送達装置および方法
【課題】生物学的障壁を通して物質を輸送するのに使用するためのマイクロ突起アレイを提供すること。
【解決手段】本発明の第1の態様において、生物学的障壁を通して物質を輸送するのに使用するためのマイクロ突起アレイが提供され、ここで、前記アレイは、基部要素および当該基部要素から突出する複数のマイクロ突起を含み、前記マイクロ突起は、ポリマー組成物を形成する膨張性ヒドロゲルからなる。皮膚の角質層を浸透でき、かつ、液体の存在下で膨張できるヒドロゲルポリマー組成物が、本発明において使用され得る。
【解決手段】本発明の第1の態様において、生物学的障壁を通して物質を輸送するのに使用するためのマイクロ突起アレイが提供され、ここで、前記アレイは、基部要素および当該基部要素から突出する複数のマイクロ突起を含み、前記マイクロ突起は、ポリマー組成物を形成する膨張性ヒドロゲルからなる。皮膚の角質層を浸透でき、かつ、液体の存在下で膨張できるヒドロゲルポリマー組成物が、本発明において使用され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮送達手段、特に、皮膚を通して、または皮膚内に有益な物質を送達するため、あるいは体内の診断目的の物質のレベルをモニタリングするためのマイクロ突起ベースの装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物を皮膚内または皮膚を通して送達するための経皮貼布の世界市場は40億ドルに近づいているが、少数の薬物のみにしか基づいていない。慣例的に経皮に投与される薬物の数の限定は主に、組織の最外部分10〜15μm(乾燥状態において)である角質層(SC)が原因となる。このように、SCは、薬物を含む外因性物質に対する主要な障壁を構成する。真皮上層における血管によって吸収される前に、また、体循環に入る前に、皮膚に浸透する物質は、SCの高度に組織化された細胞間脂質二重層を通って拡散しなければならない。親油性であるこの細胞間の微細経路は、送達ビヒクルとSCとの間の濃度勾配に従って受動拡散によってSC障壁を外因性物質が通過するための主要な経路である。効果的に受動拡散でき、それによって、SC障壁を通して浸透できる分子の理想的な特性は、以下のように知られている。
1.600Da未満の分子量。
2.濃度勾配に従って受動薬物拡散についての力を推進する膜濃度勾配が、高くなり得るような油および水の両方における適切な溶解性。
3.薬物がビヒクルから拡散し、SCに分配し、そのSC内に隔離されずに、SCを通して移動することができるような分配係数。
4.理想的な溶解性理論によって予測されるように、十分な溶解性と関連している低融点。
【0003】
不十分な経口生物学的利用能を受けるか、または初回通過代謝を受けやすい薬物分子は、多くの場合、経皮送達についての理想的な候補であるが、多くの場合、それらの臨床的用途を理解されていない。なぜならそれらは、上記の条件のうちの1つ以上を満たさないからである。ペプチド、タンパク質および核酸フラグメントなどの高分子薬物は、それらの大きなサイズだけではなく、それらの極端な親水性にもより、有用な経皮投与から排除されている。十分な水溶性を有する薬物、例えば、酸または塩基部分を有する薬物の水溶性塩は、それらが、SC障壁を通して親油性細胞間微小経路を通ることができないことにより、有用な経皮投与から排除されている。
【0004】
いくつかのアプローチが、SCを通して薬物輸送を高めるために使用されている。しかしながら、多くの場合において、適度に有用なものが達成されているのみであり、各アプローチは重要な問題に直面している。
【0005】
化学的浸透の向上は浸透における適度な改善のみを可能にする。親油性を増加させる浸透剤の化学的修飾は、必ずしも可能ではなく、いずれの場合にも、新しい化学物質の生成に起因する規制認可についてのさらなる研究を必要とする。多数の薬物の送達における意味のある向上は、イオン注入を用いることと報告されている。しかしながら、特殊な装置が必要とされ、送達される薬剤が皮膚の付属器に蓄積する傾向がる。この方法は現在、急性の用途に最も適している。エレクトロポレーションおよび超音波導入は、経皮送達を増加させることが知られている。しかしながら、それらは痛みおよび局所的な皮膚反応の両方を引き起こす場合があり、超音波導入は治療物の分解を引き起こす場合がある。テープストリッピングおよび吸引/レーザー/熱剥離などのSC障壁を取り除くことを目的とする技術は実用的ではなく、一方で、針のない注射は、今までのところ、例えば、インスリンの従来の針ベースの送達にとって代わることができない。明らかに、強力な代替の戦略が、SCを通す薬物輸送を高めるために必要とされ、それにより、広い範囲の薬物の経皮送達が可能となる。
【0006】
(最小限の侵襲的モニタリング)
最小限の侵襲的モニタリング、それによるグルコースおよび薬物などの検体の血中濃度は、直接的な血液サンプルに頼らずに間接的に評価することができ、患者にとって痛み、不便さおよび感染の危険性をほとんど生じず、臨床および看護時間を省く。しかしながら、角質層は、血液成分の外側への移動に対して優れたほとんど不浸透性の障壁となる。通常の条件下で生じる少量の汗および皮脂は、それらの回収および分析が実用的ではないということを意味する。いずれの場合においても、それらの組成は、ほとんどの場合、目的の検体の血中濃度を正確に反映しない。最小限の侵襲的モニタリングにおいて、皮膚中の間質液が抽出され、血中検体濃度を正確に評価するために使用される。この技術は困難を伴い、しばしば、非常に特殊な装備を必要とする。血糖のみの直接モニタリングのための従来の指で刺す分析装置の販売は、1年あたり合計で20億ドルあり、この分野における進歩が臨床的に望まれる。
【0007】
角質層障壁を破壊するために複数のマイクロ突起からなるマイクロ構造装置を用いる概念は、1970年代に最初に提案されている。中実のマイクロ突起を含む種々の装置が、微細な孔を残し、その後、内部への薬物送達または間質液の外部への移動を可能にする角質層を穿刺するシステムをつくるために開発されている。例えば、シリコンを用いる中実のマイクロ突起およびマイクロニードルアレイの製造は当該分野において記載されている。例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21、特許文献22、特許文献23、特許文献24、特許文献25を参照のこと。
【0008】
