説明

軸肥大加工機

【課題】ワークの少量多品種生産に好適した軸肥大加工機を提供する。
【解決手段】軸肥大加工機は、駆動側及び従動側ホルダユニット(6a,6b)と、これらホルダユニット(6a,6b)内にそれぞれ設けられ、その先端部に保持スリーブ(38)を有する保持内筒(22)と、各保持内筒(22)内にそれぞれ配置され、ワークWの両端面を受ける裏当て部材(46)と、これら裏当て部材(46)を保持内筒(22)内にて独立して移動させる移動装置とを備え、各移動装置は保持内筒(22)内を基準線(A)に沿って進退可能な進退部材(44)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属棒材からなるワークの途中に拡径したカラー(軸肥大部)を成形する軸肥大加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の軸肥大加工機は、ワークがセットされる基準線に沿って離間した駆動側及び従動側回転保持体を備え、これら回転保持体はワークの両端部を嵌入させて保持可能であり、そして、嵌入されたワークの両端面をその内部の裏当て部材にて支持可能となっている(特許文献1)。
また、駆動側及び従動側回転保持体は基準線に沿って相対的に接離可能であるとともに、その一方、例えば従動側回転保持体は基準線に対して傾動可能となっている。更に、駆動側回転保持体はワークとともに基準線、即ち、ワークの軸線回りに回転可能であり、この回転に伴い、従動側回転保持体もまたワークとともに基準線の回りに従動回転することになる。
【0003】
それ故、上述の軸肥大加工機によれば、駆動側及び従動側回転保持体内にワークの両端部が保持され、且つ、その両端面が裏当て部材間の挟持された状態で、例えば従動側回転保持体が基準線に沿い駆動側保持体に向けて押し出され、そして、基準線に対して所定の角度にて傾動されると、ワークは基準線に沿う加圧力(圧縮力)と基準線と交差する方向への曲げ力とを同時に受けることから、駆動側及び従動側回転保持体の互いに対向する外端面間にてワークに塑性変形が生じる。
【0004】
この場合、曲げ方向でみてワークの内側に塑性変形による膨らみが生じ、この分だけワーク長さは従動側回転保持体の更なる押し込み移動を伴って収縮し、この際、ワークが基準線の回りに回転されていれば、上述した膨らみはワークの全周に亘って成長する。この後、ワークへの加圧を維持しながら従動側回転保持体の傾動を元に戻すことで、駆動側及び従動側回転保持体の外端面間ワークの一部を拡径させたカラーが成形される。
【特許文献1】特許第3418698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した駆動側及び従動側回転保持体内の裏当て部材は、ワークの対応する側の端面を単に支持するのみならず、ワークの端面と成形されたカラーとの間の長さ、即ち、カラー位置を決定する重要な構成要素となる。
それ故、カラー位置を変更する場合には、裏当て部材を長さが異なる裏当て部材に交換するか、又は、裏当て部材とワークの端面との間にスペーサを付加的に組み込む必要がある。しかしながら、裏当て部材の交換やスペーサの組込は軸肥大加工機の段取り作業を複雑且つ困難にすることから、特許文献1の軸肥大加工機はワークの少量多品種生産に好適にしない。
【0006】
本発明は、上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところはワークの少量多品種生産に好適した軸肥大加工機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の軸肥大加工機は、金属棒のワークが配置されるべき基準線と、基準線と直交する駆動側外端面を有し、基準線上のワークの一端部を嵌入させて保持し、ワークとともに基準線の回りに回転可能な駆動側回転保持体と、この駆動側回転保持体内に配置され、駆動側外端面から基準線に沿って離間し駆動側回転保持体内に嵌入されたワークの一端面と当接可能な駆動側裏当て部材と、駆動側回転保持体に対して基準線に沿って離間して配置され、駆動側外端面と対向する従動側外端面を有し、基準線上のワークの他端部を嵌入させて保持し、ワークの回転中、ワークとともに基準線の回りを従動回転する従動側回転保持体と、この従動側回転保持体内に配置され、従動側外端面から基準線に沿って離間し且つ従動側回転保持体内に嵌入されたワークの他端面と当接可能な従動側裏当て部材と、駆動側及び従動側回転保持体を基準線に沿って相対的に接離可能とし、両保持体が互いに相対的に近接する方向に移動され、駆動側及び従動側裏当て部材間にワークを挟み込んだ状態で、ワークを加圧可能な加圧手段と、駆動側及び従動側保持体の一方を基準線に対して傾動させる傾動手段と、駆動側及び従動側裏当て部材にそれぞれ割り当てて設けられ、対応する側の裏当て部材を基準線に沿って移動させる駆動側及び従動側移動装置とを備える(請求項1)。
