説明

軽量無機質板状体及びその製造方法

【課題】本発明は、比重をそれほど高くしなくても、軽量で強度および剛性に優れた軽量無機質板状体及びその製造方法を提供せんとするものである。
【解決手段】ケイ酸カルシウム水和物と、木質補強材と、水硬性無機質材料と、無機質軽量体とからなり、ケイ酸カルシウム水和物100質量部に対し、前記水硬性無機質材料が20乃至185質量部、前記ケイ酸カルシウム水和物100質量部に対し、前記無機質軽量体が3.5乃至25質量部であることを特徴とする軽量無機質板状体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ酸カルシウム水和物と木質補強材とを主成分とした軽量無機質板状体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からケイ酸質原料と石灰質原料とを含むスラリーを高温高圧下で反応せしめて、ケイ酸カルシウム水和物を生成し、該ケイ酸カルシウム水和物を含むスラリーを抄造脱水成形し、得られた板状成形体を養生硬化せしめることによって製造される軽量無機質板が提供されている。
これらの軽量無機質板は一般にケイカル板と呼ばれ、比重が低く、耐火性があるので、断熱内装材や耐力壁面材などに使用されている。
しかしながら、上記軽量無機質板は比重が低いので軽量ではあるが、脆い性質を有しており、強度および剛性が不足している。
そのため近年、このケイ酸カルシウム水和物にさまざまな物質を添加混合して、それぞれの目的に応じた物性値を得られるように軽量無機質板の改善がなされている。
例えば、特許第3448121号公報には、ケイ酸カルシウムスラリーにさらに活性シリカを含むアルカリ硬化性無機物質を混合して強度を向上させることが開示されており、特開2003−136514号公報には、ケイ酸カルシウム水和物にセメントや補強繊維を更に添加して強度を向上させることが開示されており、特開2005−205879号公報には、水和性原料や補強繊維や更にマイカやフライアッシュ、二水石膏などの無機質充填材を添加することが開示されている。
しかしながら、セメント等の水和性原料を添加していくと、確かに強度は向上していくが、比重が高くなることで逆に柔軟性やハンドリング性、施工性に問題が生じる可能性がある。
【特許文献1】特許第3448121号公報
【特許文献2】特開2003−136514号公報
【特許文献3】特開2005−205879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、比重をそれほど高くしなくても、軽量で強度および剛性に優れた軽量無機質板状体及びその製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するための本請求項1に記載の軽量無機質板状体は、ケイ酸カルシウム水和物と、木質補強材と、水硬性無機質材料と、無機質軽量体とからなる。
【0005】
また、本請求項2に記載の軽量無機質板状体は、請求項1に記載の軽量無機質板状体において、前記ケイ酸カルシウム水和物100質量部に対し、前記水硬性無機質材料が20乃至185質量部であることを特徴とする。
【0006】
また、本請求項3に記載の軽量無機質板状体は、請求項1に記載の軽量無機質板状体において、前記ケイ酸カルシウム水和物100質量部に対し、前記無機質軽量体が3.5乃至25質量部であることを特徴とする。
【0007】
また、本請求項4に記載の軽量無機質板状体は、請求項1に記載の軽量無機質板状体において、防水剤をさらに含有することを特徴とする。
【0008】
また、本請求項5に記載の軽量無機質板状体は、請求項1乃至4に記載の軽量無機質板状体において、前記ケイ酸カルシウム水和物はゾノトライトであり、前記無機質軽量体はパーライトであることを特徴とする。
【0009】
また、本請求項6に記載の軽量無機質板状体は、請求項5に記載の軽量無機質板状体において、前記木質補強材は木質パルプであり、前記水硬性無機質材料はセメント及び/又はスラグであることを特徴とする。
【0010】
また、本請求項7に記載の軽量無機質板状体の製造方法は、ケイ酸カルシウム水和物を30乃至70質量部と、木質補強材を5乃至15質量部と、水硬性無機質材料を14乃至55.5質量部と、無機質軽量体を2.45乃至7.5質量部とを混合した原料スラリーを調整する工程と、前記工程で得られた原料スラリーを抄造してマット状体にする工程と、前記工程で得られた前記マット状体をプレス成形する工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
