説明

転写加飾用金型及び転写加飾装置

【課題】被加飾体表面に簡易かつ確実に転写層による加飾を施す。
【解決手段】転写加飾用金型34は、媒体によって転写シート12を被加飾体20に対して押圧することで転写層12aを被加飾体20に転写する転写加飾装置に用いられる型である。型34は、第1型1と、第2型2とを有する。第1型1は、被加飾体20を載置可能な載置部1Aを内面に有する。第2型2は、第1型1と型締めされることで、被加飾体20上に配置された転写シート12との間にキャビティVを形成する。載置部1Aの縁部1dとキャビティVの外側縁部2dとの間には隙間が確保されている。隙間は、隙間V2と、隙間V2よりも載置部1Aの内外方向に長い隙間V3とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写加飾用金型及び転写加飾装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
金属又は樹脂の成形品の表面に加飾が施された製品は、自動車、家庭電化製品、携帯電話、パーソナルコンピュータ等のあらゆる分野で使用されている。成形品の表面の加飾は、例えば、転写層を有する転写シートを成形品の表面に接触させ、次に転写層の模様を成形品に転写することで行う。しかし、転写される成形品の表面が立体形状である場合には、転写シートを成形品の表面に沿って接触させることが難しい。そこで、立体形状の成形品に転写を行う場合には、例えば、特許文献1に示す圧空成形装置が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−79573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被加飾体が金属体である場合、金属体に対して転写シートを押し付ける圧力をある程度大きくする必要がある。転写層を金属体の表面に密着させるためである。
また、被加飾体の表面の絞りが深い立体形状の場合には、圧空成形装置を用いたとしても被加飾体の表面に転写シートを均等に密着させることが難しい。十分な圧力を均一に付与することが困難だからである。
【0005】
本発明の課題は、被加飾体表面に簡易かつ確実に転写層による加飾を施すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0007】
本発明の一見地に係る転写加飾用金型は、媒体によって転写シートを被加飾体に対して押圧することで転写層を被加飾体に転写する転写加飾装置に用いられる型である。この型は、第1型と、第2型とを有する。第1型は、被加飾体を載置可能な載置部を内面に有する。第2型は、第1型と型締めされることで、被加飾体上に配置された転写シートとの間にキャビティを形成する。載置部の縁部とキャビティの外側縁部との間には隙間が確保されている。隙間は、第1隙間と、第1隙間よりも載置部の内外方向に長い第2隙間とを有している。
【0008】
このように、転写シートを被加飾体の表面に対向する位置に配置した後、キャビティに媒体を注入する。媒体は、転写シートを被加飾体に押し付ける。この結果、転写層が被加飾体に転写される。したがって、被加飾体の表面が絞りの深い立体形状であったとしても、転写シートと被加飾体との間にエア溜まりが発生しにくく、転写シートと被加飾体との密着性が向上する。つまり、被加飾体に転写層が確実に転写される。
また、転写シートを被加飾体に向けて押し付けるための媒体として、例えば溶融樹脂を用いることで、転写シートに対して圧力とともに熱が付与される。その結果、転写シートを媒体の熱により軟化させつつ被加飾体に押し付けることができ、被加飾体に対して転写層を転写しやすくなる。
【0009】
さらに、第2隙間を転写シートが被加飾体に接触しやすい部分に設ければ、その部分での転写シートの遊び量が大きくなり、その結果、転写シートと被加飾体との接触圧が低下する。つまり、媒体の注入前に転写シートが被加飾体に接触しにくくなる。その結果、媒体がキャビティに注入されたときに、エア溜まりが発生しにくい。つまり、転写不良が生じにくい。
【0010】
第1隙間は載置部の辺部に対応しており、第2隙間は載置部の角部に対応して設けられていてもよい。なお、載置部の角部とは、隅部以外に、辺部に形成された突起部を含む。
この場合、転写シートが被加飾体に接触しやすい部分は角部であるが、その角部に第2隙間が設けられているので、転写シートが被加飾体に接触しにくくなる。また、第1隙間が載置部の辺部に対応して設けられているので、媒体の使用量を減らすことができ、さらには、成形機の大型化を防止できる。
【0011】
第2隙間の長さは、第1隙間の長さの2〜10倍の範囲にあってもよい。
この場合、媒体の使用量を極端に増やすことなく、しかも媒体を注入する前に転写シートが被加飾体に接触しにくくなる。
【0012】
本発明の他の見地に係る転写加飾用金型は、媒体によって転写シートを被加飾体に対して押圧することで転写層を被加飾体に転写する転写加飾装置に用いられる型である。この型は、第1型と、第2型とを有する。第1型は、被加飾体を載置可能な載置部を内面に有する。第2型は、第1型と型締めされることで、被加飾体上に配置された転写シートとの間にキャビティを形成する。載置部の縁部とキャビティの外側縁部との間の隙間の少なくとも一部である隙間部は、キャビティの第1型と第2型の型締め方向の隙間より大きい。
さらに、転写シートが被加飾体に接触しやすい部分に隙間部を設ければ、その部分での転写シートの遊び量が大きくなり、その結果、転写シートと被加飾体との接触圧が低下する。つまり、媒体の注入前に転写シートが被加飾体に接触しにくくなる。その結果、媒体がキャビティに注入されたときに、エア溜まりが発生しにくい。つまり、転写不良が生じにくい。
