説明

軸受スラスト監視のための方法および装置

軸受スラスト監視のための方法および装置は、回転体(22)を回転可能に支持するローラ(34または36)のための支持軸受(52または56)の傾斜を、測定可能に検出することを可能にする。支持軸受の傾斜を測定可能に検出するように適合された傾斜計(75または77)は、支持軸受(52または56)に連結され、傾斜は、回転体(22)上の軸スラストにより生じる、第1の軸受位置と続く第2の軸受位置との間の軸受向きにおける角度差として画定される。いったん傾斜が検出されると、支持軸受(52または56)の軸受向きを調整して、支持軸受(52または56)を実質的に第1の軸受位置に戻すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、軸受スラスト監視アセンブリ、および回転体、特に大型回転体、たとえば高温のロータリーキルンを支持するように構成された軸受を配列する方法に関する。
【0002】
発明の背景
数多くの経済的に重要なプロセスの実行において、大規模な回転シリンダが用いられる。そのような、回転し、トラニオンに支持された装置は一般的に鋼管を含み、鋼管はかなり長くなることがあり(最長数百フィート)、管の全長に沿って間隔を置いて配置された環状のタイヤにより支持される。それぞれのタイヤは一対の対向するローラに担持され、そしてローラはコンクリートの脚またはパッド上に取り付けられていることがある。鋼管はその長手方向軸を中心に回転し、そのような回転のために、ローラと、管を取り囲むタイヤとの接触により支持される。ローラは、ローラ支持軸受により、脚またはパッド上に支持される。これらは一般的に、より大規模な装置ではスリーブ軸受であり、より小規模な装置では転がり軸受である。ローラ支持軸受、ローラおよびタイヤの磨耗、またシステムの各パーツの歪み(その上に回転装置が取り付けられた脚またはパッドの起こり得る動きを含む)が原因で、装置の一部分が異なる回転軸を中心に回転を生じるため、ローラが配列から外れる可能性がある。タイヤまたはローラ、もしくは両方を交換するコストが比較的高いため、そのような回転装置の動作において重要な問題は、ローラの表面と支持タイヤとの間の適正な配列を保守し、それぞれの表面の不均一な磨耗および軸受の過負荷を防止することである。これら2つが適正な配列に保たれている場合、タイヤおよびローラならびに軸受の耐用年数を長くすることが期待できる。
【0003】
そのような回転装置は一般的に、中を通るマテリアルの流れを促進するため、水平位置に対してわずかに斜面した管で構成されているので、配列関係が複雑である。したがって、管は重力による軸力(それとともに、動作中に管にかかることがあるその他の軸方向荷重)を及ぼし、このため、重力に対向して管をローラ上で動き続けさせるために必要とされるときは必ず、ローラおよびそれらに対応するローラ支持軸受上に軸スラスト荷重を生じさせる。管とローラ支持軸受との間の適正な配列を保守するために、あらかじめ目視検査または精巧な配列測定により配列を定期的に点検し、ローラの軸方向位置を可能な限り最良な位置に定める必要があった。しかし、そのような測定が十分に正確ではあり得ないため、管の軸に対してほぼ平行である所望の位置にローラが軸方向に移動するまで、段階的なローラの傾き調整が行われる。スリーブ軸受機構は、ローラおよびシャフトアセンブリが、この目的のために軸方向におよそ6mm移動することが可能なように構成される。このように、傾きを調整することにより、ニュートラルな傾き位置を超えたときは必ずこの軸方向の移動が生じる。しかし、転がり軸受が使用されるときは、締まり嵌めまたはその他の機械的な手段により、ローラシャフトに転がり軸受をロックさせることが必ず求められるため、この方法は不向きである。軸受とシャフトとの間で軸方向に物理的な移動があることは許容されない。ローラを軸方向に動かすための傾き調整量は、ローラのサイズにかかわらず、たとえ直径10フィートもの大きさであっても、およそ0.1mm(0.004インチ)であり、管の回転軸が物理的に精密さを確立できないため、傾きを測定することはほぼ不可能である。転がり軸受はその設計上、そのような軸方向の移動が許容されないため、比較的頻繁に点検をしなければならず、評価が困難できわめて主観的であり、ほとんどの場合オペレータにより信頼性をもって実行されていない。
【0004】
発明の概要
