説明

軽質留分の吸着による脱硫と重質留分の水素化脱硫からなるガソリンの脱硫方法

本発明は、ガソリンの脱硫の製法に関し、該ガソリンをチオフェンやメチルチオフェンのようなチオフェン化合物からなる軽質留分と最も重い硫黄含有芳香族化合物を濃縮した重質留分に分別する工程からなる。重質留分は水素化脱硫により処理され、一方軽質留分は該軽いチオフェン化合物を少なくとも部分的に除去することが出来る固相吸着剤と接触させられ、それによって該固相吸着剤が工程内の流れにより再生される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンとチオフェンタイプの硫黄含有化合物からなる出発原料のガソリンからの、低硫黄含量で高オクタン価のガソリンの製造方法に関する。
【0002】
一般的に、本発明が取り扱うガソリンは接触分解ガソリンであるが、コーキングのような改質法から得られるガソリン、または直接蒸留したガソリンでさえ、さらにまた該ガソリンのどんな混合物であってもよい。
【0003】
そのために本製法は、接触分解、流動床の接触分解、コーキング法、ビスブレーキング法または熱分解法により得られるガソリンの脱硫に特に有用である。
【背景技術】
【0004】
本発明は、特許文献1の改良として考えられる。特許文献1に関連した本発明で開示される改良は、吸着により軽質留分の脱硫に使用される固相吸着剤を再生する工程内の流れを用いることからなる。工程内の流れは、本発明の目的である製法の必須の部分を構成する装置の一つによって再生される流れとして定義される。
【0005】
本発明の核心に関連する従来技術は、ガソリンの脱硫に関連する開示からなり、これはガソリンを2つの留分に分け、おのおのは特定の処理、すなわち、いわゆる軽質留分に対する吸着による脱硫、いわゆる重質留分に対する水素化脱硫の対象である。
【0006】
−特許文献1は、処理されるガソリンは吸着による脱硫の装置に送られる軽質留分と従来の水素化脱硫の装置に送られる重質留分に分けられる製法を開示している。
【0007】
−特許文献2は、FCCガソリンをオレフィンに富みメルカプタンタイプの硫黄含有化合物のみを含む軽質留分と、チオフェンとその誘導体(チオフェン化合物の術語の基で再グループ分けされる)と最も重い硫黄含有化合物を濃縮した重質留分に分けることを提案している。
【0008】
軽質留分に存在するメルカプタンは、抽出用ソーダ溶液で実施する工程で除去される。重質留分は標準の水素化脱硫法で脱硫される。
【0009】
二つの留分の分留温度は比較的低い(前に説明した出願では75℃より低い)ので、そのような製法の優位性が制限され、従って軽質留分は出発原料のガソリンに含まれる炭化水素の割合が少ないものからなる。
【0010】
−特許文献3は、沸点が10℃と150℃の間のガソリンの吸着による脱硫をし、沸点が同じ温度範囲にある精製装置の流体を使用することで固相吸着剤を再生することを提案している。議論している特許は、該再生を実施するための好ましい流れは改質油であることを従属請求項に記載している。従ってこの流れは芳香族化合物に富んでおり、一般的に10℃から150℃の間の蒸留範囲である。
【0011】
特許文献3と異なって、本発明の目的である製法は、沸点が25℃と300℃の間であるガソリンを処理することが任意に可能である。
【0012】
さらに加えて、該ガソリンは蒸留により軽いガソリンと重いガソリンに分けられる。軽質留分は吸着により脱硫装置で脱硫され、重質留分は水素化脱硫装置で脱硫される。
【0013】
軽質留分の脱硫に使用される吸着剤の再生は、最終の沸点が300℃になる脱硫された重質留分の一部で実施される。脱硫された重質留分は芳香族化合物を含んでいるが、その沸点範囲により改質油とは異なる。
【0014】
固相吸着剤の再生用の物質として改質油を使用する場合、特許文献3で開示されているように、硫黄で汚染された改質油の再生は一般的に水素化処理で実施される。しかしこれは費用がかかる精製の流れの不均衡をもたらし、そして例えば石油化学の使用に利用できる改質油の量の減少をもたらす。
【0015】
