説明

転写媒体、転写媒体の製造方法、画像形成方法および記録物

【課題】光輝性および耐擦性に優れた画像を形成することが可能な転写媒体、このような転写媒体を容易に製造することが可能な転写媒体の製造方法、光輝性および耐擦性に優れた画像を形成することが可能な画像形成方法、また、光輝性および耐擦性に優れた画像が記録された記録物を提供すること。
【解決手段】本発明の転写媒体は、転写シートと、転写シート上に、光輝性顔料が分散した光輝性インクをインクジェット方式により付与することにより形成された光輝性画像層と、光輝性画像層の転写シートとは反対の面側に設けられ、接着層の平面視の面積は、光輝性画像層の平面視の面積よりも大きく、かつ、光輝性画像層の縁部から接着層の縁部への最短距離が1mm以上5mm以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写媒体、転写媒体の製造方法、画像形成方法および記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録面に光輝性を有する画像が形成された記録物の需要が高まっている。光輝性を有する画像を形成する方法としては、従来は、例えば、平坦性の高い記録面を有する記録媒体を準備して、これに金属箔を押しつけて記録する箔押し記録法、記録面が平滑なプラスチックフィルムに対して金属等を真空蒸着する方法、および、記録媒体に光輝性顔料インキを塗布し、さらにプレス加工を行う方法等が知られている。
【0003】
また、インクジェット法によって光輝性顔料を有するインク(以下、光輝性インクという)を吐出して形成した画像層に接着層を重ねた転写媒体を製造し、この転写媒体から画像を転写することにより画像形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、光輝性インクには、通常、樹脂が含まれている。このように光輝性インクが樹脂を含むことにより、形成した画像の記録媒体に対する密着性が向上し、耐擦性の向上が期待される。
【0004】
しかしながら、カラーインクの発色とは異なり、光輝性インクの光輝性は、光輝性顔料の平滑な配列による発現するものであり、耐擦性をより優れたものとするために、多くの樹脂を添加すると、配列を阻害して光輝(光沢)性が低下してしまうといった問題があった。また、優れた光輝性を得ようと樹脂を少なくすると、耐擦性が低下してしまうといった問題があり、特に、形成される画像の縁からの剥離が顕著であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】

【特許文献1】特開2009−107283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、光輝性および耐擦性に優れた画像を形成することが可能な転写媒体、このような転写媒体を容易に製造することが可能な転写媒体の製造方法、光輝性および耐擦性に優れた画像を形成することが可能な画像形成方法、また、光輝性および耐擦性に優れた画像が記録された記録物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の転写媒体は、転写シートと、
前記転写シート上に、光輝性顔料が分散した光輝性インクをインクジェット方式により付与することにより形成された光輝性画像層と、
前記光輝性画像層側の前記転写シートとは反対の面側に設けられ、接着性を有する化合物を含む材料で形成された接着層とを有し、
、かつ、前記光輝性画像層の縁部から、前記接着層の縁部への最短距離が、1mm以上5mm以下であることを特徴とする。
これにより、光輝性および耐擦性に優れた画像を形成することが可能な転写媒体を提供することができる。
【0008】
本発明の転写媒体では、前記光輝性顔料の平均粒径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。
これにより、形成される画像の光輝性および耐擦性をより優れたものとすることができる。
本発明の転写媒体では、前記光輝性インク中における前記樹脂成分の含有量は、0.5質量%以上2.6質量%以下であることが好ましい。
これにより、光輝性インクの成膜性をより適度なものとしつつ、優れた光輝性を有する画像(画像層)をより効果的に形成することができる。
【0009】
本発明の転写媒体では、前記接着層の平面視した際の面積は、前記光輝性画像層の平面視した際の面積よりも大きいことが好ましい。
これにより、転写シート等への影響を小さいものとすることができるとともに、光輝性に優れた画像層を形成することができる。また、光輝性インクの吐出性をより高いものとすることができる。
【0010】
本発明の転写媒体では、前記転写シートと前記光輝性画像層との間に、色材が分散したカラーインクをインクジェット方式により付与することにより形成されたカラー画像層を有することが好ましい。
これにより、耐擦性に特に優れた画像を形成することができるとともに、意匠性に特に優れた画像を形成することができる転写媒体を提供することができる。
【0011】
本発明の転写媒体の製造方法は、インクジェット方式により、転写シート上に光輝性顔料が分散した光輝性インクを付与し、光輝性画像層を形成する光輝性画像層形成工程と、
前記転写シートの前記光輝性画像層を形成した面側に、接着性を有する化合物を含む材料を付与し、接着層を形成する接着層形成工程と、を有し、
前記光輝性画像層の縁部から、前記接着層の縁部への最短距離が、1mm以上5mm以下であることを特徴とする。
これにより、光輝性および耐擦性に優れた画像を形成することが可能な転写媒体を容易に製造することが可能な転写媒体の製造方法を提供することができる。
【0012】
本発明の画像形成方法は、本発明の転写媒体の前記接着層と記録媒体とを対向するように配置し、前記光輝性画像層と前記記録媒体とを前記接着層を介して接着する接着工程と、
前記転写シートと前記光輝性画像層とを剥離して、前記光輝性画像層を前記記録媒体へ転写する転写工程と、を有することを特徴とする。
これにより、光輝性および耐擦性に優れた画像を形成することができる。
本発明の記録物は、本発明の画像形成方法によって形成され、
前記記録媒体と、前記接着層と、前記光輝性画像層とを有することを特徴とする。
これにより、光輝性および耐擦性に優れた画像を備えた記録物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の転写媒体の一例を示す断面図である。
