説明

輸送機器用骨格構造

【課題】骨格部材内の粉粒体に良好に押付力を発生させた状態を保つことができ、かつ軽量化を図ることができる輸送機器用骨格構造を提供する。
【解決手段】輸送機器用骨格構造10は、骨格部材12内に粉粒体13が充填され、粉粒体13の両端14a,14bをそれぞれ左右の隔壁15,16で支えるものである。左右の隔壁15,16は、骨格部材12の内周面12aに沿って設けられた周縁32と、周縁32に対して粉粒体13…から離れる方向に突出した中央部38と、中央部38および周縁32を連結する傾斜部39とを有する。左右の隔壁15,16は、周縁32、中央部38および傾斜部39により隆起部31が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨格部材内に粉粒体を充填した輸送機器用骨格構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両などの輸送機器は、剛性を確保するために、中空状の骨格部材を備えている。この中空状の骨格部材のなかには、例えば、内部(すなわち、中空部)に粉粒体を充填させた輸送機器用骨格構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−267260公報
【0003】
特許文献1の輸送機器用骨格構造は、骨格部材の中空部に粉粒体を充填し、両端を平板状の隔壁で閉じたものである。これにより、骨格部材に荷重が作用したときに、粉粒体で吸収エネルギーを高めることができる。
さらに、輸送機器用骨格構造は、骨格部材の中空部に粉粒体を充填することで、衝突時の吸収エネルギーを高めるとともに、骨格部材の強度・剛性を高めることができる。
【0004】
ここで、輸送機器用骨格構造の吸収エネルギーを高めるためには、骨格部材の変形中に、中空部に充填した粉粒体が逃げない(拡散しない)ように保つ必要がある。
粉粒体を逃がさないように保持することで、粉粒体内部に発生する圧力により吸収エネルギーを高めることができる。
一方、輸送機器用骨格構造の強度・剛性を高めるためには、骨格部材に荷重が作用する前段階で、粉粒体に押付力(初期圧)が発生するように保つ必要がある。
【0005】
すなわち、充填した粉粒体で骨格部材の吸収エネルギーや強度・剛性を高めるためには、充填した粉粒体に押付力を良好に発生させた状態を保つことが重要な要素である。
充填した粉粒体に押付力を発生させるためには、粉粒体の両端部を隔壁で押圧する必要がある。よって、隔壁の剛性を比較的高く設定する必要がある。
【0006】
ところで、特許文献1の隔壁は平板状に形成されている。よって、隔壁の剛性を比較的高く設定するためには、隔壁の板厚寸法を大きく設定する必要があり、そのことが隔壁の重量を抑える妨げになっていた。
【0007】
さらに、自動車などの骨格部品は、断面略コ字状の2部材がフランジ部で接合されて閉断面に形成されている。
この骨格部材の中空部の一部に粉粒体を充填する場合、中空部内に一対の隔壁を設ける必要がある。
【0008】
骨格部材の中空部に隔壁を設けるためには、断面略コ字状の2部材のうち、一方の部材を横置きにセットし、一方の部材に隔壁の下半分を差し込む。
差し込んだ下半分の周縁を、一方の部材にスポット溶接で接合した後、一方の部材のフランジに他方の部材のフランジをスポット溶接で接合して骨格部材を形成する。
【0009】
この状態において、隔壁は骨格部材の中空部に収容されているので、隔壁の上半部を他方の部材にスポット溶接で接合することができない。
よって、隔壁の上半部を、ボルトなどの締結部材で他方の部材に締結する必要がある。
このため、部品点数が多くなり、そのことが重量やコストを抑える妨げになっていた。
【0010】
一方、前述した骨格部材に荷重が作用する前段階で、粉粒体に押付力(すなわち、初期圧)が発生するように保つ方法として、充填した粉粒体の両端側に、発泡材を設けたものが知られている。
この輸送機器用骨格構造は、発泡材を膨張させることで、発泡材で粉粒体を押圧することが可能である。
発泡材で粉粒体に押付力を作用させることで、粉粒体に押付力(初期圧)が発生するように保つことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、発泡材は、粉粒体の反対側の面(すなわち、外側の面)が他の部材に接していない。よって、発泡材が発泡する際に、外側の面のみが膨張する。
