説明

輸送用冷凍装置

【課題】単相AC100Vの家庭用電源を使用した場合でも、最大電力(1.5KW)を超えないように冷凍装置の運転および電池の充電を行うことができる輸送用冷凍装置を提供することを目的とする。
【解決手段】3相AC200Vの商用電源11、単相AC100Vの家庭用電源12および電池13のいずれかを電源として運転可能な輸送用冷凍装置において、家庭用電源11が運転電源とされたとき、庫内温度が設定温度に到達しているか否かを判定し、庫内温度が設定温度に未到達時、冷凍装置による冷却運転を優先して電池13の充電を行わず、庫内温度が設定温度に到達時のみ、充電電力を落として電池13の充電を行うコントローラ18を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3相AC200Vの商用電源、単相AC100Vの家庭用電源および電池のいずれかを電源として運転可能な輸送用冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍車等に搭載される輸送用冷凍装置としては、車両の走行用エンジンにより圧縮機を駆動するようにしたもの、専用のエンジン(サブエンジン)を搭載して圧縮機を駆動するようにしたもの、あるいは車両の走行用エンジンにより駆動される発電機で発電された電力を用いて圧縮機を駆動するようにしたもの等が実用化されている。このうち、発電機で発電された電力により圧縮機を駆動するようにした方式の輸送用冷凍装置が、例えば特許文献1ないし3に示されている。
【0003】
このような輸送用冷凍装置では、車両が駐車され、走行用エンジンが停止されている状態においても、冷凍装置を冷却運転できるように、商用電源に接続することにより、あるいは搭載されている冷凍装置駆動用電池(バッテリ)から電力を得て運転できる構成とされている。この際に使われる商用電源設備は、一般に3相AC200Vであり、冷凍装置駆動回路も3相AC200Vに対応した回路構成が標準的とされている(特許文献1,2参照)。しかし、3相AC200Vの商用電源を使用するには、建屋側での電気工事が必要であり、使用できる場所(=運転場所)が限られるという問題があった。
【0004】
そこで、単相AC100Vの家庭用電源を用い、その電源電圧を圧縮機の作動電圧に変換して供給する電源変換手段を設けることにより、3相AC200Vの商用電源および電池(バッテリ)以外にも、単相AC100Vの家庭用電源を使って運転できるようにした輸送用冷凍装置が、例えば特許文献3により提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3029601号公報
【特許文献2】特開2002−318048号公報
【特許文献3】特開2003−97870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、家庭用電源は、一般的に一つの電源ソケットから取り出し可能な最大電力が1.5KWという制約があり、圧縮機を作動する電圧に対して容量不足は否めない。このため、特許文献3にも示されているように、家庭用電源が選択された場合は、ブレーカが落ちないように、圧縮機の駆動電力を制御するインバータの出力を低減するようにしている。しかし、これだけでは、家庭用電源に接続して冷凍装置を運転している間に、搭載されている電池(バッテリ)を充電することが困難なだけでなく、電池の充電を行ったときに、最大電力(1.5KW)を超え、ブレーカが落ちてしまう等の課題があり、改善が望まれている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、単相AC100Vの家庭用電源を使用した場合でも、最大電力(1.5KW)を超えないように冷凍装置の運転および電池の充電を行うことができる輸送用冷凍装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明の輸送用冷凍装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる輸送用冷凍装置は、3相AC200Vの商用電源、単相AC100Vの家庭用電源および電池のいずれかを電源として運転可能な輸送用冷凍装置において、前記家庭用電源が運転電源とされたとき、庫内温度が設定温度に到達しているか否かを判定し、前記庫内温度が前記設定温度に未到達時、冷凍装置による冷却運転を優先して前記電池の充電を行わず、前記庫内温度が前記設定温度に到達時のみ、家庭用電源の最大電力を超えないように充電電力を落として前記電池の充電を行うコントローラを備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、単相AC100Vの家庭用電源が運転電源とされたとき、庫内温度が設定温度に到達しているか否かを判定し、庫内温度が設定温度に未到達時、冷凍装置による冷却運転を優先して電池の充電は行わず、庫内温度が設定温度に到達時のみ、家庭用電源の最大電力を超えないように充電電力を落として電池の充電を行うコントローラを備えているため、家庭用電源が運転電源とされたときには、庫内温度が設定温度に未到達の場合、冷凍装置による冷却運転を優先して電池の充電を行わず、庫内温度が設定温度に到達し、例えば冷凍装置がサーモオフ時あるいは圧縮機が低回転数運転時のみ、充電電力を落として電池の充電を行うことにより、家庭用電源の最大電力(1.5KW)を超えないように、能力を可変して冷凍装置の運転および電池の充電を行うことができる。また、冷凍装置による冷却運転を停止して電池の充電のみを行う場合、例えば電池の夜間充電のみを行う場合においても、家庭用電源の最大電力(1.5KW)を超えないようにして電池の充電を行うことができる。従って、建屋側の電源設備を変えることなく、しかも電源容量の不足によりブレーカが落ちないようにしながら、家庭用電源による輸送用冷凍装置の運転および電池の充電を可能とし、輸送用冷凍装置を電源にて運転できる場所、範囲を大幅に拡大することができる。
【0010】
また、本発明の輸送用冷凍装置は、上記の輸送用冷凍装置において、前記家庭用電源が運転電源とされたとき、前記コントローラは、運転電力を検知し、それが最大電力を超えないように、前記冷凍装置の冷却能力を抑えて運転することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、家庭用電源が運転電源とされたとき、コントローラが、運転電力を検知し、それが最大電力を超えないように、冷凍装置の冷却能力を抑えて運転するようにしているため、家庭用電源が運転電源とされたときは、コントローラを介して運転電力を検知し、能力を抑えて冷凍装置を冷却運転することにより、家庭用電源が最大電力(1.5KW)を超えないようにすることができる。従って、電源容量の不足によりブレーカが落ちないようにしながら、家庭用電源で輸送用冷凍装置を運転することができる。なお、冷凍装置の冷却能力を抑えるには、圧縮機、エバポレータファン、コンデンサファン等を駆動するモータの回転数あるいは運転台数を低減して冷凍装置の能力を抑えればよく、これにより、冷凍装置の駆動電力を低下することができる。
【0012】
さらに、本発明の輸送用冷凍装置は、上述のいずれかの輸送用冷凍装置において、前記家庭用電源が運転電源とされたとき、該電源からの入力電圧を前記冷凍装置が作動可能な範囲の出力電圧に変換する電源変換装置が前記家庭用電源側または前記冷凍装置側のいずれか一方に設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、家庭用電源が運転電源とされたとき、該電源からの入力電圧を冷凍装置が作動可能な範囲の出力電圧に変換する電源変換装置が家庭用電源側または冷凍装置側のいずれか一方に設けられているため、家庭用電源側または冷凍装置側のいずれか一方に設けられている電源変換装置を介して、家庭用電源からの単相AC100Vを冷凍装置が作動可能な範囲の、例えばAC200Vに変圧して冷凍装置に供給することができる。従って、単相AC100Vの家庭用電源によっても、3相AC200Vの商用電源を標準的に使用する駆動回路を備えている冷凍装置を冷却運転することができるとともに、それに搭載されている電池の充電を行うことができる。
【0014】
さらに、本発明の輸送用冷凍装置は、上記の輸送用冷凍装置において、前記電源変換装置は、単相AC100Vの入力電圧を前記冷凍装置が作動可能な範囲の単相AC180Vないし220Vの出力電圧に変換可能とされていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、電源変換装置が、単相AC100Vの入力電圧を冷凍装置が作動可能な範囲の単相AC180Vないし220Vの出力電圧に変換可能とされているため、冷凍装置に供給される電力の電圧を検知することにより、AC180Vないし220Vの出力電圧と商用電源のAC200Vとの電圧差から、電源が商用電源か家庭用電源かを判別することが可能となる。従って、電源の判別を容易化し、冷凍装置の運転および電池の充電を適正に制御することができる。
