説明

転写装置及び画像形成装置

【課題】転写ローラを像担持体に対して接触させるための押込力を所定の範囲内に設定することによって、耐刷性が高く、電圧依存性を抑制することができ、良好な画像を得ることができるようにする。
【解決手段】像担持体上に形成された現像剤の像を転写ローラ12によって転写材26に電気的に転写させる転写装置であって、前記転写ローラ12は、前記像担持体に直接に、又は、転写材搬送ベルト24若しくは被覆層を介して間接に接触し、前記像担持体に対する前記転写ローラ12の押込力が28〔g/cm〕〜112〔g/cm〕に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置においては、感光体ドラム等の像担持体上に形成されたトナー像を印刷用紙等の記録媒体に転写させるために転写ローラが使用されている。しかし、転写ローラの表面の硬度が高い場合には、トナー像の転写が良好に行われず、転写むらが発生してしまうことがある。そこで、転写ローラの表面の硬度をある程度低下させるために、表面層を発泡材料で形成された転写ローラを使用する転写装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、表面層が発泡材料で形成された転写ローラの場合、表面に多数の発泡セルが露出しており、該発泡セルの部分は記録媒体等の被接触媒体に接触しない。そのため、発泡セルが大きいと、転写ローラの接触部から被接触媒体への放電が不均一になってしまい、安定した転写特性を得ることができない。しかし、前記転写装置の場合、表面平均発泡セル径が300〔μm〕以下である転写ローラにおいては、被接触体に対して接触部全体で均一な放電を発生させることが可能であるため、安定な転写持性を得ることが可能である。そのため、前記転写装置においては、表面平均発泡セル径が300〔μm〕以下を満足することは、転写ローラに要求される諸特性の中で重要な条件の1つとされている。
【特許文献1】特開平10−133496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の転写装置においては、表面の発泡セル径が200〔μm〕〜500〔μm〕である場合は、耐刷性が低く、印刷枚数が増加すると転写ローラの抵抗値が変化し、電圧依存性が大きくなる。そのため、転写電流制御が追従することができなくなり、画像不良を招いた。
【0005】
本発明は、前記従来の転写装置の問題点を解決して、転写ローラを像担持体に対して接触させるための押込力を所定の範囲内に設定することによって、耐刷性が高く、電圧依存性を抑制することができ、良好な画像を得ることができる転写装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために、本発明の転写装置においては、像担持体上に形成された現像剤の像を転写ローラによって転写材に電気的に転写させる転写装置であって、前記転写ローラは、前記像担持体に直接に、又は、転写材搬送ベルト若しくは被覆層を介して間接に接触し、前記像担持体に対する前記転写ローラの押込力が28〔g/cm〕〜112〔g/cm〕に設定されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、転写装置は、転写ローラを像担持体に対して接触させるための押込力を所定の範囲内に設定するようになっている。これにより、耐刷性が高く、電圧依存性を抑制することができ、良好な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
図2は本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の概略を示す図である。
【0010】
図において、10は画像形成装置であり、例えば、電子写真式プリンタ、ファクシミリ機、複写機、プリンタ、ファクシミリ機及び複写機の機能を併せ持つ複合機等であるが、いかなる種類の画像形成装置であってもよい。なお、本実施の形態においては、前記画像形成装置10がいわゆるタンデム方式のカラー電子写真式プリンタである場合について説明する。この場合、複数のローラに張設され、回転するベルト部材によって搬送される記録媒体上に画像を形成するようになっている。
【0011】
ここで、26は記録媒体としての転写材であり、例えば、印刷用紙、OHP(Over Head Projector)シート等である。そして、33は前記転写材26を収容して給紙するための給紙カセットであり、23は該給紙カセット33から送り出された転写材26を搬送するためのレジストローラであり、35B、35Y、35M及び35Cは、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色の現像剤の像としてのトナー画像を形成するための画像形成ユニットであって、イメージドラムユニットとしての感光体ドラムユニットである。なお、該感光体ドラムユニット35B、35Y、35M及び35Cを統合的に説明する場合には、感光体ドラムユニット35として説明する。