デキストリン、コンドロイチンおよびアルブミンから中実のマイクロ突起を調製するための方法は、京都薬科大学(非特許文献1;非特許文献2)により開示されている。この「スレッドフォーミング(thread forming)」方法は、平らな面で公知の「スレッドフォーミング」材料を含む溶液を分散させる工程を含む。次いで、溶液は、突起によって接触される表面を有し、その突起は迅速に上方へ動かされ、連続したポリマーである「スレッド」を形成し、次いで、マイクロ突起を形成するために乾燥される。しかしながら、溶解された炭水化物材料(例えば、デキストリン、マルトース)から調製されるマイクロ突起は、非常に吸湿性であり、周囲条件下で急速に水分を吸収し、それらの形状を損失し、軟らかくなり、極度に粘着性になる。皮膚の穿刺時に、炭水化物ベースのマイクロ突起は、急速に粘着性マトリクスを形成し、形成された孔を遮断し、適切な薬物送達を防ぐ。さらに、薬物損失は、そのようなマイクロ突起の製造と関連する。なぜなら薬物が炭水化物材料などの融点まで高温に加熱される必要があるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6743211号明細書
【特許文献2】アイルランド特許出願公開第2005/0825号明細書
【特許文献3】米国特許第60/749,086号明細書
【特許文献4】米国特許第6924087号明細書
【特許文献5】米国特許第6663820号明細書
【特許文献6】米国特許第6767341号明細書
【特許文献7】米国特許第6652478号明細書
【特許文献8】米国特許第6749792号明細書
【特許文献9】米国特許第6451240号明細書
【特許文献10】米国特許第6230051号明細書
【特許文献11】米国特許第6908453号明細書
【特許文献12】米国特許第7108681号明細書
【特許文献13】米国特許第6931277B1号明細書
【特許文献14】欧州特許第1517722B1号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第20060200069A1号明細書
【特許文献16】米国特許第6611707号明細書
【特許文献17】米国特許第6565532号明細書
【特許文献18】米国特許第6960193号明細書
【特許文献19】米国特許第6379324号明細書
【特許文献20】国際公開第2007/040938A1号
【特許文献21】米国特許第6256533号明細書
【特許文献22】米国特許第6591124号明細書
【特許文献23】米国特許第7027478号明細書
【特許文献24】米国特許第6603987号明細書
【特許文献25】米国特許第6821281号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Itoら,J Drug Target 14(5):255−261,2006年
【非特許文献2】Itoら,Eur J Pharm Sci 29:82−88,2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、マイクロ突起の分野において、かなりの公開された研究があるにもかかわらず、有益な物質の皮膚への送達のため、または体内における診断目的の物質のレベルをモニタリングするために現在市場に出ているマイクロ突起ベースの製品について特に注目すべきものはない。これは、現在、当該分野において公知のこのようなシステムの使用が、それらの目的についての多くの重要な問題に関連しているからである。すなわち、以下のような問題がある。
1 以前に特許された方法のほとんどによるマイクロ突起の製造は費用がかかる。
2 マイクロ突起についての材料として広範に使用される基本成分のシリコンは、FDAにより承認された生体材料ではなく、破損したシリコンまたは金属マイクロ突起は、皮膚の問題を引き起こす場合がある。これは特に、シリコンの乾式エッチングによって生成されたもろいマイクロ突起で顕著な問題である。
3 中実のコーティングされていないニードルは、2段階の適用プロセスを必要とし、それは望ましくない。
4 正確にマイクロ突起をコーティングすることは難しく、それらのコーティングされたマイクロ突起は、その後、ボーラスとして非常に少量の薬物を送達するのみである。
5 ヒトボランティア(n=5)による本発明者らの実験室で行った予備実験により、角質層の浸透性の指標として世界中で使用されている尺度である経表皮水分喪失(TEWL)が、マイクロ突起で穿刺するとすぐに約30g m−2h−1まで増加したが、約5分以内でバックグランド(10g m−2h−1)まで戻ったことが示された。
6 中空のマイクロ突起は1つの出口のみを有し、圧縮された皮膚組織によって遮断されてしまう場合がある。
7 生体分子は、融解されたポリマーまたは炭水化物から高分子のマイクロ突起を生成するために使用される熱によって著しく分解される場合がある。
8 炭水化物および高分子のマイクロ突起の強度は、薬物の導入によって著しく落ちる場合がある。
【0012】
このように、従来のマイクロ突起ベースの装置の使用は、非常に多くの問題に関連している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、本発明者らは、水の存在下で膨張する特定のポリマーが、角質層の障壁を穿刺できるマイクロ突起として機能するために十分な機械的強度を有することを見出した。この驚くべき発見により、角質層の障壁を飛び越えて進む方法に使用するための膨張性ポリマーのマイクロ突起アレイの提供が可能となり、さらに、皮膚を通して、または皮膚内に有用な物質の送達が可能となる。
【0014】
従って、本発明の第1の態様において、生物学的障壁を通して物質を輸送するのに使用するためのマイクロ突起アレイが提供され、ここで、前記アレイは、基部要素および当該基部要素から突出する複数のマイクロ突起を含み、前記マイクロ突起は、ポリマー組成物を形成する膨張性ヒドロゲルからなる。
【0015】
皮膚の角質層を浸透でき、かつ、液体の存在下で膨張できるヒドロゲルポリマー組成物が、本発明において使用され得る。
【0016】
一実施形態において、本発明の、および本発明に使用するためのマイクロ突起アレイは、1つ以上の親水性官能基を含有する1つ以上のヒドロゲル形成ポリマーから製造される。適切なポリマーの例としては、ポリ(ビニルアルコール)、アミロペクチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)キトサン、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(ポリHEMA)、ポリ(アクリル酸)、およびポリ(カプロラクトン)、またはGantrez(登録商標)型ポリマーが挙げられるが、必ずしもそれらに限定されない。Gantrez(登録商標)型ポリマーとしては、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)、そのエステル、および類似物、関連ポリマー(例えば、ポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸無水物))が挙げられる。
