい。
【0012】
接着層4は、成形品表面に上記の各層を接着するものである。接着層4は、保護層3または装飾層6上の、接着させたい部分に形成する。すなわち、接着させたい部分が全面なら、接着層4を全面に形成する。また、接着させたい部分が部分的なら、接着層4を部分的に形成する。また、接着層4としては、成形品の素材に適した樹脂を適宜使用する。例えば、成形品の材質がポリアクリル系樹脂の場合はポリアクリル系樹脂を用いるとよい。また、成形品の材質がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを使用すればよい。さらに、成形品の材質がポリプロピレン樹脂の場合は、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂が使用可能である。接着層4の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。なお、保護層3や装飾層6が成形品に対して充分接着性を有する場合には、接着層4を設けなくてもよい。
【0013】
さらに、転写層7の構成は、上記した構成に限定されるものではなく、例えば、成形品の地模様や透明性を生かし、表面保護処理だけを目的とした転写シート8を用いる場合には、図3に示すように、基材シート1の上に剥離層5、保護層3、および接着層4を上述のように順次形成して転写層7より装飾層6を省略することができる。表面保護処理だけを目的とした転写シート8としては、図3の剥離層5と基材シート1の間に発泡層2を設けた図4に示す転写シートも例示できる。
さらにまた、転写層7の構成層間にアンカー層を設けてもよい。アンカー層は、転写層7間の密着性を高めたり、薬品から成形品や装飾層6を保護するための樹脂層であり、例えば、二液硬化性ウレタン樹脂、メラミン系やエポキシ系などの熱硬化性樹脂、塩化ビニル共重合体樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。アンカー層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法やスクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0014】
以上は、本発明に係る転写層7を有する転写シートの一例であるが、転写層を持たない基材シート1を成形品に転写される転写シートの一例を図2に示す。
各構成層は、図1および図3で用いられるものと同様のものを用いることができる。
発泡層2が発泡により白化することが外観上問題になる場合、発泡による色調変化を隠蔽する隠蔽層を、発泡層2と装飾層6間に設けることもできる。隠蔽層は白色顔料や黒色顔料などを含む樹脂層からなり、隠蔽層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法やスクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0015】
(発泡層)
本発明の発泡層2は、熱転写時の熱により発泡する発泡層であり、転写不良が発生しやすい複雑形状、深絞り形状、曲率半径の小さい曲面形状などを有する部分およびその周辺部のみを、適宜部分的に発泡させた発泡層である。これにより、転写シートの成形品への形状追随性を格段に上げることができる。このような発泡層としては、一般的に用いられる発泡剤を混合した樹脂をグラビア印刷法やスクリーン印刷法などの印刷により部分的に形成することが一例として挙げられる。発泡剤としては、熱膨張性中空粒子、無機発泡剤、ニトロソ系発泡剤、アゾ系発泡剤、スルホニルヒドラジド系発泡剤などがある。発泡剤を混合した樹脂を部分的に形成する場合、発泡剤を混合した樹脂がある部分とない部分での転写シートの厚さが不均一となり、この不均一な厚さの差が100μmを越えると、その段差により転写圧力がかかりにくい部分ができ、転写不良になる場合がある。そのため、発泡剤を混合した樹脂を部分的に形成する場合、発泡剤を混合した樹脂の厚さは100μm以下にすることが好ましい。
【0016】
転写シートの厚さの不均一性が転写不良の原因となる場合があるため、発泡層2のさらに好ましい材料は、活性エネルギー線および熱エネルギーを部分的に付与して部分発泡させることができる発泡性組成物である。このような発泡性組成物の具体的な例としては、(A)光照射によってガスを発生させる光発泡性化合物や、(B)光重合性化合物と熱発泡性化合物を組み合わせたもの(特許3422384号公報参照、特開平5−477号公報参照)、(C)活性エネルギー線の作用によって酸を発生する酸発生剤または塩基を発生する塩基発生剤と、酸または塩基と反応して一種類以上の低沸点揮発性物質を分解脱離する分解発泡性官能基を有する分解発泡性化合物とを含有する発泡性組成物(特開2004−2812号公報参照)が挙げられる。発泡させる部分をパターン制御でき、発泡部の気泡構造も制御できるという観点から、(C)の発泡性組成物(以下「組成物(C)」という。)がさらに好ましい。
【0017】
発泡層2のより好ましい形成方法としては、まず、上記発泡性組成物をグラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、リップコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法により、一般に1〜50μm、好ましくは5〜40μmの厚さに形成する。発泡性組成物の厚さが1μmを下回ると発泡による形状追随効果が弱く、50μmを上回るとコスト高となる。次に、得られた発泡性組成物層に、活性エネルギー線および熱エネルギーを部分的に付与して部分的に発泡させる。本発明では熱転写時の熱を利用して発泡させるため、熱転写性との両立を鑑みると、熱エネルギーを部分的に付与するより、活性エネルギー線を部分的に付与する方が好ましい。以下に、組成物(C)を例にとって、材料および発泡層の形成方法についてさらに詳しく述べる。
【0018】
<組成物(C)>
組成物(C)は、活性エネルギー線及び熱エネルギーの作用により発泡性が発現する組成物である。その発泡性組成物は、少なくとも次の2つの成分を含有する。その一つは、活性エネルギー線の作用によって酸を発生する酸発生剤、または塩基を発生する塩基発生剤である。他の一つは、前記発生した酸または塩基と反応して一種類以上の低沸点揮発性化合物を分解脱離する分解発泡性化合物である。
(酸発生剤及び塩基発生剤)
組成物(C)に用いられる酸発生剤又は塩基発生剤には、一般的に化学増幅型フォトレジスト、及び光カチオン重合などに利用されている光酸発生剤や光塩基発生剤と呼ばれているものを用いることができる。
組成物(C)に好適な光酸発生剤としては、
(1)ジアゾニウム塩系化合物
(2)アンモニウム塩系化合物
(3)ヨードニウム塩系化合物
(4)スルホニウム塩系化合物
(5)オキソニウム塩系化合物
(6)ホスホニウム塩系化合物
などから選ばれた芳香族もしくは脂肪族オニウム化合物のPF6、AsF6、SbF6
CF3SO3塩を挙げることができる。その具体例を下記に列挙するが、これら例示したものに限定されるものではない。
ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(p−メチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(p−トリルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(4−tert−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(2,4−キシリルスルホニル)ジアゾメタン、