【0012】
そして、24はトナー像を前記転写材26上に転写し、該転写材26を搬送するための転写材搬送ベルトであり、31は前記転写材26に転写されたトナー像を転写材26に熱及び圧力によって定着するための定着器としての定着ユニットである。該定着ユニット31は、図示されない熱源を内部に備える定着ローラ31a、及び、図示されない付勢部材によって定着ローラ31aに押し付けられる加圧ローラ31bを有する。
【0013】
また、34は現像剤としての後述されるトナー41が定着されて装置外部に排出された転写材26が載置される排紙トレーであり、25aは前記転写材搬送ベルト24の表面に付着した不要トナーや異物を回収するためのクリーニングブレードである。該クリーニングブレード25aは、前記転写材搬送ベルト24の駆動ローラと対向する位置に配設され、転写材搬送ベルト24を駆動ローラと挟み込むようにして転写材搬送ベルト24の表面に当接するように配設される。そして、25bは前記クリーニングブレード25aが除去した転写材搬送ベルト24の表面に付着した不要トナーや異物等を回収するための廃トナー箱であり、前記クリーニングブレード25aの下部に開口部を備え、図示されないフレームに取り付けられる。
【0014】
さらに、11B、11Y、11M及び11Cは、表面にブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色のトナー粉体画像を担持する像担持体としての感光体ドラムであり、22B、22Y、22M及び22Cは、前記感光体ドラム11B、11Y、11M及び11Cの各々の表面に選択的に光を照射して潜像を形成する露光装置としてのLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)光源である。そして、12B、12Y、12M及び12Cは、前記感光体ドラム11B、11Y、11M及び11Cの各々に対向するように配置され、転写材搬送ベルト24を挟み込むようにして、図示されない付勢部材によって感光体ドラム11B、11Y、11M及び11Cの各々に向けて付勢される転写ローラである。なお、感光体ドラム11B、11Y、11M及び11C、転写ローラ12B、12Y、12M及び12C並びにLED光源22B、22Y、22M及び22Cを統合的に説明する場合には、感光体ドラム11、転写ローラ12及びLED光源22として説明する。
【0015】
次に、前記感光体ドラムユニット35の構成について詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムユニットの構成を示す図である。
【0017】
感光体ドラム11は、感光体ドラムユニット35に回転可能に支持され、図示されない駆動手段によって、図1において矢印で示される方向に回転させられる。そして、前記感光体ドラム11の周囲には、該感光体ドラム11の表面を帯電するための帯電ローラ13、一様に帯電した感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成するためのLED光源22、感光体ドラム11の表面上に現像剤としてのトナー41を供給することによって感光体ドラム11の表面上の静電潜像を現像してトナー像41aを形成するための現像ローラ14、前記感光体ドラム11の表面上のトナー像41aを転写材26上に転写して、該転写材26上にトナー像41bを付着させるための転写材搬送ベルト24及び転写ローラ12、並びに、感光体ドラム11の表面上に残在したトナー41を除去するためのクリーニングブレード16が配設されている。なお、前記転写ローラ12は、図1において矢印で示される方向に回転させられ、前記転写材26は、図1において矢印で示される方向に搬送される。また、前記感光体ドラムユニット35は、内部にトナー41を収容するトナーカートリッジ21、トナー41を現像ローラ14の表面に供給するためのトナー供給ローラ15、及び、トナー層厚を調整し、かつ、トナーを帯電させるためのトナー規制部材17を有する。
【0018】
本実施の形態においては、画像形成装置10が転写タンデムエンジンタイプのカラー電子写真プリンタであるので、転写材搬送ベルト24は、感光体ドラム11に接触するようになっている。そして、感光体ドラムユニット35B、35Y、35M及び35Cの各々において、転写材搬送ベルト24によって搬送される転写材26上に、感光体ドラム11B、11Y、11M及び11Cの表面上のトナー像41aが直接転写される。また、転写材搬送ベルト24と転写ローラ12とは、転写ユニットとして一体化されている。
【0019】
次に、前記感光体ドラム11と転写ローラ12との配置について説明する。
【0020】
