説明

農作業機

【課題】 機体の旋回制御において、圃場状況や作業形態に応じて更なる作業性向上を図ると共に、作業開始位置あるいは作業終了位置の更なる適正化を図ることを課題とする。
【解決手段】 機体の畦際旋回時に農作業装置の作動を停止してからの走行距離が所定の設定走行距離に到達するか又は機体の畦際旋回時に農作業装置の作動を停止してからの時間が所定の設定時間に到達すると自動的に農作業装置の作動を開始させる制御装置を設けた農作業機において、農作業装置の作動停止時又は作動開始時の機体の向きに対する畦の角度を判別する畦角度判別装置と、機体の旋回方向を判別する旋回方向判別装置102を設け、制御装置は、畦角度判別装置と旋回方向判別装置102とに基づき、機体の旋回方向が畦から離れる側であるときに前記所定の設定走行距離を小さく補正し、機体の旋回方向が畦に近づく側であるときに前記所定の設定走行距離を大きく補正する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農作業機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
乗用型の農作業機である田植機において、機体の畦際旋回時に農作業装置である苗植付部の作動を停止してからの旋回内側の後輪回転数に基づく走行距離が第一の設定走行距離に到達すると自動的に苗植付部を下降させ、前記走行距離が第二の設定走行距離に到達すると自動的に苗植付部の作動を開始させる旋回制御装置を設けた構成が公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−344020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記背景技術により、機体旋回の作業性が向上し且つ作業開始位置を適正にできるが、例えば台形状に変形した圃場等では、機体旋回時に対向する畦が作業走行方向に対して斜めの角度を有することがあり、最後に枕地作業を行うために畦際の未作業域を畦に沿って同じ幅空けるためには、圃場内の往復作業走行における畦際での作業開始位置及び作業終了位置を畦の角度に合わせて異ならせる必要がある。
【0005】
また、後輪回転数を検出するセンサ又は検出機構が必要となり、機体の構成が複雑化し、コストアップの要因となる。
また、農作業装置である苗植付部の作動を停止させるのと同時に、粉粒体供給装置である施肥装置等の繰出部の作動を停止させると、粉粒体供給装置は繰出部から移送ホース等を介して実際に圃場に吐出されるまでに時間を要するため、農作業装置の作業終了位置と粉粒体供給装置の作業終了位置とが異なって圃場への粉粒体供給が過剰となり、例えば粉粒体が肥料の場合は施肥の過剰による苗の肥料やけが発生するおそれがあり、粉粒体の過剰供給による農作業のコストアップあるいは環境汚染を招くおそれがある。
【0006】
また、機体旋回時に走行推進体がスリップして良好に走行できない場合は、差動制限装置により左右の走行推進体の差動を制限することがあるが、この差動の制限により機体が大回りするため、旋回開始時の作業終了位置と旋回終了時の作業開始位置との位置関係が不適正になるおそれがある。
【0007】
また、機体の旋回開始時における農作業装置の作業終了位置は、オペレータの操作に基づくものであるので、往復作業走行における前行程での作業開始位置との位置関係が不適正になるおそれがある。
【0008】
従って、本発明は、機体の旋回制御において、圃場状況や作業形態に応じて更なる作業性向上を図ると共に、作業開始位置あるいは作業終了位置の更なる適正化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、機体の畦際旋回時に農作業装置の作動を停止してからの走行距離が所定の設定走行距離に到達するか又は機体の畦際旋回時に農作業装置の作動を停止してからの時間が所定の設定時間に到達すると自動的に農作業装置(7)の作動を開始させる制御装置を設けた農作業機において、農作業装置(7)の作動停止時又は作動開始時の機体の向きに対する畦の角度を判別する畦角度判別装置と、機体の旋回方向を判別する旋回方向判別装置(102)を設け、制御装置は、畦角度判別装置と旋回方向判別装置(102)とに基づき、機体の旋回方向が畦から離れる側であるときに前記所定の設定走行距離を小さく補正し、機体の旋回方向が畦に近づく側であるときに前記所定の設定走行距離を大きく補正する構成とした農作業機とした。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、機体の旋回動作に連動して農作業装置(7)の作動を停止し、畦角度判別装置は、畦までの距離を検出する左右の畦距離センサ(104)により畦の角度を判別し、旋回方向判別装置(102)は、機体の旋回動作を検出して機体の旋回方向を判別する構成とした請求項1に記載の農作業機とした。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、旋回方向判別装置(102)は、機体の旋回開始時における旋回動作に基づき機体の旋回方向を判別する構成とした請求項2に記載の農作業機とした。
【0012】
また、請求項4に係る発明は、旋回方向判別装置(102)は、機体の旋回開始時における旋回動作に基づき機体の旋回方向を判別する構成とし、次行程の走行経路の指標となる位置に線を引く左右の線引きマーカ(107)を、各々線引き状態と非線引き状態とに切替可能に設け、農作業装置(7)の作動開始に伴い、旋回方向判別装置(102)の判別による機体の旋回外側の線引きマーカ(107)を線引き状態に切り替えるマーカ切替装置(108)を設けた請求項1から請求項3の何れか1項に記載の農作業機とした。
【0013】
また、請求項5に係る発明は、機体の畦際旋回時に農作業装置(7)を上昇させると共に農作業装置(7)の作動を停止してからの時間が第一の設定時間に達すると自動的に農作業装置(7)を下降させ、農作業装置(7)を下降させてからの時間が第二の設定時間に達すると自動的に農作業装置(7)の作動を開始させる制御装置を設けた農作業機とした。
【0014】
また、請求項6に係る発明は、農作業装置(7)の作動停止時又は作動開始時の機体の向きに対する畦の角度を判別する畦角度判別装置と、機体の旋回方向を判別する旋回方向判別装置(102)を設け、制御装置は、畦角度判別装置と旋回方向判別装置(102)とに基づき、機体の旋回方向が畦から離れる側であるときに前記第一の設定時間を小さく補正し、機体の旋回方向が畦に近づく側であるときに前記第一の設定時間を大きく補正する構成とした請求項5に記載の農作業機とした。
【0015】
また、請求項7に係る発明は、機体の走行速度を判別する走行速度判別装置(109、111)を設け、制御装置は、機体旋回時の走行速度が速いときに前記第一の設定時間を小さく補正し、機体の旋回方向が畦に近づく側であるときに前記第一の設定時間を大きく補正する構成とした請求項5又は請求項6に記載の農作業機とした。
【0016】
また、請求項8に係る発明は、前記第一の設定時間及び第二の設定時間を調節可能な設定時間調節装置(110)を設けた請求項5から請求項7の何れか1項に記載の農作業機とした。