ベンゾイルフェニルスルホニルジアゾメタン、
【0019】
トリフルオロメタンスルホネート、
トリメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、
2,4,6−トリメチルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
p−トリルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、
【0020】
4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、
1−(2−ナフトイルメチル)チオラニウムヘキサフルオロアンチモネート、
1−(2−ナフトイルメチル)チオラニウムトリフルオロメタンスルホネート、
4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、
4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
(2−オキソ−1−シクロヘキシル)(シクロヘキシル)メチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
(2−オキソ−1−シクロヘキシル)(2−ノルボルニル)メチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウムパーフルオロメタンスルホネート、
ジフェニル−4−tert−ブチルフェニルスルホニウムパーフルオロオクタンスルホネート、
ジフェニル−4−メトキシフェニルスルホニウムパーフルオロブタンスルホネート、
ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウムトシレート、
ジフェニル−4−メトキシフェニルスルホニウムトシレート、
ジフェニル−4−イソプロピルフェニルスルホニウムトシレート

ジフェニルヨードニウム、
ジフェニルヨードニウムトシレート、
ジフェニルヨードニウムクロライド、
ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、
ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、
ジフェニルヨードニウムナイトレート、
ジフェニルヨードニウムパークロレート、
ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0021】
ビス(メチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、
ビス(メチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、
ビス(メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、
ビス(メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロブタンスルホネート、
【0022】
2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2,4,6−トリ(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−フェニル−4,6−ジトリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、
2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ジトリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、
2−ナフチル−4,6−ジトリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、
2−ビフェニル−4,6−ジトリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、
2−(4’−ヒドロキシ−4−ビフェニル)−4,6−ジトリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、
2−(4’−メチル−4−ビフェニル)−4,6−ジトリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、
2−(p−メトキシフェニルビニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−メトキシ−1−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソラン−5−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(2,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(2−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−ブトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
【0023】
2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルピリリウムトリフロオロメタンスルホネート、
トリメチルオキシニウムテトラフロオロボレート、
トリエチルオキシニウムテトラフロオロボレート、
N−ヒドロキシフタルイミドトリフルオロメタンスルホネート、
N−ヒドロキシナフタルイミドトリフルオロメタンスルホネート、
(α−ベンゾイルベンジル)p−トルエンスルホネート、
(β−ベンゾイル−β−ヒドロキシフェネチル)p−トルエンスルホネート、
1,2,3−ベンゼントリイルトリスメタンスルホネート、
(2,6−ジニトロベンジル)p−トルエンスルホネート、
(2−ニトロベンジル)p−トルエンスルホネート、
(4−ニトロベンジル)p−トルエンスルホネート、
などが挙げられる。なかでも、ヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物が好ましい。
【0024】
また、前記オニウム化合物以外にも、酸発生能を有するフルオレン化合物誘導体も使用できる。例えば、2−[2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−1−(ノナフルオロブチルスルフォニルオキシイミノ)−ブチル]フルオレンや、2−[2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−(ノナフルオロブチルスルフォニルオキシイミノ)−ペンチル]フルオレンなどがあり、また、活性エネルギー線照射によりスルホン酸を光発生するスルホン化物、例えば2−フェニルスルホニルアセトフェノン、活性エネルギー線照射によりハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、例えば、フェニルトリブロモメチルスルホン、及び1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン、並びに活性エネルギー線照射により燐酸を光発生するフェロセニウム化合物、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)フェロセニウムヘキサフルオロフォスフェート、及びビス(ベンジル)フェロセニウムヘキサフルオロフォスフェートなどを用いることができる。
