説明

転写箔送り装置

【課題】金型内への転写箔の引き込まれ代を一定にして加飾成形品の成形不良を解消することができる転写箔送り装置を提供する。
【解決手段】ロール状に巻かれた転写箔を箔供給ロールから送り出し、金型のパーティング面を通過させた後、箔巻取ロールに巻き取るように構成された転写箔送り装置において、上記箔供給ロールから上記転写箔を増し送りするか、または上記箔巻取ロールに巻き取った上記転写箔を所定量巻き解くことによって上記金型のキャビティ内に引き込まれる転写箔の引き込まれ代を一定量供給する箔送り調整手段を備えてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形と同時に成形品表面に絵柄を付与するいわゆる成形同時絵付方法のための装置に関し、より詳しくは、絵柄が印刷された転写箔を成形用金型内に供給する転写箔送り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
成形同時絵付方法は、成形用金型内に成形用樹脂を充填する前に、予め、成形用金型のキャビティに転写箔の絵柄を位置決めして型締めし、次に、溶融した成形用樹脂をそのキャビティに充填することにより、成形品の成形と同時に成形品表面に絵柄を転写する方法である。
【0003】
上記絵柄を転写するための転写箔を成形用金型内に供給するための装置として、転写箔送り装置が成形機に装備されている。
【0004】
図7は、従来の縦型転写箔送り装置の構成を示したものである。
【0005】
同図において、成形用金型50の上方に支持フレーム(図示しない)が設けられており、この支持フレームの回転軸に転写箔ロール51が支持されている。
【0006】
この転写箔ロール51から巻き解かれた転写箔52は、押えローラ53、クランプ装置54を通過し、固定金型50aと可動金型50bの間に供給され、射出成形後に転写箔巻取ロール55によって巻き取られるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
なお、図7に示した構成では、射出成形時に転写箔52にかかる張力を制御するとともに、金型内に引き込まれる転写箔52の引き込まれ代を一定にするため、成形用金型50の上方および下方にはクランプ装置54および56が備えられている。なお、図中、57はガイドローラであり、58はポテンショメータである。
【特許文献1】特開平4−185410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記クランプ装置54,56は、経時的にクランプ部が摩耗するため、運転時間によって押え付け力が変化し、最終的には転写箔52の張力を正確に制御することができなくなるという問題がある。その結果、射出成形時において金型内に引き込まれる転写箔52の引き込まれ代が変化する。
【0009】
例えば、クランプ装置が新しい場合には、押え付け力が強すぎて引き込まれ代が不足することによるヤケが発生することがあり、また、この逆に、クランプ部が摩耗して押え付け力が弱くなると、転写箔が金型内に過剰に引き込まれ、加飾成形品の表面にしわを発生することがある。
【0010】
なお、上記ヤケとは、深溝部分に至る成形品折曲部分で、色が白く濁ったり、或いはひび割れとなって現れる現象を意味する。
【0011】
本発明は以上のような従来の転写箔送り装置における課題を考慮してなされたものであり、成形用金型内への転写箔の引き込まれ代を一定にして加飾成形品の成形不良を解消することができる転写箔送り装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る転写箔送り装置は、ロール状に巻かれた転写箔を箔供給ロールから送り出し、金型のパーティング面を通過させた後、箔巻取ロールに巻き取るように構成された転写箔送り装置において、
上記箔供給ロールから上記転写箔を増し送りするか、または上記箔巻取ロールに巻き取った上記転写箔を所定量巻き解くことによって、上記金型内に引き込まれる転写箔の引き込まれ代を一定量供給する箔送り調整手段を備えてなることを特徴とする転写箔送り装置である。
【0013】
(a)本発明に係る転写箔送り装置の第一の形態は、
上記箔供給ロールから転写箔を送り出すための供給側モータを有し、
