説明

転動体収容ベルト及び転動体収容ベルトの製造方法並びに直線案内機構

【課題】軸方向に延伸した多数の転動体を転動体収容ベルトにより保持し、直線案内機構の循環路の中で、所定の間隔で保持された転動体収容ベルト及び転動体を循環させる、転動体収容ベルト及び転動体収容ベルトの製造方法並びに直線案内機構を提供する。
【解決手段】転動体収容ベルト1は、扁平帯状体2及び多数の仕切り部3を備える。扁平帯状体2は、軸方向に配列されたホール21を有し、ホール21間には、2つのホール21をそれぞれ分離するスペーサ22が設けられている。仕切り部3は、スペーサ22に接続されている。ホール21は、扁平帯状体2の垂直方向及び2つの仕切り部3間にホール面35が形成されている。扁平帯状体2のスペーサ22は、左右両側面をそれぞれ有する上面及び底面を有する。仕切り部3は、上仕切り部31及び下仕切り部32を有し、扁平帯状体2のスペーサ22の上面及び底面にそれぞれ接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転動体収容ベルト(rolling element accommodation belt)及び転動体収容ベルトの製造方法並びに直線案内機構に関し、特に、軸方向に延伸した多数の転動体を転動体収容ベルトにより保持し、直線案内機構の循環路の中で、所定の間隔で保持された転動体収容ベルト及び転動体を循環させる、転動体収容ベルト及び転動体収容ベルトの製造方法並びに直線案内機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の直線案内機構の中の移動部材及び軸方向に延伸した軌道部材には、互いに対応した軌道が少なくとも1列ずつ提供されている。軌道間に配置された1列の転動体は、軌道と接触し、軌道上を転がる。移動部材は、互いに対応した各1列の軌道に対して回流路及び2つの回転路を提供する。回転路は、回流路及び軌道の端面出入口に接続され、循環路が形成される。これにより、転動体が軌道エリアから回転路を通って回流路に入った後、回流路から回転路を通って軌道エリアに入る。このように転動体が転がって循環路の中を循環移動することにより、移動部材が軌道に沿って無限に移動する。
【0003】
転動体が互いに当たることを防ぐために、移動部材には転動体収容ベルトが提供され、1列に配列された多数の仕切り部が転動体間に配置され、連結部材によりそれぞれ繋げられ、転動体に配置された仕切り部により、転動体同士が当たらないように分離し、転動体の間隔を一定の距離に保ちながら無限循環を行う。これにより、移動部材をスムーズに移動させることができる。従来の直線案内機構(例えば、特許文献1)が有する転動体収容ベルトには、樹脂射出成形金型へ転動体を直接挿入し、転動体を収納する凹部が形成されているが、樹脂材料が収縮し、転動体収容ベルトのホールの中にある転動体が自在に回転しなくなり、抵抗力が増大して移動が困難となることがあった。
【0004】
また、特許文献2が開示する転動体収容ベルトは、樹脂を使用して水分又は油分を吸収した後に収縮率を変え、浸漬した後に転動体と仕切り部との隙間が増大するため、自在に回転することができるが、上述の転動体収容ベルトを形成する射出成形工程において、金型の中に転動体を配置する必要があった。しかし、この方式は、射出成形工程が複雑となり、自動化が困難である上、仕切り部と転動体との間が密着されるため、潤滑油脂を保存する空間を設けることができなった。
【0005】
また、特許文献3が開示する転動体収容ベルトは、上下の型締め方式の射出成形金型により、射出成形不良が発生することを防ぐとともに、発生したバリにより転動体収容ベルトがスムーズに移動しなくなることを防ぐことができる。この設計は、上下の型締め方式により射出成形を行うが、転動体収容ベルトは、転動体が仕切り部により中間ホールに保持する機能が失われた。
【0006】
