説明

送受話器

【課題】スピーカからハウジング内の空間を通ってマイクロホンに漏洩する音声を阻止する送受話器において、その組み立て作業が容易にできる送受話器を提供する。
【解決手段】前ケース201と後ケース202を一体にして形成された送受話器10において、ハウジング20内におけるスピーカ30とマイクロホン40との間の空間に位置する前ケース1の内面に弾性リブ70を一体に設け、弾性リブ70の先端701を前ケース201の内面から突出させて配置し、先端701を後ケース702の内面に当接させ弾性リブ70によってハウジング20内におけるスピーカ30とマイクロホン40との間を遮断するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のケースを組み合わせて一体にして構成されたハウジング内にスピーカとマイクロホンとを組み込んで配置した送受話器に関し、特に、ハウジング内においてスピーカとマイクロホンとの間に空間を有する送受話器において、スピーカとマイクロホンとの間の音響結合を防止するようにした送受話器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スピーカとマイクロホンとをハウジングに組み込んだ送受話器は、電話機に適用されているが、ハウジング内においてスピーカとマイクロホンとの間に空間を有するため、スピーカからの受話音が空間を通ってマイクロホンに入ってしまう。一方、デジタル伝送方式においては、送受話器のマイクロホンに入った音声は電話機からデータ信号として公衆回線を介しデジタル電話基地局に送られて処理され、再び公衆回線を介して相手側の電話機に送られスピーカから音声として送出される。このとき、マイクロホンに入った音声はデータ処理されるまでに若干の時間を要するようになっている。
【0003】
そのため、送受話器におけるスピーカの後方からマイクロホンに直接に漏洩する音声は、公衆回線を通ってデジタル電話基地局で処理されて送話側の電話機に送信され、送話側の送受話器のスピーカから送出される。その結果、スピーカからは送話者の音声に加えて漏洩した音声が遅れて戻ってきて送出される。このスピーカから遅れて送出される音声は反響音即ち、エコー音として発生し、明瞭な通話を行うことができなくなってしまう。このため、スピーカとマイクロホンとの間の音響結合を防止できるように機器を構成することが望まれる。
【0004】
例えば、この問題点を解決するために、下記の特許文献1(特開平7−283861号公報)で示す従来技術が提案されている。この従来技術の送受話器は、前ケースと後ケースを一体にして構成されたハウジング内にスピーカとマイクロホンが配置され、スピーカとマイクロホンとの間におけるハウジング内の空間に音声振動吸収層を配置したものである。従って、スピーカの後ろから漏れてハウジング内の空間内を通ってマイクロホンに至る音声は音声振動吸収層によって効果的に減衰され、エコー音の発生を低減させることができる。
【0005】
また、データ信号の送出に遅れのない伝送方式にあっては、上述したスピーカからマイクロホンに直接漏洩する音声が多くなるとハウリングの発生の原因となる。このようなハウリングの発生に対しても上記従来技術は防止策としてとることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−283861号公報(段落0001、0010、0011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、送受話器においては、音声振動吸収層をハウジング内に配置する際に、前ケースもしくはプリント基板に固設した後に前ケースと後ケースを一体にして送受話器の組み立てを行っている。そして、音声振動吸収層は、例えばスポンジ状の弾性材で形成されているので、組み立て作業の際に前ケースと後ケースとで挟み込まれてしまうことがある。そのため、音声振動吸収層は予め外形寸法を正確にして形成すると共にケースの正しい位置に貼り付けなければならない。また、組み立ての際にも音声振動吸収層が挟み込まれないように注意して作業しなければならないという問題点があった。
【0008】
従って、本発明は、上記の問題点を解消することを課題とし、送受話器のハウジング内に音声振動吸収層を取り付けて固設する作業を行うことなくスピーカとマイクロホンとの間の通路を遮断できる送受話器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、複数のケースを一体にして形成されたハウジング内にスピーカとマイクロホンを組み込んで配置した送受話器であって、前記ハウジング内のスピーカとマイクロホンとの間の空間に位置する一方のケース内面に弾性リブを一体に設け、該弾性リブの先端を該一方のケース内面から突出させて配置し、該先端を他方のケースの内面に当接させて該弾性リブによって該ハウジング内におけるスピーカとマイクロホンとの間を遮断するように構成したことを特徴とする。
【0010】
また、本願の請求項2に係る発明は、複数のケースを一体にして形成されたハウジング内にスピーカとマイクロホンを組み込んで配置し、該スピーカとマイクロホンとの間の空間に重りを取り付けた送受話器であって、前記ハウジング内の前記重りの側方に生じる空間に位置する一方のケース内面に弾性リブを一体に設け、該弾性リブの先端を該一方のケース内面から突出させて配置し、該先端を他方のケースの内面に当接させて該弾性リブによって該ハウジング内におけるスピーカとマイクロホンとの間を遮断するように構成したことを特徴とする。
【0011】
本願の請求項3に係る発明は、請求項2に係る送受話器において、前記ケースは、前記重りの面に全幅にわたって当接する凸部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の送受話器は、次に示すような優れた効果を奏する。
【0013】