上記箔送り調整手段は、箔送りする毎に箔供給ロール径を算出し、算出されたロール径に応じて上記引き込まれ代が一定量供給されるように、上記供給側モータの回転数を制御するように構成されている。
【0014】
また、上記箔巻取ロールを回転させる巻取側モータを有し、この巻取側モータのトルク制御によって上記転写箔に張力が付与されている。
【0015】
また、上記箔送り調整手段は、
箔送りピッチPおよび上記供給側モータから検出される回転角θを既知数とし、
下記(1)式より、上記箔供給ロール径Rを未知数として算出するように構成されている。
P=Rθ ……(1)
【0016】
(b)本発明に係る転写箔送り装置の第二の形態は、
上記転写箔を巻き取るための巻取側モータを有し、
上記箔送り調整手段は、上記転写箔が上記金型に送り込まれた後、上記巻取側モータを、送り方向と逆方向に若干回転させることにより、一定量の引き込まれ代を上記金型に供給するように構成されている。
【0017】
また、上記第二の形態において、上記箔供給ロールをトルク制御するための箔供給側モータと、上記箔供給ロールから送り出された上記転写箔を上記金型近傍で把持するクランプ装置とを有する場合、このクランプにおける転写箔接触面を、上記転写箔引き込み時において上記転写箔の滑りを許容する低摩擦係数の部材から構成することができる。
【0018】
(c)本発明に係る転写箔送り装置の第三の形態は、
上記第二の形態において、上記箔供給ロールをトルク制御するための箔供給側モータと、上記箔供給ロールから送り出された上記転写箔を上記金型近傍で把持するクランプ装置と、金型フィルムクランプ装置とを有し、上記箔送り調整手段が、上記引き込まれ代を一定量供給するのに加え、上記転写箔引き込み時に、上記クランプ装置による転写箔の固定を解除するように構成されていることを要旨とする。
【0019】
また、上記各発明においては、上記金型のキャビティの配置および形状の少なくともいずれか一方によって上記引き込まれ代を予め決定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の転写箔送り装置によれば、成形用金型内への転写箔の引き込まれ代を一定にすることができるため、加飾成形品表面に生じていたヤケやしわ等の成形不良が解消されるという長所を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0022】
まず、本発明の転写箔送り装置に使用する転写箔について説明する。
【0023】
転写箔は、基本的に基体シート上に剥離層、絵柄層、接着層が積層されたものであり、成形樹脂に接着層を介して絵柄層を接着した後、基体シートは、型開き時、または型開き後に剥離層との境界面から剥離除去するものである。
【0024】
上記基体シートの材質としては、耐熱性に優れたPET(ポリエチレンテレフタレート)を使用することが好ましいが、これに限らず、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等から選択される単層フィルム、または上記の中から選択された二種以上の樹脂による積層フィルムまたは共重合フィルムを使用することができる。
【0025】
上記基体シートの厚さは5〜500μmのものを使用することができるが、ハンドリング性の良さを考慮すると25〜75μmのものを使用することが好ましく、成形安定性の良さを考慮すると38〜50μmのものを使用することが好ましい。
【0026】
上記転写箔の剥離層は、図柄を転写した後、基体シートが剥離されることにより最も外側に位置する層であり、図柄の保護層として機能するようになっている。この剥離層の材質としては、アクリル系樹脂、硝化綿系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂等が挙げられる。
【0027】
上記剥離層に硬度が要求される場合には、紫外線硬化性樹脂等の電離放射線硬化樹脂を使用することができる。なお、電離放射線硬化樹脂は、単体で使用してもよいし、他の樹脂と混合して使用してもよい。なお、剥離層の膜厚は0.5〜50μmが好ましい。
【0028】
上記絵柄層は、文字、記号、模様、塗りパターン等を形成するものであり、樹脂バインダーと顔料(または染料)とを混合し、また、樹脂バインダーと隠蔽性のある金属顔料や無機顔料等を混合し、公知のグラビア印刷によって印刷することができる。
