農用トラクタ
【課題】簡単な構成でキャビンを回転可能に支持することができ、しかもキャビンの防振性にも優れた農用トラクタを提供する。
【解決手段】トラクタ10は、オペレータが搭乗するためのキャビン16を備える。キャビン16の前部の2箇所、及び後部の2箇所と、車体本体と、の間にはそれぞれ防振接続構造40が配置される。また、防振接続構造40によって、キャビン16が車体本体に対して防振支持されている。そして、リア側防振接続構造40Rによる接続を外すことにより、前記車体本体からキャビン16の後部を分離しつつ、フロント側防振接続構造40Fを支点として、キャビン16を前方へ傾けるように回転させることが可能である。
【解決手段】トラクタ10は、オペレータが搭乗するためのキャビン16を備える。キャビン16の前部の2箇所、及び後部の2箇所と、車体本体と、の間にはそれぞれ防振接続構造40が配置される。また、防振接続構造40によって、キャビン16が車体本体に対して防振支持されている。そして、リア側防振接続構造40Rによる接続を外すことにより、前記車体本体からキャビン16の後部を分離しつつ、フロント側防振接続構造40Fを支点として、キャビン16を前方へ傾けるように回転させることが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農用トラクタに関する。詳細には、農用トラクタにおいて、機体フレームに対してキャビン又はフロアを支持するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
農用トラクタにおいては、キャビンの下に配置された油圧昇降機構等のメンテナンス性を向上させるため、当該キャビンを持ち上げて、前記油圧昇降機構等の上面側を開放できるようにした構成が知られている。
【0003】
例えば特許文献1は、左右の機体フレームにブレーキ操作軸を貫通させ、当該ブレーキ操作軸に対してキャビン前部を回動可能に支持した構成の作業車両を開示している。特許文献1の構成によれば、前記ブレーキ操作軸を中心にしてキャビンを回動させることにより、当該キャビンの後方を持ち上げて油圧昇降機構等の上部を開放することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−105538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1は、エンジン支持フレームに対して防振ゴムを介してエンジンを支持する構成を開示する。しかしながら、エンジンが防振支持されているといっても、エンジンからの振動がエンジン支持フレームに伝わることを完全に防止することは難しい。ここで、特許文献1の構成では、エンジン支持フレームに伝わったエンジンの振動は、機体フレーム及びブレーキ操作軸を介して、キャビンに伝達されることとなる。
【0006】
また、特許文献1は、ブレーキ操作軸によってキャビンを支持する構成であるため、当該キャビンを支持するための構成が複雑になるとともに、キャビンを機体フレームに組み付ける際の作業も複雑となっていた。
【0007】
従って、特許文献1の構成は、キャビンの防振、及び当該キャビンを支持する構成の単純化の観点から改良の余地があった。
【0008】
本願発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、簡単な構成でキャビンを回転可能に支持することができ、しかもキャビンの防振性にも優れた農用トラクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成の農用トラクタが提供される。即ち、この農用トラクタは、オペレータが搭乗するための搭乗部を備える。前記搭乗部の前部の2箇所、及び後部の1又は2箇所と、車体本体と、の間には防振接続構造がそれぞれ配置される。また、前記防振接続構造によって、前記搭乗部が前記車体本体に対して防振支持されている。そして、前記後部の防振接続構造による接続を外すことにより、前記車体本体から前記搭乗部の後部を分離しつつ、前記前部の防振接続構造を支点として、前記搭乗部を前方へ傾けるように回転させることが可能である。
【0011】
これにより、防振接続構造が、搭乗部を回転させる際の支点を兼ねるので、搭乗部を回転させるための特別な部材が不要で、安価かつシンプルに農用トラクタを構成することができる。また、回動軸によって搭乗部を軸支した従来の構成と比較して、搭乗部へ伝播するエンジンの振動を減少させることができる。
【0012】
上記の農用トラクタにおいては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記防振接続構造は、第1取付部と、第2取付部と、防振ゴムと、を備える。前記第1取付部は、前記搭乗部に一体的に固定される。前記第2取付部は、前記車体本体に一体的に固定されるとともに、前記第1取付部の位置と対応した位置に配置される。前記防振ゴムは、前記第1取付部と前記第2取付部の間に配置され、前記第1取付部及び前記第2取付部に対して直接又は間接的に当たるように構成される。また、前記第1取付部、前記第2取付部及び前記防振ゴムは、締結ボルトを差込可能に構成されている。前記防振接続構造は、通常時においては、前記締結ボルトを、前記第1取付部、前記防振ゴム及び前記第2取付部に差し込んだ後、前記締結ボルトに対して締結ナットを締結した構成とされる。一方、前記搭乗部を前方へ傾けるように回転させる場合においては、前記後部の防振接続構造の前記締結ナットを取り外すことにより、搭乗部の後部と前記車体本体側とを分離するとともに、前記前部の防振接続構造の前記締結ナットを取り外した後、当該前部の防振接続構造の防振ゴムを支点として、前記搭乗部を前方に回転させる。
【0013】
以上のように、防振接続構造は、第1取付部と第2取付部との間(即ち、搭乗部と、車体本体と、の間)に防振ゴムを配置した構成であるから、この防振接続構造によって搭乗部を防振支持することができる。また、締結ナットを外すという簡単な操作で、搭乗部と車体本体との接続を外すことができる。更に、防振ゴムの弾性変形を利用して、前部の防振接続構造を支点としつつ搭乗部を回転させることができる。これにより、搭乗部を軸支するための特別な構造が不要となり、搭乗部の下方の構成を露出させるための機構を簡単かつ安価に実現することができる。
【0014】
前記の農用トラクタにおいては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この農用トラクタは、前記搭乗部に配置された操向ハンドルと、前記車体本体側に配置されたステアリングバルブと、を備える。そして、前記操向ハンドルと前記ステアリングバルブとを連結するユニバーサルジョイントが、側面視において、前記前部の防振接続機構の近傍に位置している。
【0015】
これにより、前部の防振接続機構を支点にして搭乗部を回転させる際に、操向ハンドルとステアリングバルブとを連結している構成の取外し等を行う必要がない。従って、簡単な作業で搭乗部を回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るトラクタの全体的な構成を示した側面図。
【図2】トラクタから後輪を取り外した様子を示す側面図。
【図3】キャビン内部の様子を示す斜視図。
【図4】ボンネット内の様子を示す模式的な側面断面図。
【図5】ボンネットを開放した様子を示す模式的な側面断面図。
【図6】防振接続構造の近傍を拡大した側面一部断面図。
【図7】キャビンを後斜め下から見た斜視図。
【図8】リア側防振接続構造の断面図。
【図9】リア側防振接続構造の締結ナットを外した様子を示す断面図。
【図10】フロント側防振接続構造の断面図。
【図11】フロント側防振接続構造において、キャビン側前部取付ステーを傾けた様子を示す断面図。
【図12】キャビンを前方へ傾けるように回転させた様子を示す側面一部断面図。
【図13】ボンネットを前方に移動させた様子を示す模式的な側面断面図。
【図14】操向ハンドルの接続構造を示す側面断面図。
【図15】ブレーキペダル及び調整ノブの接続構造を示す側面断面図。
【図16】PTOレバーの接続構造を示す側面断面図。
【図17】副変速レバー及びデフロックペダルの接続構造を示す側面断面図。
【図18】変形例に係るトラクタの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係るトラクタ(農用トラクタ)10の側面図である。
【0018】
図1に示す農作業用の作業車両(作業機)としてのトラクタ10は、プラウ、ハロー、ローダ等の各種作業機を必要に応じて装着し、様々な種類の作業を行うことが可能に構成されている。
【0019】
トラクタ10は、左右一対で設けられたフロントフレーム11と、同じく左右一対で設けられて前記フロントフレーム11と連結されたシャーシフレーム12と、を備えている。また、このトラクタ10の前後には前輪14及び後輪15が配置されている。
【0020】
図2に、後輪15を取り外した状態のトラクタ10の側面図を示す。図2に示すように、トラクタ10の車体後部にはミッションケース13が配置されている。このミッションケース13の左右から車体幅方向に突出するようにして後車軸ケース17が設けられており、この左右の後車軸ケース17から後車軸18が突出している。
【0021】
ミッションケース13の上方には、油圧昇降装置19が設けられている。この油圧昇降装置19は、上下に回動可能なリフトアーム20を備えている。この油圧昇降装置19は、トラクタ10の車体後方に連結された作業機を昇降するためのものである。即ち、車体後方に連結された作業機に対してリフトアーム20を接続し、当該リフトアーム20を上下に回動することにより、前記作業機を昇降することができる。
【0022】
車体の後部であって、前記油圧昇降装置19の斜め上方には、オペレータが搭乗するためのキャビン(搭乗部)16が配置されている。このキャビン16の内部には、運転座席と、各種の操作を行うための操作部が配置されている。
【0023】
図3には、キャビン16内の様子が斜視図で示されている。図3に示すように、キャビン16内において、運転座席21の前方には、操向ハンドル22、ブレーキペダル23等が配置される。また、運転座席21の左右の適宜の位置には、副変速レバー24、PTOレバー25、デフロックペダル26等が配置されている。なお、運転座席21のすぐ下方には、油圧昇降装置19のスローリターンバルブを調整するための調整ノブ27が配置されている。