【0017】
また、請求項9に係る発明は、機体の走行速度を判別する走行速度判別装置(109)を設け、制御装置は、機体旋回時の走行速度が零であるときは前記時間をカウントしない構成とした請求項5から請求項8の何れか1項に記載の農作業機とした。
【0018】
また、請求項10に係る発明は、機体の畦際旋回時に農作業装置(7)の作動を停止してからの走行距離が所定の設定走行距離に到達するか又は機体の畦際旋回時に農作業装置(7)の作動を停止してからの時間が所定の設定時間に到達すると自動的に農作業装置(7)の作動を開始させる制御装置を設けた農作業機において、前記農作業装置(7)とは別に圃場に粉粒体を供給する粉粒体供給装置(8)と、機体前方の畦までの距離を検出する前方畦距離センサ(104)を設け、機体の旋回動作に連動して農作業装置(7)の作動を停止し、制御装置は、農作業装置(7)の作動停止前で前方畦距離センサ(104)の検出による機体前方の畦までの距離が所定の距離になったとき、粉粒体供給装置(8)の繰出部(10)の作動を停止する構成とした農作業機とした。
【0019】
また、請求項11に係る発明は、機体の畦際旋回時に農作業装置(7)の作動を停止してからの走行距離が所定の設定走行距離に到達するか又は機体の畦際旋回時に農作業装置(7)の作動を停止してからの走行距離が所定の設定時間に到達すると自動的に農作業装置(7)の作動を開始させる制御装置を設けた農作業機において、左右の走行推進体(3)の差動を制限する差動制限装置を設け、制御装置は、機体旋回時に差動制限装置が作動するときは前記設定走行距離又は設定時間を大きく補正する構成とした農作業機とした。
【0020】
また、請求項12に係る発明は、機体旋回時に差動制限装置が作動する間の走行距離又は時間が長いとき、前記設定走行距離又は設定時間の補正値を大きく設定し、機体旋回時に差動制限装置が作動する間の走行距離又は時間が短いとき、前記設定走行距離又は設定時間の補正値を小さく設定する構成とした請求項11に記載の農作業機とした。
【0021】
また、請求項13に係る発明は、前行程の既作業状態を検出する既作業検出装置(115)を設け、該既作業検出装置(115)による既作業域端部の検出に基づいて農作業装置(7)の作動を停止し、農作業装置(7)の作動を停止してからの走行距離が所定の設定走行距離に到達するか又は農作業装置(7)の作動を停止してからの走行距離が所定の設定時間に到達すると自動的に農作業装置(7)の作動を開始させる制御装置を設けた農作業機とした。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明によると、機体の旋回方向が畦から離れる側すなわち往復走行作業を進行するに従い畦が遠ざかる場合であるときに、農作業装置の作動を開始させるタイミングが早くなって旋回開始時の作業終了位置よりも旋回終了時の作業開始位置を畦側にずらせることができ、機体の旋回方向が畦に近づく側すなわち往復走行作業を進行するに従い畦が近づく場合であるときに、農作業装置の作動を開始させるタイミングが遅くなって旋回開始時の作業終了位置よりも旋回終了時の作業開始位置を畦とは反対側にずらせることができ、圃場内の往復作業走行における畦際での作業開始位置及び作業終了位置を畦の角度に合わせて異ならせることができ、枕地作業を行うために畦際の未作業域を畦に沿って極力同じ幅となるように空けることができる。
【0023】
請求項2に係る発明によると、請求項1に係る発明の効果に加えて、機体の旋回動作に連動して自動的に農作業装置の作動を停止でき、畦角度判別装置は、畦までの距離を検出する左右の畦距離センサにより畦の角度を判別し、旋回方向判別装置は、機体の旋回動作を検出して機体の旋回方向を判別する構成としたので、簡単な構成で畦の角度及び機体の旋回方向を判別でき、低コストとなる。
【0024】
請求項3に係る発明によると、請求項2に係る発明の効果に加えて、所望の小回り旋回とならずに旋回角度180度を超えて旋回し、機体の旋回終盤で機体を作業走行する左右位置に合わせると共に機体を向きを作業走行する向きに合わせるために旋回方向とは反対側に機体を操向させても、機体の旋回開始時における旋回動作に基づき機体の旋回方向を適切に判別できる。
【0025】
請求項4に係る発明によると、請求項1から請求項3の何れか1項に係る発明の効果に加えて、従来のような農作業装置の昇降に連動して線引き状態となる線引きマーカを左右切り替える構成に比較して、旋回途中で農作業装置を昇降させても線引き状態となる線引きマーカが切り替えられることがなく、次行程で適確に未作業側となる線引きマーカが線引き状態となるように切り替えることができる。
【0026】
請求項5に係る発明によると、農作業装置の下降及び作動開始を経過時間により制御するので、走行距離に基づく制御に比較して、走行距離を検出するセンサが不要となり、制御装置を低コストで構成できる。
【0027】
請求項6に係る発明によると、請求項5に係る発明の効果に加えて、機体の旋回方向が畦から離れる側すなわち往復走行作業を進行するに従い畦が遠ざかる場合であるときに、農作業装置の作動を開始させるタイミングが早くなって旋回開始時の作業終了位置よりも旋回終了時の作業開始位置を畦側にずらせることができ、機体の旋回方向が畦に近づく側すなわち往復走行作業を進行するに従い畦が近づく場合であるときに、農作業装置の作動を開始させるタイミングが遅くなって旋回開始時の作業終了位置よりも旋回終了時の作業開始位置を畦とは反対側にずらせることができ、圃場内の往復作業走行における畦際での作業開始位置及び作業終了位置を畦の角度に合わせて異ならせることができ、枕地作業を行うために畦際の未作業域を畦に沿って極力同じ幅となるように空けることができる。また、機体の旋回方向が畦から離れる側すなわち往復走行作業を進行するに従い畦が遠ざかる場合であるときに、農作業装置を下降させるタイミングが早くなり、機体の旋回方向が畦に近づく側すなわち往復走行作業を進行するに従い畦が近づく場合であるときに、農作業装置を下降させるタイミングが遅くなり、畦の状況に応じて農作業装置を畦に干渉しないタイミングで且つ作動開始に間に合うタイミングで適切に下降させることができる。
【0028】
請求項7に係る発明によると、請求項5又は請求項6に係る発明の効果に加えて、機体の走行速度を加味することにより、旋回行程に対応して適切なタイミングで農作業装置を下降させ作動開始させることができる。
【0029】
請求項8に係る発明によると、請求項5から請求項7の何れか1項に係る発明の効果に加えて、オペレータの旋回操作の特性や圃場状況に応じて、農作業装置の下降及び作業開始のタイミングを適正に調節することができる。
【0030】
請求項9に係る発明によると、請求項5から請求項8の何れか1項に係る発明の効果に加えて、例えば、機体旋回途中で苗や肥料を補給する等のために走行停止しても、その間の時間をカウントしないので、旋回行程に対応して適切なタイミングで農作業装置を下降させ作動開始させることができる。
【0031】
請求項10に係る発明によると、粉粒体が繰出部から移送ホース等を介して実際に圃場に吐出されるまでに時間を要する分、農作業装置の作動停止前に粉粒体供給装置の繰出部の作動を停止し、粉粒体の過剰供給による農作業のコストアップあるいは環境汚染を防止できる。
