説明

輸送機器用骨格構造

【課題】骨格部材に荷重が作用する前段階に、粉粒体に良好に押付力を発生させた状態を保つことができ、さらに、骨格部材に荷重が作用した際に、複数個の粉粒体に発生する圧力を十分に確保することができる輸送機器用骨格構造を提供する。
【解決手段】輸送機器用骨格構造10は、骨格部材12内に粉粒体13…が充填されたものである。この輸送機器用骨格構造10は、粉粒体13…の左端14aに対向させて設けられた左隔壁15と、左隔壁15および左端14aの間に設けられた左発泡材21と、粉粒体13…の右端14bに対向させて設けられた右隔壁16と、右隔壁16および右端14bの間に設けられた右発泡材22とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨格部材内に粉粒体を充填した輸送機器用骨格構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両などの輸送機器は、剛性を確保するために、中空状の骨格部材を備えている。この中空状の骨格部材のなかには、例えば、内部(すなわち、中空部)に粉粒体を充填させた輸送機器用骨格構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−267260公報
【0003】
特許文献1の輸送機器用骨格構造は、骨格部材の中空部に粉粒体を充填し、両端に発泡材を設けたものである。発泡材を膨張(発泡)させることで、粉粒体に押付力(すなわち、初期圧)を発生させることが可能になる。
これにより、骨格部材に荷重が作用したときに、粉粒体で吸収エネルギーを高めることができる。
さらに、輸送機器用骨格構造は、骨格部材の中空部に粉粒体を充填することで、吸収エネルギーを高めるとともに、骨格部材の強度・剛性を高めることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、発泡材は、粉粒体の反対側の面(すなわち、外側の面)が他の部材に接していない。よって、発泡材が発泡する際に、外側の面のみが膨張する。
このため、発泡材では、骨格部材に荷重が作用する前段階において、粉粒体に押付力(初期圧)が発生するように保つことは難しい。
【0005】
さらに、発泡材を発泡する際に、発泡中の発泡材が重力の作用で下方に移動する。よって、発泡した隔壁は、幅寸法が下端部で大きく上端部で小さくなる。
このため、骨格部材が荷重で変形したとき、隔壁の上端部から粉粒体が漏れだしてしまい、複数個の粉粒体に発生する圧力を確保することは難しい。
【0006】
本発明は、骨格部材に荷重が作用する前段階に、粉粒体に良好に押付力を発生させた状態を保つことができ、さらに、骨格部材に荷重が作用した際に、複数個の粉粒体に発生する圧力を十分に確保することができる輸送機器用骨格構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、輸送機器に用いられる骨格部材内に中空部が形成され、前記中空部の少なくとも一部に複数個の粉粒体がブロック状に充填された輸送機器用骨格構造において、前記ブロック状に充填された粉粒体の一端に対向させて設けられた一方の隔壁と、前記一方の隔壁および前記一端の間に設けられた一方の発泡材と、前記ブロック状に充填された粉粒体の他端に対向させて設けられた他方の隔壁と、前記他方の隔壁および前記他端の間に設けられた他方の発泡材と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記一方の隔壁および前記他方の隔壁が連結部材を介して連結されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記複数個の粉粒体は容器内にブロック状に充填され、前記ブロック状の粉粒体の一端と前記容器との間に前記一方の発泡材が設けられ、前記ブロック状の粉粒体の他端と前記容器の他端との間に前記他方の発泡材が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記複数個の粉粒体が容器内にブロック状に充填され、前記一方の隔壁と前記容器との間に一方の発泡材が設けられ、前記他方の隔壁と前記容器との間に他方の発泡材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、複数個の粉粒体の両端にそれぞれ隔壁を設けた。そして、両端のうちの一端と一方の隔壁との間に一方の発泡材を設け、両端のうちの他端と他方の隔壁との間に他方の発泡材を設けた。
