近接センサ機能付き通信装置およびセンサシステム
【課題】小型の近接センサ機能付き通信装置等を提供する。
【解決手段】処理部100は、アンテナ60で無線通信を行う通信モードでは、切り替え部80を、アンテナ60が変調部20と復調部40のうちの一方にのみ接続されるように制御する。処理部100は、アンテナ60を電界型近接センサの検出電極として用いるセンサモードでは、切り替え部80を、アンテナ60が変調部20と復調部40の両方に接続されるように制御し、変調部20を、発振回路21から出力される基本信号S0を変調せずに出力するように制御する。処理部100は、センサモードにおいて復調部40から出力される信号S3の振幅または周波数または位相の変化から、アンテナ60に対して接近または離隔する物体2の存在を判別する。
【解決手段】処理部100は、アンテナ60で無線通信を行う通信モードでは、切り替え部80を、アンテナ60が変調部20と復調部40のうちの一方にのみ接続されるように制御する。処理部100は、アンテナ60を電界型近接センサの検出電極として用いるセンサモードでは、切り替え部80を、アンテナ60が変調部20と復調部40の両方に接続されるように制御し、変調部20を、発振回路21から出力される基本信号S0を変調せずに出力するように制御する。処理部100は、センサモードにおいて復調部40から出力される信号S3の振幅または周波数または位相の変化から、アンテナ60に対して接近または離隔する物体2の存在を判別する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接センサ機能付き通信装置およびセンサシステムに係る。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、温度センサや湿度センサ等のセンサと、当該センサによる検出値を計測値に変換する信号処理部と、得られた計測値を当該計測値を利用する機器へ無線によって送出するための送信回路部とを含んだ、無線センサ装置が開示されている。上記センサは、センサ素子と、センサ回路とによって構成されている。例えば温度センサの場合、センサ素子とはサーミスタ自体であり、センサ回路とはサーミスタの抵抗値を電圧変換する抵抗素子等である。
【0003】
特許文献2には、屋内に設置される第1の装置と、屋外に設置される第2の装置とを含んだ、ガスメータシステムが開示されている。当該ガスメータシステムでは、第1の装置で計測されたガス流量の積算演算値が、第1の装置の通信手段と第2の装置の通信手段とを介して、第2の装置の計量値表示手段に表示される。第1の装置の通信手段および第2の装置の通信手段は有線または無線による通信が可能に構成されている。
【0004】
また、特許文献2の上記第1の装置は、保安監視手段(ガス漏れセンサ、熱センサ、煙センサ等の各種センサを有している)によって異常が検出された場合、通信手段を介して外部と通信を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−252216号公報
【特許文献2】特開2009−174895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
センサ手段と通信手段とを有する装置は、種々の応用が考えられるため、今後ますます需要が拡大すると予想される。このため、当該装置に対しては種々の要請がある。例えば小型化の要請である。小型化によって、例えば、当該装置の設置場所の制約を少なくすることができるからである。
【0007】
ところで、特許文献1の無線センサ装置では、センサと無線送信回路部とが併置されている。このため、これらの構成を配置するためのスペースが無線センサ装置の大きさに影響する。また、特許文献2の第1の装置についても、ガス流量計測手段と保安監視手段と通信手段とが併置されているため、同様である。
【0008】
なお、上記の小型化の要請は、特許文献1,2に記載されていない種類のセンサを搭載した装置にも当てはまる。
【0009】
そこで、本発明は、小型の近接センサ機能付き通信装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、上記の小型の近接センサ機能付き通信装置を採用したセンサシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に係る近接センサ機能付き通信装置は、所定の振幅および所定の周波数を有する基本信号を生成して出力する発振回路を含み、前記基本信号を所定の変調方式で変調して出力することが可能に構成されているとともに、前記基本信号を変調せずに出力することも可能に構成されており、変調された前記基本信号または変調されていない前記基本信号を出力するための出力端をさらに含む、変調部と、入力端を含み、前記入力端に入力された信号を前記所定の変調方式に従って復調して出力することが可能に構成されている、復調部と、アンテナと、前記変調部の前記出力端と前記アンテナとの接続/非接続の切り替えと、前記アンテナと前記復調部の前記入力端との接続/非接続の切り替えとを行う、切り替え部と、処理部とを備え、前記処理部は、前記アンテナで無線通信を行う通信モードでは、前記切り替え部を、前記アンテナが前記変調部と前記復調部のうちの一方にのみ接続されるように制御する、通信モード用切り替え制御を行い、前記処理部は、前記アンテナを電界型近接センサの検出電極として用いるセンサモードでは、前記切り替え部を、前記アンテナが前記変調部と前記復調部の両方に接続されるように制御する、センサモード用切り替え制御と、前記変調部を、前記基本信号を変調せずに出力するように制御する、無変調制御とを行い、前記処理部は、前記センサモードにおいて前記復調部から出力される信号の振幅または周波数または位相の変化から、前記アンテナに対して接近または離隔する物体の存在を判別する、判別処理を行う。
【0012】
また、第2の態様に係る近接センサ機能付き通信装置は、上記の第1の態様に係る近接センサ機能付き通信装置であって、前記発振回路は、周波数の異なる複数種類の信号を生成可能に構成され、前記複数種類の信号のうちの一つを前記基本信号として出力し、前記処理部は、前記通信モードで用いる前記基本信号と、前記センサモードで用いる前記基本信号とで周波数を異ならせる、周波数制御を行う。
【0013】
また、第3の態様に係る近接センサ機能付き通信装置は、上記の第1または第2の態様に係る近接センサ機能付き通信装置であって、前記処理部は、前記通信モードと前記センサモードとを時分割で切り替える。
【0014】
また、第4の態様に係る近接センサ機能付き通信装置は、上記の第1ないし第3の態様のうちのいずれか1つに係る近接センサ機能付き通信装置であって、前記処理部は、間欠的に稼動状態になり、1回の稼動状態の期間中に前記通信モードと前記センサモードとを所定の順序で切り替える。
【0015】
また、第5の態様に係る近接センサ機能付き通信装置は、上記の第1ないし第4の態様のうちのいずれか1つに係る近接センサ機能付き通信装置であって、前記処理部は、前記センサモードにおいて前記復調部から出力される前記信号の前記振幅または前記周波数または前記位相の値から、前記アンテナと前記物体との間の距離を導出する、距離導出処理をさらに行う。
【0016】
また、第6の態様に係るセンサシステムは、上記の第1ないし第5の態様のうちのいずれか1つに係る近接センサ機能付き通信装置を少なくとも1つ備えるとともに、前記少なくとも1つの近接センサ機能付き通信装置と無線通信可能に構成されたホスト装置を備え、前記少なくとも1つの近接センサ機能付き通信装置は、前記判別処理による判別結果を前記ホスト装置へ向けて送信する。
【0017】
また、第7の態様に係るセンサシステムは、上記の第6の態様に係るセンサシステムであって、前記少なくとも1つの近接センサ機能付き通信装置は、複数の近接センサ機能付き通信装置であり、前記複数の近接センサ機能付き通信装置のそれぞれは、自身以外の他の近接センサ機能付き通信装置から送信された前記判別結果を前記ホスト装置へ向けて中継する。
【0018】
また、第8の態様に係るセンサシステムは、上記の第6または第7の態様に係るセンサシステムであって、前記ホスト装置は、前記物体を検出したことを示す前記判別結果を受信した場合、報知処理を行う。
【発明の効果】
【0019】
上記の第1ないし第8の態様によれば、センサモードでは、変調部と復調部とアンテナとが接続される。かかる接続形態において、アンテナと当該アンテナの付近に存在する物体とによって形成されるコンデンサ構造が、変調部から復調部へ伝達される無変調状態の基本信号に影響を及ぼす。具体的には、上記物体がアンテナに対して接近または離隔することにより、上記コンデンサ構造の容量値が変化し、その結果、復調部からの出力信号の振幅、周波数等が変化する。かかる変化を利用して上記物体が検知される。つまり、電界型または静電容量型と称される近接センサが構成される。
【0020】
かかる構成によれば、変調部と復調部とアンテナとが通信モードとセンサモードとで共用されている。このため、通信用の構成要素とセンサ用の構成要素とが別々に設けられ単に併置されている装置に比べて、装置の小型化、軽量化を図ることができる。また、かかる共用によれば、上記の単なる併置構造に比べて、重複した部品が削減されるので、低コスト、低価格で装置を提供することができる。換言すれば、大幅なコストアップを伴うことなく、通信装置に近接センサ機能を付与することができる。
【0021】
なお、変調部の共用は、変調部の全部が共用される態様と、変調部の一部が共用される態様とのいずれであってもよく、いずれの態様であっても上記の効果は得られる。かかる点は復調部の共用についても同様である。
【0022】
特に、上記の第2の態様によれば、複数の近接センサ機能付き通信装置が設置された環境において混信等を防止することができる。より具体的には、通信モード(より具体的には送信モード)にある近接センサ機能付き通信装置から出力された信号が、センサモードにある他の近接センサ機能付き通信装置で受信されて検知動作に影響を及ぼすのを防止することができる。また、センサモードにおいてもアンテナから基本信号が出力されるので、かかる出力信号が、通信モード(より具体的には受信モード)にある他の近接センサ機能付き通信装置での受信動作に影響を及ぼすのを防止することができる。
【0023】
また、上記の第4の態様によれば、近接センサ機能付き通信装置は間欠的に稼動状態になるので、消費電力を削減することができる。また、1回の稼動状態の期間中に通信モードとセンサモードとの両方を行うので、両モードを別々の稼動状態期間に分けて行う場合に比べて、処理速度を向上できる。これは、稼動状態期間の初期には実際的に動作可能な状態になるまでのタイムラグが伴い、1回の稼動状態期間中に通信モードとセンサモードとの両方を行うことによって当該タイムラグの回数を減らせるからである。
【0024】
また、上記の第6の態様によれば、上記のように小型化可能な近接センサ機能付き通信装置が採用されているので、通信装置の設置場所についての制約が少ない。これにより、多彩なセンサシステムを提供することができる。
【0025】
また、上記の第7の態様によれば、ホスト装置の無線通信可能な範囲の外に設置された通信装置も、他の通信装置を介してホスト装置と通信することが可能である。このため、各通信装置が直接、ホスト装置と通信を行う構成に比べて、広い範囲に通信装置を設置することできる。したがって、さらに多彩なセンサシステムを提供することができる。
【0026】
また、上記の第8の態様によれば、報知機能を有しているので、例えば防犯システムに代表される監視システムに好適なセンサシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施の形態に係る通信装置を概説するブロック図である(送信モード)。
【図2】第1の実施の形態に係る通信装置を概説するブロック図である(受信モード)。
【図3】第1の実施の形態に係る通信装置を概説するブロック図である(センサモード)。
【図4】ASK(振幅偏移変調)を概説する波形図である。
【図5】第1の実施の形態に係る通信装置を概説するタイミングチャートである。
【図6】第2の実施の形態に係るセンサシステムを概説する模式図である。
【図7】第2の実施の形態に係るセンサシステムを概説する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1の実施の形態>