このため、発泡材では、粉粒体に押付力(初期圧)が発生するように保つことはできない。
【0012】
さらに、発泡材を発泡する際に、発泡中の発泡材が重力の作用で下方に移動する。よって、発泡した隔壁は、幅寸法が下端部で大きく上端部で小さくなる。
このため、骨格部材が荷重で変形したとき、隔壁の上端部から粉粒体が漏れだしてしまうことが考えられる。
【0013】
本発明は、骨格部材内の粉粒体に良好に押付力を発生させた状態を保つことができ、かつ軽量化を図ることができる輸送機器用骨格構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に係る発明は、輸送機器に用いられる骨格部材内に中空部が形成され、前記中空部の少なくとも一部に複数個の粉粒体がブロック状に充填され、ブロック状に充填された粉粒体の両端をそれぞれ隔壁で支える輸送機器用骨格構造において、前記隔壁は、骨格部材の内周面に沿って設けられた周縁と、周縁に対して前記ブロック状に充填された粉粒体から離れる方向に突出した中央部と、中央部および周縁を連結する傾斜部と、を有し、前記周縁、前記中央部および前記傾斜部により隆起部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
ここで、輸送機器用骨格構造として、骨格部材の中空部に複数個の粉粒体を充填し、ブロック状に充填された粉粒体の両端に隔壁を備えたものを用意した。
用意した骨格部材を曲げ変形させ、粉粒体から隔壁に作用する押付力を圧力計で計測した。
この結果、隔壁の中央部に大きな押付力が集中することがわかった。
【0016】
隔壁の中央部に大きな押付力が集中する理由は、粉粒体の摩擦が影響していると思われる。粉粒体の摩擦として、粒子間摩擦、内部摩擦、壁面摩擦がある。
粒子間摩擦とは、1個粒子同士の摩擦をいう。
内部摩擦とは、粉粒体層−粉粒体層間の摩擦をいう。
壁面摩擦とは、粉粒体層−容器壁面間の摩擦をいう。
【0017】
そこで、請求項1において、隔壁の中央部を、ブロック状に充填された粉粒体から離れる方向に突出するように形成した。
よって、隔壁が中央部、周縁および傾斜部で隆起状に形成される。これにより、隔壁の剛性を、平板の剛性と比較して高くすることができる。
【0018】
請求項2は、輸送機器に用いられる骨格部材内に中空部が形成され、前記中空部の少なくとも一部に複数個の粉粒体がブロック状に充填され、ブロック状に充填された粉粒体の両端をそれぞれ隔壁で支え、充填した粉粒体で衝撃を吸収する輸送機器用骨格構造において、前記隔壁は、骨格部材に取り付けた後、前記ブロック状に充填された粉粒体を押し付ける方向に形状回復可能な形状記憶合金で形成されたことを特徴とする。
【0019】
請求項3において、前記隔壁は、形状回復前の状態において、前記ブロック状に充填された粉粒体に対して離れる方向に湾曲に形成されたものであることを特徴とする。
【0020】
請求項4において、前記隔壁は、前記ブロック状に充填された粉粒体に近づく方向に湾曲に形状回復する部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明では、隔壁の中央部を、ブロック状に充填された粉粒体から離れる方向に突出するように形成した。
よって、隔壁が中央部、周縁および傾斜部で隆起状に形成される。これにより、隔壁の剛性を、平板の剛性と比較して高くすることができる。
これにより、隔壁の板厚寸法を小さくしても、この隔壁で粉粒体を良好に保持して、粉粒体に押付力を発生させた状態を保つことができるという利点がある。
【0022】
さらに、隔壁の剛性を高めて隔壁の板厚寸法を小さくすることで、隔壁の軽量化を図ることができるという利点がある。
【0023】
請求項2に係る発明では、隔壁を形状記憶合金で形成した。よって、隔壁を骨格部材に取り付けた後、複数個の粉粒体を押し付ける方向に形状回復させることが可能になる。
これにより、形状記憶合金製の隔壁で、複数個の粉粒体に押付力(初期圧)を発生させた状態に保つことができるという利点がある。
【0024】
請求項3に係る発明では、形状回復前の隔壁を、複数個の粉粒体に対して離れる方向に湾曲に形成した。
よって、隔壁を形状回復させたとき、隔壁を複数個の粉粒体に向けて移動する量を大きく確保することができる。