【0017】
本発明の特定の実施形態において、ヒドロゲル形成ポリマーは、ポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸)(PMVEMA)、そのエステル、またはポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸無水物)(PMVEMAH)などのGantrez(登録商標)型ポリマーである。
【0018】
ポリマーの架橋は、マイクロ突起の強度および膨張特性、ならびに活性剤を送達するためのマイクロ突起の放出特性をさらに変化させるために使用されてもよい。例えば、軽く架橋されたヒドロゲルマイクロ突起は、迅速に、薬物ボーラスを送達でき、1つの用量のみが、例えば、ワクチン送達のために必要とされる。必要に応じて、適度に架橋されたヒドロゲルマイクロ突起は、長時間の薬物送達、それによる一定の血漿中の薬物レベルの促進を可能にするために使用され得る。必要に応じて、適度に架橋されたヒドロゲルマイクロ突起は、SC開口部における孔を穿刺し続けることができる。実際に、適度に架橋されたヒドロゲルマイクロ突起は、必要に応じて、組織からの水分の吸収、およびマイクロ突起の膨張の結果として穿刺孔を幅広くすることができる。
【0019】
マイクロ突起および/または基部要素のポリマー組成物は、当該分野において公知の任意の適切な技術を用いて架橋され得る。架橋は、物理的または化学的あるいはそれらの両方の組み合わせであってもよい。適切な架橋剤としては、多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール(ポリ(エチレングリコール)))、またはポリマーの反応基とアミドを形成し得るポリアミノ化合物が挙げられる。
【0020】
本発明の一実施形態において、ヒドロゲル形成ポリマーは、多価アルコールを用いて架橋されたGantrez(登録商標)型ポリマーである。
【0021】
本発明のマイクロ突起アレイのマイクロ突起は、それらが、皮膚への挿入時に破損せずに哺乳動物の皮膚の角質層を突き抜けることができるように任意のサイズおよび形状であってもよい。
【0022】
一実施形態において、本発明のマイクロ突起アレイのマイクロ突起は、1〜3000μmの高さである。一実施形態において、マイクロ突起は50〜500μmの幅(または、実質的に円形の断面を有するマイクロ突起の場合、直径)を有する。
【0023】
基部要素およびマイクロ突起は、同じまたは異なる材料からなってもよい。
【0024】
典型的に、基部要素はマイクロ突起と同じポリマー組成物からなる。
【0025】
本発明のマイクロ突起アレイのマイクロ突起の機械的強度および膨張速度は、マイクロ突起の形状、およびマイクロ突起を構成するポリマーを含む、多くの要因によって決定される。
【0026】
本発明のマイクロ突起アレイは、多くの異なる目的のために使用され得る。一実施形態において、それらは、活性剤、例えば、薬物などの有益な物質の皮膚への経皮送達の使用のためである。
【0027】
従って、本発明の第2の態様において、本発明の第1の態様によるマイクロ突起アレイを備える経皮送達装置が提供される。
【0028】
このような経皮送達装置において、活性剤は、マイクロ突起アレイが連通するリザーバーまたはマトリクス内に含まれてもよい。使用中、皮膚へのマイクロ突起アレイの挿入時に、活性剤は、マイクロ突起を介してリザーバーまたはマトリクスから皮膚まで移動する。
【0029】
さらに、または代替として、活性剤は、マイクロ突起アレイのポリマー組成物内に含まれてもよい。このことは、薬物が皮膚へ挿入するとほぼすぐに薬物送達が開始され得る、マイクロニードル内のチャネルを介して送達される従来のマイクロニードルアレイとは異なる利点を有する。
【0030】
特定の実施形態において、活性剤は、マイクロ突起および/または基部要素を構成するポリマーに化学的に結合され得る。この場合において、活性剤は、マイクロ突起の溶解、その活性剤をポリマーに保持する結合の加水分解、酵素的分解または自然発生による非触媒的分解によって皮膚への挿入時に放出され得る。従って、薬物放出の速度は、反応/結合の分解の速度によって決定され得る。
【0031】
本発明の経皮送達装置の実施形態において、マイクロ突起アレイからの活性剤の皮膚への移動は、受動的に起こり得る。あるいは、移動は、例えば、イオン注入により外部から制御されてもよい。従って、本発明の第3の態様において、本発明の第1の態様のマイクロ突起アレイを備えるイオン注入装置が提供される。
【0032】
本発明の第4の態様において、皮膚を通して、または皮膚の中に活性剤を送達する方法が提供され、その方法は、
本発明の第1の態様によるマイクロ突起アレイ、または本発明の第2の態様による経皮治療装置を提供する工程であって、そのマイクロ突起アレイまたは経皮治療装置は前記活性剤を含む、工程と、
マイクロ突起アレイを皮膚に適用し、それによって、そのマイクロ突起が、角質層を通して、または角質層の中に突き出る工程と、
そのマイクロ突起を膨張させる工程と、
そのマイクロ突起アレイを介して活性剤を皮膚へ流入させる工程と、
を含む。
【0033】
本発明の、および本発明に使用するための経皮送達装置は、連続して、または断続的に活性剤を送達するために、例えば、数秒〜数時間または数日の間、皮膚または他の組織に取り付けられ得る。
【0034】
本発明の、および本発明に使用するためのアレイは、互いと異なる特性を有する、例えば、異なる形状、ポリマー組成物、架橋剤または架橋の程度を有するマイクロ突起の群を含んでもよく、それにより、単一のマイクロ突起アレイが、活性剤、例えば薬物を異なる速度で送達できる領域を有するようにすることができる。これにより、例えば、マイクロ突起アレイの配置時に、患者に迅速にボーラスを送達し、その後、同じ活性剤のゆっくりとした持続放出が可能となる。実際に、本発明のマイクロ突起アレイは、同じ経皮治療装置から1つ以上の活性剤を送達するために使用され得る。例えば、第1の活性剤は、マイクロ突起を構成するポリマー内に含まれ、第2の活性剤はリザーバー内に収容されてもよい。皮膚に配置し、角質層を穿刺すると、マイクロ突起は膨張し、活性剤がマイクロ突起から放出される。その後、第2の活性剤がリザーバーから放出され得、マイクロ突起を介して皮膚に侵入する。
【0035】
マイクロ突起自体に含まれる薬物は、マイクロ突起の表面における薬物に起因して最初にバースト放出として膨張時に迅速に放出される。その後の放出の程度は、架橋密度および薬物の物理化学的特性によって決定される。薬物リザーバーからの薬物の放出は、マイクロ突起をその薬物リザーバーまで膨張するのに必要とされる時間の結果として最初によりゆっくりと生じ、その後、薬物の膨張性マイクロ突起への分配および膨張性マトリクスを介して薬物の拡散が生じる。このように、マイクロアレイは、1つまたは両方の活性剤の送達時間を変化させるために、適用される組成物を用いて、例えば、マイクロ突起の組成物の架橋によって、連続して2つの活性剤を送達するために適用されてもよい。