軽質留分の吸着剤による処理に使用される固相吸着剤を再生する脱硫された重質留分の一部の使用は、従って従来技術の解決策より革新的でより経済的な解決策である。何故ならばこれは標準的な精製のスキームを混乱させないし、全ての精製装置に適応可能で、特に改質ガソリンの工程を有していない装置においても適用可能であるからである。
【特許文献1】仏国特許出願2,857,973号明細書
【特許文献2】WO02/36718号明細書
【特許文献3】米国特許6,482,316B1号明細書
【発明の開示】
【発明の要約】
【0016】
本発明は、一般的には接触分解ガソリンである硫黄と不飽和化合物を含むガソリンの脱硫の方法に関する。装置は、該ガソリンを軽質留分と重質留分に分ける少なくとも一つの装置、該軽質留分の吸着による脱硫のための装置、および該重質留分の水素化脱硫のための装置からなり、それによりこの方法は、軽質留分の吸着による脱硫のための装置で使用される固相の吸着剤の再生は水素化脱硫装置で脱硫された後の該脱硫された重質留分の一部により実施されることで特徴づけられる。
【0017】
さらに明確に言えば、本発明の製法はオレフィンとチオフェン化合物を含む出発原料であるガソリンから高いオクタン価を有する脱硫ガソリンを製造する方法である。該製法は以下の工程からなる。
【0018】
a)出発原料のガソリンを下記の少なくとも2つの留分に蒸留する工程:
− チオフェン、好ましくはメチルチオフェンと5から6個の炭素原子の
オレフィンを主に含む軽質留分。
【0019】
− 5個の炭素原子のオレフィンを含まず、ベンゾチオフェンのような重い
硫黄含有化合物を濃縮してなる重質留分。
【0020】
b)固相吸着剤の上に硫黄含有化合物を吸着させる該軽質留分の脱硫の工程。そこで
使用される固相吸着剤はシリカ、アルミナ、ゼオライト、活性炭、樹脂、クレイ、
金属酸化物と還元金属からなるグループから選ばれる。
【0021】
c)標準的な水素化脱硫条件において少なくとも一つの第VIII族の金属と第VIb族の金属を含む触媒上で該重質留分を水素化脱硫する工程。そこで固相吸着剤の再生は重質留分の水素化脱硫工程の流出物の一部である脱着溶媒によって実施される。そして該水素化脱硫工程の流出物の余分の部分は、高いオクタン価を有する脱硫ガソリンを構成する軽質留分の吸着による脱硫工程の流出物と混合される。
【0022】
この製法は最初の供給原料に存在するチオフェン化合物に関する吸着の良い選択率と水素の消費を減らすことの両方を可能にし、またガソリン中の硫黄の将来の基準に到達することを可能にする。
【0023】
この製法が、数十ppmから数%の範囲の大きく変わる硫黄のレベルを有するガソリン
に適応できることは注目に値する。
【0024】
本発明の製法は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%である脱硫の割合で
処理されるガソリンの特性に大変似ている特性を有するガソリンを回収することを可能にする。
【0025】
前の段落で述べたように本発明の製法は精製のスキームを混乱させないし、ガソリン精製装置を保有していない精製においてさえ適用する。
【0026】
対照的に、本発明はオレフィンの水素添加によるオクタンのロスを減らし該炭化水素の留分の脱硫を実施することを可能にする。このオクタンのロスは処理されるガソリンの重質留分に主に影響を受け、そこで軽質留分は、吸着による脱硫の対象物であり、それゆえオクタン価を保存する。その結果製造されるガソリンのオクタン価は製法によってほとんど影響されず、処理されるガソリンのオクタン価より10%少ない値であり、処理されるガソリンのオクタン価より5%少ない値が最も多い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下の説明は図で提供され、本発明の適用分野を制限するものではない。この説明において、接触分解法から得られたガソリンは、本製法を適用するに適する留分を代表するが、処理される炭化水素の留分として無作為に選ばれた。
【0028】
[処理されるガソリンの分別の工程(工程a)]
本発明の第1の実施例(方法I)に従ってガソリンは2つの留分に分別される。
【0029】
−チオフェン、好ましくはメチルチオフェンと炭素原子を5個と6個有するオレフィンを主に含んでいる軽質留分。
【0030】
−5個の炭素原子のオレフィンを含まず、ベンゾチオフェンのような重い硫黄含有化合物を濃縮してなる重質留分。