これにより、形状記憶合金製の隔壁で、複数個の粉粒体に一層良好に押付力(初期圧)を発生させた状態に保つことができるという利点がある。
【0025】
請求項4に係る発明では、形状回復した隔壁を、複数個の粉粒体に近づく方向に湾曲形成した。よって、形状記憶合金製の隔壁で、複数個の粉粒体に一層良好に押付力(初期圧)を発生させた状態に保つことができるという利点がある。
加えて、形状回復した隔壁を湾曲状に形成することで、隔壁の剛性を高めることができる。
これにより、隔壁の板厚寸法を小さくすることが可能になり、隔壁の軽量化を図ることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係る輸送機器用骨格構造(第1実施の形態)を示す斜視図、図2は第1実施の形態に係る輸送機器用骨格構造を示す分解斜視図である。
輸送機器用骨格構造10は、輸送機器11としての自動車に用いられる骨格部材12と、骨格部材12内にブロック状に充填された複数個の粉粒体13と、粉粒体13…で形成した粉粒体ブロック14の左右端(両端)14a,14bにそれぞれ設けられた左右の隔壁(隔壁)15,16とを備える。
【0027】
骨格部材12は、下半分を構成する下側部材18と、上半分を構成する上側部材19とを接合することで矩形状の筒体に形成された部材である。
下側部材18は、断面略コ字状に形成され、左辺から左側に張り出した左下フランジ18aと、右辺から右側に張り出した右下フランジ18bとを有する。
上側部材19は、断面略コ字状に形成され、左辺から左側に張り出した左上フランジ19aと、右辺から右側に張り出した右上フランジ19bとを有する。
【0028】
下側部材18の左下フランジ18aと、上側部材19の左上フランジ19aとが、例えば、スポット溶接で接合されている。
同様に、下側部材18の右下フランジ18bと、上側部材19の右上フランジ19bとが、例えば、スポット溶接で接合されている。
【0029】
左下フランジ18aと左上フランジ19aとを接合するとともに、右下フランジ18bと右上フランジ19bとを接合することで、下側部材18および上側部材19が一体に連結されて骨格部材12が形成される。
骨格部材12は、断面略矩形状に形成され、内周面12aで中空部25(図4参照)が形成された筒状の部材である。
【0030】
複数の粉粒体13は、骨格部材12の内部に形成された中空部25の少なくとも一部25a(図4参照)にブロック状(塊状)に充填されている。
複数個の粉粒体13がブロック状に充填されることで、粉粒体ブロック14が形成される。
【0031】
粉粒体13…は、骨格部材12に荷重が作用して骨格部材12が変形したとき、粉粒体13の変形中に内部に高い圧力を発生させて、荷重(衝撃エネルギー)を吸収するものである。
さらに、粉粒体13…は、骨格部材12に充填されることで、骨格部材12の強度・剛性を高めるものである。
【0032】
粉粒体13としては、例えば、二酸化けい素(SiO)、酸化アルミニウム(Al:アルミナ)、シリカアルミナ、樹脂、ガラス、陶磁器が好適である。
【0033】
左隔壁15は、粉粒体ブロック14の左端14aに配置された隆起部31と、隆起部31の周縁32に設けられた上下左右の取付片33〜36とを有する。
隆起部31は、骨格部材12の内周面12aに沿って設けられた周縁32と、周縁32に対して粉粒体13…から離れる方向に突出した中央部38と、中央部38および周縁32を連結する傾斜部39とで隆起状態に形成されている。
【0034】
右隔壁16は、左隔壁15と同じ部材なので、各構成部に左隔壁15と同じ符号を付して説明を省略する。
【0035】
以上説明したように、輸送機器用骨格構造10は、輸送機器11に用いられる骨格部材12内に中空部25が形成され、中空部25の少なくとも一部25aに複数個の粉粒体13がブロック状に充填され、粉粒体ブロック14の左端14aを左隔壁15で支えるとともに右端14bを右隔壁16で支えるように構成されている。
【0036】
これにより、例えば、輸送機器用骨格構造10に荷重が矢印の方向に作用した場合、骨格部材12内に充填した粉粒体13で衝撃を吸収することが可能である。
さらに、骨格部材12内に充填した粉粒体13で、輸送機器用骨格構造10の強度・剛性を高めることができる。
【0037】
図3は輸送機器用骨格構造の隔壁に作用する荷重について説明する断面図である。
