説明

転炉の炉修方法

【課題】転炉の炉底部のみを部分的に更新する炉修を行う際に、現場での炉修作業時間を最小限に抑え、炉修による転炉の休止期間を極力短くすることができる転炉の炉修方法を提供する。
【解決手段】炉体を切断して炉胴部xから炉底部yを切り離した後、新炉底部yを炉胴部xに接合することにより、転炉の炉底部のみを更新するに際し、仮決めした切断位置やその周辺の炉体外面の3次元形状を3次元測定装置で測定し、その3次元形状測定結果が反映された新炉底部yの製作、最終的な切断位置の決定、必要に応じた新炉底部yの追加工を行う。これにより、旧炉体である炉胴部xと新炉底部yとの肌合わせ面に大きな目違いを生じることがなく、肌合わせ面の目違いを修正するための現地での追加工作業が不要になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉において、炉体を切断して炉胴部から炉底部を切り離した後、新作の炉底部を旧炉体である炉胴部に接合することにより、炉底部のみを部分的に更新する炉修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鋼用の転炉は、特に炉底部が摩耗しやすいため、一定の期間使用すると炉修が行われる。最近の転炉では、炉体を上下方向で2〜3分割して各部分を適宜交換できるようにした構造ものがあり(例えば、特許文献1〜3)、このような構造の転炉では、炉底部を構成する炉体部分のみを交換するだけで、簡単且つ短時間で炉底部を更新する炉修を完了することができる。
しかし、旧来使用されてきた一体構造型の転炉において炉底部を更新する場合には、炉体を切断して炉底部を炉胴部から切り離し、新たに製作した炉底部を旧炉体である炉胴部に接合する炉修を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−235209号公報
【特許文献2】特開平8−233466号公報
【特許文献3】特開平11−61224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような一体構造型の転炉の炉底部を部分的に更新する炉修では、長年の使用によって膨らみ(周長変化)を生じた旧炉体である炉胴部と新作の炉底部との肌合わせ面に大きな目違いを生じることが多く、この目違いを修正するための現場での施工(追加工作業)に多大な時間がかかる。そのため炉修作業に長時間を要し、転炉の休止期間が長期化するという問題があった。
したがって本発明の目的は、転炉の炉底部のみを部分的に更新する炉修を行う際に、現場での炉修作業時間を最小限に抑え、炉修による転炉の休止期間を極力短くすることができる転炉の炉修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]炉体を切断して炉胴部(x)から炉底部(y)を切り離した後、新炉底部(y)を前記炉胴部(x)に接合することにより、転炉の炉底部のみを更新する方法であって、
炉胴部(x)から炉底部(y)を切り離す切断位置(p0)を仮決めし、3次元測定装置により前記切断位置(p0)の炉体外面の3次元形状を測定する工程(A)と、
該工程(A)における炉体外面の3次元形状測定結果に基づいて、新炉底部(y)を製作する工程(B)と、
炉体を切断して炉胴部(x)から炉底部(y)を切り離す直前に、3次元測定装置により前記切断位置(p0)及びその周辺の炉体外面の3次元形状を測定し、この炉体外面の3次元形状測定結果と新炉底部(y)の形状を考慮して切断位置(p)を決定する工程(C)と、
該工程(C)で決定された切断位置(p)で炉体を切断して炉胴部(x)から炉底部(y)を切り離した後、新炉底部(y)を炉胴部(x)に接合する工程(D)を有することを特徴とする転炉の炉修方法。
【0006】
[2]上記[1]の炉修方法において、さらに、工程(C)と工程(D)との間に、工程(C)で決定された切断位置(p)での炉胴部(x)側の形状に合わせて新炉底部(y)を追加工する工程(E)を有することを特徴とする転炉の炉修方法。