【0036】
本発明のマイクロ突起アレイを用いて角質層を通して送達され得る活性剤としては、薬物、栄養物または化粧品薬剤が挙げられる。
【0037】
経皮送達装置に使用するのに適切であるのと同様に、本発明のマイクロ突起アレイは、逆方向に皮膚を通して物質を移動すること、例えば、体内の診断目的の物質のレベルのモニタリング、および皮膚から物質のサンプリングを容易にすることに利用されてもよい。
【0038】
従って、本発明の第5の態様において、皮膚間質液中の検体をサンプリングする方法が提供され、その方法は、
a.本発明の第1の態様のマイクロ突起アレイを提供する工程と、
b.マイクロ突起アレイを皮膚に適用し、それによって、マイクロ突起が角質層を通して突き出る工程と、
c.マイクロ突起を膨張させる工程と、
d.マイクロ突起を介して検体を皮膚から回収チャンバまで流出させる工程と、
e.前記回収チャンバ内に前記検体の存在を検出する工程と、
を含む。
【0039】
本発明のマイクロ突起アレイを用いるサンプリングは、受動的に、または代替の実施形態において、能動的に、例えば、逆イオン泳動によって行われてもよい。
【0040】
本発明の第6の態様によれば、本発明の第1の態様によるマイクロ突起アレイ、本発明の第2の態様による経皮送達装置または本発明の第3の態様によるイオン注入装置を介して、薬物を必要とする被験体に提供する工程を含む、処置方法が提供される。
【0041】
本発明はまた、活性剤を必要とする被験体の皮膚にその活性剤を投与するために、本発明の第1の態様によるマイクロ突起アレイ、本発明の第2の態様による経皮送達装置、または本発明の第3の態様によるイオン注入装置の使用を提供する。
【0042】
本発明のマイクロ突起アレイはまた、膜不浸透性分子の細胞内への送達、分子生物学における用途、神経組織および他の組織への薬物送達、例えば、皮膚への送達、または局所的治療効果、または血管内送達、例えば、浸透およびその後の抗再狭窄薬剤のアテローム性動脈硬化の動脈への送達のために使用され得る。このような用途はまた、医療装置上、例えば、膨張時に、組織に浸透させ、有益な物質を送達させるために使用され得るカテーテルおよびステント上の機能的(治療活性剤の検知、送達)表面としての使用を含む。
【0043】
実際に、特定の実施形態において、本発明のマイクロ突起アレイは、血管内送達装置、例えば、カテーテルまたはステントを介して、活性剤を身体の内腔に送達するために使用され得る。
【0044】
従って、本発明の第7の態様において、本発明の第1の態様による1つ以上のマイクロ突起アレイを備える血管内送達装置が提供される。
【0045】
血管内送達装置は、薬剤の身体の内腔(例えば、動脈、静脈、尿道などの他の管状構造)への送達に適切な任意の装置であってもよい。その血管内送達装置は、カテーテルまたはステントであってもよいし、またはそれらから構成されてもよい。
【0046】
血管内送達装置は、使用時に配置されるマイクロ突起アレイを、標的とする内腔表面、例えば、特定の血管の内皮表面に送達するため、および/または標的表面と接触させるための任意の適切な支持手段とともに提供されてもよい。
【0047】
例えば、適切に、使用する目的部位への血管などの内腔を通す送達の間、アレイに対する損傷を防ぐため、および実際には、血管内送達装置が送達される血管に対する損傷を防ぐために、血管内送達装置のその所望の位置までの挿入の間にアレイが支持手段に提供されてもよく、アレイと、血管内送達装置が通る内腔表面との間に最低限接触するような位置またはほとんど接触しないような位置にアレイを維持してもよい。好ましくは、一旦、例えば、標的血管内に正確に配置されると、支持手段は、アレイを所望の内腔表面と接触させるように操作され得る。
【0048】
これを達成するための任意の適切な支持手段が使用されてもよい。例えば、支持手段は従来のステントであってもよく、それは、ステントが第1の直径を有する閉じた位置からステントの直径が大きくなる開口位置まで拡張され得る。ステントを配置するのに従来使用される任意の適切な手段が、マイクロ突起アレイを送達するために使用または適用されてもよい。例えば、アレイは閉じた支持手段上に配置されてもよく、その位置で開口する。すなわち、例えば、閉じた支持手段内での血管形成術用バルーンの膨張によって周囲に拡張する。一旦、アレイが所望の内腔表面に配置されると、バルーンは収縮し、引き抜かれ得る。
【0049】
上記のように、支持手段は、任意の適切な構造、例えば、ステントおよびステント送達に使用されるものを含んでもよい。例えば、支持手段は、ワイヤまたはスプリングを支持する1つ以上の折り畳み可能な金属フレームを有してもよい。
【0050】
送達の間に血管および/またはアレイに対する損傷を防ぐために、アレイはカバー手段、例えば、保護鞘内に維持されてもよく、標的血管への血管内送達手段の送達時にアレイが標的血管壁と接触し得るように引き抜かれる。
【0051】
一実施形態において、アレイは支持手段に配置されてもよく、配置手段および/または血管内送達装置の引き抜き時に、従来のステントと同様に支持機能を血管に提供するように血管内の位置に残ったままになる。現在、使用中のステントは、しばしば、血管形成術用バルーンの間に血管壁を支持するのに役立つように使用され、それにより、ステントが、血管内の位置で操作され、拡張され得る。本発明のこのような実施形態の血管内送達装置は、従来のステントに対する利点を有し、装置を介して血管に対する支持を提供するだけでなく、そのような血管壁を通す治療活性剤の局所的送達をさらに可能とする。
【0052】
代替の実施形態において、マイクロ突起アレイ支持手段は、一度、送達手段が引き抜かれると所定の位置に残ったままになるが、血管自体に対する支持機能を提供しない。さらなる実施形態において、アレイの配置後の血管内送達装置の引き抜き時に、いずれかの支持手段もまた引き抜かれる。このような実施形態において、アレイは、元の位置のままに残り得、実際にマイクロ突起は、血管壁におけるアレイを固定する。
【0053】
マイクロ突起アレイは、任意の適切な構造で血管内送達装置またはその支持手段に配置されてもよい。例えば、マイクロ突起アレイは、スラブ型アレイ構造として提供されてもよい。そのような構造において、アレイの基部は、好ましくは、使用中に血管壁と接触するアレイ全体にわたるマイクロ突起の操作を可能にする程度まで柔軟性がある。
【0054】