骨格部材41の中空部42に複数個の粉粒体13(図示せず)を充填し、粉粒体ブロックの左右端に隔壁43,43(一方のみを図示)を備えたものを用意した。
隔壁43は、平板状の板材である。
用意した骨格部材12を曲げ変形させ、粉粒体13から隔壁43に作用する押付力を圧力計で計測した。
【0038】
この結果、隔壁43の中央部43aに大きな押付力が集中することがわかった。このことから、計測に基づいて、中央部43aの形状を決めることが可能である。
なお、隔壁43の中央部43aに大きな押付力が集中する理由は、粉粒体13の摩擦(粒子間摩擦、内部摩擦、壁面摩擦)が影響していると考えられる。
【0039】
図4は第1実施の形態に係る輸送機器用骨格構造を示す断面図、図5は第1実施の形態に係る左隔壁を示す断面図、図6は図1の6矢視図である。
左隔壁15の周縁32は、骨格部材12の内周面12aに沿って略矩形状に形成された縁部である。
【0040】
中央部38は、周縁32に対して粉粒体ブロック14の左端14aから距離L1だけ離れる方向に突出した矩形状の平坦部位である。
この中央部38は、中空部25に充填された粉粒体13から大きな押圧力が作用する部位であり、高さ寸法H、幅寸法Wに設定されている。
なお、中央部38の高さ寸法Hや幅寸法Wは、図3で説明したように、粉粒体13から左隔壁15に作用する押付力を圧力計で計測することで求めることが可能である。
【0041】
傾斜部39は、中央部38および周縁32を連結する傾斜状の部位である。よって、傾斜部39の断面を直線状に形成することができる。
この傾斜部39は、中空部25に充填された粉粒体13…から小さな押圧力が作用する部位である。
なお、粉粒体13…から小さな押圧力が作用する部位は、中央部38と同様に、計測で求めることが可能である。
【0042】
上取付片33は、周縁32の上部から前方に張り出した取付片である。上取付片33は、内周面12aの上部位に接触する辺である。
下取付片34は、周縁32の下部から前方に張り出した取付片である。下取付片34は、内周面12aの下部位に接触する辺である。
下取付片34は、図6に示すように、内周面12aの下部位26にスポット溶接で接合されている。
【0043】
左取付片35は、周縁32の左部から前方に張り出した取付片である。左取付片35は、内周面12aの左部位に接触する辺である。
左取付片35は、図6に示すように、内周面12aの左部位27にスポット溶接で接合されている。
【0044】
右取付片36は、周縁32の右部から前方に張り出した取付片である。右取付片36は、内周面12aの右部位に接触する辺である。
右取付片36は、図6に示すように、内周面12aの右部位28にスポット溶接で接合されている。
このように、下取付片34、左取付片35および右取付片36を内周面12aに接合することで、左隔壁15が骨格部材12に取り付けられる。
【0045】
以下、左隔壁15の上取付片33を内周面12aの上部位に接合しない理由を説明する。
すなわち、左隔壁15を骨格部材12に取り付ける場合、下側部材18および上側部材19を一体に接合する前に、下側部材18内に左隔壁15を配置する。
この状態で、下取付片34、左取付片35および右取付片36は外部に露出している。このため、スポット溶接用の電極を下取付片34、左取付片35や右取付片36に当接することが容易にできる。
よって、下取付片34、左取付片35および右取付片36を内周面12aにスポット溶接することが可能である。
【0046】
そして、下取付片34、左取付片35および右取付片36を内周面12aにスポット溶接した後、下側部材18および上側部材19を一体に接合する。よって、上取付片33は骨格部材12内に位置することになる。
このため、スポット溶接用の電極を上取付片33に当接することが難しく、上取付片33を内周面12aの上部位に接合することは難しい。
【0047】
ここで、左隔壁15は、粉粒体13…から押圧力が作用する部位(すなわち、周縁32、中央部38および傾斜部39)で隆起部31が形成されている。
左隔壁15に隆起部31を形成することで、左隔壁15の剛性を、平板の剛性と比較して高くすることができる。
【0048】
左隔壁15の剛性を高くすることで、上取付片33を内周面12aの上部位に接合しなくても、粉粒体13…から左隔壁15に押圧力が作用した際に、左隔壁15で粉粒体13…を良好に保持することができる。
