説明

近赤外反射フィルム及び近赤外反射体

【課題】水系の屈折率形成用塗布液を用い、製造コストが安く、大面積化が可能であり、耐久性と柔軟性があり、近赤外反射性に優れ、可視光透過率が高い近赤外反射フィルム及びその近赤外反射フィルムを設けた近赤外反射体を提供する。
【解決手段】基材上に、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを少なくとも1つ有し、隣接する該高屈折率層と該低屈折率層との屈折率差が0.1以上である近赤外反射フィルムにおいて、該高屈折率層が、(1)表面がオイルで被覆された金属酸化物粒子と、(2)水溶性バインダーを含有することを特徴とする近赤外反射フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外反射性、可視光透過性、膜柔軟性及び耐久性に優れた近赤外反射フィルム及び近赤外反射フィルムを設けた近赤外反射体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー対策への関心の高まりから、冷房設備にかかる負荷を減らす観点から、建物や車両の窓ガラスに装着させて、太陽光の熱線の透過を遮断する近赤外反射フィルムの要望が高まってきている。
【0003】
近赤外反射フィルムの形成方法としては、主には、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた構成からなる積層膜を、蒸着法、スパッタ法などのドライ製膜法を用いて形成する方法が提案されている。しかし、ドライ製膜法は、形成に用いる真空装置等が大型になり、製造コストが高く、大面積化が困難であり、しかも、基材として耐熱性素材に限定される等の課題を抱えている。
【0004】
上記のような課題を有しているドライ製膜法に代えて、湿式塗布法を用いて近赤外反射フィルムを形成する方法が知られている。
【0005】
例えば、ルチル型の酸化チタン、紫外線硬化型バインダー及び有機溶剤から構成される高屈折率塗膜形成用組成物を、バーコーター等を用いた湿式塗布方式により基材上に塗布して透明積層体を形成する方法(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示されている方法では、高屈折率層形成用塗布液の媒体としては、主には、有機溶剤により形成されているため、高屈折率層形成及び乾燥時に、多量の有機溶剤を飛散させることになり、環境上の課題がある。更に、上記開示されている方法では、バインダーとして紫外線硬化型バインダーや熱硬化型バインダーを用いて、高屈折率層を形成した後、紫外線あるいは熱により硬化するため、経時で柔軟性が乏しくなる塗膜物性となっている。
【0007】
更に、ルチル型酸化チタン粒子を有機溶媒中にそのまま、または、特定の表面処理剤を用いて分散したスラリーを用いているため、経時で塗膜が変色してしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−123766号公報
【特許文献2】特開2009−86659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、水系の屈折率形成用塗布液を用い、製造コストが安く、大面積化が可能であり、耐久性と経時しても安定した柔軟性があり、近赤外反射性に優れ、可視光透過率が高い近赤外反射フィルムとその製造方法及びその近赤外反射フィルムを設けた近赤外反射体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.基材上に、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを少なくとも1つ有し、隣接する該高屈折率層と該低屈折率層との屈折率差が0.1以上である近赤外反射フィルムにおいて、該高屈折率層が、(1)表面がオイルで被覆された金属酸化物粒子と、(2)水溶性バインダー、を含有することを特徴とする近赤外反射フィルム。
【0012】
2.前記高屈折率層が、(1)表面がオイルで被覆された金属酸化物粒子、の金属酸化物粒子として、体積平均粒径が100nm以下のルチル型酸化チタン粒子を含有することを特徴とする前記1に記載の近赤外反射フィルム。
【0013】
3.前記高屈折率層の(2)水溶性バインダーが、ゼラチンを含有することを特徴とする前記1または2に記載の近赤外反射フィルム。
【0014】
4.基材上に、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを少なくとも1つ形成し、隣接する該高屈折率層と該低屈折率層との屈折率差を0.1以上とする近赤外反射フィルムの製造方法において、該高屈折率層を、(1)表面がオイルで被覆された金属酸化物粒子と、(2)水溶性バインダー、を含有する高屈折率層形成用の塗布液を用いて形成することを特徴とする近赤外反射フィルムの製造方法。
【0015】
5.前記高屈折率層形成用の塗布液は、(1)表面がオイルで被覆された金属酸化物粒子を、金属酸化物粒子の表面を脂肪族化合物により表面修飾しオイルと分散(混合)し、界面活性剤を用いて水系媒体中に分散することにより製造した後、(2)水溶性バインダーを添加して調製することを特徴とする前記4に記載の近赤外反射フィルムの製造方法。
【0016】
6.基体の少なくとも一方の面側に、前記1〜3のいずれか1項に記載の近赤外反射フィルムを有することを特徴とする近赤外反射体。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、水系の屈折率形成用塗布液を用い、製造コストが安く、大面積化が可能であり、耐久性と柔軟性があり、近赤外反射性に優れ、可視光透過率が高い近赤外反射フィルムとその製造方法及び近赤外反射フィルムを設けた近赤外反射体を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0019】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、基材上に、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを少なくとも1つ有し、隣接する該高屈折率層と該低屈折率層との屈折率差が0.1以上である近赤外反射フィルムにおいて、該高屈折率層が、(1)表面がオイルで被覆された金属酸化物粒子と、(2)水溶性バインダー、を含有する近赤外反射フィルムにより、水系の屈折率形成用塗布液を用い製造することができ、製造コストが安く、大面積化が可能であり、耐久性と柔軟性があり、近赤外反射性に優れ、可視光透過率が高い近赤外反射フィルムを実現することができることを見出し、本発明に至った次第である。
【0020】
即ち、従来の近赤外反射フィルムの製造において、樹脂バインダー中に金属酸化物微粒子を分散した高屈折率層の形成方法として、主には、媒体として有機溶剤を用いた高屈折率層塗布液を用いて形成していたが、塗膜均一性あるいは環境適性で問題を抱えていた。
【0021】
