説明

輻輳制御システム、フロー管理装置及びフロー制御装置

【課題】被災地宛の呼集中などにより一部の呼制御サーバが過負荷となって輻輳状態に陥った場合に、輻輳がネットワーク全体に波及するのを抑止しつつ早期に輻輳状態を解消する。
【解決手段】発信元端末(IP電話機7)から送信される接続要求を発信側呼制御サーバ(SIPサーバS1(4))に中継送信するフロー制御装置1と、フロー制御装置1に発信規制を指示するフロー管理装置2とを備え、ネットワークに輻輳が発生したときに、フロー管理装置2がフロー制御装置1に規制対象先と廃棄率とを含んで発信規制を指示し、フロー制御装置1が、配下の発信元端末から受信した規制対象先宛の接続要求を前記廃棄率の割合で廃棄するように振り分けを行い、さらに、振り分けにて廃棄とした接続要求の発信元端末から送信される当該規制対象先宛の接続要求を、所定の時間が経過するまで廃棄し続ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP(Internet Protocol)ネットワークにおいて呼制御を司る呼制御サーバへの負荷集中によって生じた輻輳状態を解消するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
IPネットワークに接続されているサーバと端末間、あるいは端末同士の間に論理的な通信路(セッション)を設定して音声、画像、データなどの通信を行う場合には、図7に示すように、例えばWebサービスを提供する特定のアプリケーションサーバASへの負荷集中が発生したり、図8に示すように、震災等の被災地宛の呼が集中したりすることなどにより呼制御を司る一部の呼制御サーバ(例えばCS3)が過負荷となると、サーバや電話が繋がりにくくなる輻輳状態が発生する場合がある。なお、図7及び図8の各構成要素のうち後記する図1の構成要素と同じものには同じ符号を付している。
【0003】
IPネットワークにおける輻輳状態を回避する従来の技術として、特許文献1には、特定の地域や端末群宛のセッション設定要求の不完了率を計測することによって輻輳の発生を検知し、輻輳が発生している地域や端末群宛のセッション設定要求を発信側の呼制御サーバが所定の割合で廃棄する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−167771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている技術を適用するためには、受け付けたセッション設定要求がどの地域や端末群宛のものかを識別する必要があり、加入電話と同様にいわゆる0AB〜J番号体系を使用する場合には接続先の電話番号から地域や端末群を識別できる。しかし、IP電話専用のいわゆる050番号体系では、一般に電話番号と地域との対応は規定されていないので、接続先の電話番号だけでは地域を特定できず前記の技術は適用できない。さらに、前記の技術では、廃棄されて不完了となったセッションの再設定要求が頻発した場合に、発信側の呼制御サーバの負荷が増加して輻輳状態がネットワーク全体に波及するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、震災等の被災地宛の呼が集中することなどにより一部の呼制御サーバが過負荷となって輻輳状態に陥った場合に、輻輳がネットワーク全体に波及するのを抑止しつつ早期に輻輳状態を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明は、発信元端末から送信される接続要求を発信側呼制御サーバが受信して接続先との間のセッションを確立するIPネットワークにおける輻輳を制御する輻輳制御システムであって、前記発信元端末から送信される前記接続要求を前記発信側呼制御サーバに中継送信するフロー制御装置と、前記フロー制御装置に発信規制を指示するフロー管理装置とを備え、前記フロー管理装置が、前記IPネットワークに輻輳が発生したことを検知したときに、前記フロー制御装置に規制対象先と輻輳状況に応じて決定した廃棄率とを含んで前記発信規制を指示し、前記フロー制御装置が、自身の配下の発信元端末から前記規制対象先宛の接続要求を受信したときに、当該規制対象先宛の接続要求を前記廃棄率の割合で前記発信側呼制御サーバに中継しないで廃棄するように振り分けを行い、さらに、振り分けにて廃棄とした接続要求の発信元端末から送信される当該規制対象先宛の接続要求を、所定の時間が経過するまで廃棄し続けるものとした。
【0008】