【図2】インクジェット装置の概略構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の転写媒体の製造方法の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の画像形成方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《転写媒体》
まず、本発明の転写媒体の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の転写媒体の一例を示す断面図である。
図1に示すように、転写媒体100は、転写シート11と、転写シート11上に形成された光輝性画像層12と、光輝性画像層12上に形成された接着層13とを有している。
【0015】
転写シート11は、光輝性画像層12、接着層13を支持する機能を有し、画像形成の際には除去されるものである。
転写シート11の材質としては、特に限定されないが、例えば、各種の紙、布、フィルム、シート等が挙げられる。
転写シート11としては、普通紙、インク受理層等を有する専用紙等の紙のほか、例えば、インクが付与される表面を含む領域が、各種プラスチック、セラミックス、ガラス、金属や、これらの複合材料で構成された基材等が挙げられる。転写シート11には離形性を有する離型層が形成されていても、されていなくても良い。転写シート11として、インク受理層を有するシートを用いる場合には、その専用紙は空隙層を有するシートであることが好ましい。「空隙層」とは、層を構成する成分のうち、樹脂の割合が3割未満であり、無機粒子で主に構成され、無機粒子間または無機粒子に設けられた孔の空隙に液体が浸透するよう構成された層のことをいう。このような空隙層を有するシートを用いた場合、離型性を有する離型層の形成が不要である。空隙層を有するシートの場合、後述する光輝性インクの光輝性顔料が平滑に配列しやすいため、光輝性に特に優れた画像を形成することが可能である。
【0016】
なお、無機粒子としては例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリンの他に、タルクなどの精製した天然鉱物顔料、炭酸カルシウムと他の親水性有機化合物との複合合成顔料、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、有機顔料などが挙げられる。
光輝性画像層12は、後述するような光輝性インクをインクジェット方式により付与することにより転写シート11上に形成された層である。光輝性画像層12は、転写シート11の全面に形成されてもよいし、転写シート11の一部に形成されてもよい。光輝性画像層12は、転写媒体100から転写先の記録媒体へ転写されたときに、転写先の記録媒体上における画像となる。
【0017】
光輝性インクについては、後に詳述する。
接着層13は、光輝性画像層12に対して形成され、光輝性画像層12を転写媒体100から転写先の記録媒体へ転写されたときに、光輝性画像層12と記録媒体とを接着する機能を有している。
ところで、光輝性インクの光輝性は、カラーインクの発色とは異なり、光輝性顔料の平滑な配列による発現するものであり、耐擦性をより優れたものとするために、光輝性インクに多くの樹脂を添加すると、配列を阻害して光輝(光沢)性が低下してしまうといった問題があった。また、優れた光輝性を得ようと樹脂を少なくすると、耐擦性が低下してしまうといった問題があり、特に、形成される画像の縁からの剥離が顕著であった。また、樹脂量を多く含有できないことで、画像を十分に保護する事が出来ず、縁部中心に耐水性にも劣っていた。さらに、画像を保護する樹脂を光輝性インクは多く含有すると光沢度(光輝性)を維持出来ないという問題点があった。
【0018】
これに対して、本発明では、光輝性画像層の縁部から、接着層の縁部への最短距離が1mm以上5mm以下となるよう構成することにより、光輝性に優れるとともに、耐擦性に優れた画像を形成することが可能な転写媒体を提供することができる。また、輝性画像層を平面視した形状と接着層を平面視した形状とが実質的に同一であると好ましい。一方、光輝性画像層全体を被覆するよう接着層を設ける事も好ましい。さらに、接着層の平面視した際の面積が、前記光輝性画像層の平面視した際の面積よりも大きくする事も好ましい。
【0019】
特に、図1に示すように、接着層13を光輝性画像層12の縁部を覆うように形成した場合、形成される画像の縁からの不本意な剥がれを効果的に防止することができる。また、このように覆うように形成されていることにより、形成される画像の縁部における耐水性をより高いものとすることができる。
接着層13の厚みは、光輝性画像層12の転写先である記録媒体の性質に応じて適宜設定することができる。例えば、転写先の記録媒体の表面の凹凸が大きい場合には、その凹凸の影響が光輝性画像層12の表面(転写前に転写シート11に接していた面)に生じないように接着層13の厚みを適宜設定することができる。また、転写先の記録媒体が浸透性を有する場合には、その浸透性を考慮した厚みとすることができる。
【0020】
接着層13の厚み(縁部付近を除く)は、具体的には、例えば、0.2μm以上10μm以下であるのが好ましい。
接着層13は、接着性を有する。ここで、接着性とは、光輝性画像層12と転写先の記録媒体とを、接着する性質のことをいう。本発明において、接着性は、接着層13に、温度(熱)の刺激が印加されたときに発現するものである。
【0021】
接着層13が有する接着性の程度は、転写シート11と光輝性画像層12との間の接着力(密着力)よりも、接着層13を介した光輝性画像層12と転写先の記録媒体との間の接着力(密着力)のほうが大きければ十分である。なお、画像は光輝性画像層12を構成する光輝性顔料の全てが転写される必要は無く、部分的に転写されるような接着力を有する接着層13を形成してもよい。
接着層13は、接着性を有する化合物を含む材料で構成されている。
【0022】
このような接着性を有する化合物としては、アクリル系、ウレタン系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、などの接着剤に汎用されるモノマー、オリゴマーや、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂やポリビニルアルコール樹脂等のビニル系樹脂、ポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂等の樹脂類を例示できる。この場合、必要に応じて重合開始剤、反応助剤、充填剤等の添加物が含有されてもよい。また、接着性を有する化合物の例としては、ポリオレフィン類、ポリアミド類、およびその変性体などの熱可塑性樹脂を挙げることができる。この場合、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤等の添加物が含有されてもよい。また、接着性を有する化合物としては、ロジン、糊化デンプン、ニカワ、各種の糖類等の天然樹脂またはその変性体などの粘着性を有する物質を例示することができる。