本発明は、ローラに支持された回転体のための軸受が、回転体上に軸スラスト荷重がかかることにより傾斜するという認識に起因するものである。ひとつの態様では、本発明は、回転体を支持するように構成された、ローラのための軸受を配列する方法を実現し、本方法は、軸受の傾斜を測定可能に検出することを含み、傾斜は、第1の軸受位置と、回転体上の軸スラスト荷重により生じる、続く第2の軸受位置との間の、軸受向きにおける角度差として画定され、軸受の軸受向きを調整して軸受を実質的に第1の軸受位置に戻すことを含む。
【0005】
その他の態様では、本発明は、支持軸受上に回転可能に支持されたローラ上に取り付けられた回転体上に及ぼされる軸力を検出するための方法を実現し、本方法は、支持軸受の傾倒の変化を監視することを特徴とする。
【0006】
その他の態様では、本発明は軸受スラスト監視アセンブリとして実現される。軸受スラスト監視アセンブリは、ローラと、ローラを回転可能に支持し、軸受回転軸を有する支持軸受と、回転体軸に沿ったローラおよび軸受に相対する回転のためにローラ上に取り付けられた回転体と、支持軸受に連結されて支持軸受の傾斜を検出するように適合されたデバイスとを含む。ここで、傾斜は、回転体上の軸スラスト荷重により生じる、第1の軸受位置と第2の軸受位置との間の支持軸受の軸受向きにおける角度差として画定される。
【0007】
詳細な説明
本発明は、添付の図面を参照してさらに説明され、いくつかの図を通して、同じ構造および特徴は、同じ参照番号により参照される。
【0008】
本発明の1つ以上の実施形態が図面により説明されているが、本開示において言及するとおり、その他の実施形態もまた意図されている。すべての場合において、本開示は、図示を目的として、かつ限定されることなく本発明を提示する。当業者により、本発明の原理の範囲および本質の範囲内に含まれるその他数多くの改変および実施形態を導き出すことができることが理解されるべきである。
【0009】
傾倒した回転ドラム10は、一般的に長さと直径の比率が大きく、脚12、14、16および18上に回転可能に取り付けられている。回転ドラム10は、回転可能な管またはシェル22を有する。管22は、それぞれの脚の周辺に、一般的に円筒形であり、管22の長手方向軸28に対して同軸である円周方向の軸受面26を画定するタイヤ24を有する。各タイヤ24の軸受面26は、一対のローラアセンブリ30および32により支持される。ローラアセンブリ30および32は、管22の全長に沿って対をなして配置され、管22を支持するように配列されて構成され、一般的には同一のものである。各ローラアセンブリ30および32は、円筒形のローラ34および36を有し、各ローラはそれぞれ円周方向の軸受面38および40を有し、それぞれのタイヤ24の軸受面26を支持するように係合している。
【0010】
各ローラ34および36は、上流ローラシャフト延長部(図3のローラ34のシャフト延長部42参照)および下流シャフト延長部(図2のローラ34および36のシャフト延長部46および48をそれぞれ参照)を有する。本明細書で用いられる“上流”および“下流”方向とは、回転体を通るマテリアルの流れの方向に対応する。シャフト延長部は、軸受により回転可能に支持される。図3では、軸受50および52は、それぞれローラ34のシャフト延長部42および46向けとして示される。図2では、軸受52および54は、ローラ34のシャフト延長部向けとして示されている。そのような軸受は、たとえばスリーブ軸受または転がり軸受、球面ころ軸受を構成することができる。このように、各軸受は基本的に、それぞれのローラ用の一対の軸受のうちのひとつを構成する。転がり軸受の場合、一対のうち1つの軸受は固定リングを含み、一対のうちのもうひとつの軸受はフリー軸受である。
【0011】
軸受は、抑えボルト61またはその他の好適な留め手段により、ベース60に(少なくともそれらの間の軸方向の動きに対して)固定して取り付けられる。ベース60は一般的に、互いに溶接された重いH形溝型鋼製のスチール枠から形成される。ベース60は、脚(たとえば脚12、14、16または18)または基礎パッドの形状を取ることができる基礎62に固定される。基礎62は通常コンクリートから形成され、ベース60は、締結具、たとえばボルト(図示せず)により、またはベース60を基礎62のコンクリート自体の中に形成することにより、基礎に固定される。
【0012】
軸受(たとえば軸受50、52および56)は、ベース60に固定される一方で、調整ねじ、たとえば軸受アセンブリ30の調整ねじ64および66(図3に可能な傾き調整を矢印SおよびSによりさらに図示する)および軸受アセンブリ32の調整ねじ68および70(図2)を用いて、傾き調整が可能である。調整ねじは、タイヤ24の軸に対する各ローラ34および36の軸の傾き調整を可能にし、当技術分野においてその形状および構成は既知である。そのような傾き調整は、装置が回転している間に、ベース60に対して軸受を(ローラの軸に対して直角に)スライド可能にするのに十分な程度に抑えボルト61をゆるめた状態で行われる。いくつかの軸受は、抑えボルトによりベースに取り付けられていないが、ベースに対して軸方向に動くことをキーによって防止されている。