【0013】
隙間部の長さは、キャビティの型締め方向の隙間の長さの2〜10倍の範囲にあってもよい。
この場合、媒体の使用量を極端に増やすことなく、しかも媒体を注入する前に転写シートが被加飾体に接触しにくくなる。
【0014】
本発明の他の見地に係る転写加飾用金型は、媒体によって転写シートを被加飾体に対して押圧することで転写層を被加飾体に転写する転写加飾装置に用いられる型である。この型は、第1型と、第2型とを有する。第1型は、被加飾体を載置可能な載置部を内面に有する。第2型は、第1型と型締めされることで、被加飾体上に配置された転写シートとの間にキャビティを形成する。キャビティは、第1流路と、媒体が供給される箇所から載置部の角部に向かって延びており第1流路より断面積が大きい第2流路とを有している。
第2流路は、媒体が供給される箇所から載置部の角部に向かって延びている。したがって、媒体が載置部の角部に十分に供給される。その結果、載置部の角部においても転写が確実に行われる。つまり、転写不良が生じにくい。
【0015】
第1流路は、被加飾体の全体にわたって形成されていてもよい。第2流路は、媒体が供給される箇所から載置部の角部に向かって延びるように形成されていてもよい。
この場合、媒体は第2流路を通って載置部の角部に確実に供給される。
第2流路は、第2型の第1型と対向する面に形成された溝部であってもよい。
この場合は、第2型を加工することによって、第2流路を形成できる。
【0016】
本発明のさらに他の見地に係る転写加飾装置は、上記の転写加飾用金型と、媒体をキャビティに注入する媒体注入装置と、を備えている。
【0017】
本発明のさらに他の見地に係る転写加飾品の製造方法は、上記の転写加飾装置を用いた転写加飾品の製造方法であって、以下の工程を備えている。
◎被加飾体を載置部に載置する。
◎被加飾体上に転写シートを配置する。
◎第1型と第2型を型締めする。
◎キャビティに媒体を注入することで、転写シートを被加飾体に押し付ける。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る転写加飾用金型及び転写加飾装置では、簡易かつ確実に転写層による加飾を被加飾体表面に施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】転写加飾装置の構成を示す断面図。
【図2】加飾シートを第1型に引き寄せた状態を示す断面図。
【図3】型締めが完了した状態を示す図。
【図4】樹脂注入の状態を示す断面図。
【図5】片開きの状態を示す断面図。
【図6】転写加飾品を取り出した状態を示す断面図。
【図7】転写加飾装置の要部を示す断面図。
【図8】キャビティの形状を示す模式図。
【図9】第1型と第2型の概略断面図。
【図10】第1型と第2型の概略断面図。
【図11】キャビティの形状を示す模式図。
【図12】第1型と第2型の概略断面図。
【図13】キャビティの形状を示す模式図。
【図14】第1型と第2型の概略断面図。
【図15】キャビティの形状を示す模式図。
【図16】第1型と第2型の概略断面図。
【図17】キャビティの形状を示す模式図。
【図18】第1型と第2型の概略断面図。
【図19】キャビティの形状を示す模式図。
【図20】第1型と第2型の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(1)転写加飾品及び転写加飾装置
図1〜図6は、いずれも転写加飾品の製造工程を示す図である。転写加飾品31は、被加飾体20に対し、加飾シートとして転写シート12を用いて加飾が施されて製造される。
【0021】
転写加飾品31の製造に用いられる転写加飾装置は、第1型1、第2型2からなる転写加飾用金型34と、転写シート保持機構35と、媒体注入装置37とを備えている。転写加飾品31は、凸状部20aを有する被加飾体20と、被加飾体20の表面に形成された転写層12aと、を備えており、以下の製造工程を経て製造される。
【0022】
(2)転写シート
転写シート12は、基体シート12bと基体シート12b上に形成された転写層12aとから構成されている。基体シート12bは、転写層12aを支持するシート体である。基体シート12bは、公知の転写シートの基体シートを使用することができる。基体シート12bの構成材料としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂及びアクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の合成樹脂が好ましい。基体シート12bは、上記の合成樹脂から形成された単層シート、単層シートを2以上積層した積層シート、又は上記の合成樹脂を用いた共重合シートである。特に、各実施形態による転写加飾品の製造方法では、寸法安定性のよい、印刷乾燥により変形しにくいポリエチレンテレフタレート樹脂等の基体シートが選ばれる。
【0023】
転写層12aは、例えば、文字や絵柄を表現する図柄層、被加飾体と転写層との接着性を向上させる接着層を備えている。被加飾体20の表面の強度を確保し耐擦傷性を向上させるハードコート層若しくは層間密着性を向上させるアンカー層を備え、又は複数の図柄層などの同種の層を複数備えていてもよい。基体シート12bと転写層12aとの間に、基体シート12bからの転写層12aの剥離性を向上させる離型層を設けていてもよい。図柄層等は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の印刷法、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法等のコート法により基体シート12b上に形成される。