代替の実施形態において、マイクロ突起アレイは、2つ以上のマイクロ突起の単列を含むストリップに提供されてもよい。そのようなストリップは剛性であり得る。
【0055】
使用中に、支持手段は、血管の内皮を突き通すためにマイクロ突起アレイのストリップまたはスラブを配置するのに役立つ。
【0056】
各々の血管内送達装置は、ストリップまたはスラブあるいはそれらの混合物に配置された1つ以上のマイクロ突起アレイを備えてもよい。そのアレイは、送達装置から等距離に実質的に配置されてもよいか、または、1つ以上の局所的領域、例えば、そのような送達装置の外面の4分の1の領域に集中してもよい。
【0057】
本発明の血管内送達装置は、いずれかの身体血管の内腔壁を通して薬物などの物質を送達するために使用されてもよい。一実施形態において、ステントが、心臓血管疾患を処置するために血管内の活性剤の経内皮送達に使用される。
【0058】
本発明の第8の態様において、組織を浸透することによって活性剤を送達する方法が提供され、その方法は、
本発明の第7の態様による血管内送達装置を提供する工程と、
血管内送達装置を標的血管に導入する工程と、
マイクロ突起アレイを血管壁組織と接触させ、それにより、マイクロ突起が血管壁を通して、または血管壁内に突き出る工程と、
血管を通して、または血管内にマイクロ突起を介して活性剤を流入させる工程と、
を含む。
【0059】
本発明の第9の態様において、本発明の第7の態様による血管内送達装置を介して活性剤を必要とする被験体に投与する工程を含む、処置方法が提供される。
【0060】
本発明の各態様の好ましい特徴は、文脈が他に要求しない限り、他の態様の各々に関して、変更すべきところは変更される。
【0061】
(詳細な説明)
以下に例示するように、本発明者らは、マイクロ突起が膨張性ポリマーから構成されるマイクロ突起アレイが、皮膚への挿入時に破損することなく、哺乳動物の皮膚の角質層を穿刺でき、従来の中実マイクロニードルの使用に関連する多くの問題を有さずに角質層を通して活性物質を効果的に送達するために使用され得ることを示す。
【0062】
例えば、FDAにより認可されたヒドロゲル材料を、マイクロ突起を形成するために利用することができ、そしてそのようなヒドロゲル材料は安価であり、生体適合性があり得る。薬物はマイクロ突起アレイの上面に取り付けられた薬物リザーバーに含まれることができるので、マイクロ突起によって提供され得る薬物用量は、マイクロ突起に負荷され得る量によって制限されるわけではない。
【0063】
皮膚への侵入時のマイクロ突起の膨張は、従来のマイクロニードルアレイまたは実際の糖類のマイクロニードルより多くの利点を有する。例えば、マイクロ突起アレイが薬物送達に使用される場合、角質層の下部の表皮層と接触するマイクロ突起の増加した表面領域により、マイクロ突起の膨張が、角質層の下部の表皮層への薬物の向上された送達を可能にする。特定の実施形態において、膨張性ポリマーのマイクロ突起アレイは、皮膚への挿入時に水分を吸収でき、外部環境と皮膚の微小循環との間に連続した水性チャネルを形成させるために膨張でき、それにより、親油性角質層障壁を通る「水性ブリッジ」を形成する。そのようなチャネルは、中にチャネルを有する従来のシリコンベースのマイクロニードル装置と対照的に、アレイを配置する際に遮断する傾向を有さない。必要に応じて、マイクロ突起は、マイクロ突起の表面上のあらゆる点から薬物を放出でき、組織によるマイクロ突起の遮断をさらに最小化する。必要に応じて、ヒドロゲルマイクロ突起アレイは、迅速なボーラス投与を与えるために薬物リザーバーと一体化でき、治療血漿中濃度を達成し、その後、制御され、長時間の送達を達成して、このレベルを維持する。必要に応じて、膨張性ヒドロゲル材料は、70%より多い、例えば80%より多い、例えば90%より多い水を含むことができる。高含有量の水を有することにより、薬物拡散が促進され、ポリマー鎖との衝突に起因する薬物移動の障害の機会がほとんどない。さらに、水はイオンおよび極性物質の通過を可能にし、電位勾配の下で電気浸透流を促進する。従って、帯電物質および/または極性物質の伝導ならびに電気浸透流による流体移動が可能である。
【0064】
(膨張性ポリマー)
マイクロ突起は任意の適切な膨張性ポリマーから製造されることができ、その乾燥状態は、角質層の穿通を可能にするために硬く、かつ、もろいが、水分を取り込むと、治療活性薬剤の拡散を可能にするために膨張する。例えば、マイクロ突起は、限定されないが、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(カプロラクトン)を含むヒドロゲルを形成するために公知の1つ以上の数のポリマーから構成されてもよい。
【0065】
特定の実施形態において、マイクロ突起のポリマーは、物理的、化学的またはその両方で架橋される。マイクロ突起アレイは、マイクロ突起アレイの群を含んでもよく、ここで、第1の群は、少なくとも第2の群とは異なる少なくとも1つの架橋剤を含む。
【0066】
特定の実施形態において、マイクロ突起は架橋されなくてもよく、角質層を穿刺する際の最初の膨張段階の後に溶解し、皮膚の水分と接触する。この場合において、治療活性剤は、マイクロ突起の溶解速度によって決定される速度で皮膚に放出されることができる。特定のマイクロ突起の溶解速度は、所定の用途または所望の薬物放出速度に適するように調整され得るそれらの物理化学特性に依存する。
【0067】
架橋されていないマイクロ突起、軽く架橋されたマイクロ突起、および非常に架橋されたマイクロ突起の組み合わせは、活性薬剤、例えば治療物質のボーラス用量を送達するように単一の装置に組み合わされてもよく、治療血漿中濃度、その後、そのレベルを維持するために制御された送達が達成される。この戦略は、治療物質がマイクロ突起および基部要素または取り付けられたリザーバーに含まれるか否かに関わらず、首尾よく利用され得る。
【0068】
さらなる実施形態において、基部要素およびマイクロ突起は、1つ以上の水溶性賦形剤の量を規定するそれらのマトリクスに含まれてもよい。皮膚への挿入時に、それらの賦形剤は溶解し、基部要素およびマイクロ突起のマトリクスの後方の孔から流出する。これにより、放出速度が向上され得、さらに賦形剤、その濃度および/またはその粒子サイズを変更することによって放出速度が制御され得る。適切な賦形剤としては、限定されないが、グルコース、デキストロース、硫酸デキストラン、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムまたは当該分野において公知の他の水溶性賦形剤が挙げられる。
【0069】
上記のように、経皮送達に使用するために、または体内の物質のレベルをモニターするために、マイクロ突起アレイは、角質層障壁に開口部を生じさせることができなければならず、それを通して有益な物質が移動できる。従って、挿入の力は、マイクロ突起を破損するのに必要とされる力よりも小さい。