【0032】
請求項11に係る発明によると、機体旋回時に差動制限装置を作動させて機体が大回りするのに対応して、適切なタイミングで農作業装置の作動を開始することができる。
請求項12に係る発明によると、請求項11に係る発明の効果に加えて、差動制限装置の作動の長短に対応して適切なタイミングで農作業装置の作動を開始することができる。
【0033】
請求項13に係る発明によると、旋回開始時の作業終了位置を自動的に前行程の作業開始位置に応じて適正に設定することができ、旋回終了時の作業開始位置を自動的に旋回開始時の作業終了位置に応じて適正に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】田植機の側面図
【図2】田植機の平面図
【図3】エンジンカバーを示す平面図
【図4】施肥装置の一部及び後輪伝動ケースを示す背面図
【図5】後輪伝動ケースを示す側面図
【図6】ブロック図
【図7】安全クラッチを示す図
【図8】予備苗台を示す斜視図
【図9】苗ストッパが作用状態のときの苗ストッパ上下動レバーを示す背面図
【図10】苗ストッパが非作用状態のときの苗ストッパ上下動レバーを示す背面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
この発明の実施の一形態の農作業機となる苗移植機を以下に説明する。
図1及び図2は、走行車輌を備える乗用型の4条植田植機(苗移植機)1を示すものであり、車体2の前後には走行車輪としての左右一対の前輪3及び後輪4が架設されている。車体上前部には操作ボックス5及びステアリングハンドル6等を有する操縦装置が設置され、また、車体2の後方には昇降可能な苗植付部7が装備されている。また、車体2の後部には粉粒体供給装置となる施肥装置8が設けられ、肥料タンク9に貯留する肥料を各条の繰出部10で所定量づつ繰り出し、その繰り出した肥料をブロア11からの圧力風により各条の移送ホース12で苗植付部7に設けた吐出口13から吐出して施肥する構成となっている。また、車体2の後側で苗植付部7の前側には苗植付部7からリンク61により上下位置変更可能に支持される対地作業装置となる整地ロータ38が設けられ、該整地ロータ38の駆動により植付前の圃場を整地する構成となっている。尚、ロータ高さ調節レバー62の操作により、前記リンク61を回動させて苗植付部7に対する整地ロータ38の高さを変更設定できる構成となっている。操縦装置の後側に運転席(座席)14が設置され、運転席14の下側に田植機の各部に動力を伝達するエンジン15が搭載されている。
【0036】
エンジン15の上部には後方へ向けて排気するマフラー63が設けられ、該マフラー63の後方にはブロア11の吸気口11aを前側向きに配置している。従って、マフラー63からの熱風をブロア11が吸引でき、施肥装置8において肥料の乾燥を促すことができる。尚、エンジン15を上側から覆うエンジンカバー64は、エンジン15の前方及び左右側方を閉塞し後方を開放した構成となっており、上方の座席14を支持している。座席14は前部の回動軸14a回りに前側へ回動できる構成となっており、該座席14を前側へ回動させた状態でエンジンカバー64の上面部に設けた燃料供給用孔64aが露出し、該燃料供給用孔64aを介してエンジンカバー64内に設けた燃料供給口65へ燃料を供給できる構成となっている。前記燃料供給用孔64aは燃料供給口65に対して偏位して大きく構成され、該燃料供給用孔64aを介してエンジンカバー64内のリコイルノブ66を引っ張ってエンジン15を始動させる構成となっている。従って、前記の孔64aは、燃料供給用とエンジン始動用(リコイルノブ操作用)とを兼用しており、従来のようにエンジンカバーあるいは車体カバーの露出した部分にエンジン始動用(リコイルノブ操作用)の孔を設けなくてよく、外観がすっきりとして良くなる。尚、エンジン15の始動のためにセルモータも備えており、リコイルノブ66はセルモータが故障したとき等の非常用として使用できる構成となっている。
【0037】
尚、エンジンカバー64は該カバー64の前下端に設けた支点軸64b回りに前側へ回動する構成となっており、このエンジンカバー64の回動によりエンジン15を露出させて外方より該エンジン15のメンテナンスを行うことができる。前記支点軸64bは車体2のステップフロア面67より下位にあるので、回動によるエンジンカバー64の移動量を大きくすることができ、開放スペースを大きくできる。従来は、支点軸がステップフロア面より上位にあったので、エンジンカバーの回動による開放スペースを十分に得られないという問題がある。
【0038】
前記ステアリングハンドル6は、この回動操作によりステアリングポスト内のステアリング軸からステアリングケース内を経て減速回転される出力軸、ピットマンア−ム及び操向ロッド等を介して左右の前輪3を操向させ操舵するようになっている。また、ミッションケース内には左右の後輪への伝動を入切するサイドクラッチを左右各々設け、ステアリングハンドル6の操作に連動する連動機構を介して操向内側のサイドクラッチを切りにする構成となっている。
【0039】
苗植付部7は、車体2の後部に昇降リンク機構17を介して昇降可能に装着され、昇降用油圧シリンダ18の伸縮作動により昇降する構成であり、本例では、油圧シリンダ18の引き側で苗植付部7を上昇させる構成としている。なお、19は植付昇降レバーを示す。
【0040】
また、この苗植付部7には、左右に往復動する苗載タンク20、1株分の苗を切取って土中に植込む植込杆21を有する植付装置22、苗植付面を滑走しながら整地するフロ−ト(サイドフロ−ト)23、センタフロ−ト24等を備えている。尚、昇降リンク機構17の苗植付部7側で上側の支点68は、昇降リンク機構17に設けた前後方向の長孔69により前後に移動自在に設けられ、揺動用スプリング70により前側に付勢されている。従って、この上側の支点68を移動自在にする長孔69の融通機構により、苗植付部7は、圃場面に追従して昇降リンク機構17の下側の支点71回りに前後に揺動し、車体2の前後傾斜に拘らず圃場面に対して所望の前後傾斜姿勢を維持する構成となっている。
【0041】
エンジン15の回転動力は、2連のエンジン出力プーリ25のうち左右方向内側のプーリ25aから前側に延びるベルト26を介して油圧式無段変速装置(HST)27の入力プ−リ28、入力軸29に伝えられ、この入力軸29からこれと同一軸芯上に設けられた伝動軸を介して油圧ポンプ71を駆動するようになっており、更に、油圧式無段変速装置27の出力軸からミッションケ−ス30のミッション入力軸に伝えられるようになっている。また、2連のエンジン出力プーリ25のうち左右方向外側のプーリ25bから後側に延びるベルト72を介して発電機73の入力プーリ74に伝動され、前記発電機73を駆動する。この油圧式無段変速装置(HST)27並びに発電機73の入力プ−リ28、74及びエンジン出力プーリ25は機体側面視で前後方向に一直線上に配置され、これらのプーリ25,28、74に巻回されるベルト26、72の側方(左右方向外側)に安全用のベルトカバー75を設け、該ベルトカバー75を機体側面視において直線状で簡単な構造としている。また、エンジン出力プーリ25及び発電機73はエンジンカバー64内に位置しないので、その分エンジンカバー64を小さくコンパクトに構成できる。尚、ベルトカバー75は、ベルト72が左右方向外側へ配置される分、後部が左右方向外側に位置するように屈曲した構成となっている。従来は、発電機がエンジンカバー内に配置され、発電機へ伝動するためのベルトがエンジン出力プーリから上側に延設されていたので、発電機を配置する分エンジンカバーを大きくしなければならず、またベルトカバーを機体側面視でL字型に構成しなければならずベルトカバーの構造が複雑なものとなっていた。