発泡材は隔壁によって、隔壁側への発泡が規制される。これにより、発泡材は粉粒体の方向に発泡させることができるので、骨格部材に荷重が作用する前段階において、粉粒体に押付力を良好に発生させた状態を保つことができる。
【0012】
さらに、発泡材は隔壁とブロック状の粉粒体との間に設けられている。よって、発泡材を発泡する際に、発泡中の発泡材が重力の作用で下方に移動することを防いで、ブロック状の粉粒体に向けて均一の厚さ寸法を確保することができる。
これにより、粉粒体を発泡材で確実に密閉(保持)することができるので、骨格部材が荷重で変形したとき、複数個の粉粒体に発生する圧力を十分に確保することができる。
【0013】
このように、骨格部材に荷重が作用する前段階において、粉粒体に押付力を良好に発生させた状態を保つことができるので、骨格部材の強度・剛性を高めることができるという利点がある。
加えて、骨格部材が荷重で変形したとき、複数個の粉粒体に発生する圧力を十分に確保することができるので、骨格部材が変形する際の吸収エネルギーを効率よく高めることができるという利点がある。
【0014】
請求項2に係る発明では、一方の隔壁および他方の隔壁を連結部材で連結した。この連結部材に発泡材を設けるとともに、複数個の粉粒体を弱く固化して設けることで、隔壁、発泡材および複数個の粉粒体を一体化することができる。
これにより、隔壁、発泡材および複数個の粉粒体を一体化した状態で、骨格部材に取り付けることができるので、取付作業の容易化を図ることができるという利点がある。
【0015】
加えて、一方の隔壁および他方の隔壁を連結部材で連結することで、一方の隔壁および他方の隔壁を所定の位置に一層確実に保持することができる。
よって、隔壁で発泡材を一層確実に支えることができるので、複数個の粉粒体を発泡材で一層確実に密閉(保持)することができる。
これにより、骨格部材が荷重で変形したとき、複数個の粉粒体に発生する圧力を一層十分に確保することができるという利点がある。
【0016】
請求項3に係る発明では、複数個の粉粒体を容器に充填した。そして、複数個の粉粒体の一端と容器の一端との間に一方の発泡材を設け、複数個の粉粒体の他端と容器の他端との間に他方の発泡材を設けた。
よって、複数個の粉粒体および発泡材を容器で一体化することができる。
これにより、複数個の粉粒体および発泡材を一体化した状態で、骨格部材に取り付けることができるので、取付作業の容易化を図ることができるという利点がある。
【0017】
請求項4に係る発明では、複数個の粉粒体を容器に充填した。そして、一方の隔壁と容器の一端との間に一方の発泡材を設け、他方の隔壁と容器の他端との間に他方の発泡材を設けた。
よって、複数個の粉粒体および発泡材を一体化することができる。
これにより、複数個の粉粒体および発泡材を一体化した状態で、骨格部材に取り付けることができるので、取付作業の容易化を図ることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係る輸送機器用骨格構造(第1実施の形態)を示す斜視図である。
輸送機器用骨格構造10は、輸送機器11としての自動車に用いられる骨格部材12と、骨格部材12内にブロック状に充填された複数個の粉粒体13と、粉粒体13…で形成した粉粒体ブロック14の左端14a(図2参照)に対向させて設けられた左隔壁(一方の隔壁)15と、左隔壁15および左端14aの間に設けられた左発泡材(一方の発泡材)21と、粉粒体ブロック14の右端14b(図2参照)に対向させて設けられた右隔壁(他方の隔壁)16と、右隔壁16および右端14bの間に設けられた右発泡材(他方の発泡材)22とを備える。
粉粒体ブロック14の左端14aおよび右端14bは、請求項1に記載の「一端」および「他端」に相当する部位である。
【0019】
骨格部材12は、下半分を構成する下側部材18と、上半分を構成する上側部材19とを接合することで矩形状の筒体に形成された部材である。
