説明

輝度及び耐光性に優れたシリコン微粒子、その製造方法並びにこれを用いた光拡散板

【課題】効果的な表面処理方法により粒子表面に一定濃度で調節された水酸基作用基が付与されたポリオルガノシルセスキオキサンのようなシリコン微粒子、その製造方法及びこれを用いた光拡散板を提供すること。
【解決手段】本発明のシリコン微粒子は、OH Index値が0.7〜1.0の範囲を有するように表面処理したものである。
前記シリコン微粒子は、粉体型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子を表面処理してOH Index値が0.7〜1.0の範囲を有するように水酸基の濃度を調節することにより得られる。
本発明の一具体例では、前記シリコン微粒子は、ポリオルガノシルセスキオキサンラテックスを乾燥してパウダー状のシリコン微粒子を製造し、該パウダー状のシリコン微粒子を乾燥又は燒結して、該粒子表面の水酸基の濃度を調節することにより製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輝度及び耐光性に優れたシリコン微粒子、その製造方法並びにこれを用いた光拡散板に関し、より詳しくは表面処理により粒子表面に一定濃度の水酸基を付与することにより、輝度及び耐光性に優れており、かつ樹脂との相溶性及び作業性も向上したシリコン微粒子、その製造方法並びにこれを用いた光拡散板に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ及びポリシルセスキオキサンのようなシリコン系微粒子は、一般に各種の高分子樹脂及び有機物との相溶性に優れていることから、塗料、プラスチック、ゴム、紙、コーティング液の添加剤及び高画質ビデオテープ用滑性剤などに多様に使用されている。
【0003】
特に、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子は、3次元の網状構造の分子構造となっていながら樹脂との流動性及び相溶性に優れており、光学的に低い屈折率を有しているなどの特性のため、照明カバー、看板、液晶表示装置のバックライト、光拡散板の拡散剤、及び塗光板の添加剤として脚光を浴びている。
【0004】
このようなシリコン微粒子は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4などに開示された方法のように、メチルトリアルコキシシランモノマーを用いて加水分解反応及び縮合反応メカニズムからなるゾル−ゲル法により多様に製造されている。しかしながら、シリコン微粒子を光拡散剤として使用すると、樹脂との屈折率差による光拡散性は良好に発現される反面、光透過性は大きく低下するから、輝度が劣るという問題点がある。
【0005】
前記のような問題点を解決するために、特許文献5、特許文献6、特許文献7、及び特許文献8などでは、樹脂組成物の割合及び成分を調節して輝度を改善する方法を提案している。しかしながら、前記のように樹脂組成物の割合及び成分を調節する方法には限界があって、拡散剤自体の特性の調節による新たな輝度及び耐光性の改善方法が要求される。
【特許文献1】特開昭54−072300号公報
【特許文献2】特開昭63−077940号公報
【特許文献3】特開平10−045914号公報
【特許文献4】特開2000−186148号公報
【特許文献5】特開2006−010819号公報
【特許文献6】特開平1−172801号公報
【特許文献7】特開平1−269902号公報
【特許文献8】特開平10−88008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、輝度及び耐光性に優れたシリコン微粒子を提供することにある。
本発明の他の目的は、粒子表面に、表面処理作業によって輝度及び耐光性に優れたシリコン微粒子の製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の更に他の目的は、粒子表面に、表面処理作業により樹脂との相溶性及び作業性が向上したシリコン微粒子を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、本発明のシリコン微粒子を適用した光拡散板を提供することにある。
【0008】
本発明の前記目的及びその他の目的は、下記開示される本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、本発明者らは、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の粒子表面に表面処理によって一定濃度の水酸基を付与することにより、輝度及び耐光性に優れており、かつ樹脂との相溶性及び作業性も向上したシリコン微粒子及びその製造方法を開発するに至った。
【0010】
本発明のシリコン微粒子は、OH Index値が0.7〜1.0の範囲を有するように表面処理したものである。
前記シリコン微粒子は、粉体型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子を表面処理してOH Index値が0.7〜1.0の範囲を有するように水酸基の濃度を調節することにより得られる。