また、特許文献4が開示するリニアガイドの転動体位置の保持構造は、保持構造の各間隔体の前後に設けられた2つ以上の真直ぐな拘束面が設けられ、各真直ぐな拘束面の垂直した上下の両側には、それぞれ直立面及びかぎつめ面が設けられ、互いに隣接した真直ぐな拘束面は互いに交錯するように配置され、互いに隣接した仕切り部間には、転動体を収納する収納空間が形成され、各かぎつめ面の外縁を利用し、転動体を拘束して位置決めする。仕切り部の各真直ぐな拘束面が互いに交錯し、直立面とかぎつめ面とが平らな面形成されずに段差が発生する虞があった。各真直ぐな拘束面は、異なる方向の金型の結合により成形されるため、段差の箇所にバリが発生して転動体と干渉し、転動体の移動がスムーズにならなくなる虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05−052217号公報
【特許文献2】米国特許第5988883号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0025653号明細書
【特許文献4】台湾特許第294497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、離型工程を行うことが困難であり、転動体を完全に拘束することができず、射出成形工程を行うとき容易にバリが発生した従来の問題を解決し、仕切り部と転動体との間にオイル保存空間を設けることにより、オイル保存機能を高めて潤滑効果を長引かせる転動体収容ベルト及び転動体収容ベルトの製造方法並びに直線案内機構を提供することにある。
本発明のもう一つの目的は、転動体収容ベルトが循環路のガイド溝でガイドされるときに、溝の段差又はバリによりスムーズに移動することができなくなることを防ぐ転動体収容ベルト及び転動体収容ベルトの製造方法並びに直線案内機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態によれば、扁平帯状体及び多数の仕切り部を備える転動体収容ベルトであって、前記扁平帯状体は、軸方向に配列されたホールを有し、前記ホール間には、2つの前記ホールをそれぞれ分離するスペーサが設けられ、前記仕切り部は、前記スペーサに接続され、前記ホールは、前記扁平帯状体の垂直方向及び2つの仕切り部間にホール面が形成され、前記扁平帯状体の前記スペーサは、左右両側面をそれぞれ有する上面及び底面を有し、前記仕切り部は、上仕切り部及び下仕切り部を有し、前記扁平帯状体の前記スペーサの上面及び底面にそれぞれ接続され、前記上仕切り部及び前記下仕切り部と、前記ホールとが隣接する面は平らな面であり、前記平らな面の一部は球状カバー面であり、前記扁平帯状体上の前記ホール面と平らに接続され、前記ホール面が隣接した前記上仕切り部又は前記下仕切り部の前記球状カバー面と平らに接続して上カバー面又は下カバー面が形成され、前記球状カバー面は、開口を有し、前記平らな面の他の部分は前記球状カバー面の前記開口の接線方向に沿って曲面で外側に延伸され、前記上カバー面又は前記下カバー面の開口方向は、斜めに前記扁平帯状体の軸方向垂直面と軸方向横側面との間に設けられ、前記上仕切り部と前記下仕切り部の前記球状カバー面は、ずれるように左右にそれぞれ配置され、前記開口が互いに反対方向を向いていることを特徴とする転動体収容ベルトが提供される。
【0010】
前記曲面は、円筒面であることが好ましい。
【0011】
前記曲面は、円錐面であることが好ましい。
【0012】
本発明の第2の形態によれば、扁平帯状体及び多数の仕切り部を備える転動体収容ベルトであって、前記扁平帯状体は、軸方向に配列されたホールを有し、前記ホール間には、2つの前記ホールをそれぞれ分離するスペーサが設けられ、前記仕切り部は、前記スペーサに結合され、軸向きに配列した転動体は、前記ホールの中に位置し、前記仕切り部により離間されて前記ホールの中に保持され、前記転動体収容ベルトは、前記扁平帯状体の両側に位置する両端面が円柱面であり、前記扁平帯状体の内側面又は外側面の少なくとも1つの凹部面が前記円柱面に位置した後、平らに接続されることを特徴とする転動体収容ベルトが提供される。
【0013】