【0013】
本明細書の記述および図面では、ロータリーキルンについて描写されているが、本発明は、トラニオンローラ上に支持されたあらゆる回転体に適用可能である。そのような回転体には、たとえば、ロータリーキルン、ロータリークーラ、ロータリードライヤ、回転炉、回転反応器、ロータリーフィルタ、ビーンコンディショナ、回転アッシュシリンダ、ミルシェル軸受面、デラカーラ、ワッシャ、デバークドラム、ペレタイザ、石炭粉砕機、造粒機、焼却炉、およびシェイクアウトドラムが特に含まれる。
【0014】
本発明は、2個のローラ(たとえばローラアセンブリ30および32)により支持された回転シャフト(たとえばロータリーキルン10の回転管22)上の軸方向荷重の有無を検出するための簡易かつ客観的な方法を提供する。1つの実施形態では、本発明は、既存のローラアセンブリ、およびスリーブ軸受または転がり軸受といったあらゆる方式またはタイプのそれらに対応する軸受にも広範に適用可能であり、軸受の変更を必要としない外部増設機器である。本発明の方法の1つの態様は、相対的な傾斜を測定可能に検出することであり、ここで傾斜は、第1の軸受位置と、続く第2の軸受位置(回転体上の軸スラスト荷重により生じる)との間の軸受の向きにおける角度差として画定される。言い換えると、本発明の方法は、回転体用の支持軸受の傾倒の変化を監視する。
【0015】
一般的なローラ向けスリーブ軸受機構により、ローラを軸方向に6mm移動させて中間点を確定することが可能になる。往々にして、これらのローラは、回転体上にかかる重力による引力を抑制するために傾かせる必要がある。ローラはその後、自身を下り勾配状に据え付けてから、スラスト荷重を担持する。その後、本発明では、このことが行われたことが確認され、さらに、スラスト荷重を均等に均衡させるための手段を提供するか、または回転体を支持する各ローラにより担持されるスラスト荷重を分配する。
【0016】
図1に示す管22のようなシャフトが軸方向に荷重されるときは必ず、支持軸受はわずかに傾斜する。感度の高い傾斜計を用いることにより、この傾斜を容易に監視することができる。スラスト荷重の有無を認識することは、軸受を適正な配列に設定するための重要な部分であり、さらに、長期間にわたり軸受の故障を防止することになる。このことが肝要となる用途のひとつは、ローラに支持された装置、たとえばロータリーキルンおよびロータリードライヤである。上述のとおり、ローラに支持された回転ドラムには多くのタイプの例があり、多くの異なる産業で見られる。ローラ軸が回転ドラムまたは管の軸に対して平行でない場合、回転接触している面の激しい表面摩擦につながる可能性があり、軸受の故障を発生させるに足る軸力を発生させる可能性があるスラスト荷重が発生する。このタイプの装置では、シェルまたは管上に取り付けられ、つねにローラ上に位置する大きな鋼製リングまたはタイヤ(図1、2および3参照)は、回転するとき、常に小さな揺れを生じる。この揺れが、支持ローラに周期的なスラスト荷重をもたらす。したがって、スラストは2つの原因、すなわち(1)劣悪なローラの配列、および(2)回転管上のタイヤの揺れに由来する場合がある。
【0017】
ローラの軸と、管上の各々のタイヤとの間のあらゆる傾きが、スラスト荷重を発生させ(図3に、タイヤ24およびローラ34上に、結果として反対向きに生じるスラストとして図示され、それぞれ矢印TおよびTにより示される)、さらにはそのローラの軸受に傾斜を生じさせる。傾斜の方向(図3に見られるように左または右向きで、傾斜の矢印Tにより図示される)は、スラストの方向を反映し、どちらの方向にもなる可能性がある。傾斜の度合は、多くのパラメータ、たとえば軸受の方式、そのハウジングの剛性、ベースの安定度、基礎の安定度、グランド状況の安定度、回転速度およびドラムの重量の関数となる。傾斜が実質的にどこに由来するかを明らかにすることは、(試行錯誤を通して)軸受の傾き調整を行い、傾斜の変化を観察することを含む。
【0018】