【0016】
さらに、本発明の輸送用冷凍装置は、上述のいずれかの輸送用冷凍装置において、前記家庭用電源に接続される電源ケーブルの他端側には、前記商用電源用の3相用電源プラグと同様の電源プラグが設けられ、前記冷凍装置側に設けられている3相商用電源用のレセプタブルに接続可能とされていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、家庭用電源に接続される電源ケーブルの他端側に、商用電源用の3相用電源プラグと同様の電源プラグが設けられ、冷凍装置側に設けられている3相商用電源用のレセプタブルに接続可能とされているため、家庭用電源に接続される電源ケーブルの他端側に、例えば3極4線式の電源プラグをR相、S相、アースを使用して結線しておけば、冷凍装置側に設けられている3相商用電源用のレセプタブルに対して、そのまま電源プラグを差し込むことにより家庭用電源に接続することができる。従って、家庭用電源との接続を如何なる場所においても延長コード等を用いて簡便に行うことができる。
【0018】
さらに、本発明の輸送用冷凍装置は、上述のいずれかの輸送用冷凍装置において、前記コントローラには、電源が商用電源か家庭用電源かを自動判別する電源判別手段が接続されていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、コントローラに、電源が商用電源か家庭用電源かを自動判別する電源判別手段が接続されているため、冷凍装置に接続されている電源が商用電源か家庭用電源かを電源判別手段により自動判別し、その種別をコントローラに対して送信することができる。従って、コントローラは電源の種別を判別し、それに適応した制御を実行することができ、切替えスイッチ等による操作の手間を省くことができるとともに、操作ミスによる機器の故障等を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、家庭用電源を運転電源とするときは、庫内温度が設定温度に未到達の場合、冷凍装置による冷却運転を優先して電池の充電を行わず、庫内温度が設定温度に到達し、例えば冷凍装置がサーモオフ時あるいは圧縮機が低回転数運転時のみ、充電電力を落として電池の充電を行うことにより、家庭用電源の最大電力(1.5KW)を超えないように、能力を可変して冷凍装置の運転および電池の充電を行うことができる。また、電池の夜間充電等、冷凍装置による冷却運転を停止して電池の充電のみを行う場合においても、家庭用電源の最大電力(1.5KW)を超えないようにして電池充電を行うことができる。このため、建屋側の電源設備を変えることなく、しかも電源容量の不足によりブレーカが落ちないようにしながら、家庭用電源による輸送用冷凍装置の運転および電池の充電を可能とし、輸送用冷凍装置を電源にて運転できる場所、範囲を大幅に拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の輸送用冷凍装置を架装した冷凍車の斜視図である。
【図2】本発明の輸送用冷凍装置のシステム構成図である。
【図3】図2に示す輸送用冷凍装置が商用電源に接続された場合(A)および家庭用電源に接続された場合(B)の電源回路図である。
【図4】図2に示す輸送用冷凍装置の電源が商用電源か家庭用電源かを自動判別する判別手段の異なる形態の構成図(A)および(B)である。
【図5】図2に示す輸送用冷凍装置の運転フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の一実施形態について、図1ないし図5を参照して説明する。
図1には、本発明の輸送用冷凍装置を冷凍車に架装した状態の斜視図が示されている。
冷凍車両1には、荷台側に積載されているコンテナ(冷却庫)2内を冷却または加熱して庫内温度を設定温度に維持する輸送用冷凍装置3が架装されている。輸送用冷凍装置3は、コンテナ2内に設置されている冷却ユニット4と、コンテナ2の外部でシャーシ下等に設置されているコンデンシングユニット5とから構成され、両ユニット4,5間は、冷媒配管6および図示省略の電気ケーブル等により接続されている。
【0023】