【0031】
軽質留分は一般的に約90℃と約200℃の間、好ましくは約90℃と約160℃の間、さらに好ましくは約90℃と110℃の間の最終の沸点を有している。
【0032】
この分別は蒸留塔により普通に実施される。
【0033】
本発明の第二の実施例(方法II)に従ってガソリンは3つの留分に分留される。
【0034】
−軽質留分は、チオフェンの沸点より低い沸点の出発原料のガソリンに含まれている化合物からなる。
【0035】
−中間の留分は少なくともチオフェンを含み最終的な沸点は、約90℃と約200℃の間であり、好ましくは約90℃と約160℃、さらに好ましくは約90℃と110℃の間である。
【0036】
−重質留分はベンゾチオフェンのような重い硫黄含有化合物を濃縮してなる。
【0037】
処理されるガソリンを2つまたは3つの留分に分別することを可能にする蒸留の温度は処理される出発原料のガソリンの組成に基づくか、および/または軽質留分(方法I)または中間の留分(方法II)に存在する芳香族炭化水素の濃度に基づいて選択される。
【0038】
意外なことに以下に説明する吸着のための工程b)の間、もし該軽質留分中の芳香族化合物の重量%が25重量%以下、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下であれば脱硫の有効性がより良いことが出願者によって実際に発見された。
【0039】
本発明の好ましい実施例に従えば、軽質留分の分留温度は、軽質留分中の芳香族化合物の重量%が25重量%以下、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下になるように処理されるガソリンの組成に基づいて選択される。
【0040】
[軽質留分の吸着/脱着工程(工程b)]
この工程は、軽質留分(方法I)または工程a)から得られる中間の留分(方法II)に存在する硫黄含有化合物を除去することからなる。
【0041】
本発明の好ましい実施例に従えば、該留分は例えば以下に説明する選択的水素添加工程により同留分からメルカプタンタイプの化合物が前もって除去されている。
【0042】
この吸着工程は、供給原料を硫黄含有化合物、好ましくはチオフェン化合物と高い親和性を持つ固相吸着剤と接触させることにより実施される。
【0043】
吸着剤として使用される固相は以下の吸着剤のグループの間から選ぶことが出来る。即ち、シリカ、アルミナ、ゼオライト、好ましくはフォージャサイト、そして好ましくはセシウムで部分的にイオン交換したフォージャサイト、活性炭、樹脂、金属酸化物と還元金属である。
【0044】
適当な表面の物理的処理、例えば熱処理、または化学表面処理、例えば表面の特定の分子のグラフトなどにより硫黄含有化合物に関して高められた吸着能力を有する固相吸着剤を使用することがまた出来る。
【0045】
使用する固相の急速な劣化をもたらし易いオレフィンのどんなコーキング反応も防止するように残存する酸性度を制御された固相を使用するのが好ましい。このタイプの現象を避けるために例えばカリまたはソーダでの処理を実行しても良い。
【0046】
固相吸着剤の再生は熟練者に良く知られた吸着/再生サイクルを経て実施される。吸着と再生の実験条件は固相の動的性能、即ち吸着の間に集められた硫黄量と再生後の固相に残留する硫黄量の差を最大にするように選ばれる。
【0047】
吸着が液相で実施される時は、これを液相にとどめて置くために温和な温度と圧力条件で実施される。温度は一般的に0℃から200℃、圧力は0.1MPから30MPaの範囲(1MPa=10bar)、そして好ましくは10℃から100℃で0.2MPaから10MPaの圧力下である。
【0048】
固相吸着剤の再生は十分高い吸着力を有する液体または再生溶媒を使って実施される。一般に再生溶媒は固相吸着剤の細孔に留まっているガソリンを置換し、そして固相に保持されている他の化合物、特に硫黄含有化合物、の脱着をもたらすように選択される。
【0049】
好ましくは、発明の範囲内で再生溶媒は少なくとも芳香族化合物の一部からなる。該芳香族化合物の一部は少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも25重量%である。