ローラの軸受の傾斜を検出して監視するために、本発明は、軸受(または軸受の支持構成体もしくはハウジング)に取り付けられた高感度な傾斜計、たとえば軸受52上の傾斜計75および軸受56上の傾斜計77(図2参照)を使用する。そのような傾斜計は、+/−40アーク分の範囲にわたり傾斜を測定することができる。これは、1アーク秒(0.00028度)という小さい変化を検出できる。そのような傾斜計はさらに、検出された傾斜に依存する出力信号を供給することができる。ひとつの実施形態では、傾斜計は+/−40アーク分の範囲を有し、これは+/−2500ミリボルトの範囲の出力信号に対応する。図2および3に図示するように、傾斜計75および77は、それぞれの軸受52および56に固定して取り付けられる。たとえば、図5に示すように、傾斜計75は、好適な留め具、たとえばねじ部品83により(傾斜計がローラ38の軸受回転軸81と平行な配列になるように)軸受52に固定して取り付けられる外ケーシング79を有する。転がり軸受の場合、傾斜計は、固定リングを有する軸受対の軸受に取り付けられる。
【0019】
ひとつの実施形態では、傾斜計はそれぞれ小型で防水性の容器(たとえばケーシング79)に収納された電解質型傾斜センサを含む。傾斜センサは、抵抗ブリッジとして電気的に感知される高精度な液面である。ブリッジ回路は、センサの傾斜に比例して電圧を出力する。傾斜計は手動で読み取ることができ、このようにして現在の読み取り値を初期読み取り値と比較することにより、傾倒の変化が見出される。傾斜計はさらに、データロガーまたはプロセッサに接続されてもよく、検出された傾斜の関数(たとえば電圧読み取り値)として電気信号を供給し、これにより頻繁に読み取りができる。これらの読み取り値を用いて、所望のプリセットされた制限値に対する傾斜および傾斜の変化率の計算および監視を行うことができる。
【0020】
ひとつの実施形態では、傾斜計を収納しているケーシング79は、小型の頑丈な容器であり、既存の軸受またはその支持部もしくはハウジングアセンブリを変更することなく、あらゆる既存の軸受に取り付けることができる。したがって、このような傾斜計を、軸受の監視が初期設定および配列のためだけに用いられる状況で、一時的に取り付けて用いることができ、または、回転体の通常動作中、1日24時間、週7日間、継続して常時監視するために常設設備として設けることができる。
【0021】
図4は機構を図式的に表し、ここで回転ドラム10は、複数のタイヤ24a、24b、24cおよび24dにより支持された回転可能な管22を有する。各タイヤは、それぞれ一対のローラアセンブリ、たとえばタイヤ24aに対するローラアセンブリ30aおよび32a、タイヤ24bに対するローラアセンブリ30bおよび32b、タイヤ24cに対するローラアセンブリ30cおよび30c、およびタイヤ24dに対するローラアセンブリ30dおよび32dにより、順に支持される。各ローラアセンブリ30a、30b、30cおよび30dはそれぞれ、対応する傾斜計75a、75b、75cおよび75dを備える。同様に、各ローラアセンブリ32a、32b、32cおよび32dはそれぞれ、対応する傾斜計77a、77b、77cおよび77dを備える。各傾斜計は、(配線手段またはワイヤレス手段により)プロセッサ80に伝達される、軸受向きに相対する出力信号を供給する。したがって、プロセッサは、軸方向のスラストまたは荷重を補償するために、傾き調整が必要な場合を検出するように、各ローラアセンブリの傾斜計からの出力信号を継続的に監視することができる。上述のように、このような傾き調整は、軸受アセンブリ30の傾き調整スクリュー64および66、または軸受アセンブリ32の調整スクリュー68および70を用いて実行可能であり、これは既知である。したがって、回転体を支持するよう構成された軸受を配列するための本発明の方法は、軸受の傾斜を検出することだけでなく、その軸受の軸受向きを調整して軸受を実質的に最初の軸受位置に戻すことも含む。
【0022】
ひとつには、本発明は、軸受ハウジング、または軸受52、54および56等の軸受(図2および3)は、そのような軸受がベース60およびそれらの基礎62に(相対的な軸方向の動きに対して)固定して取り付けられていても、軸スラスト荷重の結果として傾斜することを認識することである。そのような傾斜は、たとえ非常に小規模(たとえば1アーク秒)でも、その軸受の傾き調整を介して補償されることができ、そのようにすることでローラ軸受アセンブリおよびタイヤの寿命(結果としてロータリードラムの寿命)を延ばすことができるとともに、保守コストを大幅に減少させることを達成する。
【0023】
ローラに支持された回転装置は、ローラの傾き調整が不適当である場合、しばしば軸受の故障に遭遇する。これは、このような装置の機構的な動作における最大の問題のひとつである。ローラアセンブリには、一般的なドライヤ設備のための数百ドルから、最大の軸受(直径が最大36インチのシャフトおよび直径10フィート大のローラを有し、1200メトリックトン以上を支持することが可能)にかかる10万ドル超までのコストがかかる可能性がある。中立スラストを監視し調整する機能は、このような装置を配列し保守するためにきわめて有利である。