図1〜図3に、第1の実施の形態に係る通信装置1を概説するブロック図を示す。図1〜図3に例示される構成要素は同じであるが、後述する各動作モードを分かりやすくするために図面を分けている。
【0029】
通信装置1は無線通信機能と近接センサ機能とを備えた装置である。このため、当該装置1を近接センサ機能付き通信装置1または通信機能付きセンサ装置1と称することができる。後述の説明から明らかになるが、近接センサ機能は電界型または静電容量型と称される近接センサによって提供される。
【0030】
通信装置1の動作モードには、無線通信機能を使用して動作する通信モードM1と、近接センサ機能を使用して動作するセンサモードM2とが含まれる。通信モードM1は送信モードM1tと受信モードM1rとに大別される。なお、通信装置1の動作モードは、その他のモード、例えばデータ処理モードM3(後述の図5参照)を含んでもよい。
【0031】
図1〜図3に例示の通信装置1は、変調部20と、復調部40と、アンテナ60と、切り替え部80と、処理部100とを含んでいる。
【0032】
<変調部20>
変調部20は、ここでは、デジタル変調方式の一例であるとともに振幅変調方式の一例であるASK(Amplitude Shift Keying;振幅偏移変調)によって信号変調を行うことが可能に構成されている。かかる変調部20は、図1〜3の例では、発振回路21と、スイッチング手段22と、ロー・パス・フィルタ(以下「LPF」とも称する)23とを含んで構成されている。
【0033】
発振回路21は、所定の振幅および所定の周波数(例えば、430MHz、あるいは、60〜200kHzの範囲から予め選定される周波数)を有した信号(以下「基本信号」とも称する)S0を生成して出力することが可能に構成されている。なお、基本信号S0は送信モードM1tでは搬送波として利用される。ここでは発振回路21が生成可能な周波数は1種類だけの場合を例示するが、かかる例に限定されるものではない(後述する)。
【0034】
スイッチング手段22は、一端が発振回路21の出力端に接続され、他端がLPF23の入力端に接続されている。また、スイッチング手段22は処理部100に接続されており、処理部100によって当該スイッチング手段22の上記の一端と他端との間の開閉制御すなわちオン/オフ制御が行われる。図1および図2には、オフ状態のスイッチング手段22が例示されている。なお、スイッチング手段22は、図1〜図3では典型的な図記号で図示されているが、各種のスイッチング素子やスイッチング回路によって構成可能である。
【0035】
図4の波形図に概説するように、処理部100が送信データに従ってスイッチング手段22をオン/オフ制御することにより、基本信号S0の振幅が当該送信データに対応して変調される。なお、図4にはデータの“0”および“1”がスイッチング手段22のオフ状態およびオン状態にそれぞれ対応する場合を例示しているが、逆の対応付けも可能である。
【0036】
LPF23は、入力端がスイッチング手段22の上記他端に接続され、出力端が切り替え部80に接続されている。LPF23は、基本信号S0の周波数として選定された周波数の信号を通過させるとともに、当該選定周波数の高調波成分等を減衰・除去するように構成されている。図1〜図3の例では、LPF23の出力端が変調部20の出力端にあたり、LPF23から出力される信号S1が変調部20からの出力信号になる。
【0037】
上記のように処理部100が送信データに従ってスイッチング手段22をオン/オフ制御する場合(図4参照)、送信データに応じて振幅変調された基本信号S0が変調部20からの出力信号S1になる。
【0038】
これに対し、処理部100がスイッチング手段22をオン状態に保持し続けることにより、基本信号S0は振幅変調されずに変調部20から出力される。このため、変調されていない(以下「無変調状態」または「無変調」とも表現する)の基本信号S0を、出力信号S1として変調部20から出力させることも可能である。後述するが、センサモードM2(図3参照)では、この無変調の基本信号S0を利用する。
【0039】
<復調部40>
復調部40は、入力された信号S2を、変調部20で採用されている変調方式(ここではASK)に従って復調することが可能に構成されている。かかる復調部40は、図1〜3の例では、バンド・パス・フィルタ(以下「BPF」とも称する)41と、低ノイズアンプ(Low Noise Amplifier。以下「LNA」とも称する)42と、検波回路43と、LPF44と、A/Dコンバータ(以下「ADC」とも称する)45とを含んで構成されている。
【0040】
BPF41は、入力端が切り替え部80に接続され、出力端がLNA42に接続されている。ここではBPF41の入力端が復調部40の入力端にあたる。BPF41は、入力端に入力される信号S2のうちで基本信号S0の周波数付近の帯域の成分を抽出し、当該抽出された周波数成分を有する信号を出力端から出力するように構成されている。
【0041】
LNA42は、入力端がBPF41の上記出力端に接続され、出力端が検波回路43に接続されている。LNA42は、BPF41から入力される信号を増幅し、当該増幅された信号を出力端から出力するように構成されている。なお、受信モードM1rにおける信号S2は微弱であるため、低ノイズ型のアンプであるLNA42は好適である。
【0042】
検波回路43は、入力端がLNA42の上記出力端に接続され、出力端がLPF44に接続されている。検波回路43は、LNA42から入力される信号に対してASK方式に従った検波を行い、検波結果の信号を出力端から出力するように構成されている。検波結果の信号は、復調部40へ入力された信号S2に含まれているデータに対応する、ベースバンド信号にあたる。
【0043】
LPF44は、入力端が検波回路43の上記出力端に接続され、出力端がADC45に接続されている。LPF44は、検波結果の信号中のノイズを減衰・除去するように構成されている。これにより、検波結果の信号を、復調部40への入力信号S2に含まれているデータの波形に近づけることができる。
【0044】
ADC45は、入力端がLPF44の上記出力端に接続され、出力端が処理部100に接続されている。ADC45の出力端は復調部40の出力端にあたり、ADC45からの出力信号S3は復調部40からの出力信号になる。ADC45は、LPF44から入力される信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、得られたデジタル信号を出力端から出力するように構成されている。
【0045】
ここでは、ADC45がコンパレータで構成される場合を例示する。かかる例によれば、LPF44を経た検波結果信号がコンパレータによって波形整形され、これにより復調部40への入力信号S2に含まれているデータの波形が再生される。すなわち、出力信号S3として、入力信号S2に含まれているデジタル情報が得られる。
【0046】
<アンテナ60>
アンテナ60は、送信モードM1t(図1参照)では変調部20で生成された信号S1の無線送信に用いられ、受信モードM1r(図2参照)では外来の無線信号(電波)の受信に用いられる。また、アンテナ60は、後述のように、センサモードM2(図3参照)では電界型近接センサの検出電極として用いられる。
【0047】
<切り替え部80>
切り替え部80は、アンテナ60と、変調部20の上記出力端と、復調部40の上記入力端とに接続されている。また、切り替え部80は処理部100に接続されており、処理部100の制御の下、アンテナ60と変調部20との接続/非接続の切り替え、および、アンテナ60と復調部40との接続/非接続の切り替えが行われる。
【0048】
図1〜図3の例では、切り替え部80は、直列接続された2つのスイッチング手段81,82を含んで構成されている。スイッチング手段81,82は、図1〜図3では典型的な図記号で図示されているが、各種のスイッチング素子やスイッチング回路によって構成可能である。スイッチング手段81の一端は変調部20の出力端(ここではLPF23の出力端)に接続されており、スイッチング手段81の他端はアンテナ60およびもう一つのスイッチング手段82の一端に接続されている。スイッチング手段82の他端は、復調部4の入力端(ここではBPF41の入力端)に接続されている。
【0049】
スイッチング手段81,82は、処理部100に接続されており、処理部100によってオン/オフ制御される。より具体的には、送信モードM1t(図1参照)では、変調部20側のスイッチング手段81がオンにされ、復調部40側のスイッチング手段82はオフにされる。これにより、変調部20の出力信号S1がアンテナ60から送信可能になる。また、受信モードM1r(図2参照)では、変調部20側のスイッチング手段81はオフにされ、復調部40側のスイッチング手段82がオンにされる。これにより、アンテナ60が受信した外来の信号が復調部40へ伝達される。
【0050】
また、センサモードM2(図3参照)では、スイッチング手段81,82の両方がオンにされる。これにより、後述のように、近接センサとしての動作が可能になる。なお、スイッチング手段81,82の両方を同時期にオフにすることも可能であり、かかるスイッチング状態は例えばデータ処理モードM3(図5参照)において採用可能である。
【0051】
ここで、一般に、送信と受信でアンテナを共用するタイプの無線送受信機には、アンテナを送信側(すなわち変調手段側)に接続するか、それとも受信側(すなわち復調手段側)に接続するかを切り替える手段が設けられている。通信装置1の上記切り替え部80は、かかる一般的な切り替え手段に対応するが、次の点で異なる。
【0052】
すなわち、上記の一般的な切り替え手段によれば、アンテナが変調手段と復調手段とのうちのいずれか一方にのみ選択的に接続され、変調手段と復調手段とがアンテナを介して接続されることはない。
【0053】
これに対し、切り替え部80によれば、上記のようにスイッチング手段81,82の両方がオンになる状態を採ることが可能である(図3参照)。このため、切り替え部80は、一般的な切り替え手段による接続形態に加えて、変調部20と復調部40との両方がアンテナ60に接続された形態も形成可能である。つまり、切り替え部80によれば、アンテナ60は変調部20と復調部40とのうちの少なくとも一方に接続される。
【0054】
また、切り替え部80によれば、上記のようにスイッチング手段81,82の両方がオフになる状態を採ることも可能である。
【0055】
なお、変調部20と復調部40とアンテナ60との間の上記各接続形態を実現可能である限り、スイッチング手段81,82による例示の構成以外の構成を切り替え部80に採用してもよい。
【0056】
<処理部100>
処理部100は、通信装置1における各種の演算、制御等の処理を行うように構成されている。例えば、処理部100は、マイクロコンピュータ(換言すればマイクロプロセッサ)と、メモリとを含んで構成可能である。
【0057】
かかる構成例によれば、処理部100によって行われる各種処理を、ソフトウェアによって実現可能である。より具体的には、マイクロコンピュータがプログラムに記述された各処理ステップ(換言すれば手順)を実行する。これにより、マイクロコンピュータは処理ステップに対応する各種手段として機能し、または、マイクロコンピュータによって処理ステップに対応する各種機能が実現される。なお、複数のマイクロコンピュータを採用することも可能であり、この場合、当該複数のマイクロコンピュータの総称が上記のマイクロコンピュータに相当する。
【0058】
メモリは、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM(Erasable Programmable ROM)等)の1つまたは複数で構成可能である。メモリは、各種のデータ(換言すれば情報)、処理部100が実行するプログラム等を格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。
【0059】
なお、処理部100によって実現される各種手段または各種機能の一部または全部をハードウェアによって実現することも可能である。
【0060】
処理部100は、上記のようにスイッチング手段22,81,82に接続されており、当該スイッチング手段22,81,82のオン/オフを制御する。また、処理部100は、ADC45に接続されており、ADC45からデジタル信号S3を取得する。処理部100は、当該デジタル信号S3によって表される情報を利用した各種の演算処理や、当該情報に則った動作・制御に関する処理を行う。
【0061】
<装置1の動作>