【0008】
上述した請求項1の軸肥大加工装置によれば、駆動側及び従動側装置はその駆動側及び従動側裏当て部材を基準線に沿い独立して移動させ、成形すべきワークのカラー位置に応じて、前記裏当て部材と対応する側の回転保持体の外端面との間の距離が調整される。
各移動装置は、対応する側の回転保持体の外端面とその裏当て部材との間の距離を検出する検出手段を含んでいるのが好ましく(請求項2)、この場合には、裏当て部材の位置を自動調整が可能となる。
【0009】
具体的には、各移動装置は、対応する側の保持体に螺合され、その軸線回りの回転により基準線に沿って進退して裏当て部材との当接位置を変更可能な進退部材と、この進退部材を前記軸線回りに回転させる駆動手段と備えることができる(請求項3)。
この場合、進退部材と裏当て部材との当接位置が変更されることで、裏当て部材と対応する側の回転保持体の外端面との間の距離が調整される。
【0010】
一方、上述した駆動手段は、進退部材の外面に形成され、基準線に沿って延びる雄スプラインと、この雄スプラインに噛み合う雌スプラインを有した従動プーリと、この従動プーリを回転させる駆動源とを含んでいるのが好ましい(請求項4)。この場合、雌雄のスプラインは従動プーリに対して基準線に沿う進退部材の移動を許容しつつ、進退部材に回転力を伝達する。
【0011】
上述の駆動源は、保持体に対して固定して配置され、駆動プーリを有するモータと、駆動プーリと従動プーリとの間に掛け回された動力伝達ベルトと、モータと駆動プーリとの間に介挿されたクラッチとを有しているのが望ましい(請求項5)。この場合、ワークの成形加工中、クラッチは従動プーリからモータに至る動力伝達経路を断ち、保持体の基準線回りの回転を可能にする。
【0012】
更に、進退部材は、裏当て部材側の進退ヘッドと、この進退ヘッドとは分離して設けられ、保持体に対して螺合する雄ねじ部とを有した分割構造をなし、そして、軸肥大加工装置は、他方の保持体側に向け、裏当て部材を雄ねじ部とは独立し且つ進退ヘッドとともに押し出し可能な押し出しアクチュエータを更に備えているのが望ましい(請求項6)。
ワークの成形加工後、押し出しアクチュエータが必要に応じて作動されたとき、ワークの端面は進退部材の進退ヘッドを介して裏当て部材が押し出されることで、その回転保持体から強制的に排出される。
【0013】
更にまた、各回転保持体は、その外端面を有し且つワークの対応する側の端部が嵌入可能なスリーブを含み、このスリーブは、前記外面面側の部分がその残部から分離可能な2分割構造をなしているのが好ましく(請求項7)。この場合、スリーブの外面側の部分が損傷しても、この部分のみが交換される。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜3の軸肥大加工機は、駆動側及び従動側回転保持体内の裏当て部材を基準線に沿い独立して移動させることができるので、成形すべきワークのカラー位置に応じて、各回転保持体の外端面と裏当て部材との間の距離を簡単に調整できる。それ故、その段取り作業が容易となり、少量多品種生産に好適した軸肥大加工機の提供が可能となる。
請求項4の軸肥大加工機は、基準線に沿う進退部材の移動に拘わらず、進退部材の回転が可能となり、請求項5の軸肥大加工機は、モータが保持体とともに回転しないので、保持体側の回転支持に要求される負荷を大幅に軽減できる。
【0015】
請求項6の軸肥大加工機は、ワークの成形加工後、ワークの端部が押し出しアクチュエータによりその保持体から強制的に排出されても、ワークの成形加工時における裏当て部材の位置、即ち、進退部材の雄ねじ部の位置が変更されることはない。
請求項7の軸肥大加工機は、外端面側のスリーブの一部分が損傷しても、その一部分だけの交換が可能となり、その稼働効率の向上に大きく寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1を参照すると、一実施例の軸肥大加工機が縦断面にて示されている。