【0024】
(3)被加飾体
被加飾体20は、例えば、凸状部20aを有する金属プレス板、樹脂成形体、ガラス等である。被加飾体20の表面には、前処理はなされなくてもよいが、下記のいずれかの処理が行われてもよい。
・アルマイト処理(被加飾体20がアルミの場合)、フレーム処理、プラズマ処理等の表面処理
・転写層12aが形成されやすいように、接着剤の塗付等の表面処理
・転写層12aが接着しやすいシートの貼り付け
被加飾体20の表面処理や表面の被覆材は、被加飾体20と表面に形成される転写層12aの各組み合せに応じて適合する材質を選択する必要がある。
被加飾体20は、凸状部20aの周辺に、周縁部20bを有している。周縁部20bは、凸状部20aから滑らかに延びており、被加飾体20全体の縁部となっている。
【0025】
(4)第1型
第1型1には、被加飾体20が配置される載置部1Aが内面から突出して形成されている。載置部1Aは、被加飾体20の裏面の形状に対応する凸形状である。なお、載置部1Aは、平面状や、凹状に形成されていてもよい。また、第1型1は、型締めの際に、被加飾体20に沿って加飾シートとして転写シート12が配置されるよう構成されている。第1型1の載置部1Aに被加飾体20の配置が終了した段階で、被加飾体20と第2型2との間に転写シート12が配置される。転写シート12は転写層12aと基体シート12bとで構成されており、転写層12aが被加飾体の表面を加飾する。当該転写シート12は、例えば、ロール状の長尺フィルムを当該位置に展開配置したものである。
【0026】
(5)第2型
第2型2には、被加飾体20の表面に沿った凹形状を有するキャビティ面2Aが形成されており、第1型1との型締めによって、被加飾体20とキャビティ面2Aとの間に、樹脂が注入可能なキャビティVが形成される。キャビティ面2Aは環状の突起2Aによって画定されており、突起2Aの内側面がキャビティVの外側縁部2dになっている。
【0027】
(6)転写シート保持機構
転写シート保持機構35として、第1型1には、型面1aに向けて弾性付勢された第1クランプ4と第2クランプ5とが設けられている。詳細には、図1に示すように、第1クランプ4は、第2クランプ5よりも型面1aに近い位置に設けられている。第1クランプ4は、作動ロッド6と、可動プレート7とを有している。作動ロッド6は、第1型1の内部を貫通している。可動プレート7は、第1型1の内部に設けられた空間部1Bにある。作動ロッド6は、可動プレート7に取り付けられている。また、第2クランプ5は、作動ロッド8と、可動プレート9とを有している。作動ロッド8は、第1型1の内部を貫通している。可動プレート9は、第1型1の内部に設けられた空間部1Bにある。作動ロッド8は、可動プレート9に取り付けられている。
【0028】
可動プレート9は、可動プレート7よりも型面1aから離間した位置に設けられており、作動ロッド8は可動プレート7を貫通して可動プレート9に取り付けられている。空間部1Bにおいて、可動プレート7は、可動プレート7と空間部1Bの型面1a側の壁面との間に配置された弾性部材7aによって型面1aから離間する方向に付勢されている。可動プレート9は可動プレート7に弾性部材9aを介して連結されており、弾性部材9aは可動プレート9を型面1aから離間する方向に付勢する。その結果、クランプ4、5が型面1aに向けて弾性付勢される。また、空間部1Bには、可動プレート7及び9より型面1aに近い位置に、固定プレート10が備えられている。
【0029】
可動プレート9がエジェクトロッド、エアシリンダ等による押圧力を受け、弾性部材9aに抗して第1型1の型面1aに近づく方向に移動すると、弾性部材9aを介して可動プレート7も同方向に移動して、作動ロッド6,8が第1クランプ4及び第2クランプ5を型面1aから離間させる。このとき、転写シート12は第1クランプ4及び第2クランプ5によって挟持された状態にある。可動プレート9がさらに型面1aに近づく方向に移動すると、可動プレート7は固定プレート10に当接して停止する。しかし、可動プレート9は可動プレート7の停止後も弾性部材9aに抗して型面1aに移動する。その結果、第2クランプ5が、第1クランプ4から離間して、転写シート12の移動を許容する位置となる。
【0030】
一方、可動プレート9がエジェクトロッド、エアシリンダ等の押圧力を受けない場合は、可動プレート9は弾性部材9aの弾性付勢力を受けて第1型1の型面1aから遠ざかる方向に移動し、可動プレート7も弾性部材7aの弾性付勢力を受けて第1型1の型面1aから遠ざかる方向に移動する。すなわち、第1クランプ4及び第2クランプ5は型面1aに近接し、第2クランプ5が第1クランプ4と当接して転写シート12を挟持して保持する位置となる。
【0031】
(7)媒体注入装置
第2型2には、媒体注入装置37として溶融樹脂(媒体の一例)30を射出して注入するゲート11が備えられている。ゲート11は、載置部1Aに配置された被加飾体20の表面に対向するようにキャビティ面2Aに形成されている。そして、第1型1と第2型2との型締めした状態において、キャビティVにゲート11から媒体が注入される。
【0032】
(8)媒体
