説明

転相温度乳化装置及び乳化方法

【課題】連続的に安定な微細エマルションを調製することのできる装置及び方法を提供する。
【解決手段】転相温度乳化装置1は、連続相となる第1の液体を導入するための第1入口ポート2、分散相となる第2の液体を導入するための第2入口ポート3、これら第1及び第2入口ポートに連通し、導入された二液を合流させて第1の液体中に第2の液体が分散したエマルションを調製するマイクロ流路6、及びマイクロ流路6に連通しエマルションを回収するための出口ポート4とを具える合流マイクロリアクタユニット5と、エマルションを転相温度以上に加熱する少なくとも1つの加熱マイクロリアクタユニット9と、加熱されたエマルションを転相温度以下に冷却する少なくとも1つの冷却マイクロリアクタユニット10とを積層してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイクロリアクタを用いた乳化、特には転相温度乳化を行う装置及び方法に関するものであり、得られるエマルション径の微細化を図る。
【背景技術】
【0002】
水中油滴(O/W型)エマルションは、塗料や化粧品、食品などの分野に用いられ、微粒子調製やマイクロカプセル調製において基本となる分散系である。エマルションの調製法としては、攪拌翼やホモジナイザーによる機械的攪拌が一般的であるが、これらの方法で得られるエマルションは多分散であるため、調製後の分級操作の必要性や安定性の問題が生じることが知られている。このような背景から、単分散エマルション調製が可能な方法が近年注目を集めている。
【0003】
単分散エマルション調製の代表的な方法としては、例えば非特許文献1〜4に記載されているような、SPG膜乳化法、マイクロチャネル乳化法、マイクロ流路分岐乳化法等が知られている。
【0004】
【非特許文献1】H. Yoshizawa et al., Col. Polym. Sci. 282 (2004) 965-971
【非特許文献2】Y. Hatake et al., J. Appl. Polym. Sci. 64 (1997) 1107-1113
【非特許文献3】H. Yoshizawa et al., J. Chem. Eng. Japan, 29 (1996) 1027-1029
【非特許文献4】S. Sugiura et al., J. Colloid Interface Sci. 227 (2000) 95-103
【0005】
また、微細なエマルションを得る方法としては、転相乳化法が知られている。転相乳化法は、目的とする型と反対の型のエマルションを調製しておき、分散質濃度の増加、温度の加温や冷却などの操作により臨界点に達した時に転相させて目的とする型のエマルションを調製するものである。かかる転相乳化法の具体例としては、例えば特許文献1に、ポリグリセリンエステルとアルキルポリグリコシドを油性剤に溶解又は分散させた油相を転相温度以上に加熱して撹拌し乍ら、同じ温度に加熱した水相を徐々に加えて乳化せしめ、転相温度以下に冷却して転相させる水中油型乳化物の製造方法が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−308822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1〜4に記載されているような単分散エマルション調製法では、得られるエマルション径は最小でも10μm程度であり、より微細なエマルションを得ることのできる技術が要求されている。また、特許文献1に記載されているような転相乳化法は、一般にバッチ単位での処理であり、初期乳化工程とは別に、初期乳化後のエマルションを加熱し冷却する工程が必要となるが、この加熱冷却には時間を要することから、熱履歴の影響により製品の品質やエマルションの安定性に悪影響を及ぼすおそれがあった。
【0008】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、連続的に安定な微細エマルションを調製することのできる装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、この発明の転相温度乳化装置は、連続相となる第1の液体を導入するための第1入口ポート、分散相となる第2の液体を導入するための第2入口ポート、これら第1及び第2入口ポートに連通し、導入された二液を合流させて第1の液体中に第2の液体が分散したエマルションを調製するマイクロ流路、及び該マイクロ流路に連通し前記エマルションを回収するための出口ポートとを具える合流マイクロリアクタユニットと、前記エマルションを転相温度以上に加熱する少なくとも1つの加熱マイクロリアクタユニットと、前記加熱されたエマルションを転相温度以下に冷却する少なくとも1つの冷却マイクロリアクタユニットとを積層してなるものである。かかる構成を採用することにより、設置面積を小さくしながらも、熱制御性が高まり、エマルションの加熱及び冷却を迅速に行うことが可能となる。