図1〜図4に加え、図5のタイミングチャートを参照して、通信装置1の動作を例示する。
【0062】
図5の例によれば、通信装置1は稼動状態MAと休止状態MBとを交互に採る。換言すれば、通信装置1は間欠的に稼動状態MAになる。稼動状態MAでは処理部100、変調部20および復調部40は所定の動作を行い、休止状態MBでは処理部100等は種々の動作を停止する。かかる間欠動作は、例えば、処理部100の内部または外部に設けられたタイマに従って行うことが可能である。
【0063】
かかる間欠動作に対し、休止状態MBを設けずに稼動状態MAを連続させることも可能である。しかし、休止状態MBにおいて処理部100等が動作を停止することにより、消費電力を削減することができる。ここで、休止状態MBにおいて処理部100等が動作を停止するだけでも消費電力の削減に繋がるが、処理部100等への電力供給自体を停止させる構成を採用することによって更なる電力削減を図ることができる。
【0064】
図5の例では、稼動状態MAの期間中に、通信モードM1(送信モードM1tまたは受信モードM1r)と、センサモードM2と、データ処理モードM3とが時分割で切り替わり、所定の順序で選定される。なお、通信モードM1と、センサモードM2と、データ処理モードM3とのモード設定の順序は図5の例に限定されるものではない。
【0065】
また、図5では3つの動作モードM1,M2,M3の全てを1つの稼動状態MA中に実行する場合を例示している。これに対し、例えば1回の稼動状態MAで1つのモードM1,M2またはM3のみを行うことにより、3つの動作モードM1,M2,M3を3回の稼動状態MAに分けて実行するように構成することも可能である。なお、かかる場合も各モードM1,M2,M3は時分割で実行される。
【0066】
但し、1回の稼動状態MAにおいて複数の(ここでは2つまたは3つの)モードを実行する方が、処理速度の向上に資する。これは、休止状態MBにおいて電力供給を停止する場合、電力供給を再開してから実際的に動作可能な状態になるまでにタイムラグが存在するからである。つまり、3つの動作モードM1,M2,M3を複数回の稼動状態MAに分けるほど、これらのモードM1,M2,M3を終了するまでに上記のタイムラグの回数が多くなってしまうからである。
【0067】
次に、各モードM1,M2,M3を説明する。
【0068】
<通信モードM1>
通信モードM1は、上記のように、通信装置1が無線通信機能を使用して動作するモードであり、送信モードM1tと受信モードM1rとに大別される。図5には休止状態MBを挟んで連続する稼動状態MAにおいて、一方の稼動状態MAでは送信モードM1tが実行され、他方の稼動状態MAでは受信モードM1rが実行される場合を例示している。但し、かかる例に限定されるものではない。例えば、送信モードM1tが複数回連続する態様、受信モードM1rが複数回連続する態様、両方のモードM1t,M1rを1回の稼動状態MA中に時分割で実行する態様等を採用してもよい。
【0069】
通信モードM1において、処理部100は、アンテナ60が信号の送受信に応じて変調部20と復調部40とのうちの一方にのみ接続されるように、切り替え部80を制御する(通信モード用切り替え制御)。
【0070】
具体的には、処理部100は、送信モードM1t(図1参照)では、変調部20側のスイッチング手段81をオンにし、復調部40側のスイッチング手段82をオフにする。これにより、変調部20の出力信号S1がアンテナ60から送信可能になる。他方、受信モードM1r(図2参照)では、処理部100は、変調部20側のスイッチング手段81をオフにし、復調部40側のスイッチング手段82をオンにする。これにより、アンテナ60が受信した外来の信号が復調部40へ入力される。
【0071】
<センサモードM2>
センサモードM2は、通信装置1が近接センサとして動作するモードである。センサモードM2では、処理部100は、切り替え部80を制御して、アンテナ60を変調部20と復調部40との両方に接続する(センサモード用切り替え制御)。より具体的には、処理部100は、変調部20側のスイッチング手段81と、復調部40側のスイッチング手段82との両方をオンにする。
【0072】
さらに処理部100は、変調部20と復調部40とアンテナ60とが互いに接続された状態において、変調部20を、基本信号S0を変調せずに出力するように制御する(無変調制御)。図3の例の場合、既述のように、処理部100が変調部20のスイッチング手段22をオン状態に保持し続けることにより、変調部20が無変調状態の基本信号S0を出力するように制御可能である。
【0073】
変調部20から出力された無変調状態の基本信号S0は、信号S2として復調部40へ入力され、復調部40が受信モードM1tと同様に動作することによって復調される。図4を参照すれば、無変調状態の基本信号S0は“1”が連続する信号であると把握することが可能である。このため、基本的には、復調部40から出力される復調信号S3は“1”が連続する信号になる。
【0074】
しかし、変調部20から復調部40へ至る伝送路にはアンテナ60が接続されているため、基本信号S0は変調部20から復調部40へ伝達される間にアンテナ60の影響を受ける。より具体的には、アンテナ60と、アンテナ60付近に存在する物体2(図3参照)とをそれぞれ電極とするコンデンサ構造が形成されるため、復調部40には当該コンデンサCの影響を受けた基本信号S0が入力される。
【0075】
この場合、アンテナ60と物体2との間の距離が短いほど、上記コンデンサCの容量は大きくなり、復調部40で検波された信号の振幅すなわち信号レベルは小さくなる。かかる点に鑑みると、物体2がアンテナ60に対して接近する場合、換言すれば物体2とアンテナ60との間の間隔が小さくなる方向に物体2が移動する場合、復調部40からの出力信号S3の振幅は減少傾向に変化する。逆に、物体2がアンテナ60に対して離隔する場合、換言すれば物体2とアンテナ60との間の間隔が大きくなる方向に物体2が移動する場合、復調部40からの出力信号S3の振幅は増加傾向に変化する。
【0076】
したがって、処理部100は、復調部40からの出力信号S3の振幅の変化から、アンテナ60に対して、換言すれば通信装置1に対して接近または離隔する物体2の存在を判別することが可能である(判別処理)。
【0077】
より具体的には、処理部100は、復調部40から出力される信号S3を取得しているので、当該信号S3が“1”から“0”へ遷移したことを検出可能である。かかる“1”から“0”への状態遷移の検出を以て、処理部100は、通信装置1へ近づく物体2が存在すると判別する。逆に、処理部100は、復調部40からの出力信号S3が“0”から“1”へ遷移したことを検出した場合、アンテナ60から離隔する物体2が存在すると判別する。
【0078】
復調部40からの出力信号S3の振幅変化、換言すれば“0”と“1”との間の状態遷移は、種々の態様で出現しうる。例えば、センサモードM2の期間中に振幅変化が起こる場合が想定される。また、例えば、先行するセンサモードM2の終了から後続のセンサモードM2の開始までの間に(例えば休止状態MB中に)、振幅変化に繋がる状況が起こる場合が想定される。この場合、先行するセンサモードM2における信号S3の振幅(“0”または“1”)を上記メモリに格納しておき、後続のセンサモードM2において、上記メモリに格納された信号S3の振幅と、当該後続のセンサモードM2で取得された信号S3の振幅とを比較すれば、振幅変化を検出可能である。
【0079】
このように、センサモードM2では、アンテナ60を検出電極とし、変調部20を検出用の基本信号S0を生成・出力する手段とし、復調部40を基本信号S0の振幅変化を検出する手段として利用することにより、いわゆる電界型または静電容量型の近接センサが構成される。
【0080】
<データ処理モードM3>
データ処理モードM3は、通信装置1が、換言すれば処理部100が各種のデータ処理を行うモードである。
【0081】
例えば、センサモードM2で実行されるとした上記判別処理をデータ処理モードM3で実行してもよい。より具体的には、処理部100は、センサモードM2では復調部40から信号S3を取得してメモリに蓄積し、当該蓄積されたデータに対してデータ処理モードM3で上記判別処理を行うことが可能である。
【0082】
また、例えば、センサモードM2において物体2の接近または離隔を検出した場合にはその旨を通信装置1の外部へ送信する処理が予め規定されている場合、処理部100は、次の送信モードM1tで送信するパケットをデータ処理モードM3で準備する。
【0083】
また、例えば、処理部100は、受信モードM1rで受信した信号S2(復調部40で復調されて信号S3になる)を、データ処理モードM3で解読する。さらに、解読の結果が例えばセンサモードM2での検出結果を送信することを要求するコマンドである場合、処理部100は、次の送信モードM1tで送信するパケットを当該データ処理モードM3で準備する。
【0084】
また、例えば、受信モードM1rで受信した信号S2が通信装置1の各部の調整に関するコマンドである場合、処理部100は、当該コマンドに従って調整を行う。
【0085】
また、例えば、送信モードM1tで送信した情報、受信モードM1rで受信した情報、センサモードM2で検出した情報を予め規定された手法で整理するための期間として、データ処理モードM3を利用してもよい。
【0086】
データ処理モードM3では、切り替え部80のスイッチング手段81,82の状態は任意に設定可能である。例えば、スイッチング手段81,82の両方がオフにされる。
【0087】
<効果>
通信装置1によれば、変調部20と復調部40とアンテナ60とが通信モードM1とセンサモードM2とで共用されている。このため、通信用の構成要素とセンサ用の構成要素とが別々に設けられ単に併置されている装置に比べて、装置の小型化、軽量化を図ることができる。また、かかる共用によれば、上記の単なる併置構造に比べて、重複した部品が削減されるので、低コスト、低価格で通信装置1を提供することができる。換言すれば、大幅なコストアップを伴うことなく、通信装置に近接センサ機能を付与することができる。
【0088】
<変形例1>
上記では、発振回路21が生成可能な基本信号S0は1種類だけの場合、すなわち基本信号S0の周波数が1種類だけの場合を例示した。
【0089】
これに対し、発振回路21を、周波数の異なる複数種類の信号を生成可能に構成してもよい。かかる構成は、例えば、発振周波数の異なる複数の発振回路を発振回路21に設けることによって、あるいは、発振周波数の調整機能付きの発振回路を発振回路21に採用することによって、実現可能である。この場合、上記の複数種類の信号のうちの一つが基本信号S0として発振回路21から出力される。
【0090】
かかる発振回路21を処理部100が制御することにより、通信モードM1で用いる基本信号S0と、センサモードM2で用いる基本信号S0とで周波数を異ならせることが可能である(周波数制御)。例えば、通信モードM1では430MHzの信号を基本信号S0として用い、センサモードM2では60〜200kHzの範囲から予め選定される周波数の信号を基本信号S0として用いることが可能である。
【0091】
かかる構成によれば、複数の通信装置1が設置された環境において混信等を防止することができる。より具体的には、送信モードM1tにある通信装置1から出力された信号(換言すれば電波)が、センサモードM2にある他の通信装置1で受信されて検知動作に影響を及ぼすのを防止することができる。また、センサモードM2においてもアンテナ60から無変調状態の基本信号S0が出力されるので、かかる出力信号が、受信モードにある他の通信装置1での受信動作に影響を及ぼすのを防止することができる。
【0092】
<変形例2>
上記ではADC45がコンパレータで構成された例を説明した。この場合、LPF44から出力された信号は、復調部40において“0”と“1”の二値信号に変換され、処理部100へ入力される。これに対し、LPF44からの出力信号を多値の量子化レベルで以てアナログ/デジタル変換するように、ADC45を構成してもよい。これによれば、処理部100は、LPF44から出力された信号の振幅の値、換言すれば当該信号の波形を取得可能であり、その結果、当該信号の振幅変化の詳細を取得可能である。
【0093】
これにより、物体2の接近・離隔を高精度に判別することができる。
【0094】