注入される溶融樹脂30は、粘度を有する液体又は流動性を有する溶融樹脂である。溶融樹脂については、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。ただ、キャビティVに注入される溶融樹脂30は、転写シート12を被加飾体20の表面に押し付けるためだけに用いられる。よって、使用済みの溶融樹脂30はそのまま廃棄するのではなく、再利用する。そのためには、溶融樹脂としては例えば熱可塑性樹脂を用いる。溶融樹脂30が熱可塑性樹脂であると、転写シート12を被加飾体20の表面に押し付ける際に高温の状態で投入され、その後低温となって固化したとしても再び熱を加えることで軟化するため、再利用が容易だからである。熱可塑性樹脂としては、例えば、PC/ABS、PE、ABS、PS、SAN、EVA、PVC、PMMA、PA、POM、PBTが挙げられる。
【0033】
(9)樹脂成形の処理手順
図1に示すように、図示しないマニピュレータを用いて被加飾体20を第1型1の載置部1Aに配置し、第2型2と第1型1に配置された被加飾体20との間に転写シート12を配置する。このとき、被加飾体20は、第1型1に設けられた吸引部13により吸引されて保持される。
【0034】
次に、第1クランプ4及び第2クランプ5により転写シート12を挟持し、必要に応じて転写シート12を加熱した後、図2に示すように、第1クランプ4及び第2クランプ5を第1型の型面1aの方向に移動して、転写シート12を被加飾体20の表面に沿わせる。このとき、転写シート12は、第1型1に設けられた吸引部13により吸引されて保持される。
【0035】
図3に示すように、第1型1と第2型2との型締めが完了すると、第2型2のキャビティ面2Aと被加飾体20の表面に配置された転写シート12との間に、キャビティVが形成される。
【0036】
次に、図4に示すように、第2型2のゲート11からキャビティVに溶融樹脂30を注入する。このとき、キャビティVに注入された溶融樹脂30によって転写シート12が被加飾体20の表面に向けて押圧され、その結果、被加飾体20の表面に転写シート12が確実に接着される。ここで、キャビティVに注入される溶融樹脂30が高温である場合には、溶融樹脂30が転写シート12を加熱し、被加飾体20の表面をさらに加熱することとなり、被加飾体20の表面への転写シート12の転写層12aの転写がより確実に行われる。射出される溶融樹脂の温度は、例えば280℃以上になるよう設定されており、第1型1及び第2型は例えば80℃以上になるよう設定されている。
【0037】
図5に示すように、溶融樹脂30が硬化した後、第2型を第1型から離間して型締めを開放し、転写シート12を第1クランプ4及び第2クランプ5で挟持した状態のまま被加飾体20の表面から離間する。その後、図6に示すように、第1型1に設けられた押し出し棒(図示せず)により転写加飾品31を押し出して取り出すとともに、第2型2に設けられた押し出し棒(図示せず)により硬化した溶融樹脂30を押し出し、転写シート12の送りを再開する。
【0038】
得られた転写加飾品31は、被加飾体20の表面が転写層12aにより確実に加飾される。また、溶融樹脂30として熱可塑性樹脂を用いた場合には、硬化した樹脂に熱を加えて溶融樹脂に戻す等の別処理を行い、キャビティVに注入する媒体として再利用する。
【0039】
(10)第2実施形態
第2実施形態では、キャビティVに溶融樹脂30を注入した状態で、溶融樹脂30の圧力を高める加圧機構が設けられている。図7(a)は溶融樹脂が注入された直後の状態を示し、図7(b)は注入された溶融樹脂が圧縮された状態を示す。
【0040】
図7に示すように、キャビティV内の溶融樹脂30の圧力を高める加圧機構として、第2型2のキャビティ面の内部にスライド型3が備えられている。スライド型3は、第2型2に対して型締め方向に相対移動可能であり、スライド型3と第2型2との間には、スライド型3を第1型1から離間する方向に付勢する弾性部材3aが設けられている。型締め後において溶融樹脂30が射出される際には、スライド型3は第2型2のキャビティ面から後退した位置に保持され(図7(a))、溶融樹脂30の射出が完了した後に、スライド型3を弾性部材3aに抗して第1型1に向けて前進させる(図7(b))。その結果、キャビティVの領域は小さくなり、注入された溶融樹脂30が圧縮され、転写シート12の被加飾体20の表面全体への押圧力が増すこととなり、被加飾体20への転写層による転写がより確実に行われる。
【0041】
本発明の各実施形態による転写加飾品の製造方法では、被加飾体20の表面に転写シート12を密着させ、転写層12aを転写させるにあたって、溶融樹脂30による加圧及び加熱を用いている。加圧は転写シート12への直接的な加圧であり、加熱は、転写シート12への直接的な加熱及び被加飾体20への加熱である。溶融樹脂30といった流体により転写シート12を被加飾体20の表面に密着させているため、被加飾体20の表面が滑らかな場合はもとより、エンボスやシボといった微細な凹凸形状の場合であっても、その凹凸形状に溶融樹脂30が流れ込み、転写シート12が凹凸形状に精度よく密着し、凹凸形状に精度よく転写層12aを転写させることができる。あるいは、大きな凹凸形状であっても、その凹凸形状の隅部にまで精度よく転写層12aを転写させることができる。
また、溶融樹脂30の流入地点から徐々に拡大する、溶融樹脂30の流れによる連続的な加圧であるため、転写シート12を密着させる過程での、転写シート12と被加飾体20との間に空気溜まりを作ってしまう、いわゆるエアかみの発生も効果的に防止することができる。
【0042】
また、本発明の各実施形態による転写加飾品の製造方法では、基体シート12bに寸法安定性のよい、印刷乾燥により変形しにくい材料を選択することができるため、図柄の位置や大きさの印刷精度の高い転写シート12を用いて、転写を行うことができる。そのため、結果として、図柄の位置や大きさと被加飾体20の凹凸形状との位置精度の高い転写加飾品31を製造できる。
