説明

農作業機

【課題】適切な覆土作業ができる農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機1は、回転しながら耕耘作業をする耕耘手段7と、圃場表面部aに播き溝を形成する溝形成手段8とを具備する。農作業機1は、播き溝内に被播き物Wを播く播き手段9と、被播き物Wに対して覆土作業をする覆土手段10とを具備する。耕耘手段7は所定方向に回転する耕耘軸15を備え、この耕耘軸15のフランジ部17には、溝形成手段8の前方位置で耕耘作業をする直爪18および覆土手段10の前方位置で耕耘作業をする曲がり爪19を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な覆土作業ができる農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば耕耘軸に放射状に設けた直爪で耕耘作業をする耕耘手段と、耕耘手段の後方部に配設され圃場表面部に播き溝を形成する溝形成手段と、その播き溝内に被播き物(種子、肥料、薬等)を播く播き手段と、播き手段にて播かれた被播き物に対して覆土作業をする覆土手段とを具備した農作業機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−125609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の農作業機では、例えば前作の株や雑草等の夾雑物が播き溝の近くにあった場合、その夾雑物が覆土手段に悪影響を及ぼすという不具合が生じるおそれがある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、夾雑物が覆土手段に悪影響を及ぼすという不具合の発生を抑制でき、覆土手段にて適切な覆土作業ができる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の農作業機は、回転しながら耕耘作業をする耕耘手段と、この耕耘手段の後方部に配設され、圃場表面部に播き溝を形成する溝形成手段と、この溝形成手段にて形成された播き溝内に被播き物を播く播き手段と、この播き手段にて播かれた被播き物に対して覆土作業をする覆土手段とを具備し、前記耕耘手段は、所定方向に回転する耕耘軸と、この耕耘軸に設けられ、前記溝形成手段の前方位置で耕耘作業をする直爪と、前記耕耘軸に設けられ、先端側が側方に向って略湾曲状に曲げられ、前記覆土手段の前方位置で耕耘作業をする曲がり爪とを備えるものである。
【0006】
そして、耕耘手段が覆土手段の前方位置で耕耘作業をする曲がり爪を備えるため、例えば前作の株や雑草等の夾雑物が覆土手段に悪影響を及ぼすという不具合の発生を抑制でき、覆土手段にて適切な覆土作業を行うことが可能である。
【0007】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、覆土手段は、前後方向に対して傾斜した状態で回転しながら覆土作業をする覆土用回転円板にて構成されているものである。
【0008】
そして、覆土手段を構成する覆土用回転円板にて適切な覆土作業を行うことが可能である。
【0009】
請求項3記載の農作業機は、請求項1または2記載の農作業機において、耕耘手段は、耕耘軸に設けられ圃場表面部のうち隣合う播き溝間の部分に排水溝を形成する排水溝形成用爪を備えるものである。
【0010】
そして、排水溝形成用爪にて圃場表面部のうち隣合う播き溝間の部分に排水溝を適切に形成することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、耕耘手段が覆土手段の前方位置で耕耘作業をする曲がり爪を備えるため、例えば前作の株や雑草等の夾雑物が覆土手段に悪影響を及ぼすという不具合の発生を抑制でき、覆土手段にて適切な覆土作業ができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、覆土手段を構成する覆土用回転円板にて適切な覆土作業を行うことができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、排水溝形成用爪にて圃場表面部のうち隣合う播き溝間の部分に排水溝を適切に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の農作業機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1および図2において、1は農作業機で、この農作業機1は、走行車であるトラクタ(図示せず)に連結して使用する牽引式のものである。そして、農作業機1は、トラクタの走行により前方(図中矢印方向)に移動しながら播種作業等をする多条式播種機である。