【0070】
適切には、5.0N cm−2未満、例えば3.0N cm−2未満、例えば、0.5N cm−2未満の挿入圧力が、マイクロ突起の長さに沿ってマイクロ突起に与えられる場合、マイクロ突起は破壊しない。
【0071】
マイクロ突起は、角質層を穿刺するためのアレイに使用するために任意の適切なサイズおよび形状であってもよい。本発明の第1の態様のマイクロ突起アレイは、角質層を刺し、必要に応じて角質層を通過するように設計される。適切には、マイクロ突起の高さは、上面表皮、表皮の深さ、または真皮上層までへの貫通を可能にするように変更され得るが、出血を引き起こすほどの皮膚内の深さまで貫通しない。一実施形態において、マイクロ突起は、基部より上のマイクロ突起の高さの点まで先細になる円形基部を有する円錐形である。
【0072】
マイクロ突起アレイの実施形態において、そのマイクロ突起は、1μm〜3000μmの高さの範囲であり得る。例えば、そのマイクロ突起は、50μm〜400μm、例えば50〜100μmの範囲の高さを有してもよい。適切には、本発明のアレイの実施形態において、マイクロ突起は幅(例えば、円形断面のマイクロ突起の場合においてマイクロ突起の基部にて1〜500μmの直径)を有してもよい。一実施形態において、本発明の、および本発明に使用するためのマイクロ突起は、50〜300μm、例えば100〜200μmの範囲の直径を有してもよい。別の実施形態において、本発明のマイクロ突起は、1μm〜50μmの範囲、例えば20〜50μmの範囲の直径であってもよい。
【0073】
アレイ中の個々のマイクロ突起の各々の間の頂点の分離距離は、皮膚の貫通を確実にするために変更されてもよいが、高い経皮輸送率を与えるように十分に小さな分離距離を有する。この装置の実施形態において、マイクロ突起間の頂点の分離距離の範囲は、50〜1000μm、例えば100〜300μm、例えば100〜200μmの範囲であってもよい。これにより、角質層の効果的な貫通と、治療活性薬剤の向上した送達、あるいは間質液またはその成分の通過との間の関係を達成することが可能となる。
【0074】
本発明のマイクロ突起が、限定されないが、マイクロニードル、錐体、棒および/または柱を含む任意の適切な形状を取り得ることは当業者に明らかであろう。このようなものとして、マイクロ突起は、基部の頂点で同じ直径を有してもよいか、または頂点までの方向において先細の直径になってもよい。マイクロ突起は、少なくとも1つの鋭い端部を有してもよく、頂上で鋭くなってもよい。マイクロ突起は、中実であってもよく、少なくとも1つの長手軸に基部要素まで一定の角度で下がり、基部要素の第1の側まで延びる中空の孔を有してもよく、それらは穴であってもよく、または頂上から基部要素まで少なくとも1つの外表面に流れる少なくとも1つのチャネルを有してもよい。
【0075】
使用中、マイクロ突起は、穏やかに加えられた圧力によって、または予め規定された力を加える特別に設計された機械的アプリケータを使用することによって皮膚内に挿入されてもよい。さらなる装置が、マイクロ突起の挿入を促進するように皮膚の表面を伸ばすか、挟むか、または引っ張ることによって皮膚の弾力性を減少させるために使用されてもよい。この後者の機能は、通常、マイクロ突起アレイの挿入のための単一の一体化された装置を製造するためにアプリケータの機能と組み合わせられ得る。
【0076】
マイクロニードルベースの送達のための多くの用途は当該分野において公知である。例えば、米国特許出願公開第20046743211号は、マイクロニードル−アレイベースの経皮薬物送達システムが適用される、より剛性で、ほとんど変形しない表面領域を引き起こすために、皮膚を伸ばすこと、引っ張ること、または挟むことによって皮膚の弾力性を制限するための方法および装置を記載している。米国特許出願公開第20060200069号は、皮膚に対してコーティングされたマイクロ突起アレイの適用のためにスプリングを負荷した衝突アプリケータを記載している。当該分野において公知のさらなる適用は、特別に設計されたスプリングを負荷されたアプリケータ(Alza Corporation,2007)を用いて皮膚に適用されるAlza Macroflux(登録商標)装置である。
【0077】
(製造方法)
ヒドロゲルを形成するために公知のポリマーからなるマイクロ突起は、当該分野に公知のいずれかのような方法により製造され得る。例えば、それらは、限定されないが、例えば、シリコン、高分子金属材料を含む1つ以上の種々の材料から製造されるマイクロ突起アレイなどのマスターテンプレートを用いるマイクロモールド技術により製造され得る。マスターテンプレートは、限定されないが、電気化学エッチング、シリコンのディーププラズマエッチング、電気めっき、ウェットエッチングプロセス、マイクロモールド、マイクロエンボス、「スレッドフォーミング」方法を含む多くの方法によって、ならびに連続的な逐次堆積および放射線感受性ポリマーのx線照射の使用によって製造されて、中実のマイクロ突起アレイを得ることができる。
【0078】
マイクロモールドは、後で硬化される液体モノマーまたはポリマーを含むマスターテンプレートをコーティングすることによって製造され得、そのマスタープレートは、マスタープレートの詳細を含むモールドを残すように除去される。マイクロモールド技術において、開始剤および/または架橋剤を含んでも含まなくてもよい液体モノマーがモールドに入れられ、それは、重力流、真空または遠心力の付与によって、圧力の付与によって、あるいは射出成形によって充填される。次いで、モノマーは、熱または照射(例えば光、UV照射、x線)の適用によってモールド内で硬化され得、マスターテンプレートの正確な複製である形成されたマイクロ突起アレイが取り除かれる。あるいは、架橋剤を含んでも含まなくてもよいポリマーの溶液は、モールドに入れられ、それは、重力流、真空または遠心力の付与によって、圧力の付与によって、あるいは射出成形によって充填される。次いで、溶媒は、乾燥マイクロ突起アレイの後方から出ていくように蒸発されて、マスターテンプレートの正確な複製になり、次いで、モールドから取り除かれ得る。使用され得る溶媒としては、限定されないが、水、アセトン、ジクロロメタン、エーテル、ジエチルエーテル、酢酸エチルが挙げられる。他の適切な溶媒は当業者に明らかであるだろう。マイクロモールドはまた、例えばマイクロマシニング方法によって、およびまた当業者に明らかである他の方法によってマスターテンプレートを必要とせずに製造されてもよい。
【0079】
例えば、一実施形態において、マイクロ突起アレイは、所望のマイクロ突起の形状が適切なモールド材料に、例えば、レーザーを用いてドリルされる方法を用いて製造されたマイクロモールドを用いて調製されてもよく、次いで、そのモールドは当該分野において公知または本明細書に記載の技術を用いて充填される。