【0043】
(11)キャビティの形状及びそれによる効果(第1実施例)
図8〜図12を用いて、キャビティVの形状及びそれによる効果を説明する。図8に示すように、載置部1Aは、概ね長方形状であり、四辺と四隅を有している。キャビティVは、第1型1の載置部1Aより外側に広がった平面視形状を有している。
載置部1Aは、前述のように平面視で四角形であり、凸形状である。載置部1Aは、平面視では、辺部1bと、角部1cとを有している。また、載置部1Aの縁は全て縁部1dである。被加飾体20は、載置部1Aに沿うような薄い板形状である。つまり、被加飾体20は、全体的には、皿形状であり、凸状部20aと、凸状部20aの四辺から突出する周縁部20bとを有している。
【0044】
より具体的には、キャビティVは、第1型1と第2型2との型締め方向間に、型締め方向隙間V1を有している。さらにキャビティVは、図9にも示すように、載置部1Aの辺部1bに対応する位置に、載置部1Aの内外平面方向に延びる隙間V2を有している。隙間V2は、辺部1bに対応する縁部1dと、キャビティVの外側縁部2dとの間に形成されている。隙間V2の幅W2は、型締め方向隙間V1の高さHと同じ又は同程度である。なお、高さH及び幅W2は、例えば、0.7〜1.5mmである。さらに、キャビティVは、図10にも示すように、載置部1Aの角部1cに対応する位置に内外平面方向に延びる隙間V3を有している。隙間V2は、角部1dに対応する縁部1dと、キャビティVの外側縁部2dとの間に形成されている。隙間V3は、隙間V1より載置部1Aの内外方向に突出している。隙間V3は、平面視では、図8に示すように、円の一部のような形状であるが、他の形状であってもよい。隙間V3の幅W3は、高さH及び幅W2より長い。隙間V3の幅W3は、載置部1Aの角部1cから隙間V3の外周縁までの最も長い部分までの距離である。
【0045】
隙間V3の幅W3は、高さHの2〜10倍であることが好ましく、5〜7倍であることがより好ましい。
【0046】
隙間V3の幅W3は、幅W2の2〜10倍であることが好ましく、5〜7倍であることがより好ましい。
以上に述べた数値範囲では、それぞれにおいて、2倍以上で不良解消にある程度の効果があり、5倍以上で優れた効果が得られる。また、10倍以下がショットボリューム(樹脂の使用量)及びフィルムの面積の低減にある程度の効果があり、7倍以下で優れた効果が得られる。
【0047】
この場合、転写シート12が被加飾体20に接触しやすい部分は被加飾体20の角部1cであるが、角部1cにおいて幅W3が大きく設定されているので、転写シート12が被加飾体20に接触する可能性を減らせる。そのため、図11及び図12に示すように、溶融樹脂30が注入されると、溶融樹脂30は、ゲート11から徐々に拡大していき、連続的に転写シート12を加圧して被加飾体20に押し付けていく。以上より、転写シート12を密着させる過程において、転写シート12と被加飾体20との間に空気溜まりが生じにくい。
また、転写シート12の伸び代が大きくなっているので、転写シート12の形状追従性が向上している。したがって、載置部1Aの角部1cにおいてインキクラックが生じにくい。
また、隙間V2が被加飾体20の辺部1bに対応して設けられているので、媒体の使用量を減らすことができ、さらには、媒体注入装置37の大型化を防止できる。
【0048】
もしも載置部の角部における隙間が前記実施例とは異なって高さと同程度である場合は、型を閉じただけで載置部の角部において転写シートが被加飾体に接触してその部分だけが先に転写状態になる可能性がある。これは、型が既に高温になっているためである。その場合は、媒体が転写シートを押しながら広がっていくときに、溶融樹脂の熱と圧とによって転写シートにしわが発生する。そして、しわは移動していくが、転写シートが被加飾体に被加飾体に接触した部分で止まって空気溜まりが生じさせる。その結果、空気溜まりの部分が転写エラーになる。本実施形態では、上記問題が解決されている。
【0049】
(12)キャビティの形状及びそれによる効果(第2実施例)
図13〜図14を用いて、キャビティVの形状及びそれによる効果を説明する。なお、前記実施例と同じ構造については説明を省略する。
【0050】
図から明らかなように、キャビティVは、載置部1Aの全体(つまり、辺部1b及び角部1c)に載置部1Aの内外平面方向に延びる隙間V4を有している。隙間V4の幅W4は、型締め方向隙間V1の2〜10倍であることが好ましく、5〜7倍であることがより好ましい。
【0051】
この場合、転写シート12が被加飾体20に接触しやすい部分は被加飾体20の角部1cであるが、角部1cも含めて幅W4が大きく設定されているので、転写シート12が被加飾体20に接触する可能性を減らせる。そのため、溶融樹脂30が注入されると、溶融樹脂30は、ゲート11から徐々に拡大していき、連続的に転写シート12を加圧して被加飾体20に押し付けていく。以上より、転写シート12を密着させる過程において、転写シート12と被加飾体20との間に空気溜まりが生じにくい。
【0052】
(13)キャビティの形状及びそれによる効果(第3実施例)
図15〜図16を用いて、キャビティVの形状及びそれによる効果を説明する。なお、前記実施例と同じ構造については説明を省略する。
【0053】
この実施例では、図から明らかなように、キャビティVは、載置部1Aの周囲全体(つまり、辺部1b及び角部1c)にわたって載置部1Aの内外平面方向に延びる隙間V2を有している。隙間V2の幅W2は、型締め方向隙間V1と同じ又は同じ程度である。