【0010】
また、この装置では、マイクロ流路はY字状に形成されており、第1入口ポートに連通する流路部と第2入口ポートに連通する流路部のなす角が0度より大きく90度より小さいことが好ましく、30度〜60度の範囲内とすることがさらに好ましい。
【0011】
さらに、マイクロ流路中の第1及び第2の液体の流れが層流となることが好ましい。
【0012】
さらにまた、マイクロ流路は、第1入口ポートに連通する流路部の幅が第2入口ポートに連通する流路部の幅よりも大きいことが好ましい。
【0013】
加えて、加熱マイクロリアクタユニットの出口温度とエマルションの転相温度の差が10〜30℃の範囲内にあることが好ましく、15〜25℃の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0014】
また、冷却マイクロリアクタユニットの出口温度が10℃〜室温(25℃)の範囲内にあることが好ましく、10〜20℃の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0015】
さらに、加熱リアクタユニットと冷却リアクタユニットとの間に、加熱リアクタユニット側を発熱面とし、冷却リアクタユニット側を吸熱面とするようペルチェ素子を配設することが好ましい。
【0016】
そして、この発明の転相温度乳化方法は、連続相である第1の液体中に分散相である第2の液体が分散したエマルションを形成するに当たり、第1の液体及び第2の液体をマイクロ流路に導入し、該マイクロ流路内で二液を混合乳化して、第1の液体中に第2の液体が分散した初期エマルションを調製し、マイクロリアクタを用いて前記エマルションを転相温度以上に加熱して転相を生じさせ、第2の液体中に第1の液体が分散した中間エマルションを調製し、マイクロリアクタを用いて前記中間エマルションを転相温度以下に冷却して転相を生じさせ、第1の液体中に第2の液体が分散しており、初期エマルションよりも微細な最終エマルションを得ることを特徴とする。かかる構成を採用することにより、熱制御性が高まり、エマルションの加熱及び冷却を迅速に行うことが可能となる。
【0017】
また、この方法では、マイクロ流路中で、第1及び第2の液体が層流を形成することが好ましい。
【0018】
さらに、初期エマルションを、その転相温度よりも10〜30℃高い温度範囲にまで加熱することが好ましく、転相温度よりも15〜25℃高い温度範囲にまで加熱することがさらに好ましい。
【0019】
さらにまた、中間エマルションを、10℃〜室温(25℃)の温度範囲にまで冷却することが好ましく、10〜20℃の温度範囲にまで冷却することがさらに好ましい。
【0020】
加えて、最終エマルションのエマルション径が1μm未満であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、転相温度乳化においてエマルションの加熱及び冷却が迅速に行われることから、品質及び安定性が高く、エマルション径の小さなエマルションを連続的に調製することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明に従う代表的な転相温度乳化装置の分解斜視図であり、図2は、図1の装置を組み立てた状態で示す側面図であり、図3は、図1の装置の合流マイクロリアクタユニットの平面図である。
【0023】
図1に示す転相温度乳化装置1は、第1入口ポート2、第2入口ポート3及び出口ポート4を具える合流マイクロリアクタ5を有する。合流マイクロリアクタ5には、一方の端部が出口ポート4に連通しており、他方の端部が二股に分岐して第1入口ポート2及び第2入口ポート3に連通するマイクロ流路6が形成されている。
【0024】
また、装置1は、内部にマイクロ流路7、8がそれぞれ形成された加熱マイクロリアクタユニット9及び冷却マイクロリアクタユニット10も有する。加熱マイクロリアクタユニット9は、仕切りプレート11及び銅製の伝熱プレート12を介して熱源であるペルチェ素子13の発熱面に取り付けられている。冷却マイクロリアクタユニット10は、冷却用ウォータジャケット14の一方の面に接しており、この冷却用ウォータジャケット14の他方の面は、銅製の伝熱プレート15を介してペルチェ素子13の冷却面に取り付けられている。
【0025】
合流マイクロリアクタ5の一方の面には、マイクロ流路6内での乳化状態を観察するためのガラスプレート16が押え板17により取り付けられており、他方の面には、マイクロ流路6内を流れる液体を予備冷却するための予備冷却ウォータジャケット18が取り付けられている。この予備冷却ウォータジャケットは必須ではなく、合流マイクロリアクタ5に供給される液体の温度や転相温度に応じて適宜省略することができる。
