説明

軸受装置および回転機械

【課題】支持面と被支持面との当たり付けを、クレーンを用いずに繰り返し行うこと。
【解決手段】回転軸3を回転可能に径方向に支持する軸受本体11と、該軸受本体を径方向外周側から支持して収容するケーシング12とを備え、軸受本体においてケーシングに支持される被支持面17と該被支持面に当接されるケーシングの支持面25との間には、ケーシングに対して軸受本体を昇降させる昇降手段26が、軸受本体内部またはケーシング内部に収容可能に設けられている軸受装置10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置および回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、蒸気タービンやガスタービン、原子力タービンなど大型の回転機械の回転軸を支持する軸受装置として、例えば下記特許文献1に示されるように、回転軸(ロータ)を支持する軸受面を内周に有する軸受本体(軸受)と、軸受本体を支持する支持面(凹球面部)を内周に有するケーシング(支持環)とを備える構成が知られている。この軸受装置では、軸受本体の外周に、それぞれ被支持面(凸球面部)を有すると共に回転軸の半径方向に設けられた複数のキーからなる組が、回転軸の軸方向に複数設けられている。そして、軸受本体の被支持面が、ケーシングの支持面によって支持されている。
【0003】
ところで、この種の軸受装置では、被支持面と支持面とが互いに局所的に当接するいわゆる片当たりをしてしまうのを防ぐために、軸受装置の組立工程において被支持面と支持面との当たり付けを行い、被支持面と支持面との当たりの精度を向上させる。この当たり付けは、まず、被支持面と支持面との当たり具合を確認するために軸受本体をケーシングに取り付けて被支持面と支持面とを当接させ、その後、軸受本体をケーシングから取り外して被支持面を研磨処理などすることで行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−107953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の軸受装置では、以下に示す問題がある。
すわなち、まず、前記従来の軸受装置は大型の回転機械に用いられるものであることから、軸受本体も大型となり、この軸受本体をケーシングに取り付ける際および軸受本体をケーシングから取り外す際には、重量物を吊り上げ可能なクレーンを用いる必要がある。
また、被支持面と支持面との当たりの精度を向上させるためには、通常、被支持面と支持面との当たり付けを繰り返すことから、当たりの精度を向上させる工程においては、軸受本体のケーシングへの取り付けおよび軸受本体のケーシングからの取り外しを繰り返し行う必要がある。
以上より、被支持面と支持面との当たりの精度を向上させるためにこれらの面の当たり付けを行う工程においてクレーンを占有してしまうという問題がある。その結果、この当たり付けと並行してクレーンを用いた作業を行うことが望まれる場合、例えばこの軸受装置を備える回転機械の他の構成要素の製造工程にクレーンを用いる必要が生じた場合など、その作業にクレーンを用いることができずに作業に遅れが生じてしまう恐れがあった。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、支持面と被支持面との当たり付けを、クレーンを用いずに繰り返し行うことができる軸受装置、およびこの軸受装置を備える回転機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る軸受装置は、回転軸を回転可能に径方向に支持する軸受本体と、該軸受本体を径方向外周側から支持して収容するケーシングとを備え、前記軸受本体において前記ケーシングに支持される被支持面と該被支持面に当接される前記ケーシングの支持面との間には、前記ケーシングに対して前記軸受本体を昇降させる昇降手段が、前記軸受本体内部または前記ケーシング内部に収容可能に設けられていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、被支持面と支持面との間に、ケーシングに対して軸受本体を昇降させる昇降手段が、軸受本体内部またはケーシング内部に収容可能に設けられているので、昇降手段によってケーシングに対して軸受本体を上昇させることで、支持面と被支持面とを互いに当接した状態から離間した状態にすることができる。したがって、支持面と被支持面との当たり付けに際し、昇降手段によって被支持面を支持面から離間させた後、研磨処理などを行うことができる。またその後、昇降手段によってケーシングに対して軸受本体を下降させ、昇降手段を軸受本体内部またはケーシング内部に収容することで、支持面と被支持面とを再び当接させ、ケーシングによって軸受本体を支持させることができる。
以上により、支持面と被支持面との当たり付けを、クレーンを用いずに繰り返し行うことができる。
【0009】
また、前記昇降手段は、前記ケーシングまたは前記軸受本体の一方に設けられ他方に向かって進出可能な進退部と、該進退部の先端に前記回転軸と平行な軸回りに回転可能に設けられ、前記ケーシングまたは前記軸受本体の他方に当接可能なローラ部とを有していても良い。
【0010】
この構成によれば、ケーシングまたは軸受本体の一方に設けられた進退部を、ケーシングまたは軸受本体の他方に向けて進出させ、この他方にローラ部を当接させることができる。そして、この状態からさらに進退部を進出させることで、前記他方にローラ部を当接させつつケーシングに対して軸受本体を上昇させることができる。
ここで、ローラ部が、回転軸と平行な軸回りに回転可能に設けられているので、被支持面を支持面から離間させた状態でローラ部を回転させることで、軸受本体を周方向に回転させることができる。すなわち、この状態で軸受本体に周方向(回転軸の軸回り)に回転させる力を加えると、この力が軸受本体からローラ部に伝達され、昇降手段が軸受本体を支持しつつ、ローラ部が軸回りに回転して他方(ケーシングまたは軸受本体)に対して周方向に相対的に移動することとなる。
そして、軸受本体を周方向に回転させることで、支持面と対向した状態で下方に位置する被支持面を上方に移動させることが可能になる。これにより、ケーシングと軸受本体との間の隙間が小さくても、被支持面の研磨処理などをケーシングが支障になることなく円滑に行うことができる。
【0011】
また、前記昇降手段は、周方向に異なる位置で少なくとも2つ設けられていても良い。
【0012】
この構成によれば、昇降手段が、周方向に異なる位置で2つ設けられているので、ケーシングまたは軸受本体の他方の周方向で異なる位置に2つのローラ部を当接させることが可能になり、昇降手段によってケーシングに対して軸受本体を上昇させた状態であっても、この昇降手段により軸受本体を安定して支持することができる。
【0013】
また、前記ローラ部は、前記進退部の先端に周方向に異なる位置として複数設けられていても良い。
【0014】