【0024】
また、このキャビン16は、図1に2点鎖線で示すように前方へ傾けるように回転させて、当該キャビン16の後下方を開放することが可能に構成されている(なお、キャビン16を回転させるための構成については後述する)。これにより、キャビン16の下方に位置する油圧昇降装置19等のメンテナンスを効率良く行うことができる。
【0025】
キャビン16の前方には、ボンネット30が配置されている。このボンネット30の内部の模式的な断面図を図4に示す。図4に示すように、ボンネット30内には、エンジン31、ラジエータ32、オイルクーラ33、キャビン16内のエアコン用のコンデンサ34、バッテリ35、エアフィルタ36等が配置されている。前記ラジエータ32、オイルクーラ33、コンデンサ34、バッテリ35、エアフィルタ36は、フロントフレーム11に対して直接又は間接に固定されている。
【0026】
また、ボンネット30内には、ブリッジフレーム52が設けられている。このブリッジフレームは、左右一対の脚部52aと、前記左右の脚部52aの上端部同士を接続する取付面とを有した構造である。前記脚部52aの下端部は、左右一対のシャーシフレーム12間に設けられた図略の連結部材の上部に固定されている。
【0027】
ブリッジフレーム52の前記取付面の上面には、左右一対のエンジンマウント53が取り付けられている。この左右のエンジンマウント53に対して、エンジン31の後部が防振支持されている。なお、エンジン31を安定的に支持するため、前記左右のエンジンマウント53は、可能な限り車体幅方向外側に寄せて配置されている。また、エンジン31の前部は、フロントフレーム11に固定された左右一対のエンジンマウント54に防振支持されている。
【0028】
また、ブリッジフレーム52の前記取付面上には、左右一対の固定側ボンネット支持フレーム55が固定されている。なお、前記のように、ブリッジフレーム52の前記取付面の車体幅方向外側寄りにはエンジンマウント53が配置されているので、左右の固定側ボンネット支持フレーム55は、エンジンマウント53よりも車体幅方向中央寄りの位置に固定されている。
【0029】
固定側ボンネット支持フレーム55には、回動側ボンネット支持フレーム56が支持されている。回動側ボンネット支持フレーム56は、ボンネット移動軸56aを有しており、固定側ボンネット支持フレーム55に対して、このボンネット移動軸56aを中心に回動可能に支持される。なお、固定側ボンネット支持フレーム55と回動側ボンネット支持フレーム56は、通常時は図略の連結ボルトによって連結されている。これにより、回動側ボンネット支持フレーム56がボンネット移動軸56aを中心に回動しないように固定される。
【0030】
また、回動側ボンネット支持フレーム56はボンネット開閉軸56bを有しており、このボンネット開閉軸56bを介してボンネットステー57が回動可能に取り付けられている。そして、このボンネットステー57にボンネット30が取り付けられている。この構成で、ボンネット開閉軸56bを中心として、ボンネット30を開閉することができる。なお、ボンネット30を開放した様子を図5に示す。
【0031】
また、固定側ボンネット支持フレーム55と、ファンシュラウド37との間は、連結部材58によって連結されている。連結部材58にはガスダンパ支持部58aが形成されており、このガスダンパ支持部58aとボンネットステー57との間にはガスダンパ59が配設されている。このガスダンパ59により、ボンネット30を開放したときに当該ボンネット30を開放状態で支持することができる。
【0032】
次に、キャビン16の防振支持構造について説明する。本実施形態のトラクタ10においては、図2に示すように、キャビン16が防振接続構造40によって支持されている。この防振接続構造40の近傍を拡大した一部断面図を図6に示す。
【0033】
図6に示すように、キャビン16の前部はフロント側防振接続構造40Fにより、後部はリア側防振接続構造40Rにより、それぞれ防振支持されている。
【0034】
リア側防振接続構造40Rの構成を簡単に説明する。キャビン16の後下部には、板状部材として構成されたキャビン側後部取付ステー(第1取付部)41が略水平に配置され、キャビン16のフレームに対して一体的に固定されている。一方、ミッションケース13から左右に突出する後車軸ケース17の上面であって、前記キャビン側後部取付ステー41と対応する位置に、車体側後部取付ステー(第2取付部)42が配置されている。この車体側後部取付ステー42は、後車軸ケース17に対して一体的に固定されている。また、この車体側後部取付ステー42は、キャビン側後部取付ステー41と略平行に対面するゴム当接面を有する。そして、キャビン側後部取付ステー41と車体側後部取付ステー42との間に、第1防振ゴム43が挟み込まれるようにして配置されている。
【0035】
次に、フロント側防振接続構造40Fの構成を簡単に説明する。キャビン16の前部であって、当該キャビン16の底面には、略水平なゴム当接面を有するキャビン側前部取付ステー(第1取付部)44が、当該キャビン16のフレームに対して一体的に固定されている。一方、シャーシフレーム12には、前記キャビン側前部取付ステー44と対応する位置に、車体側前部取付ステー(第2取付部)45が配置されている。この車体側前部取付ステー45は、シャーシフレーム12に対して一体的に固定されている。また、この車体側前部取付ステー45は、シャーシフレーム12から車体幅方向外側に突出するように設けられ、キャビン側前部取付ステー44の前記ゴム当接面と略平行に対面する取付面を有する。そして、キャビン側前部取付ステー44と車体側前部取付ステー45との間に、第1防振ゴム43が挟み込まれるようにして配置されている。
【0036】
以上のように、キャビン16は、車体本体(シャーシフレーム12及び後車軸ケース17)と当該キャビン16との間に第1防振ゴム43を挟み込んだ構成の防振接続構造40によって防振支持されている。従って、キャビン16に伝播する振動を良好に低減することができる。
【0037】
また、前記防振接続構造40は、キャビン16のフロント側に2箇所、リア側に2箇所設けられており、キャビン16は計4箇所で防振支持されている。この構成について、図7を参照して説明する。図7は、キャビン16を後斜め下から見た斜視図である。
【0038】
図7に示すように、キャビン側後部取付ステー41及びキャビン側前部取付ステー44は、左右で対になって設けられている(なお、図7には、第1防振ゴム43が取り付けられた状態のキャビン側前部取付ステー44が図示されている)。一方、図示は省略するが、車体本体側においても、車体側後部取付ステー42及び車体側前部取付ステー45は左右で対になって設けられている。
【0039】
そして、本実施形態では、キャビン16側の4つのステー(左右のキャビン側後部取付ステー41及び左右のキャビン側前部取付ステー44)と、車体本体側の4つのステー(左右の車体側後部取付ステー42及び左右の車体側前部取付ステー45)と、の間にそれぞれ第1防振ゴム43を挟み込んで4箇所で防振接続構造40を構成している。これにより、キャビン16を安定的に防振支持することができる。
【0040】
次に、防振接続構造40の構成について、更に詳細に説明する。最初に、リア側防振接続構造40Rについて説明する。図8には、当該リア側防振接続構造40Rの断面図が示されている。
【0041】
前述したように、リア側防振接続構造40Rは、車体側後部取付ステー42と、キャビン側後部取付ステー41と、第1防振ゴム43と、を備えている。また、図8に示すように、リア側防振接続構造40Rは、第1防振ゴム43及びキャビン側後部取付ステー41の間に配置される第1取付カバー47と、キャビン側後部取付ステー41を挟んで前記第1取付カバー47の反対側に配置される第2防振ゴム49と、第2防振ゴム49を挟んでキャビン側後部取付ステー41の反対側に配置される第2取付カバー48と、締結ボルト50及び締結ナット51を備えている。
【0042】
更に、取付ステー41,42と、防振ゴム43,49と、取付カバー47,48は、締結ボルト50を挿通可能な挿入孔を有している。そして、前記締結ボルト50を、車体側後部取付ステー42の側から、当該車体側後部取付ステー42、第1防振ゴム43、第1取付カバー47、キャビン側後部取付ステー41、第2防振ゴム49、第2取付カバー48、の順で挿通させた後、当該締結ボルト50に締結ナット51を締結することにより、リア側防振接続構造40Rが構成されている。
【0043】
なお、第1防振ゴム43は、締結ナット51の締込みシロを決めるための細長いパイプ43bと一体的に形成されている。パイプ43bは、締結ボルト50の挿入方向と同一の向きに配置されており、このパイプ43bの内側に、前記締結ボルト50が挿入される(即ち、パイプ43bの内周部が第1防振ゴム43の前記挿入孔を構成している)。
【0044】
以上のように構成された防振接続構造40において、第1防振ゴム43は、車体側後部取付ステー42に直接当接し、キャビン側後部取付ステー41には(第1取付カバー47を介して)間接的に当接している。即ち、キャビン16側と後車軸ケース17側とが直接接触することがないので、キャビン16に対して伝播する振動を低減することができる。
【0045】
また、キャビン側後部取付ステー41が、防振ゴム43,49によって挟み込まれるようにして固定されているので、キャビンに伝播する振動を良好に低減することができる。
【0046】
更に、図8に示すように、第1防振ゴム43は、第1取付カバー47及びキャビン側後部取付ステー41の前記挿入孔の内周面と、当該挿入孔に挿入される締結ボルト50の外周面と、の間に挿入される小径部43aを有している。これにより、締結ボルト50がキャビン側後部取付ステー41に接触することがないので、防振性が更に向上している。
【0047】
また、上記のように構成された防振接続構造40は、締結ナット51を外すことにより、キャビン16側と後車軸ケース17側との接続を簡単に解除することができる。具体的には、図9に示すように、締結ナット51を外し、更に第2取付カバー48と第2防振ゴム49とを取り除くことにより、キャビン側後部取付ステー41を車体側後部取付ステー42から遠ざかる方向(図面上方)に移動させることが可能となる。即ち、締結ナット51を外して接続を切り離すことにより、キャビン16の後部を後車軸ケース17から離間させることができる。