軸肥大加工機は、金属の棒材が配置されるべき基準線Aを有し、この基準線Aは水平に延びている。ここで、ワークは中実及び中空の何れであっても良いが、ワークの直径は例えば20〜40mm程度が好適する。
基準線Aの下方には装置フレーム2が配置され、この装置フレーム2は基準線Aに沿って延びている。図1でみて、装置フレーム2の左端部には一対の支持壁4が設けられており、これら支持壁4は基準線Aを挟んで配置され、装置フレーム2の底から立設されている。
【0017】
支持壁4間には駆動側ホルダユニット6aが配置され、この駆動側ホルダユニット6aはユニットフレーム8を備えている。このユニットフレーム8は両支持壁4の近傍に、これらの内面に沿って配置された一対の側板10と、これら側板10の上部を互いに連結するブロック形状の支持外筒12と、側板10の下端を相互に連結する底板14とを有する。
【0018】
図1でみて各側板10の右縁はその上部が支持外筒12から突出し、これら突出部10aは軸16を介して対応する側の支持壁4に回転自在に支持されている。なお、図1中、参照符号17は軸16を支持する軸受プレートを示し、この軸受プレート17は支持壁4の端縁に固定されている。
一方、底板14の下面には先端ブラケット18が取り付けられ、この先端ブラケット18に傾動シリンダ(傾動手段)20におけるピストンロッドの先端が連結されている。なお、傾動シリンダ20は装置フレーム2の底に後端ブラケット19を介して回動自在に取り付けられている。図1に示す状態から、傾動シリンダ20が伸長されると、上述したユニットフレーム8は一対の軸16を中心として上方、即ち、図1中の矢印Cで示す時計方向に傾動することができる。
【0019】
支持外筒12は基準線Aと同心のシリンダボアを有し、このシリンダボアは支持外筒12を貫通して形成されている。シリンダボアには保持内筒(駆動側回転保持体)22が配置され、この保持内筒22は基準軸Aと同軸上に位置付けられ、シリンダボアを貫通している。保持内筒22はその両端部にて、スラストころ軸受24により支持外筒12に回転自在に支持されている一方、スラストころ軸受24間に配置された一対のラジアル玉軸受26によっても支持外筒12に対して回転自在に支持されている。なお、ラジアル玉軸受26は図1でみて右側のスラストころ軸受24に隣接して配置されている。
【0020】
図1でみて保持内筒22の左端は支持外筒12から突出し、この突出端にプーリ28が取り付けられている。このプーリ28は保持内筒22と一体的に回転可能である。一方、ユニットフレーム8の底板14には取付台30を介して電動モータ32が配置され、この電動モータ32はその出力軸にプーリ34を有する。このプーリ34とプーリ28とには伝動ベルト36が掛け回されており、電動モータ32が駆動されることで、保持内筒22は一方向に回転される。
【0021】
一方、保持内筒22の右端には保持スリーブ38が嵌合されており、この保持スリーブ38は保持内筒22から所定の距離だけ突出した状態で、取付板40を介して保持内筒22に固定されている。保持スリーブ38は前述したワークの挿通を許容し且つワークをその全周に亘って保持するような内径を有する。
ここで、図1から明らかなように、前述した軸16の軸線は基準線Aと直交する方向に水平に延び、そして、保持スリーブ38の突出端面から所定の距離だけ外側、つまり、図1でみて右方に位置付けられていることに留意すべきである。
【0022】
また、保持内筒22の左端には排出シリンダ(押し出しアクチュエータ)42が進退部材44の一部を介して同軸に取り付けられている。排出シリンダ42は保持内筒22内に位置付けられたピストンロッドを有し、このピストンロッドの先端は進退部材44の残部を介して裏打ち部材46に当接している。なお、進退部材44については後述する。
裏打ち部材46は、保持スリーブ38側に位置付けられ、その先端が保持スリーブ38内に摺動自在に嵌合された抜脱ロッド46aと、この抜脱ロッド46aの後端に固定され、進退部材44の前記残部を介して排出シリンダ42に当接支持されたテール46bとを有し、このテール46bは抜脱ロッド46aよりも大径である。
【0023】
なお、前述の説明から明らかなように排出シリンダ42は保持内筒22と一緒に回転するため、ロータリジョイント48を備えており、このロータリジョイント48は排出シリンダ42の回転に拘わらず、排出シリンダ42への油圧の給排を可能にする。