従来の方法、例えば、樹脂ポリマーと金属酸化物粒子(例えば、酸化チタン粒子)を含む高屈折率層塗布液を、水系の塗布液として適用がなされてこなかった理由としては、水系の高屈折率層塗布液を用いて塗膜形成した際、乾燥過程で塗膜が固化するまでの間に、乾燥風により塗膜表面に波紋(この様な現象を「吹かれムラ」ともいう)が生じて塗膜の平面性が損なわれること、あるいは水系媒体である水溶性高分子溶液中に酸化チタン粒子を、増粘等をおこすことなく安定して分散させることが困難なためであった。
【0022】
本発明者は、上記課題に鋭意検討を進めた結果、水系の高屈折率層形成用の塗布液として、(1)表面がオイルで被覆された金属酸化物粒子(例えば、ルチル型の酸化チタン等)と、(2)水溶性バインダー(例えば、ゼラチン)は、水系媒体中に安定に分散させて存在させることができると共に、塗布液として低温環境での増粘性を確保することができ、塗布乾燥時に形成した塗膜において吹かれムラを生じることなく、均一な塗膜を得ることができ、環境適性にも優れた近赤外反射フィルムを得ることができたものである。
【0023】
以下、本発明の近赤外反射フィルムの構成要素、及び本発明を実施するための形態等について詳細な説明をする。
【0024】
《近赤外反射フィルム》
本発明の近赤外反射フィルムは、基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットを少なくとも1つ積層し、隣接する該高屈折率層と該低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることを一つの特徴とする。更には、本発明の近赤外反射フィルムの光学特性として、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が50%以上であり、かつ、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。
【0025】
一般に、近赤外反射フィルムにおいては、高屈折率層と低屈折率層の屈折率の差を大きく設計することが、少ない層数で赤外反射率を高くすることができる観点で好ましいが、本発明では、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットの少なくとも1つにおいて、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることを特徴とし、好ましくは0.3以上であり、更に好ましくは0.4以上である。
【0026】
特定波長領域の反射率は、隣接する2層の屈折率差と積層数で決まり、屈折率の差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率を得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、赤外反射率90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと、20層以上の積層が必要になり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下し、また故障なく製造することも非常に困難になる。反射率の向上と層数を少なくする観点からは、屈折率差に上限はないが、実質的には1.40程度が限界である。
【0027】
次いで、本発明の近赤外反射フィルムにおける高屈折率層と低屈折率層の基本的な構成概要について説明する。
【0028】
本発明の近赤外反射フィルムにおいては、基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットを少なくとも1つ積層した構成であればよいが、好ましい高屈折率層と低屈折率層の層数としては、上記の観点から、総層数の範囲としては、100層以下、すなわち50ユニット以下であり、より好ましくは40層(20ユニット)以下であり、さらに好ましくは20層(10ユニット)以下である。
【0029】
また、本発明の近赤外反射フィルムにおいては、隣接する高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることを特徴するが、高屈折率層と低屈折率層を上記のようにそれぞれ複数層有する場合には、全ての屈折率層が本発明で規定する要件を満たすことが好ましい。ただし、最表層や最下層に関しては、本発明で規定する要件外の構成であっても良い。
【0030】
また、本発明の近赤外反射フィルムにおいては、高屈折率層の好ましい屈折率としては1.80〜2.50であり、より好ましくは1.90〜2.20である。また、低屈折率層の好ましい屈折率としては1.10〜1.60であり、より好ましくは1.30〜1.50である。
【0031】
また、本発明の近赤外反射フィルムにおいては、金属酸化物粒子として体積平均粒径100nm以下のルチル型酸化チタンを、高屈折率層に添加することが好ましく、金属酸化物粒子を高屈折率層と低屈折率層の両層に添加することがより好ましい。本発明において、高屈折率層中における金属酸化物粒子の含有量としては、高屈折率層全質量の15質量%以上、50質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは、20質量%以上、40質量%以下である。
【0032】
また、本発明に係る高屈折率層は水溶性バインダーを含有することを特徴とするが、低屈折率層に添加することもできる。本発明において、高屈折率層中における水溶性バインダーの含有量としては、高屈折率層全質量の10質量%以上、50質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは、20質量%以上、40質量%以下である。
【0033】
本発明において、高屈折率層、低屈折率層の屈折率は、下記の方法に従って求めることができる。
【0034】
基材上に屈折率を測定する各屈折率層を単層で塗設したサンプルを作製し、このサンプルを10cm×10cmに断裁した後、下記の方法に従って屈折率を求める。分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定面とは反対側の面(裏面)を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率を25点測定して平均値を求め、その測定結果より平均屈折率を求める。
【0035】
〔高屈折率層〕
本発明に係る高屈折率層においては、(1)表面がオイルで被覆された金属酸化物粒子と、(2)水溶性バインダーを含有することを特徴とする。
【0036】
(金属酸化物粒子)
本発明に係る高屈折率層に用いられる金属酸化物粒子としては、屈折率が2.0以上で、体積平均粒径が100nm以下の金属酸化物粒子を用いることが好ましく、例えば、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン等を挙げることができるが、特に、屈折率と柔軟性を向上できる点でルチル型酸化チタン粒子を用いることが好ましい。
【0037】
〈ルチル型酸化チタン〉
本発明においては、金属酸化物粒子が、体積平均粒径が100nm以下のルチル型(正方晶形)の酸化チタン粒子であることが好ましい。
【0038】