この構成によれば、ローラ部が、進退部の先端に周方向に異なる位置として複数設けられているので、ケーシングまたは軸受本体の他方の周方向で異なる位置に複数のローラ部を当接させることが可能になり、昇降手段によってケーシングに対して軸受本体を上昇させた状態であっても、この昇降手段により軸受本体を安定して支持することができる。しかも、1つの進退部に複数のローラ部が設けられていることから、昇降手段によって軸受本体を安定して支持しつつ昇降手段の数を少なくすることが可能になり、軸受装置の構成の簡素化を図ることができる。
【0015】
また、前記進退部は、径方向に進退可能な本体部と、該本体部の先端に設けられるとともに周方向に延設され、かつ前記ローラ部が取り付けられたアーム部とを有し、前記アーム部は、前記本体部に対して首振り調整自在に設けられていても良い。
【0016】
この構成によれば、アーム部が、本体部に対して首振り調整自在に設けられているので、昇降手段によってケーシングに対して軸受本体を上昇させた状態で、例えばこの軸受本体に不意の外力が加えられる等して、仮に軸受本体の軸線がケーシングに対してずれるように軸受本体が移動しようとした場合であっても、アーム部を首振り調整することで、ケーシングまたは軸受本体の他方の周方向で異なる位置に複数のローラ部を当接させた状態を維持することができる。これにより、昇降手段による軸受本体の支持をより一層安定させることができる。
【0017】
また、前記昇降手段は、前記軸受本体または前記ケーシングに着脱可能に設けられていても良い。
【0018】
この構成によれば、昇降手段が、軸受本体またはケーシングに着脱可能に設けられているので、一の軸受装置において、昇降手段を用いて被支持面と支持面との当たり付けをした後、一の軸受装置から昇降手段を離脱させ、この昇降手段を他の軸受装置における被支持面と支持面との当たり付けに用いることができる。これにより、軸受装置の低コスト化を図ることができるとともに、仮に昇降手段が故障してしまった場合であっても、容易に交換することができる。
【0019】
また、前記軸受本体または前記ケーシングは、軸方向端部に開口して前記昇降手段を収容する収容凹部を有していても良い。
【0020】
この構成によれば、軸受本体またはケーシングが、軸方向端部に開口して昇降手段を収容する収容凹部を有するので、昇降手段を、収容凹部を通して軸方向の外側に離脱、もしくは軸方向の外側から装着させることが可能になる。これにより、昇降手段の着脱を容易に行うことができる。
【0021】
また、本発明に係る回転機械は、前記本発明に係る軸受装置によって回転軸が回転可能に径方向に支持されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、前記本発明に係る軸受装置によって回転軸が回転可能に径方向に支持されているので、支持面と被支持面との当たり付けを、クレーンを用いずに繰り返し行うことができる。これにより、クレーンを用いた作業を当たり付けと並行して行うことが可能になり、この回転機械の製造工程において、クレーンが当たり付けにより占有されることに起因して作業に遅れが生じてしまうのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る軸受装置によれば、支持面と被支持面との当たり付けを、クレーンを用いずに繰り返し行うことができる。
また、本発明に係る回転機械によれば、この回転機械の製造工程において、クレーンが当たり付けにより占有されることに起因して作業に遅れが生じてしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る蒸気タービンを模式的に示した図である。
【図2】図1に示す蒸気タービンが備えるジャーナル軸受装置の断面図である。
【図3】図2に示すA−A矢視断面図である。
【図4】図2に示すジャーナル軸受装置においてシリンダ部を前進させた状態を示す図である。
【図5】図3に示すジャーナル軸受装置においてシリンダ部を前進させた状態を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るジャーナル軸受装置の断面図である。
【図7】図7に示すジャーナル軸受装置においてシリンダ部を前進させた状態を示す図である。
【図8】図7に示すジャーナル軸受装置の変形例の断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るジャーナル軸受装置の断面図である。
【図10】図9に示すジャーナル軸受装置においてシリンダ部を前進させた状態を示す図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係るジャーナル軸受装置の断面図である。
【図12】図11に示すジャーナル軸受装置においてシリンダ部を前進させた状態を示す図である。
【図13】本発明の第5実施形態に係るジャーナル軸受装置の断面図である。
【図14】本発明の第6実施形態に係るジャーナル軸受装置の断面図である。
【図15】図14に示すジャーナル軸受装置においてシリンダ部を前進させた状態を示す図である。
【図16】図15に示すジャーナル軸受装置において軸受本体を周方向に回転させた状態を示す図である。
【図17】本発明の第7実施形態に係るジャーナル軸受装置の断面図である。
【図18】図17に示すB−B矢視断面図である。
【図19】図18に示すジャーナル軸受装置においてシリンダ部を前進させた状態を示す図である。
【図20】本発明の第8実施形態に係るジャーナル軸受装置の断面図である。
【図21】図20に示すC−C矢視断面図である。
【図22】図21に示すジャーナル軸受装置においてシリンダ部を前進させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態に係る蒸気タービン(回転機械)を説明する。
図1に示すように、蒸気タービン1は、蒸気が流入されるタービン2と、このタービン2に貫通するように設けられた回転軸3と、この回転軸3を回転可能に径方向に支持するジャーナル軸受装置(軸受装置)10と、回転軸3を回転可能に軸方向D1に支持するスラスト軸受装置4とを備えている。
【0026】
タービン2の内部には、軸方向D1に間隔をあけて複数のタービン静翼(図示せず)が配設されており、これらのタービン静翼は、回転軸3の外周面に径方向の外側に向けて突設されたタービン動翼(図示せず)と軸方向D1に交互に配列されている。
ジャーナル軸受装置10は、回転軸3においてタービン2の軸方向両端部をそれぞれ支持するように設けられている。
以上のように構成された蒸気タービン1によれば、タービン2の内部に流入された蒸気がタービン動翼とタービン静翼とを軸方向D1に交互に流れることによって回転軸3が回転駆動され、これにより、回転動力を出力することができる。
【0027】
次に、この蒸気タービン1が備えているジャーナル軸受装置10について説明する。
図2および図3に示すように、ジャーナル軸受装置10は、回転軸3を回転可能に径方向に支持する軸受本体11と、該軸受本体11を径方向外周側から支持して収容するケーシング12とを備えている。
【0028】
軸受本体11は、径方向の中央部を回転軸3が貫通するとともに該回転軸3と同軸に配置されるキャリアリング13と、キャリアリング13の内部に周方向D2に沿うように配置され回転軸3の外周面を回転可能に支持する複数のパッド14とを備えている。