【0024】
本発明は、特に、ロータリークーラ、ロータリードライヤおよびロータリー式造粒機等の機械で用いられる球面ころ軸受を含む、あらゆる種類の軸受と協働する。本発明の主要な態様は、支持ローラ上にかかるスラスト荷重により、(外見上は適所にしっかりと固定されているときでさえも)そのローラを支持する軸受が傾斜するという事実を識別することと、多くの異なるタイプの転がり軸受に(大幅に改造する必要またはシステムをシャットダウンする時間なしに)比較的容易かつ安価に取り付けられる、このような傾斜を感知するためのシステムの開発とにある。そのような転がり軸受が用いられる、ともすれば厳しい動作状況のために、傾斜計およびそれに関連するフィールド部品は耐久性を有するように収納されなければならない。そのような動作状況は、極端に上下する温度、塵埃および砕片、外部への曝露による湿気、太陽光への曝露、湿度の変動等を含む場合がある。
【0025】
一般的に、本発明の傾斜計は、既存の回転装置上に取り付けられるか、または少なくとも新しい設備が組み立てられた後に取り付けられる。傾斜計をゼロ傾斜に手動調整するための初期設定点を確立するために、公称ゼロスラストの状況を確立しなければならない。そうするために、管22およびそのタイヤ24は、それに対応するローラアセンブリ30および32から瞬間的に持ち上げられる。その後、管はローラアセンブリ30および32上の元の位置に下ろされて再配置されるが、回転は開始しない。そして、これがゼロスラスト点と考えられ、センサ範囲の中央にできる限り近くなるように、傾斜計が手動で設定されるかまたは較正される(したがって、ゼロ傾斜初期状況が確立される)。これは必ずしも管自体が水平であることを意味するわけではない。図1に図示されるように、ほとんどの回転ドラムは、実質的に斜面状の管に取り付けられ、斜面の規模は設備によって変動する。このように、本発明のデバイスの作用とは、その初期“ゼロ”位置からのスラストにより生じる、軸受のあらゆる傾斜を検出することである。
【0026】
いったん管の回転が開始されると、管およびローラアセンブリの軸の傾きにより回転中にスラスト荷重が存在する場合、傾斜計は、その初期ゼロ位置からの偏差として示す。動作中の傾斜計は、スラスト荷重によりローラ上に生じる傾斜の増加および減少を示す(結果としてスラスト荷重の軸方向を示す)信号を供給する。
【0027】
本発明は、軸受の中立傾斜点がどこにあるか、および軸受上の軸方向荷重のスラスト方向を例示している。ポンド加重といったスラスト荷重の絶対値は必要とされず、また計算するのが非常に困難であろうが、既知の程度の分離した外部軸方向荷重を備えることにより較正を行い、所定の傾斜を模倣することができる。本発明により提供される簡易な手段は、軸受上のスラストが増加しているかまたは減少しているかを観察する機能を備え、それによりローラおよび回転可能な管のためのタイヤアセンブリの“中立的な傾き”の設定を見出すもので、配列、および過剰な傾き(すなわち過剰なスラスト荷重)による軸受の故障の防止のためにきわめて有益なツールである。
【0028】
上述のように、本発明の傾斜計機構は、あらゆるサイズおよび形式のローラアセンブリのためのあらゆる軸受に取り付けることができ、既存の軸受またはローラアセンブリのあらゆる大幅な修正を要さない。加えて、特別に加工された部品を必要としない。標準的な高感度傾斜センサは、ほとんどの状況を較正することができ、または特定の状況のために異なる感度を有する傾斜計を使用してもよい。本発明の傾斜計機構は用途が広範であり、提供することができるデータ出力を、コンピュータによるデータロギングに対して、非常に間単にすることができ(スラスト方向および相対的な程度を示す)、スラストの変化と、その他のデータ、たとえば生産率、回転速度、潤滑の有無、または回転ドラムの温度変化等その他の物理的なデータと比較することができる。本発明の傾斜計機構は、既存の回転装置設備の保守監視を向上させるためのシステムを、比較的低コストかつ簡易に適用することを提供する。
【0029】