【0080】
ヒドロゲルを形成するために公知のポリマーからなるマイクロ突起はまた、「自己モールド」法を用いて製造されてもよい。この方法において、ポリマー材料はまず、例えば、限定されないが、鋳造、成形およびモールディングを含む、当該分野において周知の技術を用いて薄膜に製造される。その材料は、「自己モールディング」プロセスの前に架橋されても、されなくてもよい。このプロセスにおいて、薄膜は以前に製造されたマイクロ突起アレイに入れられ、加熱される。重力に起因する塑性変形により、ポリマー膜が変形し、硬化時に所望のマイクロ突起構造が製造する。
【0081】
中空の孔を有するマイクロ突起は、中空のマスタープレートから製造されたモールドを用いることによって、またはマイクロマシン法もしくは中実のマイクロ突起を製造するために使用される他の方法を適切に変更することによって製造されてもよい。中空の孔はまた、機械的にまたはレーザーによって、形成されるマイクロ突起にドリルされてもよい。頂上から基部要素まで少なくとも1つの外表面で下方へ少なくとも1つのチャネル直線を有するマイクロ突起もまた、中実のマイクロ突起を製造するために使用される方法の適切な変更により製造され得る。このような変更は当業者に明らかであろう。チャネルはまた、機械的に、またはレーザーによって、形成されるマイクロ突起にドリルされてもよい。
【0082】
ヒドロゲルを形成するために公知のポリマーからなるマイクロ突起はまた、「スレッドフォーミング」方法を用いて製造され得、それにより、平らな表面に拡散されるポリマー溶液が、突起によって接触されるその表面を有し、次いで、迅速に上方に移動し、連続したポリマー「スレッド」を形成し、次いで、マイクロ突起を形成するために乾燥される。
【0083】
上記の方法の全てにおいて、マイクロ突起自体に組み込まれる物質(例えば、活性治療剤、孔を形成する薬剤、酵素など)は、製造プロセスの間、液体モノマーまたはポリマー溶液に加えられてもよい。あるいは、そのような物質は、形成されたマイクロ突起アレイを膨張させるために使用される溶液中のそれらの溶液状態から水分を吸収され得、その後乾燥されるか、または形成されたアレイは、目的の薬剤を含む溶液に浸され得るか、または目的の薬剤を含む溶液で噴霧され得る。これらの溶液を作製するために使用される溶媒としては、水、アセトン、ジクロロメタン、エーテル、ジエチルエーテル、酢酸エチルが挙げられる。他の適切な溶媒は、マイクロ突起アレイを乾燥させるために使用されるプロセスと同様に当業者に明らかであろう。マイクロ突起および/または基部要素が粘着性になる場合、形成されるアレイは粘着剤を含む溶液に浸され得るか、または粘着剤を含む溶液で噴霧され得る。使用される粘着剤は、感圧粘着剤または生体粘着剤であってもよい。これらの物質は周知であり、当業者に明らかであろう。
【0084】
マイクロ突起が形成される基部要素は、例えば、限定されないが、製造プロセスに使用される液体モノマーまたはポリマー溶液の量を増加させることを含む、製造方法の適切な改変により厚さが変更されてもよい。このように、治療活性薬剤および/または目的の検体の拡散/輸送に対する障壁は、例えば迅速な送達またはサンプリングまたは持続放出を達成するように制御され得る。治療活性薬剤がマイクロ突起および基部要素のマトリクス内に含まれる場合、基部要素の厚さは、完全に一体化されたリザーバーとして機能するように有用に増加されてもよい。
【0085】
(架橋結合)
架橋は物理的であっても、化学的であっても、分子間であっても、分子内であってもよい。ポリマーを架橋するための方法は当該分野において周知である。架橋は、隣接するポリマー鎖、または同じポリマー鎖の隣接する部分が結合するプロセスであり、互いから離れて移動することを防ぐ。物理的架橋は、もつれあい、または他の物理的相互作用に起因して起こる。化学的架橋に関して、官能基は化学結合を生じるように反応する。そのような結合は、ポリマー鎖上の官能基間で直接的であってもよいか、または架橋剤は、鎖を連結するために使用されてもよい。このような架橋剤は、ポリマー鎖上の基と反応できる少なくとも2つの官能基を有さなければならない。架橋はポリマー溶解を防ぐが、ポリマー系が流体を吸収し、その元のサイズに何度も膨張することを可能にする。
【0086】
(経皮送達装置)
本発明の第1の態様は、1つ以上の活性薬剤および/または有益な物質(例えば薬物)を生体界面に送達するための経皮薬物送達システムに関する。このようなシステムは、基部要素およびそれに形成される複数のマイクロ突起を含み得る。特定の実施形態において、前記基部要素は第1の側および第2の側を有してもよく、前記複数のマイクロ突起は、一定の角度で前記基部要素の第2の側から突き出る複数の要素を含む。前記基部要素に関連する一実施形態において、前記角度は45°〜90°の範囲、例えば70°〜90°の範囲である。特定の実施形態において、前記角度は約90°である。この装置の特定の実施形態において、前記基部要素および複数のマイクロ突起は、水分の吸収の際にヒドロゲルを形成するために公知のポリマー材料から形成され得る。適切には、好ましい実施形態において、使用中、皮膚への挿入の際に、前記マイクロ突起および基部要素のポリマー材料は、水分を吸収し、サイズを増加させて、膨張性ヒドロゲルを形成することができ、治療活性薬剤は、前記膨張性基部要素および膨張性ヒドロゲルマイクロ突起を通して拡散することができる。特定の実施形態において、治療活性薬剤はリザーバーから提供されてもよく、ここで、前記リザーバーは基部要素の第1の側に取り付けられてもよい。この装置の特定の実施形態において、リザーバーは、適切なマトリクス材料、例えば適切な接着性または非接着性ポリマーマトリクスに分散された薬物であってもよいか、あるいは流体含有リザーバーであってもよいか、前記リザーバー内に注入される液体によって再構成するための固形の治療活性薬剤を含んでもよい。
【0087】
本発明の経皮送達装置の代替の実施形態において、取り付けられたリザーバーは存在しない。このような実施形態において、1つ以上の治療薬物または他の有用な物質が、前記基部要素および複数のマイクロ突起の膨張性ポリマー組成物内に含まれてもよい。前記物質は膨張性ポリマー組成物内に溶解されてもよいか、または微粒子形態で懸濁されてもよい。皮膚への挿入およびマイクロ突起の膨張時に、治療活性薬剤が、マイクロ突起の架橋の程度および治療活性薬剤自体の水溶性により決定される速度で皮膚へ放出され得る。
【0088】
マイクロ突起の基部要素の領域の後方に延びる接着縁を有するバッキング層は、長時間、例えば72時間以上、マイクロ突起ベースの装置を皮膚表面上の所定の位置に維持するために使用され得る。基部要素、および必要に応じてマイクロ突起自体の表面は、適用部位での保持を促進するように接着性材料でコーティングされる。