ここでいう体積平均粒径とは、媒体中に分散された一次粒子または二次粒子の体積平均粒径であり、レーザー回折/散乱法、動的光散乱法等により測定できる。
【0039】
本発明に係るルチル型酸化チタン粒子の体積平均粒径は、100nm以下であることが好ましいが、4nm以上、50nm以下であることがより好ましく、更に好ましくは4nm以上、30nm以下である。体積平均粒径が100nm以下であれば、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。体積平均粒径が100nmを超える酸化チタン粒子は、本発明に限らず高屈折率層に用いるには適正なものといえない。
【0040】
本発明に係るルチル型酸化チタン粒子の体積平均粒径とは、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する金属酸化物粒子の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
【0041】
さらに、本発明に係る酸化チタン粒子は、単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下をいう。更に好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%となる粒子である。
【0042】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
〈ルチル型酸化チタンゾルの製造方法〉
本発明においては、近赤外反射フィルムを製造する方法として、水系高屈折率層塗布液を調製する際に、ルチル型酸化チタンとして、pHが1.0以上、3.0以下で、かつチタン粒子のゼータ電位が正である水系の酸化チタンゾルを用いることが好ましい。
【0043】
本発明で用いることのできるルチル型酸化チタンゾルの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等に記載された事項を参照にすることができる。
【0044】
また、本発明に係るルチル型酸化チタンのその他の製造方法については、例えば、「酸化チタン−物性と応用技術」清野学 p255〜258(2000年)技報堂出版株式会社、或いはWO2007/039953号明細書の段落番号0011〜0023の記載の工程(2)の方法を参考にすることができる。
【0045】
上記工程(2)による製造方法とは、二酸化チタン水和物をアルカリ金属の水酸物又はアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選択される、少なくとも1種の塩基性化合物で処理する工程(1)の後に、得られた二酸化チタン分散物を、カルボン酸基含有化合物及び無機酸で処理する工程(2)からなる。本発明では、工程(2)により得られた無機酸によりpHを1.0〜3.0に調整されたルチル型酸化チタンの水系ゾルを用いることができる。
【0046】
〈表面がオイルで被覆された金属酸化物粒子の製造方法〉
本発明における表面がオイルで被覆された金属酸化物粒子は、上記金属酸化物粒子、オイルと界面活性剤水溶液を一緒に分散することで水系分散液として得られる。金属酸化物粒子表面はある程度の疎水性をもつため、オイルと親和性をもち、オイルと混合すると水性媒体中でオイルは金属粒子表面に吸着しこれを被覆する。
【0047】
本発明で被覆とは金属酸化物粒子表面の80%以上を覆うことが好ましく、さらに好ましくは90%以上を覆うことであり、より好ましくは、100%覆うことである。
【0048】
さらに本発明においては、金属酸化物粒子表面を金属酸化物粒子表面と相互作用しうる基を有する低分子の脂肪族化合物で処理して修飾し、表面を疎水性としてから、オイルと分散(混合)した後、界面活性剤を用いて水系媒体中で分散することが好ましい。これによりオイルにより金属酸化物粒子表面が効率的に覆われた水系分散液を安定に得ることができ、またより柔軟性、耐久性が向上するので好ましい。金属酸化物粒子表面を脂肪族化合物で処理して修飾するには例えば金属酸化物粒子分散液ないし金属酸化物粒子を金属酸化物粒子表面と相互作用しうる基を有する脂肪族化合物と混合・接触させればよい。
【0049】
ここで水系媒体とは、少量の有機溶媒例えばアルコール類等を含んでいてもよく、水を60質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上有するものである。界面活性剤水溶液が好ましい。
【0050】
ここで、オイルとしては実質的に水不溶(水中への溶解度5%以下(25℃))で大気圧における沸点が約160℃以上、好ましくは180℃以上の高沸点溶媒が用いられる。この高沸点溶媒としては、米国特許第2,322,027号に記載されているような、例えばフタル酸アルキルエステル(ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど)、リン酸エステル(トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、ジオクチルブチルフォスフェート)、クエン酸エステル(例えばアセチルクエン酸トリブチル)、安息香酸エステル(例えば安息香酸オクチル)、アルキルアミド(例えばジエチルラウリルアミド)、脂肪酸エステル類(例えばジブトキシエチルサクシネート、ジエチルアゼレート)、トリメシン酸エステル類(例えばトリメシン酸トリブチル)などが使用できる。特に大気圧における沸点が180℃以上であるエステル類、中でもフタル酸アルキルエステル、リン酸エステル等のエステル類が好ましい。
【0051】
また、金属酸化物粒子表面を修飾する低分子化合物としては金属酸化物粒子表面と相互作用しうる基を有する脂肪族化合物であれば制限はなく、金属酸化物粒子表面と相互作用しうる基をもつため混合することによって金属酸化物粒子表面に結合ないし吸着する。例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基などを有する化合物が挙げられる。具体的には酢酸、プロピオン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、アラキドン酸、アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、グリコール酸、乳酸、酒石酸、グルタル酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、メタンチオール、エタンチオール、ブタンチオール、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ドデシルアミンなどが挙げられるが、カルボキシル基、アミノ基を有する化合物が好ましく用いられる。
【0052】
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の各種界面活性剤を挙げることができ、高分子界面活性剤やフッ素系界面活性剤であってもよい。このうち、アニオン系もしくはノニオン系活性剤を用いることがより好ましい。具体例としては、例えば、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸、ジエチルヘキシルスルホコハク酸、さらに特開昭62−215272(649〜706頁)やリサーチ・ディスクロージャー(RD)Item17643,26〜27頁(1978年12月)、同18716,650頁(1979年11月),同307105,875〜876頁(1989年11月)等に記載されるものを挙げることができる。
