説明

転炉炉体の熱変形量測定方法

【課題】炉体内に溶鋼が入っているときでも炉体の熱変形量を正確に測定することのできる転炉炉体の熱変形量測定方法を提供する。
【解決手段】炉体1の外周に設けられたトラニオンリング2にレーザー距離計6を設け、このレーザー距離計6から炉体1の外表面にレーザー光線を照射して炉体1の熱変形量を測定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉炉体の熱変形量を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼を製鋼するときに用いられる転炉は、一般に、転炉鉄皮の内面に耐火物層を有する炉体と、この炉体の外周に設けられたトラニオンリングと、このトラニオングリングを介して炉体を傾動可能に支持するトラニオン軸とを備えた構成となっており、このような転炉の炉体内に溶鋼が投入されると、炉体が外径方向に熱変形することによって炉体とトラニオンリングとの間に形成された隙間が小さくなる。そして、炉体とトラニオンリングとの間に形成された隙間が炉体の熱変形によってさらに小さくなり、トラニオンリングに炉体が接触する事態に至ると、リングの損傷による炉体支持不能などを引き起こす原因となるため、炉体の熱変形量を定期的に測定してトラニオンリングに炉体が接触しないようにする必要がある。
炉体の熱変形量を測定する場合、従来においては、測定具として例えば隙間ゲージを用い、これを炉体とトラニオンリングとの間に挿入して炉体の熱変形量を測定する方法が採られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した方法は転炉の運転休止中に行われるため、炉体内に溶鋼が入っているときの炉体の熱変形量との間に大きな誤差が生じ、稼動時における炉体の熱変形量を正確に測定することができないという問題があった。
本発明は上述した問題点に着目してなされたものであり、その目的は、炉体内に溶鋼が入っているときでも炉体の熱変形量を正確に測定することのできる転炉炉体の熱変形量測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために、本発明のうち請求項1の発明に係る転炉炉体の熱変形量測定方法は、炉体と、該炉体の外周に設けられたトラニオンリングと、該トラニオンリングを傾動可能に支持するトラニオン軸とを備えてなる転炉において、前記トラニオンリングにレーザー距離計を設け、該レーザー距離計から前記炉体の外表面にレーザー光線を照射して前記炉体の熱変形量を測定するようにしたことを特徴とする。
本発明のうち請求項2の発明に係る転炉炉体の熱変形量測定方法は、請求項1記載の転炉炉体の熱変形量測定方法において、前記レーザー距離計を輻射熱から保護するレーザー距離計保護ケース内に冷却用ガスを供給しながら前記炉体の熱変形量を測定するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明に係る転炉炉体の熱変形量測定方法では、トラニオンリングに設けられたレーザー距離計から炉体の外表面にレーザー光線を当てることによって、炉体とトラニオンリングとの間に形成された隙間の大きさを測定することが可能となる。これにより、炉体とトラニオンリングとの間に形成された隙間の大きさを測定する測定具として隙間ゲージを用いる必要がないので、炉体内に溶鋼が入っているときでも炉体の熱変形量を正確に測定することができる。
請求項2の発明に係る転炉炉体の熱変形量測定方法では、炉体からの輻射熱による影響を低減できるので、上述した効果に加え、常温で動作する市販のレーザー距離計を用いても転炉炉体の熱変形量を正確に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1において、符号1は転炉鉄皮1aの内面に耐火物層1bを形成してなる炉体、2は炉体1の外周に設けられたトラニオンリング、3はトラニオンリング2を介して炉体1を傾動可能に支持するトラニオン軸であり、トラニオンリング2には、複数の孔4(図では一つのみを図示)がトラニオンリング2の円周方向に間隔をおいて設けられている。
【0007】
トラニオンリング孔4はトラニオンリング2の径方向に貫通しており、これらのトラニオンリング孔4が開口するトラニオンリング2の外周面には、トラニオンリング孔4からの輻射熱を遮蔽する複数の輻射熱遮蔽板5がトラニオンリング孔4の一部を閉塞するように固設されている。また、トラニオンリング孔4は炉体1の外表面に向けて開口しており、これらのトラニオンリング孔4の一つには、炉体1とトラニオンリング2との間に形成された隙間の大きさを光学的に測定するギャップ量測定手段としてのレーザー距離計6が、このレーザー距離計6を輻射熱から保護するレーザー距離計保護ケース7内に収容された状態で設けられている。なお、輻射熱遮蔽板5は、トラニオンリング孔4内に空気が篭るのを避けるために、その高さh(図3参照)がトラニオンリング孔4の直径より小さい高さ(例えばトラニオンリング孔4の直径の1/2〜3/4程度)となっている。
【0008】