なお、処理部100が、入力された多値信号に対して上記コンパレータと同様の処理を行うことによって上記二値信号を生成することも可能である。これによれば、例えば、受信モードM1tでは二値信号を利用し、センサモードM2は多値信号を利用するといった態様を採用することができる。
【0095】
また、取得した振幅値から、アンテナ60と物体2との間の距離を導出することも可能である。
【0096】
例えば、復調部40から出力される信号S3の振幅値と、アンテナ60から物体2までの距離との間に存在する相関関係を予め取得しておけばよい。かかる相関関係は、例えば、実験によって予め求めることが可能である。あるいは、例えば、アンテナ60と物体2とで形成されるコンデンサ構造と、通信装置1の回路構成とに基づいて作成される回路モデルを解析することによって、上記相関関係を予め求めることが可能である。
【0097】
上記相関関係は、例えば、プログラム中に記述される演算式や、テーブル形式のデータ等の態様で以て、処理部100に付与可能である。これにより、処理部100は、復調部40から出力される信号S3の振幅値を当該相関関係に当てはめることによって、アンテナ60と物体2との間の距離を取得することができる。
【0098】
なお、かかる距離導出処理は、センサモードM2で実行してもよいし、あるいはデータ処理モードM3で実行してもよい。
【0099】
<変形例3>
例えば、変調部20においてLPF23の後段に、LPF23からの出力信号の電力を増幅または減衰させる出力調整部を追加してもよい。これによれば、送信モードM1tにおいてアンテナ60から送信する信号の電力を調整することができるとともに、センサモードM2において変調部20から復調部40へ伝達する信号の電力も調整することができる。
【0100】
<変形例4>
ここで、図1〜図3の例では通信モードM1で使用する構成要素の全てがセンサモードM2で使用されるが、通信モードM1で使用する構成要素とセンサモードM2で使用する構成要素とを一部において共用する構成であっても構わない。
【0101】
例えば、上記のように発振回路21に発振周波数の異なる複数の発振回路を設けた構成では、通信モードM1用の発振回路と、センサモードM2用の発振回路とが別々に設けられる。かかる場合、通信モードM1とセンサモードM2とで変調部20の一部が共用されることになる。
【0102】
すなわち、例えば変調部20の共用は、変調部20の全部が共用される態様と、変調部20の一部が共用される態様とのいずれであってもよく、いずれの態様であっても上記の効果は得られる。かかる点は復調部40の共用についても同様である。
【0103】
<変形例5>
上記では変調方式としてASKを例示したが、振幅変調を伴う他の変調方式、例えばアナログ変調方式の一例であるAM(Amplitude Modulation)を利用することも可能である。
【0104】
また、周波数変調を伴う変調方式、例えば、デジタル変調方式の一例であるFSK(Frequency Shift Keying;周波数偏移変調)や、アナログ変調方式の一例であるFM(Frequency Modulation)を適用することも可能である。
【0105】
この場合、センサモードM2では、アンテナ60と物体2との間の距離が変化すると、アンテナ60と物体2とが形成するコンデンサCの容量が変化し、その結果、復調部40からの出力信号S3の周波数が変化する。したがって、かかる周波数変化から、物体2の接近・離隔を判別することが可能である。また、その周波数の値から、アンテナ60と物体2との間の距離を導出することも可能である。
【0106】
また、位相変調を伴う変調方式、例えば、デジタル変調方式の一例であるPSK(Phase Shift Keying;位相偏移変調)を適用することも可能である。
【0107】
この場合、センサモードM2では、アンテナ60と物体2との間の距離が変化すると、アンテナ60と物体2とが形成するコンデンサCの容量が変化し、その結果、復調部40からの出力信号S3の位相が変化する。したがって、かかる位相変化から、物体2の接近・離隔を判別することが可能である。また、その位相変化の値から、アンテナ60と物体2との間の距離を導出することも可能である。
【0108】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、上記の近接センサ機能付き通信装置1を採用したセンサシステムを例示する。図6および図7に、かかるセンサシステム5を概説する模式図を示す。図6および図7に例示のセンサシステム5は、複数の通信装置1(ここでは3つの通信装置1を例示する)と、ホスト装置3とを含んでいる。なお、図面では近接センサ機能付き通信装置1を「センサ付き装置」と表記している。
【0109】
ホスト装置3は、通信装置1と無線通信可能に構成されている。ホスト装置3は、例えば、通信装置1から送信された情報に基づいて各種の処理を行う。通信装置1からホスト装置3へ向けて送信される情報には、例えば、物体2の接近・離隔に関する判別結果が含まれる。また、ホスト装置3は、例えば、通信装置1へ向けて各種の情報を送信する。かかる送信情報には、例えば、上記の判別結果の送信を要求するコマンドが含まれる。
【0110】
図6の例では、通信装置1のそれぞれが、ホスト装置3と無線通信可能な範囲(換言すれば電波の到達可能な範囲)内に設置されている。この場合、各通信装置1は直接、ホスト装置3と通信可能である。なお、かかる通信形式を直接通信型と称することにする。
【0111】
図7の例では、1つの通信装置1のみがホスト装置3と無線通信可能な範囲内に設置されており、残りの2つの通信装置1は当該範囲外に設置されている。また、これらの3つの通信装置1はそれぞれが、自身以外の他の通信装置1の通信可能範囲内に設置されている。特に、各通信装置1は、処理部100の制御の下、自身以外の他の通信装置1から送信された情報をホスト装置1へ向けて中継する。
【0112】
かかる中継機能によれば、例えば、ホスト装置3の無線通信可能な範囲の外に設置された通信装置1も、他の通信装置1を介して、ホスト装置3と通信することができる。なお、かかる通信形式を中継通信型と称することにする。
【0113】
直接通信型と中継通信型のいずれのセンサシステム5についても、通信装置1が上記のように小型化可能であるので、通信装置1の設置場所の制約が少ない。このため、センサシステム5を多彩な用途に展開することができる。
【0114】
例えば、直接通信型と中継通信型のいずれのセンサシステム5も、例えば、防犯システムに代表される各種の監視システムに応用可能である。当該監視システムが例えば、予め所定位置に静止している物体2がその位置から離隔するのを検知するのに用いられる場合、通信装置1は物体2の付近に設置される。より具体的には、防犯システムの場合、通信装置1はドア、窓等に設置される。また、当該監視システムが例えば、移動する物体2の検知に用いられる場合、通信装置1は物体2の移動経路に設置される。より具体的には、防犯システムの場合、通信装置1は通路や部屋の天井、壁等に設置される。
【0115】
監視システム、特に防犯システムでは、センサモジュールは目立たない場所に簡易に取り付け可能であることが好ましい。かかる点に鑑みれば、小型・軽量で設置場所の制約が少ない通信装置1は好適である。
【0116】
ここで、監視システムでは、ホスト装置3がいずれかの通信装置1から物体2を検出したことを示す判別結果を受信した場合、ホスト装置3が報知処理を行うのが好ましい。かかる報知処理として、ホスト装置3に予め設けられたブザー、発光体、表示機器等の報知手段を駆動する処理が例示される。また、報知処理は、ホスト装置3が有線通信または無線通信によって他の装置(例えば警察や警備会社に設置された通信端末)へ通報する処理であってもよい。
【0117】
また、特に中継通信型によれば、直接通信型に比べて広い範囲に通信装置1を設置することができるため、センサシステム5の適用用途がさらに広がる。
【0118】
例えば、通信装置1を道路に沿って配置することによって、中継通信型センサシステム5を、その道路の交通量、渋滞度合い等を調査するシステムに応用可能である。この場合、物体2として車両等が検出される。また、ホスト装置3が各通信装置1による検出結果を収集して所定の手法で分析することにより、上記の交通量等の情報が得られる。
【0119】
なお、上記では複数の通信装置1を用いたシステム構成を例示したが、センサシステム5に含まれる通信装置1は1つであっても構わない。
【符号の説明】
【0120】
1 近接センサ機能付き通信装置
2 物体
3 ホスト装置
5 センサシステム
20 変調部
21 発振回路
40 復調部
60 アンテナ
80 切り替え部
100 処理部
M1 通信モード
M1t 送信モード
M1r 受信モード
M2 センサモード
MA 稼動状態
MB 休止状態
S0 基本信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接センサ機能付き通信装置およびセンサシステムに係る。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、温度センサや湿度センサ等のセンサと、当該センサによる検出値を計測値に変換する信号処理部と、得られた計測値を当該計測値を利用する機器へ無線によって送出するための送信回路部とを含んだ、無線センサ装置が開示されている。上記センサは、センサ素子と、センサ回路とによって構成されている。例えば温度センサの場合、センサ素子とはサーミスタ自体であり、センサ回路とはサーミスタの抵抗値を電圧変換する抵抗素子等である。
【0003】
特許文献2には、屋内に設置される第1の装置と、屋外に設置される第2の装置とを含んだ、ガスメータシステムが開示されている。当該ガスメータシステムでは、第1の装置で計測されたガス流量の積算演算値が、第1の装置の通信手段と第2の装置の通信手段とを介して、第2の装置の計量値表示手段に表示される。第1の装置の通信手段および第2の装置の通信手段は有線または無線による通信が可能に構成されている。
【0004】
また、特許文献2の上記第1の装置は、保安監視手段(ガス漏れセンサ、熱センサ、煙センサ等の各種センサを有している)によって異常が検出された場合、通信手段を介して外部と通信を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−252216号公報
【特許文献2】特開2009−174895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
センサ手段と通信手段とを有する装置は、種々の応用が考えられるため、今後ますます需要が拡大すると予想される。このため、当該装置に対しては種々の要請がある。例えば小型化の要請である。小型化によって、例えば、当該装置の設置場所の制約を少なくすることができるからである。
【0007】
ところで、特許文献1の無線センサ装置では、センサと無線送信回路部とが併置されている。このため、これらの構成を配置するためのスペースが無線センサ装置の大きさに影響する。また、特許文献2の第1の装置についても、ガス流量計測手段と保安監視手段と通信手段とが併置されているため、同様である。
【0008】
なお、上記の小型化の要請は、特許文献1,2に記載されていない種類のセンサを搭載した装置にも当てはまる。
【0009】
そこで、本発明は、小型の近接センサ機能付き通信装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、上記の小型の近接センサ機能付き通信装置を採用したセンサシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に係る近接センサ機能付き通信装置は、所定の振幅および所定の周波数を有する基本信号を生成して出力する発振回路を含み、前記基本信号を所定の変調方式で変調して出力することが可能に構成されているとともに、前記基本信号を変調せずに出力することも可能に構成されており、変調された前記基本信号または変調されていない前記基本信号を出力するための出力端をさらに含む、変調部と、入力端を含み、前記入力端に入力された信号を前記所定の変調方式に従って復調して出力することが可能に構成されている、復調部と、アンテナと、前記変調部の前記出力端と前記アンテナとの接続/非接続の切り替えと、前記アンテナと前記復調部の前記入力端との接続/非接続の切り替えとを行う、切り替え部と、処理部とを備え、前記処理部は、前記アンテナで無線通信を行う通信モードでは、前記切り替え部を、前記アンテナが前記変調部と前記復調部のうちの一方にのみ接続されるように制御する、通信モード用切り替え制御を行い、前記処理部は、前記アンテナを電界型近接センサの検出電極として用いるセンサモードでは、前記切り替え部を、前記アンテナが前記変調部と前記復調部の両方に接続されるように制御する、センサモード用切り替え制御と、前記変調部を、前記基本信号を変調せずに出力するように制御する、無変調制御とを行い、前記処理部は、前記センサモードにおいて前記復調部から出力される信号の振幅または周波数または位相の変化から、前記アンテナに対して接近または離隔する物体の存在を判別する、判別処理を行う。