これにより、左隔壁15で粉粒体13…に押付力を発生させた状態を保つことができる。
【0049】
すなわち、左隔壁15の剛性を高くすることで、従来技術で説明したように、ボルトなどの締結部材で、左隔壁15の上取付片33を骨格部材12の内周面12aに締結する必要がない。
したがって、左隔壁15の上取付片33を骨格部材12の内周面12aに締結するボルトなどの締結部材を不要とすることができる。
【0050】
さらに、左隔壁15に隆起部31を形成して剛性を高くすることで、左隔壁15の板厚T1寸法を小さくすることが可能である。
左隔壁15の板厚T1寸法を小さくしても、粉粒体から左隔壁15に押圧力が作用した際に、左隔壁15で粉粒体13を良好に保持して、粉粒体13に押付力を発生させた状態を保つことができる。
【0051】
このように、左隔壁15の上取付片33を骨格部材12の内周面12aに締結するボルトなどの締結部材を不要とし、かつ、左隔壁15の板厚T1寸法を小さくすることで、輸送機器用骨格構造の軽量化を図ることができる。
【0052】
つぎに、輸送機器用骨格構造の左隔壁15に粉粒体13から押圧力が作用する例を図7に基づいて説明する。
図7(a),(b)は第1実施の形態に係る輸送機器用骨格構造の左隔壁に押圧力が作用する例を説明する図である。(a)の比較例は左隔壁を湾曲状に形成したものを示し、(b)の実施例は第1実施の形態を示す。
(a)において、骨格部材12に作用する荷重で骨格部材12が変形することで、左隔壁45に粉粒体13から押圧力が作用する。
粉粒体13からの押圧力は、左隔壁45の中央部46に大きな押付力F1が作用し、中央部46の外側の部位47に小さな押付力F2が作用する。
中央部46に大きな押付力F1が作用することで、外側の部位47に引張力σが矢印の如く作用する。
【0053】
ここで、外側の部位47は、断面形状が湾曲状に形成されている。このため、外側の部位47に引張力σが作用することで、外側の部位47は直線状に変形してしまう。
よって、外側の部位47の変形を防止するためには、左隔壁45の板厚T2を大きく設定する必要がある。
このため、左隔壁45を湾曲状に形成すると、左隔壁45の軽量化を図ることはできない。
【0054】
(b)において、骨格部材12に作用する荷重で骨格部材12が変形することで、左隔壁15に粉粒体13から押圧力が作用する。
粉粒体13からの押圧力は、左隔壁15の中央部38に大きな押付力F1が作用し、中央部38の外側の傾斜部39に小さな押付力F2が作用する。
中央部38に大きな押付力F1が作用することで、傾斜部39に引張力σが矢印の如く作用する。
【0055】
ここで、傾斜部39は、断面形状が直線状に形成されている。このため、傾斜部39に引張力σが作用した際に、引張力σを傾斜部39で良好に支えることができる。
これにより、傾斜部39の板厚T1を比較的小さく抑えることができるので、左隔壁15の軽量化を図ることができる。
【0056】
つぎに、第1実施の形態の輸送機器用骨格構造10の変形例を変形例1〜2として図8〜図9に基づいて説明する。なお、変形例1〜2において第1実施の形態の部材と同一類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【0057】
(変形例1)
図8は第1実施の形態に係る左隔壁の変形例1を示す断面図である。
変形例1の左隔壁51は、第1実施の形態の上下左右の取付片33〜36に代えて上下左右の取付片53,54(左右の取付片は図示せず)を設けたもので、その他の構成は第1実施の形態の左隔壁15と同様である。
【0058】
上下左右の取付片53,54は、第1実施の形態の左隔壁15とは逆方向、すなわち、中央部38に対して離れる方向に張り出されている。
変形例1の左隔壁51によれば、第1実施の形態の左隔壁15と同様の効果を得ることができる。
【0059】
(変形例2)
図9は第1実施の形態に係る左隔壁の変形例2を示す断面図である。なお、図9においては、左隔壁に関する形状の理解を容易にするために上下左右の取付片を省略する。
変形例2の左隔壁61は、第1実施の形態の隆起部31に代えて隆起部62を設けたもので、その他の構成は第1実施の形態の左隔壁15と同様である。
隆起部62は中央部63を多角形に形成したものである。