キャリアリング13の内周面には、パッド14が収容される環状凹溝13aが形成されている。この環状凹溝13aにおいて径方向の内側を向く面の軸方向D1中央部には、各パッド14と対応して設けられ、各パッド14をキャリアリング13に対して軸方向D1および周方向D2に位置決めして保持するピボット部15が設けられている。
【0029】
ピボット部15は、その先端がパッド14に形成された凹部14aに係合されることで、各パッド14をキャリアリング13に対して軸方向D1および周方向D2に位置決めして保持するようになっている。
そして、環状凹溝13aの内部は、潤滑油が満たされる油層となっており、この油層に潤滑油が満たされた状態で各パッド14が潤滑油を介して回転軸3を支持することで、軸受本体11は回転軸3を回転可能に径方向に支持することができるようになっている。
【0030】
また、キャリアリング13の外周面13bは、軸線Oを含む縦断面において軸方向中央で径方向外側に突出する凸状曲面を形成し、全体として円弧状をなしている。さらに、キャリアリング13の外周面13bには、径方向の外側を向く外表面が球面状をなす板状部材である球面キー16が設けられている。球面キー16の外表面は、図3に示すように、周方向D2に沿う円弧状をなすとともに、図2に示すように、前記縦断面において軸方向中央で径方向外側に突出する凸状曲面を形成する円弧状をなしている。
【0031】
本実施形態では、図3に示すように、球面キー16は、キャリアリング13の外周面13bに周方向D2に間隔をあけて複数(図示の例では4つ)設けられている。また、図2に示すように、球面キー16は、キャリアリング13の外周面13bにおける軸方向D1中央部に、キャリアリング13に対して着脱可能に装着されている。
【0032】
図2および図3に示すように、以上のように構成された軸受本体11において、キャリアリング13の外周面13bが、軸受本体11の外周面を構成している。また、球面キー16の外表面が、軸受本体11においてケーシング12に支持される被支持面17を構成している。
また、軸受本体11は、上下方向D3に着脱可能に2分割される。本実施形態では、軸受本体11は、回転軸3の軸線O(軸受本体11の軸線)よりも下方に位置する軸受下半18と、上方に位置する軸受上半19とに分割される。
【0033】
ケーシング12は、当該ジャーナル軸受装置10が設置される設置面に固定されたケーシング架台21と、このケーシング架台21に固定されるとともに軸受本体11を径方向外周側から支持して収容する支持環22とを備えている。
支持環22は、回転軸3と同軸に配置される環状体であり、支持環22の内周面22aは、球面キー16の外表面である被支持面17と対応した形状に形成されている。支持環22の内周面22aは、図3に示すように、回転軸3の周方向D2に沿う円環状をなすとともに、図2に示すように、前記縦断面において被支持面17と対応する凹状曲面を形成している。
【0034】
また、支持環22は、上下方向D3に着脱可能に2分割される。本実施形態では、支持環22は、回転軸3の軸線O(支持環22の軸線)よりも下方に位置し軸受本体11を支持する下支持環23と、回転軸3の軸線Oよりも上方に位置し軸受本体11を上方から覆う上支持環24とに分割される。そして、これらのうちの下支持環23が、ケーシング架台21に固定され、上支持環24が、下支持環23に着脱可能に装着される。
図3に示すように、このように形成された下支持環23の内周面22aは、周方向D2に沿う半円弧状をなしている。そして、下支持環23の内周面22aの一部が、軸受本体11の被支持面17が当接される支持面25となっている。
【0035】
そして、図2および図3に示すように、本実施形態では、軸受本体11の被支持面17とケーシング12の支持面25との間には、ケーシング12に対して軸受本体11を昇降させる油圧ジャッキ(昇降手段)26が、ケーシング12内部に収容可能に設けられている。油圧ジャッキ26は、ケーシング12に設けられ軸受本体11に向かって進出可能なシリンダ部(進退部)27を有している。
【0036】
油圧ジャッキ26は、シリンダ部27が上下方向D3に沿って真直に進退し、かつシリンダ部27の先端27aが、軸受本体11において回転軸3の軸線O(軸受本体11の軸線)の下方に位置する部分である軸受本体11の下端部に当接するように、下支持環23の内部に設けられている。本実施形態では、油圧ジャッキ26は、シリンダ部27の先端27aが、軸受本体11の各軸方向端部11A、11Bの下端部に当接するように、下支持環23の各軸方向端部(ケーシング12の軸方向端部)22A、22Bの周方向D2中央部に設けられている。
【0037】
また、各シリンダ部27の先端27aは、軸受本体11において各シリンダ部27が前進したときに当接する部分の形状と対応した形状となっている。
また、油圧ジャッキ26には、このジャーナル軸受装置10の外部に配置された駆動ポンプ28が、着脱可能な接続部28aを介して接続されており、この駆動ポンプ28により油圧ジャッキ26が駆動されることでシリンダ部27を進退させることができるようになっている。また、駆動ポンプ28には、各駆動ポンプ28により進退されるシリンダ部27の進退量を制御する進退制御部29が接続されている。
【0038】
次に、以上のように構成されたジャーナル軸受装置10の作用について説明する。ここでは、支持面25と被支持面17との当たり付けを行ってジャーナル軸受装置10を組み立てる一連の軸受装置組立工程について説明する。
はじめに、ケーシング架台21を設置面に固定するとともに下支持環23をケーシング架台21に固定するケーシング設置工程を行う。
次いで、軸受本体11のうちの軸受下半18を下支持環23に取り付ける軸受取付け工程を行う。この際、油圧ジャッキ26のシリンダ部27を、ケーシング12内部に収容した状態で行い、被支持面17と支持面25とを当接させる。
【0039】
次いで、図4および図5に示すように、被支持面17を支持面25から離間させるために、軸受下半18を油圧ジャッキ26により上昇させる上昇工程を行う。この工程において、まず、駆動ポンプ28により各油圧ジャッキ26を駆動させ、各シリンダ部27を、前進量をあわせて前進させてシリンダ部27の先端27aを軸受下半18(軸受本体11)に当接させる。そして、この状態からさらにシリンダ部27を前進させ、軸受下半18をシリンダ部27によって押し上げてケーシング12に対して上昇させる。この際、被支持面17に対して次に行う研磨工程で処理を施すことができる程度上方まで軸受下半18を上昇させる。これにより、支持面25と被支持面17とを互いに当接した状態から離間した状態にすることができる。
【0040】
次いで、被支持面17と支持面25との当たり具合を確認し、この確認結果に基づいて被支持面17を研磨処理など行う研磨工程を行う。
次いで、支持面25と被支持面17とを再び当接させるために、軸受下半18を油圧ジャッキ26により下降させる下降工程を行う。この工程において、まず、駆動ポンプ28により各油圧ジャッキ26を駆動させ、各シリンダ部27を、後退量をあわせてケーシング12の内部に収容されるまで後退させて軸受下半18を下降させる。これにより、支持面25と被支持面17とを再び当接させ、ケーシング12によって軸受本体11を支持させることができる。