図3は本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムと転写ローラとの配置を示す図、図4は本発明の第1の実施の形態における転写材搬送ベルトの仕様を示す表である。
【0021】
図3に示されるように、転写ローラ12は、感光体ドラム11に対して一定の荷重Fで押し込まれている。なお、図3において、11aは感光体ドラム11の支持軸であり、42は転写ローラ12の中心軸である。そして、荷重Fは、図示されないばね部材によって両側の中心軸42に矢印で示される方向に付与される。ここで、感光体ドラム11に対する転写ローラ12の押込力FTRは、両者間の全荷重を転写ローラ12の長手方向の接触長で割った値であり、次の式(1)で定義される。
TR=2F÷L ・・・式(1)
なお、Lは感光体ドラム11と転写ローラ12との接触長であり、後述される転写ローラ12のゴム部43の長さに等しい。
【0022】
そして、前記押込力FTRは、ばね定数の異なるばね部材を使用することによって、容易に調整することができる。
【0023】
また、転写ユニットとして転写ローラ12と一体化されている転写材搬送ベルト24の仕様は、図4に示されるように設計されている。この場合、体積抵抗率が1010〜1014〔Ω・cm〕(250〔V〕印加、三菱油化製ハイレスタ)の範囲にあり、表面低効率が1011〜1016〔Ω/□〕(500〔V〕印加、三菱油化製ハイレスタ)の範囲にあることが好ましい。なお、抵抗率の値は、導電性カーボンブラックを分散させて抵抗調整を行うことができる。
【0024】
次に、前記転写ローラ12の構成について説明する。
【0025】
図5は本発明の第1の実施の形態における転写ローラの構成を示す図、図6は本発明の第1の実施の形態における転写ローラの抵抗値の測定方法を示す図、図7は本発明の第1の実施の形態における転写ローラの仕様を示す表、図8は本発明の第1の実施の形態における表面発泡セル径の定義を示す図、図9は本発明の第1の実施の形態における発泡セルが表面でつながっている場合を示す図である。
【0026】
図5に示されるように、転写ローラ12は、金属製の中心軸42と、発泡した弾性体から成る弾性体部としてのゴム部43とを有する。この場合、前記発泡した弾性体は、中抵抗の弾性発泡ゴムである。そして、転写ローラ12の仕様は、図7に示されるように設計されている。なお、転写ローラ12の抵抗値は105 〜1010〔Ω〕の範囲にあり、抵抗周むらが1.5倍以下であることが好ましい。
【0027】
ここで、前記転写ローラ12の抵抗値は、図6に示されるような測定方法によって測定される。図6において、46はドラム形状金属体であり、支持軸46aによって回転可能に支持され、図示されない駆動手段によって、図6において矢印で示される方向に回転させられる。また、44は定圧電源であり、両端子が転写ローラ12の金属製の中心軸42及びドラム形状金属体46の支持軸46aに接続されている。さらに、45は電流計であり、定圧電源44から供給される電流量を測定する。
【0028】
そして、転写ローラ12の抵抗値は、図6に示されるように、転写ローラ12が十分抵抗値の小さいドラム形状金属体46と接触して回転している状態で、定圧電源44から供給される電流量を電流計45によって測定した値の平均値である。また、抵抗周むらは、測定された抵抗値における最大値と最小値との比である。
【0029】
図7に示されるように、金属製の中心軸42の軸径は6〔mm〕であり、ゴム部43の外径は14〔mm〕である。なお、金属製の中心軸42の軸径は、理想的には、6〔mm〕よりも大きいほうがよい。これは、軸径が大きいほど金属製の中心軸42の剛性が高くなり、転写ローラ12の撓(たわ)みを抑制して、感光体ドラム11との均一な接触を得ることが可能になるからである。なお、金属製の中心軸42の剛性は軸径の4乗に比例する。
【0030】
また、ゴム部43は、ベースポリマーとしてアクリルニトリルブタヂエンゴム(NBR)及びエピクロルヒドリンエチレンオキシド(ECO)ゴムを用いて混合し、加硫し、発泡させることによって、ローラ形状に成形したものである。なお、ECOゴムとNBRゴムとはともに有極性ゴムであるが、特に、ECOゴムは、エチレンオキサイド基を有しており、高いイオン導電性を発現する。
【0031】
そして、ゴム部43の表面における発泡セル径は、200〔μm〕〜500〔μm〕の範囲に分布している。ここで、ゴム部43の表面、すなわち、転写ローラ12の表面における発泡セル径は、図8に示されるように、転写ローラ12の表面と発泡セル47の輪郭とが交差した曲面における発泡セル47の径を意味し、次の式(2)で定義される。
発泡セル径=√(A×B)÷2 ・・・式(2)
なお、Aは発泡セル47の短径〔μm〕であり、Bは発泡セル47の長径〔μm〕である。
【0032】
また、図9(a)に示されるように、複数の発泡セル47同士が連続気泡のようにつながっている場合は、図9(b)に示されるように、各発泡セル47の輪郭を想定し、各発泡セル47を独立したセルとして把握して、発泡セル47の径を求める。