さらには、下記に挙げる酸発生能を有するイミド化合物誘導体も使用できる。
N−(フェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキ
シイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフタルイミド、
N−(10−カンファースルホニルオキシ)ナフタルイミド。
組成物(C)に好適な光塩基発生剤としては、
(1)オキシムエステル系化合物
(2)アンモニウム系化合物
(3)ベンゾイン系化合物
(4)ジメトキシベンジルウレタン系化合物
(5)オルトニトロベンジルウレタン系化合物
などが挙げられ、これらは光エネルギーの照射により塩基としてアミンを発生する。その他にも、光の作用によりアンモニアやヒドロキシイオンを発生する塩基発生剤を用いてもよい。これらは、例えばN−(2−ニトロペンジルオキシカルボニル)ピペリジン、1,3−ビス〔N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)−4−ピペリジル〕プロパン、N,N’−ビス(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ジヘキシルアミン、及びO−ベンジルカルボニル−N−(1−フェニルエチリデン)ヒドロキシルアミンなどから選ぶことができる。さらには加熱により塩基が発生する化合物を上記光塩基発生剤と併用してもよい。
また、光酸発生剤または光塩基発生剤が活性化する光エネルギーの波長領域をシフトまたは拡大するために、適宜光増感剤を併用してもよい。例えば、オニウム塩化合物に対する光増感剤には、アクリジンイエロー、ベンゾフラビン、アクリジンオレンジなどが挙げられる。
必要な酸を生成しながらも酸発生剤または塩基発生剤の添加量や光エネルギーを最小限に抑制するために、酸増殖剤や塩基増殖剤(K.Ichimura et al.,Chemistry Letters,551−552(1995)、特開平8−248561号公報、特開2000−3302700号公報参照 )を酸発生剤または塩基発生剤とともに用いることができる。酸増殖剤は、常温付近で熱力学的に安定であるが、酸によって分解し、自ら強酸を発生し、酸触媒反応を大幅に加速させる。この反応を利用することにより、酸または塩基の発生効率を向上させて、発泡生成速度や発泡構造をコントロールすることも可能である。
【0025】
(分解発泡性化合物)
組成物(C)に用いられる分解発泡性化合物(以下、分解性化合物と略す)は、酸または塩基と反応して一種類以上の低沸点揮発性物質(低沸点揮発性化合物)が分解脱離する化合物である。
低沸点とは、発泡時にガス化が可能な沸点、すなわち、発泡時の温度よりも低い沸点を有することを意味する。低沸点揮発性物質の沸点は、通常100℃以下であり、常温以下であることが好ましい。
低沸点揮発性物質としては、例えばイソブテン(沸点;−7℃) 、二酸化炭素(沸点;−79℃)、窒素(沸点;−196℃)などがあげられる。
分解性化合物には、低沸点揮発性物質を発生し得る分解性官能基があらかじめ導入されていなければならない。
分解性官能基の内、酸と反応するものとしては、−O−tBuの構造式で示されるtert−ブチルオキシ基、−CO−O−tBuの構造式で示されるtert−ブチルオキシカルボニル基、−O−CO−O−tBu の構造式で示されるtert−ブチルカーボネート基、ケト酸およびケト酸エステル基などが挙げられる。このとき、−tBuは−C(CH3)3を示す。酸と反応して、tert−ブチルオキシ基およびtert−ブチルオキシカルボニル基はイソブテンガスを、tert−ブチルカーボネート基はイソブテンガスと二酸化炭素を、ケト酸部位は二酸化炭素を、ケト酸エステルたとえばケト酸tert−ブチルオキシ基は二酸化炭素とイソブテンガスを発生する。
塩基と反応するものとしては、ウレタン基、カーボネート基などが挙げられる。塩基と
反応して、ウレタン基、カーボネート基は二酸化炭素ガスを発生する。
分解性化合物の形態は、モノマー、オリゴマー、高分子化合物(ポリマー)の何れであってもよい。分解性化合物は、以下のような化合物群に分類することができる。
(1)非硬化性低分子系の分解性化合物群
(2)硬化性低分子系の分解性化合物群
(3)高分子系の分解性化合物群
(1)の非硬化性低分子系の分解性化合物群は、活性エネルギー線を付与しても、重合反応を生じない低分子系の分解性化合物群である。(2)の硬化性低分子系の分解性化合物群は、活性エネルギー線の付与により重合反応を生じて硬化するような化合物群であり、たとえばビニル基のような重合性基を含んでいる。また、(3)の高分子系の分解性化合物群は、すでに重合体となっている高分子化合物(ポリマー)である。
上記分解性化合物群は単独で用いてもよいし、異なる2種以上を混合併用してもよい。(2)の硬化性低分子系の分解性化合物群、または(3)の高分子系の分解性化合物群を用いると、均一な微細気泡の形成が容易であり、強度的に優れた発泡層を得ることが可能であり好ましい。以下に分解性化合物の具体例を列挙するが、これら例示したものに限定されるものではない。
【0026】
−a、非硬化性低分子系の分解性化合物群(酸分解性)
1−tert−ブトキシ−2−エトキシエタン、
2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)ナフタレン、
N−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)フタルイミド、
2,2−ビス[p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)フェニル]プロパンなど
【0027】
(1)−b、非硬化性低分子系の分解性化合物群(塩基分解性)
N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)ピペリジンなど
【0028】
−a、硬化性低分子系の分解性化合物群(酸分解性)
tert−ブチルアクリレート、
tert−ブチルメタクリレート、
tert−ブトキシカルボニルメチルアクリレート、
2−(tert−ブトキシカルボニル)エチルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニル)フェニルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニルエチル)フェニルアクリレート、
1−(tert−ブトキシカルボニルメチル)シクロヘキシルアクリレート、
4−tert−ブトキシカルボニル−8−ビニルカルボニルオキシ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、