【0011】
本発明の一具体例では、前記シリコン微粒子は、ポリオルガノシルセスキオキサンラテックスを乾燥してパウダー状のシリコン微粒子を製造し、該パウダー状のシリコン微粒子を乾燥又は燒結して、該粒子表面の水酸基の濃度を調節することにより製造される。
【発明の効果】
【0012】
上記方法により得られたシリコン微粒子は、輝度及び耐光性に優れており、かつ他の樹脂との相溶性及び作業性に優れていることから、拡散剤として使用され、熱可塑性樹脂と共に光拡散板の製造に使用される。
【0013】
すなわち、本発明に係るシリコン微粒子は、粒子自体の光特性が向上して拡散板の輝度及び耐光特性が発現され、かつ粒子表面の水分含有量も同時に調節されることにより、樹脂との相溶性及び作業性も向上することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るシリコン微粒子は、下記式によるOH Index値が0.7〜1.0の範囲を有するように表面処理したことを特徴とする。
OH Index=[Abs.(at 3350〜3400〜3450cm-1)]/[Abs.(at 2920〜2970〜3020cm-1)]
前記式中、Abs.(at 3350〜3400〜3450cm-1)は、Si−OHの最大ピーク強度を表し、Abs.(at 2920〜2970〜3020cm-1)は、Si−CHの最大ピーク強度を表す。
【0015】
前記OH Indexは、赤外線スペクトルにより、3350〜3400〜3450cm-1の範囲(すなわち、3350〜3450cm-1の範囲)のSi−OHの最大ピーク強度を、2920〜2970〜3020cm-1の範囲(すなわち、2920〜3020cm-1の範囲)のSi−CH3の最大ピーク強度で割ったものである。
【0016】
表面水酸基の吸着濃度は、IR分析により分析して、前記式からOH Index値を求めることができる。この測定法によって最適の水酸基の濃度範囲を測定及び分析することができ、本発明においてOH Index値は0.7〜1.0が好ましい。
【0017】
OH Index値が1.0を超えると、表面に多量の水酸基が存在して水分との親和力が大きくなって、樹脂との相溶性が低下する。また、射出成形作業のとき、水蒸気の発生などのように作業性が顕著に低下する原因になる。OH Index値が0.7未満で
あれば、輝度が減少する。
【0018】
したがって、効果的なOH Index値の調節により適正量の水酸作用基を付与して、ポリオルガノシルセスキオキサン(シリコン)微粒子表面と樹脂との間にLewis/Bronsted acid特性を付与することにより、粒子自体の光特性を向上させることができる。
【0019】
一般のポリオルガノシルセスキオキサンの構造は、RSiO1.5のように表され、水酸
基がないことを特徴とする。本発明のポリオルガノシルセスキオキサンは、下記式(A)で表される構造を有する。
【0020】
【化1】

【0021】
式(A)中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のビニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数6〜20のアルキル置換アリール基を表し、0<x<1.5である。
【0022】
前記式(A)中のRとしては、例えば、メチル基、エチル基、又はフェニル基が好ましく、工業的な面から、特にメチル基が好ましい。式(A)におけるxの範囲は、0<x<1.5である。表面水酸基の吸着濃度は、IR分析により分析して、前記式によりOH Index値を求めることができる。
【0023】
本発明に係るシリコン微粒子は、粉体型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子を表面処理して、前記式によるOH Index値が0.7〜1.0の範囲を有するように粒子表面の水酸基濃度を調節することにより製造されることを特徴とする。
【0024】
前記表面処理は、熱処理、化学的処理などが可能であり、200〜400℃が好ましく、200〜300℃で熱処理することがより好ましい。
前記粉体型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子は、特開昭54−072300号公報、特開昭63−077940号公報、特開平10−045914号公報、及び特開第2000−186148号公報などに開示された方法のように、モノマーとしてアルキルオルガノシランを用いてゾル−ゲル法により多様に製造することができ、特定の製造方法に限定されない。
【0025】
本発明の一具体例において、前記シリコン微粒子の製造方法は、ポリオルガノシルセスキオキサンラテックスを乾燥してパウダー状のシリコン微粒子を製造する工程と、該パウダー状のシリコン微粒子を乾燥又は燒結してOH Index値が0.7〜1.0の範囲を有するように該粒子表面の水酸基濃度を調節する工程とからなる。
【0026】
前記ポリオルガノシルセスキオキサンラテックスは、オルガノアルコキシシランを用いてゾル−ゲル工程により製造することができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0027】