【0041】
以上に示した上昇工程から下降工程までを、被支持面17と支持面25との当たりの精度が所定の基準を満たすまで繰り返し行う。
そして、被支持面17と支持面25との当たりの精度が所定の基準を満たしたと判断した場合、下降工程を行った後、軸受下半18に軸受上半19を装着させ、さらに下支持環23に上支持環24を装着させる最終組付け工程を行う。
以上でジャーナル軸受装置10の組み立てが完了する。
【0042】
ここで、本実施形態では、支持面25が、被支持面17と対応した形状に形成された下支持環23の内周面22aの一部で構成されているので、以上のように支持面25と被支持面17との当たり付けを行いこれらの面の当たりの精度を向上させることで、この軸受本体11によって支持される回転軸3が、仮にその自重や他の構成要素(例えばタービン動翼)などの影響によって軸線Oに対して弓なりに変形してしまった場合であっても、ケーシング12に対して軸受本体11を、被支持面17を介してスリップさせることができる。すなわち、軸受本体11とケーシング12との間に歪みを生じさせることなく、前述のような回転軸3の変形にあわせて、軸受本体11を下支持環23の内周面22aに沿って揺動させることができる。これにより、ケーシング12によって軸受本体11を安定した状態で支持すること可能になり、ジャーナル軸受装置10による回転軸3の支持を安定したものとすることができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係るジャーナル軸受装置10によれば、支持面25と被支持面17との当たり付けを、クレーンを用いずに繰り返し行うことができる。
また、油圧ジャッキ26がケーシング12内部に収容可能に設けられているので、例えばクレーンを用いる場合に比べて、ジャーナル軸受装置10の外部に広いスペースを確保する必要が無く、支持面25と被支持面17との当たり付けに際し必要とされるスペースの広さを抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る蒸気タービン1によれば、前記本実施形態に係るジャーナル軸受装置10によって回転軸3が回転可能に径方向に支持されているので、支持面25と被支持面17との当たり付けを、クレーンを用いずに繰り返し行うことができる。これにより、クレーンを用いた作業を当たり付けと並行して行うことが可能になり、この蒸気タービン1の製造工程において、クレーンが当たり付けにより占有されることに起因して作業に遅れが生じてしまうのを抑制することができる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について図面を参照して説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付してその説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図6に示すように、本実施形態に係るジャーナル軸受装置40においては、油圧ジャッキ41が、軸受本体11内部に収容可能に設けられており、シリンダ部42は、ケーシング12に向かって進出可能となっている。
なお、図6では、図面の見易さのため、進退制御部29の図示を省略している。
【0046】
ここで、油圧ジャッキ41は、軸受本体11の各軸方向端部11A、11Bに同一の形態で設けられているので、以下では、軸受本体11の一方の軸方向端部11Aに設けられている油圧ジャッキ41に関して説明する。
油圧ジャッキ41は、軸受本体11の一方の軸方向端部11Aに、周方向D2に異なる位置で2つ設けられている。これらの2つの油圧ジャッキ41は、径方向に沿って互いに離間する方向に前進し、かつシリンダ部42の先端42aが下支持環23の内周面22aに当接するように、軸受下半18に設けられている。また、シリンダ部42の先端42aは、球面状をなしており、シリンダ部42の先端面42bの曲率は、下支持環23の内周面22aの曲率よりも大きくなっている。
【0047】
次に、以上のように構成されたジャーナル軸受装置40の作用について説明する。ここでは、軸受装置組立工程のうちの上昇工程を説明する。
図7に示すように、本実施形態では、上昇工程において、まず、各油圧ジャッキ41のシリンダ部42を、前進量をあわせて前進させてシリンダ部42の先端42aを下支持環23の内周面22aに当接させる。そして、この状態からさらに油圧ジャッキ41のシリンダ部42を前進させると、シリンダ部42の先端42aが下支持環23の内周面22aから反力を受けることで、シリンダ部42が軸受本体11を押し上げることとなる。これにより、油圧ジャッキ41によって軸受本体11を上昇させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、軸受本体11の各軸方向端部11A、11Bに設けられた2つの油圧ジャッキ41が、シリンダ部42が径方向に沿って互いに離間する方向に前進するように設けられているので、シリンダ部42を前進させると、シリンダ部42の先端42aが下支持環23の内周面22aに当接しつつこの内周面22aをすり上がるように移動する。つまり、シリンダ部42を前進させることで、シリンダ部42の先端42aが下支持環23の内周面22aをすり上がるように移動しながらシリンダ部42が軸受本体11を押し上げることとなる。
さらに、本実施形態では、シリンダ部42の先端面42bの曲率が、下支持環23の内周面22aの曲率よりも大きくなっていることから、前述のすり上がりが円滑に行われることとなる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係るジャーナル軸受装置40によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる上、油圧ジャッキ41が、軸受本体11内部に収容可能に設けられていることから、既存のジャーナル軸受装置における軸受本体を交換するだけで前述の作用効果を奏することが可能なので、例えば油圧ジャッキ41がケーシング12内部に収容可能に設けられ既存のジャーナル軸受装置におけるケーシングを交換する場合に比べて、本実施形態のジャーナル軸受装置40を既存設備に容易に適用することができる。
【0050】
また、油圧ジャッキ41が、周方向D2に異なる位置で2つ設けられているので、軸受本体11を周方向D2で異なる位置で支持することが可能になり、油圧ジャッキ41によってケーシング12に対して軸受本体11を上昇させた状態であっても、この油圧ジャッキ41により軸受本体11を安定して支持することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、軸受本体11の各軸方向端部11A、11Bに設けられた2つの油圧ジャッキ41は、シリンダ部42が径方向に沿って互いに離間する方向に進退するように設けられているものとしたが、これに限られるものではない。
【0052】