また、本請求項8に記載の軽量無機質板状体の製造方法は、請求項7に記載の軽量無機質板状体の製造方法において、前記ケイ酸カルシウム水和物はゾノトライトであり、前記木質補強材は木質パルプであり、前記水硬性無機質材料はセメント及び/又はスラグであり、前記無機質軽量体はパーライトであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、比重をそれほど高くしなくても、軽量で強度および剛性に優れた軽量無機質板状体及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明の軽量無機質板状体は、ケイ酸カルシウム水和物と木質補強材と水硬性無機質材料と無機質軽量体とからなる。
【0014】
ここでのケイ酸カルシウム水和物とは、ケイ酸質原料と石灰質原料とを含むスラリーを高温高圧下で反応せしめて、ケイ酸カルシウム反応により生成した水和物であり、ケイ酸質原料とは、ケイ砂、珪石粉、珪藻土、シリカフューム、長石類、粘土鉱物、フライアッシュ等のSiOを主成分とするもの、石灰質原料とは、生石灰、消石灰等のCaOを主成分とするものである。
これら前記ケイ酸質原料と前記石灰質原料とを水に分散させてスラリーとし、該スラリーを加圧下に撹拌しながら加熱すると、ケイ酸カルシウム反応によって該スラリー中にトバモライトやゾノトライトなどのケイ酸カルシウム水和物が生成する。
構造上、トバモライト(5CaO・6SiO・5HO)よりもゾノトライト(6CaO・6SiO・HO)のほうが耐火性は高いので、ゾノトライトを使用することが好ましい。
ケイ酸カルシウム水和物として好ましいゾノトライトを生成するには、ケイ酸質原料に含まれるSiOと石灰質原料に含まれるCaOとのモル比をSiO:CaO=7:3〜3:7の範囲とし、スラリー固形分濃度は通常5〜40質量%程度とし、反応は、圧力1.0〜2.2MPa、温度170〜220℃のオートクレーブ中で撹拌しつつ行い、反応時間は1〜12時間であることが好ましい。
このあとにシリカ成分を含むスラグを添加することで、ゾノトライトスラリー中の石灰質原料から溶出したカルシウムイオンが、シリカ成分とさらに反応し、
強度向上に寄与する。
また、ケイ酸カルシウム水和物は予め生成したものや、ケイカル板の微粉砕物を用いてもよい。
【0015】
木質補強材としては、木質パルプや木繊維、木質繊維束、故紙、マイクロフィブリルセルロース等が挙げられる。
好ましい木質補強材としては、DDR(ダブルディスクリファイナー)処理した、径5〜25μm、平均長1.5〜3.0mmの木質パルプがある。
【0016】
水硬性無機質材料としては、セメント、スラグ、石膏等があるが、セメントおよびスラグの少なくとも一方を使用することが好ましい。
【0017】
無機質軽量体としては、パーライトや、フライアッシュバルーン、シラスバルーン等があるが、パーライトが好ましい。
【0018】
その他、防水剤として、ワックス、金属石鹸、シリコーンオイル、コハク酸等を添加することが好ましい。
防水剤を混合することで、吸水率を低く抑えることができる。
防水剤の混合量は固形分に対して10質量部以下が好ましい。
また、その他、必要なればマイカ、バーミキュライト等の骨材や、ロックウール、ガラス繊維等の無機繊維補強材やポリプロピレン繊維やビニロン繊維等の有機繊維補強材を添加してもよい。
【0019】
次ぎに、本発明の軽量無機質板状体の製造方法について説明する。
まず、ケイ酸カルシウム水和物、木質補強材、水硬性無機質材料、無機質軽量体を混合し、さらに水の中に混合して原料スラリーとし、ハチェック方式、フローオン方式等の湿式方式により抄造する。
原料スラリー濃度は1〜15質量%程度がよい。
フローオン方式の場合、エンドレスフェルトの上に原料スラリーを流下せしめ、脱水しながら抄造成形された抄造シートをメイキングロールに巻き取り、所定の厚みになったときに切断することで抄造マット状体とする。
その後、抄造マット状体を3〜25MPaの圧力でプレス成形し、さらに、温
度50〜90℃、12〜72時間養生硬化して、軽量無機質板状体を得た。
【0020】
原料の混合比率は、前記ケイ酸カルシウム水和物100質量部に対して、前記水硬性無機質材料が20乃至185質量部であることが好ましく、また、前記ケイ酸カルシウム水和物100質量部に対する前記無機質軽量体が3.5乃至25質量部であることが好ましい。
水硬性無機質材料の質量が20質量部未満だと、期待する強度の値が得られず、185質量部より多いと比重が高くなり施工性に問題が出る可能性がある。
また、無機質軽量体の質量が3.5質量部未満だと、軽量化に寄与せず、25質量部より多いと原料が嵩高になってしまい原料スラリー状態が悪くなり、軽量無機質板状体の比重が高くならず諸物性が低下する。
【0021】
さらに詳しくは、前記ケイ酸カルシウム水和物が30乃至70質量部、前記木質補強材が5乃至15質量部、前記水硬性無機質材料が14乃至55.5質量部、前記無機質軽量体が2.45乃至7.5質量部で混合されることが好ましい。
ケイ酸カルシウム水和物が30質量部未満だと比重が高くなってしまい、施工性に問題があり、70質量部より多いと脆さが改善されない。
木質補強材が5質量部未満だと強度や保形性に寄与せず、15質量部より多いと耐火、防火性能が劣化する可能性がある。