下側部材18は、断面略コ字状に形成され、左側に張り出した左下フランジ18aと、右側に張り出した右下フランジ18bとを有する。
上側部材19は、断面略コ字状に形成され、左側に張り出した左上フランジ19aと、右側に張り出した右上フランジ19bとを有する。
【0020】
下側部材18の左下フランジ18aと、上側部材19の左上フランジ19aとが、例えば、スポット溶接で接合されている。
同様に、下側部材18の右下フランジ18bと、上側部材19の右上フランジ19bとが、例えば、スポット溶接で接合されている。
【0021】
左下フランジ18aと左上フランジ19aとを接合するとともに、右下フランジ18bと右上フランジ19bとを接合することで、下側部材18および上側部材19が一体に連結されて骨格部材12が形成される。
骨格部材12は、断面略矩形状に形成され、内周面12aで中空部25(図2参照)が形成された筒状の部材である。
【0022】
図2は第1実施の形態に係る輸送機器用骨格構造を示す断面図である。
複数個の粉粒体13は、骨格部材12の内部に形成された中空部25の少なくとも一部25aにブロック状に充填されたものである。
複数個の粉粒体13がブロック状に充填されることで、粉粒体ブロック14が形成される。
【0023】
粉粒体13…は、骨格部材12に荷重が作用して骨格部材12が変形したとき、粉粒体13内部に圧力を発生させて、荷重(衝撃エネルギー)を吸収するものである。
さらに、粉粒体13は、骨格部材12内に充填されることで、骨格部材12の強度・剛性を高めるものである。
【0024】
粉粒体13としては、例えば、二酸化けい素(SiO)、酸化アルミニウム(Al:アルミナ)、シリカアルミナ、樹脂、ガラス、陶磁器が好適である。
【0025】
左隔壁15は、粉粒体ブロック14の左端14aに対向する略矩形状の平坦部27と、平坦部27の周縁28に設けられた上下左右の取付片31〜34(右取付片34は図1参照)とを有する。
【0026】
上取付片31は、周縁28の上部から前方に張り出した取付片である。上取付片31は、内周面12aの上部位にボルトなどの締結部材(図示せず)で取り付けられている。
下取付片32は、周縁28の下部から前方に張り出した取付片である。下取付片32は、内周面12aの下部位にスポット溶接で接合されている。
【0027】
左取付片33は、周縁28の左部から前方に張り出した取付片である。左取付片33は、内周面12aの左部位にスポット溶接で接合されている。
図1に示す右取付片34は、周縁28の右部から前方に張り出した取付片である。右取付片34は、内周面12aの右部位にスポット溶接で接合されている。
【0028】
このように、上取付片31を上部位に取り付け、下取付片32を下部位に接合し、左取付片33を左部位に接合し、右取付片34を右部位に接合することで、左隔壁15が骨格部材12に取り付けられる。
【0029】
右隔壁16は、左隔壁15と同じ部材なので、各構成部に左隔壁15と同じ符号を付して説明を省略する。
【0030】
左隔壁15および左端14aの間に左発泡材21が設けられている。
この左発泡材21は、内部に略球形の独立した多数の気泡が存在する多孔材料である。左発泡材21を加熱(温度変化)することで、気泡が膨張(発泡)して左発泡材21の体積が増加する。
左隔壁15および左端14aの間に左発泡材21が設けられているので、左発泡材21が膨張する際に、左発泡材21は左隔壁15によって左隔壁15側への発泡が規制される。
これにより、左発泡材21を粉粒体13…の方向に発泡させることができる。
【0031】
右隔壁16および右端14bの間に右発泡材22が設けられている。
この右発泡材22は、左発泡材21と同様に、内部に略球形の独立した多数の気泡が存在する多孔材料である。右発泡材22を加熱(温度変化)することで、気泡が膨張(発泡)して右発泡材22の体積が増加する。
右隔壁16および右端14bの間に右発泡材22が設けられているので、右発泡材22が膨張する際に、右発泡材22は右隔壁16によって右隔壁16側への発泡が規制される。
これにより、右発泡材22を粉粒体13…の方向に発泡させることができる。
【0032】