本発明の第3の形態によれば、第1の形態に記載の転動体収容ベルトを製造する方法であって、左右2つの金型を有する第1の金型部材は、球状カバー面の開口方向に沿って、斜めに開閉し、前記左右2つの金型を結合する第2の金型部材と結合し、射出成形を行い、前記左右2つの金型の第1の金型部材のそれぞれは、上仕切り部及び下仕切り部の平らな面、ホール及び一部の転動体収容ベルトを成形し、前記左右2つの金型の第2の金型部材は、前記転動体収容ベルトの残りの部分を成形し、前記左右2つの金型の第1の金型部材は、前記ホールの箇所に金型分割線が形成され、前記金型分割線の傾斜角度は、扁平帯状体の前記ホールの断面対角線の傾斜角より小さくなく、前記左右2つの金型の第1の金型部材の斜めの方向に開閉する傾斜角度は、前記金型分割線の傾斜角度より大きいことを特徴とする転動体収容ベルトの製造方法が提供される。
【0014】
前記左右2つの金型を有する第1の金型部材が斜めに開閉する傾斜角度は、前記転動体収容ベルトの前記扁平帯状体の前記球状カバー面側に位置する側面の傾斜角度より小さく、前記左右2つの金型の前記第2の金型部材と前記第1の金型部材とを一体に結合することが好ましい。
【0015】
前記左右2つの金型の第1の金型部材の前記金型分割線と、前記扁平帯状体が位置する前記曲面側の側面とは同一平面であることが好ましい。
【0016】
本発明の第4の形態によれば、ガイド体及びベースを備える第1の形態に記載の転動体収容ベルトを使用する直線案内機構であって、前記ガイド体は、その一側に第1の軌道が設けられ、前記ベースは、前記ガイド体上に跨いで配置され、前記第1の軌道に対応するように第2の軌道が配置され、前記第2の軌道上の両端にそれぞれ方向転換路が配置され、前記方向転換路の他方の端部には回流路が接続され、前記第2の軌道、前記方向転換路及び前記回流路により循環路が形成され、前記循環路の中に少なくとも1つの封止した案内溝が設けられ、前記転動体収容ベルトの扁平帯状体の両側の少なくとも1つの側部は、前記案内溝の中に位置し、前記転動体収容ベルトのホールの中にそれぞれ転動体を配置し、前記転動体収容ベルト及び前記転動体は、前記循環路の中を転がりながら循環することを特徴とする転動体収容ベルトの直線案内機構を提供する。
【0017】
本発明の第5の形態によれば、ガイド体及びベースを備える第2の形態に記載の転動体収容ベルトを使用する直線案内機構であって、前記ガイド体は、その一側に第1の軌道が設けられ、前記ベースは、前記ガイド体上に跨いで配置され、前記第1の軌道に対応するように第2の軌道が配置され、前記第2の軌道上の両端にそれぞれ方向転換路が配置され、前記方向転換路の他方の端部には回流路が接続され、前記第2の軌道、前記方向転換路及び前記回流路により循環路が形成され、前記循環路の中に少なくとも1つの封止した案内溝が設けられ、前記転動体収容ベルトの前記扁平帯状体の両側の少なくとも1つの側部は、前記案内溝の中に位置し、前記転動体収容ベルトの前記ホールの中にそれぞれ転動体を配置し、前記転動体収容ベルト及び前記転動体は、前記循環路の中を転がりながら循環することを特徴とする転動体収容ベルトの直線案内機構を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の転動体収容ベルト及び転動体収容ベルトの製造方法並びに直線案内機構は、以下(1)〜(3)の効果を有する。
(1)離型工程を行うことが困難であり、転動体を完全に拘束することができない上、射出成形時に容易にバリが発生した従来の問題を解決し、仕切り部と転動体との間にオイル保存空間を設け、オイル保存機能を高めて潤滑効果を長引かせる。
(2)転動体収容ベルトの射出成形を行う際、左右2つの金型は、球状カバー面の開口方向が斜めであるため、転動体収容ベルトを完全に射出させることができる。
(3)転動体収容ベルトは、溝に位置する扁平帯状体の両側の両端面が円柱面であり、扁平帯状体の内側面又は外側面が有する凹部面が円柱面に位置した後に平らな面接続され、円柱面が内側又は外側に曲げられるため、直線案内機構の中の循環チャネルの中でスムーズに方向転換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による転動体収容ベルトを示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による転動体収容ベルト及び配列された転動体を示す斜視図である。