こうすることにより、輻輳が発生している呼制御サーバに流入するトラヒック量を制限すると同時に、同一発信元端末からの再発信によるネットワークへのトラヒック流入を抑止することができる。
【0009】
また、本発明は、前記の輻輳制御システムにおいて、前記フロー制御装置が、前記接続要求を廃棄した発信元端末を、再発信の抑制を促す音声ガイダンスを送出するガイダンスサーバへリダイレクト接続するものとした。
【0010】
こうすることにより、発信規制によって接続に失敗した発信元のユーザからの再発信の頻度が低下することが期待できる。
【0011】
また、本発明は、前記の輻輳制御システムにおいて、前記フロー制御装置が、前記振り分けにて廃棄とした接続要求の情報を廃棄情報として前記フロー管理装置へ送信し、前記フロー管理装置が、当該廃棄情報によって特定される当該接続要求の発信元端末からの当該規制対象先宛の接続要求を廃棄し続ける規制時間を決定して前記フロー制御装置に当該規制時間を通知し、または、当該規制対象先宛の接続要求の廃棄を前記フロー制御装置に指示したのちに前記規制時間の経過を監視し、当該規制時間が経過したときに前記廃棄の指示を解除するものとした。
【0012】
こうすることにより、発信規制によって接続に失敗した発信元のユーザからの再発信を引き続き失敗させる時間を、フロー管理装置が輻輳状況などに応じて個別に設定することができる。
【0013】
また、本発明は、前記の輻輳制御システムにおいて、前記発信元端末と前記接続先とはいずれもIP電話端末であり、前記発信側呼制御サーバから着信側呼制御サーバに前記接続要求を中継送信することによって前記接続先への呼接続が行われ、前記規制対象先を、輻輳の発生が検知された呼制御サーバの単位、当該呼制御サーバが収容している地域の単位、または当該呼制御サーバが収容している電話番号グループの単位で設定するものとした。
【0014】
こうすることにより、ある呼制御サーバで輻輳が発生しているときの発信規制を、呼制御サーバ単位、地域単位、または、電話番号グループ単位で行うことができる。
【0015】
また、本発明は、前記の輻輳制御システムにおいて、前記フロー制御装置が、所定の優先接続呼に係る前記接続要求を廃棄しないで前記発信側呼制御サーバに中継送信するものとした。
【0016】
こうすることにより、優先接続呼を輻輳制御の対象外とすることができる。
【0017】
また、本発明は、発信元端末から送信される接続要求を発信側呼制御サーバが受信して接続先との間のセッションを確立するIPネットワークにおける輻輳を制御する輻輳制御システムにおいて、前記発信元端末から送信される前記接続要求を前記発信側呼制御サーバに中継送信するフロー制御装置に発信規制を指示するフロー管理装置が、前記IPネットワークに接続される各呼制御サーバから収集した情報に基づいて前記IPネットワークに輻輳が発生したことを検知したときに、前記フロー制御装置に規制対象先と輻輳状況に応じて決定した廃棄率とを含んで前記発信規制を指示し、前記フロー制御装置が前記廃棄率にしたがって廃棄した接続要求の情報を廃棄情報として前記フロー制御装置から受信し、当該廃棄情報によって特定される当該接続要求の発信元端末からの当該規制対象先宛の接続要求を廃棄し続ける規制時間を決定して前記フロー制御装置に当該規制時間を通知し、または、当該規制対象先宛の接続要求の廃棄を前記フロー制御装置に指示したのちに前記規制時間の経過を監視し、当該規制時間が経過したときに前記廃棄の指示を解除するものとした。
【0018】
こうすることにより、発信規制によって接続に失敗した発信元のユーザからの再発信を引き続き失敗させる時間を、フロー管理装置が輻輳状況などに応じて個別に設定することができる。
【0019】
また、本発明は、発信元端末から送信される接続要求を発信側呼制御サーバが受信して接続先との間のセッションを確立するIPネットワークにおける輻輳を制御する輻輳制御システムにおいて、フロー管理装置からの指示にしたがって前記発信元端末から送信される前記接続要求を前記発信側呼制御サーバに中継するか否かの振り分けを行うフロー制御装置が、前記フロー管理装置から指示される規制対象先と接続要求の廃棄率とを含む発信規制内容を記憶する廃棄率リストと、自身の配下の発信元端末から前記規制対象先宛の接続要求を受信したときに、当該規制対象先宛の接続要求を前記廃棄率の割合で前記発信側呼制御サーバに中継しないで廃棄するように振り分けを行い、さらに、振り分けにて廃棄とした接続要求の発信元端末から送信される当該規制対象先宛の接続要求を、所定の時間が経過するまで廃棄し続ける廃棄判定手段とを備えるものとした。
【0020】