水硬性無機質材料が14質量部未満だと、強度向上に寄与せず、55.5質量部より多いと、比重が高くなり施工性に問題がでる。
無機質軽量体が2.45質量部未満だと、軽量化に寄与せず、7.5質量部より多いと、原料が嵩高くなりスラリー状態が悪くなり諸物性が低下する。
【0022】
このように、ケイ酸カルシウム水和物と木質補強材と水硬性無機質材料と無機質軽量体とを混合することで、絶乾比重を0.90〜1.10とあまり高くすることなく、曲げ強度を15〜30N/mmと高強度に設計することができ、軽量でかつ強度や剛性に優れた軽量無機質板状体を得ることができる。
【実施例1】
【0023】
以下に本発明の実施例を挙げる。
表1に示す原料配合比率、製造条件にて、実施例1〜7、比較例1、比較例2を製造した。
【0024】
【表1】

【0025】
表1によれば、ゾノトライトが70質量部、セメント/スラグが15質量部、木質パルプが10質量部、パーライトが5質量部である実施例1は、比重が1.00とさほど高くなく、しかも曲げ強度が17.1N/mmと優れた値が得られた。
また、ゾノトライトが60質量部、セメント/スラグが25質量部、木質パルプが10質量部、パーライトが5質量部である実施例2は、比重が1.00とさほど高くなく、しかも曲げ強度が22.3N/mmと優れた値が得られた。
また、ゾノトライトが50質量部、セメント/スラグが35質量部、木質パルプが10質量部、パーライトが5質量部である実施例3は、比重が1.00とさほど高くなく、しかも曲げ強度が22.3N/mmと優れた値が得られた。
また、ゾノトライトが40質量部、セメント/スラグが45質量部、木質パルプが10質量部、パーライトが5質量部である実施例4は、比重が1.00とさほど高くなく、しかも曲げ強度が18.5N/mmと優れた値が得られた。
また、ゾノトライトが30質量部、セメント/スラグが55質量部、木質パルプが10質量部、パーライトが5質量部である実施例5は、比重が1.00とさほど高くなく、しかも曲げ強度が16.4N/mmと優れた値が得られた。
また、防水剤として、コハク酸(HOOC−(CH)−COOH)を添加した実施例6、実施例7は吸水率において、コハク酸を添加していない実施例1と比較して著しい改善が得られた。
セメント/スラグを添加していない比較例1は、曲げ強度は実施例並に得られたが、吸水率が著しく悪かった。
また、セメント/スラグを75質量部添加した比較例2は、物性的には問題なかったが、比重が高くなってしまい施工性において問題が残る結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸カルシウム水和物と、木質補強材と、水硬性無機質材料と、無機質軽量体とからなる軽量無機質板状体。
【請求項2】
前記ケイ酸カルシウム水和物100質量部に対し、前記水硬性無機質材料が20乃至185質量部であることを特徴とする請求項1に記載の軽量無機質板状体。
【請求項3】
前記ケイ酸カルシウム水和物100質量部に対し、前記無機質軽量体が3.5乃至25質量部であることを特徴とする請求項1に記載の軽量無機質板状体。
【請求項4】
防水剤をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の軽量無機質板状体。
【請求項5】
前記ケイ酸カルシウム水和物はゾノトライトであり、前記無機質軽量体はパーライトであることを特徴とする請求項1乃至4に記載の軽量無機質板状体。
【請求項6】
前記木質補強材は木質パルプであり、前記水硬性無機質材料はセメント及び/又はスラグであることを特徴とする請求項5に記載の軽量無機質板状体。
【請求項7】
ケイ酸カルシウム水和物を30乃至70質量部と、木質補強材を5乃至15質量部と、水硬性無機質材料を14乃至55.5質量部と、無機質軽量体を2.45乃至7.5質量部とを混合した原料スラリーを調整する工程と、前記工程で得られた原料スラリーを抄造してマット状体にする工程と、前記工程で得られた前記マット状体をプレス成形する工程とを含むことを特徴とする軽量無機質板状体の製造方法。
【請求項8】
前記ケイ酸カルシウム水和物はゾノトライトであり、前記木質補強材は木質パルプであり、前記水硬性無機質材料はセメント及び/又はスラグであり、前記無機質軽量体はパーライトであることを特徴とする請求項7に記載の軽量無機質板状体の製造方法。

【公開番号】特開2007−238396(P2007−238396A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64982(P2006−64982)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000110860)ニチハ株式会社 (182)
【出願人】(592012384)小野田化学工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】