【図3】図1の線A−Aに沿った断面図である。
【図4】図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図5】図1の線C−Cに沿った断面図である。
【図6】本発明の一実施形態による射出成形の上仕切り部及び下仕切り部が対応する平らな面の左右の金具の第1の金型部材及び第2の金型部材を示す斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態による射出成形左右金型の第1の金型部材、第2の金型部材及び上仕切り部及び下仕切り部及び対応する平らな面を示す模式図である。
【図8】本発明の第1実施形態による転動体収容ベルトの射出成形左右金型の第1の金型部材、第2の金型部材及び上仕切り部及び下仕切り部及び転動体が対応する平らな面を示す模式図である。
【図9】本発明の第2実施形態による転動体収容ベルトの射出成形左右金型及び上仕切り部及び下仕切り部及び転動体が対応する平らな面を示す模式図である。
【図10】本発明の第3実施形態による転動体収容ベルトの射出成形左右金型及び上仕切り部及び下仕切り部及び転動体が対応する平らな面を示す模式図である。
【図11】本発明の一実施形態による転動体収容ベルトと、配列された転動体とが直線案内機構の循環路の中にあるときの状態を示す模式図である。
【図12】図4のX部分の拡大図である。
【図13】本発明の一実施形態による転動体収容ベルトの両端面が循環路の案内溝に位置するときの状態を示す拡大図である。
【図14】本発明の一実施形態による転動体収容ベルトの両端の円柱面と、第1の凹部面及び第2の凹部面と、を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、これによって本発明が限定されるものではない。
【0021】
図1を参照する。図1に示すように、本発明の一実施形態による転動体収容ベルト1は、扁平帯状体2及び多数の仕切り部3を含む。扁平帯状体2は、軸方向に配列されたホール21を有する。ホール21間には、各ホール21のそれぞれを分離するスペーサ22が設けられている。仕切り部3は、その上に結合され、上仕切り部31及び下仕切り部32を含む。ホール21は、扁平帯状体2の垂直方向及び2つの仕切り部3間にホール面35が形成されている。図2に示すように、配列された転動体5が仕切り部3により仕切られるとともに、ホール21の中に保持される。図1に示すように、上仕切り部31及び下仕切り部32が有する、ホール21に対応するそれぞれの面は平らな面33,34である。平らな面33,34の一部は、転動体5の球状カバー面33a,34aより略大きく、扁平帯状体2上のホール面35と平らに接続されている。ホール面35により、互いに隣接した上仕切り部31又は下仕切り部32の球状カバー面33a,34aと平らに接続され、転動体5の上カバー面37及び下カバー面38(図4及び図5に示す)が形成される。
【0022】
上下の球状カバー面33a,34aは、左右の異なる縁にそれぞれ配置され、球状カバー面33a,34aの第1の開閉方向N1及び第2の開閉方向N2(即ち、後述する金型60,70の斜めの開閉方向)と反対方向でそれぞれ配置される(図3に示す)。上仕切り部31及び下仕切り部32は、転動体5に対応した平らな面33,34の他方の部分は、球状カバー面33a,34aの開口に沿った接線方向で、円筒状又は円錐状の曲面33b,34bが外側に延伸している(図1に示す)。上下の球状カバー面33a,34aの第1の開閉方向N1及び第2の開閉方向N2は、扁平帯状体2の断面上の垂直方向Vと水平方向Hとの間に位置し、球状カバー面33a,34aの第1の開閉方向N1及び第2の開閉方向N2が、扁平帯状体2の水平方向Hに対する傾斜が大きくなるに従い、球状カバー面33a,34aが大きくなり、転動体5に対する垂直方向Vの拘束力が大きくなる(図3に示す)。
