説明

軽量断熱耐火パネル

【課題】 本発明は、パネル重量を軽量化し、施工性を改善するとともに、断熱性を大幅に改善した耐火パネルとすることを目的とする。
【解決手段】 長尺状の金属材からなる表面材2、裏面材3間に、少なくとも無機ボード層、有機断熱パネル層を含む2層を積層接着した長尺状の耐火パネル1において、有機断熱パネル層は、密度が20kg/m3 〜49kg/m3 の面材付フェノールフォーム断熱パネルで構成されたことを特徴とする耐火パネル1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外装に用いられる耐火パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、建築物の外装に用いられる耐火パネルとして、長尺状の金属材からなる表面材、裏面材間に、無機材が混入されたフェノールフォームと無機ボードとを介在させた技術として、特許第3306439号(特許文献1)に記載された技術がある。
【0003】
【特許文献1】特許3306439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、耐火性を確保するために、長尺状の金属材からなる表面材、裏面材間に、無機ボード層を含み、かつ、無機材が混入されたフェノールフォームを介在させており、フェノールフォーム密度が50kg/m3 〜300kg/m3 に形成する必要があった。そのため、パネル重量は重くなり、施工性が悪くなるとともに、断熱性が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、長尺状の金属材からなる表面材、裏面材間に、少なくとも有機断熱パネル層、無機ボード層を含む2層を積層接着した長尺状の耐火パネルにおいて、パネル重量を軽量化し、施工性を改善するとともに、断熱性を大幅に改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目標を達成するための本発明に係る耐火パネルの第1の構成は、長尺状の金属材からなる表面材、裏面材間に、少なくとも有機断熱パネル層、無機ボード層を含む2層を積層接着した長尺状の耐火パネルにおいて、有機断熱パネル層は、密度が20kg/m3 〜49kg/m3 の面材付フェノールフォーム断熱パネルで構成されたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る耐火パネルの第2の構成は、フェノールフォーム断熱パネル層の表面に、不織布、織布あるいは紙が積層一体化され、該不織布、織布あるいは紙を介して表面材、裏面材、あるいは無機ボードに積層接着されたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る耐火パネルの第1の構成によれば、長尺状の金属材からなる表面材、裏面材間に、少なくとも有機断熱パネル層、無機ボード層を含む2層を積層接着した長尺状の耐火パネルにおいて、有機断熱パネル層として、密度が20kg/m3 〜49kg/m3 の面材付フェノールフォーム断熱パネルで構成することによって、パネル重量を軽量化し、施工性を改善するとともに、断熱性を大幅に改善することが出来る。
【0009】
また、耐火パネルの製造時に、密度が20kg/m3 〜49kg/m3 になるように、フェノールフォーム原料を調合し、吐出させ、反応発泡して、パネル成型する場合、フェノールフォーム中に、反応の際の縮合水が重量の数10パーセント位が保持され、製品の養生期間、あるいはパネルの施工後に、外気温等の変化により、水分が水蒸気化し、逃げ道が無いために、耐火パネルの表面材の内側に残留し、耐火パネル表面が膨れたり、反ったりする等、経時的に耐火パネルに悪影響を及ぼす。
【0010】
さらに、このように低密度で調合されるフェノールフォームの場合、硬化収縮が大きくなるので、耐火パネルに凹みや反りが発生してパネルの寸法精度を確保できない。本発明に係る耐火パネルの第1の構成では、有機断熱パネル層は、フェノールフォーム断熱パネル製造時に、熱養生等をして、フェノールフォーム反応の際の縮合水を、予め、放散させておくことが可能で、耐火パネルの養生期間、あるいはパネルの施工後に、外気温等の変化により、水分が水蒸気化し、逃げ道が無いために、耐火パネルの表面材の内側に残留し、耐火パネル表面が膨れたり、反ったりする等、経時的に耐火パネルに悪影響を及ぼすことを回避することが可能である。
【0011】
また、低密度で調合されるフェノールフォームの硬化収縮も、フェノールフォーム断熱パネルとして、予め、成型されれば、長さ・幅・厚さ方向に対して均等に硬化収縮を起こさせ、平面度のあるフェノールフォーム断熱パネルを積層接着することが可能で、耐火パネルに凹みや反りが発生してパネルの寸法精度を確保できない問題を回避することが出来る。
【0012】
このように、予め、軽量化と断熱性を意図して製造された密度が20kg/m3 〜49kg/m3 のフェノールフォーム断熱パネルを接着して用いることにより、このような問題を回避した上、軽量化と断熱性向上を図ることが出来る。
【0013】