こうすることにより、輻輳が発生している呼制御サーバに流入するトラヒック量を制限すると同時に、同一発信元端末からの再発信によるネットワークへのトラヒック流入を抑止することができる。
【0021】
また、本発明は、前記のフロー制御装置が、前記振り分けにて廃棄とした接続要求の情報を廃棄情報として前記フロー管理装置へ送信する廃棄情報送信手段と、前記フロー管理装置から指定される前記規制対象先への発信を個別に規制するユーザを記憶する規制中ユーザリストとを備え、前記廃棄判定手段が、前記規制中ユーザリストに記憶されたユーザから送信される当該規制対象宛の接続要求を、前記フロー管理装置から指示された規制時間が経過するまで、または、前記フロー管理装置から当該ユーザへの発信規制が解除されるまで廃棄し続けるものとした。
【0022】
こうすることにより、発信規制によって接続に失敗した発信元のユーザからの再発信を引き続き失敗させる時間を、フロー管理装置が輻輳状況などに応じて個別に設定することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、震災等の被災地宛の呼が集中することなどにより一部の呼制御サーバが過負荷となって輻輳状態に陥った場合に、輻輳がネットワーク全体に波及するのを抑止しつつ早期に輻輳状態を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係るIP電話ネットワークの輻輳制御システムの構成図である。
【図2】フロー制御装置の機能についての説明図である。
【図3】呼接続が成功する通常処理のシーケンスチャートである。
【図4】呼接続が失敗して発信が規制される場合のシーケンスチャートである。
【図5】端末から接続要求パケットを受信したときのフロー制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】フロー管理装置からの指令を受信したときのフロー制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】サーバへの負荷集中による輻輳の発生についての説明図である。
【図8】被災地への呼の集中による輻輳の発生についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をIP電話ネットワークに適用した場合の実施形態について適宜図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係るIP電話ネットワークの輻輳制御システムの構成図である。図1に示すように、輻輳制御システム100は、IP電話機7やIP電話端末ソフトであるソフトフォンを搭載したPC(Personal Computer)8(以下、「PC(ソフトフォン)8」と表記)などの端末間のSIP(Session Initiation Protocol)による呼制御を司るSIPサーバS1,S2,S3と、フロー制御装置1と、フロー管理装置2と、ガイダンスサーバ3と、中継装置5と、エッジ装置6とを備えて構成されている。
【0027】
なお、図1では、地域A1のIP電話機7またはPC(ソフトフォン)8からの発信動作に関与する装置についての詳細構成を示しているが、他の地域についても同様な装置構成を有している。
【0028】
IP電話機7またはPC(ソフトフォン)8は、エッジ装置6を介してIP電話ネットワーク(ネットワーク全体についての図示は省略)に接続され、他のIP電話機7またはPC(ソフトフォン)8宛の呼を発信する場合には、エッジ装置6、フロー制御装置1、及び中継装置5を経由して自身の収容先のSIPサーバ4へINVITE信号からなるSIPの接続要求パケットを送信する。
【0029】
この接続要求パケットを受信した発信側のSIPサーバS1は、指定された宛先電話番号を解析することにより、接続先(着信先)のIP電話機7またはPC(ソフトフォン)8を収容している着信側のSIPサーバS2やS3を特定して当該接続要求パケットを当該SIPサーバ4に中継送信し、着信側のSIPサーバ4からの呼び出しに着信先の端末が応答することにより、発信元と着信先との両端末間での通話が可能となる。
【0030】
フロー制御装置1は、エッジ装置6と中継装置5との間に設置され、配下のIP電話機7やPC(ソフトフォン)8から送信されるパケットの内容をいわゆるDPI(Deep Packet Inspection)技術を用いて解析し、SIPによって記述された接続要求パケットを検出した場合は、フロー管理装置2からの指示にしたがって、当該接続要求パケットをSIPサーバ4に中継して呼接続を依頼するか、当該接続要求パケットを廃棄して呼接続を強制的に失敗させるかの振り分け処理を行う。