【0033】
次に、前記転写材26に供給される転写電流について説明する。
【0034】
図10は本発明の第1の実施の形態における耐刷テスト前の転写ローラの電圧依存性を示す図、図11は本発明の第1の実施の形態における耐刷テスト前の転写ローラの特性値を示す表である。
【0035】
感光体ドラム11の表面上のトナー像41aを転写材26上に転写する場合、転写手段としての転写材搬送ベルト24及び転写ローラ12を介して転写材26に供給される転写電流の値は、転写材26の種類に応じて定められている値となるように一定に保たれる必要がある。しかし、前記転写材搬送ベルト24及び転写ローラ12の抵抗値は、一定ではなく、環境の変化及び印刷枚数の変化に応じて変化する。そこで、前記転写材搬送ベルト24及び転写ローラ12の抵抗値が変化しても、転写材26に供給される転写電流の値が一定となるように、次のような転写電流の電圧制御が実行される。
【0036】
画像形成装置10による画像形成動作が開始される前に、転写ローラ12の金属製の中心軸42と感光体ドラム11との間に所定のラッチ電圧値VL のラッチ電圧を印加し、これにより、発生した電流の値を計測し、転写材搬送ベルト24及び転写ローラ12のラッチ抵抗値RL を算出する。続いて、算出されたラッチ抵抗値RL 、及び、転写時に転写材26に供給される必要がある転写電流の値に基づいて、転写電圧値VTRを決定する。そして、画像形成装置10による画像形成動作が行われるときには、前記金属製の中心軸42と感光体ドラム11との間に転写電圧値VTRの電圧を印加する。
【0037】
このように、転写電流の電圧制御を実行することによって、転写材搬送ベルト24及び転写ローラ12の抵抗値が変化した場合であっても転写材26に供給される転写電流の値が一定となり、常に、感光体ドラム11の表面上のトナー像41aを転写材26上に転写するために最適な転写電流を供給することが可能となる。
【0038】
図10には、二種類の転写ローラ12の抵抗値の電圧依存性が示されている。◆は低い抵抗値を備えるローラAの抵抗値を示し、■は高い抵抗値を備えるローラBの抵抗値を示している。前記ローラAの抵抗値は転写ローラ12の抵抗値規格の下限であり、前記ローラBの抵抗値は転写ローラ12の抵抗値規格の上限である。また、図11には、前記ローラA及びローラBの種々の特性値が示されている。なお、図10及び11に示される数値は、耐刷テストが実行される前の時点における数値である。そして、転写電圧値VTRは、前記ローラA及びローラBの電圧依存性に基づいて決定される。また、ラッチ電圧値VL は、1600〔V〕で固定されている。
【0039】
次に、実験例について説明する。
【0040】
図12は本発明の第1の実施の形態における実験例での転写ローラの抵抗値の電圧依存性を示す図、図13は本発明の第1の実施の形態における実験例での転写ローラの特性値を示す表、図14は本発明の第1の実施の形態における実験例での転写電流の電圧制御が追従することができない例を示す図、図15は本発明の第1の実施の形態における実験例での転写電流の電圧制御が追従することができない例の転写ローラの特性値を示す表である。
【0041】
本発明の発明者は、5万枚の転写材26に印刷を行う耐刷テストを実施して、転写ローラ12の抵抗値の電圧依存性を比較する実験を行った。今回の実験では、画像形成装置10として、光学LED方式直接転写タンデムエンジンタイプカラー電子写真プリンタであるMICROLINE C5400(株式会社沖データ製)を使用した。この場合、転写材26の最大幅、すなわち、最大用紙幅はLETTERサイズであった。また、印刷速度は感光体ドラム11の周速において94〔mm/sec〕であった。さらに、転写材搬送ベルト24として、図4に示される仕様を備えるものを使用し、また、転写ローラ12として、図7に示される仕様を備えるものを使用した。
【0042】
ここで、転写ローラ12の抵抗値の電圧依存性を示す値△Rは、次の式(3)で定義される。
△R=1−(R1600V ÷R800V) ・・・式(3)
なお、R1600v は転写ローラ12のラッチ抵抗値RL に相当する値であり、R800v は画像形成動作時の転写電圧値に近い電圧値での転写ローラ12の抵抗値に相当する値である。
【0043】
そして、△Rは0以上1以下の値を取る。△Rが0となるのは電圧依存性がない場合であり、△Rの数値が大きいほど電圧依存性が大きいことになる。すなわち、△Rは、転写ローラ12のラッチ抵抗値RL と転写時における抵抗値との変動の目安である。なお、耐刷テストを実施する前においては、転写ローラ12の抵抗値には電圧依存性がないので、△Rは0に近かった。
【0044】
本発明の発明者が行った実験例は、次の実験例1〜6である。
【0045】
(実験例1)