ひとつの実施形態では、各軸受対の基礎上に1つ以上の傾斜計が取り付けられ、ローラスラスト以外の力が生じた場合、基礎の動きを監視する。たとえば、図4では、基礎傾斜計85a、85b、85cおよび85dは、それぞれ脚の基礎12、14、16および18上に固定されて取り付けられる。したがって、基礎傾斜計85a、85b、85cおよび85dはそれぞれ、各基礎の相対的な傾斜の表示を供給し、ここでそのような傾斜は、第1の軸受基礎の位置と、それに続く第2の軸受基礎の位置との間の軸受基礎の向きの角度差として画定される。また、上記の軸受傾斜計75および77のように、各基礎傾斜計85a、85b、85cおよび85dからの信号を、さらなる監視および分析のためにプロセッサ80に供給してもよい。たとえば、プロセッサは軸受の正味の傾斜を計算することができ、ここで正味の傾斜は一般的に、軸受の傾斜と、軸受基礎の傾斜との間の差異に等しい。
【0030】
あらゆる回転体(たとえばロータリーキルン10の管22)のために、軸方向に間隔を置いた2つのタイヤを支持する、少なくとも複数のローラアセンブリ(たとえば4つのローラ)がある。各ローラアセンブリの軸受上には、少なくとも1つの傾斜計が備えられるが、上述のように、場合によっては、それ以上を備えることができ、また転がり軸受基礎上にさらなる傾斜計を取り付けて、基礎の動き(またはその他の発生し得る外力)を検出して補償することができる。ひとつの実施形態では、各傾斜計からの信号は、コンピュータ化された監視システムにより処理され、配線により、またはワイヤレス技術により中央監視局に伝送されるか、長距離伝送により(たとえば、インターネットまたはその他の好適な信号通信メディアを介して)監視のための離隔した地点に供給されることができる。いったんスラスト荷重による軸受の傾斜が検出されると、たとえば、所望の中立スラスト位置に軸受(およびそれに対応するローラアセンブリ)を戻すために、軸受のローラアセンブリ(図2および3参照)の傾き調整制御の調整により補償することができる。そのような補償は、ロータリーキルン10の動作中、または言い換えると、管22の回転中に行われる。加えて、管のための複数の軸受の傾斜の向きは、それぞれが他に影響する場合、均衡させることができる。このように、各軸受の軸受向きを、その軸受の検出された傾斜と、その軸受の傾斜の確定された方向との関数として、およびその他の軸受の検出された傾斜と、その他の軸受の傾斜の確定された方向との関数として調整することができる。
【0031】
好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、当業者においては、本発明の本質および範囲から逸脱することなく、形状および詳細に変更を加えることができることが認識されよう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】一般的なロータリードラム機構の一部分の概略側面図である。
【図2】ロータリードラム上のタイヤの、対向する一対のローラと、対応するローラ支持軸受とを示す部分斜視図である。
【図3】ロータリードラムの回転管上の、ローラとタイヤとの間の関係を示す部分斜視図である。
【図4】回転ドラム上のローラの傾斜向きを監視するための、コンピュータ化された監視機構を示す略線図である。
【図5】明確な例示のためには図示されていない回転管およびそれに対応するタイヤを有する、ロータリードラムのローラアセンブリの部分平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体を支持するように構成された、ローラのための軸受を配列する方法であって、
軸受の傾斜を測定可能に検出することであって、傾斜が、回転体上の軸スラスト荷重により生じる、第1の軸受位置と続く第2の軸受位置との間の軸受向きにおける角度差として画定されることと、
軸受の軸受向きを調整して、軸受を実質的に第1の軸受位置に戻すことと、を含む方法。
【請求項2】
検出ステップが、軸受に傾斜センサを装着することを含み、傾斜センサが、軸受向きに応じた信号を生成する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
信号が、1アーク秒(0.00028度)程度の小さな軸受向きの変化を感知できる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
回転体が軸受のローラ上にあるが、軸受のローラ上の回転体の回転が開始される前に、第1の軸受位置に対するデバイスを較正することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
検出ステップが、回転体の回転軸に対する軸受の傾斜の方向を確定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