【0050】
対照的に再生溶媒は吸着剤によって脱硫されるガソリンの硫黄含有量より少ない硫黄含有量によって特徴づけられる。一般的に再生溶媒の硫黄含有量は100ppm以下、好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下である。
【0051】
本発明に従えば工程a)に従って2つの留分に分けられるガソリンの分別から生じる重質留分の一部が、そして該重質留分は本発明の製法の工程c)の目的である水素化脱硫装置(HDS)で脱硫されるが、固相吸着剤の再生のための溶媒として使用されるのが好ましい。
【0052】
本発明の再生溶媒はそれ故脱硫された重質留分の部分であり、そこで該部分は固相吸着剤の最高の再生を可能にするように計算される。
【0053】
さらに50℃以上、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上の温度で再生が実施され、液相の状態で硫黄含有分子の脱着を促進し、そして固相吸着剤を再生する該脱硫された重質留分の最少量を使用することが好ましい。
【0054】
固相吸着剤の上に最初に残留している硫黄含有分子を含んでいる再生流出物は重質留分の水素化脱硫装置の入口に投入して再循環される。
【0055】
[重質留分の水素化脱硫工程(工程c)]
処理されるガソリンの蒸留のための工程a)から得られる重質留分は、水素化脱硫処理に供される。この工程は水素の存在下触媒の上をガソリンの通過させることにより実施される。その触媒は鉄、ルテニウム、オスミニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウムおよび白金のグループから選択された少なくとも一つの第VIII族の元素、そしてクロム、モリブデンそしてタングステンからなるグループから選択された少なくとも一つの第VIB族の元素からなる。そしてこれらの元素のおのおのは少なくとも部分的に硫化物の形で見られる。
【0056】
反応温度は一般的に220℃と340℃の間で圧力は1MPaと5MPa(1MPa=10bar)の間である。
【0057】
時間当たりの体積流速は1h−1と20h−1の間である。
【0058】
供給原料の流速に対する水素の流速の比は、100リッター/リッターと600リッター/リッターの間で、ガソリンのリッター当たりの水素の標準状態のリッターで表わされる。
【0059】
重質留分の水素化脱硫を実施するために使用される触媒は、第VIII族の金属を0.5重量%と15重量%の間で含む。この重量%は酸化物の形で表わされる。
【0060】
第VIB族の金属の重量含有量は一般的に1.5重量%と60重量%、好ましくは2重量%と50重量%の間である。
【0061】
第VIII族の元素は、好ましくはコバルトで、第VIB族の元素は好ましくはモリブデンまたはタングステンである。
【0062】
触媒の担体は普通は多孔質の固体で、例えばマグネシア、シリカ、酸化チタンまたはアルミナ、それらの単独または混合物である。
【0063】
水素化脱硫の工程c)の流出物は高いオクタン価を有する脱硫ガソリンを生成するための工程b)の吸着流出物と混合される。
【0064】
工程から生じる該ガソリンの硫黄含有量は出発原料のガソリンと比較して少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%減少している。
【0065】
水素化脱硫の工程c)は、少なくとも一つの第VIII族の元素からなる触媒上で実施される最終の水素化脱硫工程を含むこともできる。第VIII族は好ましくはニッケル、コバルトおよび鉄からなるグループから選ばれる。
【0066】
最終工程の触媒の金属含有量は一般的に酸化物の形で約1重量%と約60重量%の間である。この最終工程は残留する硫黄含有化合物そして最初の水素化脱硫工程の間で生成する主として飽和硫黄含有化合物を除去することを可能にする。
【0067】
最終工程の温度は一般的に240℃と360℃の間で、好ましくは水素化脱硫工程の初めの温度より少なくとも10℃高い。
【0068】
圧力は1MPaと5MPaの間である。時間当たりの体積流速は1h−1と20h−1の間である。供給原料の流速に対する水素の流速の比は、100リッター/リッターと600リッター/リッターの間であり、ガソリンのリッター当たりの水素の標準状態のリッターで表わされる。