【0048】
次に、フロント側防振接続構造40Fについて説明する。図10には、当該フロント側防振接続構造40Fの断面図が示されている。
【0049】
フロント側防振接続構造40Fは、図10に示すように、リア側防振接続構造40Rを上下逆にした構造とほぼ同一であるから、対応する構成に同一の符号を付して詳細な説明は省略する。フロント側防振接続構造40Fにおいても、締結ナット51を外すことにより、第2取付カバー48及び第2防振ゴム49を取り外すことができる。
【0050】
そして、この締結ナット51を取り外した状態においては、図11に示すように、第1防振ゴム43の弾性変形を利用してキャビン側前部取付ステー44を傾けることができる。即ち、フロント側防振接続構造40Fの位置を支点として、キャビン16を前方に傾けることが可能となる。
【0051】
次に、本実施形態のトラクタ10において、キャビン16を前方へ回転させる操作について説明する。キャビンを回動させる際には、具体的には以下のような作業を行う。
【0052】
まず、4箇所の防振接続構造40の締結ナット51を取り外し、キャビン16と車体本体との接続状態を解除する。次に、メンテナンス作業用のクレーンによってキャビン16を吊り上げる等の手段により、キャビン16の後方を持ち上げる。このとき、キャビン側後部取付ステー41と車体側後部取付ステー42との接続状態は解除されているから、前述のように、キャビン16の後部を後車軸ケース17から離間させることができる。
【0053】
そして、前述のように、フロント側防振接続構造40Fの位置を支点として、キャビン16を前方に回転させることができる。このときの様子が図12に示されている。
【0054】
以上のように、締結ナット51を取り外すという簡単な作業によって、キャビン16と車体本体側との接続を解除し、キャビン16を傾けることが可能となっている。更に、回動軸等の特別な構成を設けなくても、第1防振ゴム43の弾性変形を利用してフロント側防振接続構造40Fを中心にキャビン16を回転させることができるため、構成の簡素化を実現できている。
【0055】
また、本実施形態のトラクタ10は、キャビン16を回転可能に支持するための軸を持たないため、キャビン16は、防振接続構造40を介してのみ車体本体に支持されている。従って、キャビンの回動軸を備えた従来のトラクタと比べ、エンジン31からキャビン16内に伝わる振動を大幅に減少させることが可能となっている。
【0056】
なお、キャビン16を単純に前方へ傾けた場合、図1の2点鎖線で示すように、キャビン16と、当該キャビン16の前方に位置しているボンネット30の後端と、が干渉してしまう。そこで本実施形態では、前記キャビン16を前方へ回転させる場合は、予めボンネット30を前方へ退避させることとしている。
【0057】
この作業について具体的に説明する。即ち、いったんボンネット30を図5の開放状態として、固定側ボンネット支持フレーム55と回動側ボンネット支持フレーム56とを連結している前記連結ボルトを取り外す。これにより、回動側ボンネット支持フレーム56が、ボンネット移動軸56aを中心にして回動可能となる。
【0058】
そして、この状態で回動側ボンネット支持フレーム56を前方に回動させることにより、ボンネット開閉軸56bが前方に移動する。このときの様子を、図13に示す。図13に示すように、上記の操作によりボンネット30全体が前方に移動するため、キャビン16を前方に回動させてもボンネット30との干渉を避けることができる。
【0059】
ところで、図3に示したように、キャビン16内には、操向ハンドル22、ブレーキペダル23、副変速レバー24、PTOレバー25、デフロックペダル26、調整ノブ27等が配置されている。これらは、シャフトやリンク機構等の機械的な接続構造を介して、車体本体側の各種構成と接続されている。
【0060】
ここで、キャビン16を前方へ傾けると、キャビン16と車体本体との位置関係が変化するから、前記機械的な接続構造の取外しが必要となる場合が考えられる。しかしながら、メンテナンス性を向上させるという観点からは、キャビン16を回動させる場合であっても、上記機械的な接続構造の取外し作業等が不要であること、あるいはそのような作業をできるだけ簡単に行えることが好ましい。
【0061】
そこで、本実施形態のトラクタ10は、以下のように構成されている。
【0062】
まず、操向ハンドル22の接続構造について、図14を参照して説明する。本実施形態のトラクタ10においては、パワーステアリング装置のステアリングバルブ60が車体本体側に設けられている。そして、キャビン16内に配置された操向ハンドル22の回転操作をキャビン16外のステアリングバルブ60に伝達するため、以下のような接続構造が備えられている。
【0063】
操向ハンドル22は、第1シャフト61に固定されている。また、本実施形態のトラクタ10は操向ハンドル22のチルト機構を備えており、操向ハンドル22及び第1シャフト61が、チルト支点を軸に上下に回動可能に構成されている。このチルト機構を実現するため、側面視で前記チルト支点の位置には第1ユニバーサルジョイント64が設けられている。そして、この第1ユニバーサルジョイント64を介して、第2シャフト62が第1シャフト61に連結されている。
【0064】
第2シャフト62には、スプライン嵌合部65を介して第3シャフト63が連結されている。この第3シャフトは、キャビン16の床に形成された挿通孔を通過し、キャビン16の底面側に延びている。そして、この第3シャフト63が、第2ユニバーサルジョイント66を介して、ステアリングバルブ60に連結されている。
【0065】
ここで、仮に、第2ユニバーサルジョイント66の位置が、側面視でキャビン16の回動支点から遠く離れて配置されている場合を考えると、キャビン16の回動に伴って第2ユニバーサルジョイント66の位置が大きく移動してしまう。従って、この場合は、第2ユニバーサルジョイント66とステアリングバルブ60との連結を予め解除しておかなれば、キャビン16を回動することができない。
【0066】
そこで、本実施形態のトラクタ10においては、前記第2ユニバーサルジョイント66は、側面視で、キャビン16の回動支点の位置(即ち、フロント側防振接続構造40Fの位置)の近傍に配置されている。これにより、操向ハンドル22からステアリングバルブ60までの連結構造を取り外すことなくキャビン16を回動することができる。
【0067】
なお、図14に示すように、側面視において、フロント側防振接続構造40Fの位置と、第2ユニバーサルジョイント66の位置とは、若干ズレた位置となっている。従って、キャビン16を回動させると、第3シャフト63のキャビン16内における位置が若干ズレてしまう。しかしながら、第3シャフト63は、第2シャフト62とスプライン嵌合部65を介して連結しているので、軸方向の位置ズレを吸収できる構造となっている。また、キャビン16の床に形成された挿通孔は、第3シャフト63の外径に対して余裕を持ったサイズに形成されている(なお、第3シャフト63と前記挿通孔との隙間を隠すため、当該挿通孔にはブーツ67が配置されている)。これにより、第3シャフト63の位置のズレをある程度許容できる構造となっている。
【0068】
次に、ブレーキペダル23の接続構造について、図15を参照して説明する。
【0069】
ブレーキペダル23は、ブレーキペダル軸69に対して回動可能に軸支されたブレーキアーム68の先端に固定されている。一方、ブレーキアーム68には、プレート部材70が固設されている。このプレート部材70には、ブレーキ縦リンク71の上端(一端)が連結されている。また、ブレーキ縦リンク71は、キャビン16の床面を貫通して下方へ延び、その下端(他端)がキャビン16の底面側に露出している。
【0070】
一方、キャビン16の底面には、ブレーキリンク支持部73がキャビン16に固定されている。ブレーキリンク支持部73には、ブレーキL字リンク72がブレーキ操作軸74を中心に回転可能に支持されている。前記ブレーキL字リンク72には、ブレーキ縦リンク71が連結されるとともに、ブレーキ横リンク75が連結されている。このブレーキ横リンク75は、ミッションケース13に備えられたブレーキ操作レバー76に連結されている。このブレーキ操作レバー76は、回転させることによりブレーキ機構を作動させることができるように構成されている。
【0071】
以上の構成で、オペレータがブレーキペダル23を踏込み操作すると、ブレーキ操作レバー76が回動して、ブレーキを作動させることができるようになっている。
【0072】
そして、本実施形態のトラクタ10では、側面視において、前記ブレーキ操作軸74の位置が、キャビン16の回動支点の位置(即ち、フロント側防振接続構造40Fの位置)と略一致するように構成されている。これにより、上記ブレーキペダル23とブレーキ操作レバー76とを結ぶリンク機構の取外し等を行わなくても、キャビン16の回動操作を行うことができる。
【0073】
次に、調整ノブ27の接続構造について、同じく図15を参照して説明する。
【0074】
この調整ノブ27は、油圧昇降装置19のノブ取付シャフト77に対して取外し可能に取り付けられている。また、図15に示すように、運転座席21のすぐ下側には、キャビン16の内部と外部とを仕切る底部カバー78が配置されている。この底部カバー78には、前記ノブ取付シャフト77に対応した位置に、ノブ取付孔が形成されている。調整ノブ27は、キャビン16の内部から、前記ノブ取付孔を介してノブ取付シャフト77に取り付けられる。
【0075】
そして、図15に示すように、本実施形態のトラクタ10においては、ノブ取付シャフト77は底部カバー78よりもキャビン16内部側に突出しないように構成されている。これにより、キャビン16の回動操作に先立って調整ノブ27をノブ取付シャフト77から取り外しておけば、キャビン16を回動させてもノブ取付シャフト77が底部カバー78に干渉してしまうことが無いため、そのままキャビン16を回動させることができる。
【0076】
次に、PTOレバー25の接続構造について、図16を参照して説明する。
【0077】