【0023】
接着層13を構成する接着性を有する化合物のガラス転移温度は、−8℃以上16℃以下であるのが好ましく、−4℃以上10℃以下であるのがより好ましく、−3℃以上7℃以下であるのがさらに好ましい。これにより、形成される画像の耐擦性を特に優れたものとすることができる。
なお、上述した説明では、画像層として光輝性画像層12のみを有するものとして説明したが、光輝性画像層12の他に、光輝性画像層12と転写シート11との間に、色材が分散したカラーインクをインクジェット方式により付与することにより形成されたカラー画像層を有していてもよい。このような構成とすることにより、耐擦性に特に優れた画像を形成することができるとともに、意匠性に特に優れた画像を形成することができる転写媒体を提供することができる。
【0024】
《インク》
次に、本発明の転写媒体の画像層(光輝性画像層、カラー画像層)の形成に用いるインクについて説明する。
[光輝性インク]
光輝性インクは、光輝性画像層12を形成するのに用いるインクである。
【0025】
本願において光輝性インクは光輝性顔料を含有したインクである。光輝性顔料としては、インクジェット記録方法によって当該インクの液滴を吐出できる範囲内で、任意のものを用いることができる。光輝性顔料は、光輝性インクが樹脂インクの層の上に付着したときに、光輝性を付与する機能を有し、また、付着物に光輝性を付与することもできる。このような光輝性顔料としては、パール顔料や金属粒子があげられる。パール顔料の代表例としては、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。一方、金属粒子としてはアルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅等の粒子を挙げることができ、これらの単体またはこれらの合金およびこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
本実施形態で使用される光輝性顔料は、光沢度(光輝性)の高さの観点から、銀粒子を用いることが好ましい。以下、光輝性インクの具体例として銀インクを用いて説明する。
【0026】
(1)銀粒子
上述したように、本実施形態に係る銀インクは、銀粒子を含むものである。このように、銀インクが、銀粒子を含むものであることにより、優れた金属光沢を有する画像を形成することができる。また、銀は、各種金属の中でも、白色度の高い金属であるため、他色のインクと重ね合わせることにより、金色、銅色等の様々な金属色を表現することができる。
【0027】
銀粒子(光輝性顔料)の平均粒径は、1nm以上100nm以下であるのが好ましく、3nm以上65nm以下であるのがより好ましい。これにより、銀インクを用いて形成される画像の光沢感(光輝性)および耐擦性をより優れたものとすることができる。また、インクジェット方式によるインクの吐出安定性(着弾位置精度、吐出量の安定性等)を特に優れたものとすることができ、長期間にわたって所望の画質の画像をより確実に形成することができる。また、平均粒子径が上記の範囲にある場合には、記録媒体に付与した場合に樹脂粒子が一層平滑な配列を阻害要因となり、より厳密な樹脂粒子の添加量の選択が求められる。なお、本明細書では、「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒子径のことを指すものとする。平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
【0028】
銀インク中における銀粒子の含有率は、0.5質量%以上30質量%以下であるのが好ましく、5.0質量%以上15質量%以下であるのがより好ましい。これにより、インクのインクジェット方式による吐出安定性、インクの保存安定性を特に優れたものとすることができる。また、記録物とされたときの記録媒体上での銀粒子の密度(単位面積当たりの含有量)が低い場合から高い場合まで、広い密度の範囲で、良好な画質、耐擦性を実現することができる。
銀粒子は、いかなる方法で調製されたものであってもよく、例えば、銀イオンを含む溶液を用意し、この銀イオンを還元ずることにより、好適に形成することができる。
【0029】
(2)樹脂
本発明に係る光輝性インクは、樹脂を含有していてもよく、これを含有することで定着性や耐擦性が向上する。樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリメタアクリル酸エステル、ポリエチルアクリル酸、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン、ポリオレフィン樹脂、セルロース、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリルアミド共重合体、ポリイソブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ロジン系樹脂、ポリエチレン、ポリカーボネート、塩化ビニリデン樹脂、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、ロジンエステル等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
光輝性インク中における樹脂成分の含有量は、0.5質量%以上2.6質量%以下であるのが好ましく、0.6質量%以上1.9質量%以下であるのがより好ましい。これにより、光輝性インクの成膜性をより適度なものとしつつ、優れた光輝性を有する画像(光輝性画像層12)をより効果的に形成することができる。
【0030】
(3)水
本発明にかかる光輝性インクは、水を50質量%以上含む水系インクであっても、水の含有量が50質量%未満である非水系インクであってもよい。特に、水を50質量%以上含む水系インクであるのが好ましい。これにより、転写シート11への影響を小さいものとすることができ、光輝性に優れた光輝性画像層12を容易に形成することができる。
【0031】