2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)エチルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)フェニルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)ベンジルアクリレート、
2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチルアクリレート、
6−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ヘキシルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)フェニルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ベンジルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)ベンジルアクリレート、
(2−tert−ブトキシエチル)アクリレート、
(3−tert−ブトキシプロピル)アクリレート、
(1−tert−ブチルジオキシ−1−メチル)エチルアクリレート、
3,3−ビス(tert−ブチルオキシカルボニル)プロピルアクリレート、
4,4−ビス(tert−ブチルオキシカルボニル)ブチルアクリレート、
p−(tert−ブトキシ)スチレン、
m−(tert−ブトキシ)スチレン、
p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン、
m−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン、
アクリロイル酢酸、メタクロイル酢酸、
tert−ブチルアクロイルアセテート、
tert−ブチルメタクロイルアセテートなど
N−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)マレイミド
【0029】
(2)−b、硬化性低分子系の分解性化合物群(塩基分解性)
4−[(1、1−ジメチル−2−シアノ)エトキシカルボニルオキシ]スチレン、
4−[(1、1−ジメチル−2−フェニルスルホニル)エトキシカルボニルオキシ]スチレン、
4−[(1、1−ジメチル−2−メトキシカルボニル)エトキシカルボニルオキシ]スチレン、
4−(2−シアノエトキシカルボニルオキシ)スチレン、
(1、1−ジメチル−2−フェニルスルホニル)エチルメタクリレート、
(1、1−ジメチル−2−シアノ)エチルメタクリレートなど
【0030】
−a、高分子系の分解性化合物群(酸分解性)
ポリ(tert−ブチルアクリレート)、
ポリ(tert−ブチルメタクリレート)、
ポリ(tert−ブトキシカルボニルメチルアクリレート)、
ポリ[2−(tert−ブトキシカルボニル)エチルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニル)フェニルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルエチル)フェニルアクリレート]、
ポリ[1−(tert−ブトキシカルボニルメチル)シクロヘキシルアクリレート]、
ポリ{4−tert−ブトキシカルボニル−8−ビニルカルボニルオキシ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン}、
ポリ[2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)エチルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)フェニルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)ベンジルアクリレート]、
ポリ[2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチルアクリレート]、
ポリ[6−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ヘキシルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)フェニルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ベンジルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)ベンジルアクリレート]、
ポリ(2−tert−ブトキシエチルアクリレート)、
ポリ(3−tert−ブトキシプロピルアクリレート)、
ポリ[(1−tert−ブチルジオキシ−1−メチル)エチルアクリレート]、
ポリ[3,3−ビス(tert−ブチルオキシカルボニル)プロピルアクリレート]、
ポリ[4,4−ビス(tert−ブチルオキシカルボニル)ブチルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシ)スチレン]、
ポリ[m−(tert−ブトキシ)スチレン]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン]、
ポリ[m−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン]、
ポリアクリロイル酢酸、ポリメタクロイル酢酸、
ポリ[tert−ブチルアクロイルアセテート]、
ポリ[tert−ブチルメタクロイルアセテート]
N−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)マレイミド/スチレン共重合体など
【0031】
(3)−b、高分子系の分解性化合物群(塩基分解性)
ポリ{p−[(1、1−ジメチル−2−シアノ)エトキシカルボニルオキシ]スチレン}、
ポリ{p−[(1、1−ジメチル−2−フェニルスルホニル)エトキシカルボニルオキシ]スチレン}、
ポリ{p−[(1、1−ジメチル−2−メトキシカルボニル)エトキシカルボニルオキシ]スチレン}、
ポリ[p−(2−シアノエトキシカルボニルオキシ)スチレン]、
ポリ[(1、1−ジメチル−2−フェニルスルホニル)エチルメタクリレート]、
ポリ[(1、1−ジメチル−2−シアノ)エチルメタクリレート]、
分解性官能基を導入したポリエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、デンドリマーなどの有機系高分子化合物も酸分解性又は塩基分解性重合体系化合物として用いることができる。さらには、シリカなどの無機系化合物に分解性官能基を導入した酸分解性又は塩基分解性重合体系化合物も用いることができる。なかでも、分解性官能基は、カルボン酸基または水酸基、アミン基からなる群の中から選ばれる官能基を有する化合物群に導入されることが好ましい。
発泡層の耐水性をあげるために、少なくとも一種類以上の疎水性官能基を含む化合物に分解発泡性官能基を導入した化合物を用いることもできる。疎水性官能基は、主に脂肪族基、脂肪環族基、芳香族基、ハロゲン基、ニトリル基からなる群の中から選ばれることが好ましい。