キャビン16の床面には、PTOレバー支持部79がキャビン16と一体的に形成されている。PTOレバー25は、このPTOレバー支持部79に対して、PTOレバー軸80を中心に上下に回動可能に軸支されている。底部カバー78には、上記PTOレバー25を通過させることが可能な縦溝83が形成されている。また、PTOレバー25にはPTOリンク81が連結されており、このPTOリンク81が、車体本体側に配置されたPTO操作レバー82に連結されている。このPTO操作レバー82は、回動させることにより、図示しないPTO出力軸の変速を行うことができるように構成されている。
【0078】
以上の構成で、PTOレバー25を上下に回動操作することにより、PTO操作レバー82を回動させて、PTO出力軸の変速を行うことができるようになっている。
【0079】
ところで、図16に示すように、上記の構成では、側面視において、キャビン16の回動支点の位置(即ち、フロント側防振接続構造40Fの位置)の近傍に、キャビン16側のリンクの回動支点(上記構成の場合PTOレバー軸80)が配置されていない。従って、ブレーキペダル23の場合におけるブレーキ操作軸74とは異なり、キャビン16を回動させるとPTOレバー軸80の位置が大きく移動してしまう。
【0080】
従って、キャビン16を回動させると、PTOレバー25がPTOリンク81に引っ張られることにより、下げ位置から上げ位置まで回動してしまう。
【0081】
そこで、本実施形態のトラクタ10においては、以下のように構成している。即ち、メンテナンス時(キャビン16の回動時)等においては、PTOレバー25を最下げ位置まで回動させておくものとする。そして、キャビン16を回動させた際にPTOリンク81に引っ張られることでPTOレバー25が大きく上昇したとしても、当該PTOレバー25が底部カバー78と干渉しないように、前記縦溝83の長さが十分長く設定されている。
【0082】
これにより、PTOレバー25とPTO操作レバー82との間のリンク機構を取り外さなくても、キャビン16を回動させることができる。
【0083】
次に、副変速レバー24及びデフロックペダル26の接続構造について、図17を参照して説明する。
【0084】
図17に示すように、副変速レバー24及びデフロックペダル26は、キャビン側に回動軸を持たず、回動軸が車体本体側に直接設けられている。そして、副変速レバー24及びデフロックペダル26は、キャビン16の床面(前記底部カバー78)に設けられた操作溝84,85を介して、キャビン16の内部に突出している。
【0085】
本実施形態のトラクタ10においては、キャビン16を前方に回動させたときに、副変速レバー24及びデフロックペダル26が前記操作溝84,85に接触しないように、当該操作溝84,85が形成されている(図17参照)。これにより、キャビン16を回動させることにより、副変速レバー24及びデフロックペダル26が自然にキャビン16の床面から抜けるので、副変速レバー24やデフロックペダル26を取り外さなくてもキャビン16を回動させることができる。
【0086】
以上で説明したように、本実施形態のトラクタ10は、オペレータが搭乗するためのキャビン16を備える。キャビン16の前部の2箇所、及び後部の2箇所と、車体本体と、の間にはそれぞれ防振接続構造40が配置される。また、防振接続構造40によって、キャビン16が車体本体に対して防振支持されている。そして、リア側防振接続構造40Rによる接続を外すことにより、前記車体本体からキャビン16の後部を分離しつつ、フロント側防振接続構造40Fを支点として、キャビン16を前方へ傾けるように回転させることが可能である。
【0087】
これにより、キャビン16を回転させる支点を防振接続構造40が兼ねるので、キャビン16を回転させるための特別な部材が不要で、安価かつシンプルにトラクタを構成することができる。また、回動軸によってキャビンを軸支した従来の構成と比較して、キャビン16へ伝播するエンジンの振動を減少させることができる。
【0088】
また、本実施形態のトラクタ10においては、以下のように構成されている。即ち、防振接続構造40は、第1取付部と、第2取付部と、第1防振ゴム43と、を備える。第1取付部は、キャビン16に一体的に固定される。第2取付部は、車体本体に一体的に固定されるとともに、第1取付部の位置と対応した位置に配置される。第1防振ゴム43は、第1取付部と第2取付部の間に配置され、第1取付部及び第2取付部に対して直接又は間接的に当たるように構成される。また、第1取付部、第2取付部及び第1防振ゴム43は、締結ボルト50を差込可能に構成されている。防振接続構造40は、通常時においては、締結ボルト50を、第1取付部、第1防振ゴム43及び第2取付部に差し込んだ後、締結ボルト50に対して締結ナット51を締結した構成とされる。一方、キャビン16を前方へ傾けるように回転させる場合においては、リア側防振接続構造40Rの締結ナット51を取り外すことにより、キャビン16後部と車体本体側とを分離するとともに、フロント側防振接続構造40Fの締結ナット51を取り外した後、当該フロント側防振接続構造40Fの防振ゴム43を支点として、キャビン16を前方に回転させる。
【0089】
以上のように、防振接続構造40は、第1取付部と第2取付部との間(即ち、キャビン16と、車体本体と、の間)に第1防振ゴム43を配置した構成であるから、この防振接続構造40によってキャビンを防振支持することができる。また、締結ナット51を外すという簡単な作業で、キャビン16と車体本体との接続を外すことができる。更に、第1防振ゴム43の弾性変形を利用して、フロント側防振接続構造40Fを支点としつつキャビン16を回転させることができる。これにより、キャビン16を軸支するための特別な構造が不要となり、キャビン16の下方にある油圧昇降装置19等を露出させるための機構を簡単かつ安価に実現することができる。
【0090】
また、本実施形態のトラクタ10は、以下のように構成されている。即ち、このトラクタ10は、キャビン16に配置された操向ハンドル22と、車体本体側に配置されたステアリングバルブ60と、を備える。そして、操向ハンドル22とステアリングバルブ60とを連結する第2ユニバーサルジョイント66が、側面視において、フロント側防振接続構造40Fの近傍に位置している。
【0091】
これにより、フロント側防振接続構造40Fを支点にしてキャビン16を回転させる際に、操向ハンドル22とステアリングバルブ60とを連結している構成の取外し等を行う必要がない。従って、簡単な作業でキャビン16を回転させることができる。
【0092】
以上に本発明の好適な実施の形態について説明したが、以上の構成は以下のように構成することができる。
【0093】
搭乗部としてキャビンを備えたトラクタ10について説明したが、フロアタイプのトラクタ(キャビンを備えないタイプのトラクタ)においては、フロアを搭乗部として把握することができる。即ち、フロアを防振接続構造40によって防振支持することにより、上記実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0094】
上記実施形態では、キャビン16をクレーンで吊り上げることでキャビン16を回動させる構成としたが、トラクタ10が備える油圧昇降装置19を用いてキャビン16を前方に回動させる構成としても良い。この変形例を図18に示す。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。図18のように、リフトアーム20の先端に押上げ棒90を接続し、この押上げ棒90をキャビン16の後底面に当接させる。この状態でリフトアーム20を上方に回動することにより、押上げ棒90がキャビン16の後部を押し上げ、キャビン16全体を前方に回動させることができる。
【0095】
本実施形態ではキャビン16を4点で防振支持する構成としたが、後方の防振支持は1点のみ(即ち3点での防振支持)としても良い。
【0096】
リア側の防振接続構造については、上記実施形態のように防振ゴムを取付ステーで挟み込んだ構成に限らず、例えば大ストロークの防振マウントやサスペンション機構等を用いることができる。
【符号の説明】
【0097】
10 トラクタ(農用トラクタ)
16 キャビン(搭乗部)
22 操向ハンドル
40 防振接続構造
41 キャビン側後部取付ステー(第1取付部)
42 車体側後部取付ステー(第2取付部)
43 第1防振ゴム(防振ゴム)
44 キャビン側前部取付ステー(第1取付部)
45 車体側前部取付ステー(第2取付部)
50 締結ボルト
51 締結ナット
60 ステアリングバルブ
61 第2ユニバーサルジョイント(ユニバーサルジョイント)
【技術分野】
【0001】
本発明は、農用トラクタに関する。詳細には、農用トラクタにおいて、機体フレームに対してキャビン又はフロアを支持するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
農用トラクタにおいては、キャビンの下に配置された油圧昇降機構等のメンテナンス性を向上させるため、当該キャビンを持ち上げて、前記油圧昇降機構等の上面側を開放できるようにした構成が知られている。
【0003】
例えば特許文献1は、左右の機体フレームにブレーキ操作軸を貫通させ、当該ブレーキ操作軸に対してキャビン前部を回動可能に支持した構成の作業車両を開示している。特許文献1の構成によれば、前記ブレーキ操作軸を中心にしてキャビンを回動させることにより、当該キャビンの後方を持ち上げて油圧昇降機構等の上部を開放することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−105538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1は、エンジン支持フレームに対して防振ゴムを介してエンジンを支持する構成を開示する。しかしながら、エンジンが防振支持されているといっても、エンジンからの振動がエンジン支持フレームに伝わることを完全に防止することは難しい。ここで、特許文献1の構成では、エンジン支持フレームに伝わったエンジンの振動は、機体フレーム及びブレーキ操作軸を介して、キャビンに伝達されることとなる。
【0006】
また、特許文献1は、ブレーキ操作軸によってキャビンを支持する構成であるため、当該キャビンを支持するための構成が複雑になるとともに、キャビンを機体フレームに組み付ける際の作業も複雑となっていた。
【0007】