なお、有機断熱パネル層として用いられるフェノールフォーム断熱パネルは、全体重量の80%以上が有機材で構成されたものである。20%以下の少量であれば、無機材を含んでも、軽量化と断熱性向上を図ることは可能である。しかし、軽量化と断熱性向上の観点で、有機材の比率は多い方がよく、90%以上が好ましく、さらに、95%以上はより好ましい。
【0014】
また、このような軽量化と断熱性向上を意図した密度が20kg/m3 〜49kg/m3 のフェノールフォーム断熱パネルを積層し接着しているにも係わらず、少なくとも無機ボード層を積層しているため、耐火パネルの耐火性を確保することが可能である。すなわち、パネル厚50mm〜60mm程度で、耐火1時間の性能確保が可能となる。また、パネル厚35mm〜40mm程度で、防火30分の耐火性能の性能確保が可能となる。なお、耐火性能の最弱点部となる両側端部は、ここに示さない端部形状で構成することによって、所定の耐火性能を確保することが可能である。例えば、無機系の耐火部材を、雄型連結部あるいは雌型連結部の形状に合わせて加工し、嵌め込んで構成し、所定の耐火性能を確保することが可能である。
【0015】
次に、本発明に係る耐火パネルの第2の構成による発明の効果を説明する。耐火パネルの製造時に、密度が20kg/m3 〜49kg/m3 になるように、フェノールフォーム原料を調合し、反応発泡させて、表面材、裏面材、あるいは無機ボードとの接着をさせた場合、接着強度が弱く、ちょっとした衝撃で、表面材、裏面材、あるいは無機ボードとの、特に表面材との端部が剥離してしまう欠点があった。
【0016】
これに対して、本発明に係る耐火パネルの第2の構成によれば、フェノールフォーム断熱パネル層の表面に、不織布、織布あるいは紙が積層し、フェノールフォームが不織布、織布あるいは紙を構成する繊維と絡まって一体化され、該不織布、織布あるいは紙を介して表面材、裏面材、あるいは無機ボードに積層接着されているため、不織布、織布あるいは紙を構成する繊維に、さらに接着剤が絡まって固着するため、フェノールフォーム断熱パネルと表面材、裏面材、あるいは無機ボードとの接着力を改善し、衝撃に対して、特に表面材との端部が剥離してしまう欠点を防止することが可能である。
【0017】
もちろん、フェノールフォーム断熱パネル層においても、フェノールフォームが不織布、織布あるいは紙を構成する繊維と絡まって一体化されているため、フェノールフォームと不織布、織布あるいは紙の界面での剥離の問題もない。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る耐火パネルの第1の構成によれば、長尺状の金属材からなる表面材、裏面材間に、少なくとも有機断熱パネル層、無機ボード層を含む2層を積層接着した長尺状の耐火パネルにおいて、有機断熱パネル層として、密度が20kg/m3 〜49kg/m3 の面材付フェノールフォーム断熱パネルで構成することによって、パネル重量を軽量化し、施工性を改善するとともに、断熱性を大幅に改善することが出来る。
【0019】
本発明に係る耐火パネルの第2の構成によれば、フェノールフォーム断熱パネル層の表面に、不織布、織布あるいは紙が積層し、フェノールフォームが不織布、織布あるいは紙を構成する繊維と絡まって一体化され、該不織布、織布あるいは紙を介して表面材、裏面材、あるいは無機ボードに積層接着されているため、不織布、織布あるいは紙を構成する繊維に、さらに接着剤が絡まって固着するため、フェノールフォーム断熱パネルと表面材、裏面材、あるいは無機ボードとの接着力を改善し剥離してしまう欠点を防止することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図により本発明に係る耐火パネルの実施形態を具体的に説明する。図1は本発明に係る耐火パネルの代表的な実施例を示す一部切欠き斜視図、図2、図3は本発明に係る耐火パネルのその他の実施例を示す一部切欠き斜視図である。
【0021】
図1は、長尺状の金属材からなる表面材2、裏面材3の間に、表面側有機断熱パネル層4、無機ボード層5、裏面側有機断熱パネル層6の3層を、この順に積層接着し、かつ両側端部10に雄型連結部7、雌型連結部8を設けた長尺状の耐火パネル1を、両側端部10に直交して切断し描いた一部切欠き斜視図である。
【0022】
耐火パネル1の幅(働き幅)は、910mmあるいは600mmで、図1では、両側端部10の近傍を拡大して描くために、パネル幅の中央部分を切断省略して示している。耐火パネルの厚さは、50mm(あるいは60mm)とした。
【0023】
ここに、表面側および裏面側有機断熱パネル層4、6は、密度が27kg/m3 、熱伝導率が0.020W/m・Kで、無機材料を殆ど含まないフェノールフォーム断熱パネルで構成し、表面に合成繊維(ポリエチレンテレフタレート)不織布9が積層一体化され、不織布9を介して表面材2、裏面材3、無機ボード5に積層接着されている。不織布9として、合成繊維を用いたが、他に、無機繊維として、例えば、ガラス繊維によるガラスパルプ混抄紙、ガラス不織布などを用いてもよい。接着剤は、図示しないが、エポキシ系接着剤によって、接着した。
【0024】
無機ボード5としては、石膏ボードとし、パネル厚のほぼ中央に配置した。
【0025】
両側端部10には、耐火性能を確保するために、無機系の耐火部材(繊維混入ケイ酸カルシウム板)を、雄型連結部7あるいは雌型連結部8の形状にあわせて加工し、嵌め込んで構成した。