【0026】
また、冷却マイクロリアクタユニット10には、冷却用ウォータジャケット14とは反対側に、マイクロ流路8内での乳化状態を観察するためのガラスプレート19が押え板20により取り付けられている。
【0027】
これら各部材を順次積層し、ボルト等の固定手段により液密に固定し、各ユニット間をパイプ又はチューブで接続すると、図2に示したように、非常に設置面積の小さな装置が構成される。
【0028】
次に、かかる装置1を用いて、転相温度乳化を実施する方法を説明する。
【0029】
まず、所望のエマルションで連続相となる第1の液体を第1入口ポート2に、分散相となる第2の液体を第2入口ポート3にそれぞれ導入する。導入された第1及び第2の液体は、マイクロ流路6を通り、マイクロ流路6の分岐部において互いに合流する。このとき、第1液体と第2液体は平行二相流を形成し、その接触界面において徐々に乳化が進行し、すなわち第2液体の液滴が形成され、これが第1液体中に分散する。そして、マイクロ流路6の出口ポート4に達するまでの間に、二液の完全な乳化が行われる。このようにマイクロ流路6内で二液を混合すると、流路の幅よりも分散相の液滴の径が小さなエマルションを得ることができる。この結果、マイクロ流路6の出口ポート4からは、第1の液体中に第2の液体が分散した初期エマルションが得られる。
【0030】
この初期エマルションを、パイプ又はチューブを介して加熱マイクロリアクタユニット9に導入する。加熱マイクロリアクタユニット9は、仕切りプレート11及び伝熱プレート12を介してペルチェ素子13の発熱面からの熱が伝えられており、導入された初期エマルションは、マイクロ流路7を通りながら、この熱により加熱され、転相温度を超えた時点で転相が生じ、第2液体中に第1液体が分散した中間エマルションとなる。このとき、マイクロ流路7内に保持されている初期エマルションは、微量であり、その熱容量が小さいため、迅速かつ均一に加熱される。このため、バッチ処理を行っていた従来の転相乳化法に比べると、第1液体及び第2液体、さらには必要によりこれら液体に添加されている乳化剤の品質に与える影響が極めて少なく、かつ中間エマルションの乳化状態が極めて均質となる。
【0031】
次いで、この中間エマルションを、パイプ又はチューブを介して冷却マイクロリアクタユニット10に導入する。冷却マイクロリアクタユニット10は、ウォータジャケット14により冷却されており、さらにこのウォータジャケットユニット14の熱は、伝熱プレート12を介してペルチェ素子13の吸熱面により吸熱されている。このため、導入された中間エマルションは、マイクロ流路8を通りながら冷却され、転相温度を下回った時点で転相が生じ、第1液体中に第2液体が分散した最終エマルションとなる。このとき、マイクロ流路8内に保持されている中間エマルションは微量であり、その熱容量が小さいため、迅速かつ均一に冷却される。このようにして初期エマルションを2回転相させることで、初期エマルションよりも微細で斉一な、すなわちエマルション径が初期エマルションのそれよりも小さく単分散な最終エマルションが得られる。
【0032】
このように、この発明に従う転送温度乳化方法では、全ての工程がマイクロリアクタ内で行われることから、加温及び冷却を迅速かつ均一に行うことができる上、エマルションの連続製造が可能である。また、この発明に従う転送温度乳化装置は、各ユニットを積層して構成されているので、非常にコンパクトである。
【0033】
合流マイクロリアクタ5のマイクロ流路6は、図示の例のようにY字状に形成されていることが好ましい。これにより、マイクロ流路6内で形成される分散相の液滴の径が小さくなる。また、第1液体と第2液体が円滑に合流できるように、第1入口ポート2に連通する流路部と第2入口ポート3に連通する流路部のなす角(図3の角α)を0度より大きく90度より小さな角度とすることが好ましい。さらに、この角αは、形成される分散相の液滴の径に影響を与えることから、液滴の径を小さくする観点から30〜60度の範囲内とすることが好ましい。
【0034】
また、マイクロ流路6中の第1及び第2の液体の流れがそれぞれ層流となるように送液を行うことが好ましい。マイクロ空間では通常のマクロ空間と比較して界面張力と粘性力の寄与が非常に大きくなる特徴を有している。そのため、乱流を起こすためには、これら液体の流量を非常に大きくする必要があり、これは、送液に要するエネルギーの増加を招く上、加熱及び冷却マイクロリアクタユニットの高性能化及び/又は大型化を余儀なくされる。しかし、発明者らが合流マイクロリアクタユニットでの乳化について研究を重ねたところ、マイクロ流路内では、二液が層流のまま並行して流れていても接触界面による十分な乳化が生ずることが分かった。したがって、省エネルギー化と装置の小型化の観点から、二液を層流で送液することが有利となる。