【0016】
農作業機1は、図示しないトラクタの3点リンク部に連結された3点連結部2を有する機体3を備えている。
【0017】
機体3の軸受部4には入力軸5が回転可能に設けられ、この入力軸5にはトラクタのPTO軸がユニバーサルジョイントおよび伝動シャフト等を介して接続されている。
【0018】
機体3の前側には、入力軸5側からの動力を受けて所定方向に駆動回転しながら耕耘作業をするロータリ式の耕耘手段7が設けられている。
【0019】
また、機体3の後側には、耕耘手段7の後方部に配設され圃場表面部aに凹溝状の播き溝bを耕耘土を左右に切り開くようにして形成する溝形成手段8と、溝形成手段8にて形成された播き溝b内に被播き物(種子、肥料、薬等)Wを播く播き手段9と、溝形成手段8の近傍に配設され播き手段9にて播かれた被播き物Wに対して覆土作業をする覆土手段10とがそれぞれ設けられている。なお、溝形成手段8の後方部には、圃場表面部aのうち被播き物Wが播かれた部分に対して鎮圧作業をする鎮圧手段である鎮圧輪11が回転可能に配設されている。
【0020】
ここで、耕耘手段7は、入力軸5側からの動力を受けて回転中心軸線Xを中心として所定方向に駆動回転する左右方向の耕耘軸15を備えている。耕耘軸15は、軸方向が左右方向に一致した軸部16と、この軸部16に互いに間隔をおいて軸方向に並設された略板状の複数のフランジ部17とを有している。
【0021】
そして、複数のフランジ部17のうち、溝形成手段8の前方に位置する各フランジ部17には、溝形成手段8の前方位置で耕耘作業をする複数本(例えば4本)の直爪(通常の耕耘爪)18と先端側が一側方(例えば左側方)に向って略湾曲状に曲げられ覆土手段10の前方位置で耕耘作業をする複数本(例えば2本)の曲がり爪19とが設けられている。すなわち、直爪18および曲がり爪19は、同じフランジ部17に取り付けられている。
【0022】
図3および図4に示されるように、各直爪18は耕耘軸15の軸部16の径方向に沿った略板状のものつまり平面視で略直線状のもので、各直爪18の基端部がフランジ部17に脱着可能に取り付けられ、各直爪18の先端部が自由端部となっている。また、各曲がり爪19は平面視で略J字状のもので、各曲がり爪19の基端部がフランジ部17に脱着可能に取り付けられ、各曲がり爪19の先端部が自由端部となっている。なお、曲がり爪19の耕耘深さは、直爪18の耕耘深さに比べて浅くなっている。
【0023】
また、残りの各フランジ部17には、圃場表面部aのうち隣合う播き溝b間の部分に凹溝状の排水溝cを形成する複数本(例えば2本)の排水溝形成用爪20が設けられている。各排水溝形成用爪20は、平面視で略コ字状のもので、各排水溝形成用爪20の基端部がフランジ部17に脱着可能に取り付けられ、各排水溝形成用爪20の先端部が自由端部となっている。なお、排水溝形成用爪20の耕耘深さは、直爪18の耕耘深さに比べて深くなっている。
【0024】
溝形成手段8は、例えば平面視で略V字状に配設され水平方向の支軸21を中心として回転する対をなす略円形状の回転円板(ディスク)22にて構成されている。なお、各回転円板22は、接地した状態で圃場表面部aから受ける力で回転する。
【0025】
播き手段9は、被播き物Wを貯留するホッパ24を備え、このホッパ24の底部にはホッパ24内の被播き物Wを一定量ずつ取り出す取出ロール(図示せず)が回転可能に設けられている。この取出ロールは駆動輪25側からの動力を受けて回転する。また、ホッパ24内から取り出された被播き物Wは、誘導管等の誘導体26にて対をなす回転円板22間まで誘導され、播き溝b内に落下する。
【0026】
覆土手段10は、例えば前後方向に対してやや傾斜した状態で水平方向の支軸28を中心として回転しながら覆土作業をする略円板状の覆土用回転円板(覆土ディスク)29にて構成されている。なお、各覆土用回転円板29は、溝形成手段8の回転円板22と同様、接地した状態で圃場表面部aから受ける力で回転する。
【0027】
次に、上記一実施の形態の動作を説明する。
【0028】