【0029】
なお、剥離層上に絵柄層を形成する方法としては上記のグラビア印刷に限らず、例えば、オフセット印刷を適用することもできる。
【0030】
また、絵柄層は、上記したような樹脂バインダーと顔料との組み合わせに限らず、真空蒸着やめっき等の方法によって、例えば、アルミニウム、クロム、銅、ニッケル、インジウム、錫、酸化珪素等の金属膜層で構成することもできる。なお、絵柄層の膜厚は十分な意匠性を得るために0.5μm〜50μmの範囲で設定することが好ましく、上記した金属膜層で構成する場合には、50Å〜1200Åが好ましい。
【0031】
上記接着層は、絵柄層を成形品表面に接着するためにあり、成形樹脂の素材と相性のよい感熱性あるいは感圧性の樹脂が使用される。
【0032】
例えば、アクリル系樹脂、硝化綿系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ゴム系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂等を使用することもできる。なお、この接着層の厚みは0.5〜50μmが好ましい。
【0033】
次に、本発明の転写箔送り装置が適用される成形装置の構成について説明する。
【0034】
(a)転写箔送り装置の第一の形態
図1(a)は成形装置の側面図、図1(b)はその正面図を示している。
【0035】
両図において、成形装置1は、転写箔送り装置としての箔供給装置2および箔巻取装置3と、成形機4とから主として構成されている。
【0036】
箔供給装置2は、転写箔5を間欠的に成形機4の成形型4aに供給するように構成されており、長尺帯状の転写箔5を箔供給ロール2aに巻き取っており、ガイドローラ2b、2cを介し、その転写箔5をその先端側から巻き解くようになっている。
【0037】
転写箔5は、箔供給ロール2aから一定長さ分だけ巻き解かれて矢印C方向に降下し、箔巻取装置3の箔巻取ロール3aに巻き取られるが、送り出された転写箔5には、箔巻取装置3の下側モータ13のトルク制御によって一定の張力が作用するようになっている。
【0038】
転写箔5上に断続的に形成されている絵柄は、成形機4のキャビティ4bに導かれるようになっている。
【0039】
なお、図中、4cは、キャビティ4bと対向する状態で配置される可動金型側のコアを示している。また、上記箔巻取装置3における3aは箔巻取ロール、3b〜3dはそれぞれガイドローラを示している。
【0040】
図2は上記転写箔5の一部を正面から示したものであり、複数の絵柄5aと複数の送り方向マーク5bが一定間隔で長手方向に形成され、さらに幅方向マーク5cが転写箔5の長手方向に沿って線状に形成されている。
【0041】
上記各送り方向マーク5bは、転写箔5の移動経路上に配設されている第1センサ6(図1(b)参照)によって検知され、上記幅方向マーク5cは第2センサ7および第3センサ8によって検知されるようになっている。
【0042】
詳しくは、転写箔5が矢印C方向に高速で送られ、第1センサ6によって検知されると、送り方向マーク5bの中心付近で低速に切り替わり、転写箔5を所定距離分移動(降下)させた後、停止させるようになっている。
【0043】
また、幅方向マーク5cは第2センサ7および第3センサ8によって検知され、転写箔5における幅方向のずれを調整するようになっている。なお、幅方向のずれは上側フレーム9および下側フレーム10のいずれか一方、または両方を、矢印D方向にスライドさせることによって行なわれる(図1(b)参照)。すなわち、縦方向に二つのセンサ7,8を配置することによって転写箔5の傾きを調整することができるようになっている。
【0044】
次に、上記転写箔送り装置の動作について図3を参照しながら説明する。
【0045】
図3(a)は転写箔送り装置を模式図で示したものであり、図1(a)と同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。また、図3(b)は転写箔に印刷されているマークを示した説明図である。なお、説明を簡単にするため、成形型4aには一つのキャビティ4bが形成されているものとする。
【0046】