インク中において、水を含有させる場合には、主に銀粒子および接着性を有する化合物を分散させる分散媒として機能する。インクが水を含むことにより、銀粒子等の分散安定性等を優れたものとすることができ、また、前述したインクジェット装置のノズル付近でのインクの不本意な乾燥(分散媒の蒸発)を防止しつつ、インクが付与される記録媒体上での乾燥を速やかに行うことができるため、所望の画像の高速記録を、長期間にわたって好適に行うことができる。また、構成成分の主に水となるので、環境負荷が小さいという利点もある。インク中に水を含有させる場合には、その水の含有率は、特に限定されないが、20質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、25質量%以上70質量%以下であるのがより好ましい。
【0032】
(4)多価アルコール
本発明に係る光輝性インクは、多価アルコールを含有することが好ましい。多価アルコールは、本実施形態に係るインクをインクジェット式記録装置に適用した場合に、インクの乾燥を抑制し、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクによる目詰まりを防止することができる。また、インクの吐出性を向上させることができる。また、光輝性顔料をより平滑に配列させることができ、光輝性に特に優れた画像を形成することができる。
【0033】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどが挙げられる。中でも、炭素数が4〜8アルカンジオールが好ましく、炭素数が6〜8のアルカンジオールがより好ましい。これにより、記録媒体への浸透性を特に高いものとすることができる。インク中における多価アルコールの含有率は、特に限定されないが、0.1質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であるのがより好ましい。
【0034】
上記の多価アルコールの中でも、インクは、1,2−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンを含むものであるのが好ましい。これにより、インク中における銀粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができ、インクの保存安定性を特に優れたものとすることができるとともに、インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、光輝性に特に優れた画像を形成することができる。
【0035】
(5)グリコールエーテル
本発明に係る光輝性インクは、グリコールエーテルを含有することが好ましい。グリコールエーテルを含有することにより、転写シートなどの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。これにより、光輝性顔料をより平滑に配列させることができ、光輝性に特に優れた画像を形成することができる。
【0036】
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。インク中におけるグリコールエーテルの含有率は、特に限定されないが、0.2質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、0.3質量%以上10質量%以下であるのがより好ましい。
【0037】
(6)界面活性剤
本発明に係る光輝性インクは、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、転写シートなどの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。その結果、光輝性顔料をより平滑に配列させることができ、光輝性に特に優れた画像を形成することができる。
【0038】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
【0039】
さらに、本発明に係るインクは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他の界面活性剤を含有することもできる。
光輝性インク中における上記界面活性剤の含有率は、特に限定されないが、0.01質量%以上5.0質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であるのがより好ましい。
【0040】
(7)その他の成分
本発明に係る光輝性インクは、上記以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、pH調整剤、浸透剤、有機バインダー、尿素系化合物、アルカノールアミン(トリエタノールアミン等)等の乾燥抑制剤、チオ尿素等が挙げられる。
【0041】
[カラーインク]
カラーインクは、光輝性画像層12上にカラー画像層を形成するのに用いるインクである。
カラーインクには、着色剤が含まれており、カラーインクとしては、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、ダークイエロー、レッド、グリーン、ブルー、オレンジ、バイオレット等のインク、ブラックインク、ライトブラックインク等が挙げられる。
着色剤としては、顔料および染料が挙げられ、通常のインクに使用することができる色材を特に制限なく使用することができる。
本実施形態に使用可能な顔料としては、特に制限されないが、各種公知の顔料が挙げられる。
【0042】
イエロー有機顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、155、167、172、180、185、213等が挙げられる。
【0043】
マゼンタ有機顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、254、264またはC.I.ピグメントバイオレット19、23、32、33、36、38、43、50等が挙げられる。
【0044】
シアン有機顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、15:34、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー4、60等が挙げられる。
また、マゼンタ、シアンおよびイエロー以外の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、10、C.I.ピグメントブラウン3、5、25、26、C.I.ピグメントオレンジ2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63等が挙げられる。