このように、左発泡材21を粉粒体13…の方向に発泡させるとともに、右発泡材22を粉粒体13…の方向に発泡させることで、粉粒体13…に押付力(初期圧)を良好に発生させた状態を保つことができる。
【0033】
以上説明したように、輸送機器用骨格構造10は、輸送機器11に用いられる骨格部材12内に中空部25が形成され、中空部25の少なくとも一部25aに複数個の粉粒体13がブロック状に充填され、粉粒体ブロック14の左端14aを左発泡材21および左隔壁15で支えるとともに、粉粒体ブロック14の右端14bを右発泡材22および右隔壁16で支えるように構成されている。
【0034】
これにより、左右の発泡材21,22を発泡させることで、骨格部材12に荷重が作用する前段階において、粉粒体13…に押付力(初期圧)を良好に発生させた状態を保つことが可能である。
したがって、骨格部材12内に充填した粉粒体13…で、輸送機器用骨格構造10の強度・剛性を高めることができる。
【0035】
加えて、左右の発泡材21,22を発泡させることで、例えば、輸送機器用骨格構造10に荷重が矢印(図2参照)の方向に作用した場合、骨格部材12内に充填した粉粒体13…を左右の発泡材21,22および左右の隔壁15,16で密閉状態に保持することができる。
粉粒体13…を密閉状態に保持することで、粉粒体13内部に発生する圧力により、衝撃を良好に吸収することができる。
【0036】
つぎに、輸送機器用骨格構造の左右の発泡材21,22で粉粒体13…に押付力(初期圧)を作用する例を図3に基づいて説明する。
図3(a),(b)は第1実施の形態に係る輸送機器用骨格構造の発泡材で粉粒体に押付力(初期圧)を作用させる例を説明する図である。
(a)において、骨格部材12内に粉粒体13…がブロック状に充填されている。粉粒体ブロック14の左端14aに左発泡材21が設けられ、左発泡材21の左端21aに左隔壁15が設けられている。左隔壁15は骨格部材12の内周面12aに取り付けられている。
粉粒体ブロック14の右端14bに右発泡材22が設けられ、右発泡材22の右端22aに右隔壁16が設けられている。右隔壁16は骨格部材12の内周面12aに取り付けられている。
【0037】
(b)において、左発泡材21を発泡するとともに、右発泡材22を発泡する。
左発泡材21は左隔壁15によって、左隔壁15側への発泡が規制されている。よって、左発泡材21を粉粒体13…の方向に発泡させることができる。
【0038】
一方、右発泡材は右隔壁16によって、右隔壁16側への発泡が規制される。よって、右発泡材22を粉粒体13…の方向に発泡させることができる。
これにより、骨格部材12に荷重が作用する前段階において、粉粒体13…に押付力(初期圧)を良好に発生させた状態を保つことができる。
【0039】
さらに、左発泡材21は左隔壁15とブロック状の粉粒体13…との間に設けられ、右発泡材22は右隔壁16とブロック状の粉粒体13…との間に設けられている。
よって、左右の発泡材21,22が発泡する際に、重力の作用で下方に移動することを防ぐことができる。
【0040】
これにより、左右の発泡材21,22をブロック状の粉粒体13…に向けて発泡させることが可能になり、左右の発泡材21,22を均一の厚さ寸法に保つことができる。
左右の発泡材21,22を均一の厚さ寸法に保つことで、粉粒体13…を左右の発泡材21,22で確実に密閉(保持)することができる。
したがって、骨格部材12が荷重で変形したとき、粉粒体13…に発生する圧力を十分に確保することができる。
【0041】
このように、第1実施の形態に係る輸送機器用骨格構造によれば、骨格部材12に荷重が作用する前段階において、粉粒体13…に押付力(初期圧)を良好に発生させた状態を保つことができるので、骨格部材12の強度・剛性を高めることができる。
さらに、骨格部材12が荷重で変形したとき、粉粒体13…に発生する圧力を十分に確保することができるので、骨格部材12が変形する際の吸収エネルギーを効率よく高めることができる。
【0042】
以下、第2〜第4の実施の形態の輸送機器用骨格構造を図4〜図9に基づいて説明する。なお、第2〜第4の実施の形態の輸送機器用骨格構造において第1実施の形態の部材と同一類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【0043】