【0060】
中央部63を多角形に形成することで、傾斜部64全域に略均等に折曲部64aを多数形成することができる。
これにより、傾斜部64の剛性をさらに高めることが可能になり、左隔壁61の剛性を一層高めることができる。
加えて、変形例2の左隔壁61によれば、第1実施の形態の左隔壁15と同様の効果を得ることができる。
【0061】
以下、第2〜第3の実施の形態の輸送機器用骨格構造を図10〜図12に基づいて説明する。なお、第2〜第3の実施の形態の輸送機器用骨格構造において第1実施の形態の部材と同一類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【0062】
(第2実施の形態)
図10は本発明に係る輸送機器用骨格構造(第2実施の形態)を示す断面図である。
第2実施の形態の輸送機器用骨格構造70は、第1実施の形態の左右の隔壁15,16に代えて左右の隔壁(隔壁)71,72を備えたもので、その他の構成は第1実施の形態の輸送機器用骨格構造10と同様である。
【0063】
左隔壁71は、形状記憶合金で形成された部材で、粉粒体ブロック14の左端14aに配置された隆起部74と、隆起部74の周縁75に設けられた上下左右の取付片78,79(左右の取付片は図示せず)とを有する。
左隔壁71を形状記憶合金で形成することで、左隔壁71を温度変化によって形状回復させることができる。
【0064】
隆起部74は、骨格部材12の内周面12aに沿って設けられた周縁75と、周縁75に対して粉粒体13…側に湾曲状に突出した隆起本体76とを有する。
隆起本体76は、左隔壁71が形状回復された状態において、粉粒体ブロック14の左端14aを押し付ける方向に湾曲状に形成されている。
なお、左隔壁71は、形状回復前の状態において、隆起本体76が粉粒体ブロック14の左端14aから離れる方向に湾曲状に形成されている(図11(a)参照)。
【0065】
右隔壁72は、左隔壁71と同じ部材なので、各構成部に左隔壁71と同じ符号を付して説明を省略する。
【0066】
左右の隔壁71,72が形状回復した状態において、隆起本体76,76は湾曲状に形成されている。これにより、左右の隔壁71,72は、図示しない平板状の左右の隔壁と比較して剛性を高めることができる。
左右の隔壁71,72の剛性を高めることで、左右の隔壁71,72の板厚寸法を小さくすることが可能になり、左右の隔壁71,72の軽量化が図れる。
【0067】
加えて、左右の隔壁71,72の剛性を高めることで、骨格部材12の変形中に、中空部25の粉粒体13…が逃げない(拡散しない)ように保つことができる。
粉粒体13…を逃がさないように保持することで、粉粒体13内部に発生する圧力により吸収エネルギーを高めることができる。
【0068】
図11(a),(b)は第2の実施の形態に係る左右の隔壁で粉粒体に押付力を作用させる例を説明する図である。
(a)において、骨格部材12の下半分を構成する下側部材18に、左右の隔壁71,72を形状回復前の状態で所定間隔をおいて取り付ける。
左右の隔壁71,72間に複数個の粉粒体13を充填し、骨格部材12の下側部材18に上側部材19を取り付ける。
【0069】
これにより、骨格部材12の中空部25で、かつ左右の隔壁71,72間に複数個の粉粒体13…がブロック状に充填される。
この状態において、左右の隔壁71,72は、ブロック状に充填された粉粒体13…に対して離れる方向に湾曲形状に保たれている。
【0070】
(b)において、左右の隔壁71,72を加熱(温度変化)することで、左右の隔壁71,72が形状回復する。左右の隔壁71,72が形状回復することで、左右の隔壁71,72は、粉粒体13…に近づく方向に湾曲した状態に保たれる。
よって、左隔壁71の隆起本体76は、頂部76aが位置P1から位置P2まで矢印の方向に大きく移動する。
これにより、粉粒体ブロック14の左端14aを、左隔壁71の隆起本体76で矢印Aの如く大きく移動させることができる。
【0071】
同様に、右隔壁72が形状回復することで、右隔壁72の隆起本体76は、頂部76aが位置P1から位置P2まで矢印の方向に大きく移動する。
これにより、粉粒体ブロック14の右端14bを、右隔壁72の隆起部74で矢印Bの如く大きく移動させる。
【0072】
したがって、粉粒体13…が圧縮され、中空部25の粉粒体13…に対して押付力を良好に発生させた状態を保つことができる。