【0023】
球状カバー面33a,34a及び円筒状又は円錐状の曲面33b,34bが平らな面33,34に形成され、金型60,70の第1の金型部材60a,70aの金型表面61,71が平らな面33,34に対応するため、金型60,70の第1の金型部材60a,70aは、球状カバー面33a,34aの第1の開閉方向N1及び第2の開閉方向N2に沿って斜めに開閉するため、平らな面33,34と干渉しない。また、下仕切り部32の設置方向が上仕切り部31と反対方向のため、上仕切り部31及び下仕切り部32の平らな面33,34は、左右の金型60,70の第1の金型部材60a,70aにより射出成形される(図6に示す)。
【0024】
図7に示すように、左右2つの金型60,70の第1の金型部材60a,70aにより成形される上仕切り部31及び下仕切り部32が対応する平らな面33,34の一部には、ホールの箇所に金型分割線PLが設けられている。この金型分割線PLの傾斜角度θ2は、扁平帯状体2のホール21の断面の対角線36の傾斜角度θ1より小さくない(即ち、θ2≧θ1)。そのため、上仕切り部31及び下仕切り部32が対応する平らな面33,34のそれぞれは、扁平帯状体2上のホール面35が互いに対応した同一の金型60,70の第1の金型部材60a,70aの金型表面61,71から射出されるため、平らに接続することができる。金型60,70の第1の金型部材60a,70aの金型表面61,71は、上仕切り部31及び下仕切り部32が対応する平らな面33,34と、扁平帯状体2上のホール面35と、保持チェーンの一部を成形し、左右2つの金型の第2の金型部材60b,70bにより、保持チェーンの残りの部分を成形する。
【0025】
(第1実施形態)
図8は、本発明の第1実施形態による転動体収容ベルトを示す模式図である。図8に示すように、左右2つの金型60,70の第1の金型部材60a,70aが斜めに第1の開閉方向N1及び第2の開閉方向N2に開閉し、傾斜角度θ3が金型分割線PLの傾斜角度θ2より大きいとき(即ち、θ3>θ2のとき)、左右2つの金型60,70が斜めに開閉されるため干渉せず、平らな面33,34及び扁平帯状体2上のホール面35に対応した上仕切り部31及び下仕切り部32と、保持チェーンの一部とを成形する。左右2つの金型の第1の金型部材60a,70aが斜めに第1の開閉方向N1及び第2の開閉方向N2で開閉するとともに、左右2つの金型の第2の金型部材60b,70bが第3の開閉方向S1及び第4の開閉方向S2で、左右2つの金型の第1の金型部材60a,70aを開閉すると、保持チェーンの残りの部分を射出成形することができる。
【0026】
(第2実施形態)
図9に示すように、本発明の第2実施形態による転動体収容ベルトは、ホール21の扁平帯状体2の上面及び底面のそれぞれが、球状カバー面33a,34aと同じ側にある第2の側面部24及び円筒状又は円錐状の曲面33b,34bと同じ側にある第1の側面部23に設けられている。扁平帯状体2の上面及び底面の第2の側面部24は、傾斜角度θ4が左右2つの金型60,70の側部が向かう第1の開閉方向N1及び第2の開閉方向N2の傾斜角度θ3より大きい場合(即ち、θ4>θ3)、左右2つの金型60の第2の金型部材60b,70bが第1の金型部材60a,70aと一体結合し、左右2つの金型60,70が干渉せずに斜めに開閉するとともに、扁平帯状体2、スペーサ22、上仕切り部31、下仕切り部32及びホール21の射出成形を行うことができるため、左右2つの金型60,70により、転動体収容ベルト1を完全に射出成形することができる。
【0027】
(第3実施形態)
図10は、本発明の第3実施形態による転動体収容ベルトを示す模式図である。扁平帯状体2の上面及び底面が円柱状又は円錐状の曲面33b,34b側の第1の側面部23に位置し、左右2つの金型60,70を用いて上仕切り部31及び下仕切り部32に対応した球状カバー面33a,34aの一部の金型分割線PLを同一平面に成形するとき、左右2つの金型60,70を用いて第1の側面部23の第1の金型面63,73と金型分割線PLとを同一平面に成形するため、製作が容易となり、正確に開閉し、容易に射出成形を行うことができる。