感光体ドラム11に対する転写ローラ12の押込力FTRを112〔gf/cm〕に設定して、耐刷テストを実施した。
【0046】
転写ローラ12の抵抗値の電圧依存性を示す値△Rの値は、耐刷テストを実施する前においては0.08であり、耐刷テストを実施した後においては0.29であった。
【0047】
画像は常に良好であった。
【0048】
(実験例2)
感光体ドラム11に対する転写ローラ12の押込力FTRを93〔gf/cm〕に設定して、耐刷テストを実施した。
【0049】
転写ローラ12の抵抗値の電圧依存性を示す値△Rの値は、耐刷テストを実施する前においては0.10であり、耐刷テストを実施した後においては0.30であった。
【0050】
画像は常に良好であった。
【0051】
(実験例3)
感光体ドラム11に対する転写ローラ12の押込力FTRを65〔gf/cm〕に設定して、耐刷テストを実施した。
【0052】
転写ローラ12の抵抗値の電圧依存性を示す値△Rの値は、耐刷テストを実施する前においては0.10であり、耐刷テストを実施した後においては0.32であった。
【0053】
画像は常に良好であった。
【0054】
(実験例4)
感光体ドラム11に対する転写ローラ12の押込力FTRを37〔gf/cm〕に設定して、耐刷テストを実施した。
【0055】
転写ローラ12の抵抗値の電圧依存性を示す値△Rの値は、耐刷テストを実施する前においては0.10であり、耐刷テストを実施した後においては0.34であった。
【0056】
耐刷テストを実施する前の画像は良好であった。また、耐刷テストを実施した後では、ハーフトーンに画像不良が確認されたが、テキストは良好であった。
【0057】
(実験例5)
感光体ドラム11に対する転写ローラ12の押込力FTRを28〔gf/cm〕に設定して、耐刷テストを実施した。
【0058】
転写ローラ12の抵抗値の電圧依存性を示す値△Rの値は、耐刷テストを実施する前においては0.12であり、耐刷テストを実施した後においては0.36であった。
【0059】
耐刷テストを実施する前の画像は良好であった。また、耐刷テストを実施した後では、ハーフトーンに画像不良が確認されたが、テキストは良好であった。
【0060】
(実験例6)
感光体ドラム11に対する転写ローラ12の押込力FTRを19〔gf/cm〕に設定して、耐刷テストを実施した。
【0061】
転写ローラ12の抵抗値の電圧依存性を示す値△Rの値は、耐刷テストを実施する前においては0.14であり、耐刷テストを実施した後においては0.49であった。
【0062】
耐刷テストを実施する前の画像は良好であった。また、耐刷テストを実施した後では、ハーフトーン及びテキストにカスレ、すなわち、転写掠(かす)れが確認された。
【0063】
そして、前記実験例1〜6について、耐刷テストを実施した後における転写ローラ12の抵抗値の電圧依存性は、図12に示され、転写ローラ12の押込力FTR、転写ローラ12の抵抗値の電圧依存性、及び、耐刷テストを実施した後における画像の評価の関係は、図13に示されている。
【0064】
なお、試しに、感光体ドラム11に対する転写ローラ12の押込力FTRを、実験例1における押込力FTRの値である112〔gf/cm〕より大きな値に設定したところ、チリ、すなわち、転写チリが発生してしまった。このことから、感光体ドラム11に対する転写ローラ12の押込力FTRを適正値以上に設定すると逆効果になることが分かる。
【0065】
続いて、転写ローラ12の抵抗値の電圧依存性が大きくなった原因を考察する。
【0066】
転写ローラ12の表面における発泡セル径が大きく、平均発泡セル径が300〔μm〕以上で、かつ、転写ローラ12の押込力FTRが小さい場合、転写ローラ12の表面が転写材搬送ベルト24に接触している面積が少なくなって導電経路が少なくなるので、電界が集中しやすくなる。その結果、放電が発生して電気特性の劣化が早くなると考えられる。
【0067】
続いて、転写掠れが発生した原因を考察する。
【0068】
図14及び15には、図10に示される高い抵抗値を備えるローラBの抵抗値の電圧依存性、及び、前記実験例6の結果としての転写ローラ12の抵抗値の電圧依存性が示されている。ここでは、実験例6の条件で耐刷テストを実施した後の転写ローラ12を転写ローラA6と称し、耐刷テストを実施する前の転写ローラ12を転写ローラA0と称して説明する。
【0069】
そして、電圧が1600〔V〕の近辺では、転写ローラA6及び転写ローラBの抵抗値は同程度であり、また、ラッチ抵抗値RL はほぼ同等である。しかし、電圧依存性が違うため、電圧が1600〔V〕から離れるほどに、転写ローラA6及び転写ローラBの抵抗値は大きく異なっている。そのため、転写ローラA0及び転写ローラBの電圧依存性に対応する転写電流の電圧制御を実行した場合、転写ローラA6に供給される転写電流が不足し、感光体ドラム11の表面上のトナー像41aを転写材26上に十分転写することができなくなり、転写掠れが発生する。