輸送用冷凍装置3は、図示省略の圧縮機、コンデンサ、膨張弁およびエバポレータ等で構成される公知の冷凍サイクルを備えており、コンデンサおよびエバポレータには、それぞれコンデンサファンおよびエバポレータファンが付設されている。この圧縮機、コンデンサファンおよびエバポレータファンは、圧縮機モータ、コンデンサファンモータおよびエバポレータファンモータにより駆動されるようになっており、これら各モータには、エンジンにて駆動される発電機、冷凍装置駆動用の電池(バッテリ)13、3相AC200Vの商用電源11および単相AC100Vの家庭用電源12のいずれかから冷凍装置駆動回路10を介して駆動電力が供給されるようになっている。
【0024】
図2には、その概略システム構成図が示されている。上記した冷凍装置駆動回路10に対し、図示省略の発電機、商用電源11、家庭用電源12および電池(バッテリ)13等の電源からの電力が電力系統14を介して供給され、更にその電力が、駆動回路10により所要の駆動電力に制御され、上記圧縮機モータ、コンデンサファンモータ、エバポレータファンモータ等に供給されるように構成されている。なお、図2においては、エンジンにて駆動される発電機からの電力系統が省略されているが、この電力系統も公知の如く電力系統14を介して駆動回路10に接続されるようになっている。
【0025】
上記の電力系統14は、圧縮機に対する作動電圧の関係から、3相AC200Vの電力系統が標準系とされている。このため、単相AC100Vの家庭用電源12からの電力系統に対して、単相AC100Vを例えば単相AC200Vに変換する電源変換装置(電源変換手段)15が介装されている。電源変換装置15は、単相AC100Vを単相AC180V〜220Vに変圧する昇圧トランスによって構成することができる。なお、この電源変換装置15は、車両/冷凍装置40側または建屋50側(家庭用電源12側)のいずれに装備してもよい。
【0026】
この商用電源11および家庭用電源12からの電源回路は、図3に示すように構成することができる。つまり、建屋50側に3相AC200Vの商用電源11が準備されている場合には、該商用電源11に接続されている電源ケーブル20の他端に設けられた3極4線式の3相用電源プラグ21を、車両/冷凍装置40側に設置されている3相商用電源用のレセプタブル22に差し込むことによって、商用電源11からの電源回路を構成することができる。
【0027】
一方、建屋50側に3相AC200Vの商用電源11がない場合には、建屋50側に設置されている適宜の単相AC100V電源12の二又コンセント23に電源変換装置15から出ている電源コード24を直接または延長コードを介して接続し、この電源変換装置15からの出力側電源ケーブル25の端部に設けられている、上記の3極4線式の3相用電源プラグ21と同等の電源プラグ21Aを、車両/冷凍装置40側に設置されている上記の3相商用電源用のレセプタブル22に差し込むことによって、家庭用電源12から電源回路を構成することができる。なお、電源ケーブル25と電源プラグ21Aは、例えばR相、S相およびアースを用いて結線することができる。
【0028】
冷凍装置駆動用の電池(バッテリ)13は、電池充放電装置16を介して電力系統14に接続されており、エンジンが停止状態されるとともに、商用電源11および家庭用電源12が共に使用できない状況下においても、冷凍装置3を運転可能するための電源として搭載されている。この電池13は、発電機、商用電源11および家庭用電源12のいずれかにより、後述の通り充電可能とされている。
【0029】
また、電力系統14には、車両/冷凍装置40側に接続されている電源が、商用電源11か家庭用電源12かを自動的に判別する電源判別装置(電源判別手段)17が接続されている。この電源判別装置17は、判別した電源の種別信号をコントローラ18へと送信するものであり、以下により構成することができる。
(1)図4(A)に示されるように、3相の電力系統14における各相R,S,Tの電圧有無を検知する電圧検知回路30を設け、1相に電圧がなく、2相に規定の電圧があることが検知された場合、家庭用電源12と判別する。
【0030】
(2)図4(A)に示される回路上において、検知電圧とAC200Vとの差が予め規定した電圧の場合、家庭用電源12と判別する。なお、この方式は、電源変換装置15で家庭用電源12のAC100Vを、例えばAC180VやAC220Vに変換するように構成し、商用電源11のAC200Vとの電圧差に基づいて電源を判別するようにした場合において有効である。
(3)図4(B)に示されるように、3相の電力系統14における各相R,S,Tの2相を跨いて2個の電圧検知リレー31,32を設け、その接点の開閉動作の有無によって電源の種別を判別する。