【0042】
操作ボックスすなわちフロントカバー5の上部近傍には、該油圧式無段変速装置27を駆動する変速レバ−31が配置され、この変速レバ−31の前後方向の操作で油圧式無段変速装置27を駆動し機体の前進及び後進制御を司るように構成されている。運転席14の前方右側には、前輪3及び後輪4を制動するためのブレーキペダル32を設けている。また、このブレーキペダル32を踏み込み操作状態(制動状態)で保持できるペダル保持装置を設けている。
【0043】
ミッションケース30内からの動力により、植付伝動軸を介して伝動して苗植付部7が作動すると共に、該ミッションケース30の左右両側に設けた前輪3が駆動する。また、ミッションケース30内からの動力が左右各々の後輪伝動軸33を介して左右の後輪伝動ケース34内へ伝動され、後輪4が駆動する。
【0044】
ミッションケース30の後面には後側へ延びるメインフレーム76を固着しており、該メインフレーム76の後端に左右方向に延びる後部フレーム49を固着している。この後部フレーム49には上方へ延びる左右2本の上下フレーム77を固着しており、該上下フレーム77に昇降リンク機構17が回動自在に支持されると共に、該上下フレーム77の上部で肥料タンク9及び繰出部10等の施肥装置8の要部が支持されている。また、メインフレーム76と上下フレーム77を繋いで前下がりに傾斜する補強フレーム78が設けられ、該補強フレーム78の下端部をメインフレーム76より下側にまで突出させ、この補強フレーム78の下端部に昇降用油圧シリンダ18を支持する基部支点軸79を設けている。これにより、基部支点軸79を取り付けるための格別な部品が不要となり、コストダウンが図れると共に、昇降用油圧シリンダ18を低位に配置することができて機体の低重心化が図れる。
【0045】
左側の後輪伝動ケース34の左右方向内側(右側)には、該ケース34から出力される左右方向のロータ用出力軸35を設けている。このロータ用出力軸35から該軸35回りに上下回動自在のロータ駆動用ケース36及びロータ伝動軸37を介して車体2の後側で且つ苗植付部7の前側に設けた整地ロータ38へ伝動し、該整地ロータ38を駆動する構成となっている。従って、前記ロータ駆動用ケース36及びロータ伝動軸37等が、後輪伝動ケース34内から整地装置38へ伝動する対地作業用伝動機構となる。尚、整地ロータ38は左右中央の中央ロータ38aと左右両側の側部ロータ38bとで3分割された構成となっており、前記中央ロータ38aは前記側部ロータ38bより前側に位置しており、ロータ伝動軸37からの動力は先ず中央ロータ38aの左右中央位置に入力されて該中央ロータ38aへ伝動され、中央ロータ38aから左右のロータ伝動ケース80を介して左右の側部ロータ38bへ伝動される構成となっている。
【0046】
一方、右側の後輪伝動ケース34の左右方向内側(左側)には、該ケース34から出力される左右方向の施肥用出力軸39を設けている。この施肥用出力軸39から該軸39と一体回転する駆動クランクアーム40、駆動ロッド41及び従動アーム42を介して施肥駆動軸43へ該軸43が往復回動するよう伝動され、この施肥駆動軸43から各2条毎の入力アーム44、ロッド45、出力アーム46及び一方向クラッチ47等で構成される施肥伝動機構48を介して該施肥伝動機構48の左右に設けた各々の繰出部10へ伝動し、該繰出部10内の繰出ロータを一方向へ所定角度づつ回転させる構成となっている。従って、前記駆動クランクアーム40、駆動ロッド41、従動アーム42、施肥駆動軸43及び施肥伝動機構48等により、後輪伝動ケース34内から前記施肥装置8へ伝動する粉粒体供給用伝動機構を構成している。
【0047】
このように、左右の後輪伝動ケース34から整地ロータ38及び施肥装置8の繰出部10へ伝動するにあたり、一方の後輪伝動ケース34から整地ロータ38へ伝動し、他方の後輪伝動ケース34から繰出部10へ伝動する構成として、それぞれの伝動出力を左右で振り分けた構成としたので、左右の後輪伝動ケース34内の伝動負荷の均一化が図れ、ひいては左右の後輪4の駆動力の均一化が図れて機体の走行性能及び直進性能が向上する。また、整地ロータ38及び施肥装置8の繰出部10への伝動機構を交錯させずに簡潔に構成できる。
【0048】
尚、左右の後輪伝動ケース34は、共用化されており、後輪車軸56が左右外側へ向くよう左右対称に設けている。従って、左側の後輪伝動ケース34に設けたロータ用出力軸35と右側の後輪伝動ケース34に設けた施肥用出力軸39とは、後輪伝動ケース34においては同一の軸であり、後輪伝動ケース34の入力軸34bから後輪車軸56への伝動におけるカウンタ伝動軸を兼ねている。このカウンタ伝動軸35、39は、後輪車軸56より前側で且つ後述する回動支点軸54を挿入するための孔より後側に配置されている。従って、このカウンタ伝動軸35,39が、後輪車軸56より回動支点軸54に近い後輪伝動ケース34内の伝動軸となる。
【0049】
車体1の後部に設けた左右方向に延びる後部フレーム49の左右両端部には、プレートで構成される左右方向内側の第一支持部材50と左右方向外側の第二支持部材51とを各々設けている。前記第一支持部材50及び第二支持部材51は後部フレーム49から下側に延設され、第一支持部材50は後部フレーム49に溶接して固定され、第二支持部材51は後部フレーム49の端部に設けたブラケット52に前後上下計4本の取付ボルト53により着脱可能に装着されている。第一支持部材50の下端部には左右方向外側に延びる回動支点軸54を溶接して固定し、第二支持部材51の下端部には前記回動支点軸54の端部を挿入する孔51aを設けている。従って、回動支点軸54は、第一支持部材50と第二支持部材51とで両持ち支持されている。これにより、回動支点軸54の支持が安定し、該軸54のガタを抑えることができ、後述する後輪4の上下動を適正に且つ安定して行える。左右方向で第一支持部材50と第二支持部材51との間には、後部フレーム49から後方に延びる背面視U字型の第三支持部材55を設けている。前記取付ボルト53により第二支持部材51を後部フレーム49に対して着脱可能に構成しているので、第二支持部材51を取り外して第一支持部材50で片持ち支持される回動支点軸54に沿って機体の左右方向外側から後輪伝動ケース34の着脱を容易に行える。
【0050】