前記製造されたポリオルガノシルセスキオキサンラテックスは、80〜200℃の温度条件で直接スプレイドライヤー(spray dryer)により第1次乾燥された白色のパウダー状のシリコン微粒子として回収することができる。
【0028】
本発明の他の具体例では、前記製造されたポリオルガノシルセスキオキサンラテックス
は、遠心分離機、フィルタープレス、振動スクリーン(vibrating screen)などにより第1次脱水されたスラッジを水洗工程を経て精製した後、80〜200℃の範囲の温度でスピンフラッシュドライヤー(spin flash dryer)、真空乾燥機などを用いて乾燥された白色のパウダー状のシリコン微粒子として回収することができる。
【0029】
前記方法で得られたパウダー状のシリコン微粒子は、水分含量が5%、好ましくは3%以下であり、第2次乾燥又は燒結過程を経て本発明のシリコン微粒子として製造される。
前記乾燥又は燒結過程を経て水酸基の濃度を調節し、前記乾燥又は燒結工程は、200〜400℃で行われる。処理時間は、30分〜3時間、好ましくは1時間〜3時間である。
【0030】
本発明の一具体例では、パウダー状のシリコン微粒子は、キルンロータリードライヤー(kiln rotary dryer)及び対流式オーヴン(convection oven)のような燒結炉(calcinater)で200〜400℃、30分〜3時間の乾燥又は燒結工程によりOH Index値が0.7〜1.0の範囲に調節される。
【0031】
得られた表面処理したポリオルガノシルセスキオキサン微粒子は、平均粒子径が0.1〜20μmを有する。
このようにして得られた本発明に係るポリオルガノシルセスキオキサン微粒子は、光拡散剤として光拡散板の製造に用いられる場合、優れた輝度及び耐光性を発現するようになる。
【0032】
本発明では、前記光拡散板として、LCD-TVに使用される拡散板が特に好ましい。
本発明の一具体例では、前記光拡散板が、熱可塑性樹脂100重量部に対して前記ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子0.1〜10重量部からなる。
【0033】
前記光拡散板の製造方法は、本発明の属する分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる。
前記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ABS系樹脂又はポリカーボネート樹脂などを使用することができる。すなわち、前記熱可塑性樹脂は、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ABS系樹脂、及びポリカーボネート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0034】
本発明のポリオルガノシルセスキオキサン微粒子を前記熱可塑性樹脂に添加すると、透過率が低下するから、LCD−TVに用いられる拡散板において輝度及び耐光性に優れた拡散剤として使用することができる。
【0035】
本発明は、下記の実施例によって更に容易に理解することができる。下記の実施例は、本発明の例示のためのものであり、添付された特許請求の範囲により限定される保護範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0036】
[実施例1]
メチルトリメトキシシラン420gを蒸留水2580mlに分散させて1時間攪拌した。その後、アンモニア水を添加してpHを10に調整し、1時間再攪拌を行い、常温で2時間静置しておくことによりシリコンラテックスを合成した。このようにして合成されたラテックスは、遠心分離機によりろ過及び水洗工程を経て約200gの白色の微粒子スラ
ッジとして回収された。このポリメトキシシルセスキオキサンスラッジは、入り口温度160℃、出口温度80℃のスピンフラッシュドライヤーを用いた第1次乾燥工程により白色のシリコンパウダー状として回収された。このようにして回収されたシリコン粉体の表面に効果的に調節された濃度で水酸基を付与するために、200℃、2時間の条件で真空乾燥機にて第2次表面処理を行った。その結果、OH Index値0.88を有するポリオルガノシルセスキオキサン微粒子が得られた。
【0037】
[実施例2]
メチルトリメトキシシラン370gおよびメチルトリクロロシラン50gをイオン交換水2580mlと共に1時間攪拌した後、アンモニア水を添加してpHを10に調整し、4時間静置しておいて反応を行った。
【0038】
その後、ろ過及び水洗を行い、スプレイドライヤーを用いて乾燥することにより、白色の粉体200gを回収した。このシリコンスラッジは、実施例1の条件下にスピンフラッシュドライヤーに投入して白色のシリコンパウダー状として回収された。
【0039】
このようにして回収されたシリコン粉体の表面に効果的に調節された濃度の水酸基を付与するため、200℃、40分の条件でキルンロータリードライヤー(kiln rotary dryer)にて第2次表面処理を行った。その結果、OH Index値0.93を有するポリオルガノシルセスキオキサン微粒子が得られた。
【0040】