【0045】
顔料は、平均粒子径が10nm以上200nm以下の範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50nm以上150nm以下程度のものが好ましい。本実施形態における顔料の添加量は、1質量%以上25質量%以下程度の範囲が好ましく、より好ましくは3質量%以上20質量%以下の範囲である。
本実施形態において使用可能な染料としては、例えば、アクリジン染料、アニリン染料、アントラキノン染料、アジン染料、アゾメチン染料、ベンゾー及びナフトキノン染料、インジゴイド染料、インドフェノール染料、インドアニリン染料、インダミン染料、ロイコ染料、ナフタールイミド染料、ニグロシン染料、インジュリン染料、ニトロ及びニトロソ染料、オキサジン及びジオキサジン染料、酸化染料、フタロシアニン染料、ポリメチン染料、キノフタロン染料、硫化染料、トリ及びジアクリルメタン染料、チアジン染料、チアゾール染料、キサンテン染料、シアニン染料等が挙げられる。
【0046】
具体的なイエロー系染料としては、C.I.アシッドイエロー1、3、11、17、19、23、25、29、36、38、40、42、44、49、59、61、70、72、75、76、78、79、98、99、110、111、127、131、135、142、162、164、165、C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、110、132、142、144、C.I.リアクティブイエロー1、2、3、4、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24、25、26、27、37、42、C.I.フードイエロー3、4、C.I.ソルベントイエロー15、19、21、30、109等が挙げられる。
【0047】
具体的なマゼンタ系の染料としては、例えば、C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、37、42、51、52、57、75、77、80、82、85、87、88、89、92、94、97、106、111、114、115、117、118、119、129、130、131、133、134、138、143、145、154、155、158、168、180、183、184、186、194、198、209、211、215、219、249、252、254、262、265、274、282、289、303、317、320、321、322、C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231、C.I.リアクティブレッド1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、15、16、17、19、20、21、22、23、24、28、29、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、46、49、50、58、59、63、64、C.I.ソルビライズレッド1、C.I.フードレッド7、9、14等が挙げられる。
【0048】
具体的なシアン系の染料としては、例えば、C.I.アシッドブルー1、7、9、15、22、23、25、27、29、40、41、43、45、54、59、60、62、72、74、78、80、82、83、90、92、93、100、102、103、104、112、113、117、120、126、127、129、130、131、138、140、142、143、151、154、158、161、166、167、168、170、171、182、183、184、187、192、199、203、204、205、229、234、236、249、C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、120、123、158、160、163、165、168、192、193、194、195、196、199、200、201、202、203、207、225、226、236、237、246、248、249、C.I.リアクティブブルー1、2、3、4、5、7、8、9、13、14、15、17、18、19、20、21、25、26、27、28、29、31、32、33、34、37、38、39、40、41、43、44、46、C.I.ソルビライズバットブルー1、5、41、C.I.バットブルー4、29、60、C.I.フードブルー1、2、C.I.ベイシックブルー9、25、28、29、44等が挙げられる。
【0049】
その他の色系統の具体的な染料としては、例えば、C.I.アシッドグリーン7、12、25、27、35、36、40、43、44、65、79、C.I.ダイレクトグリーン1、6、8、26、28、30、31、37、59、63、64、C.I.リアクティブグリーン6、7、C.I.アシッドバイオレット15、43、66、78、106、C.I.ダイレクトバイオレット2、48、63、90、C.I.リアクティブバイオレット1、5、9、10等が挙げられる。
【0050】
これらの染料は、前記した各色の系の染料の群内および各群間から複数選択して使用することができる。
本実施形態における染料の添加量は、1質量%以上25質量%以下程度の範囲が好ましく、より好ましくは3質量%以上20質量%以下の範囲である。
また、カラーインクには、樹脂成分が含まれているのが好ましい。これにより、着色剤の分散性を優れたものとすることができる。また、これにより、転写媒体100の画像層12の転写時には、転写シート11から光輝性画像層12をより容易に剥離することができるとともに、保存時には転写シート11から光輝性画像層12が不本意に剥がれるのを防止することができる。
【0051】
樹脂成分としては、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリメタアクリル酸エステル、ポリエチルアクリル酸、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン、ポリオレフィン樹脂、セルロース、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリルアミド共重合体、ポリイソブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ロジン系樹脂、ポリエチレン、ポリカーボネート、塩化ビニリデン樹脂、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、ロジンエステル等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