また、本実施形態では、シリンダ部42の先端42aは、球面状をなしているものとしたが、これに限られるものではない。
例えば、図8に示すジャーナル軸受装置50のように、下支持環23の内周面22aに、一定の傾斜角度で形成された底面53aを有する凹部53が設けられていても良い。この凹部53は、下支持環23の内周面22aにおいて各油圧ジャッキ51に対応する位置に上方に向けて開口して設けられており、その底面53aが油圧ジャッキ51のシリンダ部52が進退する方向に対して直交する方向に延在している。この場合、シリンダ部52の先端52aが、例えば平面状に形成されていたとしても、凹部53の底面53aが一定の傾斜角度で形成されているので、シリンダ部52が進退する過程においてシリンダ部52の先端52aに当接する面(底面53a)の角度が変化することがなく、油圧ジャッキ51により軸受本体11を安定して支持することができる。
【0053】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態について図面を参照して説明する。
なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付してその説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図9に示すように、本実施形態に係るジャーナル軸受装置60においては、油圧ジャッキ61は、シリンダ部62の先端62aに回転軸3と平行な軸回りに回転可能に設けられ、軸受本体11に当接可能なローラ部63を有する。
【0054】
ここで、油圧ジャッキ61は、ケーシング12の下支持環23の各軸方向端部22A、22Bに同一の形態で設けられているので、以下では、下支持環23の一方の軸方向端部22Aに設けられている油圧ジャッキ61に関して説明する。
油圧ジャッキ61は、下支持環23の一方の軸方向端部22Aに、周方向D2に異なる位置で2つ設けられている。これらの2つの油圧ジャッキ61は、シリンダ部62が径方向に沿って互いに接近する方向に前進し、かつシリンダ部62の先端62aのローラ部63が軸受本体11の外周面13bに周方向D2に異なる位置で当接するように設けられている。
【0055】
次に、以上のように構成されたジャーナル軸受装置60の作用について説明する。ここでは、軸受装置組立工程のうちの軸受取付け工程から下降工程までを説明する。
図10に示すように、本実施形態では、軸受取付け工程において、軸受下半18だけでなく軸受上半19も、つまり軸受本体11全体を下支持環23に取り付ける。
【0056】
次いで、上昇工程において、各シリンダ部62を、前進量をあわせて前進させ、各シリンダ部62の先端62aに設けられたローラ部63を軸受本体11の外周面13bに当接させる。そして、この状態からさらにシリンダ部62を前進させることで、軸受本体11にローラ部63を当接させつつ軸受本体11を上昇させる。
【0057】
ここで、ローラ部63が、回転軸3と平行な軸回りに回転可能に設けられているので、被支持面17を支持面25から離間させた状態でローラ部63を回転させることで、軸受本体11を周方向D2に回転させることができる。すなわち、この状態で軸受本体11に周方向D2(回転軸3の軸回り)に回転させる力を加えると、この力が軸受本体11の外周面13bを介してローラ部63に伝達され、油圧ジャッキ61が軸受本体11を支持しつつ、ローラ部63が軸回りに回転して軸受本体11の外周面13bに対して周方向D2に相対的に移動することとなる。
【0058】
そこで、上昇工程と研磨工程との間に、支持面25と対向した状態で下方に位置する被支持面17が上方に移動するように軸受本体11を周方向D2に回転させる第1回転工程を行う。
そして、研磨工程において上方に移動された被支持面17を研磨処理などした後、この研磨工程と下降工程との間に、第1回転工程により上方に移動された被支持面17を、支持面25と対向する元の状態に戻す第2回転工程を行い、その後、下降工程を行う。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係るジャーナル軸受装置60によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる上、軸受本体11を周方向D2に回転させることで、支持面25と対向した状態で下方に位置する被支持面17を上方に移動させることが可能になる。これにより、ケーシング12と軸受本体11との間の隙間が小さくても、被支持面17の研磨処理などをケーシング12が支障になることなく円滑に行うことができる。
【0060】
また、油圧ジャッキ61が、周方向D2に異なる位置で2つ設けられているので、軸受本体11の周方向D2で異なる位置に2つのローラ部63を当接させることが可能になり、油圧ジャッキ61によってケーシング12に対して軸受本体11を上昇させた状態であっても、この油圧ジャッキ61により軸受本体11を安定して支持することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、ケーシング12の各軸方向端部22A、22Bに設けられた2つの油圧ジャッキ61は、シリンダ部62が径方向に沿って互いに接近する方向に前進するように設けられているものとしたが、これに限られるものではなく、例えばシリンダ部62が上下方向D3に進退するように設けられていても良い。
また、本実施形態では、ケーシング12の各軸方向端部22A、22Bには2つの油圧ジャッキ61が設けられているものとしたが、これに限られるものではなく、例えば油圧ジャッキ61が、周方向D2に異なる位置で3つ以上設けられていても良い。
【0062】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る第4実施形態について図面を参照して説明する。
なお、この第4実施形態においては、第3実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付してその説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図11に示すように、本実施形態に係るジャーナル軸受装置70においては、油圧ジャッキ71に、ローラ部63が、シリンダ部72の先端72aに周方向D2に異なる位置として複数設けられている。本実施形態では、シリンダ部72は、径方向に進退可能な本体部73と、該本体部73の先端に設けられるとともに周方向D2に延設され、かつローラ部63が取り付けられたアーム部74とを有している。
アーム部74は、周方向D2中央部が本体部73の先端に連結されており、周方向D2の両端部にローラ部63がそれぞれ取り付けられている。本実施形態では、アーム部74には、2つのローラ部63が取り付けられている。
【0063】
ここで、油圧ジャッキ71は、ケーシング12の下支持環23の各軸方向端部22A、22Bに同一の形態で設けられているので、以下では、下支持環23の一方の軸方向端部22Aに設けられている油圧ジャッキ71に関して説明する。