[3]上記[2]の炉修方法において、工程(B)で製作された新炉底部(y)について、炉胴部(x)と接合される部分の外面の3次元形状を3次元測定装置により測定し、工程(E)では、該3次元形状測定結果と工程(C)で得られた切断位置(p0)及びその周辺の炉体外面の3次元形状測定結果とを対比して、接合される炉胴部(x)と新炉底部(y)との肌合わせ面の目違いが最小になるように、新炉底部(y)を追加工することを特徴とする転炉の炉修方法。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの炉修方法において、工程(B)では、炉高方向で複数の構成部材に分割された新炉底部(y)を製作することを特徴とする転炉の炉修方法。
[5]上記[4]の炉修方法において、新炉底部(y)は上側構成部材(yN1)と下側構成部材(yN2)とに2分割されたものであることを特徴とする転炉の炉修方法。
[6]上記[4]又は[5]の炉修方法において、工程(E)では、新炉底部(y)の構成部材のうち、炉高方向で最上部の構成部材のみを追加工することを特徴とする転炉の炉修方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の転炉の炉修方法によれば、炉体を切断して炉胴部(x)から炉底部(y)を切り離した後、新炉底部(y)を前記炉胴部(x)に接合することにより、転炉の炉底部のみを更新するに際し、仮決めした切断位置(p0)やその周辺の炉体外面の3次元形状を3次元測定装置で測定し、その3次元形状測定結果を新炉底部(y)の製作と最終的な切断位置(p)の決定に、さらには切断位置決定後の新炉底部(y)の追加工に反映させるようにしたので、旧炉体である炉胴部(x)と新炉底部(y)との肌合わせ面に大きな目違いを生じることがなく、このため肌合わせ面の目違いを修正するための現場での追加工作業が不要となる。これにより、現場での施工時間が大幅に短縮化され、転炉の生産休止期間も大幅に短縮することができる。
【0008】
また、新炉底部(y)について、炉胴部(x)と接合される部分の外面の3次元形状を3次元測定装置で測定し、この3次元形状測定結果と切断位置(p0)及びその周辺の炉体外面の3次元形状測定結果とを対比して、接合される炉胴部(x)と新炉底部(y)との目違いが最小になるように、新炉底部(y)を追加工することにより、炉胴部(x)と新炉底部(y)との肌合わせ面の目違いをより小さくすることができ、また、新炉底部(y)の追加工自体も高精度且つ短時間に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】炉底部の更新が必要となった転炉について、レーザー距離計により測定した炉底部の内径を設計寸法と対比して示す図面
【図2】図1に示される炉底部の内径の測定位置を示す説明図
【図3】レーザースキャナーよる炉体外面(仮決めした切断位置周辺の炉体外面)の3次元形状の測定状況を示す説明図
【図4】図3の測定により得られた炉体外面の3次元形状の一例を示す図面
【図5】図3の測定により判明した炉底下部溶接線の変位を示す図面
【図6】新炉底部yの一実施形態を示す斜視図
【図7】新炉底部yの製作工程において、追加工前後の形状を示す図面
【図8】新炉底部yの他の実施形態を示す斜視図
【図9】レーザースキャナーにより測定された新炉底部yの接合部分sの3次元形状を示す図面
【図10】工程(C)から工程(D)までの手順を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の転炉の炉修方法は、炉体を切断して炉胴部xから炉底部yを切り離した後、新炉底部yを前記炉胴部xに接合することにより、転炉の炉底部のみを更新するに際し、炉体外面の3次元形状を測定することができる3次元測定装置を用い、仮決めされた切断位置p0やその周辺の炉体外面の3次元形状を測定し、その測定結果を、新炉底部yの製作と最終的な切断位置pの決定に、さらには切断位置決定後の新炉底部yの追加工に反映させることにより、炉胴部x(旧炉体)と新炉底部yとの肌合わせ面の目違いを最小限にし、肌合わせ面の目違いを修正するための現場での追加工作業を実施しなくても済むようにしたものである。すなわち、本発明は下記工程(A)〜(D)を有し、さらに必要に応じて、工程(C)と工程(D)との間に下記工程(E)を有する。