従って、特許文献1の構成は、キャビンの防振、及び当該キャビンを支持する構成の単純化の観点から改良の余地があった。
【0008】
本願発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、簡単な構成でキャビンを回転可能に支持することができ、しかもキャビンの防振性にも優れた農用トラクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成の農用トラクタが提供される。即ち、この農用トラクタは、オペレータが搭乗するための搭乗部を備える。前記搭乗部の前部の2箇所、及び後部の1又は2箇所と、車体本体と、の間には防振接続構造がそれぞれ配置される。また、前記防振接続構造によって、前記搭乗部が前記車体本体に対して防振支持されている。そして、前記後部の防振接続構造による接続を外すことにより、前記車体本体から前記搭乗部の後部を分離しつつ、前記前部の防振接続構造を支点として、前記搭乗部を前方へ傾けるように回転させることが可能である。
【0011】
これにより、防振接続構造が、搭乗部を回転させる際の支点を兼ねるので、搭乗部を回転させるための特別な部材が不要で、安価かつシンプルに農用トラクタを構成することができる。また、回動軸によって搭乗部を軸支した従来の構成と比較して、搭乗部へ伝播するエンジンの振動を減少させることができる。
【0012】
上記の農用トラクタにおいては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記防振接続構造は、第1取付部と、第2取付部と、防振ゴムと、を備える。前記第1取付部は、前記搭乗部に一体的に固定される。前記第2取付部は、前記車体本体に一体的に固定されるとともに、前記第1取付部の位置と対応した位置に配置される。前記防振ゴムは、前記第1取付部と前記第2取付部の間に配置され、前記第1取付部及び前記第2取付部に対して直接又は間接的に当たるように構成される。また、前記第1取付部、前記第2取付部及び前記防振ゴムは、締結ボルトを差込可能に構成されている。前記防振接続構造は、通常時においては、前記締結ボルトを、前記第1取付部、前記防振ゴム及び前記第2取付部に差し込んだ後、前記締結ボルトに対して締結ナットを締結した構成とされる。一方、前記搭乗部を前方へ傾けるように回転させる場合においては、前記後部の防振接続構造の前記締結ナットを取り外すことにより、搭乗部の後部と前記車体本体側とを分離するとともに、前記前部の防振接続構造の前記締結ナットを取り外した後、当該前部の防振接続構造の防振ゴムを支点として、前記搭乗部を前方に回転させる。
【0013】
以上のように、防振接続構造は、第1取付部と第2取付部との間(即ち、搭乗部と、車体本体と、の間)に防振ゴムを配置した構成であるから、この防振接続構造によって搭乗部を防振支持することができる。また、締結ナットを外すという簡単な操作で、搭乗部と車体本体との接続を外すことができる。更に、防振ゴムの弾性変形を利用して、前部の防振接続構造を支点としつつ搭乗部を回転させることができる。これにより、搭乗部を軸支するための特別な構造が不要となり、搭乗部の下方の構成を露出させるための機構を簡単かつ安価に実現することができる。
【0014】
前記の農用トラクタにおいては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この農用トラクタは、前記搭乗部に配置された操向ハンドルと、前記車体本体側に配置されたステアリングバルブと、を備える。そして、前記操向ハンドルと前記ステアリングバルブとを連結するユニバーサルジョイントが、側面視において、前記前部の防振接続機構の近傍に位置している。
【0015】
これにより、前部の防振接続機構を支点にして搭乗部を回転させる際に、操向ハンドルとステアリングバルブとを連結している構成の取外し等を行う必要がない。従って、簡単な作業で搭乗部を回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るトラクタの全体的な構成を示した側面図。
【図2】トラクタから後輪を取り外した様子を示す側面図。
【図3】キャビン内部の様子を示す斜視図。
【図4】ボンネット内の様子を示す模式的な側面断面図。
【図5】ボンネットを開放した様子を示す模式的な側面断面図。
【図6】防振接続構造の近傍を拡大した側面一部断面図。
【図7】キャビンを後斜め下から見た斜視図。
【図8】リア側防振接続構造の断面図。
【図9】リア側防振接続構造の締結ナットを外した様子を示す断面図。
【図10】フロント側防振接続構造の断面図。
【図11】フロント側防振接続構造において、キャビン側前部取付ステーを傾けた様子を示す断面図。
【図12】キャビンを前方へ傾けるように回転させた様子を示す側面一部断面図。
【図13】ボンネットを前方に移動させた様子を示す模式的な側面断面図。
【図14】操向ハンドルの接続構造を示す側面断面図。
【図15】ブレーキペダル及び調整ノブの接続構造を示す側面断面図。
【図16】PTOレバーの接続構造を示す側面断面図。
【図17】副変速レバー及びデフロックペダルの接続構造を示す側面断面図。
【図18】変形例に係るトラクタの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係るトラクタ(農用トラクタ)10の側面図である。
【0018】
図1に示す農作業用の作業車両(作業機)としてのトラクタ10は、プラウ、ハロー、ローダ等の各種作業機を必要に応じて装着し、様々な種類の作業を行うことが可能に構成されている。
【0019】
トラクタ10は、左右一対で設けられたフロントフレーム11と、同じく左右一対で設けられて前記フロントフレーム11と連結されたシャーシフレーム12と、を備えている。また、このトラクタ10の前後には前輪14及び後輪15が配置されている。
【0020】
図2に、後輪15を取り外した状態のトラクタ10の側面図を示す。図2に示すように、トラクタ10の車体後部にはミッションケース13が配置されている。このミッションケース13の左右から車体幅方向に突出するようにして後車軸ケース17が設けられており、この左右の後車軸ケース17から後車軸18が突出している。
【0021】
ミッションケース13の上方には、油圧昇降装置19が設けられている。この油圧昇降装置19は、上下に回動可能なリフトアーム20を備えている。この油圧昇降装置19は、トラクタ10の車体後方に連結された作業機を昇降するためのものである。即ち、車体後方に連結された作業機に対してリフトアーム20を接続し、当該リフトアーム20を上下に回動することにより、前記作業機を昇降することができる。
【0022】
車体の後部であって、前記油圧昇降装置19の斜め上方には、オペレータが搭乗するためのキャビン(搭乗部)16が配置されている。このキャビン16の内部には、運転座席と、各種の操作を行うための操作部が配置されている。
【0023】
図3には、キャビン16内の様子が斜視図で示されている。図3に示すように、キャビン16内において、運転座席21の前方には、操向ハンドル22、ブレーキペダル23等が配置される。また、運転座席21の左右の適宜の位置には、副変速レバー24、PTOレバー25、デフロックペダル26等が配置されている。なお、運転座席21のすぐ下方には、油圧昇降装置19のスローリターンバルブを調整するための調整ノブ27が配置されている。
【0024】
また、このキャビン16は、図1に2点鎖線で示すように前方へ傾けるように回転させて、当該キャビン16の後下方を開放することが可能に構成されている(なお、キャビン16を回転させるための構成については後述する)。これにより、キャビン16の下方に位置する油圧昇降装置19等のメンテナンスを効率良く行うことができる。
【0025】
キャビン16の前方には、ボンネット30が配置されている。このボンネット30の内部の模式的な断面図を図4に示す。図4に示すように、ボンネット30内には、エンジン31、ラジエータ32、オイルクーラ33、キャビン16内のエアコン用のコンデンサ34、バッテリ35、エアフィルタ36等が配置されている。前記ラジエータ32、オイルクーラ33、コンデンサ34、バッテリ35、エアフィルタ36は、フロントフレーム11に対して直接又は間接に固定されている。
【0026】
また、ボンネット30内には、ブリッジフレーム52が設けられている。このブリッジフレームは、左右一対の脚部52aと、前記左右の脚部52aの上端部同士を接続する取付面とを有した構造である。前記脚部52aの下端部は、左右一対のシャーシフレーム12間に設けられた図略の連結部材の上部に固定されている。
【0027】
ブリッジフレーム52の前記取付面の上面には、左右一対のエンジンマウント53が取り付けられている。この左右のエンジンマウント53に対して、エンジン31の後部が防振支持されている。なお、エンジン31を安定的に支持するため、前記左右のエンジンマウント53は、可能な限り車体幅方向外側に寄せて配置されている。また、エンジン31の前部は、フロントフレーム11に固定された左右一対のエンジンマウント54に防振支持されている。
【0028】
また、ブリッジフレーム52の前記取付面上には、左右一対の固定側ボンネット支持フレーム55が固定されている。なお、前記のように、ブリッジフレーム52の前記取付面の車体幅方向外側寄りにはエンジンマウント53が配置されているので、左右の固定側ボンネット支持フレーム55は、エンジンマウント53よりも車体幅方向中央寄りの位置に固定されている。
【0029】
固定側ボンネット支持フレーム55には、回動側ボンネット支持フレーム56が支持されている。回動側ボンネット支持フレーム56は、ボンネット移動軸56aを有しており、固定側ボンネット支持フレーム55に対して、このボンネット移動軸56aを中心に回動可能に支持される。なお、固定側ボンネット支持フレーム55と回動側ボンネット支持フレーム56は、通常時は図略の連結ボルトによって連結されている。これにより、回動側ボンネット支持フレーム56がボンネット移動軸56aを中心に回動しないように固定される。
【0030】
また、回動側ボンネット支持フレーム56はボンネット開閉軸56bを有しており、このボンネット開閉軸56bを介してボンネットステー57が回動可能に取り付けられている。そして、このボンネットステー57にボンネット30が取り付けられている。この構成で、ボンネット開閉軸56bを中心として、ボンネット30を開閉することができる。なお、ボンネット30を開放した様子を図5に示す。