油圧ジャッキ71は、本体部73が上下方向D3のうち回転軸3の軸線O(軸受本体11の軸線)を通る方向に沿って真直に進退するように、下支持環23の一方の軸方向端部22Aの周方向D2中央部に設けられている。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係るジャーナル軸受装置70によれば、第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる上、ローラ部63が、シリンダ部72の先端72aに周方向D2に異なる位置として複数設けられているので、図12に示すように、軸受本体11の周方向D2で異なる位置に複数のローラ部63を当接させることが可能になり、油圧ジャッキ71によってケーシング12に対して軸受本体11を上昇させた状態であっても、この油圧ジャッキ71により軸受本体11を安定して支持することができる。しかも、1つのシリンダ部72に複数のローラ部63が設けられていることから、油圧ジャッキ71によって軸受本体11を安定して支持しつつ油圧ジャッキ71の数を少なくすることが可能になり、ジャーナル軸受装置70の構成の簡素化を図ることができる。
なお、本実施形態では、アーム部74には、2つのローラ部63が取り付けられているものとしたが、これに限られるものではなく、3つ以上のローラ部63が取り付けられていても良い。
【0065】
(第5実施形態)
次に、本発明に係る第5実施形態について図面を参照して説明する。
なお、この第5実施形態においては、第4実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付してその説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図13に示すように、本実施形態に係るジャーナル軸受装置80においては、アーム部84は、本体部73に対して首振り調整自在に設けられている。
【0066】
アーム部84は、例えば本体部73の先端にピン部材などを介して回転軸3の軸線Oと平行なアーム軸O1回りに旋回可能に設けられている。
また、油圧ジャッキ81のシリンダ部82には、アーム部84のアーム軸O1回りの旋回量を調整する首振りジャッキ85が設けられている。この首振りジャッキ85は、本体部73においてアーム部84よりも基端側に固定され、この首振りジャッキ85が有する首振りシリンダ86は、アーム部84においてアーム軸O1とは周方向D2で異なる位置に固定されている。
【0067】
このように構成された首振りジャッキ85によれば、首振りシリンダ86を進退させることでアーム部84のアーム軸O1回りの旋回量を調整することができる。
そして、このように構成された油圧ジャッキ81によれば、アーム部84のアーム軸O1回りの旋回量を調整することで、アーム部84を、本体部73に対して首振り調整することができる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係るジャーナル軸受装置80によれば、第4実施形態と同様の作用効果を奏することができる上、アーム部84が、本体部73に対して首振り調整自在に設けられているので、油圧ジャッキ81によってケーシング12に対して軸受本体11を上昇させた状態で、例えばこの軸受本体11に不意の外力が加えられる等して、仮に軸受本体11の軸線(回転軸3の軸線O)がケーシング12に対してずれるように軸受本体11が移動しようとした場合であっても、アーム部84を首振り調整することで、軸受本体11の周方向D2で異なる位置に複数のローラ部63を当接させた状態を維持することができる。これにより、油圧ジャッキ81による軸受本体11の支持をより一層安定させることができる。
【0069】
(第6実施形態)
次に、本発明に係る第6実施形態について図面を参照して説明する。
なお、この第6実施形態においては、第3実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付してその説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図14に示すように、本実施形態に係るジャーナル軸受装置90においては、油圧ジャッキ61は、軸受本体11内部に収容可能に設けられており、シリンダ部62は、ケーシング12に向かって進出可能となっている。
【0070】
ここで、油圧ジャッキ61は、軸受本体11の各軸方向端部11A、11Bに同一の形態で設けられているので、以下では、軸受本体11の一方の軸方向端部11Aに設けられている油圧ジャッキ61に関して説明する。
油圧ジャッキ61は、軸受本体11の一方の軸方向端部11Aに、周方向D2に異なる位置で複数設けられている。本実施形態では、油圧ジャッキ61は、周方向D2に互いに等しい間隔をあけて5つ設けられている。つまり、軸受本体11には、軸線(回転軸3の軸線O)回り180度以内に少なくとも2つの油圧ジャッキ61が設けられている。また、各油圧ジャッキ61は、シリンダ部62が軸受本体11の径方向に沿って真直に進退するように設けられている。
【0071】
次に、以上のように構成されたジャーナル軸受装置90の作用について説明する。ここでは、軸受装置組立工程のうち、上昇工程を説明する。
図15に示すように、本実施形態では、上昇工程において、各シリンダ部62を同期させた状態で前進させ、各シリンダ部62の先端62aに設けられたローラ部63を下支持環23の内周面22aに当接させる。そして、この状態からさらにシリンダ部62を前進させると、シリンダ部62の先端62aに設けられたローラ部63が下支持環23の内周面22aから反力を受けることで、シリンダ部62が軸受本体11を押し上げることとなる。これにより、軸受本体11が上昇され、被支持面17を支持面25から離間させこれらの両面を対向させた状態で下支持環23の内周面22aにローラ部63が当接されることとなる。
【0072】
ここで、ローラ部63が、回転軸3と平行な軸回りに回転可能に設けられているので、被支持面17を支持面25から離間させた状態でローラ部63を回転させることで、軸受本体11を周方向D2に回転させることができる。すなわち、この状態で軸受本体11に周方向D2(回転軸3の軸回り)に回転させる力を加えると、この力がシリンダ部62を介してローラ部63に伝達され、油圧ジャッキ61が軸受本体11を支持しつつローラ部63が軸回りに回転して下支持環23の内周面22aに対して周方向D2に相対的に移動することとなる。
【0073】
また、本実施形態では、軸受本体11を周方向D2に回転させる際に軸受本体11の姿勢が安定するように、各シリンダ部62の進退量が、軸受本体11の周方向D2の回転に伴った下支持環23の内周面22aとの径方向の距離の変化に応じて進退制御部29によって調整される。すなわち、上昇された状態の軸受本体11の外周面13bでは、周方向D2の位置によって下支持環23の内周面22aとの径方向の距離が異なるため、シリンダ部62の進退量が一定のままだと軸受本体11を、姿勢を安定させたまま回転させることができない。そこで、軸受本体11の周方向D2の回転に伴って、各シリンダ部62の進退量が、軸受本体11の軸線(回転軸3の軸線O)がずれずに軸受本体11の姿勢が安定するように進退制御部29によって調整される。
【0074】