【0031】
フロー管理装置2は、各SIPサーバ4から呼接続のトラヒック状況や呼接続の失敗率やCPU(Central Processing Unit)負荷などの情報を取得することによって、各SIPサーバ4における輻輳の発生を検知し、輻輳状況に応じて各SIPサーバ4に流入するトラヒック量を減らすための呼の廃棄率を決定して各フロー制御装置1に対して輻輳中のSIPサーバ4宛の呼を当該廃棄率で発信規制するように指示する。このとき、規制対象には、個々のSIPサーバ4を指定してもよいし、当該SIPサーバ4が収容している地域の単位で指定してもよい。また、電話番号が0AB〜J番号体系である場合には、地域を電話番号の先頭からの数字列によって表される電話番号グループの単位で指定するものとしてもよい。
【0032】
発信規制を指示されたフロー制御装置1は、電話番号が0AB〜J番号体系であり、宛先電話番号から着信側のSIPサーバ4や地域が特定可能な場合は、フロー管理装置2から指定された呼の廃棄率にしたがって、配下の端末から送信される規制対象のSIPサーバ4宛の接続要求パケットを発信側のSIPサーバ4に中継するか廃棄するかの振り分けを行い、接続要求パケットを廃棄した場合には、その発信元と着信先とを含む廃棄情報をフロー管理装置2へ送信する。また、宛先電話番号から着信側のSIPサーバ4や地域が特定できない場合は、当該接続要求パケットを一旦発信側のSIPサーバ4に中継送信し、その後輻輳によって呼接続が失敗となった時点で、同様に廃棄情報をフロー管理装置2へ送信する。
【0033】
この廃棄情報を受信したフロー管理装置2は、規制対象となっているSIPサーバ4の輻輳状況に応じて当該発信元からの規制対象地域またはサーバ宛の再発信を規制(拒否)する規制時間を決定して、フロー制御装置1に対してユーザ規制(ユーザ単位の発信規制)の開始を指示する。なお、宛先電話番号から着信側のSIPサーバ4や地域が特定できない場合は、規制対象には廃棄となった宛先電話番号を指定することにより、同じ電話番号宛の再発信を規制(拒否)する。その後、決定した規制時間が経過した時点で、フロー制御装置1に対して当該ユーザ規制の解除を指示する。
【0034】
フロー管理装置2からユーザ規制の開始を指示されたフロー制御装置1は、規制対象のユーザから規制対象地域またはサーバ宛の接続要求パケットを受信した場合は、その接続要求パケットを廃棄してガイダンスサーバ3への呼接続を行い、ガイダンスサーバ3は、例えば時間をおいて掛け直すように通知する音声ガイダンスを送出する。すなわち、フロー制御装置1は、フロー管理装置2からユーザ規制の解除を指示されるまでの期間は、規制対象ユーザからの規制対象先宛の呼をガイダンスサーバ3へリダイレクト接続し、ユーザ規制の解除を指示された時点で、当該ユーザから受信した接続要求パケットを通常処理に戻す。
【0035】
これにより、例えば図1に示した地域A3が被災地となってSIPサーバS3への負荷集中が発生した場合は、フロー管理装置2から地域A3やSIPサーバS3宛の呼の発信規制がフロー制御装置1に対して指示され、フロー制御装置1が配下の端末からの規制対象先宛の接続要求パケットをIPネットワークの入口で廃棄することにより、SIPサーバS3の輻輳状態を解消することが可能となる。
【0036】
なお、図1ではエッジ装置6とフロー制御装置1とガイダンスサーバ3とは、それぞれ異なる装置として記載したが、これら3つの装置の機能をまとめて1つの装置に実装してもよいし、任意の2つの装置をまとめて1つの装置に実装するものとしてもよい。
【0037】
図2は、本実施形態に係るフロー制御装置の機能についての説明図である。図2に示すように、フロー制御装置1は、通信規制指示受信部11、廃棄情報送信部12、接続要求受信部13、廃棄判定部14、接続要求中継部15、ガイダンスサーバ接続部16の各機能を備えて構成される。これら各機能は、コンピュータによって構成されるフロー制御装置1が備える不図示のCPU(Central Processing Unit)が、それぞれ対応するプログラムを実行することによって具現化される。また、フロー制御装置1が備える不図示の記憶部には、廃棄率リスト17と規制中ユーザリスト18とが備えられる。
【0038】
廃棄率リスト17には、発信規制の対象となる地域またはSIPサーバの識別情報と、その地域またはSIPサーバ宛の呼の廃棄率とを属性としてもつレコードが、フロー管理装置2から受信した有効な発信規制の数だけ登録される。図2のデータ例は、地域A3宛の呼の廃棄率が50%に設定され、SIPサーバS3宛の呼の廃棄率が20%に設定されている場合を示している。