ここで、転炉は鉄皮(鋼製の外殻)とこれに内張りされる耐火物とからなるが、本発明が対象とする炉体及び炉胴部・炉底部とは鉄皮のことである。
【0011】
工程(A):炉胴部xから炉底部yを切り離す切断位置p0を仮決めし、3次元測定装置により前記切断位置p0の炉体外面の3次元形状を測定する。
工程(B): 工程(A)における炉体外面の3次元形状測定結果に基づいて、新炉底部yを製作する。ここで、「新炉底部yを製作する」とは、予め作り置いた新炉底部のベース材(設計図面どおりに製作したもの)に対して、部分加工のみ施すような場合を含む。
工程(C): 炉体を切断して炉胴部xから炉底部yを切り離す直前に、3次元測定装置により前記切断位置p0及びその周辺の炉体外面の3次元形状を測定し、この炉体外面の3次元形状測定結果と新炉底部yの形状を考慮して最終的な切断位置pを決定する。
工程(D):工程(C)で決定された切断位置pで炉体を切断して炉胴部xから炉底部yを切り離した後、新炉底部yを炉胴部xに接合する。
工程(E):工程(C)で決定された切断位置pでの炉胴部x側の形状に合わせて新炉底部yを追加工する。
【0012】
図1は、炉底部の更新が必要となった転炉について、炉体の変形状況を調べた結果を示すものである。図2に示すような炉底部の切り離し位置(切断位置)近傍となる炉体高さ方向の2つの位置a,b(a:炉体底面から2083mm高さ位置、b:炉体底面から1690mm高さ位置)で、一般的なレーザー距離計により炉体の内径を測定し、その結果を設計寸法と比較して示したものである。これによると、測定された炉体の寸法は、設計寸法に対して200mm以上の偏差(膨らみ)が見られる。炉底部の更新では、このような膨らみ(周長変化)を伴った旧炉体である炉胴部と新作された炉底部との肌合せが課題となる。そこで、本発明では、上述したように仮決めされた切断位置pの3次元形状を3次元測定装置で測定し、その測定結果を、新炉底部yの製作と最終的な切断位置pの決定、さらには切断位置決定後の新炉底部yの追加工に反映させ、肌合わせ面の目違いを最小限に抑えるものである。
【0013】
以下、本発明を構成する工程(A)〜(D)と、工程(C)−(D)間で必要に応じて行われる工程(E)について、順に説明する。
・工程(A)
この最初の工程では、炉体を切断して炉胴部xから炉底部yを切り離す切断位置pを仮決めし、3次元測定装置(3次元形状測定装置)を用いてその切断位置pの炉体外面の3次元形状を測定する。ここでは、少なくとも切断位置pの炉体外面の3次元形状が測定すればよいが、必要であれば、その周辺の炉体外面についても3次元形状を測定してもよい。
3次元測定装置としては、炉体外面の3次元形状を測定できるものであれば、その種類を問わないが、一般にはレーザースキャナーが用いられるので、ここではレーザースキャナーを用いる場合を例に説明する。
【0014】
図3は、レーザースキャナー2による炉体外面の3次元形状(炉体プロフィール)の測定状況を示している。図において、pは仮決めされた切断位置、xは炉胴部、yはこの炉胴部xから切り離される炉底部である。炉体外面の3次元形状を炉体周方向(360°)で正確に測定するには、図に示すように、炉体周方向複数個所(通常、3〜4箇所)でレーザースキャナー2による測定を行う必要がある。このためレーザースキャナー2を炉体周方向で何箇所かに移動させ、測定を行う。そして、その炉体周方向複数個所の測定データを結合(合成)することで、炉体全周のデータ(3次元形状)を得ることができる。
【0015】
レーザースキャナー2には種々のタイプがあり、例えば、基準点を設定して測定を行うタイプのものでは、下記(1)、(2)の点に配慮して測定を行うことが好ましい。
(1)基準点が必ず計測視野に入ること