【0053】
さらに、金属酸化物粒子とオイルとを界面活性剤水溶液と分散する際に、沸点約30℃ないし約150℃の有機溶媒、例えば酢酸エチル、酢酸ブチルの如き低級アルキルアセテート、プロピオン酸エチル、メチルイソブチルケトン、β−エトキシエチルアセテート、メチルセロソルブアセテートを用いることもできる。
【0054】
前記金属酸化物粒子とオイル(高沸点溶媒)との使用比率としては10〜1/10(質量比)が好ましい。
【0055】
上記水系分散液を調製する分散機としては、超音波、高速攪拌型のディゾルバー、ホモミキサー、ホモブレンダー、ホモジナイザー、マントンゴーリン、コロイドミル等を用いることができる。
【0056】
本発明の表面がオイルで被覆された金属酸化物粒子を用いることで、オイルにより応力緩和され膜柔軟性が得られたと考えられる。さらに驚くべきことに、このオイルによりメカニズムは不明だが金属酸化物粒子表面の活性が抑性され耐久性が向上したものと推定される。
【0057】
(水溶性バインダー)
本発明における水溶性バインダーは水に対する溶解度(25℃)が0.1質量%以上で重量平均分子量が5,000以上の高分子化合物であれば良く、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、β1−4グルカン(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等)、ガラクタン(例えば、アガロース、アガロペクチン等)、ガラクトマンノグリカン(例えば、ローカストビーンガム、グアラン等)、キシログルカン(例えば、タマリンドシードガム等)、グルコマンノグリカン(例えば、蒟蒻マンナン、木材由来グルコマンナン、キサンタンガム等)、ガラクトグルコマンノグリカン(例えば、針葉樹材由来グリカン)、アラビノガラクトグリカン(例えば、大豆由来グリカン、微生物由来グリカン等)、グルコラムノグリカン(例えば、ジェランガム等)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸等)、アルギン酸及びアルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ファーセレラン等の紅藻類に由来する天然高分子多糖類等の各種多糖類、反応性官能基を有するポリマー類を使用できるが、ゼラチンがより耐久性を向上できる点で好ましい。
【0058】
〈ゼラチン〉
本発明に適用可能なゼラチンとしては、従来、ハロゲン化銀写真感光材料分野で広く用いられてきた各種ゼラチンを適用することができ、例えば、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンの他に、ゼラチンの製造過程で酵素処理をする酵素処理ゼラチン及びゼラチン誘導体、すなわち分子中に官能基としてのアミノ基、イミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基を持ち、それと反応して得る基を持った試薬で処理し改質したものでもよい。ゼラチンの一般的製造法に関しては良く知られており、例えばT.H.James:The Theory of Photographic Process 4th. ed. 1977(Macmillan)55項、科学写真便覧(上)72〜75項(丸善)、写真工学の基礎−銀塩写真編119〜124(コロナ社)等の記載を参考にすることができる。また、リサーチ・ディスクロージャー誌第176巻、No.17643(1978年12月)のIX項に記載されているゼラチンを挙げることができる。
【0059】
本発明においては、平均分子量が10万以上の高分子量ゼラチンを含有することが好ましく、平均分子量としては、10万以上、20万以下の範囲にあることが好ましい。
【0060】
本発明において、用いられる高分子量ゼラチンの平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法によって測定することができる。ゼラチンの分子量分布及び平均分子量についても、一般的な公知の方法であるゲルパーミエーションクロマトグラ法(GPC法)によって測定することができる。
【0061】
ゼラチンの分子量については、D.Lorry and M.Vedrines,Proceedings of the 4th IAG Conference,Sept.1983,P.35、大野隆司、小林裕幸、水澤伸也、日本写真学会誌、47,237(1984)等に記載されているように、コラーゲンの構成単位であるα成分(分子量約10万)及び、その二量体、三量体であるβ成分、γ成分、多量体である高分子量成分、更にはこれらの成分が不規則に切断された低分子量成分からなるのが一般的であるが、平均分子量が10万以上の高分子量ゼラチンとしては、上記各成分の中でも、コラーゲンの構成単位であるα成分(分子量約10万)及び、その二量体、三量体であるβ成分、γ成分が主体のゼラチンである。
【0062】
ゼラチン分子量分布の測定は、上記文献や特開昭60−80838号、同62−87952号、同62−265645号、同62−279329号、同64−46742号の各公報に記載されているように、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法によって行われる。本発明においては、ゼラチンの各分子量成分の割合は、以下の条件でGPC法によって求める。
【0063】
a)カラム:Asahipak、GS−620(旭化成工業社製)
2本直列接続 カラム温度50℃
b)溶離液:0.1モル/L KHPOと0.1モル/L NaHPOとの等量混合溶液
pH6.8 流速1.0ml/min
c)試料:ゼラチンの0.2%溶離液溶液
注入量 100μl
d)検出:紫外線吸収分光光度計(UV波長230nm)
標準物質としてはプルランを用いプルラン換算の重量平均分子量を測定する。
【0064】
リテンションタイム(Retention Time)による230nmの吸収の変化をみると、先ず排除限界のピークが現れ、次にゼラチンのγ成分、β成分、α成分によるピークが順次現れ、更にリテンションタイムが長くなるにつれて、徐々に減衰するような形となる。標準サンプルにて校正した流出曲線のリテンションタイム(Retention Time)から分子量を求めることができる。
【0065】
α成分は、分子量約10万のポリペプチド鎖で構成され、α鎖の二量体(β成分)、三量体(γ成分)等ゼラチンは種々の分子量を持つゼラチン分子の集合体となっており、またゼラチンメーカーから所定の平均分子量を有するゼラチンを入手することもできる。
【0066】
また、本発明に係るゼラチンの製法としては、例えば、下記の方法などが挙げられる。
【0067】
(1)ゼラチン製造中の抽出操作で、抽出後期の抽出物を使用して抽出初期のもの(低分子量成分)は排除する。