さらに、この実施例では、キャビティVは、ゲート11から載置部1Aの角部1cに向かって延びる流路空間V5を有している。流路空間V5は、他の部分である隙間V1より流路断面積が大きくなっている。流路空間V5は、第2型のキャビティ面2Aに形成された溝によって実現されている。したがって、流路空間V5の高さH2は、隙間V1の高さH1より大きい。
【0054】
この実施例では、注入された溶融樹脂30は、流路空間V5を通って速やかに載置部1Aの角部1cに向かって流れていく。したがって、載置部1Aの角部1cにおいて十分な媒体が供給されて、その結果、転写シート12が被加飾体20に確実に押し付けられる。つまり、転写ミスが生じにくい。
【0055】
もしも流路空間が形成されておらずしかもキャビティの型締め方向隙間が十分に小さい場合は、注入された溶融樹脂は、ゲートから角部に向かって流れる際に角部に対して直線的には進まず、角部を避けるように曲がって流れようとすると考えられる。したがって、載置部の角部に対して溶融樹脂が十分に供給されないことがある。本実施例は、上記の問題を解決している。
【0056】
(14)キャビティの形状及びそれによる効果(第4実施例)
図17〜図18を用いて、キャビティVの形状及びそれによる効果を説明する。なお、前記実施例と同じ構造については説明を省略する。
【0057】
図から明らかなように、キャビティVは、載置部1Aの周囲全体(つまり、辺部1b及び角部1c)に載置部1Aの内外平面方向に延びる隙間V4を有している。隙間V4の幅W4は、型締め方向隙間V1の2〜10倍であることが好ましく、5〜7倍であることがより好ましい。
キャビティVは、ゲート11から載置部1Aの角部1cに向かって延びる流路空間V5を有している。流路空間V5は、他の部分である隙間V1より流路断面積が大きくなっている。流路空間V5は、第2型のキャビティ面2Aに形成された溝によって実現されている。
この実施例では、角部1cの隙間が多くなっており、さらに角部1cに向けての流路が形成されているので、角部1cにおける転写ミスが生じにくい。
【0058】
(15)キャビティの形状及びそれによる効果(第5実施例)
図19〜図20を用いて、キャビティVの形状及びそれによる効果を説明する。なお、前記実施例と同じ構造については説明を省略する。
キャビティVは、載置部1Aの辺部1bに対応する位置に載置部1Aの内外平面方向に延びる隙間V2を有している。隙間V2の幅W2は、型締め方向隙間V1の高さHと同じ又は同程度である。さらに、キャビティVは、載置部1Aの角部1cに対応する位置に内外平面方向に延びる隙間V3を有している。隙間V3は、隙間V1より載置部1Aの内外方向に突出している。隙間V3は、平面視では、円の一部のような形状である。隙間V3の幅W3は、高さH及び幅W2より長い。隙間V3の幅W3は、載置部1Aの角部1cから隙間V3の外周縁までの最も長い部分までの距離である。
キャビティVは、ゲート11から載置部1Aの角部1cに向かって延びる流路空間V5を有している。流路空間V5は、他の部分である隙間V1より流路断面積が大きくなっている。流路空間V5は、第2型のキャビティ面2Aに形成された溝によって実現されている。
【0059】
この実施例では、角部1cの外側お隙間が大きくなっており、さらに角部1cに向けての流体空間が形成されているので、角部1cにおける転写ミスが生じにくい。さらに、辺部1bの隙間を小さくしているので、媒体の注入量を少なくできる。
【0060】
(16)実施形態の作用効果
上記実施形態は、下記のように表現可能である。
(A)第1実施例と第5実施例において、転写加飾用金型34は、媒体によって転写シート12を被加飾体20に対して押圧することで転写層12aを被加飾体20に転写する転写加飾装置に用いられる型である。型34は、第1型1と、第2型2とを有する。第1型1は、被加飾体20を載置可能な載置部1Aを内面に有する。第2型2は、第1型1と型締めされることで、被加飾体20上に配置された転写シート12との間にキャビティVを形成する。載置部1Aの縁部1dとキャビティVの外側縁部2d(つまり、第2型2の内面の外側縁)との間には隙間が確保されている。隙間は、隙間V2(第1隙間の一例)と、隙間V2よりも載置部1Aの内外方向に長い隙間V3(第2隙間の一例)とを有している。
【0061】
このように、転写シート12を被加飾体20の表面に対向する位置に配置した後、第2型2と転写シート12との間に形成されたキャビティVに溶融樹脂30(媒体の一例)を注入する。溶融樹脂30は、転写シート12を被加飾体20に押し付ける。したがって、被加飾体20の表面が絞りの深い立体形状であったとしても、転写シート12と被加飾体20との間にエア溜まりが発生しにくく、転写シート12と被加飾体20との密着性が向上する。つまり、被加飾体20に転写層12aが確実に転写される。
また、溶融樹脂30を用いることで、転写シート12に対して圧力とともに熱が付与される。その結果、転写シート12を溶融樹脂30の熱により軟化させつつ被加飾体20に押し付けることができ、被加飾体20に対して転写層12aを転写しやすくなる。
【0062】
さらに、隙間V3を転写シート12が被加飾体20に接触しやすい部分(例えば、載置部1Aの角部1c)に設ければ、その部分での転写シート12の遊び量が大きくなり、その結果、転写シート12と被加飾体20との接触圧が低下する。つまり、溶融樹脂30の注入前に転写シート12が被加飾体20に接触しにくくなる。その結果、溶融樹脂30がキャビティVに注入されたときに、エア溜まりが発生しにくい。つまり、転写不良が生じにくい。