図3(b)において、転写箔5の送りピッチP[mm]を実測し、転写箔送り装置の制御部(箔送り調整手段)のタッチパネル(図示しない)に入力する。
【0047】
箔供給ロール2aの回転軸に接続されている上側サーボモータ(供給側モータ)12は、デジタル・エンコーダを備えており、このデジタル・エンコーダから、単位時間当たりに出力されるパルスをカウントすることで回転数を検出することができ、それにより、上記制御部は箔供給ロール2aが回転した回転角θを計算によって求めることができる。
【0048】
なお、上側サーボモータ12の回転数を検出するにあたっては、上記デジタル・エンコーダに限らず、磁気式エンコーダ、光学式エンコーダ等を使用することもできる。
【0049】
また、成形装置1には、成形品に応じて箔送りのための各種パラメータ、例えば送り込み長さ、送り込み速度等を設定し、設定されたパラメータに従って箔送りを実行する制御部が本来、備わっているため、この制御部に、箔送り調整手段として、箔送りする毎に箔供給ロール2aの径を算出し、算出されたロール径に応じ、成形機4に供給する転写箔5の送り量(従来の金型送り量+射出成形時における引き込まれ代分の送り量)を一定にする機能を追加することによって本発明の箔送り制御を実行させることができる。
【0050】
なお、成形型4aのキャビティの形状、より詳しくは、キャビティに設けられている深溝形状によって必要とされる引き込まれ代S(ヤケが発生しない箔引き込まれ代)は、予め、試験を行なうことにより決定しておく。
【0051】
成形における各箔送り時には、まず、送り方向マーク5bを検出することにより、転写箔5を成形型4aに高速で供給する。
【0052】
上記制御部は、実測された箔送りピッチPおよびデジタル・エンコーダによって求められる回転角θを既知数とし、
下記(1)式より、未知数Rを求める。
P=Rθ ……(1)
ただし、Rは箔供給ロール2aの搭載半径
【0053】
それにより、箔送り毎に減少する箔供給ロール2aの搭載半径(箔供給ロール径)が求められる。
【0054】
次いで、上記引き込まれ代Sが得られるように、上側サーボモータ12の回転角を制御してピッチ送りを行ない、箔供給ロール2aを巻き解き方向(転写箔5の張力を緩める方向)に若干回転させる。
【0055】
この場合、引き込まれ代Sと上記求められた搭載半径Rを既知数とし、
下記(2)式より、回転角θを求める。
S=Rθ ……(2)
【0056】
求められた回転角θ分、上側サーボモータ12を微小回転させる。
【0057】
ただし、上側サーボモータ12は、搭載半径Rが最大でも、すなわち、転写箔5を最大に巻回している状態でも、箔供給ロール2aの径に影響されず転写箔5の送りを制御できる能力のものが選択されている。それにより、本実施形態の成形装置1では、転写箔5を完全に固定してしまうクランプ装置は備えていない。
【0058】
このように、箔送り毎に変化する搭載半径Rに基づいて上側サーボモータ12を制御することにより、箔供給ロール2aから転写箔5を増し送りさせることにより、キャビティ4bへの引き込まれ代を常に一定にすることができ、成形品折曲部分Aに発生していたヤケを解消することができる。
【0059】
なお、下側モータ(巻取側モータ)13は箔巻取ロール3aをトルク制御しているため、転写箔5が増し送りされた場合にはその転写箔5に対し所定の張力を与えることができる。
【0060】
このように、本発明の転写箔送り装置では、上述したように、クランプ装置を使用することなく、箔送り毎に搭載半径Rを計算し、計算された搭載半径Rに応じて、成形機4に供給する転写箔5の送り量(従来の金型送り量+射出成形時における引き込まれ代分の送り量)を一定にしているため、加飾成形品の表面に生じるヤケを解消して成形不良を確実に防止することができる。
【0061】
(b)転写箔送り装置の第二の形態
図4は別の転写箔送り装置を搭載した成形装置20の構成を示したものである。
【0062】
同図に示す転写箔送り装置は、長時間使用することによって箔クランプが摩耗したり、箔供給ロールを回転させる駆動モータのトルクが弱いことに起因する加飾成形品のしわを解消することができるように構成されている。なお、図4において、図3(a)と同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0063】