さらに、図16に示すように、本実施形態では、下支持環23の内周面22aが、周方向D2に沿う半円弧状をなすとともに、軸受本体11に、軸線(回転軸3の軸線O)回り180度以内に少なくとも2つの油圧ジャッキ61が設けられているので、軸受本体11を周方向D2に回転させる過程において、下支持環23の内周面22aに、少なくとも2つのローラ部63を当接させつづけることができる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態に係るジャーナル軸受装置90によれば、第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる上、油圧ジャッキ61が、軸受本体11内部に収容可能に設けられていることから、既存のジャーナル軸受装置における軸受本体を交換するだけで前述の作用効果を奏することが可能なので、例えば油圧ジャッキ61がケーシング12内部に収容可能に設けられ既存のジャーナル軸受装置におけるケーシングを交換する場合に比べて、本実施形態のジャーナル軸受装置90を既存設備に容易に適用することができる。
【0076】
また、油圧ジャッキ61が、周方向D2に異なる位置で2つ設けられているので、ケーシング12の周方向D2で異なる位置に2つのローラ部63を当接させることが可能になり、油圧ジャッキ61によってケーシング12に対して軸受本体11を上昇させた状態であっても、この油圧ジャッキ61により軸受本体11を安定して支持することができる。
【0077】
(第7実施形態)
次に、本発明に係る第7実施形態について図面を参照して説明する。
なお、この第7実施形態においては、第6実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付してその説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図17から図19に示すように、本実施形態に係るジャーナル軸受装置100においては、軸受本体11は、軸方向端部11A、11Bに開口して油圧ジャッキ102を収容する収容凹部101を有している。収容凹部101は、各軸方向端部11A、11Bにおいて径方向の外側および軸方向D1の外側に向けてそれぞれ開口しており、軸受本体11の外周面13bの全長にわたって円環状に形成されている。
【0078】
そして、油圧ジャッキ102は、軸受本体11に着脱可能に設けられている。本実施形態では、油圧ジャッキ102は、収容凹部101に対応する円環状(形状)に形成されるとともに収容凹部101に着脱可能な昇降本体部103を備えており、この昇降本体部103から、径方向の外側に向けて複数のシリンダ部62が、周方向D2の異なる位置に設けられている。
このように構成された油圧ジャッキ102によれば、昇降本体部103を収容凹部101に装着させ、また、収容凹部101から離脱させることで、軸受本体11に着脱させることができる。
【0079】
以上説明したように、本実施形態に係るジャーナル軸受装置100によれば、第6実施形態と同様の作用効果を奏することができる上、油圧ジャッキ102が、軸受本体11に着脱可能に設けられているので、一のジャーナル軸受装置100において、油圧ジャッキ102を用いて被支持面17と支持面25との当たり付けをした後、一のジャーナル軸受装置100から油圧ジャッキ102を離脱させ、この油圧ジャッキ102を他のジャーナル軸受装置100における被支持面17と支持面25との当たり付けに用いることができる。これにより、ジャーナル軸受装置100の低コスト化を図ることができるとともに、仮に油圧ジャッキ102が故障してしまった場合であっても、容易に交換することができる。
また、軸受本体11が、軸方向端部11A、11Bに開口して油圧ジャッキ102を収容する収容凹部101を有するので、油圧ジャッキ102を、収容凹部101を通して軸方向D1の外側に離脱、もしくは軸方向D1の外側から装着させることが可能になる。これにより、油圧ジャッキ102の着脱を容易に行うことができる。
【0080】
また、収容凹部101が軸受本体11の外周面13bの全長にわたって形成され、油圧ジャッキ102が収容凹部101に対応した形状に形成された昇降本体部103を備えているので、この昇降本体部103に、複数のシリンダ部62を周方向D2の間隔を密にして設けることで、下支持環23の内周面22aにローラ部63を周方向D2の異なる位置で多数当接させることが可能になり、油圧ジャッキ102によってケーシング12に対して軸受本体11を上昇させた状態であっても、この油圧ジャッキ102により軸受本体11を安定した状態で確実に支持することができる。
なお、本実施形態では、油圧ジャッキ102を収容する収容凹部101が、軸方向端部11A、11Bに開口しているものとしたが、これに限られるものではない。また、収容凹部101は、軸受本体11の外周面13bの全長にわたって形成されていなくても良い。
【0081】
(第8実施形態)
次に、本発明に係る第8実施形態について図面を参照して説明する。
なお、この第8実施形態においては、第3実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付してその説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図20から図22に示すように、本実施形態に係るジャーナル軸受装置110においては、ケーシング12は、軸方向端部22A、22Bに開口して油圧ジャッキ112を収容する収容凹部111を有している。収容凹部111は、軸方向端部22A、22Bにおいて径方向の内側および軸方向D1の外側に向けてそれぞれ開口しており、下支持環23の内周面22aの全長にわたって半円弧状に形成されている。
【0082】
そして、油圧ジャッキ112は、ケーシング12に着脱可能に設けられている。本実施形態では、油圧ジャッキ112は、収容凹部111に対応する半円弧状(形状)に形成されるとともに収容凹部111に着脱可能な昇降本体部113を備えており、この昇降本体部113から、径方向の内側に向けて複数のシリンダ部62が、周方向D2の異なる位置に設けられている。
このように構成された油圧ジャッキ112によれば、昇降本体部113を収容凹部111に装着させ、また、収容凹部111から離脱させることで、ケーシング12に着脱させることができる。
【0083】
以上説明したように、本実施形態に係るジャーナル軸受装置110によれば、第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる上、油圧ジャッキ112が、ケーシング12に着脱可能に設けられているので、一のジャーナル軸受装置110において、油圧ジャッキ112を用いて被支持面17と支持面25との当たり付けをした後、一のジャーナル軸受装置110から油圧ジャッキ112を離脱させ、この油圧ジャッキ112を他のジャーナル軸受装置110における被支持面17と支持面25との当たり付けに用いることができる。これにより、ジャーナル軸受装置110の低コスト化を図ることができるとともに、仮に油圧ジャッキ112が故障してしまった場合であっても、容易に交換することができる。