後輪伝動ケース34は、回動支点軸54を挿入するための孔及び後輪車軸56を挟む位置で分割する上下の分割ケース34aからなる構成であり、上下の分割ケース34aが共用化されている。尚、前記孔より後輪車軸56は後側に位置している。上側の分割ケース34aの左右内側には規制用ピン57を設け、該規制用ピン57が挿入される長孔58aを備える規制用アーム58が、前記第三支持部材55の側面に設けた支持軸59回りに回動自在に設けられている。従って、前記規制用ピン57の移動が前記長孔58a内で規制され、後輪伝動ケース34の上下回動域が規制される。従って、前記規制用ピン57及び規制用アーム58は、後輪伝動ケース34の上下方向の回動域を規制する規制部材となる。また、第三支持部材55の下面には弾性部材となるクッションゴム60を設けており、このクッションゴム60が後輪伝動ケース34に接触することにより、後輪4からの振動を吸収する構成となっている。
【0051】
よって、後輪伝動ケース34は回動支点軸54回りに上下回動可能に構成され、後進時及び前進時でも後輪4の駆動負荷が小さい通常の走行時には、機体の自重で規制用アーム58の長孔58aの上端に規制用ピン57が当たる位置まで後輪伝動ケース34が上動して後輪4が最上状態となる。このとき、後輪伝動ケース34はクッションゴム60に当接し、機体の振動が抑えられる。一方、前進時で後輪4に所定以上の駆動負荷が生じたときには、その駆動反力により機体の自重に抗して後輪伝動ケース34が下側へ回動して後輪4が下動する。この後輪4の下動は、規制用アーム58の長孔58aの下端に規制用ピン57が当たることにより、最下位置が規制される。
【0052】
尚、回動支点軸54は、後輪4の外径内に設定している。従って、回動支点軸54と後輪車軸56との間隔を小さく設定しているので、後輪4の駆動反力で後輪伝動ケース34を下側へ回動させることができるのである。
【0053】
ところで、後輪伝動軸33は、ミッションケース30に近い前部と後輪伝動ケース34に近い後部とに自由な方向へ屈曲自在な継ぎ手(ユニバーサルジョイント)33aを備え、後輪伝動ケース34の上下回動による該後輪伝動ケース34の入力軸34bの移動に順応する構成となっている。そして、後輪伝動ケース34の回動で大きく屈曲変化する後側の継ぎ手33aにおいて、後輪車軸56が最上位置となるべく後輪伝動ケース34が上側に回動したとき前記継ぎ手33aが上側に凹となるよう屈曲し、後輪車軸56が最下位置となるべく後輪伝動ケース34が下側に回動したとき前記継ぎ手33aが下側に凹となるよう屈曲し、後輪伝動ケース34の上下回動において後輪伝動軸33の屈曲方向を互いに逆側にして上下に振り分けた構成としている。従って、後輪伝動ケース34の上下回動全域において、継ぎ手33aの屈曲角度を許容範囲内で極力小さく設定できるため、後輪伝動軸33による伝動ロスを低減できて後輪伝動ケース34ヘの伝動を良好にできる。また、後輪車軸56が最下となるときの後輪伝動軸33の継ぎ手33aの屈曲角度より後輪車軸56が最上となるときの後輪伝動軸33の継ぎ手33aの屈曲角度が小さくなる構成としたので、後進時や前進時でも後輪4の駆動負荷が小さい通常走行時には、機体の自重により後輪伝動ケース34が上側へ回動して後輪車軸56が最上位置となるため、継ぎ手33aの屈曲角度が小さく、該後輪伝動軸33による伝動ロスを低減できて後輪伝動ケース34ヘの伝動を良好にできる。
【0054】
この田植機1により、直進植付時において、通常の走行負荷のときは後輪4が最上状態となり、耕盤が深くて過大な走行負荷がかかるようなときは、前輪3より車輪分担荷重の大きい後輪4が圃場に深く沈み込むことと後輪4の駆動反力との要因により、機体が前上がり姿勢になりやすいが、後輪4が下動状態となることで機体の前上がり姿勢が修正され、植付部7の沈下により苗植付姿勢が乱れたりするようなことを防止できる。一方、畦際での機体旋回時には、走行負荷が増大するので、自動的に後輪4が下動状態となることで機体が前下がり姿勢になり、機体旋回のために旋回内側の後輪4の駆動を断つことにより旋回外側しか駆動しない後輪4に対して左右両方を駆動させる前輪3の車輪分担荷重を増すことができ、ひいては前輪3の走行推進力を向上させることができ、旋回走行を円滑に行うことができる。また、前進での畦越え時や前進でのトラックへの積込時は、走行負荷が大きくなるため、後輪4が下動状態となって機体の前上がり姿勢が修正され、作業の安全性が図れる。また、畦越え時やトラックへの積込時でも機体が後上がり姿勢となる後進時は、後輪4が上動状態に維持され、後輪4が下動することにより機体が更に後上がり姿勢になることはなく、安全である。
【0055】
また、後輪伝動ケース34のカウンタ伝動軸となるロータ用出力軸35及び施肥用出力軸39が後輪車軸56より回動支点軸54に近い位置にあるので、後輪伝動ケース34の回動による対地作業用伝動機構及び粉粒体供給用伝動機構の移動量又は位置変化を小さくでき、これらの伝動機構による伝動の円滑化及び安定化が図れ、ひいては整地ロータ38による整地作業及び施肥装置8による施肥作業の適正化が図れる。
【0056】
尚、前述のクッションゴム60に代えて圧縮スプリングを設け、後輪伝動ケース34の上下回動全域において前記圧縮スプリングを作用させる構成とすることができる。そして、後進時及び前進時でも後輪4の駆動負荷が小さい通常の走行時には圧縮スプリングが全圧縮状態となり、前進時で後輪4に所定以上の駆動負荷が生じたときには圧縮スプリングが伸長して後輪伝動ケース34の下側への回動を付勢することができる。尚、この圧縮スプリングを設ける場合も、前述のようなクッションゴム60を併用してもよい。
【0057】
尚、圧縮スプリングを設けるにあたり、前述の規制用アーム58の外周に巻回されるように設け、一端が第三支持部材55に当接して規制され、他端が規制用ピン57に当接して後輪伝動ケース34を下側に回動付勢する構成としてもよい。つまり、圧縮スプリングがその内部を通る規制用アーム58で支持され、圧縮スプリングの外れを防止できると共に、構成の簡略化が図れる。
【0058】
尚、後輪4の上動又は下動を付勢する付勢手段となる圧縮スプリングを設けた構成において、その付勢力を可変させることにより、後輪4を下動させる負荷を任意に変更可能にし、変速レバーの切り替えによる機体「移動」(路上走行)時には後輪4を下動させず、「植付作業」時には機体前部が浮き上がるような高負荷時のみ後輪4を下動させて機体の後部を上昇させるように構成することで、駆動反力の小さい路上走行では後輪4を上下動させず、駆動反力の大きい圃場走行では必要以上に後輪4が上下動しないように抵抗を与えることが可能となる。
【0059】
また、上記のような構成において、油圧式無段変速装置27を駆動する変速レバ−31の操作に起因する前後進低速時には後輪4を下動させず、中・高速時には機体前部が浮き上がるような高負荷時のみ後輪4を下動させるよう構成することもでき、駆動反力の小さい低速走行では後輪4を上下動させず、駆動反力の大きい高速走行では必要以上に後輪4が上下動しないように抵抗を与えることが可能となる。
【0060】
更に、エンジン15のスロットル低回転時には後輪4を下動させず、中・高速時には機体前部が浮き上がるような高負荷時のみ後輪4を下動させて機体の後部を上昇させるように構成することもできる。
【0061】