【0069】
[処理されるガソリンの選択的水素添加の任意工程]
この任意工程は、工程a)、b)とc)の上流で使用され、ガソリン中に存在するジオレフィンを少なくとも部分的に除去し、そして軽い硫黄含有化合物を重量増加させて変質するために行われる。特に固相吸着剤が酸性である時は、ジオレフィンは実際水素化脱硫または吸着の反応器で重合する樹脂状物の前駆体になり、従ってそれの耐用年数を短くする。従ってジオレフィンはこの工程でオレフィンに水素添加される。
【0070】
この工程はまた、メルカプタン、硫化物、CSのような沸点が一般にチオフェンより低い軽い硫黄含有化合物を、供給原料中に存在するオレフィンと反応せることにより、チオフェンより沸点が高いより重い硫黄含有化合物に、変化させることが出来る。
【0071】
本発明によれば変質された該重い化合物の大部分は分別(工程a)の後、重質留分中に排出される。
【0072】
選択的水素添加の工程は一般的に、少なくとも一つの第VIII族の金属(好ましくは白金、パラジウムとニッケルから形成されるグループから選ばれる金属)からなる触媒の存在下で起こる。金属は担体に沈着している。
【0073】
例えば、アルミナ、シリカ、シリカーアルミナ、またはニッケルアルミネイト等の不活性な担体に沈着されたニッケルを1重量%から20重量%含む触媒が使用される。担体は少なくともアルミナを50%含むのが好ましい。
【0074】
例えばモリブデンまたはタングステンのような第VIB族の他の金属をバイメタル触媒を形成するために第VIII族の金属と任意に結合させることが出来る。この第VIB族の金属は担体の上に1重量%から20重量%の割合で沈着される。
【0075】
選択的水素添加の工程の操作条件の選択は特に重要である。操作は、ジオレフィンを水素添加するに必要な化学量論的な値を少し超える水素量の存在下にもっとも一般的に行われる。水素と処理される供給原料は好ましくは固定触媒床反応器に上向きまたは下向きに注入される。
【0076】
温度は一般的に50℃と300℃の間、好ましくは80℃と250℃の間、さらに好ましくは120℃と210℃の間である。
【0077】
圧力は反応器で液相で処理されるガソリンが80重量%以上、好ましくは95重量%以上に保持するように選択される。もっとも一般的には0.4MPaから5MPa、好ましくは1MPaと4MPaである。
【0078】
体積流速は一般的に1h−1と12h−1、好ましくは2h−1と10h−1である。
【0079】
接触分解ガソリンの留分の軽質留分はジオレフィンを数重量%まで含む。水素添加後、ジオレフィンの量は3000ppm以下、好ましくは2500ppm、さらに好ましくは1500ppm以下に減少する。
【0080】
ジオレフィンの選択的水素添加の反応に付随して、外側のオレフィンの二重結合の異性化が起こり、内部のオレフィンの生成に導く。その結果この異性化はオクタン価の少しの増加をもたらす。それは内側のオレフィンは末端オレフィンのオクタン価より一般的に大きいオクタン価を有しているためである。
【0081】
本発明の実施例に従って、選択的水素添加の工程は、全部の供給原料と所望する反応を実施するために必要な水素量を通過させる触媒反応ゾーンからなる水素添加の触媒反応器で起こる。
【0082】
本発明は、本発明(方法I)の製法の実施例に相当する図1に関連した以下の説明を読むことから良く理解できる。接触分解装置(図1には未記載)から得られる処理されるガソリンは、選択的水素添加のための反応器E0にライン1を経由して多くの場合送られ、水素(図1には未記載)からなるガスの流れと混合される。選択的水素添加の装置E0は任意である。
【0083】
反応器E0から得られた流出物はライン2を経由して蒸留塔E1に送られ、ここで上部の軽質留分はライン(4)を経由して抜かれ、下部の重質留分はライン(3)を経由してぬかれる。
【0084】
蒸留塔E1から得られた重質留分(3)は供給原料を生成するため脱着相にある吸着による脱硫のための装置(Ad)の脱硫溶媒(8)と混合される。
【0085】
ライン(3)と(8)の混合から生じた供給原料(3a)は水素化脱硫反応器E4に導入される。