【0070】
このように、本実施の形態においては、感光体ドラム11に対する転写ローラ12の押込力FTRを65〔gf/cm〕以上、かつ、112〔gf/cm〕以下に設定して耐刷テストを実施した場合、耐刷テスト後の転写ローラ12の抵抗値の電圧依存性を示す値△Rは0.32以下であり、画像は常に良好であった。
【0071】
また、感光体ドラム11に対する転写ローラ12の押込力FTRを28〔gf/cm〕以上、かつ、65〔gf/cm〕以下に設定して耐刷テストを実施した場合、耐刷テスト後の転写ローラ12の抵抗値の電圧依存性を示す値△Rは0.32以上、かつ、0.36以下であり、画像は実用上問題のない状態であった。
【0072】
なお、感光体ドラム11に対する転写ローラ12の押込力FTRを28〔gf/cm〕未満に設定して耐刷テストを実施した場合、耐刷テスト後の転写ローラ12の抵抗値の電圧依存性を示す値△Rが0.36より大きくなって、画像品質の劣化が顕著になった。
【0073】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構成を有するものについては、同じ符号を付与することによって、その説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0074】
図16は本発明の第2の実施の形態における画像形成装置の概略を示す図である。
【0075】
本実施の形態においては、画像形成装置10が、図16に示されるような、いわゆる、中間転写4サイクルエンジン方式のカラー電子写真プリンタである場合について説明する。この場合、図16の中間転写装置64において、矢印で示される方向に回転する中間転写ベルト71上に多重トナー像を形成し、該多重トナー像を、図16において矢印で示される方向に搬送される転写材26上に転写するようになっている。
【0076】
図16において、51は、表面にブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色のトナー画像を担持する像担持体としての感光体ドラムである。該感光体ドラム51は、回転可能に支持され、図示されない駆動手段によって、図16において矢印で示される方向に回転させられる。そして、前記感光体ドラム51の周囲には、該感光体ドラム51の表面を帯電するための帯電ローラ54、及び、一様に帯電した感光体ドラム51の表面に静電潜像を形成するためのLED光源75が配設されている。
【0077】
また、前記感光体ドラム51の周囲には、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色のトナーを感光体ドラム51の表面に供給することによって、該感光体ドラム51の表面上の静電潜像を現像して各色のトナー像を形成するための現像カートリッジ55B、55Y、55M及び55Cが配設されている。そして、該現像カートリッジ55B、55Y、55M及び55Cは、各々、現像ローラ56B、56Y、56M及び56Cを備える。なお、該現像ローラ56B、56Y、56M及び56Cの各々は、感光体ドラム51の表面に接触した現像位置と、感光体ドラム51の表面から離間した非現像位置とに切り換えることができるようになっている。なお、現像カートリッジ55B、55Y、55M及び55C並びに現像ローラ56B、56Y、56M及び56Cを統合的に説明する場合には、現像カートリッジ55及び現像ローラ56として説明する。
【0078】
さらに、前記感光体ドラム51の周囲には、該感光体ドラム51の表面のトナー像を中間転写ベルト71上に転写するための転写ローラとしての一次転写ローラ52a、トナー像が中間転写ベルト71上に転写された後に感光体ドラム51の表面の帯電履歴を除去するための除電ローラ61、及び、感光体ドラム51の表面に残在したトナーを除去するためのクリーニングブレード62が配設されている。
【0079】
そして、前記中間転写装置64は、感光体ドラム51の表面に形成されたトナー像が転写される無端状の中間転写ベルト71と、該中間転写ベルト71の外周面を感光体ドラム51の外周面に押し当てる一次転写ローラ52aと、前記中間転写ベルト71に張力を与えるテンションローラ76a、76b及び76cと、前記中間転写ベルト71の内周面に接触して二次転写ローラ52bに対向する従動ローラ63と、前記中間転写ベルト71の外周面上のトナー像が転写材26に転写された後に、中間転写ベルト71の外周面上に残在したトナーを除去するためのクリーニングブレード65とを有する。なお、二次転写ローラ52bは、前記従動ローラ63と対向する位置に配設され、中間転写ベルト71を挟み込むようにして図示されない付勢部材によって従動ローラ63に向けて付勢され、中間転写ベルト71の外周面上のトナー像を転写材26上に転写するための転写ローラとして機能する。なお、定着ユニット31等の他の構成については、前記第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0080】