すなわち、請求項1に係る発明においては、複数のケースを一体にして形成されたハウジング内にスピーカとマイクロホンを組み込んで配置した送受話器において、一方のケースの内面に弾性リブが一体に取付けられ、この弾性リブの先端がハウジング内においてスピーカとマイクロホンとの間の空間において他方のケースの内面に弾性的に当接して配置され、ハウジング内におけるスピーカとマイクロホンとの間の通路が遮断されている。
【0014】
このような構成によれば、スピーカからハウジング内を通ってマイクロホンに漏洩する音声を阻止する。そのため、送受話器における音声信号の特性劣化を防止できる。そして、通路を遮断する部材が予め一方のケースに一体に設けられた弾性リブによって構成されているため、組み立て作業が容易にできる。
【0015】
また、請求項2に係る発明においては、複数のケースを一体にして形成されたハウジング内にスピーカとマイクロホンを組み込んで配置し、該スピーカとマイクロホンとの間の空間に重りを取り付けた送受話器において、ハウジング内の重りの側方に生じる空間に対応する一方のケース内面に弾性リブが一体に取付けられ、この弾性リブの先端がハウジング内においてスピーカとマイクロホンとの間の空間において他方のケースの内面に弾性的に当接して配置され、ハウジング内におけるスピーカとマイクロホンとの間の通路が遮断されている。
【0016】
このような構成によれば、スピーカからハウジング内を通ってマイクロホンに漏洩する音声を阻止する。そのため、重りを取り付けた送受話器における音声信号の特性劣化を防止できる。そして、通路を遮断する部材が予め一方のケースに一体に設けられた弾性リブによって構成されているため、組み立て作業が容易にできる。
【0017】
また、請求項3に係る発明においては、ケースに凸部が設けられているので、重りの面とケース内面との間に間隙が生じない。そのため、スピーカからハウジング内を通ってマイクロホンに音声が漏洩することがなくなり重りを取り付けた送受話器における音声信号の特性劣化を防止できる。また、その構成はケースに凸部を設けるだけでよいので簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1に係る送受話器の正面図である。
【図2】図1における送受話器をA-―A線で切断した断面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る送受話器において後ケースを除去した状態で背面から見た斜視図である。
【図4】本発明の実施例2に係る送受話器における後ケースを背面から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術的思想を具体化するための送受話器を例示するものであって、本発明を送受話器に特定することを意図するものでなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態の送受話器にも等しく適用し得るものである。
【実施例1】
【0020】
本発明の実施例1にかかる送受話器10は、図1、図2に示すように、内部に空間を有し略長方形に形成されたハウジング20と、ハウジング20の一端寄りに組み込んで配置されたスピーカ30と、ハウジング20の他端寄りに組み込んで配置されたマイクロホン40と、スピーカ30とマイクロホン40とを電話機本体に接続するためのコネクタ50とから構成されている。
【0021】
ハウジング20は、合成樹脂材からなる前ケース201と、同じく合成樹脂材からなる後ケース202と、前ケース201の一端寄りに形成されたスピーカ用開口203と、前ケース201の他端寄りに形成されたマイクロホン用開口204とから構成されている。そして、この一方のケースである前ケース201と他方のケースである後ケース202はねじなどによって一体化されハウジング20を形成している。
【0022】
送受話器10の内部には、図3で示すように、スピーカ30とマイクロホン40の間に相当する前ケース201の中央部分に重り60が取り付けられている。この重り60は送受話器10が全体的に軽量化されたことにより使用者の持ち応えが低減されてしまったことを補うものであって、長方形の金属板からなる。重り60の取り付け機構は、前ケース201に形成された円形の突出部205と、この突出部205が嵌合する重り60に形成された円形の開口部601と、前ケース201に形成された重り60の位置決めを行う複数の突出片206とから構成されている。そして、位置決めされた重り60はねじ止めによって前ケース201に固定されるようになっている。
【0023】
ハウジング20内の重り60の側方に生じる空間には、前ケース201に傾斜させて弾性効果をもたせた弾性リブ70が設けられている。この弾性リブ70は前ケース201と予め一体に合成樹脂材によって形成され、先端が前ケース201の内面から突出して後ケース202の内面に当接するようになっている。そして、弾性リブ70はその幅が空間の幅と同じくしてスピーカ30とマイクロホン40との間の空間によって形成される通路を塞ぐように構成されている。
【0024】
次に、上述した実施例1の構成による送受話器10の組み立ての手順について説明する。まず、前ケース201にスピーカ30、マイクロホン40、コネクタ50を取付ける。併せて、重り60をその開口部601に突出部205を嵌合させると共に突出片206で位置決めを行って前ケース201の中央部分に配置する。そして、位置決めされた重り60をねじによって前ケース201に固定する。
【0025】
その後、後ケース202を前ケース201にかぶせて両者を一体にしてハウジング20を形成する。コネクタ50にはケーブル51のコネクタを接続することにより送受話器10と電話機本体とを接続する。
【0026】