一方、図1みて、駆動側ホルダユニット6aの右方にはこのユニット6aと対をなす従動側ホルダユニット6bが配置されている。この従動側ホルダユニット6bは前述した駆動側ホルダユニット6aの主要な構成要素に対し、左右対称にして同様な構成要素を備えており、説明の重複を避けるため、駆動側ホルダユニット6aの構成要素と同様な機能を発揮する構成要素については同一の参照符号を付し、以下には、駆動側ホルダユニット6aと相違する点のみを説明する。
【0024】
従動側ホルダユニット6bの支持外筒12はスライド台54上に取り付けられており、このスライド台54は案内手段としての一対の案内ベッド56に摺動自在に支持されている。これら案内ベッド56は基準線Aを挟んで左右に配置され、基準線Aに沿って水平面内を互いに平行に延びている。従って、従動側ホルダユニット6bは駆動側ホルダユニット6aに対し、基準線Aに沿って接離自在である。なお、案内ベッド56は前述した装置フレーム2の上面に取り付けられている。
【0025】
また、スライド台54は支持外筒12を両側から挟み込む側板58を有し、これら側板58は前述した駆動側ホルダユニット6aの側板10に対応する。
更に、スライド台54にはその直下に加圧シリンダ60が取り付けられており、この加圧シリンダ60は基準線Aに沿って水平に延びている。加圧シリンダ60はスライド台54の端壁62から駆動側ユニット6aとは反対側に突出するピストンロッド64を有し、このピストンロッド64はその先端が装置フレーム2の端壁2aに連結されている。
【0026】
それ故、図1に示す状態から加圧シリンダ60のピストンロッド64が伸縮されると、スライド台54は前述した一対の案内ベッド56上を往復移動し、この結果、従動側ホルダユニット6bは駆動側ホルダユニット6aに対し、基準線Aに沿って接離することができる。
図2を参照すると、上述した従動側ホルダユニット6bが拡大して示されており、ここで、ホルダユニット6bの保持内筒22は従動側回転保持体を構成する。保持内筒22の排出シリンダ42側の端部はその内部がねじ孔66として形成され、このねじ孔66は保持内筒22の端面から保持スリーブ38に向け、所定の長さに亘って延びている。
【0027】
一方、前述した進退部材44は、保持内筒22のねじ孔66内に螺合される一端部、即ち、雄ねじ68を有したリテーナチューブ(雄ねじ部)70と、このリテーナチューブ70と前述した裏当て部材46のテール46bとの間に配置された進退ヘッド72とを有し、リテーナチューブ70の他端部は保持内筒22の前記端部から所定の長さに亘って突出している。ここで、リテーナチューブ70の雄ねじ68は、保持内筒22の従動回転の向きと逆向きであるが好ましい。
【0028】
リテーナチューブ70はその内部に排出シリンダ42におけるピストンロッド42a側の部位を収容しており、排出シリンダ42の外筒はリテーナチューブ70にスプライン係合等の噛み合いを介して一体的に連結されている。そして、排出シリンダ42のピストンロッド42aはリテーナチューブ70から突出し、進退ヘッド72に一体的に結合されている。
【0029】
一方、リテーナチューブ70の他端部の外周面には雄スプライン74が形成されており、この雄スプライン74は前述した雄ねじ68からリテーナチューブ70の他端に亘って延びている。
リテーナチューブ70の他端部にはプーリ76が取り付けられており、このプーリ(従動プーリ)76は雄スプライン74に噛み合う雌スプライン78を有し、保持内筒22の外側に配置されている。
【0030】
一方、支持外筒12の上面には取り付け台80を介して正逆回転可能な電動モータ82が配置されており、この電動モータ82の出力軸には減速機84、ロータエンコーダ(検出手段)86及び電磁クラッチ88を介してプーリ(駆動プーリ)90が取り付けられている。このプーリ90及びリテーナチューブ70側のプーリ76には伝動ベルト(動力伝達ベルト)92が掛け回され、これにより、プーリ76,90は伝動ベルト92を介して互いに接続されている。
【0031】
ロータリエンコーダ86は電動モータ82の回転角を検出し、そして、電磁クラッチ88は電動モータ82とプーリ76とを結ぶ動力伝達経路を断続可能である。