【0031】
コントローラ18は、電源の判別信号、その他の入力信号に基づいて、冷凍装置駆動回路10および電池充放電装置16を制御するものであり、その動作を図5に示される制御フロー図を参照して説明する。
まず、ステップS1において、運転スイッチがONされているか否かが判定され、YESの場合、ステップS2に移行する。ステップS2においては、電源供給が有るか否かが判定され、NOと判定された場合、ステップS3に移行する。ステップS3では、電源供給異常またはエンジン駆動と判断し、以降その判断に基づいて動作される。ステップS2でYESと判定された場合、ステップS4に移行し、電源判別装置17からの信号により電源が家庭用電源12か否かが判定される。
【0032】
ステップS4でNOと判定されると、ステップS5に移行して電源が商用電源(3相AC200V)11であると判断し、冷凍装置駆動回路10に対して通常の運転指令が出力され、冷凍装置3はコンテナ(冷却庫)2内の負荷状態に応じた能力で運転される。この場合、電源容量に余裕があるため、電池(バッテリ)13に対して充電が必要と判断されると、電池充放電装置16を介して電力系統14から通常の充電電力による定電圧定電流充電(例えば、充電電圧4.2V、充電電流1C)が実行される。ステップS4でYESと判定され、電源が家庭用電源12と判定された場合は、ステップS6に移行し、コンテナ(冷却庫)2内の温度が設定温度に未到達か否かが判定される。
【0033】
ステップS6でコンテナ(冷却庫)2内の温度が設定温度に未到達であり、YESと判定されると、ステップS7に移行し、コントローラ18は、電池(バッテリ)13に対する充電を行わず、冷凍装置3による冷却運転を優先する運転指令を駆動回路10に対して出力する。この際、冷凍装置3は、コントローラ18からの指令に基づき冷凍装置駆動回路10を介して冷却能力が低減された状態で運転される。つまり、家庭用電源12は、単相AC100Vであり、最大電力が1.5KWに制限されている。このため、最大電力の1.5KWを超えると、容量不足でブレーカが落ちてしまい運転が継続できなくなる。そこで、コントローラ18は、運転電力を検知し、それが最大電力の1.5KWを超えないように、圧縮機モータ、コンデンサファンモータ、エバポレータファンモータ等の1つまたは複数の回転数あるいは運転台数を低減して冷凍装置3の冷却能力を制限し、駆動電力を落として運転するように指令する。これによって、家庭用電源12による運転が継続される。
【0034】
また、ステップS6において、NOと判定され、コンテナ(冷却庫)2内の温度が設定温度に達していると判定されると、ステップS8に移行し、電池(バッテリ)13に対する充電が必要か否かを判定する。つまり、コンテナ(冷却庫)2内の温度が設定温度に到達すると、冷凍装置3はサーモオフとされ、圧縮機が停止されるか、もしくは低回転数運転とされる。また、コンデンサファンモータ、エバポレータファンモータも必要に応じて停止される。このため、家庭用電源12であっても、電池13の充電が可能となる。
【0035】
そこで、コントローラ18は、ステップS8で電池13の充電の必要性を判定し、NOであれば、ステップS1に戻り、YESであれば、ステップS9に移行し、電池充放電装置16を介して電池13の充電開始を指令する。ここでの電池充電は、冷凍装置3の冷却能力を制限して運転するのと同様、充電電力を、例えば充電電圧3.9V、充電電流1Cまたは充電電圧4.2V、充電電流0.5Cの定電圧定電流充電に制限して行い、家庭用電源12が最大電力1.5KWの容量を超えないようして実行されるようになっている。
【0036】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
輸送用冷凍装置3が、冷凍車両1のエンジンで駆動される発電機(図示省略)からの電力で駆動される場合、あるいは冷凍車両1およびエンジンが停止され状態で、冷凍装置3が商用電源11に接続され、商用電源11からの3相AC200Vの電力で駆動される場合の運転は、特に従来からの運転と変わるものではなく、冷凍装置3は、電力系統14を介して冷凍装置駆動回路10に供給される電力により、コンテナ2内の負荷状態に応じた能力で運転される。同様に、電池(バッテリ)13に対して充電が必要であれば、通常の充電電力(充電電圧4.2V、充電電流1C)により、電池13は、電池充放電装置16を介して定電圧定電流充電される。
【0037】