【0068】
(2)前記製法において、抽出以後乾燥までの工程において、処理温度を40℃未満とする。
【0069】
(3)ゼラチンを冷水(15℃)透析する。
【0070】
上記の方法を単独又は併用して用いることにより、ゼラチンを得ることができる。
【0071】
本発明においては、本発明に係る高屈折率層が、平均分子量が10万以上の高分子量ゼラチンを含有することが好ましいが、下記の方法で確認することができる。
【0072】
近赤外反射フィルムを構成する高屈折率層を単離した後、上記ゲルパーミエーションクロマトグラ法(GPC法)によってゼラチンの分子量分布を測定した後、横軸にゼラチンの分子量を、縦軸に含有量をプロットして、分子量分布曲線を作製した後、分子量が10万以上に含有量の極大ピークが出現することで判定する。
【0073】
〈硬膜剤〉
本発明に係る高屈折率層塗布液には、高屈折率層を形成した後に、塗膜を硬化するため、必要に応じて硬化剤を添加することもできる。
【0074】
用いることのできる硬膜剤としては、通常の写真乳剤層の硬膜剤として使用されている公知の化合物を使用でき、例えば、ビニルスルホン化合物、尿素−ホルマリン縮合物、メラニン−ホルマリン縮合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、活性オレフィン類、イソシアネート系化合物などの有機硬膜剤、クロム、アルミニウム、ジルコニウムなどの無機多価金属塩類などを挙げることができる。
【0075】
〔低屈折率層〕
本発明では、前述の高屈折率層よりも屈折率が少なくとも0.1以上低い低屈折率層を有する。低屈折率層は、屈折率が1.6以下であることが好ましい。さらには、1.30〜1.50である。
【0076】
本発明に係る低屈折率層においては、水溶性バインダー中に、金属酸化物粒子を分散したものを用いる。なお、低屈折率層で用いる水溶性バインダーは、上記高屈折率層で記載の水溶性バインダーと同様のもの、すなわち、セルロース類、増粘多糖類、反応性官能基を有するポリマー類や各種ゼラチン類を使用できる。なお、高屈折率層と低屈折率層で用いられる水溶性バインダーは、同一であっても異なっていても良いが、同一であることが同時重層塗布を実施する上で好ましい。
【0077】
本発明に係る低屈折率層においては、金属酸化物粒子として二酸化ケイ素を用いることが好ましく、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることが特に好ましい。
【0078】
本発明において、二酸化ケイ素は、その平均粒径が100nm以下であることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、20nm以下のものが好ましく、より好ましくは10nm以下である。また二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
【0079】
本発明に係る金属酸化物の平均粒径は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0080】
〔その他の添加剤〕
本発明に係る高屈折率層、低屈折率層には、必要に応じて各種添加剤を用いることができる。
【0081】
〈等電点が6.5以下のアミノ酸〉
本発明でいうアミノ酸とは、同一分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する化合物であり、α−、β−、γ−などいずれのタイプのアミノ酸でもよいが、等電点が6.5以下のアミノ酸であることを特徴とする。アミノ酸には光学異性体が存在するものもあるが、本発明においては光学異性体による効果の差はなく、いずれの異性体も単独であるいはラセミ体でも使用することができる。
【0082】
本発明に係るアミノ酸の詳しい解説は、化学大辞典1縮刷版(共立出版;昭和35年発行)268頁〜270頁の記載を参照することができる。
【0083】
具体的に好ましいアミノ酸として、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、セリン、等を挙げることができ、特にグリシン、セリンが好ましい。
【0084】
アミノ酸の等電点とは、アミノ酸は特定のpHにおいて分子内の正・負電荷が釣り合い、全体としての電荷が0となるので、このpH値をいう。本発明においては等電点6.5以下のアミノ酸を用いるが、各アミノ酸の等電点については、低イオン強度での等電点電気泳動で求めることが出来る。
【0085】
〈エマルジョン樹脂〉
本発明においては、本発明に係る高屈折率層または前記低屈折率層が、更にエマルジョン樹脂を含有することが好ましい。
【0086】
本発明でいうエマルジョン樹脂とは、油溶性のモノマーを、分散剤を含む水溶液中でエマルジョン状態に保ち、重合開始剤を用いて乳化重合させた樹脂微粒子である。
【0087】
エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、一般的には、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。
【0088】
本発明に係るエマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な、例えば、平均粒径が0.01〜2.0μm程度の樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られないが、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合すると、微細な微粒子の少なくとも表面に水酸基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
【0089】
水酸基を含む高分子分散剤とは、重量平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖または末端に水酸基が置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、特にポリビニルアルコールが好ましい。
【0090】
高分子分散剤として使用されるポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、カチオン変性したポリビニルアルコールやカルボキシル基のようなアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を有するシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。ポリビニルアルコールは、平均重合度が5000以内であると、エマルジョン樹脂の粘度が高くなく、製造時に取り扱いやすい。したがって、平均重合度は300〜5000のものが好ましく、1500〜5000のものがより好ましく、3000〜4500のものが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものがより好ましい。
【0091】