電動モータ82が回転されると、この回転はプーリ76に伝達され、プーリ76、即ち、リテーナチューブ70を排出シリンダ42とともにその軸線回りに回転させる。それ故、リテーナチューブ70はその回転方向に従い、保持内筒22に対して図2でみて左右方向に移動することができる。例えば、リテーナチューブ70が図2でみて左方向に移動されたとき、進退ヘッド72を介して裏当て部材46のテール46bが保持スリーブ38に向けて押し出され、この結果、裏当て部材46の抜脱ロッド46aはその先端が図示の位置から保持スリーブ38の外端面38aに向けて移動し、外端面38aと抜脱ロッド46aの先端との間の距離が調整される。
【0032】
図2中、実線の裏当て部材46は保持スリーブ38に対して最も後退した位置にあって、その抜脱ロッド46aの先端と外端面38aとの間の離間距離Lは最大値Lmaxとなり、これに対し、2点鎖線の裏当て部材46は保持スリーブ38に対して最も前進した位置にあって、前記離間距離Lは最少値Lminとなる。
上述した従動側ホルダユニット6bの進退部材44の構成及びその駆動機構は、駆動側ホルダユニット6aの進退部材44に対しても同様であり、それ故、図1中、駆動側ホルダユニット6a側の対応する部材及び部位には同一の参照符号を付して、これらの説明を省略する。
【0033】
次に、上述した軸肥大加工機を使用したワークの成形加工について、図3を参照しながら説明する。なお、図3中、駆動側及び従動側ホルダユニット6a,6bは簡略化して示されている。
図3(a)は、駆動側及び従動側ホルダユニット6a,6bが基準線Aに沿って所定の距離だけ離間した状態を示し、この際、ユニット6a,6bの保持スリーブ38は基準線A上にあって互いに対向している。
【0034】
この状態にて、ユニット6a,6b間に加工すべきワーク(金属棒材)Wが供給され、このワークWはその一端部が駆動側ホルダユニット6aの保持スリーブ38内に挿入される。
ここでの挿入は、ワークWの一端が裏当て部材46の抜脱ロッド46aの先端に当接した時点で停止され、ワークWの一端は裏当て部材46及び進退ヘッド72を介して排出シリンダ42に受け止められる。
【0035】
この後、加圧シリンダ84を伸長させ、駆動側ホルダユニット6aに向けて従動側ホルダユニット6bを移動させ、ワークWの他端部をユニット6bの保持スリーブ38内に同様に挿入させる。それ故、ワークWの他端もまたユニット6b側の裏当て部材46及び進退ヘッド72を介して排出シリンダ42に受け止められ、図3(b)に示す状態となる。
図3(b)の状態にて、ユニット6a,6bの保持スリーブ38間には所定の間隔Dが確保され、ここでの間隔Dは、ワークWに成形すべきカラーの外径によって決定される。また、成形されるカラーの軸方向位置は、ワークWの一端とユニット6a側での保持スリーブ38の端面38aとの間の距離Laと、ワークWの他端とユニット6b側での保持スリーブ38の端面38aとの間の距離Lbとによって決定される。
【0036】
この後、加圧シリンダ60は、駆動側ホルダユニット6aに向けて従動側ホルダユニット6bを所定の加圧力Fで押圧し、ワークWに基準線Aに沿って圧縮力を付与する一方、電動モータ32を駆動し、ユニット6a側の保持内筒22を回転させる。このような保持内筒(駆動側回転保持体)22の回転に伴い、両裏当て部材46間にて挟持状態にあるワークWは従動側ホルダユニット6bの保持内筒22(従動側回転保持体)とともに回転する。この際、前述した電磁クラッチ88はオフ作動されており、ユニット6a,6bの保持内筒22の回転力が電動モータ82側の伝達されることはなく、電動モータ82が保持内筒22の回転を阻害することはない。
【0037】
この後、前述した傾動シリンダ20が伸長されると、図3(c)に示されるように駆動側ホルダユニット6aは軸16の回りに上方に向けて徐々に傾動され、この傾動に伴い、そのユニット6aの保持内筒22は基準線Aに対して所定の角度、具体的には8°以下の角度でもって傾斜される。それ故、ワークWは軸16の軸線とワークWとの交点を中心として曲げられていくことになる。
【0038】
この際にも、ワークWへの加圧力Fの付与は維持されていることから、ワークWはその長手方向への圧縮を伴いながら、その曲げ方向でみて内側が塑性変形により膨らみ、この膨らみはワークWの回転に伴い、その全周に亘って成長する(図3(d))。
この後、加圧力Fの付与を維持した状態で、保持スリーブ38間の間隔が所定の距離まで縮小されると、この時点から駆動側ホルダユニット6aの傾動、即ち、ワークWの曲げは徐々に元に戻され、そして、図3(e)に示されるようにユニット6a,6bの保持スリーブ38は共に基準線A上に位置付けられ、互いに再び対向する。
【0039】