【0035】
さらに、マイクロ流路6は、第1入口ポート2に連通する流路部の幅が第2入口ポート3に連通する流路部の幅よりも大きいことが好ましい。このように分散相となる第2液体の流路を相対的に小さく構成することで、初期エマルションにおける第2流体の液滴径を小さくすることができる。
【0036】
加熱マイクロリアクタユニット9では、初期エマルションをその転相温度よりも
10〜30℃高い温度範囲にまで加熱することが好ましい。一般に、転相温度において初期エマルションの100%が転相するわけではなく、転相温度よりも20℃程度高い温度でほぼ100%が転相することから、この温度にまで加熱することが最終エマルションの微細化の上で有利である。一方、過剰に加熱を行うと、第1液体及び第2液体、さらには必要によりこれら液体に添加されている乳化剤の品質への影響が懸念される上、加熱マイクロリアクタユニット9及び冷却マイクロリアクタユニット10の大型化を招くことから、転相温度+30℃以下の温度範囲で加熱することが有利である。
【0037】
冷却マイクロリアクタユニット10では、中間エマルションを室温(25℃)以下にまで冷却することが好ましい。一般に、転相温度において中間エマルションの100%が転相するわけではなく、室温以下の温度でほぼ100%が転相することから、この温度にまで冷却することが最終エマルションの微細化の上で有利である。一方、過剰に冷却を行うと、冷却に要する時間とエネルギーが増大する上、冷却マイクロリアクタユニット10の大型化を招くことから、10℃以上の温度範囲で冷却することが有利である。
【0038】
また、図示の例のように、加熱リアクタユニット9と冷却リアクタユニット10との間に、ペルチェ素子13を配設し、加熱リアクタユニット9側が発熱面とし、冷却リアクタユニット10側が吸熱面となるように通電することが好ましい。このように構成することで、1つのユニット(ペルチェ素子)で加熱と冷却を同時に行えることから、装置の一層の小型化が可能となる。また、加熱温度の高精度な制御が可能となる。このとき、加熱リアクタユニット9の出口で温度を測定し、この温度に基づいてペルチェ素子の発熱量を制御することが好ましい。ペルチェ素子のみによる吸熱では所望の冷却温度に達しない場合には、図示のように、さらに冷却用ウォータジャケット14を設けてもよい。無論、ペルチェ素子に代えて、他の熱源、例えば加熱用ウォータジャケットや面ヒータ等を用いることもできる。
【0039】
さらに、最終エマルションの安定性を高める観点からは、前記の各パラメータを適宜に設定して、従来技術では達成が困難であった1μm未満のエマルション径とすることが好ましい。
【0040】
なお、上述したところはこの発明の実施形態の一部を示したに過ぎず、この発明の趣旨を逸脱しない限り、これらの構成を交互に組み合わせたり、種々の変更を加えたりすることができる。例えば、処理する液体の転相温度や処理量に応じて、マイクロ流路の経路長を変えたり、複数の加熱及び冷却マイクロリアクタユニットを設けたりすることもできる。
【実施例】
【0041】
次に、前記して説明した転送温度乳化装置を用いて実際にエマルションを調製したので、その結果を説明する。
【0042】
実験で用いた装置は、図1と同様の構成であり、合流マイクロリアクタユニットのマイクロ流路が、第1液体側で幅132μm、第2液体側で幅100μmであり、深さはいずれも47μmであった。また、加温マイクロリアクタユニット及び冷却マイクロリアクタユニットのマイクロ流路はいずれも、幅が711μm、深さが35μmであった。
【0043】
連続相となる第1液体として、蒸留水を100μl/分の割合で第1入口ポートに供給し、分散相となる第2液体として、20質量%の非イオン性界面活性剤(Brij30)と80質量%のドデカンの混合溶液を50μl/分の割合で第2入口ポートに供給した。
【0044】
加熱マイクロリアクタユニットの出口温度を60℃に制御し、冷却マイクロリアクタユニットの出口温度を20℃に制御して、最終エマルションを得た。この最終エマルションに対して動的光散乱(DLS)測定を行ったところ、平均エマルション径が95.2nmであり、多分散度指数が8.6であった。この結果、この発明に従う装置及び方法は、これまでの乳化技術では達成が困難であったナノエマルションを調製する有効な手段であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上の説明から明らかなように、この発明により連続的に安定なナノエマルションを調製することが可能となり、医薬分野で近年活発に研究されているドラッグデリバリーシステム(DDS)や農薬・化粧品関連分野、さらには食品関連分野への応用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明に従う代表的な転相温度乳化装置の分解斜視図である。
