説明

農業用ポリエチレンの再生方法

【課題】ビニールハウス等の農業用ポリエチレンをポリエチレン袋として再生する農業用ポリエチレンの再生方法を提供する。
【解決手段】農業用ポリエチレン回収工程、農業用ポリエチレン破砕工程、農業用ポリエチレン洗浄工程、農業用ポリエチレン乾燥工程、ペレット成形工程、インフレーション成形工程、及び製袋加工工程からなる農業用ポリエチレンの再生方法、並びに前記農業用ポリエチレンの再生方法により製造したポリエチレン袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニールハウス等の農業用ポリエチレンをポリエチレン袋(ポリ袋)として再生する農業用ポリエチレンの再生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビニールハウスは、合成樹脂のフィルムで外壁を被覆した農業用の小屋である。被覆材料には、農業用ポリ塩化ビニルフィルム(農ビ)が使われることが多いが、耐候性に乏しく劣化すると非常に脆く破れやすいため、耐候性に優れる農業用ポリオレフィン系フィルム(農ポリ)なども使われている。
【0003】
ビニールハウス等の製造においては、石油等の価格が高騰すると、製造コストが増してしまうので、外国で製造して輸入することが多い。使用後にビニールハウスが不要になっても、リサイクル等はせずに燃やすなどして廃棄している。
【0004】
特許文献1に記載されているように、ポリエチレン製シートに付いた泥等を十分に洗浄できるポリエチレン製シートのリサイクルシステムの発明も公開されている。
【特許文献1】特開2002−052532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、使用済みのビニールハウスには、泥などのゴミが多く付着しており、十分に洗浄しても若干残ってしまい、再利用したとしても色が濁ってしまうため、リサイクルは進んでいない。
【0006】
そこで、本発明は、ビニールハウス等の農業用ポリエチレンをポリエチレン袋として再生する農業用ポリエチレンの再生方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、ポリエチレン製フィルムを回収する農業用ポリエチレン回収工程2、前工程で回収したポリエチレン製フィルムを20〜30cm角の大きさに破砕すると共に前記フィルムを一次洗浄する農業用ポリエチレン破砕工程3、前工程で破砕したポリエチレン製フィルムを二次洗浄すると共に2〜3cm角程度の大きさに破砕し、最終洗浄した後に脱水処理により含水率を10〜20%にする農業用ポリエチレン洗浄工程4、前工程で脱水処理されたポリエチレン製フィルムを80〜90℃の熱風で連続的に乾燥させて含水率を5〜8%まで落とす農業用ポリエチレン乾燥工程5、前工程で乾燥させたポリエチレン製フィルムに再生用ポリエチレンフィルムを20〜80%添加した材料を180〜200℃の温度で溶融させ、前記材料を直径2.5mmの多数の穴から押し出してカッターで厚さ2〜3mmにカットし、35〜50℃で冷却してペレット状の再生原料を製造するペレット成形工程6、前工程で製造した再生原料に他の再生原料、バージン原料、添加剤又は着色料を混合して180〜210℃の温度で溶融させ、前記再生原料の内側に空気を送り込んで膨らませ、外側から風冷して筒状のフィルムに成形するインフレーション成形工程7、及び前工程で成形した筒状フィルムを一定の間隔を空けて200〜220℃でシール加工し、カットしてポリエチレン袋を製造する製袋加工工程8からなることを特徴とする農業用ポリエチレンの再生方法1の構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以上の構成であるから以下の効果が得られる。第1に、使用済みのビニールハウス等をポリエチレン袋として再生できるので、新たにポリエチレン袋を製造したり外国から輸入するよりも、コストを抑えることができる。
【0009】