従って、上述した本発明の実施例1の送受話器10によれば、前ケース201と後ケース202とを一体にしてハウジング20を形成した状態においては、予め前ケース201に設けられた弾性リブ70はその先端701が後ケース202の内面に当接する。この弾性リブ70はその幅が重り60の両側に生じた空間の幅に等しいため、スピーカ30とマイクロホン40との間の空間によって生じる通路を遮断する。
【0027】
また、弾性リブ70は、その突出量及び前ケース201の内面と後ケース202の内面との間隔にばらつきがあっても撓むことによって先端701が後ケース202の内面に密着し、通路を確実に遮断する。そのため、送受話器10はスピーカ30からハウジング20内を通路としてマイクロホン40に直接に漏洩する音声が阻止される。従って、送受話器10において、スピーカとマイクロホンとの間の音響結合を防止でき、エコー、ハウリングなどの本来の通話に悪影響を与える現象が抑制できる。
【実施例2】
【0028】
本発明の実施例2に係る送受話器10は、図4に示すように後ケース202に重り60の全幅にわたって当接する凸部80を設けている。この凸部80は後ケース202が前ケース201と一体になった状態で弾性リブ70の間に位置するように配置されている。また、凸部80は合成樹脂材によってケース202と一体に形成されている。
【0029】
上述した実施例2の構成による送受話器10は、前ケース201、後202を一体にしてハウジング20を形成すると、前述したように弾性リブ70が重り60の両側に生じた空間による音声の通路を遮断する。同時に、凸部80は重り60の面に当接するが、この当接位置が弾性リブ70の間となる。
【0030】
従って、凸部80は弾性リブ70と共同してスピーカ30からハウジング20内を通ってマイクロホン40に漏洩する音声の通路を遮断する。そのため、送受話器10はスピーカ30からハウジング20内を通路としてマイクロホン40に直接に漏洩する音声が阻止される。従って、送受話器10において、スピーカとマイクロホンとの間の音響結合を実施例1に比較してより効果的に防止でき、エコー、ハウリングなどの本来の通話に悪影響を与える現象をより確実に抑制することができる。
【0031】
一般的、ハウジング20は全体的に緩やかに湾曲しているので、後ケース202も緩やかに湾曲した形状に形成されている。一方、重り60はその製作の容易性から平板状である。このように湾曲した後ケース202と平板状の重り60とを重ねるとその間に間隙を生じてしまう。この間隙は凸部80が埋めるので、スピーカ30からハウジング20内を通路としてマイクロホン40に漏洩する音声の通過を阻止する。従って、簡単な構成で音声の漏洩によって発生するエコー、ハウリングによる本来の通話における特性劣化をより確実に防止する。
【0032】
なお、上記実施例においては、弾性リブ70は一方のケースである前ケース201に設けたが、他方のケースである後ケース202に設けてもよい。また、送受話器10を電話機本体にコードで接続するためのコネクタ50を備える例を示したが、送受話器10がコードレス電話機の子機であってもよい。その場合、子機である送受話器10がコネクタの代わりに電話機本体と近距離無線通信機能を備えることは勿論である。
【0033】
また、上記実施例1においては、重り60を設けたが、本発明はこれに限定されることなく重り60を省いたものであってもよい。この場合は、弾性リブ70は空間の全幅にわたって位置するように配置して通路を遮断するようにすればよい。
【0034】
また、上記実施例においては、送受話器10を電話機に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく無線通信装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0035】
10・・・・送受話器
20・・・・ハウジング
30・・・・スピーカ
40・・・・マイクロホン
50・・・・コネクタ
51・・・・ケーブル
60・・・・重り
70・・・・弾性リブ
80・・・・凸部
201・・・前ケース
202・・・後ケース
203・・・スピーカ用開口
204・・・マイクロホン用開口
205・・・突出部
206・・・突出片
601・・・開口部
701・・・先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のケースを一体にして形成されたハウジング内にスピーカとマイクロホンを組み込んで配置した送受話器であって、
前記ハウジング内のスピーカとマイクロホンとの間の空間に位置する一方のケース内面に弾性リブを一体に設け、該弾性リブの先端を該一方のケース内面から突出させて配置し、該先端を他方のケースの内面に当接させて該弾性リブによって該ハウジング内におけるスピーカとマイクロホンとの間を遮断するように構成したことを特徴とする送受話器。
【請求項2】
複数のケースを一体にして形成されたハウジング内にスピーカとマイクロホンを組み込んで配置し、該スピーカとマイクロホンとの間の空間に重りを取り付けた送受話器であって、
前記ハウジング内の前記重りの側方に生じる空間に位置する一方のケース内面に弾性リブを一体に設け、該弾性リブの先端を該一方のケース内面から突出させて配置し、該先端を他方のケースの内面に当接させて該弾性リブによって該ハウジング内におけるスピーカとマイクロホンとの間を遮断するように構成したことを特徴とする送受話器。
【請求項3】
前記ケースは、前記重りの面に全幅にわたって当接する凸部を有することを特徴とする請求項2に記載の送受話器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−114688(P2011−114688A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270385(P2009−270385)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】