このようなワークWの曲げ戻しは、ワークWの軸線方向に沿った膨らみの幅をその全周に亘って均一にし、この結果、ワークWにその一部を肥大化させた円形のカラーCが成形され、カラーCの幅は加工完了時での保持スリーブ38間の間隔、即ち、保持スリーブ38の外端面38a間の間隔により決定される。そして、カラーCの成形位置は、ユニット6a,6b側での前述した離間距離Lによって決定される。
【0040】
この時点で、ワークWに対する肥大加工が完了し、駆動側ホルダユニット6a側での保持内筒22の回転及び加圧シリンダ84によるワークWの加圧は停止される。
この後、加圧シリンダ60の収縮を受け、従動側ホルダユニット6bは駆動側ホルダユニット6aから離間する方向に移動され、この移動に伴い、成形加工後のワークWは駆動側ホルダユニット6aの保持内筒22から抜き出される(図3(f))。
【0041】
この際、ユニット6aの保持スリーブ38内にて保持されたワークWの部位が上述の肥大加工に伴い拡径し、保持スリーブ38の内周面に密接し、ワークWの抜き出しが困難な場合には、ユニット6a側の排出シリンダ42が伸長されることで、ワークWの一端は裏当て部材46の抜脱ロッド46aにより押圧されることで、ワークWは保持スリーブ38から強制的に排出される。
【0042】
この後、従動側ホルダユニット6b側においても、その排出シリンダ42が伸長されることで、ワークWはユニット6bから強制的に排出される。
ワークWに形成すべきカラーCの軸方向位置が変更される場合には、前述したように駆動側及び従動側ホルダユニット6a,6bの少なくとも一方の側にて、電動モータ82が駆動され、前述したように保持スリーブ38の外端面38aとその裏当て部材46との間の離間距離Lが調整される。
【0043】
このとき、前述したロータリエンコーダ86より電動モータ82の回転角を検出すれば、進退部材44、即ち、リテーナチューブ72の進退量を把握することができ、前述した離間距離Lの自動調整も可能となる。
本発明は上述の一実施例に制約されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、駆動側及び従動側ホルダユニット6a,6bにあっては、図2から明らかなように、その保持スリーブ38がその外端面38aを有する前端部38fと、後端部38rとの2分割構造をなしていれば、前端部38fを保持内筒22に取付プレート39を介して取り外し可能に固定することができる。この場合、ワークWの成形加工時、前端部38fが損傷されても、この前端部38fのみを交換することができ、軸肥大加工機の稼働効率を高めることができる。
【0044】
また、保持スリーブ38はその内孔が段付き孔であってもよく、この場合、段付きのカラーの成形が可能となる。
更に、電動モータ82がステップモータである場合、前述したロータリエンコーダ86は不要であり、この場合、ステップモータのステップ数を制御するだけで、前述した離間距離Lの自動調整が可能となる。
【0045】
なお、本発明の軸肥大加工機を作動させるにあたっては、図3(a)〜(f)に示された加工手順に限らず、ワークWの回転はワークWに加圧力及び曲げ力を加えた後、つまり、図3(c)に示す状態から開始されてよく、そして、ワークWの曲げ戻し後、ワークWの回転停止及びワークWへの加圧力の付与は何れの順次に行われてもよい。
また、駆動側ホルダユニット6aは水平面内にて傾動されてもよいし、従動側ホルダユニット6bが傾動されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】一実施例の軸肥大加工機を示した断面図である。
【図2】図1の従動側ホルダユニットを拡大して示す図である。
【図3】図1の加工機を使用したワークの加工手順を(a)〜(f)の順次で示す図である。
【符号の説明】
【0047】
6a 駆動側ホルダユニット
6b 従動側ホルダユニット
12 支持外筒
20 傾動シリンダ(傾動手段)
22 保持内筒(駆動側及び従動側回転保持体)
38 保持スリーブ
38a 外端面
42 排出シリンダ(押し出しアクチュエータ)
44 進退部材
46 裏当て部材
46a 抜脱ロッド
54 スライド台(加圧手段)
56 案内ベッド(加圧手段)
60 加圧シリンダ(加圧手段)
70 リテーナチューブ(雄ねじ部)
72 進退ヘッド
74 雄スプライン
76 プーリ(従動プーリ)
78 雌スプライン
82 電動モータ(駆動源)
86 ロータリエンコーダ(検出手段)