次に、本実施の形態における転写ローラの構成について説明する。
【0081】
図17は本発明の第2の実施の形態における転写ローラの構成を示す図、図18は本発明の第2の実施の形態における樹脂チューブの仕様を示す表、図19は本発明の第2の実施の形態における転写ローラの仕様を示す表である。
【0082】
中間転写ベルト71の外周面上のトナー像を転写材26に転写する部位、すなわち、二次転写部における二次転写ローラ52bは、図17に示されるような二層構造を有する。前記二次転写ローラ52bは、金属製の中心軸81、発泡した弾性体から成る弾性体部としてのゴム部82、及び、該ゴム部82の周囲を覆う被覆層として被覆された樹脂チューブ83を有する。この場合、前記発泡した弾性体は弾性発泡ゴムである。そして、前記樹脂チューブ83がない状態の二次転写ローラ52bの仕様は、前記第1の実施の形態における転写ローラ12と同様に、図7に示されるようになっている。この場合、ゴム部82の表面における発泡セル径は、200〔μm〕〜500〔μm〕の範囲に分布している。
【0083】
また、前記樹脂チューブ83はPVdF(ポリフッ化ビニリデン)製で、体積抵抗値が107 〜1011〔Ω・cm〕(250〔V〕印加、三菱油化製ハイレスタ)の範囲にあることが望ましい。なお、前記樹脂チューブ83は、詳細には、図18に示されるような仕様を有する。
【0084】
そして、前記樹脂チューブ83が被覆された二次転写ローラ52bは、図19に示されるような仕様を有する。これにより、二次転写ローラ52bの表面は平滑になり、表面の粗さRZ は12〔μm〕となる。
【0085】
次に、本実施の形態における画像形成装置10の動作について説明する。
【0086】
本実施の形態において、感光体ドラム51は、図示されない駆動手段によって、図16において矢印で示される方向に回転させられる。そして、前記感光体ドラム51の表面は、帯電ローラ54によって一様に帯電される。続いて、帯電された感光体ドラム51の表面に、画像処理されたイエローの静電潜像のみがLED光源75によって書き込まれる。続いて、イエローの静電潜像は、その色、すなわち、イエローに対応するトナーを収容した現像カートリッジ55Yの現像ローラ56Yによって現像されて可視化される。これにより、前記感光体ドラム51の表面にイエローのトナー像が形成される。
【0087】
続いて、該トナー像は、一次転写部を通過する際に、一次転写ローラ52aによって中間転写ベルト71上に静電的に転写される。なお、前記一次転写部は、感光体ドラム51の表面のトナー像を中間転写ベルト71の外周面上に転写する部位である。続いて、感光体ドラム51の表面上の残留電荷は、除電ローラ61によって除電される。これにより、前記感光体ドラム51の表面の帯電履歴が除去される。さらに、感光体ドラム51の表面上に残在したトナー、すなわち、残留トナーはクリーニングブレード62によって除去される。そして、画像1枚分の印刷データが終了するまで、前述の動作が継続して行われる。
【0088】
さらに、画像処理された他の色、すなわち、マゼンタ、シアン及びブラックについても、前述の動作が順次行われる。これにより、中間転写ベルト71上のイエローのトナー像の上に、マゼンタ、シアン及びブラックのトナー像が順次重ね合わされ、最終的に画像1枚分の印刷データの多重トナー像が形成される。
【0089】
続いて、二次転写部において、所定のタイミングで搬送された転写材26上に前記中間転写ベルト71上の多重トナー像が静電的に一括転写される。このようにして、転写された多重トナー像は、弱い静電気力だけによって転写材26上に付着している。そして、該転写材26がさらに搬送されて定着ユニット31に送り込まれると、定着ローラ31a及び加圧ローラ31bによって、転写材26上に付着している多重トナー像のトナーが高温に加熱されて融解し、さらに、圧接され、転写材26に定着させられる。最後に、該転写材26は排紙トレー34上に排出される。
【0090】
次に、実験例について説明する。
【0091】
図20は本発明の第2の実施の形態における実験例での転写ローラの特性値を示す表である。
【0092】
本実施の形態においても、前記第1の実施の形態と同様にして、5万枚の転写材26に印刷を行う耐刷テストが実施され、二次転写ローラ52bの抵抗値の電圧依存性を比較する実験が行われた。なお、本実施の形態においても、実験例1〜6が行われた。そして、該実験例1〜6について、二次転写ローラ52bの押込力FTR、二次転写ローラ52bの抵抗値の電圧依存性、及び、耐刷テストを実施した後における画像の評価の関係が、図20に示されている。
【0093】