【0012】
また、第2の態様に係る近接センサ機能付き通信装置は、上記の第1の態様に係る近接センサ機能付き通信装置であって、前記発振回路は、周波数の異なる複数種類の信号を生成可能に構成され、前記複数種類の信号のうちの一つを前記基本信号として出力し、前記処理部は、前記通信モードで用いる前記基本信号と、前記センサモードで用いる前記基本信号とで周波数を異ならせる、周波数制御を行う。
【0013】
また、第3の態様に係る近接センサ機能付き通信装置は、上記の第1または第2の態様に係る近接センサ機能付き通信装置であって、前記処理部は、前記通信モードと前記センサモードとを時分割で切り替える。
【0014】
また、第4の態様に係る近接センサ機能付き通信装置は、上記の第1ないし第3の態様のうちのいずれか1つに係る近接センサ機能付き通信装置であって、前記処理部は、間欠的に稼動状態になり、1回の稼動状態の期間中に前記通信モードと前記センサモードとを所定の順序で切り替える。
【0015】
また、第5の態様に係る近接センサ機能付き通信装置は、上記の第1ないし第4の態様のうちのいずれか1つに係る近接センサ機能付き通信装置であって、前記処理部は、前記センサモードにおいて前記復調部から出力される前記信号の前記振幅または前記周波数または前記位相の値から、前記アンテナと前記物体との間の距離を導出する、距離導出処理をさらに行う。
【0016】
また、第6の態様に係るセンサシステムは、上記の第1ないし第5の態様のうちのいずれか1つに係る近接センサ機能付き通信装置を少なくとも1つ備えるとともに、前記少なくとも1つの近接センサ機能付き通信装置と無線通信可能に構成されたホスト装置を備え、前記少なくとも1つの近接センサ機能付き通信装置は、前記判別処理による判別結果を前記ホスト装置へ向けて送信する。
【0017】
また、第7の態様に係るセンサシステムは、上記の第6の態様に係るセンサシステムであって、前記少なくとも1つの近接センサ機能付き通信装置は、複数の近接センサ機能付き通信装置であり、前記複数の近接センサ機能付き通信装置のそれぞれは、自身以外の他の近接センサ機能付き通信装置から送信された前記判別結果を前記ホスト装置へ向けて中継する。
【0018】
また、第8の態様に係るセンサシステムは、上記の第6または第7の態様に係るセンサシステムであって、前記ホスト装置は、前記物体を検出したことを示す前記判別結果を受信した場合、報知処理を行う。
【発明の効果】
【0019】
上記の第1ないし第8の態様によれば、センサモードでは、変調部と復調部とアンテナとが接続される。かかる接続形態において、アンテナと当該アンテナの付近に存在する物体とによって形成されるコンデンサ構造が、変調部から復調部へ伝達される無変調状態の基本信号に影響を及ぼす。具体的には、上記物体がアンテナに対して接近または離隔することにより、上記コンデンサ構造の容量値が変化し、その結果、復調部からの出力信号の振幅、周波数等が変化する。かかる変化を利用して上記物体が検知される。つまり、電界型または静電容量型と称される近接センサが構成される。
【0020】
かかる構成によれば、変調部と復調部とアンテナとが通信モードとセンサモードとで共用されている。このため、通信用の構成要素とセンサ用の構成要素とが別々に設けられ単に併置されている装置に比べて、装置の小型化、軽量化を図ることができる。また、かかる共用によれば、上記の単なる併置構造に比べて、重複した部品が削減されるので、低コスト、低価格で装置を提供することができる。換言すれば、大幅なコストアップを伴うことなく、通信装置に近接センサ機能を付与することができる。
【0021】
なお、変調部の共用は、変調部の全部が共用される態様と、変調部の一部が共用される態様とのいずれであってもよく、いずれの態様であっても上記の効果は得られる。かかる点は復調部の共用についても同様である。
【0022】
特に、上記の第2の態様によれば、複数の近接センサ機能付き通信装置が設置された環境において混信等を防止することができる。より具体的には、通信モード(より具体的には送信モード)にある近接センサ機能付き通信装置から出力された信号が、センサモードにある他の近接センサ機能付き通信装置で受信されて検知動作に影響を及ぼすのを防止することができる。また、センサモードにおいてもアンテナから基本信号が出力されるので、かかる出力信号が、通信モード(より具体的には受信モード)にある他の近接センサ機能付き通信装置での受信動作に影響を及ぼすのを防止することができる。
【0023】
また、上記の第4の態様によれば、近接センサ機能付き通信装置は間欠的に稼動状態になるので、消費電力を削減することができる。また、1回の稼動状態の期間中に通信モードとセンサモードとの両方を行うので、両モードを別々の稼動状態期間に分けて行う場合に比べて、処理速度を向上できる。これは、稼動状態期間の初期には実際的に動作可能な状態になるまでのタイムラグが伴い、1回の稼動状態期間中に通信モードとセンサモードとの両方を行うことによって当該タイムラグの回数を減らせるからである。
【0024】
また、上記の第6の態様によれば、上記のように小型化可能な近接センサ機能付き通信装置が採用されているので、通信装置の設置場所についての制約が少ない。これにより、多彩なセンサシステムを提供することができる。
【0025】
また、上記の第7の態様によれば、ホスト装置の無線通信可能な範囲の外に設置された通信装置も、他の通信装置を介してホスト装置と通信することが可能である。このため、各通信装置が直接、ホスト装置と通信を行う構成に比べて、広い範囲に通信装置を設置することできる。したがって、さらに多彩なセンサシステムを提供することができる。
【0026】
また、上記の第8の態様によれば、報知機能を有しているので、例えば防犯システムに代表される監視システムに好適なセンサシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施の形態に係る通信装置を概説するブロック図である(送信モード)。
【図2】第1の実施の形態に係る通信装置を概説するブロック図である(受信モード)。
【図3】第1の実施の形態に係る通信装置を概説するブロック図である(センサモード)。
【図4】ASK(振幅偏移変調)を概説する波形図である。
【図5】第1の実施の形態に係る通信装置を概説するタイミングチャートである。
【図6】第2の実施の形態に係るセンサシステムを概説する模式図である。
【図7】第2の実施の形態に係るセンサシステムを概説する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1の実施の形態>
図1〜図3に、第1の実施の形態に係る通信装置1を概説するブロック図を示す。図1〜図3に例示される構成要素は同じであるが、後述する各動作モードを分かりやすくするために図面を分けている。
【0029】
通信装置1は無線通信機能と近接センサ機能とを備えた装置である。このため、当該装置1を近接センサ機能付き通信装置1または通信機能付きセンサ装置1と称することができる。後述の説明から明らかになるが、近接センサ機能は電界型または静電容量型と称される近接センサによって提供される。
【0030】
通信装置1の動作モードには、無線通信機能を使用して動作する通信モードM1と、近接センサ機能を使用して動作するセンサモードM2とが含まれる。通信モードM1は送信モードM1tと受信モードM1rとに大別される。なお、通信装置1の動作モードは、その他のモード、例えばデータ処理モードM3(後述の図5参照)を含んでもよい。
【0031】
図1〜図3に例示の通信装置1は、変調部20と、復調部40と、アンテナ60と、切り替え部80と、処理部100とを含んでいる。
【0032】
<変調部20>
変調部20は、ここでは、デジタル変調方式の一例であるとともに振幅変調方式の一例であるASK(Amplitude Shift Keying;振幅偏移変調)によって信号変調を行うことが可能に構成されている。かかる変調部20は、図1〜3の例では、発振回路21と、スイッチング手段22と、ロー・パス・フィルタ(以下「LPF」とも称する)23とを含んで構成されている。
【0033】
発振回路21は、所定の振幅および所定の周波数(例えば、430MHz、あるいは、60〜200kHzの範囲から予め選定される周波数)を有した信号(以下「基本信号」とも称する)S0を生成して出力することが可能に構成されている。なお、基本信号S0は送信モードM1tでは搬送波として利用される。ここでは発振回路21が生成可能な周波数は1種類だけの場合を例示するが、かかる例に限定されるものではない(後述する)。
【0034】
スイッチング手段22は、一端が発振回路21の出力端に接続され、他端がLPF23の入力端に接続されている。また、スイッチング手段22は処理部100に接続されており、処理部100によって当該スイッチング手段22の上記の一端と他端との間の開閉制御すなわちオン/オフ制御が行われる。図1および図2には、オフ状態のスイッチング手段22が例示されている。なお、スイッチング手段22は、図1〜図3では典型的な図記号で図示されているが、各種のスイッチング素子やスイッチング回路によって構成可能である。
【0035】
図4の波形図に概説するように、処理部100が送信データに従ってスイッチング手段22をオン/オフ制御することにより、基本信号S0の振幅が当該送信データに対応して変調される。なお、図4にはデータの“0”および“1”がスイッチング手段22のオフ状態およびオン状態にそれぞれ対応する場合を例示しているが、逆の対応付けも可能である。
【0036】
LPF23は、入力端がスイッチング手段22の上記他端に接続され、出力端が切り替え部80に接続されている。LPF23は、基本信号S0の周波数として選定された周波数の信号を通過させるとともに、当該選定周波数の高調波成分等を減衰・除去するように構成されている。図1〜図3の例では、LPF23の出力端が変調部20の出力端にあたり、LPF23から出力される信号S1が変調部20からの出力信号になる。
【0037】
上記のように処理部100が送信データに従ってスイッチング手段22をオン/オフ制御する場合(図4参照)、送信データに応じて振幅変調された基本信号S0が変調部20からの出力信号S1になる。
【0038】
これに対し、処理部100がスイッチング手段22をオン状態に保持し続けることにより、基本信号S0は振幅変調されずに変調部20から出力される。このため、変調されていない(以下「無変調状態」または「無変調」とも表現する)の基本信号S0を、出力信号S1として変調部20から出力させることも可能である。後述するが、センサモードM2(図3参照)では、この無変調の基本信号S0を利用する。
【0039】
<復調部40>
復調部40は、入力された信号S2を、変調部20で採用されている変調方式(ここではASK)に従って復調することが可能に構成されている。かかる復調部40は、図1〜3の例では、バンド・パス・フィルタ(以下「BPF」とも称する)41と、低ノイズアンプ(Low Noise Amplifier。以下「LNA」とも称する)42と、検波回路43と、LPF44と、A/Dコンバータ(以下「ADC」とも称する)45とを含んで構成されている。
【0040】
BPF41は、入力端が切り替え部80に接続され、出力端がLNA42に接続されている。ここではBPF41の入力端が復調部40の入力端にあたる。BPF41は、入力端に入力される信号S2のうちで基本信号S0の周波数付近の帯域の成分を抽出し、当該抽出された周波数成分を有する信号を出力端から出力するように構成されている。
【0041】
LNA42は、入力端がBPF41の上記出力端に接続され、出力端が検波回路43に接続されている。LNA42は、BPF41から入力される信号を増幅し、当該増幅された信号を出力端から出力するように構成されている。なお、受信モードM1rにおける信号S2は微弱であるため、低ノイズ型のアンプであるLNA42は好適である。
【0042】