第2に、ビニールの洗浄後に、一旦ペレット状の再生原料にするので、用途に応じて再生原料を調整し、目的に合ったポリエチレン袋等を製造することができ、資源を有効にリサイクルすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、ビニールハウス等の農業用ポリエチレンをポリエチレン袋として再生するという目的を、ポリエチレン製フィルムを回収する農業用ポリエチレン回収工程、前工程で回収したポリエチレン製フィルムを20〜30cm角の大きさに破砕すると共に前記フィルムを一次洗浄する農業用ポリエチレン破砕工程、前工程で破砕したポリエチレン製フィルムを二次洗浄すると共に2〜3cm角程度の大きさに破砕し、最終洗浄した後に脱水処理により含水率を10〜20%にする農業用ポリエチレン洗浄工程、前工程で脱水処理されたポリエチレン製フィルムを80〜90℃の熱風で連続的に乾燥させて含水率を5〜8%まで落とす農業用ポリエチレン乾燥工程、前工程で乾燥させたポリエチレン製フィルムに再生用ポリエチレンフィルムを20〜80%添加した材料を180〜200℃の温度で溶融させ、前記材料を直径2.5mmの多数の穴から押し出してカッターで厚さ2〜3mmにカットし、35〜50℃で冷却してペレット状の再生原料を製造するペレット成形工程、前工程で製造した再生原料に他の再生原料、バージン原料、添加剤又は着色料を混合して180〜210℃の温度で溶融させ、前記再生原料の内側に空気を送り込んで膨らませ、外側から風冷して筒状のフィルムに成形するインフレーション成形工程、及び前工程で成形した筒状フィルムを一定の間隔を空けて200〜220℃でシール加工し、カットしてポリエチレン袋を製造する製袋加工工程からなることを特徴とする農業用ポリエチレンの再生方法により実現した。
【実施例1】
【0011】
以下に、添付図面に基づいて、本発明である農業用ポリエチレンの再生方法について詳細に説明する。図1は、本発明である農業用ポリエチレンの再生方法の流れを示すフローチャートである。
【0012】
農業用ポリエチレンの再生方法1は、農業用ポリエチレン回収2、農業用ポリエチレン破砕3、農業用ポリエチレン洗浄4、農業用ポリエチレン乾燥5、ペレット成形6、インフレーション成形7、及び製袋加工8の工程からなる。
【0013】
農業用ポリエチレン回収2の工程は、農業用ハウス等に使用されているポリエチレン製フィルムを農業協同組合(JA)等の団体や中間処理業者から回収する。尚、ポリ塩化ビニル製フィルムとは分別した状態で回収する。
【0014】
農業用ポリエチレン破砕3の工程は、前工程で回収したポリエチレン製フィルムを湿式洗浄破砕機に投入して約20〜30cm角程度の大きさに破砕すると共に、フィルムに付着した大まかな土や砂を循環水により一次洗浄する。
【0015】
農業用ポリエチレン洗浄4の工程は、まず前工程で破砕したポリエチレン製フィルムを洗浄破砕機に投入して表面に付着した小さな土や砂を二次洗浄すると共に、約2〜3cm角程度の大きさに破砕する。
【0016】
次に、ポリエチレン製フィルムを遠心分離装置に投入し、フィルムにこびり付いた汚れを最終洗浄した後、脱水処理により含水率を約10〜20%にする。洗浄処理が多いため今までにない綺麗な材料とすることができる。
【0017】
農業用ポリエチレン乾燥5の工程は、前工程で脱水処理されたポリエチレン製フィルムをスクリュー式乾燥装置に投入し、約80〜90℃の熱風で連続的に乾燥させて、含水率を約5〜8%まで落とす。
【0018】
スクリュー式乾燥装置を採用したことにより、外気温度や含水率の状況に関係なく、熱風の温度やスクリューの回転速度を調整することで、常に安定した乾燥処理を可能としている。
【0019】
尚、ポリエチレン製フィルムの含水率が多いと以後の工程で障害が生じる可能性があるため、含水率が8%以下になるように十分に乾燥させることが必要である。水分を含んでいても、乾燥させることでペレットへの成形が可能である。
【0020】
ペレット成形6の工程は、まず前工程で乾燥させたポリエチレン製フィルムをペレット製造装置に投入し、約180〜200℃の温度を加え溶融させる。尚、用途に応じて、一般回収した再生用ポリエチレンフィルムを約20〜80%添加することもできる。
【0021】
再生用ポリエチレンフィルムは、ポリエチレン製フィルムにわずかに混入した異物を薄めるために添加する。添加率を多くすれば、ポリエチレン袋を薄く成形しても、品質を維持することが可能である。
【0022】
次に、溶融したポリエチレン製フィルム等の材料を直径約2.5mmの多数の穴から押し出し、カッターで厚さ約2〜3mmにカットする。直後に、約35〜50℃程度の冷却用循環水で冷却し、直径3〜5mm程度のペレット状の再生原料にする。