農作業機1をトラクタに連結した状態でトラクタの走行により移動されると、耕耘手段7が耕耘作業をし、溝形成手段8が耕耘手段7による耕耘土を左右に切り開くようにして圃場表面部aに播き溝bを形成し、播き手段9がその播き溝b内に被播き物Wを播き、覆土手段10がその播かれた被播き物Wに対して覆土作業をし、鎮圧輪11が被播き物Wが播かれた部分に対して鎮圧作業をする。
【0029】
このような作業時において、例えば図5(a)に示すように前作の株や雑草等の夾雑物Sが残っていた場合、その夾雑物Sは、図5(b)に示すように、耕耘手段7の曲がり爪19にて切削されて倒され、覆土手段10である覆土用回転円板29の前方位置から取り除かれ、その結果、図5(c)に示すように、覆土用回転円板29にて覆土作業が行われて播き溝bが埋められる。また、図5に示されるように、圃場表面部aのうち隣合う播き溝b間の部分には、排水溝形成用爪20にて排水溝cが形成される。
【0030】
このように上記一実施の形態によれば、ロータリ式の耕耘手段7が覆土手段10である覆土用回転円板29の前方位置で耕耘作業をする曲がり爪19を備えるため、例えば前作の株や雑草等の夾雑物Sが覆土用回転円板29に悪影響を及ぼすという不具合の発生を抑制でき、覆土用回転円板29にて適切な覆土作業ができ、よって、例えば種子等の被播き物Wを鳥が食することを防止でき、農作物の生産性の向上を図ることができる。
【0031】
また、耕耘手段7が直爪18および曲がり爪19に加えて排水溝形成用爪20を備えるため、排水溝形成用爪20にて圃場表面部aのうち隣合う播き溝b間の部分に排水溝cを適切に形成することができ、その排水溝cの存在により発芽が良くなり、農作物の生産性を向上させることができる。
【0032】
なお、上記実施の形態では、耕耘軸15の1つのフランジ部17に対して2本の曲がり爪19を設けたものについて説明したが、曲がり爪19の数は任意であり、1つのフランジ部17に対して1本の曲がり爪19を設けたものや3本以上の曲がり爪19を設けたもの等でもよい。
【0033】
また、播き手段9で被播き物Wとして種子および肥料を播くものには限定されず、例えば種子のみを播くもの、肥料のみを播くもの、薬のみを播くもの、種子および薬を播くもの等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の農作業機の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】同上農作業機の平面図である。
【図3】同上農作業機の耕耘手段の側面図である。
【図4】同上農作業機の耕耘手段の後面図である。
【図5】(a)〜(c)は同上農作業機による作業状況の説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 農作業機
7 耕耘手段
8 溝形成手段
9 播き手段
10 覆土手段
15 耕耘軸
18 直爪
19 曲がり爪
20 排水溝形成用爪
29 覆土用回転円板
a 圃場表面部
b 播き溝
c 排水溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転しながら耕耘作業をする耕耘手段と、
この耕耘手段の後方部に配設され、圃場表面部に播き溝を形成する溝形成手段と、
この溝形成手段にて形成された播き溝内に被播き物を播く播き手段と、
この播き手段にて播かれた被播き物に対して覆土作業をする覆土手段とを具備し、
前記耕耘手段は、
所定方向に回転する耕耘軸と、
この耕耘軸に設けられ、前記溝形成手段の前方位置で耕耘作業をする直爪と、
前記耕耘軸に設けられ、先端側が側方に向って略湾曲状に曲げられ、前記覆土手段の前方位置で耕耘作業をする曲がり爪とを備える
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
覆土手段は、前後方向に対して傾斜した状態で回転しながら覆土作業をする覆土用回転円板にて構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
耕耘手段は、耕耘軸に設けられ圃場表面部のうち隣合う播き溝間の部分に排水溝を形成する排水溝形成用爪を備える
ことを特徴とする請求項1または2記載の農作業機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−101815(P2006−101815A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295561(P2004−295561)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】