上記の高分子分散剤で乳化重合される樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル系化合物、スチレン系化合物といったエチレン系単量体、ブタジエン、イソプレンといったジエン系化合物の単独重合体または共重合体が挙げられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0092】
〈各屈折率層のその他の添加剤〉
本発明に係る高屈折率層と低屈折率層に適用可能な各種の添加剤を以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0093】
〔基材〕
本発明の近赤外反射フィルムに適用する基材としては、フィルム支持体であることが好ましく、フィルム支持体は、透明であっても不透明であってもよく、種々の樹脂フィルムを用いることができ、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、3酢酸セルロース等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルムである。ポリエステルフィルム(以降ポリエステルと称す)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、およびこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
【0094】
本発明に係るフィルム支持体の厚みは、10〜300μmであることが好ましく、より好ましくは20〜150μmである。また、本発明のフィルム支持体は、2枚を重ねたものであっても良く、この場合、その種類が同じでも異なってもよい。
【0095】
〔近赤外反射フィルムの製造方法〕
本発明の近赤外反射フィルムの製造方法においては、基材上に、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを少なくとも1つ形成し、隣接する該高屈折率層と該低屈折率層の屈折率差が0.1以上とし、該高屈折率層が、(1)表面がオイルで被覆された金属酸化物粒子と、(2)(例えば、ゼラチン)を含有する高屈折率層形成用の塗布液を用いて形成することを特徴とし、更には、高屈折率層形成用の塗布液が、1)表面がオイルで被覆された金属酸化物粒子を金属酸化物粒子の表面を疎水化してオイルと分散することによりオイルで被覆して製造した後、2)ゼラチン(水溶性バインダー)を添加する調製方法で調製することが好ましい。
【0096】
本発明の近赤外反射フィルムの製造方法では、基材上に高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットを積層して形成されるが、具体的には高屈折率層と低屈折率層とを交互に塗布、乾燥して積層体を形成することが好ましい。
【0097】
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
【0098】
同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
【0099】
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
【0100】
塗布および乾燥方法としては、高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液を30℃以上に加温して、塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
【0101】
〔近赤外反射フィルムの応用〕
本発明の近赤外反射フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備に貼り合せ、熱線反射効果を付与する熱線反射フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。
【0102】
特に、本発明に係る近赤外反射フィルムが直接もしくは接着剤を介してガラスもしくはガラス代替樹脂基材に貼合されている部材には好適である。
【0103】
接着剤は、窓ガラスなどに貼り合わせたとき、近赤外反射フィルムが日光(熱線)入射面側にあるように設置する。また近赤外反射フィルムを窓ガラスと基材との間に挟持すると、水分等周囲ガスから封止でき耐久性に好ましい。本発明の近赤外反射フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
【0104】
本発明に適用可能な接着剤としては、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
【0105】
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。更に粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系及びエマルジョン系の中で溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
【0106】
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、三菱モンサント社製等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、メルセンG)等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
【実施例】
【0107】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0108】
実施例1
《近赤外反射フィルムの作製》
(金属酸化物粒子分散液1の調製)
30質量%酸化ジルコニウム粒子ゾル(体積平均粒径10nm)40gを攪拌しながらグルタル酸1g、トリクレジルフォスフェート2gと酢酸エチル40gの混合液とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1gを純水100gに溶解した液を加え超音波分散して分散液を得た。得られた分散液は8質量%だった。
【0109】
(金属酸化物粒子分散液2の調製)
30質量%酸化ジルコニウム粒子ゾル(体積平均粒径10nm)40gを攪拌しながらプロピオン酸100gを少量ずつ添加した。析出した固形物を酢酸エチルで洗浄後、n−ブタノールとトルエン混合液(1:1)135gを加え超音波分散して分散液を得た。得られた分散液を攪拌しながらn−プロピルアミン50gを少量ずつ添加した。析出した固形物をn−ブタノールで洗浄後、酢酸エチル40g、トリクレジルフォスフェート2gを添加して超音波分散して分散液を得た。これとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1gを純水100gに溶解した液と混合し、超音波分散して分散液を得た。得られた分散液は10質量%だった。
【0110】
(金属酸化物粒子分散液3の調製)
20質量%酸化チタン粒子ゾル(体積平均粒径35nm、ルチル型酸化チタン粒子)60gを使う以外は金属酸化物粒子分散液2の調製と同様にして、10質量%の分散液を得た。