【0063】
(B)隙間V2は載置部1Aの辺部1bに対応しており、隙間V3は載置部1Aの角部1cに対応して設けられている。この場合、転写シート12が被加飾体20に接触しやすい部分は角部1cであるが、その角部1cに隙間V3が設けられているので転写シート12が被加飾体20に接触しにくくなる。また、隙間V2が載置部1の辺部1bに対応して設けられているので、溶融樹脂30の使用量を減らすことができ、さらには、成形機の大型化を防止できる。
【0064】
(C)隙間V3の幅W3は、隙間V2の幅V2の2〜10倍の範囲にある。
この場合、溶融樹脂30の使用量を極端に増やすことなく、しかも溶融樹脂30の注入前に転写シート12が被加飾体20に接触しにくくなる。
【0065】
(D)第1実施例、第2実施例、第4実施例及び第5実施例において、転写加飾用金型34は、溶融樹脂30(媒体の一例)によって転写シート12を被加飾体20に対して押圧することで転写層12aを被加飾体20に転写する転写加飾装置に用いられる型である。型34は、第1型1と、第2型2とを有する。第1型1は、被加飾体20を載置可能な載置部1Aを内面に有する。第2型2は、第1型1と型締めされることで、被加飾体20上に配置された転写シート12との間にキャビティVを形成する。載置部1Aの縁部1dとキャビティVの外側縁部2dとの間の隙間の少なくとも一部である隙間V3又はV4(隙間部の一例)は、キャビティVの第1型1と第2型2の型締め方向の隙間V1より大きい。
【0066】
転写シート12が被加飾体20に接触しやすい部分(例えば、載置部1Aの角部1c)に隙間V3又はV4を設ければ、その部分での転写シート12の遊び量が大きくなり、その結果、転写シート12と被加飾体20との接触圧が低下する。つまり、溶融樹脂30の注入前に転写シート12が被加飾体20に接触しにくくなる。その結果、溶融樹脂30がキャビティVに注入されたときに、エア溜まりが発生しにくい。つまり、転写不良が生じにくい。
【0067】
(E)隙間V3の幅W3又は隙間V4の幅W4は、キャビティVの型締め方向の隙間V1の長さの2〜10倍の範囲にある。
この場合、溶融樹脂30の使用量を極端に増やすことなく、しかも溶融樹脂30の注入前に転写シート12が被加飾体20に接触しにくくなる。
【0068】
(F)第3実施例、第4実施例又は第5実施例において、転写加飾用金型34は、溶融樹脂30(媒体の一例)によって転写シート12を被加飾体20に対して押圧することで転写層12aを被加飾体20に転写する転写加飾装置に用いられる型である。型34は、第1型1と、第2型2とを有する。第1型1は、被加飾体20を載置可能な載置部1Aを内面に有する。第2型2は、第1型1と型締めされることで、被加飾体20上に配置された転写シート12との間にキャビティVを形成する。キャビティVは、隙間V1(第1流路の一例)と、ゲート11から載置部1Aの角部1cに向かって延びており隙間V1より断面積が大きい流路空間V5(第2流路の一例)とを有している。
【0069】
流路空間V5は、ゲート11から載置部1Aの角部1cに向かって延びている。したがって、溶融樹脂30が載置部1Aの角部1cに十分に供給される。その結果、転写層12aの転写が確実に行われる。つまり、転写不良が生じにくい。
【0070】
(G)隙間V1は、被加飾体20の全体にわたって形成されている。流路空間V5は、ゲート11から載置部1Aの角部1cに延びるように形成されている。
この場合、溶融樹脂30は流路空間V5を通って載置部1Aの角部1cに確実に供給される。
【0071】
(H)流路空間V5は、第2型2の第1型1と対向する面2Aに形成された溝部2Bである。
この場合は、第2型2を加工することによって、流路空間V5を形成できる。
【0072】
(17)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【0073】
(a)載置部、被加飾体、キャビティの形状は、前記実施形態に限定されない。製品の種類に応じて様々な形状を採用してもよい。
(b)上記の実施形態では、被加飾体20は、その周縁部が第1型の型面1aに当接した状態で第1型1の載置部1Aに載置された例を示したが、第1型1に形成された載置部1Aが、載置部1Aに被加飾体20が載置された状態で、被加飾体20の周縁部20bが第1型1の型面1aから離間するよう高さ設定されていてもよい。
【0074】
(c)第1クランプ4及び第2クランプ5の転写シート12を保持する面にテフロン(登録商標)やコーティング済みリング等の摩擦を低減する部材を配置してもよい。こうすると、型締め前に被加飾体20の凸状部20aに転写シート12を押し付ける際に、転写シート12の移動が許容され、転写シート12を無理に引き伸ばすことなく、被加飾体20の凸状部20aに沿わせることが可能となる。
【0075】
(d)上記の実施形態では、被加飾体20の表面に凹凸は形成されていないが、被加飾体20は例えば貫通部を備えて表面に凹凸が形成されていてもよい。この場合であっても、溶融樹脂(媒体)30が転写シート12を貫通部に密着するように押し付けて被加飾体20に転写層12aを確実に転写することとなる。
【0076】
(e)上記の実施形態では、被加飾体20の表面に転写層12aによる加飾のみを施したが、第1型1にも樹脂を射出するゲートを設け、被加飾体20の表面に転写層12aによる加飾と同時に被加飾体20の裏面に樹脂部を成形するようにしてもよい。また、第1型1に金型の温度を調整する温度調整機構を設けて、被加飾体20の温度を調整するようにしてもよい。こうすると、被加飾体20が例えば金属体である場合には、温度調整機構によって加熟された被加飾体20の表面に対し、転写シートの転写層は転写しやすくなる。