【0086】
水素化脱硫反応器E4の流出物(5a)は、吸着による脱硫のための装置(Ad)の再生に使われる一部と、ガソリン貯蔵槽に直接送られる脱硫ガソリン(9)を生成するために吸着相にある吸着による脱硫のための装置(Ad)の流出物(6)と混合される他の部分に分けられる。
【0087】
ライン(4)を経由して回収された軽質留分は脱硫装置に送られる。
【0088】
吸着による脱硫のための装置(Ad)は、交互に吸着形態で稼働する少なくとも二つの容器、すなわち図1中の容器(E2)と図1中の脱着による容器(E3)からなる。
【0089】
ある時間の終わりに容器(E2)は再生相に切り替えられ、そして容器(E3)は吸着相に切り替えられる。
【0090】
吸着相と再生相との交代は、図1には記載していないが、追加のラインやバルブの開閉システムによってなされる。
【0091】
容器E3はライン(7)を経由して水素化脱硫装置E4から得られる脱硫された流出物の一部からなる脱着溶媒が供給される。
【実施例】
【0092】
次の限定されない実施例は本発明を有利性を良く理解することを可能にする。
【0093】
接触分解ガソリンを代表するガソリンIは接触分解ガソリンに良く見られるパラフィン(n―ヘプタン、イソオクタン)、オレフィン(1−ヘキセン、1−ドデセン)、芳香族化合物(トルエン、メタキシレン)と硫黄含有化合物(チオフェン、ベンゾチオフェン)の割合を混合することで合成される。
【0094】
表1はガソリンIの特性を示す。
【表1】

【0095】
ガソリンIの90℃での分別の後得られる軽質留分のパラフィン(n−ヘプタン)、オレフィン(1−ヘキサン)、芳香族化合物(トルエン)と硫黄含有化合物(チオフェン)の割合を再現するガソリンIIが合成される。
【0096】
表2はガソリンIIの特性を示す。
【表2】

【0097】
ガソリンIの90℃での分別の後得られる重質留分のパラフィン(イソオクタン)、オレフィン(1−ドデセン)、芳香族化合物(メタキシレン)と硫黄含有化合物(ベンゾチオフェン)の割合を再現したガソリンIIIが合成される。
【0098】
表3はガソリンIIIの特性を示す。
【表3】

【0099】
ガソリンIIIの水素化脱硫により得られたパラフィン(イソオクタン)、オレフィン(1−ドデセン)、芳香族化合物(メタキシレン)の割合を再現したガソリンIVが合成される。
【0100】
表4はガソリンVIの特性を示す。
【表4】

【0101】
吸着により脱硫された軽質留分を表す合成ガソリンIIはNaCsXタイプの吸着剤で充填された吸着塔に液体ポンプを使用して送られる。
【0102】
このNaCsX固体は、90℃で1.8モル/リッターに濃縮されたCsClの水溶液でNaXゼオライトの上に動的条件で実施されたイオン交換により得られた。
【0103】
吸着塔は20mlの固相吸着剤を含み、そして5ppm以下のSを含有するガソリンIIの少なくとも100mlを脱硫することが出来る。
【0104】
固相吸着剤の再生は吸着塔に60℃で合成ガソリンIVを通過されることで実施される。
【0105】
硫黄の濃度は最初の段階では大きく増加するが、この供給原料を100ml通過させた後、Sの値は0ppm近くに戻る。この時点が脱着工程の終点であることを示している。
【0106】
この実施例は、合成ガソリンIIで代表される軽質留分の吸着による脱硫工程の後、固相吸着剤に含まれる硫黄を脱着する脱硫されるガソリン(ガソリンIで代表される)から得られる脱硫された重質留分(合成ガソリンIVで代表される)の能力を示す。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は本発明の工程の図である。ここで任意的な装置E0は点線で示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンとチオフェン化合物を含む出発原料であるガソリンからの、高いオクタン価を有する脱硫ガソリンの製造方法であって、該製法は以下の工程からなる;
a)出発原料のガソリンを下記の少なくとも2つの留分に蒸留する工程:
− チオフェン、好ましくはメチルチオフェンと5から6個の炭素原子の
オレフィンを主に含む軽質留分。