【0039】
規制中ユーザリスト18には、規制対象先宛への再発呼を規制すべきユーザのユーザ名または電話番号と、規制対象となる地域またはSIPサーバの識別情報もしくは宛先電話番号とを属性としてもつレコードが、フロー管理装置2から受信した有効なユーザ規制の数だけ登録される。図2のデータ例は、ユーザU1からのSIPサーバS3宛の再発信が規制され、ユーザU2からの地域A3宛の再発信が規制される場合を示している。
【0040】
通信規制指示受信部11は、フロー管理装置2から送信される発信規制の開始や解除の指示を受信し、受信した指示にしたがって廃棄率リスト17または規制中ユーザリスト18に規制内容を登録し、または登録されている規制内容を削除する。接続要求受信部13は、配下のIP電話機7などの端末から送信される接続要求パケットを受信して、受信した接続要求パケットを廃棄判定部14に引き渡す。
【0041】
廃棄判定部14は、接続要求受信部13から引き渡された接続要求パケットのそれぞれを上位のSIPサーバ4に中継するか廃棄するかの判定を行う。このとき、廃棄判定部14は、廃棄率リスト17を参照することにより、当該接続要求パケットに含まれる宛先電話番号が規制対象の地域あるいはSIPサーバに該当する場合は、該当する廃棄率となるように一部の接続要求パケットを廃棄するものとし、廃棄した接続要求パケットの情報を廃棄情報送信部12に引き渡す。
【0042】
廃棄情報送信部12は、廃棄判定部14から引き渡された廃棄された接続要求パケットの情報を廃棄情報としてフロー管理装置2へ送信する。接続要求中継部15は、廃棄判定部14によって廃棄と判定されなかった接続要求パケットを発信側のSIPサーバ4に中継送信して呼接続を依頼する。また、ガイダンスサーバ接続部16は、廃棄判定部14によって廃棄と判定された接続要求パケットの発信元をガイダンスサーバ3へリダイレクト接続する。
【0043】
図3は、呼接続が成功する通常処理のシーケンスチャートである。図3に示すように、まず、例えば、発信元のIP電話機7からフロー制御装置1へ接続要求パケットが送信され(SQ31)、フロー制御装置1が受信した接続要求パケットを発信側のSIPサーバS1(4)に中継送信する(SQ32)。続いて、発信側のSIPサーバS1(4)は、宛先電話番号を解析することにより着信側のSIPサーバS3(4)を特定して、当該サーバに接続要求パケットを中継し(SQ33)、発信元のIP電話機7には接続要求受付パケットを送信する(SQ34)。続いて、着信側のSIPサーバS3(4)は、中継された接続要求パケットを転送することで例えば宛先電話番号に該当する着信先のPC(ソフトフォン)8を呼び出し(SQ35)、着信先の端末から着信応答パケットが返送されると(SQ36)、その着信応答パケットを発信側のSIPサーバS1(4)を介して発信元の端末に中継送信し(SQ37,SQ38)、発信元の端末が着信先の端末へ応答受信確認パケットを送信する(SQ39)。それにより、発信元の端末と着信先の端末との間のセッション(通話路)が確立され、以後両端末間の通話が可能となる(SS1)。
【0044】
これに対し、図4は、輻輳の発生により呼接続が失敗して発信が規制される場合のシーケンスチャートである。ここでは、図1における被災地である地域A3の端末を収容するSIPサーバS3に負荷集中が発生し、輻輳状態となっている当該サーバに収容されているPC(ソフトフォン)8へ発信元のIP電話機7から電話を掛けるものとする。
【0045】
SIPサーバS3が輻輳状態となったことをフロー管理装置2が検知すると、フロー管理装置2からフロー制御装置1へSIPサーバS3または地域A3宛の発信規制の開始が指示される(SQ41)。このとき、フロー管理装置2から指定される当該SIPサーバS3(4)宛の呼の廃棄率は、通信規制指示受信部11によって廃棄率リスト17に登録される(図2参照)。
【0046】
続いて、発信元のIP電話機7から地域A3に含まれるPC(ソフトフォン)8宛の接続要求パケットがフロー制御装置1へ送信されたものとする(SQ42)。このとき、接続要求受信部13は受信した接続要求パケットを廃棄判定部14に引き渡し、廃棄判定部14は、宛先電話番号を解析することにより可能であれば着信側のSIPサーバS3(4)または地域A3を特定し、廃棄率リスト17から当該SIPサーバS3(4)宛の呼の廃棄率を取得して当該接続要求パケットを廃棄するか否かの廃棄判定を行う(SQ43)。例えば、廃棄率が50%であれば、2回に1回の割合で接続要求パケットを廃棄し、廃棄率が20%であれば、5回に1回の割合で接続要求パケットを廃棄するように判定する。