ローラが一対のローラのうちの1つであり、各対のローラが回転体を支持するように配列されて構成され、検出ステップが、各ローラの軸受の傾斜を測定可能に検出することをさらに含み、各軸受の傾斜が、回転体上の軸スラスト荷重により生じる、その軸受の第1の軸受位置と続く第2の軸受位置との間の軸受向きの角度差として画定される方法であって、
各軸受の軸受向きを、その軸受の検出された傾斜と、その軸受の傾斜の確定された方向との関数として、およびその他の軸受の検出された傾斜と、その他の軸受の傾斜の確定された方向との関数として調整することをさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
回転体上にかかる軸力の方向を、軸受の傾斜方向の関数として導き出すことをさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
回転体が回転ドラムであり、軸受がトラニオン軸受である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
支持軸受上に回転可能に支持されたローラ上に取り付けられた回転体上に及ぼされる軸力を検出するための方法であって、支持軸受の傾倒の変化を監視することを特徴とする方法。
【請求項10】
回転体が回転ドラムであり、支持軸受がトラニオン軸受である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
支持軸受が、軸受ハウジングに回転可能に取り付けられ、軸受ハウジングに連結されたデバイスが、支持軸受の傾倒の変化を監視する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ローラと、
ローラを回転可能に支持し、軸受回転軸を有する支持軸受と、
回転体軸に沿ったローラおよび軸受に対する回転のためにローラ上に取り付けられた回転体と、
支持軸受の傾斜を検出するように適合されたデバイスであって、傾斜が、回転体上の軸スラスト荷重により生じる、第1の軸受位置と第2の軸受位置との間の支持軸受の軸受向きにおける角度差として画定され、デバイスが支持軸受に連結されるデバイスと、
を含む軸受スラスト監視アセンブリ。
【請求項13】
回転体が回転ドラムであり、軸受がトラニオン軸受である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
デバイスが傾斜検出感度を有し、1アーク秒(0.00028度)程度の小さな軸受向きの変化の検出が可能である、請求項12記載のアセンブリ。
【請求項15】
デバイスが、支持軸受の傾斜を示す出力信号を供給するように適合される、請求項12記載のアセンブリ。
【請求項16】
ローラが第1のローラであり、支持軸受が第1の支持軸受であり、デバイスが第1のデバイスであるアセンブリであって、
第2のローラと、
第2のローラを回転可能に支持するための第2の支持軸受と、
第2の支持軸受の第2の傾斜を検出するように適合された第2のデバイスであって、第2の傾斜が、第1の軸受位置と第2の軸受位置との間の、第2の軸受の軸受向きにおける角度差として画定され、第2のデバイスが第2の支持軸受に連結されるデバイスと、
をさらに含む、請求項12記載のアセンブリ。
【請求項17】
支持軸受を支持するように構成された軸受基礎と、
軸受基礎の第3の傾斜を検出するように適合された第3のデバイスであって、第3の傾斜が、第1の軸受基礎の位置と続く第2の軸受基礎の位置との間の、軸受基礎の向きにおける角度差として画定され、第3のデバイスが軸受基礎に連結されるデバイスと、
をさらに含む、請求項12記載のアセンブリ。
【請求項18】
支持軸受の正味の傾斜を計算するためのプロセッサをさらに含み、正味の傾斜が一般的に、支持軸受の傾斜と、軸受基礎の第3の傾斜との間の差異に等しい、請求項17記載のアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−520914(P2008−520914A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541396(P2007−541396)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/041145
【国際公開番号】WO2006/053289
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(507156185)フィリップス・キルン・サービシーズ・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】PHILLIPS KILN SERVICES LTD.
【Fターム(参考)】