一方、商用電源11がなく、家庭用電源12が使用可能な場合、冷凍装置3は、家庭用電源12により運転されることになる。この際、車両/冷凍装置40側または建屋50側(家庭用電源12側)のいずれに装備されている電源変換装置15の電源コード24を直接または延長コードを介して建屋50側の二又コンセント23に差し込み、その出力側電源ケーブル25の端部に設けられている3極4線式の3相用電源プラグ21Aを車両/冷凍装置40側の3相商用電源用のレセプタブル22に差し込むことによって、家庭用電源12からの単相AC100Vの電力を、電源変換装置15を介して、例えば単相AC200Vに昇圧し、電力系統14に供給することができる。
【0038】
この電力を電力系統14に接続されている電源判別装置17が、図4(A)に示されている電圧検知回路30あるいは図4(B)に示されている電圧検知リレー31,32を介して検知し、車両/冷凍装置40側に接続の電源が商用電源11か家庭用電源12かを自動判別する。電源判別装置17で判別された電源の種別信号は、コントローラ18に送信され、この信号に基づいてコントローラ18は、冷凍装置3の駆動電源が家庭用電源12と判断し、コンテナ2内の温度が設定温度に到達しているか否かを判定する。
【0039】
ここで、コントローラ18は、コンテナ2内の温度が設定温度に未到達の場合、冷凍装置3による冷却運転を優先して電池(バッテリ)13の充電を行わず、コンテナ2内の温度が設定温度に到達し、冷凍装置3がサーモオフ時あるいは圧縮機が低回転数運転とされた時のみ、充電電力を落として電池13の充電を行うようにしている。このため、家庭用電源12の最大電力(1.5KW)を超えないように、能力を可変して冷凍装置3の運転および電池13の充電を行うことができる。従って、建屋50側の電源設備を変えることなく、しかも電源容量の不足によりブレーカが落ちないようにしながら、家庭用電源12による冷凍装置3の運転および電池13の充電を可能とし、輸送用冷凍装置3を電源にて運転できる場所、範囲を大幅に拡大することができる。
【0040】
さらに、上記により輸送用冷凍装置3を家庭用電源12にて運転する際、コントローラ18は、運転電力を検知し、それが家庭用電源12の最大電力の1.5KWを超えないように、冷凍装置3をその能力を抑えて運転するようにしている。このため、電源容量の不足によってブレーカが落ちないようにしながら、単相AC100Vの家庭用電源12により輸送用冷凍装置3を継続運転することができる。なお、冷凍装置3の冷却能力を抑えるには、圧縮機、エバポレータファン、コンデンサファン等を駆動するモータの回転数あるいは運転台数を低減して冷凍装置3の能力を抑えればよく、これによって、冷凍装置3を駆動するための電力を低下することができる。
【0041】
また、家庭用電源12が運転電源とされたとき、該電源12からの入力電圧を冷凍装置3が作動可能な範囲の出力電圧に変換する電源変換装置(電源変換手段)15が家庭用電源12側または車両/冷凍装置40側のいずれか一方に設けられているため、この電源変換装置(電源変換手段)15を介して、家庭用電源12からの単相AC100Vを冷凍装置3が作動可能な範囲の、例えばAC200Vに変圧して冷凍装置3に供給することができる。従って、単相AC100Vの家庭用電源12によっても、3相AC200Vの商用電源11を標準的に使用する冷凍装置駆動回路10を備えている冷凍装置3を冷却運転することができるとともに、それに搭載されている電池(バッテリ)13の充電を行うことができる。
【0042】
この際、電源変換装置(電源変換手段)15を介して単相AC100Vの入力電圧を変換する際、冷凍装置3が作動可能な範囲の単相AC180Vないし220Vの出力電圧に変換することによって、冷凍装置3に供給される電力の電圧を検知し、AC180Vないし220Vの出力電圧と商用電源11のAC200Vとの電圧差から、電源が商用電源11か家庭用電源12かを判別することが可能となる。従って、電源の判別を容易化し、冷凍装置3の運転および電池13の充電を適正に制御することができる。
【0043】