【図2】図1の装置を組み立てた状態で示す側面図である。
【図3】図1の装置の合流マイクロリアクタユニットの平面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 転相温度乳化装置
2 第1入口ポート
3 第2入口ポート
4 出口ポート
5 合流マイクロリアクタ
6、7、8 マイクロ流路
9 加熱マイクロリアクタユニット
10 冷却マイクロリアクタユニット10
11 仕切りプレート
12、15 伝熱プレート
13 ペルチェ素子
14 冷却用ウォータジャケット
16、19 ガラスプレート
17、20 押え板
18 予備冷却ウォータジャケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続相となる第1の液体を導入するための第1入口ポート、分散相となる第2の液体を導入するための第2入口ポート、これら第1及び第2入口ポートに連通し、導入された二液を合流させて第1の液体中に第2の液体が分散したエマルションを調製するマイクロ流路、及び該マイクロ流路に連通し前記エマルションを回収するための出口ポートとを具える合流マイクロリアクタユニットと、
前記エマルションを転相温度以上に加熱する少なくとも1つの加熱マイクロリアクタユニットと、
前記加熱されたエマルションを転相温度以下に冷却する少なくとも1つの冷却マイクロリアクタユニットとを積層してなる転相温度乳化装置。
【請求項2】
前記マイクロ流路はY字状に形成されており、前記第1入口ポートに連通する流路部と前記第2入口ポートに連通する流路部のなす角が0度より大きく90度より小さい、請求項1に記載の乳化装置。
【請求項3】
前記マイクロ流路中の前記第1及び第2の液体の流れが層流となる、請求項1又は2に記載の乳化装置。
【請求項4】
前記マイクロ流路は、前記第1入口ポートに連通する流路部の幅が前記第2入口ポートに連通する流路部の幅よりも大きい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項5】
前記加熱マイクロリアクタユニットの出口温度と前記エマルションの転相温度の差が10〜30℃の範囲内にある、請求項1〜4のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項6】
前記冷却マイクロリアクタユニットの出口温度が10℃〜室温(25℃)の範囲内にある、請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項7】
前記加熱リアクタユニットと前記冷却リアクタユニットとの間に、前記加熱リアクタユニット側を発熱面とし、前記冷却リアクタユニット側を吸熱面とするようペルチェ素子を配設した、請求項1〜6のいずれか一項に記載の乳化装置。
【請求項8】
連続相である第1の液体中に分散相である第2の液体が分散したエマルションを形成するに当たり、
第1の液体及び第2の液体をマイクロ流路に導入し、該マイクロ流路内で二液を混合乳化して、第1の液体中に第2の液体が分散した初期エマルションを調製し、
マイクロリアクタを用いて前記エマルションを転相温度以上に加熱して転相を生じさせ、第2の液体中に第1の液体が分散した中間エマルションを調製し、
マイクロリアクタを用いて前記中間エマルションを転相温度以下に冷却して転相を生じさせ、第1の液体中に第2の液体が分散しており、初期エマルションよりも微細な最終エマルションを得ることを特徴とする転相温度乳化方法。
【請求項9】
前記マイクロ流路中で、前記第1及び第2の液体が層流を形成する、請求項8に記載の乳化方法。
【請求項10】
前記初期エマルションを、その転相温度よりも10〜30℃高い温度範囲にまで加熱する、請求項8又は9に記載の乳化方法。
【請求項11】
前記中間エマルションを、10℃〜室温(25℃)の温度範囲にまで冷却する、請求項8〜10のいずれか一項に記載の乳化方法。
【請求項12】
前記最終エマルションのエマルション径が1μm未満である、請求項8〜11のいずれか一項に記載の乳化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−238117(P2008−238117A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85573(P2007−85573)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【出願人】(502089693)財団法人 岡山県産業振興財団 (14)
【Fターム(参考)】