【0111】
(金属酸化物粒子分散液4の調製)
n−プロピルアミンをn−ヘキシルアミンに変更する以外は金属酸化物粒子分散液2の調製と同様にして、10質量%の分散液を得た。
【0112】
(金属酸化物粒子分散液5の調製)
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムをジイソプロピルナフタレンスルホン酸に変更する以外は金属酸化物粒子分散液2の調製と同様にして、10質量%の分散液を得た。
【0113】
(金属酸化物粒子分散液6の調製)
トリクレジルフォスフェートをジオクチルフタレートに変更する以外は金属酸化物粒子分散液2の調製と同様にして、10質量%の分散液を得た。
【0114】
〔試料1の作製〕
(高屈折率層塗布液1の調製)
下記の添加物(1)〜(4)をこの順序で添加、混合して、高屈折率層塗布液1を調製した。
(1)金属酸化物粒子分散液1 120g
(2)5.0質量%ポリビニルアルコール(PVA217)水溶液 200g
(3)純水 150g
(4)5.0質量%界面活性剤水溶液(ニッサンカチオン2−DB−500E、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤、日油社製) 0.45g
(低屈折率層塗布液1の調製)
下記の添加物(1)〜(4)をこの順序で添加、混合して、低屈折率層塗布液1を調製した。
(1)20質量%コロイダルシリカ 68g
(2)5.0質量%ゼラチン(平均分子量が13万の酸処理ゼラチン)水溶液 200g
(3)純水 240g
(4)5.0質量%界面活性剤水溶液(ニッサンカチオン2−DB−500E、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤、日油社製) 0.64g
(積層体の形成)
〈高屈折率層1の形成〉
上記調製した高屈折率層用塗布液1を45℃に保温しながら、45℃に加温した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、乾燥膜厚が135nmとなる条件で、ワイヤーバーを用いて塗布し、次いで、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、高屈折率層1を形成した。
【0115】
〈低屈折率層1の形成〉
次いで、低屈折率層用塗布液1を45℃に保温しながら、45℃に加温した上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの高屈折率層1上に、乾燥膜厚が175nmとなる条件で、ワイヤーバーを用いて塗布し、次いで、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、低屈折率層1を形成した。
【0116】
〈近赤外反射フィルムの作製〉
上記形成した低屈折率層1上に、同様にして高屈折率層1/低屈折率層1から構成されるユニットを更に5ユニット積層し、それぞれ6層の高屈折率層及び低屈折率層(合計12層)から構成された近赤外反射フィルムである試料1を作製した。
【0117】
〔試料2の作製〕
上記試料1の作製において、高屈折率層塗布液1の調製で金属酸化物粒子分散液1を金属酸化物粒子分散液2に変更する以外は同様にして、試料2を作製した。
【0118】
〔試料3の作製〕
上記試料2の作製において、高屈折率層塗布液1の水溶性バインダーをタマリンドシードガムに変更する以外は同様にして、試料3を作製した。
【0119】
〔試料4の作製〕
上記試料3の作製において、水溶性バインダーをゼラチン(平均分子量が13万の酸処理ゼラチン)に変更する以外は同様にして、試料4を作製した。
【0120】
〔試料5の作製〕
上記試料4の作製において、金属酸化物粒子分散液2を金属酸化物粒子分散液3に変更する以外は同様にして、試料5を作製した。
【0121】
〔試料6〜8の作製〕
上記試料5の作製において、金属酸化物粒子分散液3を金属酸化物粒子分散液4〜6にそれぞれ変更する以外は同様にして、試料6〜8を作製した。
【0122】
〔試料9の作製〕
特開2009−86659号の実施例1及び実施例2に従ってPETベース上に高屈折率層と低屈折率層をそれぞれ6層ずつ交互に積層して、試料9を作成した。
【0123】
以下のように作成した。
【0124】
〈分散液Aの調製〉
無機粒子としてルチル型酸化チタン(石原産業株式会社製「TTO−55A」、粒径30〜50nm、水酸化アルミニウム表面処理品、屈折率2.6)を109質量部、分散剤としてポリエチレンイミン系ブロックポリマーを11質量部、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、和光純薬株式会社製)180質量部を、直径0.5mmのジルコニアビーズ141質量部を用いてビーズミル分散機で24分間分散させた後、直径0.1mmのジルコニアビーズに切り替えてビーズミル分散機で147分間分散させることにより、分散液Aを得た。
【0125】
〈溶液Aの調製〉
バインダー樹脂として4,4′−ビス(β−メタクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルホン(硬化後の屈折率1.65)を50質量%、重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドを0.25質量%含有するPGMEA溶液を調製し、溶液Aとした。
【0126】
〈溶液Bの調製〉
分散液Aと溶液Aの質量混合比1:7の混合液を調製し、溶液Bとした。
【0127】
〈溶液Cの調製〉
溶液BとPGMEAの質量混合比1:2の混合液を調製し、溶液Cとした。
【0128】
〈高屈折率層Aの作成〉
溶液Cを厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に2ml滴下し、1000rpm、30秒の条件でスピンコーター(ミカサ株式会社製1H−D7)により塗布した後、120℃で10分間加熱した。その後、出力184W/cmの無電極水銀ランプ(フュージョンUVシステムズ社製)を用いて積算光量2.8J/cmの紫外線を照射することにより高屈折率層Aを得た。膜厚は134nm程度であった。
【0129】
高屈折率層Aをコロナ放電処理(信光電気計装株式会社製コロナ放電表面改質装置)により表面改質した後、1質量%のヒドロキシエチルセルロース(東京化成工業株式会社製)の水溶液を2ml滴下し、1分間室温で放置した後、500rpm、30秒のスピンコート条件で塗布した。塗布直後、すぐさま80℃のホットプレート(アズワン株式会社製HPD−3000)上に試料を置いて10分間加熱することにより高屈折率層Aの上に低屈折率層を積層させた。
【0130】
更に、同様な操作により、高屈折率層と低屈折率層を更にそれぞれ5層ずつ交互に積層して試料9を作製した。
【0131】
〔試料10の作製〕
特開2004−123766号の実施例1及び応用例に従ってPETベース上に高屈折率層と低屈折率層をそれぞれ6層ずつ交互に積層して、試料10を作成した。
【0132】
以下のように作成した。
【0133】