(第2実施の形態)
図4は本発明に係る輸送機器用骨格構造(第2実施の形態)を示す断面図である。
第2実施の形態の輸送機器用骨格構造40は、左右の隔壁15,16を連結する連結部材41を備えたもので、その他の構成は第1実施の形態の輸送機器用骨格構造10と同様である。
【0044】
連結部材41は、左端部41aが左隔壁15に設けられ、右端部41bが右隔壁16に設けられた中空の筒体である。
連結部材41を中空の筒体とすることで、連結部材41の軽量化を図ることができる。
【0045】
なお、第2実施の形態では、左右の隔壁15,16は、上下左右の取付片31〜34(上下の取付片31,32のみ図示)が粉粒体13…の方向に向けて張り出されているが、第1実施の形態と同様に、上下左右の取付片31〜34を粉粒体13…から離れる方向に張り出させることも可能である。
【0046】
左発泡材21は、連結部材41の左端部41aに取り付けられ、左隔壁15と粉粒体ブロック14の左端14aとの間に配置されている。
左隔壁15および左端14aの間に左発泡材21が設けられているので、左発泡材21が膨張する際に、左発泡材21は左隔壁15によって左隔壁15側への発泡が規制される。
これにより、左発泡材21を粉粒体13…の方向に発泡させることができる。
【0047】
右発泡材22は、連結部材41の右端部41bに取り付けられ、右隔壁16と粉粒体ブロック14の右端14bとの間に配置されている。
右隔壁16および右端14bの間に右発泡材22が設けられているので、右発泡材22が膨張する際に、右発泡材22は右隔壁16によって右隔壁16側への発泡が規制される。
これにより、右発泡材22を粉粒体13…の方向に発泡させることができる。
【0048】
加えて、左右の隔壁15,16を連結部材41で連結することで、左右の隔壁15,16を所定の位置に一層確実に保持することができる。
よって、左隔壁15で左発泡材21を一層確実に支え、かつ、右隔壁16で右発泡材22を一層確実に支えることができる。粉粒体13…を左右の発泡材21,22で一層確実に密閉(保持)することができる。
これにより、骨格部材12が荷重で変形したとき、粉粒体13…に発生する圧力を一層良好に確保することができる。
【0049】
このように、左右の発泡材21,22を発泡させることで、骨格部材12に荷重が作用する前段階において、粉粒体13…に押付力(初期圧)を良好に発生させた状態を保つことが可能である。
したがって、骨格部材12内に充填した粉粒体13…で、輸送機器用骨格構造40の強度・剛性を高めることができる。
【0050】
加えて、左右の発泡材21,22を発泡させることで、例えば、輸送機器用骨格構造40に荷重が矢印の方向に作用した場合、骨格部材12内に充填した粉粒体13…を左右の発泡材21,22で密閉状態に保持することができる。
粉粒体13…を密閉状態に保持することで、粉粒体13内部に発生する圧力により、衝撃を良好に吸収することができる。
【0051】
つぎに、第2実施の形態の輸送機器用骨格構造40を組み付ける工程を図5に基づいて説明する。
図5(a),(b)は第2実施の形態に係る輸送機器用骨格構造の組付工程を説明する図である。
(a)において、左右の隔壁15,16を連結部材41で連結する。この状態で、連結部材41の左端部41aに左発泡材21が設けられるとともに、連結部材41の右端部41bに右発泡材22が設けられる。
左発泡材21は、左隔壁15に隣接して配置され、右発泡材22は、右隔壁16に隣接して配置されている。
【0052】
連結部材41の外周壁41cに粉粒体13…を取り付ける。具体的には、粉粒体13…をブロック状(塊状)に弱く固形化し、弱く固形化した粉粒体13…を連結部材41の外周壁41cに取り付ける。
これにより、左右の隔壁15,16、連結部材41、左右の発泡材21,22および粉粒体13…を一体にまとめることができる。
【0053】
一体にまとめた左右の隔壁15,16、連結部材41、左右の発泡材21,22および粉粒体13…を、骨格部材12の下半分を構成する下側部材18に矢印Aの如く収容する。
左隔壁15を下側部材18にスポット溶接などで接合するとともに、右隔壁16を下側部材18にスポット溶接などで接合する。