尚、前述のクッションゴム60を後進高負荷時には圧縮して撓むような弾力特性に設定し、後進高負荷時には逆に機体後部を下降させて機体の前下がり状態を緩和させ、前輪3の沈み込みを防止することもできる。これによれば、後進での畦越えやアユミ越えが容易にでき、走行抵抗の大きい湿田での後進性能が向上する。
【0062】
また、ブレーキペダル32の操作に連動して左右の後輪伝動ケース34の上下回動を規制する規制具を設け、機体を走行停止させたときには後輪4が上下動しないように固定する構成とし、トラック等での運搬時にはペダル保持装置によりブレーキペダル32を踏み込み状態で保持しておけば、運搬時の振動等により無闇に後輪4が上下動するようなことを防止でき、後輪伝動ケース34の急激な上下動により後部フレーム49や後輪伝動ケース34が破損するようなことを防止でき、また荷台等に保持するために機体に掛けられたロープが引っ張られて緩んだり切れたりするようなことを防止できる。
【0063】
また、左右一方の後輪伝動ケース34と車体2に設けた回動アーム81の一端とを第一ケーブル82で接続し、前記回動アーム81の他端と昇降リンク機構17の上側の支点68を前側に付勢する揺動用スプリング70の他端(前端)とを第二ケーブル83で接続し、前記回動アーム81、第一ケーブル82及び第二ケーブル83からなる連動機構により、後輪4が上昇状態のときには前記上側の支点68が前側へ引っ張られて苗植付部7が前傾姿勢に修正され、後輪4が下降状態のときには第二ケーブル83が弛められて苗植付部7の自重により前記上側の支点68が後側へ移動して苗植付部7が後傾姿勢に修正される。これにより、後輪4の上下動による車体2の前後傾斜姿勢の変化に応じて苗植付部7の前後傾斜姿勢が所望の姿勢となるよう修正され、整地ロータ38及びフロート23、24による整地性の向上が図れると共に、苗の植付姿勢や植付深さの適正化が図れる。
【0064】
ところで、車体2の前部の左右には、上下複数段の予備苗台90を設けている。この複数の予備苗台90をリンク機構等により移動させて、上下に重複した通常の重複状態から前後に連なった展開状態へ切り替えることができる。この展開状態により、複数の予備苗台90を前後に連ねて配置できるので、例えば苗箱ごと苗を機体の前側から後部の苗植付部7へ予備苗台90上をスライドさせながら苗補給でき、苗補給作業の容易化が図れる。展開状態で苗をスライドさせるには、予備苗台90の前後の苗ストッパ91を下動させて非作用状態にする必要がある。そこで、一例として、3枚の予備苗台90が前後に連なる構成において、前後中央に位置する予備苗台90の縁部に前後の苗ストッパ91を上下動させる苗ストッパ上下動レバー92を設け、該苗ストッパ上下動レバー92の中央回動軸93と一体で前後の苗ストッパ91が回動する構成とする。前記中央回動軸93の一端(前端)にU字状のプレートで構成される係合溝94を設け、他端(後端)に四角形状の角軸で構成される係合軸95を設ける。そして、前側の予備苗台90の後側の苗ストッパ91と一体回動する前側回動軸96の一端(後端)に係合軸95を設け、後側の予備苗台90の前側の苗ストッパ91と一体回動する後側回動軸97の一端(前端)に係合溝94を設ける。従って、予備苗台90が上下方向に移動して展開状態へ切り替えられると、中央回動軸93の係合溝94と前側回動軸96の係合軸95が係合し、中央回動軸93の係合軸95と後側回動軸97の係合溝94が係合し、中央回動軸93、前側回動軸96及び後側回動軸97が一体回動する状態となって、苗ストッパ上下動レバー92の操作により複数(4個)の苗ストッパ91を一度に上下動させることができる。これにより、苗ストッパ91の切替操作が容易になり、苗補給作業性が向上する。尚、前側の予備苗台90の前側の苗ストッパ91及び後側の予備苗台90の後側の苗ストッパ91も共に上下動させる構成としてもよい。この苗ストッパ91の非作用状態(下動状態)では、係合溝94が横方向に向くので、係合溝94及び係合軸95により予備苗台90を展開状態で移動しないように規制する規制装置を兼用しており、苗補給作業性の更なる向上が図れる。
【0065】
そして、左右の後輪伝動ケース34には、入力軸34bの累積回転数を検出する後輪回転数センサ98を各々設けている。また、ミッションケース30内には苗植付部7への伝動を入切する植付クラッチを設けており、該植付クラッチは植付クラッチモータ99により操作される構成となっている。操作ボックス5内には制御部100を有する制御ボックス101を設けている。ステアリングハンドル6の操作に伴って回転するステアリング軸の回転角度を検出するステアリングセンサ102を設けている。このステアリングセンサ102が、機体の旋回開始時における機体の旋回動作を検出して機体の旋回方向を判別する旋回方向判別装置となる。ステアリングセンサ102によりステアリングハンドル6が所定角度以上操作されたことを検出すると旋回開始と判断し、制御部100がステアリングセンサ102からの入力信号に基づいて植付クラッチモータ99及び油圧シリンダ18へ油圧を供給する電磁油圧バルブ103へ出力し、苗植付部7の駆動を停止すると共に苗植付部7を上昇させる。この機体の旋回開始で旋回内側のサイドクラッチが切りになり、旋回内側の後輪4が圃場に追従して遊転する状態となるが、旋回方向判別装置により判別される旋回内側の後輪4への伝動軸の累積回転数を検出する後輪回転数センサ98の検出により、旋回開始からの累積回転数を検出して走行距離を検出する。この走行距離が180度旋回する前に相当する第一の設定走行距離に到達すると、制御部100が電磁油圧バルブ103へ出力し、油圧シリンダ18により苗植付部7を下降させる。更に、走行距離の検出を継続し、走行距離が旋回開始時の植付作業終了位置に苗植付部7による苗植付位置が揃うのに相当する第二の設定走行距離に到達すると、制御部100が植付クラッチモータ99へ出力し、植付クラッチにより苗植付部7を作動させ植付を開始する。
【0066】
車体2の前端部の左右には機体前方の畦までの距離を検出する光電式の前方畦距離センサ104を設けている。ステアリングハンドル6が所定角度以上操作されたことをステアリングセンサ102により検出したときに、左右の前方畦距離センサ104の検出信号が前記制御部100に入力され、制御部100内で左右の畦までの距離の差に基づき畦の角度を判別する。従って、ステアリングセンサ102、左右の前方畦距離センサ104及び制御部100により、旋回開始時における農作業装置(苗植付部7)の作動停止時の機体の向きに対する畦の角度を判別する畦角度判別装置が構成される。この畦角度判別装置の畦の角度の判別に基づき、機体の旋回方向が畦から離れる側であるときに前記第一の設定走行距離及び第二の設定走行距離を小さい値に補正し、機体の旋回方向が畦に近づく側であるときに前記第一の設定走行距離及び第二の設定走行距離を大きい値に補正する。この補正値は、畦角度判別装置の畦の角度に応じて、畦の角度による機体の往復作業走行の方向における機体の左右中央から畦までの距離の相違量に相当する値に設定する。つまり、往復作業行程の前行程ラインと次行程ラインとでの畦までの距離の相違量に相当する値に設定する。例えば、機体が左旋回を開始するとき、右側の前方畦距離センサ104の検出による畦までの距離よりも左側の前方畦距離センサ104の検出による畦までの距離が大きいと、機体の旋回方向が畦から離れる側と判断し、第一の設定走行距離及び第二の設定走行距離を畦の角度に応じた小さい値に補正するのである。