粉粒体13…に押付力を良好に発生させた状態を保つことで、輸送機器用骨格構造70の強度・剛性を高めることができる。
【0073】
(第3実施の形態)
図12(a),(b)は本発明に係る輸送機器用骨格構造(第3実施の形態)を示す断面図であり、(a)は左隔壁が形状回復した後の状態を示し、(b)は左隔壁が形状回復する前の状態を示す。
(a)に示すように、第3実施の形態の輸送機器用骨格構造80は、左側に形状記憶合金で形成した左隔壁71を備え、右側に平板状に形成した通常の右隔壁81を備えたもので、その他の構成は第1実施の形態の輸送機器用骨格構造70と同様である。
【0074】
左側に形状記憶合金で形成した左隔壁71を備えることで、図12(b)に示すように、左隔壁71は、形状回復前において、粉粒体13…に対して離れる方向に湾曲形状に保たれている。
左隔壁71を加熱して(温度変化で)形状回復させることで、図12(a)に示すように、左隔壁71は、粉粒体13…に近づく方向に湾曲した状態に保たれる。
【0075】
よって、左隔壁71の隆起本体76は、頂部76aが位置P1から位置P2まで矢印の方向に大きく移動する。
これにより、粉粒体ブロック14の左端14aを、左隔壁71の隆起本体76で矢印Aの如く大きく移動させることができる。
【0076】
これにより、中空部25の粉粒体13に対して押付力を良好に発生させた状態を保つことができる。
粉粒体13に押付力を良好に発生させた状態を保つことで、輸送機器用骨格構造80の強度・剛性を高めることができる。
すなわち、第3実施の形態の輸送機器用骨格構造80によれば、第2実施の形態の輸送機器用骨格構造70と同様の効果を得ることができる。
【0077】
加えて、第3実施の形態の輸送機器用骨格構造80によれば、左側のみに形状記憶合金で形成した左隔壁71を備える構成とすることで、形状記憶合金製隔壁の個数を減らすことができる。
これにより、輸送機器用骨格構造80のコスト低減を図ることができる。
【0078】
つぎに、第2〜第3の実施の形態の輸送機器用骨格構造70,80の変形例を変形例3〜5として図13〜図15に基づいて説明する。なお、変形例3〜5において第1実施の形態の部材と同一類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【0079】
(変形例3)
図13(a),(b)は第2〜第3の実施の形態に係る左隔壁の変形例3を示す断面図であり、(a)は左隔壁が形状回復する前の状態を示し、(b)は左隔壁が形状回復した後の状態を示す。
変形例3の左隔壁(隔壁)85は、形状回復前の状態において、粉粒体13…から離れる方向に突出した突出部86が形成され、加熱すること(温度変化)で平坦部87に形状回復する形状記憶合金製の隔壁である。
【0080】
これにより、中空部25の粉粒体13…に対して押付力を良好に発生させた状態を保つことができる。
すなわち、変形例3の左隔壁85によれば、第2〜第3実施の形態の左隔壁71と同様の効果を得ることができる。
【0081】
(変形例4)
図14(a),(b)は第2〜第3の実施の形態に係る左隔壁の変形例4を示す断面図であり、(a)は左隔壁が形状回復する前の状態を示し、(b)は左隔壁が形状回復した後の状態を示す。
変形例4の左隔壁(隔壁)90は、形状回復前の状態において、平坦部91が形成され、加熱すること(温度変化)で粉粒体13…側に突出した突出部92に形状回復する形状記憶合金製の隔壁である。
【0082】
これにより、中空部25の粉粒体13…に対して押付力を良好に発生させた状態を保つことができる。
すなわち、変形例4の左隔壁90によれば、第2〜第3実施の形態の左隔壁71と同様の効果を得ることができる。
【0083】
(変形例5)
図15(a),(b)は第2〜第3の実施の形態に係る左隔壁の変形例5を示す断面図であり、(a)は左隔壁が形状回復する前の状態を示し、(b)は左隔壁が形状回復した後の状態を示す。
変形例4の左隔壁(隔壁)95は、形状回復前の状態において、鋸状部96が形成され、加熱すること(温度変化)で平坦部97に形状回復する形状記憶合金製の隔壁である。
【0084】
これにより、中空部25の粉粒体13…に対して押付力を良好に発生させた状態を保つことができる。
すなわち、変形例5の左隔壁95によれば、第2〜第3実施の形態の左隔壁71と同様の効果を得ることができる。