【0031】
また、固定側ボンネット支持フレーム55と、ファンシュラウド37との間は、連結部材58によって連結されている。連結部材58にはガスダンパ支持部58aが形成されており、このガスダンパ支持部58aとボンネットステー57との間にはガスダンパ59が配設されている。このガスダンパ59により、ボンネット30を開放したときに当該ボンネット30を開放状態で支持することができる。
【0032】
次に、キャビン16の防振支持構造について説明する。本実施形態のトラクタ10においては、図2に示すように、キャビン16が防振接続構造40によって支持されている。この防振接続構造40の近傍を拡大した一部断面図を図6に示す。
【0033】
図6に示すように、キャビン16の前部はフロント側防振接続構造40Fにより、後部はリア側防振接続構造40Rにより、それぞれ防振支持されている。
【0034】
リア側防振接続構造40Rの構成を簡単に説明する。キャビン16の後下部には、板状部材として構成されたキャビン側後部取付ステー(第1取付部)41が略水平に配置され、キャビン16のフレームに対して一体的に固定されている。一方、ミッションケース13から左右に突出する後車軸ケース17の上面であって、前記キャビン側後部取付ステー41と対応する位置に、車体側後部取付ステー(第2取付部)42が配置されている。この車体側後部取付ステー42は、後車軸ケース17に対して一体的に固定されている。また、この車体側後部取付ステー42は、キャビン側後部取付ステー41と略平行に対面するゴム当接面を有する。そして、キャビン側後部取付ステー41と車体側後部取付ステー42との間に、第1防振ゴム43が挟み込まれるようにして配置されている。
【0035】
次に、フロント側防振接続構造40Fの構成を簡単に説明する。キャビン16の前部であって、当該キャビン16の底面には、略水平なゴム当接面を有するキャビン側前部取付ステー(第1取付部)44が、当該キャビン16のフレームに対して一体的に固定されている。一方、シャーシフレーム12には、前記キャビン側前部取付ステー44と対応する位置に、車体側前部取付ステー(第2取付部)45が配置されている。この車体側前部取付ステー45は、シャーシフレーム12に対して一体的に固定されている。また、この車体側前部取付ステー45は、シャーシフレーム12から車体幅方向外側に突出するように設けられ、キャビン側前部取付ステー44の前記ゴム当接面と略平行に対面する取付面を有する。そして、キャビン側前部取付ステー44と車体側前部取付ステー45との間に、第1防振ゴム43が挟み込まれるようにして配置されている。
【0036】
以上のように、キャビン16は、車体本体(シャーシフレーム12及び後車軸ケース17)と当該キャビン16との間に第1防振ゴム43を挟み込んだ構成の防振接続構造40によって防振支持されている。従って、キャビン16に伝播する振動を良好に低減することができる。
【0037】
また、前記防振接続構造40は、キャビン16のフロント側に2箇所、リア側に2箇所設けられており、キャビン16は計4箇所で防振支持されている。この構成について、図7を参照して説明する。図7は、キャビン16を後斜め下から見た斜視図である。
【0038】
図7に示すように、キャビン側後部取付ステー41及びキャビン側前部取付ステー44は、左右で対になって設けられている(なお、図7には、第1防振ゴム43が取り付けられた状態のキャビン側前部取付ステー44が図示されている)。一方、図示は省略するが、車体本体側においても、車体側後部取付ステー42及び車体側前部取付ステー45は左右で対になって設けられている。
【0039】
そして、本実施形態では、キャビン16側の4つのステー(左右のキャビン側後部取付ステー41及び左右のキャビン側前部取付ステー44)と、車体本体側の4つのステー(左右の車体側後部取付ステー42及び左右の車体側前部取付ステー45)と、の間にそれぞれ第1防振ゴム43を挟み込んで4箇所で防振接続構造40を構成している。これにより、キャビン16を安定的に防振支持することができる。
【0040】
次に、防振接続構造40の構成について、更に詳細に説明する。最初に、リア側防振接続構造40Rについて説明する。図8には、当該リア側防振接続構造40Rの断面図が示されている。
【0041】
前述したように、リア側防振接続構造40Rは、車体側後部取付ステー42と、キャビン側後部取付ステー41と、第1防振ゴム43と、を備えている。また、図8に示すように、リア側防振接続構造40Rは、第1防振ゴム43及びキャビン側後部取付ステー41の間に配置される第1取付カバー47と、キャビン側後部取付ステー41を挟んで前記第1取付カバー47の反対側に配置される第2防振ゴム49と、第2防振ゴム49を挟んでキャビン側後部取付ステー41の反対側に配置される第2取付カバー48と、締結ボルト50及び締結ナット51を備えている。
【0042】
更に、取付ステー41,42と、防振ゴム43,49と、取付カバー47,48は、締結ボルト50を挿通可能な挿入孔を有している。そして、前記締結ボルト50を、車体側後部取付ステー42の側から、当該車体側後部取付ステー42、第1防振ゴム43、第1取付カバー47、キャビン側後部取付ステー41、第2防振ゴム49、第2取付カバー48、の順で挿通させた後、当該締結ボルト50に締結ナット51を締結することにより、リア側防振接続構造40Rが構成されている。
【0043】
なお、第1防振ゴム43は、締結ナット51の締込みシロを決めるための細長いパイプ43bと一体的に形成されている。パイプ43bは、締結ボルト50の挿入方向と同一の向きに配置されており、このパイプ43bの内側に、前記締結ボルト50が挿入される(即ち、パイプ43bの内周部が第1防振ゴム43の前記挿入孔を構成している)。
【0044】
以上のように構成された防振接続構造40において、第1防振ゴム43は、車体側後部取付ステー42に直接当接し、キャビン側後部取付ステー41には(第1取付カバー47を介して)間接的に当接している。即ち、キャビン16側と後車軸ケース17側とが直接接触することがないので、キャビン16に対して伝播する振動を低減することができる。
【0045】
また、キャビン側後部取付ステー41が、防振ゴム43,49によって挟み込まれるようにして固定されているので、キャビンに伝播する振動を良好に低減することができる。
【0046】
更に、図8に示すように、第1防振ゴム43は、第1取付カバー47及びキャビン側後部取付ステー41の前記挿入孔の内周面と、当該挿入孔に挿入される締結ボルト50の外周面と、の間に挿入される小径部43aを有している。これにより、締結ボルト50がキャビン側後部取付ステー41に接触することがないので、防振性が更に向上している。
【0047】
また、上記のように構成された防振接続構造40は、締結ナット51を外すことにより、キャビン16側と後車軸ケース17側との接続を簡単に解除することができる。具体的には、図9に示すように、締結ナット51を外し、更に第2取付カバー48と第2防振ゴム49とを取り除くことにより、キャビン側後部取付ステー41を車体側後部取付ステー42から遠ざかる方向(図面上方)に移動させることが可能となる。即ち、締結ナット51を外して接続を切り離すことにより、キャビン16の後部を後車軸ケース17から離間させることができる。
【0048】
次に、フロント側防振接続構造40Fについて説明する。図10には、当該フロント側防振接続構造40Fの断面図が示されている。
【0049】
フロント側防振接続構造40Fは、図10に示すように、リア側防振接続構造40Rを上下逆にした構造とほぼ同一であるから、対応する構成に同一の符号を付して詳細な説明は省略する。フロント側防振接続構造40Fにおいても、締結ナット51を外すことにより、第2取付カバー48及び第2防振ゴム49を取り外すことができる。
【0050】
そして、この締結ナット51を取り外した状態においては、図11に示すように、第1防振ゴム43の弾性変形を利用してキャビン側前部取付ステー44を傾けることができる。即ち、フロント側防振接続構造40Fの位置を支点として、キャビン16を前方に傾けることが可能となる。
【0051】
次に、本実施形態のトラクタ10において、キャビン16を前方へ回転させる操作について説明する。キャビンを回動させる際には、具体的には以下のような作業を行う。
【0052】
まず、4箇所の防振接続構造40の締結ナット51を取り外し、キャビン16と車体本体との接続状態を解除する。次に、メンテナンス作業用のクレーンによってキャビン16を吊り上げる等の手段により、キャビン16の後方を持ち上げる。このとき、キャビン側後部取付ステー41と車体側後部取付ステー42との接続状態は解除されているから、前述のように、キャビン16の後部を後車軸ケース17から離間させることができる。
【0053】
そして、前述のように、フロント側防振接続構造40Fの位置を支点として、キャビン16を前方に回転させることができる。このときの様子が図12に示されている。
【0054】
以上のように、締結ナット51を取り外すという簡単な作業によって、キャビン16と車体本体側との接続を解除し、キャビン16を傾けることが可能となっている。更に、回動軸等の特別な構成を設けなくても、第1防振ゴム43の弾性変形を利用してフロント側防振接続構造40Fを中心にキャビン16を回転させることができるため、構成の簡素化を実現できている。
【0055】
また、本実施形態のトラクタ10は、キャビン16を回転可能に支持するための軸を持たないため、キャビン16は、防振接続構造40を介してのみ車体本体に支持されている。従って、キャビンの回動軸を備えた従来のトラクタと比べ、エンジン31からキャビン16内に伝わる振動を大幅に減少させることが可能となっている。
【0056】
なお、キャビン16を単純に前方へ傾けた場合、図1の2点鎖線で示すように、キャビン16と、当該キャビン16の前方に位置しているボンネット30の後端と、が干渉してしまう。そこで本実施形態では、前記キャビン16を前方へ回転させる場合は、予めボンネット30を前方へ退避させることとしている。
【0057】
この作業について具体的に説明する。即ち、いったんボンネット30を図5の開放状態として、固定側ボンネット支持フレーム55と回動側ボンネット支持フレーム56とを連結している前記連結ボルトを取り外す。これにより、回動側ボンネット支持フレーム56が、ボンネット移動軸56aを中心にして回動可能となる。