【0067】
ミッションケース30内の苗植付部7への伝動経路には、安全クラッチ105を設けている。この安全クラッチ105は、スプリングにより伝動入り側に付勢され、苗植付部7に過負荷がかかると苗植付部7への伝動を断ち、苗植付部7の破損を防止する。安全クラッチ105は、伝動軸106上をスライドして伝動を入切するが、伝動軸106に安全クラッチ105との間の油溝106aを形成し、潤滑性を向上させている。この油溝106aは、植付クラッチにより苗植付部7が定位置で停止したとき下位となり、ミッションケース30内の潤滑油に浸される位置となり、潤滑性を良好に維持できる。また、安全クラッチ105の上方には油圧シリンダ18からの戻り油をミッションケース30内に戻す戻り口を設けており、戻り口からも油圧用と兼用の潤滑油が安全クラッチ105の外面にかかって潤滑性が向上し、安全クラッチ105の焼き付きを防止している。また、油圧シリンダ18への油路を切り替える油圧バルブからの油圧排出口を、安全クラッチ105の近傍に設け、安全クラッチ105の潤滑性を向上させている。また、安全クラッチ105はミッションケース30内の仕切り壁により一部仕切られたサブケース部に配置されるのであるが、サブケース部の近傍で該サブケース部への潤滑油の供給を促すプロペラを、ミッションケース30内の伝動軸上に設けることにより、安全クラッチ105の潤滑性を向上させることができる。
【0068】
苗植付部7の左右には、次行程の走行経路の指標となる位置に線を引く線引きマーカ107を左右各々設けている。この線引きマーカ107は、倒伏した線引き状態と起立した非線引き状態とに切り替えでき、苗植付部7の昇降に連動して苗植付部7の下降状態では線引き状態となり、苗植付部7の上昇状態では非線引き状態となる。また、線引きマーカ107を操作するケーブルを規制する左右各々のマーカソレノイド108により、苗植付部7の下降状態でも線引きマーカ107を非線引き状態に維持できる。旋回方向判別装置による判別に基づき、機体の旋回外側の線引きマーカ107を規制するマーカソレノイド108を苗植付部7の作動開始時に非規制状態とし、機体の旋回内側の線引きマーカ107を規制するマーカソレノイド108を旋回開始時に規制状態とし、機体の旋回外側の線引きマーカ107を苗植付部7の作動開始時に線引き状態に切り替える。左右のマーカソレノイド108が、マーカ切替装置となる。
【0069】
尚、後輪回転数センサ98により走行距離を検出する構成について説明したが、これに代えて、旋回開始時からの経過時間を検出し、この経過時間に基づいて苗植付部7の下降及び作動を制御する構成としてもよい。すなわち、機体の旋回開始時に苗植付部7を上昇させると共に苗植付部7の作動を停止してからの時間が第一の設定時間に達すると自動的に苗植付部7を下降させ、苗植付部7を下降させてからの時間が第二の設定時間に達すると自動的に苗植付部7の作動を開始させる構成とする。この場合、畦角度判別装置と旋回方向判別装置とに基づき、第一の設定走行距離と第二の設定走行距離を補正するのに代えて、第一の設定時間と第二の設定時間を補正する。尚、第一の設定時間のみを補正する構成とし、苗植付部7の下降及び作動開始のタイミングを共に変更する構成としてもよい。これにより、苗植付部7の下降及び作動開始のタイミングを共に変更しても、苗植付部7の下降から作動開始までの時間(走行距離)をほぼ一定に維持できるので、苗植付部7の下降タイミングを、苗植付部7の作動開始時に苗植付部7が接地状態となるタイミングで、できるだけ遅いタイミングに設定でき、苗植付部7が下降時に畦と干渉するようなことを避けることができる。
【0070】
また、変速レバー31の操作位置を検出する変速レバーセンサ109に基づき、機体旋回時の走行速度が速いときに前記第一の設定時間を小さい値に補正し、機体の旋回方向が畦に近づく側であるときに前記第一の設定時間を大きい値に補正することもできる。この補正される設定時間は、走行速度に反比例した値に設定するのが望ましい。従って、変速レバーセンサ109が、機体の走行速度を判別する走行速度判別装置となる。また、第一の設定時間のみでなく、第二の設定時間も補正することもできる。
【0071】
また、前記第一の設定時間及び第二の設定時間を調節可能な設定時間調節装置(設定時間調節ダイヤル)110を設ける。この設定時間調節装置110は、第一の設定時間及び第二の設定時間の両者を比例的に増減させることができる。
【0072】
また、ブレーキペダル32の踏み込みを検出するブレーキペダルセンサ111又は前記変速レバーセンサ109の検出に基づき、機体旋回時の走行速度が零と判断されるときは経過時間をカウントしない構成としている。従って、ブレーキペダルセンサ111及び前記変速レバーセンサ109が、機体の走行速度を判別する走行速度判別装置となる。
【0073】
右側の後輪伝動ケース34内には、粉粒体供給用伝動機構への伝動を断つ粉粒体供給クラッチを設けている。この粉粒体供給クラッチは、粉粒体供給クラッチモータ112により操作される。機体の前進で、左右の前方畦距離センサ104の検出の平均値が、苗植付部7を作動停止する旋回開始前に相当する所定の値になったとき、粉粒体供給クラッチモータ112により粉粒体供給クラッチを切りにし、粉粒体供給装置(施肥装置8)の繰出部10の駆動を停止する。尚、左右の前方畦距離センサ104の何れか一方の検出値に基づき、粉粒体供給装置(施肥装置8)の繰出部10の駆動を停止する構成としてもよい。粉粒体供給クラッチは、前記第二の設定走行距離又は前記第二の設定時間に到達する直前となる第三の設定走行距離又は第三の設定時間に到達すると、粉粒体供給クラッチモータ112の作動により植付クラッチが入りになるよりも前に伝動入りとなる。
【0074】
左右の走行推進体である前輪3はミッションケース内30の差動装置により差動するが、該差動装置の差動を制限する差動制限装置(デフロック装置)を設けている。この差動制限装置はデフロックペダル113を踏み込み操作することで差動が制限されるが、デフロックペダル113を踏み込んだ状態であることを検出するデフロックセンサ114を設け、機体旋回時に差動制限装置が作動するときは設定走行距離又は設定時間を大きい値に補正する。この補正値は、予め設定した走行距離又は時間との関係に基づき、機体旋回時に差動制限装置が作動する間の走行距離又は時間が長いとき、前記設定走行距離又は設定時間の補正値を大きい値に設定し、機体旋回時に差動制限装置が作動する間の走行距離又は時間が短いとき、前記設定走行距離又は設定時間の補正値を小さい値に設定する。
【0075】
尚、車体2の前部の左右の隣接条位置に、隣接条の苗を検出するカメラ等の既作業検出装置115を設け、前行程の既作業状態(植付苗)を検出する構成とすることができる。この既作業検出装置115が前行程の既作業状態(植付苗)を検出しなくなることによる既作業域端部の検出に基づいて、自動的に苗植付部7の作動を停止して苗植付部7を上昇させることができる。尚、苗植付部7の作動停止及び上昇を自動的に行うのに続いて、ステアリングハンドル6を自動的に操作し、自動旋回を行う構成としてもよい。これに続いて、直進での植付走行も自動的に行う構成とすれば、無人で完全な自動走行が行える。