【0026】
この実施例のように、表面側および裏面側有機断熱パネル層4、6を、密度が27kg/m3 、熱伝導率が0.020W/m・Kで、無機材料を殆ど含まないフェノールフォーム断熱パネルを積層接着して構成したために、パネル重量を軽量化し、施工性を改善するとともに、断熱性を大幅に改善することが出来た。
【0027】
また、フェノールフォーム反応の際の縮合水を、予め、放散させておいたので、耐火パネル1の養生期間、あるいは耐火パネル1の施工後に、外気温等の変化により、水分が水蒸気化し、逃げ道が無いために、耐火パネル1の表面材2の内側に残留し、耐火パネル1表面が膨れたり、反ったりする等、経時的に耐火パネル1に悪影響を及ぼすことを回避することが可能となった。
【0028】
さらに、低密度27kg/m3 で調合されたフェノールフォームであるにもかかわらず、予め、フェノールフォーム断熱パネルとして成型されているので、長さ・幅・厚さ方向に対して均等に硬化収縮を起こさせ、平面度のあるフェノールフォーム断熱パネルとして積層接着することが可能で、耐火パネル1に凹みや反りが発生せず、パネルの寸法精度を確保できない問題を回避することが出来た。
【0029】
ここでのフェノールフォーム断熱パネルは、無機材料を殆ど含まず、重量比で、99%以上が有機材料としたものである。
【0030】
一方、表面側および裏面側有機断熱パネル層4、6として、不織布9が積層一体化されたフェノールフォーム断熱パネルを用いているので、フェノールフォームが不織布9を構成する繊維と絡まって一体化され、不織布9を介して表面材2、裏面材3、無機ボード5に積層接着されているため、不織布9を構成する繊維に、さらに接着剤(図示せず)が絡まって固着するため、フェノールフォーム断熱パネルと表面材2、裏面材3、無機ボード5との接着力を改善し、衝撃に対して、特に表面材2との端部が剥離してしまう欠点を防止することが可能となった。
【0031】
図2は、表面側有機断熱パネル層4と無機ボード層5の2層で構成した実施例である。図3は、無機ボード層5と裏面側有機断熱パネル層6の2層で構成した実施例である。
【0032】
図2、図3のように、表面側有機断熱パネル層4か、裏面側有機断熱パネル層6の、いずれかを省略しても、建築納まりから、パネル厚さ50mm(60mm)程度の寸法で、耐火1時間の性能確保が可能となる。しかし、密度が20kg/m3 〜49kg/m3のフェノールフォーム断熱パネルで、表面側有機断熱パネル層4あるいは裏面側有機断熱パネル層6を構成する場合には、パネル厚さ50mm(60mm)程度の寸法で、耐火1時間の性能確保をするためには、無機ボード層5は、必須である。無機ボード5としては、石膏ボードの他に、ケイ酸カルシウム板、炭酸カルシウム板、パーライトセメント板、ロックウール板、スレート板、その他の無機質材が使用できる。
【0033】
このように、少なくとも無機ボード層5を含む2層を積層接着した耐火パネル1であれば、図1に示した3層の実施例と同様に、パネル重量を軽量化し、断熱性を大幅に改善することが出来る。また、フェノールフォーム縮合水の残留による膨れなどの不具合や、フェノールフォーム硬化収縮によるパネルの凹みなどの不具合が解消できるのも同様である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の活用例として、建築物の外装に用いられる耐火パネルとして好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る耐火パネルの代表的な実施例を示す一部切欠き斜視図である。
【図2】本発明に係る耐火パネルのその他の実施例を示す一部切欠き斜視図である。
【図3】本発明に係る耐火パネルのその他の実施例を示す一部切欠き斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1 耐火パネル
2 表面材
3 裏面材
4 表面側有機断熱パネル層
5 無機ボード層
6 裏面側有機断熱パネル層
7 雄型連結部
8 雌型連結部
9 不織布
10 両側端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の金属材からなる表面材、裏面材間に、少なくとも有機断熱パネル層、無機ボード層を含む2層を積層接着した長尺状の耐火パネルにおいて、有機断熱パネル層は、密度が20kg/m3 〜49kg/m3 の面材付フェノールフォーム断熱パネルで構成されたことを特徴とする耐火パネル。
【請求項2】
フェノールフォーム断熱パネル層の表面に、不織布、織布あるいは紙が積層一体化され、該不織布、織布あるいは紙を介して表面材、裏面材、あるいは無機ボードに積層接着されたことを特徴とする請求項1に記載の耐火パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−138494(P2007−138494A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332273(P2005−332273)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】