【0047】
宛先電話番号を解析することにより着信側のSIPサーバS3(4)や地域A3を特定できない場合、及び、廃棄判定の結果、廃棄しないと判定された接続要求パケットは、接続要求中継部15によって発信側のSIPサーバS1(4)に中継送信され、以後は図3のシーケンスチャートにしたがって通常の呼接続処理が行われる。他方、廃棄すると判定された場合には、ガイダンスサーバ接続部16によってガイダンスサーバ3への呼のリダイレクト接続が行われ(SQ44)、ガイダンスサーバ3から発信元の端末へリダイレクト応答が送信される(SQ45)。それにより、発信元の端末とガイダンスサーバ3との間のセッション(通話路)が確立され、ガイダンスサーバ3から発信元の端末へ音声ガイダンスが送出される(SS2)。
【0048】
これと並行して、廃棄情報送信部12は、フロー管理装置2へ廃棄された接続要求パケットの情報を含む廃棄情報を送信する(SQ46)。また、通常の呼接続処理を行ったのちに、着信側のSIPサーバ4の輻輳によって失敗となった呼に関しても、同様に廃棄情報送信部12は、失敗となった接続要求パケットの情報を含む廃棄情報をフロー管理装置2へ送信する。
【0049】
廃棄情報を受信したフロー管理装置2は、規制対象のSIPサーバS3(4)の輻輳状況に応じて当該発信元からの発信を規制(拒否)する規制時間を決定して、フロー制御装置1にユーザ規制の開始を指示し(SQ47)、指示されたユーザ規制の内容は通信規制指示受信部11によって規制中ユーザリスト18に登録される(図2参照)。また、フロー管理装置2は、ユーザ規制の開始を指示してからの経過時間が当該規制時間を超えた時点で、フロー制御装置1へ当該ユーザ規制の解除を指示し(SQ52)、解除を指示されたユーザ規制の情報は通信規制指示受信部11によって規制中ユーザリスト18から削除される。
【0050】
フロー管理装置2によってユーザ規制の開始が指示されてからその解除が指示されるまでの期間に、当該発信元から規制対象先宛への再発信を行う接続要求パケットを接続要求受信部13が受信すると(SQ48)、廃棄判定部14は当該発信元のユーザが規制中ユーザリスト18に登録されている場合は当該接続要求パケットを廃棄するものと判定し(SQ49)、前記と同様にガイダンスサーバ3への呼のリダイレクト接続を行って発信元の端末へ音声ガイダンスを送出する(SQ50,SQ51,SS3)。
【0051】
図5は、端末から接続要求パケットを受信したときのフロー制御装置1の動作を示すフローチャートである。以下、図5のフローチャートに沿ってフロー制御装置1の動作について詳しく説明する。
【0052】
まず、ステップS51にて、接続要求受信部13が発信元の端末から接続要求パケットを受信し、受信した接続要求パケットを廃棄判定部14に引き渡す。次に、ステップS52にて、廃棄判定部14は、フロー管理装置2から発信規制が指示されていて発信規制中の状態となっているか否かを判定し、発信規制中でなければ(ステップS52でNo)、ステップS59へ処理を進め、接続要求中継部15が発信側のSIPサーバ4に当該接続要求パケットを中継送信したのちに処理を終了する。
【0053】
また、発信規制中であれば(ステップS52でYes)、廃棄判定部14は、次にステップS53にて、当該接続要求パケットが一般の呼よりも優先して接続する優先接続呼に該当するか否かを判定し、優先接続呼であれば(ステップS53でYes)、廃棄の対象外としてステップS59へ処理を進め、接続要求中継部15が発信側のSIPサーバ4に当該接続要求パケットを中継送信したのちに処理を終了する。優先接続呼とは、例えば、別途番号登録されている家族間通話サービス対象の呼や、優先発信登録されたユーザから発信される呼や、110番や119番等の緊急呼などである。
【0054】
また、優先接続呼でなければ(ステップS53でNo)、廃棄判定部14は、次にステップS54にて、当該発信元のユーザが規制中ユーザリスト18に登録されている規制中ユーザであるか否かを判定し、規制中ユーザからの規制対象先宛の発信であれば(ステップS54でYes)、当該ユーザからの発信を規制(拒否)するものとしてステップS57に処理を進め、そうでなければ(ステップS54でNo)、次にステップS55にて、宛先電話番号から接続先の地域またはサーバを判別し、続くステップS56にて、廃棄率リスト17に基づく廃棄判定を行う。
【0055】
その結果、廃棄するものと判定した場合は(ステップS56でYes)、廃棄判定部14は、ステップS57に処理を進め、廃棄しないと判定した場合は(ステップS56でNo)、ステップS59に処理を進めて発信側のSIPサーバ4に当該接続要求パケットを中継送信する。