つぎに、骨格部材12の上半分を構成する上側部材19を、下側部材18に矢印Bの如く接合する。
【0054】
(b)において、一体にまとめた左右の隔壁15,16、連結部材41、左右の発泡材21,22および粉粒体13…を、骨格部材12内の中空部25の少なくとも一部25aに収容する。
この状態で、左右の発泡材21,22を発泡させて、図4に示す輸送機器用骨格構造40を得る。
【0055】
このように、左右の隔壁15,16を連結部材41で連結することで、左右の隔壁15,16、連結部材41、左右の発泡材21,22および粉粒体13…を一体にまとめることが可能になる。
これにより、左右の隔壁15,16、連結部材41、左右の発泡材21,22および粉粒体13…を骨格部材12内に手間をかけないで簡単に設けることができる。
【0056】
加えて、第2実施の形態の輸送機器用骨格構造40によれば、第1実施の形態の輸送機器用骨格構造10と同様の効果を得ることができる。
【0057】
(第3実施の形態)
図6は本発明に係る輸送機器用骨格構造(第3実施の形態)を示す断面図である。
第3実施の形態の輸送機器用骨格構造50は、粉粒体13…および左右の発泡材21,22を収納する容器51を備えたもので、その他の構成は第1実施の形態の輸送機器用骨格構造10と同様である。
【0058】
容器51は、軟らかい樹脂で断面略矩形状に形成され、左壁52に隣接させて左発泡材21が収納され、右壁53に隣接させて右発泡材22が収納され、左右の発泡材21,22間に粉粒体13…が充填されている。
【0059】
すなわち、左発泡材21は、粉粒体ブロック14の左端14aと左壁52との間に設けられている。この左発泡材21は、容器51の左壁52を介して左隔壁15に接している。
よって、左発泡材21が膨張する際に、左発泡材21は左隔壁15によって、左隔壁15側への発泡が規制される。
これにより、左発泡材21を粉粒体13…の方向に発泡させることができる。
【0060】
一方、右発泡材22は、粉粒体ブロック14の右端14bと右壁53との間に設けられている。この右発泡材22は、容器51の右壁53を介して右隔壁16に接している。
よって、右発泡材22が膨張する際に、右発泡材22は右隔壁16によって、右隔壁16側への発泡が規制される。
これにより、右発泡材22を粉粒体13…の方向に発泡させることができる。
【0061】
このように、左右の発泡材21,22を発泡させることで、骨格部材に荷重が作用する前段階において、粉粒体13…に押付力(初期圧)を良好に発生させた状態を保つことが可能である。
したがって、骨格部材12内に充填した粉粒体13…で、輸送機器用骨格構造50の強度・剛性を高めることができる。
【0062】
加えて、左右の発泡材21,22を発泡させることで、例えば、輸送機器用骨格構造50に荷重が矢印の方向に作用した場合、骨格部材12内に充填した粉粒体13…を左右の発泡材21,22で密閉状態に保持することができる。
粉粒体13…を密閉状態に保持することで、粉粒体13内部に発生する圧力により、衝撃を良好に吸収することができる。
【0063】
つぎに、第3実施の形態の輸送機器用骨格構造50を組み付ける工程を図7に基づいて説明する。
図7(a),(b)は第3実施の形態に係る輸送機器用骨格構造の組付工程を説明する図である。
(a)において、骨格部材12の下半分を構成する下側部材18に、左右の隔壁15,16を所定間隔をおいて取り付ける(接合する)。
容器51内に左右の発泡材21,22および粉粒体13…を収納する。具体的には、容器51の左壁52に隣接させて左発泡材21を収納し、容器51の右壁53に隣接させて右発泡材22を収納する。そして、左右の発泡材21,22間に粉粒体13…を収納する。
【0064】
左右の発泡材21,22および粉粒体13…を収納した容器51を、下側部材18に矢印Cの如く収容する。容器51が左右の隔壁15,16間に配置される。
この状態で、骨格部材12の上半分を構成する上側部材19を、下側部材18に矢印Dの如く接合する。
【0065】
(b)において、左右の隔壁15,16、容器51、容器51内の左右の発泡材21,22および粉粒体13…を、骨格部材12内の中空部25の少なくとも一部25a(図7(a)参照)に収容する。