ただし、分解発泡性官能基は、主にカルボン酸基または水酸基、アミン基からなる群の中から選ばれる親水性官能基に導入されやすいので、分解性化合物としては、親水性官能基に分解発泡性官能基を導入した分解性ユニットと、疎水性官能基を含む疎水性ユニットからなる複合化合物が好ましい。特に、ビニル系の共重合体化合物であることが好ましい。疎水性ユニットとしては、メチル(メタ)アクリレートやエチル(メタ)アクリレートなどの脂肪族(メタ)アクリレート群、スチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル化合物群、(メタ)アクリロニトリル化合物群、酢酸ビニル化合物群、塩化ビニル化合物群などが挙げられる。
【0032】
分解性ユニットと疎水性ユニットの複合化合物からなる分解性化合物の具体例を以下に示す。
tert−ブチルアクリレート/メチルアクリレート共重合体、
tert−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体、
tert−ブチルメタクリレート/メチルアクリレート共重合体、
tert−ブチルメタアクリレート/メチルメタクリレート共重合体、
tert−ブチルアクリレート/エチルアクリレート共重合体、
tert−ブチルアクリレート/エチルメタクリレート共重合体、
tert−ブチルメタクリレート/エチルアクリレート共重合体、
tert−ブチルメタクリレート/エチルメタクリレート共重合体、
tert−ブチルアクリレート/スチレン共重合体、
tert−ブチルアクリレート/塩化ビニル共重合体、
tert−ブチルアクリレート/アクリロニトリル共重合体、
p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン/スチレン共重合体。
また、分解性化合物中の分解性ユニットおよび疎水性ユニットは、一種単独でまたは2種以上併用することができる。共重合の形式は、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合などの任意の形式をとることができる。また、疎水性ユニットの共重合比は、分解性化合物全量に対して5〜95質量%であることが好ましく、分解性化合物の分解発泡性および発泡構造の環境保存性を勘案すると、20〜80質量%がより好ましい。上記分解性化合物は、単独で用いてもよいし、異なる2種以上を混合併用してもよい。上記分解性化合物は、分解発泡性官能基が分解脱離して気泡形成ガスを発生した後に、少なくとも一種類以上の疎水性官能基を含む化合物となる。
【0033】
発泡層の耐水性をあげるために、発泡性組成物として、温度30℃相対湿度60%の環境雰囲気下においてJISK7209D法で測定した平衡吸水率が10%未満の低吸湿性化合物に分解発泡性官能基を導入した化合物を用いることもできる。分解発泡性官能基を導入しやすい構造を有する低吸湿性化合物としては、例えばp−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレンなどが挙げられる。したがって、分解性化合物は、p−(tert−ブトキシ)スチレン、m−(tert−ブトキシ)スチレン、p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン、m−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレンが挙げられる。これらは硬化性モノマーでも一種類以上を混合した重合体でもよい。
また、吸水率が10%以上の高吸湿性化合物と、吸水率10%未満の低吸湿性化合物との組合わせからなる複合化合物に分解発泡性官能基を導入してもよい。ただし、複合化合物は、適切な組合わせにより10%未満の吸水率を有していることが好ましい。例えば、高吸湿性化合物であるアクリル酸と低吸湿性化合物であるp−ヒドロキシスチレンの共重合体(複合化合物)は、その共重合比がアクリル酸/p−ヒドロキシスチレン=90/10〜0/100であることが好ましい。
【0034】
高吸湿性化合物と低吸湿性化合物との組合わせからなる分解性化合物の具体的な例を以下に示す。
tert−ブチルアクリレート/p−(tert−ブトキシ)スチレン共重合体、
tert−ブチルアクリレート/m−(tert−ブトキシ)スチレン共重合体、
tert−ブチルアクリレート/p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン共重合体、
tert−ブチルアクリレート/m−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン共重合体、
tert−ブチルメタクリレート/p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン共重合体。
さらには、ポリエステル、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、デンドリマーからなる群の中から選ばれた低吸湿性高分子材料などに分解発泡性官能基を導入してもよい。上記分解性化合物は、単独で用いてもよいし、異なる2種以上を混合併用してもよい。上記分解性化合物は、分解発泡性官能基が分解脱離して気泡形成ガスを発生した後に、低吸湿性化合物となる。
【0035】
(その他の樹脂)
組成物(C)には、酸発生剤または塩基発生剤と分解発泡性化合物以外に、発泡層の骨格となる一般の樹脂を混合する必要がある場合がある。即ち、非硬化性低分子系の分解性化合物群を用いる場合は単独では成形できないので、下記の一般に用いられる樹脂と混合して用いる必要がある。一般の樹脂は、分解性化合物と混合した時に相溶でも非相溶でもどちらでもかまわない。
一般の樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系複合樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、アクリロイル樹脂、ABS樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリサルホン樹脂、塩化ビニル樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及びシリコーン樹脂など一般に用いられる樹脂から適宜選択して用いることができる。また、分解性化合物から分解してガス化する低沸点揮発性物質を発泡層内に内在させることを目的として、ガスバリヤ性樹脂を用いることもできる。ガスバリヤ性樹脂は、混合しても被覆または積層してもよく、低沸点揮発性物質を発泡層内により内在させるには、発泡層表面に被覆または積層するのが好ましい。分解性発泡化合物のうち、硬化性低分子系の分解性化合物群および高分子系の分解性化合物群は単独で用いてもよいし、上記の一般に用いられる樹脂と混合して用いてもよい。
【0036】
上記一般の樹脂を用いる場合でも、そうでない場合でも、活性エネルギー線で硬化する他の不飽和有機化合物を併用することができる。併用化合物の例としては、
(1)脂肪族、脂環族、芳香族の1〜6価のアルコール及びポリアルキレングリコールの(メタ)アクリレート類
(2)脂肪族、脂環族、芳香族の1〜6価のアルコールにアルキレンオキサイドを付加させて得られた化合物の(メタ)アクリレート類
(3)ポリ(メタ)アクリロイルアルキルリン酸エステル類
(4)多塩基酸とポリオールと(メタ)アクリル酸との反応生成物
(5)イソシアネート、ポリオール、(メタ)アクリル酸の反応生成物
(6)エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸の反応生成物
(7)エポキシ化合物、ポリオール、(メタ)アクリル酸の反応生成物
(8)メラミンと(メタ)アクリル酸の反応生成物