【0056】
ステップS57では、ガイダンスサーバ接続部16がガイダンスサーバ3への呼のリダイレクト接続を行い、続くステップS58では、廃棄情報送信部12が廃棄された当該接続要求パケットの情報を廃棄情報としてフロー管理装置2へ送信したのち処理を終了する。
【0057】
図6は、フロー管理装置2からの指令を受信したときのフロー制御装置1の動作を示すフローチャートである。以下、図6のフローチャートに沿ってフロー制御装置1が行う通信規制指示の受信動作について詳しく説明する。
【0058】
まず、ステップS61にて、通信規制指示受信部11は、フロー管理装置2から通信規制指示を受信し、続くステップS62にて指示内容を判定する。
【0059】
通信規制指示受信部11は、指示内容が発信規制開始である場合は、次にステップS63にて廃棄率リスト17に受信した発信規制情報を登録し、指示内容が廃棄率更新である場合は、次にステップS64にて廃棄率リスト17に登録済みの廃棄率データを更新し、指示内容が発信規制解除である場合は、次にステップS65にて廃棄率リスト17から該当する発信規制情報のレコードを削除する。
【0060】
また、通信規制指示受信部11は、指示内容がユーザ規制開始である場合は、次にステップS66にて規制中ユーザリスト18に受信した規制ユーザ情報を登録し、指示内容がユーザ規制解除である場合は、次にステップS67にて規制中ユーザリスト18から該当する規制中ユーザのレコードを削除する。
【0061】
なお、以上説明した実施形態においては、フロー管理装置2が各規制中ユーザからの発信を規制(拒否)する規制時間を監視するものとしたが、ユーザ規制の開始を指示するときにフロー管理装置2からフロー制御装置1へこの規制時間をも合わせて指示するようにし、フロー制御装置1側で規制時間を監視するものとしてもよい。
【0062】
また、指定された廃棄率に基づく接続要求の廃棄処理はフロー制御装置1が行うのではなく、発信側のSIPサーバ4が行うものとし、発信側のSIPサーバ4から送信した廃棄情報に基づいてフロー管理装置2からフロー制御装置1へユーザ規制情報を送信するようにしてもよい。
【0063】
以上にて本発明を実施するための形態の説明を終えるが、本発明の実施の態様はこれに限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 フロー制御装置
11 通信規制指示受信部
12 廃棄情報送信部(廃棄情報送信手段)
13 接続要求受信部
14 廃棄判定部(廃棄判定手段)
15 接続要求中継部
16 ガイダンスサーバ接続部
17 廃棄率リスト
18 規制中ユーザリスト
2 フロー管理装置
3 ガイダンスサーバ
4 SIPサーバ(呼制御サーバ)
5 中継装置
6 エッジ装置
7 IP電話機(IP電話端末)
8 PC(ソフトフォン)(IP電話端末)
100 輻輳制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発信元端末から送信される接続要求を発信側呼制御サーバが受信して接続先との間のセッションを確立するIPネットワークにおける輻輳を制御する輻輳制御システムであって、
前記発信元端末から送信される前記接続要求を前記発信側呼制御サーバに中継送信するフロー制御装置と、前記フロー制御装置に発信規制を指示するフロー管理装置とを備え、
前記フロー管理装置は、前記IPネットワークに輻輳が発生したことを検知したときに、前記フロー制御装置に規制対象先と輻輳状況に応じて決定した廃棄率とを含んで前記発信規制を指示し、
前記フロー制御装置は、自身の配下の発信元端末から前記規制対象先宛の接続要求を受信したときに、当該規制対象先宛の接続要求を前記廃棄率の割合で前記発信側呼制御サーバに中継しないで廃棄するように振り分けを行い、さらに、振り分けにて廃棄とした接続要求の発信元端末から送信される当該規制対象先宛の接続要求を、所定の時間が経過するまで廃棄し続ける
ことを特徴とする輻輳制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の輻輳制御システムにおいて、
前記フロー制御装置は、前記接続要求を廃棄した発信元端末を、再発信の抑制を促す音声ガイダンスを送出するガイダンスサーバへリダイレクト接続する
ことを特徴とする輻輳制御システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の輻輳制御システムにおいて、