88 電磁クラッチ
90 プーリ(駆動プーリ)
92 伝動ベルト(動力伝達ベルト)
A 基準線
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属棒のワークが配置されるべき基準線と、
前記基準線と直交する駆動側外端面を有し、前記基準線上の前記ワークの一端部を嵌入させて保持し、前記ワークとともに前記基準線の回りに回転可能な駆動側回転保持体と、
前記駆動側回転保持体内に配置され、前記駆動側外端面から前記基準線に沿って離間し且つ前記駆動側回転保持体内に嵌入された前記ワークの一端面と当接可能な駆動側裏当て部材と、
前記駆動側回転保持体に対して前記基準線に沿って離間して配置され、前記駆動側外端面と対向する従動側外端面を有し、前記基準線上の前記ワークの他端部を嵌入させて保持し、前記ワークの回転中、前記ワークとともに前記基準線の回りを従動回転する従動側回転保持体と、
前記従動側回転保持体内に配置され、前記従動側外端面から前記基準線に沿って離間し且つ前記従動側回転保持体内に嵌入された前記ワークの他端面と当接可能な従動側裏当て部材と、
前記駆動側及び前記従動側回転保持体を前記基準線に沿って相対的に接離可能とし、前記両回転保持体が互いに近接する方向に相対的に移動され、前記駆動側及び前記従動側裏当て部材間に前記ワークを挟み込んだ態で、前記ワークを前記基準線に沿って加圧可能な加圧手段と、
前記駆動側及び前記従動側回転保持体の一方を前記基準線に対して傾動させる傾動手段と、
前記駆動側及び前記従動側裏当て部材にそれぞれ割り当てて設けられ、対応する側の裏当て部材を前記基準線に沿って移動させる駆動側及び従動側移動装置と
を具備したことを特徴とする軸肥大加工機。
【請求項2】
前記各移動装置は、対応する側の回転保持体の前記外端面と前記裏当て部材との間の距離を検出する検出手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の軸肥大加工機。
【請求項3】
前記各移動装置は、
対応する側の回転保持体内に螺合され、その軸線回りの回転により前記基準線に沿って進退して前記裏当て部材との当接位置を変更可能な進退部材と、
前記進退部材を前記軸線回りに回転させる駆動手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の軸肥大加工機。
【請求項4】
前記駆動手段は、
前記進退部材の外面に形成され、前記基準線に沿って延びる雄スプラインと、
前記雄スプラインに噛み合う雌スプラインを有した従動プーリと、
前記従動プーリを回転させる駆動源と
を含むことを特徴とする請求項3に記載の軸肥大加工機。
【請求項5】
前記駆動源は、
前記保持体に対して固定して配置され、駆動プーリを有するモータと、
前記駆動プーリと前記従動プーリとの間に掛け回された動力伝達ベルトと、
前記モータと前記駆動プーリとの間に介挿されたクラッチと
を有することを特徴とする請求項4に記載の軸肥大加工機。
【請求項6】
前記進退部材は、前記裏当て部材側の進退ヘッドと、この進退ヘッドとは分離して設けられ、前記回転保持体に対して螺合する雄ねじ部とを有した分割構造をなし、
他方の側の回転保持体側に向け、前記裏当て部材を前記雄ねじ部とは独立し且つ前記進退ヘッドを介して押し出し可能な押し出しアクチュエータを更に具備したことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の軸肥大加工機。
【請求項7】
前記各回転保持体は、前記外端面を有し且つ前記ワークの対応する側の端部が嵌入可能なスリーブを含み、このスリーブは、前記外端面側の一部分がその残部から分離可能な2分割構造をなしていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の軸肥大加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−200697(P2008−200697A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37748(P2007−37748)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(394006129)株式会社いうら (63)
【出願人】(390029089)高周波熱錬株式会社 (288)
【Fターム(参考)】