[実施例3]
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン370gを蒸留水2580mlに分散させて、3−アミノプロピルメトキシシラン50gを添加した後、常温で6時間静置しておいた。
【0041】
その後、遠心分離機を用いてろ過及び水洗工程を経て、約200gのポリメトキシシルセスキオキサン微粒子スラッジを回収した。このシリコンスラッジを、160℃の温度条件でスピンフラッシュドライヤーに投入して、白色のシリコンパウダー状として回収した。
【0042】
このようにして回収したシリコン微粒子粉体の表面に効果的に制御された水酸基を付与するために、300℃、40分間の条件でキルンロータリードライヤー(kiln rotary dryer)にて第2次乾燥工程により表面処理を行った。その結果、OH Index値0.80を有するポリオルガノシルセスキオキサン微粒子が得られた。
【0043】
[実施例4]
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン370gを蒸留水2580mlに分散させて、3−アミノプロピルメトキシシラン50gを加えた後、常温で6時間静置しておいた。
【0044】
その後、遠心分離機を用いてろ過及び水洗工程を経て、約200gのシリコン微粒子スラッジを回収した。このシリコンスラッジを、160℃の温度条件でスピンフラッシュドライヤーに投入して白色のシリコンパウダー状として回収した。
【0045】
このようにして回収したシリコン微粒子は、粉体粒子表面に効果的に制御された水酸基を付与するために、300℃、2時間の条件でキルンロータリードライヤー(kiln rotary dryer)にて第2次乾燥工程により表面処理を行った。その結果、OH Index値0.71を有するシリコン微粒子が得られた。
【0046】
[比較例1]
メチルトリメトキシシラン420gを蒸留水2580mlに分散させて、1時間攪拌した。その後、アンモニア水を添加してpHを10に調整し、1時間再攪拌を行い、常温で2時間静置しておくことによりシリコンラテックスを合成した。このようにして合成されたラテックスは、遠心分離機を用いてろ過及び水洗工程を経て、約200gの白色の微粒子スラッジとして回収された。このポリメトキシシルセスキオキサンスラッジは、200℃の温度条件でスピンフラッシュドライヤーを用いた第1次乾燥工程により白色のシリコンパウダー状として回収された。その結果、OH Index値1.41を有するリオルガノシルセスキオキサン微粒子が得られた。
【0047】
[比較例2]
メチルトリメトキシルシラン420gを蒸留水2580mlに分散させて、1時間攪拌した。その後、アンモニア水を添加してpHを10に調整し、1時間再攪拌を行い、常温で2時間静置しておくことによりシリコンラテックスを合成した。このようにして合成されたラテックスは、遠心分離機を用いてろ過及び水洗工程を経て、約200gの白色の微粒子スラッジとして回収された。このスラッジは、600℃の温度、2時間の条件で真空乾燥機で乾燥した。その結果、OH Index値0.60を有するポリオルガノシルセスキオキサン微粒子が得られた。
【0048】
前記各々の実施例及び比較例において、温度及び時間の条件変化により表面処理された水酸基を定量的に比較し、粒子表面のOH Index値に応じてそれぞれのシリコンビーズを準備した。このようにして合成されたシリコンビーズを拡散板射出に用いられるマスターバッチとして製造するために、1:100:1の割合で、シリコンビーズ、ポリスチレン樹脂及びEXL-5136(Rohm&Haas,USA)を準備して用い、Φ=
45mmである二軸押出機を用いて混合することにより、ペレットを製造した。
【0049】
その後、10oz射出機にて210℃の成形温度で1.5mm厚さの平板試験片(簡易拡散板)を製造した。このようにして製造された平板試験片を用いて輝度を平価することにより、最適に付与された水酸基の量、即ちOH Index値を見出すことができた。
表1に、前記各々の実施例及び比較例における乾燥及び表面処理工程を経たシリコン粒子をIR分析により前記関係式から算出したOH Index値及び輝度を整理して示した。
【0050】
前記の過程を経て得られた微粒子は、下記のような方法により物性を平価し、その平価結果を下記の表1に示した。
(1)OH Index値の分析:粒子表面のIR分析によって前記式によるOH Index値を分析して粒子表面の水酸基の量を比較した。IR分析は、Nicolet(model:Nexus)を用い、ATR方式により窒素パージの後に測定を行った。
【0051】
(2)輝度:前記射出成形により製造された拡散板の試験片5つを取って、それぞれ1番から5番まで連続的にポータブル輝度計(Luminometer NL−1,日本電色工業(株)製)を用いて測定した。このような全体的な測定を更に3回繰り返して測定し、平均値を取って比較した。
【0052】
【表1】

【0053】
前記表1に示したように、水酸基が減少するに伴って輝度が低下することが確認できた。即ち、無条件的な多量の水酸基の導入(濃度)ではなく、適切な水酸基の濃度、即ちOH Index値が要求されることが分かった。
【0054】