検波回路43は、入力端がLNA42の上記出力端に接続され、出力端がLPF44に接続されている。検波回路43は、LNA42から入力される信号に対してASK方式に従った検波を行い、検波結果の信号を出力端から出力するように構成されている。検波結果の信号は、復調部40へ入力された信号S2に含まれているデータに対応する、ベースバンド信号にあたる。
【0043】
LPF44は、入力端が検波回路43の上記出力端に接続され、出力端がADC45に接続されている。LPF44は、検波結果の信号中のノイズを減衰・除去するように構成されている。これにより、検波結果の信号を、復調部40への入力信号S2に含まれているデータの波形に近づけることができる。
【0044】
ADC45は、入力端がLPF44の上記出力端に接続され、出力端が処理部100に接続されている。ADC45の出力端は復調部40の出力端にあたり、ADC45からの出力信号S3は復調部40からの出力信号になる。ADC45は、LPF44から入力される信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、得られたデジタル信号を出力端から出力するように構成されている。
【0045】
ここでは、ADC45がコンパレータで構成される場合を例示する。かかる例によれば、LPF44を経た検波結果信号がコンパレータによって波形整形され、これにより復調部40への入力信号S2に含まれているデータの波形が再生される。すなわち、出力信号S3として、入力信号S2に含まれているデジタル情報が得られる。
【0046】
<アンテナ60>
アンテナ60は、送信モードM1t(図1参照)では変調部20で生成された信号S1の無線送信に用いられ、受信モードM1r(図2参照)では外来の無線信号(電波)の受信に用いられる。また、アンテナ60は、後述のように、センサモードM2(図3参照)では電界型近接センサの検出電極として用いられる。
【0047】
<切り替え部80>
切り替え部80は、アンテナ60と、変調部20の上記出力端と、復調部40の上記入力端とに接続されている。また、切り替え部80は処理部100に接続されており、処理部100の制御の下、アンテナ60と変調部20との接続/非接続の切り替え、および、アンテナ60と復調部40との接続/非接続の切り替えが行われる。
【0048】
図1〜図3の例では、切り替え部80は、直列接続された2つのスイッチング手段81,82を含んで構成されている。スイッチング手段81,82は、図1〜図3では典型的な図記号で図示されているが、各種のスイッチング素子やスイッチング回路によって構成可能である。スイッチング手段81の一端は変調部20の出力端(ここではLPF23の出力端)に接続されており、スイッチング手段81の他端はアンテナ60およびもう一つのスイッチング手段82の一端に接続されている。スイッチング手段82の他端は、復調部4の入力端(ここではBPF41の入力端)に接続されている。
【0049】
スイッチング手段81,82は、処理部100に接続されており、処理部100によってオン/オフ制御される。より具体的には、送信モードM1t(図1参照)では、変調部20側のスイッチング手段81がオンにされ、復調部40側のスイッチング手段82はオフにされる。これにより、変調部20の出力信号S1がアンテナ60から送信可能になる。また、受信モードM1r(図2参照)では、変調部20側のスイッチング手段81はオフにされ、復調部40側のスイッチング手段82がオンにされる。これにより、アンテナ60が受信した外来の信号が復調部40へ伝達される。
【0050】
また、センサモードM2(図3参照)では、スイッチング手段81,82の両方がオンにされる。これにより、後述のように、近接センサとしての動作が可能になる。なお、スイッチング手段81,82の両方を同時期にオフにすることも可能であり、かかるスイッチング状態は例えばデータ処理モードM3(図5参照)において採用可能である。
【0051】
ここで、一般に、送信と受信でアンテナを共用するタイプの無線送受信機には、アンテナを送信側(すなわち変調手段側)に接続するか、それとも受信側(すなわち復調手段側)に接続するかを切り替える手段が設けられている。通信装置1の上記切り替え部80は、かかる一般的な切り替え手段に対応するが、次の点で異なる。
【0052】
すなわち、上記の一般的な切り替え手段によれば、アンテナが変調手段と復調手段とのうちのいずれか一方にのみ選択的に接続され、変調手段と復調手段とがアンテナを介して接続されることはない。
【0053】
これに対し、切り替え部80によれば、上記のようにスイッチング手段81,82の両方がオンになる状態を採ることが可能である(図3参照)。このため、切り替え部80は、一般的な切り替え手段による接続形態に加えて、変調部20と復調部40との両方がアンテナ60に接続された形態も形成可能である。つまり、切り替え部80によれば、アンテナ60は変調部20と復調部40とのうちの少なくとも一方に接続される。
【0054】
また、切り替え部80によれば、上記のようにスイッチング手段81,82の両方がオフになる状態を採ることも可能である。
【0055】
なお、変調部20と復調部40とアンテナ60との間の上記各接続形態を実現可能である限り、スイッチング手段81,82による例示の構成以外の構成を切り替え部80に採用してもよい。
【0056】
<処理部100>
処理部100は、通信装置1における各種の演算、制御等の処理を行うように構成されている。例えば、処理部100は、マイクロコンピュータ(換言すればマイクロプロセッサ)と、メモリとを含んで構成可能である。
【0057】
かかる構成例によれば、処理部100によって行われる各種処理を、ソフトウェアによって実現可能である。より具体的には、マイクロコンピュータがプログラムに記述された各処理ステップ(換言すれば手順)を実行する。これにより、マイクロコンピュータは処理ステップに対応する各種手段として機能し、または、マイクロコンピュータによって処理ステップに対応する各種機能が実現される。なお、複数のマイクロコンピュータを採用することも可能であり、この場合、当該複数のマイクロコンピュータの総称が上記のマイクロコンピュータに相当する。
【0058】
メモリは、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM(Erasable Programmable ROM)等)の1つまたは複数で構成可能である。メモリは、各種のデータ(換言すれば情報)、処理部100が実行するプログラム等を格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。
【0059】
なお、処理部100によって実現される各種手段または各種機能の一部または全部をハードウェアによって実現することも可能である。
【0060】
処理部100は、上記のようにスイッチング手段22,81,82に接続されており、当該スイッチング手段22,81,82のオン/オフを制御する。また、処理部100は、ADC45に接続されており、ADC45からデジタル信号S3を取得する。処理部100は、当該デジタル信号S3によって表される情報を利用した各種の演算処理や、当該情報に則った動作・制御に関する処理を行う。
【0061】
<装置1の動作>
図1〜図4に加え、図5のタイミングチャートを参照して、通信装置1の動作を例示する。
【0062】
図5の例によれば、通信装置1は稼動状態MAと休止状態MBとを交互に採る。換言すれば、通信装置1は間欠的に稼動状態MAになる。稼動状態MAでは処理部100、変調部20および復調部40は所定の動作を行い、休止状態MBでは処理部100等は種々の動作を停止する。かかる間欠動作は、例えば、処理部100の内部または外部に設けられたタイマに従って行うことが可能である。
【0063】
かかる間欠動作に対し、休止状態MBを設けずに稼動状態MAを連続させることも可能である。しかし、休止状態MBにおいて処理部100等が動作を停止することにより、消費電力を削減することができる。ここで、休止状態MBにおいて処理部100等が動作を停止するだけでも消費電力の削減に繋がるが、処理部100等への電力供給自体を停止させる構成を採用することによって更なる電力削減を図ることができる。
【0064】
図5の例では、稼動状態MAの期間中に、通信モードM1(送信モードM1tまたは受信モードM1r)と、センサモードM2と、データ処理モードM3とが時分割で切り替わり、所定の順序で選定される。なお、通信モードM1と、センサモードM2と、データ処理モードM3とのモード設定の順序は図5の例に限定されるものではない。
【0065】
また、図5では3つの動作モードM1,M2,M3の全てを1つの稼動状態MA中に実行する場合を例示している。これに対し、例えば1回の稼動状態MAで1つのモードM1,M2またはM3のみを行うことにより、3つの動作モードM1,M2,M3を3回の稼動状態MAに分けて実行するように構成することも可能である。なお、かかる場合も各モードM1,M2,M3は時分割で実行される。
【0066】
但し、1回の稼動状態MAにおいて複数の(ここでは2つまたは3つの)モードを実行する方が、処理速度の向上に資する。これは、休止状態MBにおいて電力供給を停止する場合、電力供給を再開してから実際的に動作可能な状態になるまでにタイムラグが存在するからである。つまり、3つの動作モードM1,M2,M3を複数回の稼動状態MAに分けるほど、これらのモードM1,M2,M3を終了するまでに上記のタイムラグの回数が多くなってしまうからである。
【0067】
次に、各モードM1,M2,M3を説明する。
【0068】
<通信モードM1>
通信モードM1は、上記のように、通信装置1が無線通信機能を使用して動作するモードであり、送信モードM1tと受信モードM1rとに大別される。図5には休止状態MBを挟んで連続する稼動状態MAにおいて、一方の稼動状態MAでは送信モードM1tが実行され、他方の稼動状態MAでは受信モードM1rが実行される場合を例示している。但し、かかる例に限定されるものではない。例えば、送信モードM1tが複数回連続する態様、受信モードM1rが複数回連続する態様、両方のモードM1t,M1rを1回の稼動状態MA中に時分割で実行する態様等を採用してもよい。
【0069】
通信モードM1において、処理部100は、アンテナ60が信号の送受信に応じて変調部20と復調部40とのうちの一方にのみ接続されるように、切り替え部80を制御する(通信モード用切り替え制御)。
【0070】
具体的には、処理部100は、送信モードM1t(図1参照)では、変調部20側のスイッチング手段81をオンにし、復調部40側のスイッチング手段82をオフにする。これにより、変調部20の出力信号S1がアンテナ60から送信可能になる。他方、受信モードM1r(図2参照)では、処理部100は、変調部20側のスイッチング手段81をオフにし、復調部40側のスイッチング手段82をオンにする。これにより、アンテナ60が受信した外来の信号が復調部40へ入力される。
【0071】
<センサモードM2>
センサモードM2は、通信装置1が近接センサとして動作するモードである。センサモードM2では、処理部100は、切り替え部80を制御して、アンテナ60を変調部20と復調部40との両方に接続する(センサモード用切り替え制御)。より具体的には、処理部100は、変調部20側のスイッチング手段81と、復調部40側のスイッチング手段82との両方をオンにする。
【0072】
さらに処理部100は、変調部20と復調部40とアンテナ60とが互いに接続された状態において、変調部20を、基本信号S0を変調せずに出力するように制御する(無変調制御)。図3の例の場合、既述のように、処理部100が変調部20のスイッチング手段22をオン状態に保持し続けることにより、変調部20が無変調状態の基本信号S0を出力するように制御可能である。
【0073】
変調部20から出力された無変調状態の基本信号S0は、信号S2として復調部40へ入力され、復調部40が受信モードM1tと同様に動作することによって復調される。図4を参照すれば、無変調状態の基本信号S0は“1”が連続する信号であると把握することが可能である。このため、基本的には、復調部40から出力される復調信号S3は“1”が連続する信号になる。
【0074】
しかし、変調部20から復調部40へ至る伝送路にはアンテナ60が接続されているため、基本信号S0は変調部20から復調部40へ伝達される間にアンテナ60の影響を受ける。より具体的には、アンテナ60と、アンテナ60付近に存在する物体2(図3参照)とをそれぞれ電極とするコンデンサ構造が形成されるため、復調部40には当該コンデンサCの影響を受けた基本信号S0が入力される。