【0058】
そして、この状態で回動側ボンネット支持フレーム56を前方に回動させることにより、ボンネット開閉軸56bが前方に移動する。このときの様子を、図13に示す。図13に示すように、上記の操作によりボンネット30全体が前方に移動するため、キャビン16を前方に回動させてもボンネット30との干渉を避けることができる。
【0059】
ところで、図3に示したように、キャビン16内には、操向ハンドル22、ブレーキペダル23、副変速レバー24、PTOレバー25、デフロックペダル26、調整ノブ27等が配置されている。これらは、シャフトやリンク機構等の機械的な接続構造を介して、車体本体側の各種構成と接続されている。
【0060】
ここで、キャビン16を前方へ傾けると、キャビン16と車体本体との位置関係が変化するから、前記機械的な接続構造の取外しが必要となる場合が考えられる。しかしながら、メンテナンス性を向上させるという観点からは、キャビン16を回動させる場合であっても、上記機械的な接続構造の取外し作業等が不要であること、あるいはそのような作業をできるだけ簡単に行えることが好ましい。
【0061】
そこで、本実施形態のトラクタ10は、以下のように構成されている。
【0062】
まず、操向ハンドル22の接続構造について、図14を参照して説明する。本実施形態のトラクタ10においては、パワーステアリング装置のステアリングバルブ60が車体本体側に設けられている。そして、キャビン16内に配置された操向ハンドル22の回転操作をキャビン16外のステアリングバルブ60に伝達するため、以下のような接続構造が備えられている。
【0063】
操向ハンドル22は、第1シャフト61に固定されている。また、本実施形態のトラクタ10は操向ハンドル22のチルト機構を備えており、操向ハンドル22及び第1シャフト61が、チルト支点を軸に上下に回動可能に構成されている。このチルト機構を実現するため、側面視で前記チルト支点の位置には第1ユニバーサルジョイント64が設けられている。そして、この第1ユニバーサルジョイント64を介して、第2シャフト62が第1シャフト61に連結されている。
【0064】
第2シャフト62には、スプライン嵌合部65を介して第3シャフト63が連結されている。この第3シャフトは、キャビン16の床に形成された挿通孔を通過し、キャビン16の底面側に延びている。そして、この第3シャフト63が、第2ユニバーサルジョイント66を介して、ステアリングバルブ60に連結されている。
【0065】
ここで、仮に、第2ユニバーサルジョイント66の位置が、側面視でキャビン16の回動支点から遠く離れて配置されている場合を考えると、キャビン16の回動に伴って第2ユニバーサルジョイント66の位置が大きく移動してしまう。従って、この場合は、第2ユニバーサルジョイント66とステアリングバルブ60との連結を予め解除しておかなれば、キャビン16を回動することができない。
【0066】
そこで、本実施形態のトラクタ10においては、前記第2ユニバーサルジョイント66は、側面視で、キャビン16の回動支点の位置(即ち、フロント側防振接続構造40Fの位置)の近傍に配置されている。これにより、操向ハンドル22からステアリングバルブ60までの連結構造を取り外すことなくキャビン16を回動することができる。
【0067】
なお、図14に示すように、側面視において、フロント側防振接続構造40Fの位置と、第2ユニバーサルジョイント66の位置とは、若干ズレた位置となっている。従って、キャビン16を回動させると、第3シャフト63のキャビン16内における位置が若干ズレてしまう。しかしながら、第3シャフト63は、第2シャフト62とスプライン嵌合部65を介して連結しているので、軸方向の位置ズレを吸収できる構造となっている。また、キャビン16の床に形成された挿通孔は、第3シャフト63の外径に対して余裕を持ったサイズに形成されている(なお、第3シャフト63と前記挿通孔との隙間を隠すため、当該挿通孔にはブーツ67が配置されている)。これにより、第3シャフト63の位置のズレをある程度許容できる構造となっている。
【0068】
次に、ブレーキペダル23の接続構造について、図15を参照して説明する。
【0069】
ブレーキペダル23は、ブレーキペダル軸69に対して回動可能に軸支されたブレーキアーム68の先端に固定されている。一方、ブレーキアーム68には、プレート部材70が固設されている。このプレート部材70には、ブレーキ縦リンク71の上端(一端)が連結されている。また、ブレーキ縦リンク71は、キャビン16の床面を貫通して下方へ延び、その下端(他端)がキャビン16の底面側に露出している。
【0070】
一方、キャビン16の底面には、ブレーキリンク支持部73がキャビン16に固定されている。ブレーキリンク支持部73には、ブレーキL字リンク72がブレーキ操作軸74を中心に回転可能に支持されている。前記ブレーキL字リンク72には、ブレーキ縦リンク71が連結されるとともに、ブレーキ横リンク75が連結されている。このブレーキ横リンク75は、ミッションケース13に備えられたブレーキ操作レバー76に連結されている。このブレーキ操作レバー76は、回転させることによりブレーキ機構を作動させることができるように構成されている。
【0071】
以上の構成で、オペレータがブレーキペダル23を踏込み操作すると、ブレーキ操作レバー76が回動して、ブレーキを作動させることができるようになっている。
【0072】
そして、本実施形態のトラクタ10では、側面視において、前記ブレーキ操作軸74の位置が、キャビン16の回動支点の位置(即ち、フロント側防振接続構造40Fの位置)と略一致するように構成されている。これにより、上記ブレーキペダル23とブレーキ操作レバー76とを結ぶリンク機構の取外し等を行わなくても、キャビン16の回動操作を行うことができる。
【0073】
次に、調整ノブ27の接続構造について、同じく図15を参照して説明する。
【0074】
この調整ノブ27は、油圧昇降装置19のノブ取付シャフト77に対して取外し可能に取り付けられている。また、図15に示すように、運転座席21のすぐ下側には、キャビン16の内部と外部とを仕切る底部カバー78が配置されている。この底部カバー78には、前記ノブ取付シャフト77に対応した位置に、ノブ取付孔が形成されている。調整ノブ27は、キャビン16の内部から、前記ノブ取付孔を介してノブ取付シャフト77に取り付けられる。
【0075】
そして、図15に示すように、本実施形態のトラクタ10においては、ノブ取付シャフト77は底部カバー78よりもキャビン16内部側に突出しないように構成されている。これにより、キャビン16の回動操作に先立って調整ノブ27をノブ取付シャフト77から取り外しておけば、キャビン16を回動させてもノブ取付シャフト77が底部カバー78に干渉してしまうことが無いため、そのままキャビン16を回動させることができる。
【0076】
次に、PTOレバー25の接続構造について、図16を参照して説明する。
【0077】
キャビン16の床面には、PTOレバー支持部79がキャビン16と一体的に形成されている。PTOレバー25は、このPTOレバー支持部79に対して、PTOレバー軸80を中心に上下に回動可能に軸支されている。底部カバー78には、上記PTOレバー25を通過させることが可能な縦溝83が形成されている。また、PTOレバー25にはPTOリンク81が連結されており、このPTOリンク81が、車体本体側に配置されたPTO操作レバー82に連結されている。このPTO操作レバー82は、回動させることにより、図示しないPTO出力軸の変速を行うことができるように構成されている。
【0078】
以上の構成で、PTOレバー25を上下に回動操作することにより、PTO操作レバー82を回動させて、PTO出力軸の変速を行うことができるようになっている。
【0079】
ところで、図16に示すように、上記の構成では、側面視において、キャビン16の回動支点の位置(即ち、フロント側防振接続構造40Fの位置)の近傍に、キャビン16側のリンクの回動支点(上記構成の場合PTOレバー軸80)が配置されていない。従って、ブレーキペダル23の場合におけるブレーキ操作軸74とは異なり、キャビン16を回動させるとPTOレバー軸80の位置が大きく移動してしまう。
【0080】
従って、キャビン16を回動させると、PTOレバー25がPTOリンク81に引っ張られることにより、下げ位置から上げ位置まで回動してしまう。
【0081】
そこで、本実施形態のトラクタ10においては、以下のように構成している。即ち、メンテナンス時(キャビン16の回動時)等においては、PTOレバー25を最下げ位置まで回動させておくものとする。そして、キャビン16を回動させた際にPTOリンク81に引っ張られることでPTOレバー25が大きく上昇したとしても、当該PTOレバー25が底部カバー78と干渉しないように、前記縦溝83の長さが十分長く設定されている。
【0082】
これにより、PTOレバー25とPTO操作レバー82との間のリンク機構を取り外さなくても、キャビン16を回動させることができる。
【0083】
次に、副変速レバー24及びデフロックペダル26の接続構造について、図17を参照して説明する。
【0084】
図17に示すように、副変速レバー24及びデフロックペダル26は、キャビン側に回動軸を持たず、回動軸が車体本体側に直接設けられている。そして、副変速レバー24及びデフロックペダル26は、キャビン16の床面(前記底部カバー78)に設けられた操作溝84,85を介して、キャビン16の内部に突出している。
【0085】
本実施形態のトラクタ10においては、キャビン16を前方に回動させたときに、副変速レバー24及びデフロックペダル26が前記操作溝84,85に接触しないように、当該操作溝84,85が形成されている(図17参照)。これにより、キャビン16を回動させることにより、副変速レバー24及びデフロックペダル26が自然にキャビン16の床面から抜けるので、副変速レバー24やデフロックペダル26を取り外さなくてもキャビン16を回動させることができる。
【0086】