(2)レーザー光が被測定対象物から反射して戻ってくる範囲が、測定後に重ね合わせたデータで十分に重複していること
これらの点を測定に反映させないと、データにノイズが混入したり、360°正確な測定値が得られない場合がある。
【0016】
図3のようにレーザースキャナー2で測定し、その測定データに基づき得られた切断位置pの3次元形状測定結果の一例を図4に示す。なお、図4の縦軸の「基準円」とは設計値を意味する。また、図中にレーザー距離計(従来法)による測定データ(2点)を示す。この測定例において、溶接線高さ+595mm(切断位置pに相当する位置)でのプロフィールを見ると、排滓側に280mm、出鋼側に137mmの膨らみが見られ、直径では417mm程度の膨らみになる。炉内側を測定したレーザー距離計との計測差は約51mm(=417mm−366mm)である。また、図5に示すように、出鋼側・排滓側で炉底下部溶接線が基準位置から55mm下降していることが確認できた。
【0017】
・工程(B)
この工程では、上記工程(A)での炉体外面の3次元形状測定結果に基づいて、製作工場にて新炉底部yを製作する。ここでは、更新される炉底部yが仮決めされた切断位置pで切り離されることを前提として、新炉底部yを製作する。
図6は、製作された新炉底部yの一実施形態を示しており、sが炉胴部(旧炉体)側との接合される部分(以下、説明の便宜上「接合部分s」という)である。通常、新炉底部yを製作する場合、図7(ア)に示すように、まず設計図通りの炉底部(例えば、円形の炉底部)を作り、次いで、図7(イ)に示すように、この炉底部の接合部分s側だけを炉胴部(旧炉体)側と周長を合わせながら、炉胴部x(旧炉体)側との肌合わせ面の目違いが最小になるように、プレス加工などにより加工(例えば、円形を異円形に加工)する。これにより、旧炉体側の膨らみ(周長変化)を伴った炉胴部xと新炉底部yとの肌合わせが可能となる。
なお、さきに述べたように、「新炉底部yを製作する」とは、予め作り置いた新炉底部のベース材に対して部分加工のみを施すような場合を含む。
【0018】
新炉底部yは、これを一体で製作してもよいが、膨らみのある炉胴部x(旧炉体)側の形状に合わせて、単一の新炉底部yを加工することが困難である場合には、炉高方向で複数の構成部材に分割された新炉底部yを製作し、炉高方向で最上部の構成部材(構成部材の接合部分s)のみを炉胴部x(旧炉体)側の形状に合わせて加工するようにしてもよい。この場合、新炉底部yの構成部材の数は任意である。図8は、上側構成部材yN1と下側構成部材yN2に2分割された新炉底部yの一実施形態を示したものであり、この場場合には、上側構成部材yN1の接合部分sを炉胴部x(旧炉体)側の形状に合わせて加工する。
以上のように炉高方向で複数の構成部材に分割された新炉底部yを製作し、炉高方向で最上部の構成部材(構成部材の接合部分s)のみを炉胴部x(旧炉体)側の形状に合わせて加工するのは、下側構成部材yN2のような有底の部材よりも上側構成部材yN1のようなリング状の部材の方が、接合部分sの加工(例えば、円形から異円形への加工)が容易であるからである。後に下側構成部材yN2と接合される上側構成部材yN1の下端側は加工されないため、基本的には下側構成部材yN2との目違いは生じない。仮に上側構成部材yN1の加工により多少の目違いが生じたとしても、その程度の目違いは上側構成部材yN1と下側構成部材yN2との接合の支障にはならない。
【0019】
また、このように新炉底部yを複数の構成部材に分割して製作する方法では、炉底部の更新直前に新炉底部yを追加工する場合(すなわち、後述の工程(E)を行う場合)も、最上部の構成部材(図8では上側構成部材yN1)の接合部分sだけを追加工すればよい。
図9は、新炉底部yの接合部分sについて、レーザースキャナーで測定した周方向の3次元形状の一例を示している。この新炉底部yの3次元形状も、前記工程(A)で用いた3次元測定装置と手法を用いて測定する。このような新炉底部yの接合部分sの3次元形状を測定しておくことにより、その3次元形状測定結果を次の工程(C)での切断位置に決定と新炉底部yの追加工に反映させることができ、追加工を高精度且つ短時間で行うことができる。