【0077】
(f)上記の実施形態では、転写加飾装置を垂直方向(縦向き)に配置したが、水平方向(横向き)に配置してもよい。
【0078】
(g)上記の実施形態では、転写層12aを有する転写シート12を用いる例を示したが、これに代えて、被加飾体20の表面に対し、無地の基体シート又は基体シート上に模様等が付されたインサートシートをそのまま一体にして加飾する構成にしてもよい。また、上記の実施形態では、転写シート12をロール状の長尺フィルムにして被加飾体20の表面に対向する位置に展開配置する例を示したが、被加飾体20の外形に合わせてカッティングしたものを配置してもよいし、被加飾体20より大きい任意の形状(例えば、長方形の枚葉シート)でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、自動車、家庭用電化製品、携帯電話、パーソナルコンピュータ等、様々な分野において、内装品、外装品を問わず、使用される転写加飾品及び、被加飾体の表面に転写層が形成された転写加飾品の製造に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 第1型
1A 載置部
1B 空間部
1a 型面
1b 辺部
1c 角部
1d 縁部
2 第2型
2A キャビティ面
2B 溝部
2d 外側縁部
3 スライド型
3a 弾性部材
4 第1クランプ
5 第2クランプ
6 作動ロッド
7 可動プレート
7a 弾性部材
8 作動ロッド
9 可動プレート
9a 弾性部材
10 固定プレート
11 ゲート
12 転写シート
12a 転写層
12b 基体シート
13 吸引部
20 被加飾体
20a 凸状部
20b 周縁部
30 溶融樹脂
31 転写加飾品
34 転写加飾用金型
35 転写シート保持機構
37 媒体注入装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体によって転写シートを被加飾体に対して押圧することで転写層を前記被加飾体に転写する転写加飾装置に用いられる型であって、
前記被加飾体を載置可能な載置部を内面に有する第1型と、
前記第1型と型締めされることで、前記被加飾体上に配置された前記転写シートとの間にキャビティを形成する第2型とを備えており、
前記載置部の縁部と前記キャビティの外側縁部との間には隙間が確保されており、
前記隙間は、第1隙間と、前記第1隙間よりも前記載置部の内外方向に長い第2隙間とを有している、
転写加飾用金型。
【請求項2】
前記第1隙間は前記載置部の辺部に対応しており、前記第2隙間は前記載置部の角部に対応して設けられている、請求項1に記載の転写加飾用金型。
【請求項3】
前記第2隙間の長さは、前記第1隙間の長さの2〜10倍の範囲にある、請求項1又は2に記載の転写加飾用金型。
【請求項4】
媒体によって転写シートを被加飾体に対して押圧することで転写層を前記被加飾体に転写する転写加飾装置に用いられる型であって、
前記被加飾体を載置可能な載置部を内面に有する第1型と、
前記第1型と型締めされることで、前記被加飾体上に配置された前記転写シートとの間にキャビティを形成する第2型とを備えており、
前記載置部の縁部と前記キャビティの外側縁部との間の隙間の少なくとも一部である隙間部は、前記キャビティの前記第1型と前記第2型の型締め方向の隙間より大きい、
転写加飾用金型。
【請求項5】
前記隙間部の長さは、前記キャビティの前記型締め方向の隙間の長さの2〜10倍の範囲にある、請求項4に記載の転写加飾用金型。
【請求項6】
媒体によって転写シートを被加飾体に対して押圧することで転写層を前記被加飾体に転写する転写加飾用金型であって、
前記被加飾体を載置可能な載置部を内面に有する第1型と、
前記第1型と型締めされることで前記被加飾体上に配置された前記転写シートとの間にキャビティを形成する第2型とを備えており、
前記キャビティは、第1流路と、前記媒体が供給される箇所から前記載置部の角部に向かって延びており前記第1流路より断面積が大きい第2流路とを有している、
転写加飾用金型。
【請求項7】
前記第1流路は、前記載置部の全体にわたって形成されており、
前記第2流路は、前記媒体が供給される箇所から前記載置部の角部に向かって延びるように形成されている、請求項6に記載の転写加飾用金型。
【請求項8】
前記第2流路は、前記第2型の前記第1型と対向する面に形成された溝部である、請求項7に記載の転写加飾用金型。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の転写加飾用金型と、
前記媒体を前記キャビティに注入する媒体注入装置と、
を備えている転写加飾装置。
【請求項10】
請求項9に記載の転写加飾装置を用いた転写加飾品の製造方法であって、
前記被加飾体を前記載置部に載置し、
前記被加飾体上に前記転写シートを配置し、
前記第1型と前記第2型を型締めし、
前記キャビティに前記媒体を注入することで、前記転写シートを前記被加飾体に押し付ける、
転写加飾品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−39715(P2013−39715A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177623(P2011−177623)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】