以上で説明したように、本実施形態のトラクタ10は、オペレータが搭乗するためのキャビン16を備える。キャビン16の前部の2箇所、及び後部の2箇所と、車体本体と、の間にはそれぞれ防振接続構造40が配置される。また、防振接続構造40によって、キャビン16が車体本体に対して防振支持されている。そして、リア側防振接続構造40Rによる接続を外すことにより、前記車体本体からキャビン16の後部を分離しつつ、フロント側防振接続構造40Fを支点として、キャビン16を前方へ傾けるように回転させることが可能である。
【0087】
これにより、キャビン16を回転させる支点を防振接続構造40が兼ねるので、キャビン16を回転させるための特別な部材が不要で、安価かつシンプルにトラクタを構成することができる。また、回動軸によってキャビンを軸支した従来の構成と比較して、キャビン16へ伝播するエンジンの振動を減少させることができる。
【0088】
また、本実施形態のトラクタ10においては、以下のように構成されている。即ち、防振接続構造40は、第1取付部と、第2取付部と、第1防振ゴム43と、を備える。第1取付部は、キャビン16に一体的に固定される。第2取付部は、車体本体に一体的に固定されるとともに、第1取付部の位置と対応した位置に配置される。第1防振ゴム43は、第1取付部と第2取付部の間に配置され、第1取付部及び第2取付部に対して直接又は間接的に当たるように構成される。また、第1取付部、第2取付部及び第1防振ゴム43は、締結ボルト50を差込可能に構成されている。防振接続構造40は、通常時においては、締結ボルト50を、第1取付部、第1防振ゴム43及び第2取付部に差し込んだ後、締結ボルト50に対して締結ナット51を締結した構成とされる。一方、キャビン16を前方へ傾けるように回転させる場合においては、リア側防振接続構造40Rの締結ナット51を取り外すことにより、キャビン16後部と車体本体側とを分離するとともに、フロント側防振接続構造40Fの締結ナット51を取り外した後、当該フロント側防振接続構造40Fの防振ゴム43を支点として、キャビン16を前方に回転させる。
【0089】
以上のように、防振接続構造40は、第1取付部と第2取付部との間(即ち、キャビン16と、車体本体と、の間)に第1防振ゴム43を配置した構成であるから、この防振接続構造40によってキャビンを防振支持することができる。また、締結ナット51を外すという簡単な作業で、キャビン16と車体本体との接続を外すことができる。更に、第1防振ゴム43の弾性変形を利用して、フロント側防振接続構造40Fを支点としつつキャビン16を回転させることができる。これにより、キャビン16を軸支するための特別な構造が不要となり、キャビン16の下方にある油圧昇降装置19等を露出させるための機構を簡単かつ安価に実現することができる。
【0090】
また、本実施形態のトラクタ10は、以下のように構成されている。即ち、このトラクタ10は、キャビン16に配置された操向ハンドル22と、車体本体側に配置されたステアリングバルブ60と、を備える。そして、操向ハンドル22とステアリングバルブ60とを連結する第2ユニバーサルジョイント66が、側面視において、フロント側防振接続構造40Fの近傍に位置している。
【0091】
これにより、フロント側防振接続構造40Fを支点にしてキャビン16を回転させる際に、操向ハンドル22とステアリングバルブ60とを連結している構成の取外し等を行う必要がない。従って、簡単な作業でキャビン16を回転させることができる。
【0092】
以上に本発明の好適な実施の形態について説明したが、以上の構成は以下のように構成することができる。
【0093】
搭乗部としてキャビンを備えたトラクタ10について説明したが、フロアタイプのトラクタ(キャビンを備えないタイプのトラクタ)においては、フロアを搭乗部として把握することができる。即ち、フロアを防振接続構造40によって防振支持することにより、上記実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0094】
上記実施形態では、キャビン16をクレーンで吊り上げることでキャビン16を回動させる構成としたが、トラクタ10が備える油圧昇降装置19を用いてキャビン16を前方に回動させる構成としても良い。この変形例を図18に示す。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。図18のように、リフトアーム20の先端に押上げ棒90を接続し、この押上げ棒90をキャビン16の後底面に当接させる。この状態でリフトアーム20を上方に回動することにより、押上げ棒90がキャビン16の後部を押し上げ、キャビン16全体を前方に回動させることができる。
【0095】
本実施形態ではキャビン16を4点で防振支持する構成としたが、後方の防振支持は1点のみ(即ち3点での防振支持)としても良い。
【0096】
リア側の防振接続構造については、上記実施形態のように防振ゴムを取付ステーで挟み込んだ構成に限らず、例えば大ストロークの防振マウントやサスペンション機構等を用いることができる。
【符号の説明】
【0097】
10 トラクタ(農用トラクタ)
16 キャビン(搭乗部)
22 操向ハンドル
40 防振接続構造
41 キャビン側後部取付ステー(第1取付部)
42 車体側後部取付ステー(第2取付部)
43 第1防振ゴム(防振ゴム)
44 キャビン側前部取付ステー(第1取付部)
45 車体側前部取付ステー(第2取付部)
50 締結ボルト
51 締結ナット
60 ステアリングバルブ
61 第2ユニバーサルジョイント(ユニバーサルジョイント)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータが搭乗するための搭乗部を備え、
前記搭乗部の前部の2箇所、及び後部の1又は2箇所と、車体本体と、の間には防振接続構造がそれぞれ配置され、
前記防振接続構造によって、前記搭乗部が前記車体本体に対して防振支持されているとともに、
前記後部の防振接続構造による接続を外すことにより、前記車体本体から前記搭乗部の後部を分離しつつ、前記前部の防振接続構造を支点として、前記搭乗部を前方へ傾けるように回転させることが可能であることを特徴とする農用トラクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の農用トラクタであって、
前記防振接続構造は、
前記搭乗部に一体的に固定される第1取付部と、
前記車体本体に一体的に固定されるとともに、前記第1取付部の位置と対応した位置に配置される第2取付部と、
前記第1取付部と前記第2取付部の間に配置され、前記第1取付部及び前記第2取付部に対して直接又は間接的に当たるように構成される防振ゴムと、
を備えるとともに、
前記第1取付部、前記第2取付部及び前記防振ゴムは、締結ボルトを差込可能に構成されており、
前記防振接続構造は、通常時においては、前記締結ボルトを、前記第1取付部、前記防振ゴム及び前記第2取付部に差し込んだ後、前記締結ボルトに対して締結ナットを締結した構成とされ、
前記搭乗部を前方へ傾けるように回転させる場合においては、
前記後部の防振接続構造の前記締結ナットを取り外すことにより、搭乗部の後部と前記車体本体側とを分離するとともに、
前記前部の防振接続構造の前記締結ナットを取り外した後、当該前部の防振接続構造の防振ゴムを支点として、前記搭乗部を前方に回転させることを特徴とする農用トラクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の農用トラクタであって、
前記搭乗部に配置された操向ハンドルと、
前記車体本体側に配置されたステアリングバルブと、
を備え、
前記操向ハンドルと前記ステアリングバルブとを連結するユニバーサルジョイントが、側面視において、前記前部の防振接続機構の近傍に位置していることを特徴とする農用トラクタ。
【請求項1】
オペレータが搭乗するための搭乗部を備え、
前記搭乗部の前部の2箇所、及び後部の1又は2箇所と、車体本体と、の間には防振接続構造がそれぞれ配置され、
前記防振接続構造によって、前記搭乗部が前記車体本体に対して防振支持されているとともに、
前記後部の防振接続構造による接続を外すことにより、前記車体本体から前記搭乗部の後部を分離しつつ、前記前部の防振接続構造を支点として、前記搭乗部を前方へ傾けるように回転させることが可能であることを特徴とする農用トラクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の農用トラクタであって、
前記防振接続構造は、
前記搭乗部に一体的に固定される第1取付部と、
前記車体本体に一体的に固定されるとともに、前記第1取付部の位置と対応した位置に配置される第2取付部と、
前記第1取付部と前記第2取付部の間に配置され、前記第1取付部及び前記第2取付部に対して直接又は間接的に当たるように構成される防振ゴムと、
を備えるとともに、
前記第1取付部、前記第2取付部及び前記防振ゴムは、締結ボルトを差込可能に構成されており、
前記防振接続構造は、通常時においては、前記締結ボルトを、前記第1取付部、前記防振ゴム及び前記第2取付部に差し込んだ後、前記締結ボルトに対して締結ナットを締結した構成とされ、
前記搭乗部を前方へ傾けるように回転させる場合においては、
前記後部の防振接続構造の前記締結ナットを取り外すことにより、搭乗部の後部と前記車体本体側とを分離するとともに、
前記前部の防振接続構造の前記締結ナットを取り外した後、当該前部の防振接続構造の防振ゴムを支点として、前記搭乗部を前方に回転させることを特徴とする農用トラクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の農用トラクタであって、
前記搭乗部に配置された操向ハンドルと、
前記車体本体側に配置されたステアリングバルブと、
を備え、
前記操向ハンドルと前記ステアリングバルブとを連結するユニバーサルジョイントが、側面視において、前記前部の防振接続機構の近傍に位置していることを特徴とする農用トラクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−264800(P2010−264800A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115923(P2009−115923)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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