等を挙げることができる。
併用できる化合物の中で、硬化性モノマーや樹脂は、発泡層の強度や耐熱性といった物性の向上効果や発泡性の制御効果などが期待できる。また分解性化合物および併用化合物に硬化性モノマーを用いれば、無溶剤成形ができ、環境負荷の少ない製造方法を提供できる。たとえば特開平8−17257号公報や、特開平9−102230号公報ではこのような材料が用いられている。
併用化合物の具体的な例として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、 2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロヘキシルアクリレート、イソボロニルアクリレート、イソボロニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、エチレンオキシド変性フェノキシアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸ダイマー、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、アクリル酸−9,10−エポキシ化オレイル、マレイン酸エチレングリコールモノアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチレンアクリレート、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソランのカプロラクトン付加物のアクリレート、3−メチル−5,5−ジメチル−1,3−ジオキソランのカプロラクトン付加物のアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、エチレンオキシド変性フェノキシ化リン酸アクリレート、エタンジオールジアクリレート、エタンジオールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−ブチル−2−エチルプロパンジオールジアクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレンオキシド変性水添ビスフェノールAジアクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリプロピレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ポリオキシエチレンエピクロロヒドリン変性ビスフェノールAジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリプロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレート、エチレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、ポリエチレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、プロピレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、ポリプロピレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を挙げることが出来るが、これらに限られるものではない。
さらに、前記の併用活性エネルギー線硬化性不飽和有機化合物の一部または全部として、分子鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有する分子量が400〜5000程度の活性エネルギー線硬化性樹脂を組み合わせることもできる。このような硬化性樹脂として、例えば、ポリウレタン変性ポリエーテルポリ(メタ)アクリレートやポリウレタン変性ポリエステルポリ(メタ)アクリレートなどのポリウレタンポリ(メタ)アクリレートポリマー類を用いることが好ましい。
組成物(C)等の発泡性組成物は、一般的な混練機を用いて調製することができる。例えば、二本ロール、三本ロール、カウレスデゾルバー、ホモミキサー、サンドグラインダー、プラネタリーミキサー、ボールミル、ニーダー、高速ミキサー、ホモジナイザーなどである。また超音波分散機などを使用することもできる。
【0037】
<組成物(C)を用いた発泡層の形成方法>
本発明の発泡層2のより好ましい形成方法は、塗工法および印刷法などに得た組成物(C)からなる発泡性組成物層に、部分的に活性エネルギー線を照射し、熱転写時の熱により発泡させて形成する方法である。活性エネルギー線を照射するタイミングは熱転写前および熱転写と同時のいずれであっても良い。
保護層3に活性エネルギー線硬化型アクリル樹脂を用いた場合、保護層3形成のための活性エネルギー線は通常全面均一照射であり、その照射により発泡性組成物層が全面均一に感光すると、目的の部分的な発泡が得られないという恐れがある。しかし、次のような方法により対応することが可能である。一つ目の方法は、保護層3形成のために活性エネルギー線を照射した後に、発泡性組成物層を形成し、部分的に活性エネルギー線を照射し、熱転写時の熱により発泡させて形成する方法である。二つ目の方法は、活性エネルギー線に紫外線を用いる場合、保護層3と発泡層2の間に感光制御層として特定の紫外線を吸収する樹脂層を設ける方法である。感光制御層として芳香環を有する樹脂を用いた場合、芳香環が254nm以下の紫外線を吸収するため、この感光制御層は254nm以下の紫外線をカットすることができる。さらに保護層3に用いられる材料は波長260nm以上の紫外線に感光する材料を使用し、発泡層2に用いられる材料には波長250nm以下に感光する材料を使用することによって、保護層3の形成時に照射した活性エネルギー線に発泡層2に用いられる材料が感応しないようにすることができる。一般に保護層3に用いられる材料は波長260nm以上の紫外線に感光する材料が多く用いられており、発泡層2に用いられる材料には波長250nm以下に感光する材料が多く用いられている。感光制御層としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂など、芳香環を有する樹脂を使用すればよい。基材シート1や剥離層5を感光制御層とすることも可能である。
発泡層形成に用いることができる活性エネルギー線には、電子線、紫外線、可視光線、γ線等の電離性放射線などがある。これらの中では紫外線を用いることが好ましい。(保護層形成でも同様の活性エネルギー線を用いることができる。)紫外線を照射する場合は、半導体・フォトレジスト分野や紫外線硬化分野などで一般的に使用されている紫外線ランプを用いることができる。一般的な紫外線ランプとしては、例えば、ハロゲンランプ、ハロゲンヒーターランプ、キセノンショートアークランプ、キセノンフラッシュランプ、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、ディープUVランプ、メタルハライドランプ、希ガス蛍光ランプ、クリプトンアークランプ、エキシマランプなどがあり、近年では、極短波長(214nmにピーク)を発光するY線ランプもある。これらのランプには、オゾン発生の少ないオゾンレスタイプもある。これらの紫外線は、散乱光であっても、直進性の高い平行光であってもよい。気泡分布の位置制御を精度よく行うためには、平行光を用いることが好ましい。