【0085】
なお、前記第1〜第3の実施の形態では、輸送機器用骨格構造10,70,80を適用する輸送機器11として自動車を例示したが、これに限らないで、輸送機器用骨格構造10,70,80を鉄道、船舶、航空機、オートバイなどの他の輸送機器に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、骨格部材内に粉粒体を充填した輸送機器用骨格構造を備えた自動車などへの適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係る輸送機器用骨格構造(第1実施の形態)を示す斜視図である。
【図2】第1実施の形態に係る輸送機器用骨格構造を示す分解斜視図である。
【図3】輸送機器用骨格構造の隔壁に作用する荷重について説明する断面図である。
【図4】第1実施の形態に係る輸送機器用骨格構造を示す断面図である。
【図5】第1実施の形態に係る左隔壁を示す断面図である。
【図6】図1の6矢視図である。
【図7】第1実施の形態に係る輸送機器用骨格構造の左隔壁に押圧力が作用する例を説明する図である。
【図8】第1実施の形態に係る左隔壁の変形例1を示す断面図である。
【図9】第1実施の形態に係る左隔壁の変形例2を示す断面図である。
【図10】本発明に係る輸送機器用骨格構造(第2実施の形態)を示す断面図である。
【図11】第2の実施の形態に係る左右の隔壁で粉粒体に押付力を作用させる例を説明する図である。
【図12】本発明に係る輸送機器用骨格構造(第3実施の形態)を示す断面図である。
【図13】第2〜第3の実施の形態に係る左隔壁の変形例3を示す断面図である。
【図14】第2〜第3の実施の形態に係る左隔壁の変形例4を示す断面図である。
【図15】第2〜第3の実施の形態に係る左隔壁の変形例5を示す断面図である。
【符号の説明】
【0088】
10,70,80…輸送機器用骨格構造、11…輸送機器、12…骨格部材、12a…内周面、13…粉粒体、14…粉粒体ブロック、14a,14b…左右端(両端)、15,51,61,71,85,90,95…左隔壁(隔壁)、16,72…右隔壁(隔壁)、25…中空部、25a…中空部の少なくとも一部、31,62…隆起部、32…周縁、38,63…中央部、39,64…傾斜部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送機器に用いられる骨格部材内に中空部が形成され、前記中空部の少なくとも一部に複数個の粉粒体がブロック状に充填され、ブロック状に充填された粉粒体の両端をそれぞれ隔壁で支える輸送機器用骨格構造において、
前記隔壁は、
骨格部材の内周面に沿って設けられた周縁と、
周縁に対して前記ブロック状に充填された粉粒体から離れる方向に突出した中央部と、
中央部および周縁を連結する傾斜部と、を有し、
前記周縁、前記中央部および前記傾斜部により隆起部が形成されていることを特徴とする輸送機器用骨格構造。
【請求項2】
輸送機器に用いられる骨格部材内に中空部が形成され、前記中空部の少なくとも一部に複数個の粉粒体がブロック状に充填され、ブロック状に充填された粉粒体の両端をそれぞれ隔壁で支える輸送機器用骨格構造において、
前記隔壁は、骨格部材に取り付けた後、前記ブロック状に充填された粉粒体を押し付ける方向に形状回復可能な形状記憶合金で形成されたことを特徴とする輸送機器用骨格構造。
【請求項3】
前記隔壁は、形状回復前の状態において、前記ブロック状に充填された粉粒体に対して離れる方向に湾曲に形成されたものであることを特徴とする請求項2記載の輸送機器用骨格構造。
【請求項4】
前記隔壁は、前記ブロック状に充填された粉粒体に近づく方向に湾曲に形状回復する部材であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の輸送機器用骨格構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−230275(P2008−230275A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68694(P2007−68694)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】