この状態で、左右の発泡材21,22を発泡させて、図6に示す輸送機器用骨格構造50を得る。
【0066】
このように、左右の発泡材21,22および粉粒体13…を容器51内に収容することで、左右の発泡材21,22および粉粒体13…を一体にまとめることが可能になる。
これにより、左右の発泡材21,22および粉粒体13…を骨格部材12内に手間をかけないで簡単に設けることができる。
【0067】
加えて、第3実施の形態の輸送機器用骨格構造50によれば、第1実施の形態の輸送機器用骨格構造10と同様の効果を得ることができる。
【0068】
(第4実施の形態)
図8は本発明に係る輸送機器用骨格構造(第4実施の形態)を示す断面図である。
第4実施の形態の輸送機器用骨格構造60は、粉粒体13…を収納する容器61を備えたもので、その他の構成は第1実施の形態の輸送機器用骨格構造10と同様である。
【0069】
容器61は、第3実施の形態の容器51と同様に、軟らかい樹脂で断面略矩形状に形成され、粉粒体13…が充填されている。
粉粒体ブロック14の左端14aが容器61の左壁62に接し、粉粒体ブロック14の右端14bが容器61の右壁63に接している。
【0070】
容器61の左壁62と左隔壁15との間に左発泡材21が設けられている。左発泡材21は左隔壁15に接している。
よって、左発泡材21が膨張する際に、左発泡材21は左隔壁15によって左隔壁15側への発泡が規制される。
これにより、左発泡材21を粉粒体13…の方向に発泡させることができる。
【0071】
一方、容器61の右壁63と右隔壁16との間に右発泡材22が設けられている。右発泡材22は右隔壁16に接している。
よって、右発泡材22が膨張する際に、右発泡材22は右隔壁16によって右隔壁16側への発泡が規制される。
これにより、右発泡材22を粉粒体13…の方向に発泡させることができる。
【0072】
このように、左右の発泡材21,22を発泡させることで、骨格部材に荷重が作用する前段階において、粉粒体13…に押付力(初期圧)を良好に発生させた状態を保つことが可能である。
したがって、骨格部材12内に充填した粉粒体13…で、輸送機器用骨格構造60の強度・剛性を高めることができる。
【0073】
加えて、左右の発泡材21,22を発泡させることで、例えば、輸送機器用骨格構造60に荷重が矢印の方向に作用した場合、骨格部材12内に充填した粉粒体13…を左右の発泡材21,22で密閉状態に保持することができる。
粉粒体13…を密閉状態に保持することで、粉粒体13内部に発生する圧力により、衝撃を良好に吸収することができる。
【0074】
つぎに、第4実施の形態の輸送機器用骨格構造60を組み付ける工程を図9に基づいて説明する。
図9(a),(b)は第4実施の形態に係る輸送機器用骨格構造の組付工程を説明する図である。
(a)において、骨格部材12の下半分を構成する下側部材18に、左右の隔壁15,16を所定間隔をおいて取り付ける(接合する)。
容器61内に粉粒体13…を収納する。容器61の左壁62に、貼付や機械的手段で左発泡材21を取り付ける。容器61の右壁63に、貼付や機械的手段で右発泡材22を取り付ける。
【0075】
粉粒体13…を収納し、かつ左右の発泡材21,22を設けた容器61を、下側部材18に矢印Eの如く収容する。容器61が左右の隔壁15,16間に配置される。
この状態で、骨格部材12の上半分を構成する上側部材19を、下側部材18に矢印Fの如く接合する。
【0076】
(b)において、左右の隔壁15,16、容器61、粉粒体13…および左右の発泡材21,22を、骨格部材12内の中空部25の少なくとも一部25aに収容する。
この状態で、左右の発泡材21,22を発泡させて、図8に示す輸送機器用骨格構造60を得る。
【0077】
このように、粉粒体13…を容器61内に収容し、かつ容器に左右の発泡材21,22を取り付けることで、粉粒体13…および左右の発泡材21,22を一体にまとめることが可能になる。
これにより、粉粒体13…および左右の発泡材21,22を骨格部材12内に手間をかけないで簡単に設けることができる。
【0078】
加えて、第4実施の形態の輸送機器用骨格構造60によれば、第1実施の形態の輸送機器用骨格構造10と同様の効果を得ることができる。