紫外線照射には、ArFエキシマーレーザー、KrFエキシマーレーザーや、非線形光学結晶を含む高調波ユニットを介したYAGレーザーなどに挙げられる種々のレーザーや、紫外発光ダイオードを用いることもできる。紫外線ランプやレーザー、紫外発光ダイオードの発光波長は、発泡性組成物の発泡性を妨げないものであれば限定はないが、好ましくは、光酸発生剤または光塩基発生剤が酸または塩基を効率よく発生させられる発光波長がよい。すなわち、使用する光酸発生剤または光塩基発生剤の感光波長領域と重なる発光波長が好ましい。さらには、それら発生剤の感光波長領域における極大吸収波長または最大吸収波長と重なる発光波長が、発生効率が高くなるためより好ましい。紫外線のエネルギー照射強度は、発泡性組成物によって適宜決められる。
種々の水銀ランプやメタルハライドランプなどに代表される照射強度が高い紫外線ランプを使用する場合は、生産性を高めることができ、その照射強度(ランプ出力)は30W/cm以上が好ましい。紫外線の積算照射光量(J/cm2)は、エネルギー照射強度に照射時間を積算したものであり、発泡性組成物および所望の気泡分布によって適宜決められる。酸発生剤や塩基発生剤の吸光係数に応じて設定することもある。安定かつ連続的に製造する上では、1.0mJ/cm2〜20J/cm2の範囲が好ましい。
紫外線ランプを使用する場合は、照射強度が高いため、照射時間を短縮することができる。エキシマーランプやエキシマーレーザーを使用する場合は、その照射強度は弱いが、ほぼ単一光に近いため、発光波長が発生剤の感光波長に最適化したものであれば、より高い発生効率および発泡性が可能となる。照射光量を多くした場合、紫外線ランプによっては熱の発生が発泡性を妨げる場合がある。そのときは、コールドミラーなどの冷却処置を行なうことができる。
【0038】
(活性エネルギー線の部分照射)
活性エネルギー線を部分的に照射し、その後加熱することによって、発泡層2を部分的に発泡させることができる。活性エネルギー線の部分照射は、電子線または紫外線照射用のフォトマスクの使用により、照射エネルギー強度を調整することにより制御できる。また、紫外線レーザーや電子線を用いた描画装置により照射エネルギー強度を調整することによってもできる。
フォトマスクの材質は、クロムマスクやメタルマスク、銀塩ガラスマスク、銀塩フィルム、スクリーンマスクなどが使用できる。ガラスをイオンエッチングしたマスクや、集光機能を有する平面レンズの干渉縞を電子線描画したマスクなどが利用できる。
また、透明樹脂フイルムに放射線を遮断する物質でパターンを設けたものをマスクとして用いることもできる。透明樹脂フイルムとしてはポリエステルフイルム、ポリアミドフイルム、ポリイミドフイルム、ポリカーボネートフイルム、ポリオレフィンフイルム、アセチルセルロースフイルム、ポリアクリルフイルム、ポリスチレンフイルム、ポリメチルメタアクリレート−スチレンフイルム、ポリシクロオレフィンフイルム、ポリオレフィンフイルムなどを例示することができる。これらのフイルムはそのままでも用いうるが、易接着処理や印刷適性向上を目的とした処理や塗工層を設けたものでも良い。波長300nm以下の紫外線を照射する場合は、フォトマスクの基材は石英ガラスや、ポリプロピレンフイルムなどのポリオレフィンフイルムを使用することが好ましい。
透明樹脂フイルムにパターンを設ける方法としては、クロムマスクのように感光性材料を塗布し、パターン焼付けとエッチングを行なう方法や、印刷による方法があげられる。ことに印刷による方法は、ほとんどの活性エネルギー線遮断物質を用いることが可能であり、また短時間で多量のマスクを生産することができるので好ましい。活性エネルギー線が紫外線である場合には、通常のシアン、イエロー、マゼンタ、ブラックの印刷用インクを用いることができ、紫外線吸収性を有している場合には、透明の印刷用インクでも構わない。また、金色や銀色などの所謂特色インクでも良く、紫外線硬化型インクも好ましい。印刷の方法に制限はなく、凸版印刷(フレキソ印刷を含む)、凹版印刷、平板印刷(オフセット印刷を含む)、孔版印刷(スクリーン印刷を含む)、版なし印刷が例示される。版なし印刷とは基材上に直接パターンを設ける方式を指し、近年発達したインクジェット印刷や、乾式又は湿式トナーを用いる電子写真方式などが知られている。
フォトマスクを使用して照射する場合、発泡性組成物層もしくは転写シートにフォトマスクを密着させ照射する密着照射や、フォトマスクを密着させない投影照射などの方式が採用できる。フォトマスクのパターンを高い精度で露光させるためには、照射する光が均一平行光であることが好ましいが、拡散光も利用可能である。平行光を照射するための露光システムとしては、例えば、インテグレーターと放物鏡を利用した光学系、フレネルレンズを利用した光学系、ハニカムボードと拡散板を利用した光学系などが挙げられる(http://www.kuranami.co.jp/toku_guide01.htm参照)。高い均一性を得るには、インテグレーターと放物鏡を利用した光学系が一般的に好ましく、この光学系に用いる光源としては、ショートアークランプが好ましい。ショートアークランプには、メタルハライドランプや超高圧水銀ランプ、水銀キセノンランプ、ナトリウムランプ、Y線ランプが挙げられる。
【0039】
(熱による転写・発泡方法を用いた転写シートの製造方法について)
転写シート8を用い、熱による転写・発泡方法を用いた転写シートの製造方法を説明する。
まず、一般的な熱転写方法には、ロール転写法、プレス転写法、メンブランプレス転写法、射出成形による成形同時転写法などがある。どの方法であっても、加熱・加圧接着する方法であるが、その際にかかる熱により、活性エネルギー線を照射した部分のみが発泡することにより、発泡部分は発泡圧力により加圧圧力が増し、転写時の形状追随性を上げることができる。
ロール転写法は、被接着物である成形品に転写シート8の接着層4側が被着するように接触させた後、転写シート8に熱圧ローラーが接触するように配置し、ローラー回転により、加熱・加圧接着する方法である。
プレス転写法は、被接着物である成形品に転写シート8の接着層4側が被着するように接触させた後、転写シート8に被接着物形状に嵌合されるような形状の熱圧プレス板が接触するように配置し、プレスにより加熱・加圧接着する方法である。
メンブランプレス転写は、吸着盤上に被接着物をセットし、その上に転写フィルムを置き、吸着盤により転写フィルムによって覆われた被接着物と転写フィルム間の空気を減圧し、転写フィルムを被接着物に馴染ませ、その後、シリコンラバーを有するバルーン型加熱プレス盤が降下してシリコンラバーが転写フィルムと被接着物に馴染むように高熱圧縮エアーを注入し、シリコンラバーを形状に馴染ませ、かつ転写に必要な熱と圧力を供給し、加熱・加圧接着する方法である。
【0040】
射出成形による成形同時転写法は、可動型と固定型とからなる成形用金型内に転写シートを、接着層4を内側にして固定型に接するように転写シートを送り込む。この際、枚葉の転写シートを1枚づつ送り込んでもよいし、長尺の転写シートの必要部分を間欠的に送り込んでもよい。長尺の転写シートを使用する場合、位置決め機構を有する送り装置を使用して、転写シートの装飾層6と成形用金型との見当が一致するようにするとよい。