【0075】
この場合、アンテナ60と物体2との間の距離が短いほど、上記コンデンサCの容量は大きくなり、復調部40で検波された信号の振幅すなわち信号レベルは小さくなる。かかる点に鑑みると、物体2がアンテナ60に対して接近する場合、換言すれば物体2とアンテナ60との間の間隔が小さくなる方向に物体2が移動する場合、復調部40からの出力信号S3の振幅は減少傾向に変化する。逆に、物体2がアンテナ60に対して離隔する場合、換言すれば物体2とアンテナ60との間の間隔が大きくなる方向に物体2が移動する場合、復調部40からの出力信号S3の振幅は増加傾向に変化する。
【0076】
したがって、処理部100は、復調部40からの出力信号S3の振幅の変化から、アンテナ60に対して、換言すれば通信装置1に対して接近または離隔する物体2の存在を判別することが可能である(判別処理)。
【0077】
より具体的には、処理部100は、復調部40から出力される信号S3を取得しているので、当該信号S3が“1”から“0”へ遷移したことを検出可能である。かかる“1”から“0”への状態遷移の検出を以て、処理部100は、通信装置1へ近づく物体2が存在すると判別する。逆に、処理部100は、復調部40からの出力信号S3が“0”から“1”へ遷移したことを検出した場合、アンテナ60から離隔する物体2が存在すると判別する。
【0078】
復調部40からの出力信号S3の振幅変化、換言すれば“0”と“1”との間の状態遷移は、種々の態様で出現しうる。例えば、センサモードM2の期間中に振幅変化が起こる場合が想定される。また、例えば、先行するセンサモードM2の終了から後続のセンサモードM2の開始までの間に(例えば休止状態MB中に)、振幅変化に繋がる状況が起こる場合が想定される。この場合、先行するセンサモードM2における信号S3の振幅(“0”または“1”)を上記メモリに格納しておき、後続のセンサモードM2において、上記メモリに格納された信号S3の振幅と、当該後続のセンサモードM2で取得された信号S3の振幅とを比較すれば、振幅変化を検出可能である。
【0079】
このように、センサモードM2では、アンテナ60を検出電極とし、変調部20を検出用の基本信号S0を生成・出力する手段とし、復調部40を基本信号S0の振幅変化を検出する手段として利用することにより、いわゆる電界型または静電容量型の近接センサが構成される。
【0080】
<データ処理モードM3>
データ処理モードM3は、通信装置1が、換言すれば処理部100が各種のデータ処理を行うモードである。
【0081】
例えば、センサモードM2で実行されるとした上記判別処理をデータ処理モードM3で実行してもよい。より具体的には、処理部100は、センサモードM2では復調部40から信号S3を取得してメモリに蓄積し、当該蓄積されたデータに対してデータ処理モードM3で上記判別処理を行うことが可能である。
【0082】
また、例えば、センサモードM2において物体2の接近または離隔を検出した場合にはその旨を通信装置1の外部へ送信する処理が予め規定されている場合、処理部100は、次の送信モードM1tで送信するパケットをデータ処理モードM3で準備する。
【0083】
また、例えば、処理部100は、受信モードM1rで受信した信号S2(復調部40で復調されて信号S3になる)を、データ処理モードM3で解読する。さらに、解読の結果が例えばセンサモードM2での検出結果を送信することを要求するコマンドである場合、処理部100は、次の送信モードM1tで送信するパケットを当該データ処理モードM3で準備する。
【0084】
また、例えば、受信モードM1rで受信した信号S2が通信装置1の各部の調整に関するコマンドである場合、処理部100は、当該コマンドに従って調整を行う。
【0085】
また、例えば、送信モードM1tで送信した情報、受信モードM1rで受信した情報、センサモードM2で検出した情報を予め規定された手法で整理するための期間として、データ処理モードM3を利用してもよい。
【0086】
データ処理モードM3では、切り替え部80のスイッチング手段81,82の状態は任意に設定可能である。例えば、スイッチング手段81,82の両方がオフにされる。
【0087】
<効果>
通信装置1によれば、変調部20と復調部40とアンテナ60とが通信モードM1とセンサモードM2とで共用されている。このため、通信用の構成要素とセンサ用の構成要素とが別々に設けられ単に併置されている装置に比べて、装置の小型化、軽量化を図ることができる。また、かかる共用によれば、上記の単なる併置構造に比べて、重複した部品が削減されるので、低コスト、低価格で通信装置1を提供することができる。換言すれば、大幅なコストアップを伴うことなく、通信装置に近接センサ機能を付与することができる。
【0088】
<変形例1>
上記では、発振回路21が生成可能な基本信号S0は1種類だけの場合、すなわち基本信号S0の周波数が1種類だけの場合を例示した。
【0089】
これに対し、発振回路21を、周波数の異なる複数種類の信号を生成可能に構成してもよい。かかる構成は、例えば、発振周波数の異なる複数の発振回路を発振回路21に設けることによって、あるいは、発振周波数の調整機能付きの発振回路を発振回路21に採用することによって、実現可能である。この場合、上記の複数種類の信号のうちの一つが基本信号S0として発振回路21から出力される。
【0090】
かかる発振回路21を処理部100が制御することにより、通信モードM1で用いる基本信号S0と、センサモードM2で用いる基本信号S0とで周波数を異ならせることが可能である(周波数制御)。例えば、通信モードM1では430MHzの信号を基本信号S0として用い、センサモードM2では60〜200kHzの範囲から予め選定される周波数の信号を基本信号S0として用いることが可能である。
【0091】
かかる構成によれば、複数の通信装置1が設置された環境において混信等を防止することができる。より具体的には、送信モードM1tにある通信装置1から出力された信号(換言すれば電波)が、センサモードM2にある他の通信装置1で受信されて検知動作に影響を及ぼすのを防止することができる。また、センサモードM2においてもアンテナ60から無変調状態の基本信号S0が出力されるので、かかる出力信号が、受信モードにある他の通信装置1での受信動作に影響を及ぼすのを防止することができる。
【0092】
<変形例2>
上記ではADC45がコンパレータで構成された例を説明した。この場合、LPF44から出力された信号は、復調部40において“0”と“1”の二値信号に変換され、処理部100へ入力される。これに対し、LPF44からの出力信号を多値の量子化レベルで以てアナログ/デジタル変換するように、ADC45を構成してもよい。これによれば、処理部100は、LPF44から出力された信号の振幅の値、換言すれば当該信号の波形を取得可能であり、その結果、当該信号の振幅変化の詳細を取得可能である。
【0093】
これにより、物体2の接近・離隔を高精度に判別することができる。
【0094】
なお、処理部100が、入力された多値信号に対して上記コンパレータと同様の処理を行うことによって上記二値信号を生成することも可能である。これによれば、例えば、受信モードM1tでは二値信号を利用し、センサモードM2は多値信号を利用するといった態様を採用することができる。
【0095】
また、取得した振幅値から、アンテナ60と物体2との間の距離を導出することも可能である。
【0096】
例えば、復調部40から出力される信号S3の振幅値と、アンテナ60から物体2までの距離との間に存在する相関関係を予め取得しておけばよい。かかる相関関係は、例えば、実験によって予め求めることが可能である。あるいは、例えば、アンテナ60と物体2とで形成されるコンデンサ構造と、通信装置1の回路構成とに基づいて作成される回路モデルを解析することによって、上記相関関係を予め求めることが可能である。
【0097】
上記相関関係は、例えば、プログラム中に記述される演算式や、テーブル形式のデータ等の態様で以て、処理部100に付与可能である。これにより、処理部100は、復調部40から出力される信号S3の振幅値を当該相関関係に当てはめることによって、アンテナ60と物体2との間の距離を取得することができる。
【0098】
なお、かかる距離導出処理は、センサモードM2で実行してもよいし、あるいはデータ処理モードM3で実行してもよい。
【0099】
<変形例3>
例えば、変調部20においてLPF23の後段に、LPF23からの出力信号の電力を増幅または減衰させる出力調整部を追加してもよい。これによれば、送信モードM1tにおいてアンテナ60から送信する信号の電力を調整することができるとともに、センサモードM2において変調部20から復調部40へ伝達する信号の電力も調整することができる。
【0100】
<変形例4>
ここで、図1〜図3の例では通信モードM1で使用する構成要素の全てがセンサモードM2で使用されるが、通信モードM1で使用する構成要素とセンサモードM2で使用する構成要素とを一部において共用する構成であっても構わない。
【0101】
例えば、上記のように発振回路21に発振周波数の異なる複数の発振回路を設けた構成では、通信モードM1用の発振回路と、センサモードM2用の発振回路とが別々に設けられる。かかる場合、通信モードM1とセンサモードM2とで変調部20の一部が共用されることになる。
【0102】
すなわち、例えば変調部20の共用は、変調部20の全部が共用される態様と、変調部20の一部が共用される態様とのいずれであってもよく、いずれの態様であっても上記の効果は得られる。かかる点は復調部40の共用についても同様である。
【0103】
<変形例5>
上記では変調方式としてASKを例示したが、振幅変調を伴う他の変調方式、例えばアナログ変調方式の一例であるAM(Amplitude Modulation)を利用することも可能である。
【0104】
また、周波数変調を伴う変調方式、例えば、デジタル変調方式の一例であるFSK(Frequency Shift Keying;周波数偏移変調)や、アナログ変調方式の一例であるFM(Frequency Modulation)を適用することも可能である。
【0105】
この場合、センサモードM2では、アンテナ60と物体2との間の距離が変化すると、アンテナ60と物体2とが形成するコンデンサCの容量が変化し、その結果、復調部40からの出力信号S3の周波数が変化する。したがって、かかる周波数変化から、物体2の接近・離隔を判別することが可能である。また、その周波数の値から、アンテナ60と物体2との間の距離を導出することも可能である。
【0106】
また、位相変調を伴う変調方式、例えば、デジタル変調方式の一例であるPSK(Phase Shift Keying;位相偏移変調)を適用することも可能である。
【0107】
この場合、センサモードM2では、アンテナ60と物体2との間の距離が変化すると、アンテナ60と物体2とが形成するコンデンサCの容量が変化し、その結果、復調部40からの出力信号S3の位相が変化する。したがって、かかる位相変化から、物体2の接近・離隔を判別することが可能である。また、その位相変化の値から、アンテナ60と物体2との間の距離を導出することも可能である。
【0108】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、上記の近接センサ機能付き通信装置1を採用したセンサシステムを例示する。図6および図7に、かかるセンサシステム5を概説する模式図を示す。図6および図7に例示のセンサシステム5は、複数の通信装置1(ここでは3つの通信装置1を例示する)と、ホスト装置3とを含んでいる。なお、図面では近接センサ機能付き通信装置1を「センサ付き装置」と表記している。
【0109】
ホスト装置3は、通信装置1と無線通信可能に構成されている。ホスト装置3は、例えば、通信装置1から送信された情報に基づいて各種の処理を行う。通信装置1からホスト装置3へ向けて送信される情報には、例えば、物体2の接近・離隔に関する判別結果が含まれる。また、ホスト装置3は、例えば、通信装置1へ向けて各種の情報を送信する。かかる送信情報には、例えば、上記の判別結果の送信を要求するコマンドが含まれる。
【0110】
図6の例では、通信装置1のそれぞれが、ホスト装置3と無線通信可能な範囲(換言すれば電波の到達可能な範囲)内に設置されている。この場合、各通信装置1は直接、ホスト装置3と通信可能である。なお、かかる通信形式を直接通信型と称することにする。