【0084】
また、ケーシング12が、軸方向端部22A、22Bに開口して油圧ジャッキ112を収容する収容凹部111を有するので、油圧ジャッキ112を、収容凹部111を通して軸方向D1の外側に離脱、もしくは軸方向D1の外側から装着させることが可能になる。これにより、油圧ジャッキ112の着脱を容易に行うことができる。
また、収容凹部111が下支持環23の内周面22aの全長にわたって形成され、油圧ジャッキ112が収容凹部111に対応した形状に形成された昇降本体部113を備えているので、この昇降本体部113に、複数のシリンダ部62を周方向D2の間隔を密にして設けることで、軸受本体11の外周面13bにローラ部63を周方向D2の異なる位置に多数当接させることが可能になり、油圧ジャッキ112によってケーシング12に対して軸受本体11を上昇させた状態であっても、この油圧ジャッキ112により軸受本体11を安定した状態で確実に支持することができる。
【0085】
また、油圧ジャッキ112がケーシング12に着脱可能に設けられていることから、例えば油圧ジャッキ112が軸受本体11に着脱可能に設けられている場合に比べて、この油圧ジャッキ112により軸受本体11を安定した状態で確実に支持しつつ軸受本体11を周方向D2に回転させるために必要な油圧ジャッキ112の周方向D2の大きさを小さく抑えることができる。
なお、本実施形態では、油圧ジャッキ112を収容する収容凹部111が、軸方向端部22A、22Bに開口しているものとしたが、これに限られるものではない。また、収容凹部111は、下支持環23の内周面22aの全長にわたって形成されていなくても良い。
【0086】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記各実施形態では、回転機械として蒸気タービン1を採用した場合を示したが、これに代えて、回転機械としてガスタービンや原子力タービン、或いは圧縮空気を生成する圧縮機などを採用することも可能である。
【0087】
また、前記各実施形態では、ジャーナル軸受装置10、40、50、60、70、80、90、100、110として、キャリアリング13の内部に潤滑油が満たされる構成を採用した場合を示したが、これに限られるものではなく、ジャーナル軸受装置としていわゆるボールベアリングなどの構成を採用することも可能である。
また、前記各実施形態では、ケーシング12に対して軸受本体11を昇降させる昇降手段として油圧ジャッキ26、41、51、61、71、81、102、112を採用したが、これに限られるものではなく、例えば電動式のジャッキを採用しても良く、また、軸受本体11内部またはケーシング12内部に収容可能に設けられるものであれば、ジャッキとは異なる機械装置を用いてもよい。
【0088】
また、前記各実施形態では、被支持面17が球面キー16の外表面で構成されているものとしたが、これに限られるものではない。例えば、球面キー16に代えて、外表面が周方向D2に沿ってのみ曲面を形成する円筒キーを採用し、この円筒キーの外表面で被支持面を構成してもよい。また、軸受下半18の外周面13bの全体で被支持面を構成し、下支持環23の内周面22aの全体で支持面を構成しても良い
【0089】
また、前記各実施形態では、ケーシング12は、ケーシング架台21と下支持環23とが各別に形成され連結されるものとしたが、これに限られるものではなく、ケーシング架台21と下支持環23とが一体に形成されていても良い。
また、ケーシング12は、軸受本体11を径方向外周側から支持して収容するものであれば、前記各実施形態に示したものに限られない。
【0090】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 蒸気タービン(回転機械)
3 回転軸
10、40、50、60、70、80、90、100、110 ジャーナル軸受装置(軸受装置)
11 軸受本体
11A、11B 軸受本体の軸方向端部
12 ケーシング
17 被支持面
22A、22B 下支持環の軸方向端部(ケーシングの軸方向端部)
25 支持面
26、41、51、61、71、81、102、112 油圧ジャッキ(昇降手段)
27、42、52、62、72、82 シリンダ部(進退部)
27a、42a、52a、62a、72a シリンダ部の先端
63 ローラ部
73 本体部
74、84 アーム部
101、111 収容凹部
D1 軸方向
D2 周方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を回転可能に径方向に支持する軸受本体と、
該軸受本体を径方向外周側から支持して収容するケーシングとを備え、
前記軸受本体において前記ケーシングに支持される被支持面と該被支持面に当接される前記ケーシングの支持面との間には、前記ケーシングに対して前記軸受本体を昇降させる昇降手段が、前記軸受本体内部または前記ケーシング内部に収容可能に設けられていることを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
請求項1記載の軸受装置において、
前記昇降手段は、前記ケーシングまたは前記軸受本体の一方に設けられ他方に向かって進出可能な進退部と、該進退部の先端に前記回転軸と平行な軸回りに回転可能に設けられ、前記ケーシングまたは前記軸受本体の他方に当接可能なローラ部とを有することを特徴とする軸受装置。
【請求項3】
請求項2記載の軸受装置において、
前記昇降手段は、周方向に異なる位置で少なくとも2つ設けられていることを特徴とする軸受装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の軸受装置において、
前記ローラ部は、前記進退部の先端に周方向に異なる位置として複数設けられていることを特徴とする軸受装置。
【請求項5】
請求項4記載の軸受装置において、
前記進退部は、径方向に進退可能な本体部と、該本体部の先端に設けられるとともに周方向に延設され、かつ前記ローラ部が取り付けられたアーム部とを有し、
前記アーム部は、前記本体部に対して首振り調整自在に設けられていることを特徴とする軸受装置。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項に記載の軸受装置において、
前記昇降手段は、前記軸受本体または前記ケーシングに着脱可能に設けられていることを特徴とする軸受装置。
【請求項7】
請求項6記載の軸受装置において、
前記軸受本体または前記ケーシングは、軸方向端部に開口して前記昇降手段を収容する収容凹部を有することを特徴とする軸受装置。
【請求項8】
請求項1から7いずれか1項に記載の軸受装置によって回転軸が回転可能に径方向に支持されていることを特徴とする回転機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−21541(P2011−21541A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167115(P2009−167115)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】