また、転写シートを間欠的に送り込む際に、転写シートの位置をセンサーで検出した後に転写シートを可動型と固定型とで固定するようにすれば、常に同じ位置で転写シートを固定することができ、装飾層6の位置ずれが生じないので便利である。成形用金型を閉じた後、可動型に設けたゲートより溶融樹脂を金型内に射出充満させ、成形品を形成するのと同時にその面に転写シートを加熱・加圧接着させ、樹脂成形品を冷却した後、成形用金型を開いて樹脂成形品を取り出す方法である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。また、特に断らない限り、例中の「部」および「%」は各々「質量部」および「質量%」を表わす。
【0042】
<実施例1>
基材シートとして厚さ38μmのポリエステル樹脂フィルムを用い、基材シート上に、メラミン樹脂系剥離剤(商品名EX-114DXメジウム、大日精化工業株式会社製)をバー塗工し、140℃40秒加熱乾燥して、厚さ1μmの剥離層を形成した。次に剥離層の上に紫外線硬化型アクリル樹脂(商品名セイカビームEX1、大日精化工業株式会社製)をバー塗工し、80℃3分加熱乾燥後、高圧水銀ランプ紫外線照射機(アイグラフィックス社製)を用いて、160W/cm、ランプ高さ12.5cm、ベルトスピード8m/minで紫外線照射して保護層を架橋硬化した。保護層の厚さは5μmとした。装飾層としてアクリル系インキ、接着層としてアクリル樹脂をグラビア印刷法にて順次保護層の上に印刷形成した。
次に上記剥離剤塗工面と反対の基材シートの上に発泡性組成物をアプリケータ塗工し、120℃1分加熱乾燥して、厚さ20μmの発泡性組成物層を形成し、石英ガラス製フォトマスクを発泡性組成物層に全面覆うように密着させ、フォトマスクを介して高圧水銀ランプ紫外線照射機(アイグラフィックス社製)を用いて、160W/cm、ランプ高さ12.5cm、ベルトスピード4m/minにて紫外線を部分照射した。フォトマスクは巾5mmで、外寸125mm×125mm、内寸75mm×75mmの透明部を有するものを使用した。発泡性組成物は、分解性化合物であるtert−ブチルアクリレート(60重量%)とメチルメタクリレート(30重量%)とメチルメタクリル酸(10重量%)の共重合体100部に対して、ヨードニウム塩系酸発生剤としてビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロブタンスルホネート(BBI−109、ミドリ化学製)3部を混合したもので、塗料化のために酢酸エチルで固形分率25%に希釈した。
こうして得られた転写シートを用いて、成形同時転写法を利用して成形品の表面に転写するとともに、巾5mmで、外寸125mm×125mm、内寸75mm×75mmの部分が発泡した発泡層が形成された。その後、発泡層/基材シート/剥離層の積層部を剥がした。なお、成形条件は、樹脂温度240℃、金型温度55℃、樹脂圧力約300kg/cm2とした。成形品は、材質をアクリル樹脂とし、縦100mm、横100mm、立ち上がり4.5mm、コーナー部のR2.0mmのトレー状に成形した。転写シートは巾5mmで、外寸125mm×125mm、内寸75mm×75mmの発泡部分の巾中心線100mm×100mmが成形トレーの端部(縦100mm×横100mm)に合うように重ねて成形同時転写した。
【0043】
<実施例2>
基材シートに50μの易接着ポリプロピレンフィルムを用い、基材シート上に紫外線硬化型アクリル樹脂(商品名セイカビームEX1、大日精化工業株式会社製)をバー塗工し、80℃3分加熱乾燥後、高圧水銀ランプ紫外線照射機(アイグラフィックス社製)を用いて、160W/cm、ランプ高さ12.5cm、ベルトスピード8m/minで紫外線照射して保護層を架橋硬化した。保護層の厚さは5μmとした。基材シート上の保護層形成面と反対の面に装飾層としてアクリル系インキをグラビア印刷法にて形成し、その上に実施例1と同じ発泡性組成物をアプリケータ塗工し、120℃1分加熱乾燥して、厚さ30μmの発泡性組成物層を形成し、さらにその上に接着層としてアクリル樹脂をグラビア印刷法にて印刷形成した。実施例1と同じ石英ガラス製フォトマスクを接着層を被接触で全面覆うように被せ、フォトマスクを介して平行光DeepUV照射機(ウシオスペックス社製)で2kW、30秒間紫外線を照射した。得られた転写シートは実施例1と同様に成形同時転写し、基材シートごと成形品にラミネートした。
【0044】
<比較例1>
実施例1で用いたフォトマスクを使用せずに、発泡性組成物層に紫外線照射した以外は、実施例1と同様にして実施した。
【0045】
<比較例2>
実施例2で用いたフォトマスクを使用せずに、発泡性組成物層に紫外線照射した以外は、実施例2と同様にして実施した。
【0046】
上記の実施例1〜2および比較例1〜2について、それぞれクラックおよび皺の有無、耐薬品性、耐磨耗性の性能評価を行なった。クラックおよび皺の有無は、成形品曲面の状態を観察し、目視判定した。耐薬品性は、ガーゼにメタノールを含浸させ、50往復擦った後の表面の状態を観察した。耐磨耗性は、1cm角の#000スチールウールに100g荷重をかけ、可動距離6cmで、10往復後の表面の傷つき程度を観察した。
耐薬品性および耐摩耗性はすべてにおいて良好であったが、クラックおよび皺が実施例1および2では無かったのに対し、比較例1および2では曲面部に発生していた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、転写不良が発生しやすい複雑形状、深絞り形状、曲率半径の小さい曲面形状などを有する部分およびその周辺部のみを、転写時の熱により部分的に発泡させ、転写圧力を部分選択的に上げることにより、転写性を改善できる。それ故、本発明は、電子機器、家電製品、化粧板、自動車内装材などにおいて耐磨耗性、耐薬品性、装飾性等に優れた表面を持つ成形品を得る際に、転写できる成形品の形状を幅広いものにすることが可能となることから、加飾成形産業に広く応用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1基材シート
2発泡層
3保護層
4接着層
5剥離層
6装飾層
7転写層
8転写シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの少なくとも片面に、転写時の熱により部分的に発泡する発泡層が設けられ、前記発泡層の基材シートを有さない側または基材シートの発泡層を有さない側に、少なくとも接着層を有することを特徴とする転写シート。
【請求項2】
請求項1に記載の発泡層が、活性エネルギー線の作用によって酸を発生する酸発生剤または塩基を発生する塩基発生剤を含有し、さらに、酸または塩基と反応して一種類以上の低沸点揮発性物質を分解脱離する分解発泡性官能基を有する化合物を含有する発泡性組成物に、活性エネルギー線を部分的に照射し、加熱することにより部分的に発泡することを特徴とする転写シート。
【請求項3】
発泡層の基材シートを有さない側または発泡層を有さない基材シート上に、剥離層を有する請求項1および/または請求項2に記載の転写シート。
【請求項4】
基材シートの少なくとも片面に、装飾層を有する請求項1〜3のいずれかに記載の転写シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−161890(P2011−161890A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29994(P2010−29994)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】