上述した中でも、樹脂成分として、特に、スチレン−アクリル樹脂、および、ポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0052】
カラーインク中における前記樹脂成分の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であるのがより好ましい。これにより、転写シート11からのカラー画像層の不本意な剥がれを防止しつつ、転写媒体100のカラー画像層および光輝性画像層の転写時には、転写シート11からカラー画像層をより容易に剥離することができる。
【0053】
《インクジェット装置》
次に、インクジェット装置(液滴吐出装置)の好適な実施形態について説明する。図2は、本実施形態に係るインクジェット装置の概略構成を示す斜視図である。図2に示すように、記録装置としてのインクジェット式プリンター1(以下、プリンター1という)は、フレーム2を有している。フレーム2には、プラテン3が設けられ、プラテン3上には、媒体送りモーター4の駆動により媒体Pが給送されるようになっている。また、フレーム2には、プラテン3の長手方向と平行に、棒状のガイド部材5が設けられている。
【0054】
ガイド部材5には、キャリッジ6がガイド部材5の軸線方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ6は、フレーム2内に設けられたタイミングベルト7を介して、キャリッジモーター8に連結されている。そして、キャリッジ6は、キャリッジモーター8の駆動により、ガイド部材5に沿って往復移動されるようになっている。
キャリッジ6には、ヘッド9が設けられるとともに、ヘッド9に液体としてのインクを供給するためのインクカートリッジ10が着脱可能に配置されている。インクカートリッジ10内のインクは、ヘッド9に備えられた図示しない圧電素子の駆動により、インクカートリッジ10からヘッド9へと供給され、ヘッド9のノズル形成面に形成された複数のノズルから、プラテン3上に給送された媒体Pに対して吐出されるようになっている。これにより画像(画像層)を形成することが可能となる。
吐出方法としては、サーマルジェット(バブルジェット(登録商標))方式でもよい。また、従来公知の方法はいずれも使用できる。
【0055】
《転写媒体の製造方法》
次に、上述したようなインクを用いた転写媒体の製造方法について、詳細に説明する。
図3は、本発明の転写媒体の製造方法の一例を示す模式図である。
本実施形態の転写媒体の製造方法は、転写シート11を準備する転写シート準備工程と、転写シート11にインクジェット法により、光輝性インクを付与し、光輝性画像層12を形成する光輝性画像層形成工程と、形成した光輝性画像層12を乾燥させる乾燥工程と、光輝性画像層12に、接着性を有する化合物を含む材料を付与し、接着層13を形成する接着層形成工程と、を有している。
【0056】
以下、各工程について詳細に説明する。
まず、図3(a)に示すように、転写シート11を用意する(転写シート準備工程)。
転写シート11としては、上述したようなものを用意する。
次に、図3(b)に示すように、転写シート11に、上述したようなインクジェット装置を用いて、上述したような光輝性インクを付与し、光輝性画像層12を形成する(光輝性画像層形成工程)。
【0057】
次に、形成した光輝性画像層12を乾燥する(乾燥工程)。
乾燥工程では、形成直後の光輝性画像層12中に含まれる水の少なくとも一部を除去する。
次に、図3(c)に示すように、光輝性画像層12上に、接着性を有する化合物を含む材料を付与し、接着層13を形成する(接着層形成工程)。これにより、転写媒体100(本発明の転写媒体)を得ることができる。なお、乾燥工程は設けることが好ましいが、必ずしも設ける必要は無い。
【0058】
接着層13は、光輝性画像層12との関係が上述したようなものとなるように、光輝性画像層12を覆うように形成される。これにより、光輝性および耐擦性に優れた画像を形成することが可能な転写媒体を得ることができる。
接着性を有する化合物を含む材料を付与する方法としては、特に限定されず、インクジェット法、ディップ法(刷毛、スキージ等による塗布を含む)、バーコート法、孔版印刷法(スクリーン印刷法)、凸版印刷法および凹版印刷法などが挙げられる。これらの方法のうち、インクジェット法は、版を準備する等の工程が不要で、しかも光輝性画像層12上に選択的に付与することができるため、接着性を有する化合物を含む材料の無駄を抑えることができる点でより好ましい。また、上述したような大きさの接着層13を容易に形成することができる。
なお、接着性を有する化合物を含む材料を付与した後、必要に応じて、接着層13を乾燥する乾燥工程を設けてもよい。
【0059】
《画像形成方法》
次に、上述したような転写媒体100を用いた画像形成方法について説明する。
図4は、本発明の画像形成方法の一例を示す模式図である。
まず、図4(a)に示すように、記録媒体15を用意し、当該記録媒体15と、転写媒体100の接着層13とを対向するように配置し、光輝性画像層12と記録媒体15とを接着層13を介して接着する(接着工程)。
【0060】
記録媒体15としては、特に限定されず、例えば、各種の紙、布、フィルム、シートなどが挙げられる。より具体的には、日本工業規格JIS−P0001に記載されている紙類、JIS−L0206に記載されている織物類、JIS−L0222に記載されている不織布類、および、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、木材、金属、セラミックス、ガラスなどの材質のフィルム類、シート類が挙げられる。また記録媒体15としては、コート紙やアート紙等の塗工紙であってもよい。
なお、光輝性画像層12と記録媒体15との接着は、加熱により行われる。これにより、光輝性画像層12(接着層13)と記録媒体15との密着性(接着性)をより高いものとすることができる。
【0061】
次に、図4(b)に示すように、転写シート11と光輝性画像層12とを剥離して、光輝性画像層12を記録媒体15へ転写する(転写工程)。これにより、光輝性画像層12と、接着層13と、記録媒体15とを備えた記録物200(本発明の記録物)を得ることができる。
以上のような画像形成方法によれば、光輝性および耐擦性に優れた画像を備えた記録物を容易に形成することができる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]インク