【0079】
なお、前記第1〜第4の実施の形態では、輸送機器用骨格構造10,40,50,60を適用する輸送機器11として自動車を例示したが、これに限らないで、輸送機器用骨格構造10,40,50,60を鉄道、船舶、航空機、オートバイなどの他の輸送機器に適用することも可能である。
【0080】
また、前記第1〜第4の実施の形態では、左右の発泡材21,22を加熱(温度変化)により膨張(発泡)する部材として説明したが、これに限らないで、マイクロウエーブや化学反応などで膨張(発泡)する発泡材を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、骨格部材内に粉粒体を充填した輸送機器用骨格構造を備えた自動車などへの適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る輸送機器用骨格構造(第1実施の形態)を示す斜視図である。
【図2】第1実施の形態に係る輸送機器用骨格構造を示す断面図である。
【図3】第1実施の形態に係る輸送機器用骨格構造の発泡材で粉粒体に押付力(初期圧)を作用させる例を説明する図である。
【図4】本発明に係る輸送機器用骨格構造(第2実施の形態)を示す断面図である。
【図5】第2実施の形態に係る輸送機器用骨格構造の組付工程を説明する図である。
【図6】本発明に係る輸送機器用骨格構造(第3実施の形態)を示す断面図である。
【図7】第3実施の形態に係る輸送機器用骨格構造の組付工程を説明する図である。
【図8】本発明に係る輸送機器用骨格構造(第4実施の形態)を示す断面図である。
【図9】第4実施の形態に係る輸送機器用骨格構造の組付工程を説明する図である。
【符号の説明】
【0083】
10,40,50,60…輸送機器用骨格構造、11…輸送機器、12…骨格部材、13…粉粒体、14…粉粒体ブロック、14a…左端(ブロック状に充填された粉粒体の一端)、14b…右端(ブロック状に充填された粉粒体の他端)、15…左隔壁(一方の隔壁)、16…右隔壁(他方の隔壁)、21…左発泡材(一方の発泡材)、22…右発泡材(他方の発泡材)、25…中空部、25a…中空部の少なくとも一部、41…連結部材、51,61…容器、52,62…左壁、53,63…右壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送機器に用いられる骨格部材内に中空部が形成され、前記中空部の少なくとも一部に複数個の粉粒体がブロック状に充填された輸送機器用骨格構造において、
前記ブロック状に充填された粉粒体の一端に対向させて設けられた一方の隔壁と、
前記一方の隔壁および前記一端の間に設けられた一方の発泡材と、
前記ブロック状に充填された粉粒体の他端に対向させて設けられた他方の隔壁と、
前記他方の隔壁および前記他端の間に設けられた他方の発泡材と、
を備えたことを特徴とする輸送機器用骨格構造。
【請求項2】
前記一方の隔壁および前記他方の隔壁が連結部材を介して連結されていることを特徴とする請求項1記載の輸送機器用骨格構造。
【請求項3】
前記複数個の粉粒体は容器内にブロック状に充填され、
前記ブロック状の粉粒体の一端と前記容器との間に前記一方の発泡材が設けられ、
前記ブロック状の粉粒体の他端と前記容器の他端との間に前記他方の発泡材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の輸送機器用骨格構造。
【請求項4】
前記複数個の粉粒体が容器内にブロック状に充填され、
前記一方の隔壁と前記容器との間に一方の発泡材が設けられ、
前記他方の隔壁と前記容器との間に他方の発泡材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の輸送機器用骨格構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−230272(P2008−230272A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68647(P2007−68647)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】