比較例1のように表面に多量の水酸基が存在する場合、即ち前記式(A)中のxの吸着量が多ければ、水分との親和力が増加して樹脂との相溶性が低下し、押出作業時に水蒸気の発生などのように作業性が顕著に低下することにより、拡散板の射出が困難になって試験片を得ることができなくなる。
【0055】
したがって、表1から分かるように、OH Index値が0.7〜1.0の範囲である実施例1〜4は、最適の輝度を発現した。
本発明は、この分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる。本発明の変形や変更の多くは、特許請求の範囲に定義された本発明の領域に含まれるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式によるOH Index値が0.7〜1.0の範囲を有するように表面処理したことを特徴とするシリコン微粒子:
OH Index=[Abs.(at 3350〜3400〜3450cm-1)]/[Abs.(at 2920〜2970〜3020cm-1)]
[式中、Abs.(at 3350〜3400〜3450cm-1)は、Si−OHの最大ピーク強度を表し、Abs.(at 2920〜2970〜3020cm-1)は、Si−CH3の最大ピーク強度を表す。]
【請求項2】
前記シリコン微粒子が、下記式(A)で表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載のシリコン微粒子:
【化1】

[式(A)中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のビニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数6〜20のアルキル置換アリール基を表し、0<x<1.5である。]
【請求項3】
前記式(A)中のRが、メチル基であることを特徴とする請求項2に記載のシリコン微粒子。
【請求項4】
前記シリコン微粒子が、平均粒子径が0.1〜20μmであることを特徴とする請求項1に記載のシリコン微粒子。
【請求項5】
粉体型ポリオルガノシルセスキオキサン粒子を表面処理して、下記式によるOH Index値が0.7〜1.0の範囲を有するように該粒子表面の水酸基の濃度を調節することを特徴とするシリコン微粒子の製造方法:
OH Index=[Abs.(at 3350〜3400〜3450cm-1)]/[Abs.(at 2920〜2970〜3020cm-1)]
[式中、Abs.(at 3350〜3400〜3450cm-1)は、Si−OHの最大ピーク強度を表し、Abs.(at 2920〜2970〜3020cm-1)は、Si−CH3の最大ピーク強度を表す。]
【請求項6】
前記表面処理が、200〜400℃で熱処理したことを特徴とする請求項5に記載のシリコン微粒子の製造方法。
【請求項7】
ポリオルガノシルセスキオキサンラテックスを乾燥してパウダー状のシリコン微粒子を製造する工程と、
該パウダー状のシリコン微粒子を乾燥又は焼結して、下記式によるOH Index値が0.7〜1.0の範囲を有するように該粒子表面の水酸基濃度を調節する工程とからなることを特徴とするシリコン微粒子の製造方法:
OH Index=[Abs.(at 3350〜3400〜3450cm-1)]/[Abs.(at 2920〜2970〜3020cm-1)]
[式中、Abs.(at 3350〜3400〜3450cm-1)は、Si−OHの最大ピーク強度を表し、Abs.(at 2920〜2970〜3020cm-1)は、Si−CH3の最大ピーク強度を表す。]
【請求項8】
前記ポリオルガノシルセスキオキサンラテックスが、オルガノアルコキシシランをゾル−ゲル工程により製造したことを特徴とする請求項7に記載のシリコン微粒子の製造方法

【請求項9】
前記乾燥又は燒結工程が、200〜400℃で30分〜3時間処理することを特徴とする請求項7に記載のシリコン微粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載のシリコン微粒子を拡散剤として用いた光拡散板。
【請求項11】
前記光拡散板が、熱可塑性樹脂100重量部に対して前記シリコン微粒子0.1〜10重量部からなることを特徴とする請求項10に記載の光拡散板。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂が、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ABS系樹脂、及びポリカーボネート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項11に記載の光拡散板。
【請求項13】
前記光拡散板が、LCD−TV用拡散板であることを特徴とする請求項10に記載の光拡散板。

【公開番号】特開2008−156644(P2008−156644A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327109(P2007−327109)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】