【0111】
図7の例では、1つの通信装置1のみがホスト装置3と無線通信可能な範囲内に設置されており、残りの2つの通信装置1は当該範囲外に設置されている。また、これらの3つの通信装置1はそれぞれが、自身以外の他の通信装置1の通信可能範囲内に設置されている。特に、各通信装置1は、処理部100の制御の下、自身以外の他の通信装置1から送信された情報をホスト装置1へ向けて中継する。
【0112】
かかる中継機能によれば、例えば、ホスト装置3の無線通信可能な範囲の外に設置された通信装置1も、他の通信装置1を介して、ホスト装置3と通信することができる。なお、かかる通信形式を中継通信型と称することにする。
【0113】
直接通信型と中継通信型のいずれのセンサシステム5についても、通信装置1が上記のように小型化可能であるので、通信装置1の設置場所の制約が少ない。このため、センサシステム5を多彩な用途に展開することができる。
【0114】
例えば、直接通信型と中継通信型のいずれのセンサシステム5も、例えば、防犯システムに代表される各種の監視システムに応用可能である。当該監視システムが例えば、予め所定位置に静止している物体2がその位置から離隔するのを検知するのに用いられる場合、通信装置1は物体2の付近に設置される。より具体的には、防犯システムの場合、通信装置1はドア、窓等に設置される。また、当該監視システムが例えば、移動する物体2の検知に用いられる場合、通信装置1は物体2の移動経路に設置される。より具体的には、防犯システムの場合、通信装置1は通路や部屋の天井、壁等に設置される。
【0115】
監視システム、特に防犯システムでは、センサモジュールは目立たない場所に簡易に取り付け可能であることが好ましい。かかる点に鑑みれば、小型・軽量で設置場所の制約が少ない通信装置1は好適である。
【0116】
ここで、監視システムでは、ホスト装置3がいずれかの通信装置1から物体2を検出したことを示す判別結果を受信した場合、ホスト装置3が報知処理を行うのが好ましい。かかる報知処理として、ホスト装置3に予め設けられたブザー、発光体、表示機器等の報知手段を駆動する処理が例示される。また、報知処理は、ホスト装置3が有線通信または無線通信によって他の装置(例えば警察や警備会社に設置された通信端末)へ通報する処理であってもよい。
【0117】
また、特に中継通信型によれば、直接通信型に比べて広い範囲に通信装置1を設置することができるため、センサシステム5の適用用途がさらに広がる。
【0118】
例えば、通信装置1を道路に沿って配置することによって、中継通信型センサシステム5を、その道路の交通量、渋滞度合い等を調査するシステムに応用可能である。この場合、物体2として車両等が検出される。また、ホスト装置3が各通信装置1による検出結果を収集して所定の手法で分析することにより、上記の交通量等の情報が得られる。
【0119】
なお、上記では複数の通信装置1を用いたシステム構成を例示したが、センサシステム5に含まれる通信装置1は1つであっても構わない。
【符号の説明】
【0120】
1 近接センサ機能付き通信装置
2 物体
3 ホスト装置
5 センサシステム
20 変調部
21 発振回路
40 復調部
60 アンテナ
80 切り替え部
100 処理部
M1 通信モード
M1t 送信モード
M1r 受信モード
M2 センサモード
MA 稼動状態
MB 休止状態
S0 基本信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の振幅および所定の周波数を有する基本信号を生成して出力する発振回路を含み、前記基本信号を所定の変調方式で変調して出力することが可能に構成されているとともに、前記基本信号を変調せずに出力することも可能に構成されており、変調された前記基本信号または変調されていない前記基本信号を出力するための出力端をさらに含む、変調部と、
入力端を含み、前記入力端に入力された信号を前記所定の変調方式に従って復調して出力することが可能に構成されている、復調部と、
アンテナと、
前記変調部の前記出力端と前記アンテナとの接続/非接続の切り替えと、前記アンテナと前記復調部の前記入力端との接続/非接続の切り替えとを行う、切り替え部と、
処理部と
を備え、
前記処理部は、前記アンテナで無線通信を行う通信モードでは、
前記切り替え部を、前記アンテナが前記変調部と前記復調部のうちの一方にのみ接続されるように制御する、通信モード用切り替え制御
を行い、
前記処理部は、前記アンテナを電界型近接センサの検出電極として用いるセンサモードでは、
前記切り替え部を、前記アンテナが前記変調部と前記復調部の両方に接続されるように制御する、センサモード用切り替え制御と、
前記変調部を、前記基本信号を変調せずに出力するように制御する、無変調制御と
を行い、
前記処理部は、
前記センサモードにおいて前記復調部から出力される信号の振幅または周波数または位相の変化から、前記アンテナに対して接近または離隔する物体の存在を判別する、判別処理
を行う、
近接センサ機能付き通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の近接センサ機能付き通信装置であって、
前記発振回路は、周波数の異なる複数種類の信号を生成可能に構成され、前記複数種類の信号のうちの一つを前記基本信号として出力し、
前記処理部は、前記通信モードで用いる前記基本信号と、前記センサモードで用いる前記基本信号とで周波数を異ならせる、周波数制御を行う、
近接センサ機能付き通信装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の近接センサ機能付き通信装置であって、
前記処理部は、前記通信モードと前記センサモードとを時分割で切り替える、
近接センサ機能付き通信装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載の近接センサ機能付き通信装置であって、
前記処理部は、間欠的に稼動状態になり、1回の稼動状態の期間中に前記通信モードと前記センサモードとを所定の順序で切り替える、
近接センサ機能付き通信装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1項に記載の近接センサ機能付き通信装置であって、
前記処理部は、前記センサモードにおいて前記復調部から出力される前記信号の前記振幅または前記周波数または前記位相の値から、前記アンテナと前記物体との間の距離を導出する、距離導出処理をさらに行う、
近接センサ機能付き通信装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1項に記載の近接センサ機能付き通信装置を少なくとも1つ備えるとともに、
前記少なくとも1つの近接センサ機能付き通信装置と無線通信可能に構成されたホスト装置を備え、
前記少なくとも1つの近接センサ機能付き通信装置は、前記判別処理による判別結果を前記ホスト装置へ向けて送信する、
センサシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のセンサシステムであって、
前記少なくとも1つの近接センサ機能付き通信装置は、複数の近接センサ機能付き通信装置であり、
前記複数の近接センサ機能付き通信装置のそれぞれは、自身以外の他の近接センサ機能付き通信装置から送信された前記判別結果を前記ホスト装置へ向けて中継する、
センサシステム。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載のセンサシステムであって、
前記ホスト装置は、前記物体を検出したことを示す前記判別結果を受信した場合、報知処理を行う、
センサシステム。
【請求項1】
所定の振幅および所定の周波数を有する基本信号を生成して出力する発振回路を含み、前記基本信号を所定の変調方式で変調して出力することが可能に構成されているとともに、前記基本信号を変調せずに出力することも可能に構成されており、変調された前記基本信号または変調されていない前記基本信号を出力するための出力端をさらに含む、変調部と、
入力端を含み、前記入力端に入力された信号を前記所定の変調方式に従って復調して出力することが可能に構成されている、復調部と、
アンテナと、
前記変調部の前記出力端と前記アンテナとの接続/非接続の切り替えと、前記アンテナと前記復調部の前記入力端との接続/非接続の切り替えとを行う、切り替え部と、
処理部と
を備え、
前記処理部は、前記アンテナで無線通信を行う通信モードでは、
前記切り替え部を、前記アンテナが前記変調部と前記復調部のうちの一方にのみ接続されるように制御する、通信モード用切り替え制御
を行い、
前記処理部は、前記アンテナを電界型近接センサの検出電極として用いるセンサモードでは、
前記切り替え部を、前記アンテナが前記変調部と前記復調部の両方に接続されるように制御する、センサモード用切り替え制御と、
前記変調部を、前記基本信号を変調せずに出力するように制御する、無変調制御と
を行い、
前記処理部は、
前記センサモードにおいて前記復調部から出力される信号の振幅または周波数または位相の変化から、前記アンテナに対して接近または離隔する物体の存在を判別する、判別処理
を行う、
近接センサ機能付き通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の近接センサ機能付き通信装置であって、
前記発振回路は、周波数の異なる複数種類の信号を生成可能に構成され、前記複数種類の信号のうちの一つを前記基本信号として出力し、
前記処理部は、前記通信モードで用いる前記基本信号と、前記センサモードで用いる前記基本信号とで周波数を異ならせる、周波数制御を行う、
近接センサ機能付き通信装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の近接センサ機能付き通信装置であって、
前記処理部は、前記通信モードと前記センサモードとを時分割で切り替える、
近接センサ機能付き通信装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載の近接センサ機能付き通信装置であって、
前記処理部は、間欠的に稼動状態になり、1回の稼動状態の期間中に前記通信モードと前記センサモードとを所定の順序で切り替える、
近接センサ機能付き通信装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1項に記載の近接センサ機能付き通信装置であって、
前記処理部は、前記センサモードにおいて前記復調部から出力される前記信号の前記振幅または前記周波数または前記位相の値から、前記アンテナと前記物体との間の距離を導出する、距離導出処理をさらに行う、
近接センサ機能付き通信装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1項に記載の近接センサ機能付き通信装置を少なくとも1つ備えるとともに、
前記少なくとも1つの近接センサ機能付き通信装置と無線通信可能に構成されたホスト装置を備え、
前記少なくとも1つの近接センサ機能付き通信装置は、前記判別処理による判別結果を前記ホスト装置へ向けて送信する、
センサシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のセンサシステムであって、
前記少なくとも1つの近接センサ機能付き通信装置は、複数の近接センサ機能付き通信装置であり、
前記複数の近接センサ機能付き通信装置のそれぞれは、自身以外の他の近接センサ機能付き通信装置から送信された前記判別結果を前記ホスト装置へ向けて中継する、
センサシステム。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載のセンサシステムであって、
前記ホスト装置は、前記物体を検出したことを示す前記判別結果を受信した場合、報知処理を行う、
センサシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2011−133920(P2011−133920A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289947(P2009−289947)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】
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