このように、本実施の形態においては、二次転写ローラ52bの押込力FTRを28〔gf/cm〕以上、かつ、112〔gf/cm〕以下に設定した場合、耐刷テスト後の二次転写ローラ52bの抵抗値の電圧依存性を示す値△Rを小さい範囲に抑え込むことができ、耐刷性を含めて、実用上問題のない画像を得ることが可能であった。
【0094】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムユニットの構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の概略を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムと転写ローラとの配置を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における転写材搬送ベルトの仕様を示す表である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における転写ローラの構成を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における転写ローラの抵抗値の測定方法を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における転写ローラの仕様を示す表である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における表面発泡セル径の定義を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における発泡セルが表面でつながっている場合を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態における耐刷テスト前の転写ローラの電圧依存性を示す図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態における耐刷テスト前の転写ローラの特性値を示す表である。
【図12】本発明の第1の実施の形態における実験例での転写ローラの抵抗値の電圧依存性を示す図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態における実験例での転写ローラの特性値を示す表である。
【図14】本発明の第1の実施の形態における実験例での転写電流の電圧制御が追従することができない例を示す図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態における実験例での転写電流の電圧制御が追従することができない例の転写ローラの特性値を示す表である。
【図16】本発明の第2の実施の形態における画像形成装置の概略を示す図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態における転写ローラの構成を示す図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態における樹脂チューブの仕様を示す表である。
【図19】本発明の第2の実施の形態における転写ローラの仕様を示す表である。
【図20】本発明の第2の実施の形態における実験例での転写ローラの特性値を示す表である。
【符号の説明】
【0096】
10 画像形成装置
11、11B、11Y、11M、11C、51 感光体ドラム
12、12B、12Y、12M、12C 転写ローラ
24 転写材搬送ベルト
26 転写材
41 トナー
43、82 ゴム部
52a 一次転写ローラ
52b 二次電車ローラ
83 樹脂チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)像担持体上に形成された現像剤の像を転写ローラによって転写材に電気的に転写させる転写装置であって、
(b)前記転写ローラは、前記像担持体に直接に、又は、転写材搬送ベルト若しくは被覆層を介して間接に接触し、前記像担持体に対する前記転写ローラの押込力が28〔g/cm〕〜112〔g/cm〕に設定されていることを特徴とする転写装置。
【請求項2】
(a)前記転写ローラは発泡した弾性体から成る弾性体部を備え、
(b)該弾性体部は、表面が前記被覆層によって被覆されていない状態において、表面の硬度がアスカーC硬度25度〜45度であり、かつ、表面における発泡セル径が200〔μm〕〜500〔μm〕である請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の転写装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−243278(P2006−243278A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57804(P2005−57804)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】