レーザー距離計6は図示しない炉体熱変形量計算装置にケーブル8を介して接続されており、このレーザー距離計6から出力された信号は炉体熱変形量計算装置に供給されるようになっている。また、レーザー距離計6はレーザー距離計保護ケース7内に設けられたアングル9(図4参照)に止めねじ10によって固定されており、アングル9はボルト11とナット12によってレーザー距離計保護ケース7に固定されている。なお、ケーブル8はトラニオンリング2に付設された電線管13(図2参照)内を挿通して炉体熱変形量計算装置に接続されている。
【0009】
レーザー距離計保護ケース7は円筒状をなす金属製のケース本体7a(図3参照)と、このケース本体7aの前端開口部と後端開口部をそれぞれ閉塞する二つの端板7b,7cとを有して構成されており、これらの端板7b,7cのうちケース本体7aの後端開口部を閉塞する端板7cには、レーザー距離計保護ケース7内に冷却用空気を導入する冷却用空気導入管14が接続されている。一方、ケース本体7aの前端開口部を閉塞する端板7bには、レーザー距離計6からのレーザー光線を炉体1の外表面に照射するためのレーザー照射窓15が所定位置に形成されていると共に多数の通気孔16が形成されている。
【0010】
このような構成において、レーザー距離計6から炉体1の外表面にレーザー光線を照射すると、炉体1とトラニオンリング2との間に形成された隙間のギャップ量がレーザー距離計6によって測定される。このとき、レーザー距離計6で測定されたギャップ量は図示しない炉体熱変形量計算装置に供給され、ここで炉体1の熱変形量が計算される。したがって、上述した第1の実施形態では、炉体1とトラニオンリング2との間に形成された隙間の大きさを測定する測定具として隙間ゲージを用いる必要がないので、炉体1内に溶鋼が入っているときでも炉体1の熱変形量を正確に測定することができる。
【0011】
また、稼動時における転炉炉体の熱変形量をリアルタイムで測定できるので、炉体設計に有効なデータを得ることができる。
さらに、冷却用空気導入管14からレーザー距離計保護ケース7内に供給される冷却用空気によってレーザー距離計保護ケース7の内部がほぼ常温に保たれ、炉体1からの輻射熱による影響を低減できるので、常温で動作する市販のレーザー距離計を用いて転炉炉体の熱変形量を測定することができる。
上述した第1の実施形態では、冷却用空気導入管14からレーザー距離計保護ケース7内に冷却用空気を供給してレーザー距離計6の熱的損傷を防止するようにしたが、レーザー距離計保護ケース7内に供給される冷却媒体は空気に限られるものではなく、例えば空気の代わりに窒素ガスを用いてもよい。
【0012】
また、上述した第1の実施形態では、レーザー距離計6を輻射熱から保護するレーザー距離計保護ケース7の端板7bに多数の通気孔16を設けたものを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図5に示すように、レーザー距離計保護ケース7のケース本体7aに開口部17を設け、この開口部17から冷却用空気を排出するようにしてもよい。
さらに、図5に示すように、レーザー距離計保護ケース7のレーザー照射窓15に赤外線フィルム18を取り付けることにより、炉体1からの輻射熱がレーザー照射窓15を通じてレーザー距離計保護ケース7内に入り込むことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】転炉の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】レーザー距離計保護ケースの変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0014】
1 炉体
1a 転炉鉄皮
1b 耐火物層
2 トラニオンリング
3 トラニオン軸
4 トラニオンリング孔
6 レーザー距離計
7 レーザー距離計保護ケース
14 冷却用空気導入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体と、該炉体の外周に設けられたトラニオンリングと、該トラニオンリングを傾動可能に支持するトラニオン軸とを備えてなる転炉において、前記トラニオンリングにレーザー距離計を設け、該レーザー距離計から前記炉体の外表面にレーザー光線を照射して前記炉体の熱変形量を測定するようにしたことを特徴とする転炉炉体の熱変形量測定方法。
【請求項2】
請求項1記載の転炉炉体の熱変形量測定方法において、前記レーザー距離計を輻射熱から保護するレーザー距離計保護ケース内に冷却用ガスを供給しながら前記炉体の熱変形量を測定するようにしたことを特徴とする転炉炉体の熱変形量測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−262517(P2007−262517A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90826(P2006−90826)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】