前記フロー制御装置は、前記振り分けにて廃棄とした接続要求の情報を廃棄情報として前記フロー管理装置へ送信し、
前記フロー管理装置は、当該廃棄情報によって特定される当該接続要求の発信元端末からの当該規制対象先宛の接続要求を廃棄し続ける規制時間を決定して前記フロー制御装置に当該規制時間を通知し、または、当該規制対象先宛の接続要求の廃棄を前記フロー制御装置に指示したのちに前記規制時間の経過を監視し、当該規制時間が経過したときに前記廃棄の指示を解除する
ことを特徴とする輻輳制御システム。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の輻輳制御システムにおいて、
前記発信元端末と前記接続先とはいずれもIP電話端末であり、前記発信側呼制御サーバから着信側呼制御サーバに前記接続要求を中継送信することによって前記接続先への呼接続が行われ、
前記規制対象先は、輻輳の発生が検知された呼制御サーバの単位、当該呼制御サーバが収容している地域の単位、または当該呼制御サーバが収容している電話番号グループの単位で設定される
ことを特徴とする輻輳制御システム。
【請求項5】
請求項4に記載の輻輳制御システムにおいて、
前記フロー制御装置は、所定の優先接続呼に係る前記接続要求を廃棄しないで前記発信側呼制御サーバに中継送信する
ことを特徴とする輻輳制御システム。
【請求項6】
発信元端末から送信される接続要求を発信側呼制御サーバが受信して接続先との間のセッションを確立するIPネットワークにおける輻輳を制御する輻輳制御システムにおいて、前記発信元端末から送信される前記接続要求を前記発信側呼制御サーバに中継送信するフロー制御装置に発信規制を指示するフロー管理装置であって、
前記IPネットワークに接続される各呼制御サーバから収集した情報に基づいて前記IPネットワークに輻輳が発生したことを検知したときに、前記フロー制御装置に規制対象先と輻輳状況に応じて決定した廃棄率とを含んで前記発信規制を指示し、
前記フロー制御装置が前記廃棄率にしたがって廃棄した接続要求の情報を廃棄情報として前記フロー制御装置から受信し、当該廃棄情報によって特定される当該接続要求の発信元端末からの当該規制対象先宛の接続要求を廃棄し続ける規制時間を決定して前記フロー制御装置に当該規制時間を通知し、または、当該規制対象先宛の接続要求の廃棄を前記フロー制御装置に指示したのちに前記規制時間の経過を監視し、当該規制時間が経過したときに前記廃棄の指示を解除する
ことを特徴とするフロー管理装置。
【請求項7】
発信元端末から送信される接続要求を発信側呼制御サーバが受信して接続先との間のセッションを確立するIPネットワークにおける輻輳を制御する輻輳制御システムにおいて、フロー管理装置からの指示にしたがって前記発信元端末から送信される前記接続要求を前記発信側呼制御サーバに中継送信するか否かの振り分けを行うフロー制御装置であって、
前記フロー管理装置から指示される規制対象先と接続要求の廃棄率とを含む発信規制内容を記憶する廃棄率リストと、
自身の配下の発信元端末から前記規制対象先宛の接続要求を受信したときに、当該規制対象先宛の接続要求を前記廃棄率の割合で前記発信側呼制御サーバに中継しないで廃棄するように振り分けを行い、さらに、振り分けにて廃棄とした接続要求の発信元端末から送信される当該規制対象先宛の接続要求を、所定の時間が経過するまで廃棄し続ける廃棄判定手段と
を備えることを特徴とするフロー制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載のフロー制御装置において、
前記振り分けにて廃棄とした接続要求の情報を廃棄情報として前記フロー管理装置へ送信する廃棄情報送信手段と、
前記フロー管理装置から指定される前記規制対象先への発信を個別に規制するユーザを記憶する規制中ユーザリストと
を備え、
前記廃棄判定手段は、前記規制中ユーザリストに記憶されたユーザから送信される当該規制対象宛の接続要求を、前記フロー管理装置から指示された規制時間が経過するまで、または、前記フロー管理装置から当該ユーザへの発信規制が解除されるまで廃棄し続ける
ことを特徴とするフロー制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−38573(P2013−38573A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172647(P2011−172647)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】