【0028】
図4及び図5に示すように、転動体5は、扁平帯状体2のホール面35に収納され、上仕切り部31及び下仕切り部32の球状カバー面33a,34aの開口口径e1,e2が転動体直径φdより小さいため、扁平帯状体2のホール21の中へ確実に位置決めして保持することができる。
【0029】
図1及び図2に示すように、転動体5と、上仕切り部31及び下仕切り部32の円筒状又は円錐状の曲面33b,34bとの間に設けたオイル保存空間80には、潤滑油脂が保存されている。
【0030】
図11に示すように、直線案内機構(例えば、直線スライドレール)に使用する上述の転動体収容ベルト1は、ガイド体(例えば、スライドレール9)及びベース10を含む。スライドレール9は、少なくとも1つの第1の軌道91が側面に設けられている。ベース10は、スライドレール9上に跨いで配置され、第1の軌道91に対応するように第2の軌道101を設置し、ベース10の両端のそれぞれに端蓋11が設置されている。端蓋11は、少なくとも1つの折り返し路130を提供する。折り返し路130は、第2の軌道101の端部に一方の端部が接続され、ベース10が提供する回流直線路120と他方の端部が接続されている。第2の軌道101、折り返し路130及び回流直線路120は、循環路100を形成する。循環路100の中には、少なくとも1つの封止した案内溝110が配置されている。転動体収容ベルト1は、ホール21の中に配列した転動体5が直線案内機構の循環路100の中を転がりながら循環するとき、転動体収容ベルト1の扁平帯状体2の両側の少なくとも一側が案内溝110に位置してガイドされ、転動体収容ベルト1を正確な位置で移動させるとともに、第1の軌道91及び第2の軌道101の中で転動体5が転がることにより、スライドレール9上で第1の軌道91に沿ってベース10が無限に循環することができるようにする。
【0031】
循環路100は封止路であるため、2つ以上の部材から構成され、部材と部材との間の接続箇所(一般に、回流直線路120と折り返し路130との接続箇所)が設けられ、案内溝110の接続箇所の面取りを行うため、製作の誤差により接続箇所に段差又はバリが発生し易かった。転動体収容ベルト1と、ホール21の中に保持されている配列された転動体5とは、循環路100の中の案内溝110でガイドされるため、回流直線路120から折り返し路130に入るか、折り返し路130から回流直線路120に入る。そのため、転動体収容ベルト1は、案内溝110の扁平帯状体2の両側に位置する両端が、案内溝110と接する外側段差又はバリにより阻害される。
【0032】
図12に示すように、転動体収容ベルト1の扁平帯状体2の両端は、最前端に設けられた円柱面41を有する。扁平帯状体2の内面には、円柱面41の後ろに位置し、これと平らに接続した第1の凹部面42が設けられている。扁平帯状体2は、第1の凹部面42の箇所が薄くなっているため、内側に曲げ易い。図13に示すように、最前端に設けられた円柱面41が第1の位置P1にあり、案内溝110の直線折り曲げ箇所の外側が阻害されるとき、円柱面41が進み続けて第2の位置P2に達すると、円柱面41と障害物との接触角がさらに小さくなってスムーズに方向転換し、転動体収容ベルト1に対して障害物が発生させる抵抗力が低減する。円柱面41が前進し続けて第3の位置P3の位置に達すると、円柱面41が元の形状に回復し、循環路100が構成する部材の接合箇所が回流直線路120又は折り返し路130の箇所に位置したり、接合箇所のバリが大きすぎたりする場合、案内溝110の内側も、転動体収容ベルト1に対して案内溝110の扁平帯状体2の両側の両端をガイドして障害を発生させ、この際、扁平帯状体2のスペーサ22の外側面が有する第2の凹部面43が円柱面41に位置した後、これと平らに接続する。図14に示すように、前端に設けられた円柱面41は、案内溝110の内側に当たって阻害されると、円柱面41を外側に向けてスムーズに方向転換して通ることができる。また、部材の接合箇所の案内溝110の内側及び外側の両方が阻害され易い場合、第1の凹部面42及び第2の凹部面43を設けた場合、円柱面41を内側又は外側に曲げてスムーズに方向転換して通すことができる。