箔供給側の構成は、箔供給ロール2aと、その箔供給ロール2aを回転させるパウダーブレーキと、ガイドローラ2bと、転写箔5を把持するためのクランプ装置22とから主として構成されている。
【0064】
上記クランプ22装置は、転写箔5を挟んだ状態でクランプ部22aとローラ22bが対向配置されており、クランプ部22aをローラ22bの周面に押し付けることにより、転写箔5に制動を与えるようになっている。ただし、クランプ部22aにおける転写箔接触面には、低摩擦係数の部材、具体的には、テフロン(登録商標)テープ22cが取り付けられている。
【0065】
したがって、本実施形態のクランプ装置22は、転写箔5を固定する際には、従来の箔クランプのように転写箔5を完全に固定してしまうのではなく、押え付ける程度で転写箔5を固定するようになっている。
【0066】
このように、転写箔5を押え付けることで転写箔5の位置を安定させ、押え付け力よりも大きな引張りが転写箔5に加わった場合には、転写箔5がテフロンテープ22c上を摺動するようになっている。
【0067】
また、上記箔供給ロール2aにはポテンショメータ21が設けられており、一定の周期で箔供給ロール2aの回転数を検出するようになっている。そして検出された回転数に基づき転写箔5の張力が一定となるように、箔供給ロール2aを回転させるパウダーブレーキがトルク制御されるようになっている。
【0068】
上記クランプ装置22によれば、従来のクランプ装置と比べると、クランプ部における摩耗を抑制することができるため、箔供給ロール2a回転用としてトルクの大きいモータを使用することによって滑りを防止する必要がない。また、ポテンショメータ21にて箔供給ロール2aの搭載半径を算出し、算出された搭載半径に基づいてパウダーブレーキのトルク制御を行なえば、転写箔5を所定の張力にコントロールすることができる。
【0069】
一方、箔巻取側の構成は、箔巻取ロール3aと、下側駆動モータ24と、クランプ装置23が備えられており、下側駆動モータ24の駆動によって一定の回転数分について転写箔5を金型内に送るとともに、上記したクランプ装置22および23の押え付け動作によって転写箔5を一定量金型に保持しておくことができるようになっている。なお、箔巻取ロール3aは下側駆動モータ24と連動するようになっている。
【0070】
上記クランプ装置23は、クランプ装置22と同じ構成からなり、クランプ部23aとテフロンテープ23cと、ローラ23bとから構成されている。
【0071】
次に、上記構成を有する成形装置20の動作について説明する。
【0072】
なお、キャビティ4b形状に追従させるために必要とされる転写箔5の引き込まれ代は、予め試験によって求められているものとする。
【0073】
駆動モータ24を所定の回転数で駆動させると、箔巻取ロール3aが回転し、転写箔5が矢印C方向に送られる。
【0074】
成形型4aへの転写箔5の送りが終了すると、クランプ装置22および23によって転写箔5を保持する。
【0075】
次いで、下側駆動モータ24は、箔送り調整手段としての制御部からの指令によって引き込まれ代を確保するべく若干、逆回転し、転写箔5を矢印E方向に送る。
【0076】
この状態で金型側から吸引が行なわれると、クランプ装置22および23による押え付け力よりも転写箔5を吸引する力の方が強いため、クランプ装置22のテフロンテープ22cおよびクランプ装置23のテフロンテープ23c上で転写箔5の滑りが生じ、転写箔5がキャビティ4b内に引き込まれる。
【0077】
このように、箔巻取側では駆動軸のローラー径が一定である下側駆動モータ24を逆転させることによって、射出成形時に必要となる引き込まれ代分の転写箔5を金型に送り出し、箔供給側ではパウダーブレーキによって常に一定のトルクを転写箔5に付与しているため、上記別の転写箔送り装置を備えた成形装置20においても、キャビティ4bへの転写箔引き込まれ代を常に一定にすることができ、クランプ部の摩耗によって加飾成形品表面に発生していたしわを解消することができる。
【0078】
なお、上記実施形態ではクランプ装置22および23にテフロンテープを取り付けたが、これに限らず、低摩擦係数の部材であれば、例えばポリイミド樹脂、PTFE樹脂からなるテープを取り付けたり、またはそれらの樹脂からなる層を形成することもできる。