さらに、本実施形態においては、家庭用電源12に接続される電源ケーブル25の他端側に、商用電源用の3相用電源プラグ21と同様の電源プラグ21Aが設けられ、車両/冷凍装置40側に設けられている3相商用電源用のレセプタブル22に接続可能とされている。このため、家庭用電源12に接続される電源ケーブル25の他端側に、例えば3極4線式の電源プラグ21AをR相、S相、アースを使用して結線しておけば、車両/冷凍装置40側の3相商用電源用のレセプタブル22に対して、そのまま電源プラグ21Aを差し込むことにより家庭用電源12に接続することができる。これによって、家庭用電源12との接続を如何なる場所においても、直接または延長コード等を用いて簡便に行うことができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、コントローラ18に対して、電源が商用電源11か家庭用電源12かを自動判別する自動判別装置(電源判別手段)17が接続されているため、冷凍装置3に接続されている電源が商用電源11か家庭用電源12かを自動判別装置17により自動判別し、その種別をコントローラ18に対して送信することができる。これによって、コントローラ18は電源の種別を自動判別し、それに適応した制御を実行することができ、従って、切替えスイッチ等による操作の手間を省くことができるとともに、操作ミスによる機器の故障等を防ぐことができる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、圧縮機が冷凍車両1のエンジンにより駆動される発電機で発電された電力で駆動されるタイプの輸送用冷凍装置3について説明したが、圧縮機がサブエンジンおよびモータの双方で駆動されるタイプの輸送用冷凍装置3あるいは走行用エンジンで駆動される圧縮機とモータで駆動される圧縮機とを備えた輸送用冷凍装置3にも同様に適用できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0046】
1 冷凍車両
2 コンテナ(冷却庫)
3 輸送用冷凍装置
10 冷凍装置駆動回路
11 商用電源
12 家庭用電源
13 電池(バッテリ)
14 電力系統
15 電源変換装置(電源変換手段)
16 電池充放電装置
17 電源判別装置(電源判別手段)
18 コントローラ
21,21A 3相用電源プラグ
22 レセプタブル
40 車両/冷凍装置側
50 建屋側


【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相AC200Vの商用電源、単相AC100Vの家庭用電源および電池のいずれかを電源として運転可能な輸送用冷凍装置において、
前記家庭用電源が運転電源とされたとき、庫内温度が設定温度に到達しているか否かを判定し、前記庫内温度が前記設定温度に未到達時、冷凍装置による冷却運転を優先して前記電池の充電を行わず、前記庫内温度が前記設定温度に到達時のみ、充電電力を落として前記電池の充電を行うコントローラを備えていることを特徴とする輸送用冷凍装置。
【請求項2】
前記家庭用電源が運転電源とされたとき、前記コントローラは、運転電力を検知し、それが最大電力を超えないように、前記冷凍装置の冷却能力を抑えて運転することを特徴とする請求項1に記載の輸送用冷凍装置。
【請求項3】
前記家庭用電源が運転電源とされたとき、該電源からの入力電圧を前記冷凍装置が作動可能な範囲の出力電圧に変換する電源変換装置が前記家庭用電源側または前記冷凍装置側のいずれか一方に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の輸送用冷凍装置。
【請求項4】
前記電源変換装置は、単相AC100Vの入力電圧を前記冷凍装置が作動可能な範囲の単相AC180Vないし220Vの出力電圧に変換可能とされていることを特徴とする請求項3に記載の輸送用冷凍装置。
【請求項5】
前記家庭用電源に接続される電源ケーブルの他端側には、前記商用電源用の3相用電源プラグと同様の電源プラグが設けられ、前記冷凍装置側に設けられている3相商用電源用のレセプタブルに接続可能とされていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の輸送用冷凍装置。
【請求項6】
前記コントローラには、電源が商用電源か家庭用電源かを自動判別する電源判別手段が接続されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の輸送用冷凍装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−214796(P2011−214796A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85023(P2010−85023)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】