(1)光輝性インク
10N−NaOH水溶液を3mL添加してアルカリ性にした水50mLに、クエン酸3ナトリウム2水和物17g、タンニン酸0.36gを溶解した。得られた溶液に対して3.87mol/L硝酸銀水溶液3mLを添加し、2時間攪拌を行い銀コロイド液を得た。
【0063】
得られた銀コロイド液に対し、導電率が30μS/cm以下になるまで透析することで脱塩を行った。透析後、3000rpm、10分の条件で遠心分離を行うことで、粗大金属コロイド粒子を除去した。なお、平均粒子径は10nmであった。なお、本実施例において、銀粒子の平均粒子径は「マイクロトラックUPA」(日機装株式会社製)を用い、測定条件は、屈折率を0.2−3.9i、溶媒(水)の屈折率を1.333、測定粒子形状を球形、とした。
【0064】
上記によって製造された銀コロイド液:10質量部に、非イオン性界面活性剤(日信化学工業株式会社製オルフィン(R)E1010):1質量部と、プロピレングリコール:10質量部と、1,2−ヘキサンジオール:5質量部と、2−ピロリドン:2質量部と、アクリルエマルジョン(日本合成化学工業社製、商品名「モビニール745」):1質量部と、イオン交換水:71質量部とを添加し、光輝性インクを得た。
(2)カラーインク
カラーインクとして、イエローインク(ICY37、セイコーエプソン社製)を用意した。
【0065】
[2]接着性を有する化合物を含む材料(接着層形成用インク)の調製
モビニール727(アクリル系接着剤、日本合成化学工業社製):10質量部と、非イオン性界面活性剤(日信化学工業株式会社製オルフィン(R)E1010):1質量部と、プロピレングリコール:11質量部と、1,2−ヘキサンジオール:5質量部と、2−ピロリドン:2質量部、イオン交換水:71質量部とを混合し、接着層形成用インクを得た。
【0066】
[3]転写媒体の製造
(実施例1)
ロール状の幅600mm、厚さ12μmの二軸延伸PETフィルム上に低密度重合型ポリエチレンであるワックス(商品名:ハイワックス110P、三井化学社製)を20nm厚に塗布して離型層とし、さらに、メラミン樹脂(商品名:アミラック1000、関西ペイント社製)から作製した熱硬化性のメラミン樹脂層を10nm厚に塗布後130℃で5分加熱硬化させて保護層とし、転写シートを作製した。
【0067】
次に、転写シート上に、PX−G930(セイコーエプソン社製)により、上記光輝性インクを50%dutyで付与し、光輝性画像層を形成した。
その後、形成した光輝性画像層を乾燥した。
次に、光輝性画像層上に、PX−G930(セイコーエプソン社製)により、接着層形成用インクを50%dutyで付与し、乾燥させ、接着層を形成した。接着層の平面視の形状は、光輝性画像層の平面視の形状と相似する形状に形成した。また、接着層は、接着層の平面視の面積が、光輝性画像層の平面視の面積よりも大きく、接着層が光輝性画像層の縁部を覆うように形成した。なお、光輝性画像層の縁部から、接着層の縁部への最短距離は、1mm以上5mm以下の範囲となるように接着層形成用インクを付与した。
これにより、転写媒体を得た。
【0068】
(実施例2)
まず、上記実施例1と同様の転写シートを用意した。
得られた転写シート上に、PX−G930(セイコーエプソン社製)により、イエローインクを50%dutyで付与し、カラー画像層を形成した後、当該カラー画像層の上に光輝性インクを50%dutyで付与して光輝性画像層を形成した。なお、光輝性画像層とカラー画像層の平面視の形状が実質的に同一であり、光輝性画像層全体を被覆するようにそれぞれのインクを付与した。
その後、形成した各画像層を乾燥した。
次に、画像層上に、PX−G930(セイコーエプソン社製)により、接着層形成用インクを50%dutyで付与し、乾燥させ、接着層を形成した。接着層は、その平面視の形状が上記実施例1と同様となるように形成した。
これにより、転写媒体を得た。
【0069】
(比較例1)
接着層を、その平面視の形状が光輝性画像層の平面視の形状と同一となるように形成した以外は、前記実施例1と同様にして転写媒体を製造した。
(比較例2)
接着層を、その平面視の形状が光輝性画像層の平面視の形状と同一となるように形成した以外は、前記実施例2と同様にして転写媒体を製造した。
なお、本明細書において、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実印刷ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(式中、「実印刷ドット数」は単位面積当たりの実印刷ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。)
各実施例および各比較例における使用インクおよび接着層の大きさを表1に示した。
【0070】
(参考例)
上記(1)で作成した銀コロイド液:10質量部に、非イオン性界面活性剤(日信化学工業株式会社製オルフィン(R)E1010):1質量部と、プロピレングリコール:10質量部と、1,2−ヘキサンジオール:5質量部と、2−ピロリドン:2質量部と、イオン交換水:残部とを添加し、光輝性インクを得た。なお、各参考例の光輝性インクには表2に記載の樹脂を表2の添加量で添加した。表2記載の樹脂1とは、アクリルエマルジョン(日本合成化学工業社製、商品名「モビニール745」)であり、樹脂2とは、ウレタン系エマルジョン(第一工業製薬社製、商品名「スーパーフレックス500M」)である。
【0071】
上記実施例1と同様の転写シートを用意し、得られた転写シート上に、PX−G930(セイコーエプソン社製)により、イエローインクを50%dutyで付与し、カラー画像層を形成した後、当該カラー画像層の上に光輝性インクを50%dutyで付与して光輝性画像層を形成した。その後、形成した各画像層を乾燥した。
次に、画像層上に、PX−G930(セイコーエプソン社製)により、接着層形成用インクを50%dutyで付与し、乾燥させ、接着層を形成した。接着層は、その平面視の形状が上記実施例1と同様となるように形成した。
なお、表2中の「◎、○、△、×」とは、下記[5]の評価に沿って測定され、[5]の基準に基づいて評価された60°光沢度の評価結果である。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
[4]画像転写性の評価