【0079】
図5は上記クランプ装置22,23の変形例を示したものである。
【0080】
なお、以下の図面において図4と同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0081】
図5に示すクランプ装置25,26は同じ構成のため、クランプ装置25を代表してその構成を説明する、
クランプ装置25は、押えローラー25aと支持ローラー25bとからなり、転写箔5を送る際には押えローラー25a自体が回転するように構成されているため、滑りによる摩耗が減少し、より安定して転写箔5を送ることができるようになっている。
【0082】
この場合も、従来のクランプ装置と比べると、クランプ部における摩耗を抑制することができるため、箔供給ロール2a回転用としてトルクの大きい駆動モータを使用して滑りを防止する必要がない。
【0083】
また、ポテンショメータ21にて箔供給ロール2aの搭載半径を算出し、算出された搭載半径に基づいてパウダーブレーキのトルク制御を行なっていれば、下側駆動モータ24を逆回転させて転写箔5を緩ませても、転写箔5が再び所定の張力となるようにコントロールすることができる。
【0084】
(c)転写箔送り装置の第三の形態
図6は、さらに別の転写箔送り装置を搭載した成形装置20の構成を示したものである。
【0085】
同図において、箔供給側の構成は、図4と同様に、箔供給ロール2aと、その箔供給ロール2aを回転させるパウダーブレーキと、ガイドローラ2bと、転写箔5を把持するためのクランプ装置22とから主として構成されている。
【0086】
上記クランプ22装置は、転写箔5を挟んだ状態でクランプ部22dとローラ22bが対向配置されており、クランプ部22dをローラ22bの周面に押し付け、または周面から離脱させることにより、転写箔5を固定、または固定解除するようになっている。
【0087】
また、箔供給ロール2aを回転させるパウダーブレーキはトルク制御されており、転写箔5の張力は一定となっている。
【0088】
一方、箔巻取側の構成は、箔巻取ロール3aと、下側駆動モータ24と、クランプ装置23が備えられており、下側駆動モータ24の駆動によって一定の回転数分について転写箔5を金型内に送るとともに、上記したクランプ装置22およびクランプ装置23のクランプ部23dによる押え付け動作によって転写箔5を一定量金型に保持しておくことができるようになっている。なお、箔巻取ロール3aは下側駆動モータ24と連動するようになっている。また、上記クランプ部22dおよび23dの押圧面にはテフロンテープを貼着してもよい。
【0089】
次に、上記構成を有する成形装置20の動作について説明する。
【0090】
下側駆動モータ24を所定の回転数で駆動させ、箔巻取ロール3aを回転させることにより、転写箔5を矢印C方向に送る。
【0091】
成形型4aへの転写箔5の送りが終了すると、クランプ装置22および23によって転写箔5を保持する。
【0092】
一方、下側駆動モータ24は、箔送り調整手段としての制御部からの指令によって引き込まれ代を確保するべく若干、逆回転し、転写箔5を矢印E方向に送る。
【0093】
転写箔5を成形型4aのキャビティ4bに沿わせるにあたり、金型フィルムクランプ装置(図示しない)で転写箔5を成形型4aに押え付ける途中で、転写箔5を固定していたクランプ装置22および23の固定を解除する。この固定解除は、上記箔送り調整手段によって行われる。
【0094】
それにより、過大な引張り力が作用することなく、転写箔5が成形型4aのキャビティ4bに引き込まれる。
【0095】
しかも、転写箔5の引き込み時においてはクランプ装置22および23が転写箔5から離れるため、クランプ装置22および23の制動力に経時的な変化が生じることは少ない。
【0096】
上記第三の形態の転写箔送り装置を備えた成形装置20においても、キャビティ4bへの転写箔引き込まれ代を常に一定にすることができ、且つ、クランプ装置22,23の摩耗によって発生していた加飾成形品表面のしわを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】(a)は本発明の転写箔送り装置を搭載した成形装置の側面図、(b)はその正面図である。