【0033】
当該分野の技術を熟知するものが理解できるように、本発明の好適な実施形態を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではない。本発明の主旨と領域を脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の特許請求の範囲は、このような変更や修正を含めて広く解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0034】
1 転動体収容ベルト
2 扁平帯状体
3 仕切り部
5 転動体
9 スライドレール
10 ベース
11 端蓋
21 ホール
22 スペーサ
23 第1の側面部
24 第2の側面部
31 上仕切り部
32 下仕切り部
33 平らな面
33a 球状カバー面
33b 曲面
34 平らな面
34a 球状カバー面
34b 曲面
35 ホール面
36 ホール断面の対角線
37 上カバー面
38 下カバー面
41 円柱面
42 第1の凹部面
43 第2の凹部面
60 金型
60a 第1の金型部材
60b 第2の金型部材
61 金型表面
63 第1の金型面
64 第2の金型面
70 金型
70a 第1の金型部材
70b 第2の金型部材
71 金型表面
73 第1の金型面
74 第2の金型面
80 オイル保存空間
91 第1の軌道
100 循環路
101 第2の軌道
110 案内溝
120 回流直線路
130 折り返し路
e1 開口口径
e2 開口口径
φd 転動体直径
N1 第1の開閉方向
N2 第2の開閉方向
S1 第3の開閉方向
S2 第4の開閉方向
P1 第1の位置
P2 第2の位置
P3 第3の位置
PL 金型分割線
V 垂直方向
H 水平方向
θ1 傾斜角度
θ2 傾斜角度
θ3 傾斜角度
θ4 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平帯状体及び多数の仕切り部を備える転動体収容ベルトであって、
前記扁平帯状体は、軸方向に配列されたホールを有し、前記ホール間には、2つの前記ホールをそれぞれ分離するスペーサが設けられ、
前記仕切り部は、前記スペーサに接続され、前記ホールは、前記扁平帯状体の垂直方向及び2つの仕切り部間にホール面が形成され、前記扁平帯状体の前記スペーサは、左右両側面をそれぞれ有する上面及び底面を有し、前記仕切り部は、上仕切り部及び下仕切り部を有し、前記扁平帯状体の前記スペーサの上面及び底面にそれぞれ接続され、前記上仕切り部及び前記下仕切り部と、前記ホールとが隣接する面は平らな面であり、前記平らな面の一部は球状カバー面であり、前記扁平帯状体上の前記ホール面と平らに接続され、前記ホール面が隣接した前記上仕切り部又は前記下仕切り部の前記球状カバー面と平らに接続して上カバー面又は下カバー面が形成され、前記球状カバー面は、開口を有し、前記平らな面の他の部分は前記球状カバー面の前記開口の接線方向に沿って曲面で外側に延伸され、前記上カバー面又は前記下カバー面の開口方向は、斜めに前記扁平帯状体の軸方向垂直面と軸方向横側面との間に設けられ、前記上仕切り部と前記下仕切り部の前記球状カバー面は、ずれるように左右にそれぞれ配置され、前記開口が互いに反対方向を向いていることを特徴とする転動体収容ベルト。
【請求項2】
前記曲面は、円筒面であることを特徴とする請求項1に記載の転動体収容ベルト。
【請求項3】
前記曲面は、円錐面であることを特徴とする請求項1に記載の転動体収容ベルト。
【請求項4】
扁平帯状体及び多数の仕切り部を備える転動体収容ベルトであって、
前記扁平帯状体は、軸方向に配列されたホールを有し、前記ホール間には、2つの前記ホールをそれぞれ分離するスペーサが設けられ、前記仕切り部は、前記スペーサに結合され、軸向きに配列した転動体は、前記ホールの中に位置し、前記仕切り部により離間されて前記ホールの中に保持され、