【0020】
・工程(C),(E)
この工程(C)では、炉体を切断して炉胴部xから炉底部yを切り離す直前に、3次元測定装置により前記切断位置p周辺の炉体外面の3次元形状を測定し、この炉体外面の3次元形状測定結果と新炉底部yの形状(例えば、図9に示す3次元形状)を考慮して、最終的に切断位置pを決定する。
すなわち、工程(A)は転炉が稼働していない時に実施する必要があるが、転炉の稼働を一時的に休止できるタイミングは常にある訳ではないので、工程(A)は実施できる時に実施しておく必要がある。また、工程(A)の測定結果に基づいて行われる新炉底部yの製作にも相当な期間を要する。このため工程(A)で炉体外面の3次元形状を測定してから、実際に炉体の切断(炉底部yの切り離し)を行うまでに長期間(例えば、数ヶ月〜半年程度)を要することが多く、その場合、工程(A)で測定したときから炉体の膨らみが変化していることがある。このため、再度切断位置p及びその周辺の炉体外面の3次元形状を測定する。そして、測定された炉体外面の3次元形状測定結果と新炉底部yの形状を考慮し、新炉底部yを接合するのに最も適した切断位置pを決める。当然に、切断位置p=切断位置pの場合もある。この工程での炉体外面の3次元形状の測定は、前記工程(A)で用いた3次元測定装置と手法を用いて行われる。
【0021】
なお、炉胴部xから炉底部yを切り離す「直前」に3次元形状の測定を行うとは、「3次元形状の測定」が、「炉底部yの切り離し」との間で、炉体の膨らみが変化(さらなる追加工が必要になるほどの変化)しない程度の時間間隔で実施されることを意味し、したがって、工程(C)での3次元形状の測定後、必要に応じて製作工場で新炉底部yの追加工を行い(=工程(E))、その後速やかに工程(D)に移行すればよい。一般的な作業スケジュールから言うと、工程(C)での3次元形状の測定から1〜2ヶ月以内程度で工程(D)に移行する。
【0022】
上記のように切断位置pを決めた段階で、さらに、切断位置pでの炉胴部x側の形状に合わせて新炉底部yを追加工する必要が生じた場合には、工程(E)として、製作工場においてプレス加工などにより接合部分sの追加工を行う。この際、3次元測定装置で測定された新炉底部yの接合部分sの3次元形状測定結果を利用することができる。すなわち、その3次元形状測定結果と工程(C)で得られた切断位置p0及びその周辺の炉体外面の3次元形状測定結果とを対比して、接合される炉胴部xと新炉底部yとの目違いが最小になるように、新炉底部yを追加工することにより、炉胴部xと新炉底部yとの肌合わせ面の目違いをより小さくでき、また、追加工自体も高精度且つ短時間で行うことができる。これにより、例えば、炉胴部x(旧炉体)側との肌合わせ面の目違いが10mm以下になるような追加工精度を確保することが可能となる。
また、新炉底部yが炉高方向で複数の構成部材に分割されたものである場合には、最上部の構成部材だけを追加工すればよく、図8のように新炉底部yが上側構成部材N1と下側構成部材yN2とに2分割されたものである場合には、上側構成部材yN1だけを追加工すればよい。
【0023】
・工程(D)
図10(ア)〜(ウ)に示すように、工程(C)で決定された切断位置pで炉体を切断して炉胴部xから炉底部yを切り離した後、新炉底部yを炉胴部xに接合する。通常、炉体の切断はガス溶断により行われ、また、新炉底部yは炉胴部xに溶接により接合される。新炉底部yを炉胴部xに接合する際、炉胴部x(旧炉体)と新炉底部yの肌合わせが行われるが、炉体外面の3次元形状測定結果が反映された新炉底部yの製作、切断位置pの決定、さらに新炉底部yの追加工がなされているので、炉胴部x(旧炉体)と新作の炉底部yの目違いを最小限に抑えることができ、肌合わせ面の目違いを修正するための現場での追加工作業は不要である。
【0024】