紙メディア(スーパーファイン用紙:セイコーエプソン社製)の記録媒体を用意し、各実施例および各比較例の転写媒体を用いて、各記録媒体に画像の転写処理を行い、記録物を得、下記の基準に従い、画像転写性を評価した。なお、転写処理は、JOL-DIGITAL-4R230(日本オフィスラミネーター株式会社製)を用い、熱圧着ローラー温度を130℃、圧力を30kg/cm2、速度を20cm/秒と設定した。
◎ :転写面は平滑で剥離ムラが見られない
○ :5%以下の剥離ムラが見られる。
△ :5%超20%以下の剥離ムラが見られる。
× :20%超の剥離ムラが見られる。
【0075】
[5]60℃光沢度の評価
上記[4]で得られた前記各実施例および各比較例に係る記録物について、光沢度計(MINOLTA MULTI GLOSS 268)を用い、煽り角度60°での光沢度を測定し、下記基準に従い、評価した。
◎ :60°光沢値が300以上。
○ :60°光沢値が250以上300未満。
△ :60°光沢値が200以上250未満。
× :60°光沢値が200未満。
【0076】
[6]耐擦性の評価1
実施例1および比較例1の転写媒体、および、上記[4]で得られた実施例1および比較例1に係る記録物をサンプルとして、以下のようにして耐擦性を評価した。
まず、サンプルを学振型摩耗堅牢度試験機AB−301(商品名、テスター産業株式会社製)にセットし、接触部に白綿布(JIS L 0803準拠)を取り付けた摩擦子(荷重;300g)にて50回擦ることで、耐摩耗性評価を実施した。耐擦性試験前後のサンプルについて光沢度(煽り角度60°)を測定し、耐擦性試験前後での光沢度の低下率を求め、下記基準に従い評価した。
○ :光沢度の低下率が10%未満
△ :光沢度の低下率が10%以上20%未満
× :光沢度の低下率が20%以上
【0077】
[7]耐擦性の評価2
実施例2および比較例2の転写媒体、および、上記[4]で得られた実施例2および比較例2に係る記録物をサンプルとして、以下のようにして耐擦性を評価した。
まず、サンプルを学振型摩耗堅牢度試験機AB−301(商品名、テスター産業株式会社製)にセットし、接触部に白綿布(JIS L 0803準拠)を取り付けた摩擦子(荷重;300g)にて50回擦ることで、耐摩耗性評価を実施した。以下の判断基準で評価した。
【0078】
○ :画像印刷メディアに摩擦による画像の乱れがなく、また白綿布にも記録画像から転写された汚れもない。
△ :画像印刷メディアの非印刷部分に若干の地汚れが視認され、白綿布にも記録画像から転写された汚れが視認できる。
× :画像印刷メディアの非印刷部分に明らかに地汚れ視認され、白綿布も記録画像との接触により汚れている。
【0079】
[8]耐水性の評価
各実施例および各比較例の転写媒体、および、上記[4]で得られた各実施例および各比較例に係る記録物をサンプルとして、以下のようにして耐水性を評価した。
まず、サンプルの画像層の縁部に1mlのイオン交換水を滴下し、20分後の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○ :変化が無い。
△ :印字部分から僅かに色材が流れ出している。
これらの結果を表1に合わせて示した。
表1から明らかなように、各実施例の転写媒体は、光輝性に優れるとともに、耐擦性に優れていた。また、画像転写性、耐水性にも優れていた。これに対して、各比較例の転写媒体は、満足行く結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0080】
1…インクジェット式プリンター(プリンター) 2…フレーム 3…プラテン 4…媒体送りモーター 5…ガイド部材 6…キャリッジ 7…タイミングベルト 8…キャリッジモーター 9…ヘッド 10…インクカートリッジ P…媒体 11…転写シート 12…光輝性画像層 13…接着層 15…記録媒体 100…転写媒体 200…記録物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写シートと、
前記転写シート上に、光輝性顔料が分散した光輝性インクをインクジェット方式により付与することにより形成された光輝性画像層と、
前記光輝性画像層側の前記転写シートとは反対の面側に設けられ、接着性を有する化合物を含む材料で形成された接着層とを有し、
、かつ、前記光輝性画像層の縁部から、前記接着層の縁部への最短距離が、1mm以上5mm以下であることを特徴とする転写媒体。
【請求項2】
前記光輝性顔料の平均粒径は、1nm以上100nm以下である請求項1に記載の転写媒体。
【請求項3】
前記光輝性インク中における前記樹脂成分の含有量は、0.5質量%以上2.6質量%以下である請求項1または2に記載の転写媒体。
【請求項4】
前記接着層の平面視した際の面積は、前記光輝性画像層の平面視した際の面積よりも大きい、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の転写媒体。
【請求項5】
前記転写シートと前記光輝性画像層との間に、色材が分散したカラーインクをインクジェット方式により付与することにより形成されたカラー画像層を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の転写媒体。
【請求項6】
インクジェット方式により、転写シート上に光輝性顔料が分散した光輝性インクを付与し、光輝性画像層を形成する光輝性画像層形成工程と、
前記転写シートの前記光輝性画像層を形成した面側に、接着性を有する化合物を含む材料を付与し、接着層を形成する接着層形成工程と、を有し、
前記光輝性画像層の縁部から、前記接着層の縁部への最短距離が、1mm以上5mm以下であることを特徴とする転写媒体の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の転写媒体の前記接着層と記録媒体とを対向するように配置し、前記光輝性画像層と前記記録媒体とを前記接着層を介して接着する接着工程と、
前記転写シートと前記光輝性画像層とを剥離して、前記光輝性画像層を前記記録媒体へ転写する転写工程と、を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成方法によって形成され、
前記記録媒体と、前記接着層と、前記光輝性画像層とを有することを特徴とする記録物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−200873(P2012−200873A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64407(P2011−64407)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】