前記転動体収容ベルトは、前記扁平帯状体の両側に位置する両端面が円柱面であり、前記扁平帯状体の内側面又は外側面の少なくとも1つの凹部面が前記円柱面に位置した後、平らに接続されることを特徴とする転動体収容ベルト。
【請求項5】
請求項1に記載の転動体収容ベルトを製造する方法であって、
左右2つの金型を有する第1の金型部材は、球状カバー面の開口方向に沿って、斜めに開閉し、前記左右2つの金型を結合する第2の金型部材と結合し、射出成形を行い、前記左右2つの金型の第1の金型部材のそれぞれは、上仕切り部及び下仕切り部の平らな面、ホール及び一部の転動体収容ベルトを成形し、前記左右2つの金型の第2の金型部材は、前記転動体収容ベルトの残りの部分を成形し、前記左右2つの金型の第1の金型部材は、前記ホールの箇所に金型分割線が形成され、前記金型分割線の傾斜角度は、扁平帯状体の前記ホールの断面対角線の傾斜角より小さくなく、前記左右2つの金型の第1の金型部材の斜めの方向に開閉する傾斜角度は、前記金型分割線の傾斜角度より大きいことを特徴とする転動体収容ベルトの製造方法。
【請求項6】
前記左右2つの金型を有する第1の金型部材が斜めに開閉する傾斜角度は、前記転動体収容ベルトの前記扁平帯状体の前記球状カバー面側に位置する側面の傾斜角度より小さく、前記左右2つの金型の前記第2の金型部材と前記第1の金型部材とを一体に結合することを特徴とする請求項5に記載の転動体収容ベルトの製造方法。
【請求項7】
前記左右2つの金型の第1の金型部材の前記金型分割線と、前記扁平帯状体が位置する前記曲面側の側面とは同一平面であることを特徴とする請求項6に記載の転動体収容ベルトの製造方法。
【請求項8】
ガイド体及びベースを備える請求項1に記載の転動体収容ベルトを使用する直線案内機構であって、
前記ガイド体は、その一側に第1の軌道が設けられ、
前記ベースは、前記ガイド体上に跨いで配置され、前記第1の軌道に対応するように第2の軌道が配置され、前記第2の軌道上の両端にそれぞれ方向転換路が配置され、前記方向転換路の他方の端部には回流路が接続され、前記第2の軌道、前記方向転換路及び前記回流路により循環路が形成され、前記循環路の中に少なくとも1つの封止した案内溝が設けられ、
前記転動体収容ベルトの扁平帯状体の両側の少なくとも1つの側部は、前記案内溝の中に位置し、前記転動体収容ベルトのホールの中にそれぞれ転動体を配置し、前記転動体収容ベルト及び前記転動体は、前記循環路の中を転がりながら循環することを特徴とする転動体収容ベルトの直線案内機構。
【請求項9】
ガイド体及びベースを備える請求項4に記載の転動体収容ベルトを使用する直線案内機構であって、
前記ガイド体は、その一側に第1の軌道が設けられ、
前記ベースは、前記ガイド体上に跨いで配置され、前記第1の軌道に対応するように第2の軌道が配置され、前記第2の軌道上の両端にそれぞれ方向転換路が配置され、前記方向転換路の他方の端部には回流路が接続され、前記第2の軌道、前記方向転換路及び前記回流路により循環路が形成され、前記循環路の中に少なくとも1つの封止した案内溝が設けられ、
前記転動体収容ベルトの前記扁平帯状体の両側の少なくとも1つの側部は、前記案内溝の中に位置し、前記転動体収容ベルトの前記ホールの中にそれぞれ転動体を配置し、前記転動体収容ベルト及び前記転動体は、前記循環路の中を転がりながら循環することを特徴とする転動体収容ベルトの直線案内機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−137544(P2011−137544A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287102(P2010−287102)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(507095219)直得科技股▲ふん▼有限公司 (6)
【Fターム(参考)】