以上説明したように本発明の炉修方法は、炉体を切断して炉胴部xから炉底部yを切り離した後、新炉底部yを前記炉胴部xに接合することにより、転炉の炉底部のみを更新するに際し、仮決めした切断位置p0やその周辺の炉体外面の3次元形状を3次元測定装置で測定し、その3次元形状測定結果が反映された新炉底部yの製作と最終的な切断位置pの決定、さらには切断位置決定後の新炉底部yの追加工がなされるので、旧炉体である炉胴部xと新炉底部yとの肌合わせ面に大きな目違いを生じることがない。このため肌合わせ面の目違いを修正するための現場での追加工作業が不要となり、現場での施工時間が大幅に短縮化される。また、新炉底部yについて、炉胴部xと接合される部分の外面の3次元形状を3次元測定装置により測定し、この3次元形状測定結果と切断位置p0及びその周辺の炉体外面の3次元形状測定結果とを対比して、接合される炉胴部xと新炉底部yとの肌合わせ面の目違いが最小になるように、新炉底部yを追加工することにより、炉胴部xと新炉底部yとの肌合わせ面の目違いをより小さくすることができ、また、新炉底部yの追加工自体も高精度且つ短時間に行うことができる。
【符号の説明】
【0025】
1 炉体
2 レーザースキャナー
,p 切断位置
x 炉胴部
炉底部
新炉底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体を切断して炉胴部(x)から炉底部(y)を切り離した後、新炉底部(y)を前記炉胴部(x)に接合することにより、転炉の炉底部のみを更新する方法であって、
炉胴部(x)から炉底部(y)を切り離す切断位置(p0)を仮決めし、3次元測定装置により前記切断位置(p0)の炉体外面の3次元形状を測定する工程(A)と、
該工程(A)における炉体外面の3次元形状測定結果に基づいて、新炉底部(y)を製作する工程(B)と、
炉体を切断して炉胴部(x)から炉底部(y)を切り離す直前に、3次元測定装置により前記切断位置(p0)及びその周辺の炉体外面の3次元形状を測定し、この炉体外面の3次元形状測定結果と新炉底部(y)の形状を考慮して切断位置(p)を決定する工程(C)と、
該工程(C)で決定された切断位置(p)で炉体を切断して炉胴部(x)から炉底部(y)を切り離した後、新炉底部(y)を炉胴部(x)に接合する工程(D)を有することを特徴とする転炉の炉修方法。
【請求項2】
さらに、工程(C)と工程(D)との間に、工程(C)で決定された切断位置(p)での炉胴部(x)側の形状に合わせて新炉底部(y)を追加工する工程(E)を有することを特徴とする請求項1に記載の転炉の炉修方法。
【請求項3】
工程(B)で製作された新炉底部(y)について、炉胴部(x)と接合される部分の外面の3次元形状を3次元測定装置により測定し、工程(E)では、該3次元形状測定結果と工程(C)で得られた切断位置(p0)及びその周辺の炉体外面の3次元形状測定結果とを対比して、接合される炉胴部(x)と新炉底部(y)との肌合わせ面の目違いが最小になるように、新炉底部(y)を追加工することを特徴とする請求項2に記載の転炉の炉修方法。
【請求項4】
工程(B)では、炉高方向で複数の構成部材に分割された新炉底部(y)を製作することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の転炉の炉修方法。
【請求項5】
新炉底部(y)は上側構成部材(yN1)と下側構成部材(yN2)とに2分割されたものであることを特徴とする請求項4に記載の転炉の炉修方法。
【請求項6】
工程(E)では、新炉底部(y)の構成部材のうち、炉高方向で最上部の構成部材のみを追加工することを特徴とする請求項4又は5に記載の転炉の炉修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−193433(P2012−193433A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59506(P2011−59506)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】