− 5個の炭素原子のオレフィンを含まず、ベンゾチオフェンのような重い
硫黄含有化合物を濃縮してなる重質留分。
b)固相吸着剤の上に硫黄含有化合物を吸着させる該軽質留分の脱硫の工程。そこで
使用される固相吸着剤はシリカ、アルミナ、ゼオライト、活性炭、樹脂、クレイ、
金属酸化物と還元金属からなるグループから選ばれる。
c)標準的な水素化脱硫条件において少なくとも一つの第VIII族の金属と第VIb族の金属を含む触媒上で該重質留分を水素化脱硫する工程。そこで固相吸着剤の再生は重質留分の水素化脱硫工程の流出物の一部である脱着溶媒によって実施される。そして該水素化脱硫工程の流出物の余分の部分は、高いオクタン価を有する脱硫ガソリンを構成する軽質留分の吸着による脱硫工程の流出物と混合される。
【請求項2】
軽質留分が25重量%以下の芳香族化合物を含有する請求項1に記載のガソリンの製造方法。
【請求項3】
処理されるガソリンの分別の工程は、軽質留分と重質留分に加えて、少なくともチオフェンを含み、その最終の沸点が90℃と160℃の間、好ましくは90℃と130℃の間、さらに好ましくは90℃と110℃の間である中間留分を生成する請求項1と2のいずれかに記載の脱硫ガソリンの製造方法。
【請求項4】
吸着による脱硫工程が、3つの留分に分別されるガソリンの蒸留から得られる中間留分に適用される請求項1から3のいずれかに記載の脱硫ガソリンの製造方法。
【請求項5】
吸着による脱硫工程で使用される固相吸着剤が、ゼオライトから、好ましくはフォージャサイト−タイプのゼオライトから、また好ましくはセシウムで部分的に交換されたフォージャサイトの中から選ばれる請求項1から4のいずれかに記載の脱硫ガソリンの製造方法。
【請求項6】
吸着工程が、液相で温度が0℃から200℃の間、好ましくは15℃から100℃の間、圧力が0.1MPaから20MPaの間、好ましくは0.2MPaから10MPaの間である請求項1から5のいずれかに記載の脱硫ガソリンの製造方法。
【請求項7】
脱着工程が50℃以上、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上の温度で操作される請求項1から6のいずれかに記載の脱硫ガソリンの製造方法。
【請求項8】
重質留分の水素化脱硫の工程が、0.5重量%から15重量%の間の第VIII族の金属と、1.5重量%から60重量%の間、好ましくは5から50重量%の第VIb族の金属からなる触媒の上で実施される請求項1から7のいずれかに記載の脱硫ガソリンの製造方法。
【請求項9】
第VIII族の金属が好ましくはコバルトであり、第VIbの金属がモリブデンとタングステンから形成されるグループから選ばれる請求項8に記載のガソリンの製造方法。
【請求項10】
処理されるガソリンの留分の分別のための工程に先行して、選択的水素添加が、少なくとも一つの第VIII族の金属、好ましくは白金、パラジウムとニッケルから形成されるグループから選ばれた金属からなる触媒の上で行われる請求項1から10のいずれか記載の脱硫ガソリンの製造方法。
【請求項11】
重質留分の水素化脱硫工程の後に、好ましくはニッケル、コバルトおよび鉄から形成されるグループから選ばれた少なくとも一つの第VIII族の金属からなる触媒の上で実施される最終工程が続く請求項1から10のいずれかに記載のガソリンの製造方法。
【請求項12】
最終工程が240℃から360℃の間で、好ましくは水素化脱硫工程の最初の温度より少なくとも10℃以上で実施される請求項11に記載の脱硫ガソリンの製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−504829(P2009−504829A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525594(P2008−525594)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001885
【国際公開番号】WO2007/017581
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(500393413)アンスティテュ フランセ デュ ペトロール (32)
【Fターム(参考)】