下記のように原料を配合しボールミルにて4時間分散させ、分散粒子径が20nmに達したのを確認後、紫外線硬化バインダー(信越化学工業製 X−12−2400、有効成分30質量%)1.5質量部、触媒(信越化学工業製DX−2400)0.15質量部配合し、ボールミルにて1時間分散させ、分散粒子径が16nmに達したのを確認し、これを高屈折率コーティング液Aとした。これをPETフィルム(厚さ50μm)にバーコーターNo.08にて乾燥膜厚み100nmになるように塗布し、100℃乾燥後、紫外線を照射し、硬化させ、高屈折率層Bを形成した。
【0134】
イソプロピルアルコール 100質量部
ピリジン(和光純薬製 試薬特級) 3質量部
エチルシリケート溶液 5質量部
(コルコート製 HAS−1、有効成分30質量%)
ルチル型酸化チタン微粒子(石原産業製 55N) 10質量部
次いで、低屈折率層を形成した。
【0135】
(低屈折率層のスラリー組成)
粒子直径10〜20nm(平均粒子径15nm)のシリカゾル(日産化学工業製「IPA−ST」)1質量部、有機溶剤としてイソプロピルアルコール(和光純薬製 試薬特級)を10質量部、バインダー前駆体として紫外線硬化バインダー(信越化学工業製 X−12−2400)3〜10質量部、触媒(信越化学工業製DX−2400)0.3〜質量1部を配合しスターラー攪拌し低屈折率層用溶液を得、これをバーコーターにて高屈折率層B上に塗布した。塗布後、100℃で乾燥し、紫外線照射して硬化させ低屈折率層を形成した。高屈折率層と低屈折率層を更にそれぞれ5層ずつ交互に積層して、試料10を作成した。
【0136】
《近赤外反射フィルムの評価》
上記作製した各近赤外反射フィルムについて、下記の特性値の測定及び性能評価を行った。
【0137】
(各層の屈折率の測定)
基材上に屈折率を測定する対象層(高屈折率層、低屈折率層)をそれぞれ単層で塗設したサンプルを作製し、下記の方法に従って、各高屈折率層及び低屈折率層の屈折率を求めた。
【0138】
分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率の測定結果より、屈折率を求めた。
【0139】
試料1〜8の低屈折率層の屈折率はそれぞれ1.49、試料9の低屈折率層の屈折率は1.50、試料10の低屈折率層の屈折率は1.45だった。
【0140】
(可視光透過率及び近赤外透過率の測定)
上記分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、各近赤外反射フィルムの300nm〜2000nmの領域における透過率を測定した。可視光透過率は550nmにおける透過率の値を、近赤外透過率は1200nmにおける透過率の値を用いた。
【0141】
(柔軟性の評価)
上記作製した各近赤外反射フィルムについて、経時代用条件として55℃のサーモ機内に3日間保管後、室温に戻し、JIS K5600−5−1に準拠した屈曲試験法に基づき、屈曲試験機タイプ1(井元製作所社製、型式IMC−AOF2、マンドレル径φ20mm)を用いて、1000回の屈曲試験を行った後、近赤外反射フィルム表面を目視観察し、下記の基準に従って柔軟性を評価した。
【0142】
◎:近赤外反射フィルム表面に、折り曲げ跡やひび割れは観察されない
○:近赤外反射フィルム表面に、わずかに折り曲げ跡が観察される
△:近赤外反射フィルム表面に、微小なひび割れが僅かに観察される
×:近赤外反射フィルム表面に、明らかなひび割れが多数発生している
(耐久性の評価)
作製した各近赤外反射フィルムについて、メタルハライドランプ式耐候性試験機(スガ試験機製 M6T)により、放射照度1kW/mの光を100時間照射し、照射後における着色状態を目視観察し、下記の基準に従って評価した。
【0143】
◎:着色が全く認められない
○:ほぼ着色が認められない
△:わずかに着色が認められる
×:明らかな着色が認められる
以上により得られた測定結果、評価結果を、表1に示す。
【0144】
【表1】

【0145】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明の近赤外反射フィルムは、可視光透過率を低下させることなく、近赤外透過率を低下させることが可能であり、かつ耐久性と柔軟性に優れていることが分かる。
【0146】
実施例2
〔近赤外反射体1〜8の作製〕
実施例1で作製した試料1〜8の近赤外反射フィルムを用いて近赤外反射体1〜8を作製した。厚さ5mm、20cm×20cmの透明アクリル樹脂板上に、試料1〜8の近赤外反射フィルムをそれぞれアクリル接着剤で接着して、近赤外反射体1〜8を作製した。
【0147】
〔評価〕
上記作製した本発明の近赤外反射体1〜8は、近赤外反射体のサイズが大きいにもかかわらず、容易に利用可能であり、また、本発明の近赤外反射フィルムを利用することで、優れた近赤外反射性を確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを少なくとも1つ有し、隣接する該高屈折率層と該低屈折率層との屈折率差が0.1以上である近赤外反射フィルムにおいて、該高屈折率層が、(1)表面がオイルで被覆された金属酸化物粒子と、(2)水溶性バインダー、を含有することを特徴とする近赤外反射フィルム。
【請求項2】
前記高屈折率層が、(1)表面がオイルで被覆された金属酸化物粒子、の金属酸化物粒子として、体積平均粒径が100nm以下のルチル型酸化チタン粒子を含有することを特徴とする請求項1に記載の近赤外反射フィルム。
【請求項3】
前記高屈折率層の(2)水溶性バインダーが、ゼラチンを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外反射フィルム。
【請求項4】
基材上に、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを少なくとも1つ形成し、隣接する該高屈折率層と該低屈折率層との屈折率差を0.1以上とする近赤外反射フィルムの製造方法において、該高屈折率層を、(1)表面がオイルで被覆された金属酸化物粒子と、(2)水溶性バインダー、を含有する高屈折率層形成用の塗布液を用いて形成することを特徴とする近赤外反射フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記高屈折率層形成用の塗布液は、(1)表面がオイルで被覆された金属酸化物粒子を、金属酸化物粒子の表面を脂肪族化合物により表面修飾しオイルと分散(混合)し、界面活性剤を用いて水系媒体中に分散することにより製造した後、(2)水溶性バインダーを添加して調製することを特徴とする請求項4に記載の近赤外反射フィルムの製造方法。
【請求項6】
基体の少なくとも一方の面側に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外反射フィルムを有することを特徴とする近赤外反射体。

【公開番号】特開2012−159763(P2012−159763A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20466(P2011−20466)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】