【0023】
インフレーション成形7の工程は、まず前工程で生成した再生原料をインフレーション成形機に投入し、約180〜210℃の温度で溶融させる。尚、用途に応じて、他の再生原料、バージン原料、添加剤又は着色料を混合することもできる。
【0024】
添加剤は、ポリエチレン袋の質を調整するのに用いる。例えば、ポリエチレン袋の口を指で開きやすいようにスリップ性を良くする場合などである。
【0025】
次に、溶融した再生原料をインフレーション成形機の円形の隙間から押し出し、内側に空気を送り込んで膨らませる。外側からは風を吹き付けて完全に冷却し、筒状フィルムとする。筒状フィルムは、2本のロールにより畳まれ、巻取装置で巻き取る。
【0026】
製袋加工9の工程は、前工程で巻き取った筒状フィルムを製袋機にかけ、製品の長さごとに一定の間隔を空けて約200〜220℃でシール加工し、カットすることにより、ポリエチレン袋が製品として完成する。
【0027】
以上のように、本発明である農業用ポリエチレンの再生方法は、使用済みのビニールハウス等をポリエチレン袋として再生できるので、新たにポリエチレン袋を製造したり外国から輸入するよりも、コストを抑えることができる。
【0028】
また、ビニールの洗浄後に、一旦ペレット状の再生原料にするので、用途に応じて再生原料を調整し、目的に合ったポリエチレン袋等を製造することができ、資源を有効にリサイクルすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明である農業用ポリエチレンの再生方法の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0030】
1 農業用ポリエチレンの再生方法
2 農業用ポリエチレン回収
3 農業用ポリエチレン破砕
4 農業用ポリエチレン洗浄
5 農業用ポリエチレン乾燥
6 ペレット成形
7 インフレーション成形
8 製袋加工

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン製フィルムを回収する農業用ポリエチレン回収工程、前工程で回収したポリエチレン製フィルムを20〜30cm角の大きさに破砕すると共に前記フィルムを一次洗浄する農業用ポリエチレン破砕工程、前工程で破砕したポリエチレン製フィルムを二次洗浄すると共に2〜3cm角程度の大きさに破砕し、最終洗浄した後に脱水処理により含水率を10〜20%にする農業用ポリエチレン洗浄工程、前工程で脱水処理されたポリエチレン製フィルムを80〜90℃の熱風で連続的に乾燥させて含水率を5〜8%まで落とす農業用ポリエチレン乾燥工程、及び前工程で乾燥させたポリエチレン製フィルムに再生用ポリエチレンフィルムを20〜80%添加した材料を180〜200℃の温度で溶融させ、前記材料を直径2.5mmの多数の穴から押し出してカッターで厚さ2〜3mmにカットし、35〜50℃で冷却してペレット状の再生原料を製造するペレット成形工程からなることを特徴とする農業用ポリエチレンの再生方法。
【請求項2】
請求項1に記載の農業用ポリエチレンの再生方法により製造した再生原料。
【請求項3】
請求項2に記載の再生原料に他の再生原料、バージン原料、添加剤又は着色料を混合して180〜210℃の温度で溶融させ、前記再生原料の内側に空気を送り込んで膨らませ、外側から風冷して筒状のフィルムに成形するインフレーション成形工程、及び前工程で成形した筒状フィルムを一定の間隔を空けて200〜220℃でシール加工し、カットしてポリエチレン袋を製造する製袋加工工程からなることを特徴とする農業用ポリエチレンの再生方法。
【請求項4】
請求項3に記載の農業用ポリエチレンの再生方法により製造したポリエチレン袋。

【図1】
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【公開番号】特開2008−179075(P2008−179075A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14818(P2007−14818)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(302063271)株式会社岩井化成 (2)
【Fターム(参考)】