【図2】転写箔送り装置から供給される転写箔の要部正面図である。
【図3】(a)は本発明の箔送り動作を説明するための装置要部模式図、(b)は転写箔に印刷されているマークの説明図である。
【図4】本発明に係る転写箔送り装置の第二の形態を示す装置要部模式図である。
【図5】本発明の箔クランプの変形例を示す図4相当図である。
【図6】本発明に係る転写箔送り装置の第三の形態を示す装置要部模式図である。
【図7】従来の転写箔送り装置の構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0098】
1 成形装置
2 箔供給装置
2a 箔供給ロール
2b,2c ガイドローラ
3 箔巻取装置
3a 箔巻取ロール
3b〜3d ガイドローラ
4 成形機
4a 成形型
4b キャビティ
4c コア
5 転写箔
5a 絵柄
5b 送り方向マーク
5c 幅方向マーク
6 第1センサ
7 第2センサ
8 第3センサ
9 上側フレーム
10 下側フレーム
12 上側サーボモータ(供給側モータ)
13 下側モータ(巻取側モータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻かれた転写箔を箔供給ロールから送り出し、金型のパーティング面を通過させた後、箔巻取ロールに巻き取るように構成された転写箔送り装置において、
上記箔供給ロールから上記転写箔を増し送りするか、または上記箔巻取ロールに巻き取った上記転写箔を所定量巻き解くことにより、上記金型内に引き込まれる転写箔の引き込まれ代を一定量供給する箔送り調整手段を備えてなることを特徴とする転写箔送り装置。
【請求項2】
上記箔供給ロールから転写箔を送り出すための供給側モータを有し、
上記箔送り調整手段は、箔送りする毎に箔供給ロール径を算出し、算出されたロール径に応じて上記引き込まれ代が一定量供給されるように、上記供給側モータの回転数を制御するように構成されている請求項1記載の転写箔送り装置。
【請求項3】
上記箔巻取ロールを回転させる巻取側モータを有し、この巻取側モータのトルク制御によって上記転写箔に張力が付与されている請求項1また2記載の転写箔送り装置。
【請求項4】
上記箔送り調整手段は、
箔送りピッチPおよび上記供給側モータから検出される回転角θを既知数とし、
下記(1)式より、上記箔供給ロール径Rを未知数として算出する請求項2または3に記載の転写箔送り装置。
P=Rθ ……(1)
【請求項5】
上記転写箔を巻き取るための巻取側モータを有し、
上記箔送り調整手段は、上記転写箔が上記金型に送り込まれた後、上記巻取側モータを、送り方向と逆方向に若干回転させることにより、一定量の引き込まれ代を上記金型に供給するように構成されている請求項1記載の転写箔送り装置。
【請求項6】
上記箔供給ロールをトルク制御するための箔供給側モータと、
上記箔供給ロールから送り出された上記転写箔を上記金型近傍で把持するクランプ装置とを有し、このクランプ装置における転写箔接触面が、上記転写箔引き込み時において上記転写箔の滑りを許容する低摩擦係数の部材から構成されている請求項5記載の転写箔送り装置。
【請求項7】
上記箔供給ロールをトルク制御するための箔供給側モータと、
上記箔供給ロールから送り出された上記転写箔を上記金型近傍で把持するクランプ装置と、金型フィルムクランプ装置とを有し、
上記箔送り調整手段は、さらに、上記転写箔引き込み時に、上記クランプ装置による転写箔の固定を解除するように構成されている請求項5記載の転写箔送り装置。
【請求項8】
上記金型のキャビティの配置および形状の少なくともいずれか一方によって上記引き込まれ代が予め決定されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の転写箔送り装置。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−42594(P2010−42594A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208154(P2008−208154)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】