【0076】
尚、左右の前方畦距離センサ104に代えて、機体後方の畦までの距離を検出する左右の後方畦距離センサを設け、この左右の後方畦距離センサにより、旋回終了時における農作業装置(苗植付部7)の作動開始時の機体の向きに対する畦の角度を判別する畦角度判別装置を構成してもよい。
【0077】
尚、機体の旋回開始時における機体の旋回方向を判別する旋回方向判別装置としてステアリングセンサ102を使用する構成について説明したが、左右の後輪回転センサ98の検出値の差を使用して機体の旋回開始時における機体の旋回方向を判別する旋回方向判別装置を構成してもよい。
【0078】
尚、走行速度を検出する他の手段としては、後輪回転数センサ98等の車輪の回転速度を検出するセンサや、GPSによる位置検出による手段等が考えられる。
【符号の説明】
【0079】
1:田植機、3:前輪、7:苗植付部、8:施肥装置、10:繰出部、100:制御部、102:ステアリングセンサ、104:前方畦距離センサ、107:線引きマーカ、108:マーカソレノイド、109:変速レバーセンサ、110:設定時間調節ダイヤル、111:ブレーキペダルセンサ、115:既作業検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の畦際旋回時に農作業装置の作動を停止してからの走行距離が所定の設定走行距離に到達するか又は機体の畦際旋回時に農作業装置の作動を停止してからの時間が所定の設定時間に到達すると自動的に農作業装置(7)の作動を開始させる制御装置を設けた農作業機において、農作業装置(7)の作動停止時又は作動開始時の機体の向きに対する畦の角度を判別する畦角度判別装置と、機体の旋回方向を判別する旋回方向判別装置(102)を設け、制御装置は、畦角度判別装置と旋回方向判別装置(102)とに基づき、機体の旋回方向が畦から離れる側であるときに前記所定の設定走行距離を小さく補正し、機体の旋回方向が畦に近づく側であるときに前記所定の設定走行距離を大きく補正する構成とした農作業機。
【請求項2】
機体の旋回動作に連動して農作業装置(7)の作動を停止し、畦角度判別装置は、畦までの距離を検出する左右の畦距離センサ(104)により畦の角度を判別し、旋回方向判別装置(102)は、機体の旋回動作を検出して機体の旋回方向を判別する構成とした請求項1に記載の農作業機。
【請求項3】
旋回方向判別装置(102)は、機体の旋回開始時における旋回動作に基づき機体の旋回方向を判別する構成とした請求項2に記載の農作業機。
【請求項4】
旋回方向判別装置(102)は、機体の旋回開始時における旋回動作に基づき機体の旋回方向を判別する構成とし、次行程の走行経路の指標となる位置に線を引く左右の線引きマーカ(107)を、各々線引き状態と非線引き状態とに切替可能に設け、農作業装置(7)の作動開始に伴い、旋回方向判別装置(102)の判別による機体の旋回外側の線引きマーカ(107)を線引き状態に切り替えるマーカ切替装置(108)を設けた請求項1から請求項3の何れか1項に記載の農作業機。
【請求項5】
機体の畦際旋回時に農作業装置(7)を上昇させると共に農作業装置(7)の作動を停止してからの時間が第一の設定時間に達すると自動的に農作業装置(7)を下降させ、農作業装置(7)を下降させてからの時間が第二の設定時間に達すると自動的に農作業装置(7)の作動を開始させる制御装置を設けた農作業機。
【請求項6】
農作業装置(7)の作動停止時又は作動開始時の機体の向きに対する畦の角度を判別する畦角度判別装置と、機体の旋回方向を判別する旋回方向判別装置(102)を設け、制御装置は、畦角度判別装置と旋回方向判別装置(102)とに基づき、機体の旋回方向が畦から離れる側であるときに前記第一の設定時間を小さく補正し、機体の旋回方向が畦に近づく側であるときに前記第一の設定時間を大きく補正する構成とした請求項5に記載の農作業機。
【請求項7】
機体の走行速度を判別する走行速度判別装置(109、111)を設け、制御装置は、機体旋回時の走行速度が速いときに前記第一の設定時間を小さく補正し、機体の旋回方向が畦に近づく側であるときに前記第一の設定時間を大きく補正する構成とした請求項5又は請求項6に記載の農作業機。
【請求項8】
前記第一の設定時間及び第二の設定時間を調節可能な設定時間調節装置(110)を設けた請求項5から請求項7の何れか1項に記載の農作業機。
【請求項9】
機体の走行速度を判別する走行速度判別装置(109)を設け、制御装置は、機体旋回時の走行速度が零であるときは前記時間をカウントしない構成とした請求項5から請求項8の何れか1項に記載の農作業機。
【請求項10】
機体の畦際旋回時に農作業装置(7)の作動を停止してからの走行距離が所定の設定走行距離に到達するか又は機体の畦際旋回時に農作業装置(7)の作動を停止してからの時間が所定の設定時間に到達すると自動的に農作業装置(7)の作動を開始させる制御装置を設けた農作業機において、前記農作業装置(7)とは別に圃場に粉粒体を供給する粉粒体供給装置(8)と、機体前方の畦までの距離を検出する前方畦距離センサ(104)を設け、機体の旋回動作に連動して農作業装置(7)の作動を停止し、制御装置は、農作業装置(7)の作動停止前で前方畦距離センサ(104)の検出による機体前方の畦までの距離が所定の距離になったとき、粉粒体供給装置(8)の繰出部(10)の作動を停止する構成とした農作業機。
【請求項11】
機体の畦際旋回時に農作業装置(7)の作動を停止してからの走行距離が所定の設定走行距離に到達するか又は機体の畦際旋回時に農作業装置(7)の作動を停止してからの走行距離が所定の設定時間に到達すると自動的に農作業装置(7)の作動を開始させる制御装置を設けた農作業機において、左右の走行推進体(3)の差動を制限する差動制限装置を設け、制御装置は、機体旋回時に差動制限装置が作動するときは前記設定走行距離又は設定時間を大きく補正する構成とした農作業機。
【請求項12】
機体旋回時に差動制限装置が作動する間の走行距離又は時間が長いとき、前記設定走行距離又は設定時間の補正値を大きく設定し、機体旋回時に差動制限装置が作動する間の走行距離又は時間が短いとき、前記設定走行距離又は設定時間の補正値を小さく設定する構成とした請求項11に記載の農作業機。
【請求項13】
前行程の既作業状態を検出する既作業検出装置(115)を設け、該既作業検出装置(115)による既作業域端部の検出に基づいて農作業装置(7)の作動を停止し、農作業装置(7)の作動を停止してからの走行距離が所定の設定走行距離に到達するか又は農作業装置(7)の作動を停止してからの走行距離が所定の設定時間に到達すると自動的に農作業装置(7)の作動を開始させる制御装置を設けた農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−229447(P2011−229447A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102332(P2010−102332)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】