【0089】
特定の実施形態において、活性剤は、マイクロ突起および基部要素を構成するポリマーに化学的に結合され得る。この場合において、マイクロ突起の溶解、ポリマーを保持する結合の加水分解、酵素的分解または自然発生による非触媒的分解によって、薬物は皮膚への挿入時に放出され得る。従って、薬物放出の速度は、反応/結合分解の速度によって決定され得る。
【0090】
代替の実施形態において、マイクロ突起および/または基部要素のポリマー組成物は、刺激応答性であり得るように調製され得る。例えば、pHまたは温度の局所的な変化は、マイクロ突起および基部要素の特性(例えば、水分を吸収する際に膨張する能力)を変化させ得、それにより、治療活性薬剤の送達速度の変化が起こる。あるいは、光照射などの外部刺激は、マイクロ突起および基部要素の特性の変化に影響を与えるように使用され得、それにより、治療活性薬剤の送達速度の変化が生じる。
【0091】
本発明のアレイの実施形態において、マイクロ突起および基部要素のポリマー組成物は、装置の表面特性が変化し、より親水性、親油性、アニオン性、またはカチオン性の特徴になるように調節されてもよい。
【0092】
(活性薬剤)
本発明のマイクロ突起アレイおよび経皮送達装置は、任意の適切な活性薬剤を送達するように使用されてもよい。例えば、活性薬剤は、薬物、栄養物または化粧品薬剤であってもよい。薬物という用語は、疾患の処置または予防のための「有用な物質」、例えば薬物、皮膚の全体的な健康を改善できる物質、例えばビタミンおよびミネラル、ならびに例えば、しわの出現を減少させるか、または皮膚の水和の程度を改善することによって皮膚の美的外観を改善できる物質を含む。
【0093】
このような装置を用いて送達するのに適切な薬物の非限定的な例としては、オリゴヌクレオチド、タンパク質、酵素、抗原、核酸、増殖因子、多糖ならびに低分子、抗生物質、抗感染薬、ホルモン、強心作用および血流に関する薬物、疼痛コントロールのための薬物、ステロイド、および鎮痛剤などの合成有機化合物および無機化合物が挙げられる。投与される薬物は、局所的処置あるいは局所的治療または全身的治療であってもよい。医薬の治療的に活性な用量は、マイクロ突起アレイによって提供されてもよい。
【0094】
必要に応じて、薬物は水溶性であってもよい。実際に、経口送達のために開発されている大多数の薬物はある程度の水溶性を有するが、間質液に溶解される診断物質もまた、水溶性である。薬物分子は、生存する皮膚層からの水分によって膨張されるマイクロ突起のマトリクスを通して拡散でき、膨張の程度は薬物拡散の速度を制御する。
【0095】
経皮送達装置の実施形態において、経皮送達装置はマイクロ突起が取り付けられるリザーバーまたはマトリクスを含んでもよい。特定の実施形態において、使用中、皮膚へのマイクロ突起の挿入時にリザーバーまたはマトリクスは、送達されるべき薬剤、例えば、薬物を含んでもよく、マイクロ突起を介してリザーバーまたはマトリクスから送達部位へ流入する。
【0096】
特定の実施形態において、薬剤送達は単純な受動拡散を介して起こり得るか、または電気的に支援され得るか、もしくは圧力的に支援され得る。
【0097】
支援される送達を利用する実施形態において、支援される送達は、圧力駆動手段、例えば、限定されないが、シリンジまたはポンプを介してでもよく、特定の実施形態において、そのシリンジまたはポンプは電気駆動であってもよい。
【0098】
本発明のマイクロ突起によって媒介される薬剤、例えば薬物の受動的または支援経皮送達は、薬剤を含むリザーバーに取り付けられるマイクロ突起アレイからなるシステムから起こり得る。
【0099】
特定の実施形態において、マイクロ突起を介して流入する前に、送達されるべき薬剤はリザーバーまたはマトリクス内に保存されてもよい。リザーバーは変形可能であってもよい。特定の実施形態において、リザーバーは多くのチャンバに細かく分けられてもよく、各チャンバが同時または連続して送達部位に異なる薬剤を供給する。あるいはまたはさらに、マイクロ突起自体は送達されるべき薬剤でコーティングされてもよい。適切には、このような実施形態において、皮膚への挿入後、薬剤は溶解されて、マイクロ突起から拡散できる。
【0100】
特定の実施形態において、本発明の装置および必要に応じてリザーバーまたはマトリクスは、リストバンドに組み込まれて、簡便に患者によって装着されてもよい。
【0101】
薬物送達速度は、アレイの可変の1つ以上の設計を変更することにより制御され得る。例えば、マイクロ突起の数を変化させてもよく、同様にそれらの直径および/または高さを変化させてもよい。力の付与が薬物流入を駆動するために使用されてもよいか、または一部のマイクロ突起が拡散を制限する材料で充填されてもよい。
【0102】
さらに、皮膚を通して薬物の送達速度を調節するために、本発明のマイクロ突起アレイによって送達可能な薬剤、例えば薬物は、ポリマーナノ粒子内にカプセル化されて、膨張性マイクロ突起からそれらの放出をさらに調節してもよい。
【0103】
(イオン注入装置)
本開示の第1の態様は、1つ以上の治療活性薬剤を生体界面に送達するためのイオン注入経皮薬物送達システムに関する。そのようなシステムは、本発明の第2の態様による経皮送達装置を含んでもよい。特定の実施形態において、治療活性薬剤はリザーバーから提供されてもよい。前記リザーバーはマトリクス型(粘着剤中の薬物)リザーバーまたは流体を含むリザーバーであってもよいか、前記リザーバー内に注入される液体によって再構成される固形治療薬剤を含んでもよい。このような実施形態において、その装置は、第1の電極および前記第1の電極と異なる位置に第2の電極をさらに含んでもよく、両方の電極は前記リザーバー、電源、電子制御装置および中央処理回路に近接する。電極間の電位差の印加は、イオン泳動または電気浸透流による前記膨張性基部要素およびマイクロ突起を介する前記リザーバーから皮膚への治療活性薬剤の送達を促進する。
【0104】
本発明のこの態様は、必要な場合、上述の態様のうちの1つ以上と合わせられてもよいことは当業者に明らかであろう。
【0105】
(サンプリング法)
本明細書に記載する場合、本発明のマイクロ突起は、体内における診断目的の物質のレベルをモニタリングし、皮膚から物質をサンプリングするために使用されてもよい。従って、本発明の一態様において、皮膚間質液またはそれらの成分を抽出するための装置が提供され、前記装置は本発明のマイクロ突起アレイおよび回収チャンバを含む。使用中、皮膚への挿入時に、マイクロ突起は水分を吸収し、膨張性マイクロ突起を形成するためにサイズを増加させ、皮膚間質液またはその成分は、前記膨張性基部要素および膨張性ヒドロゲルマイクロ突起を介して回収チャンバに抽出され得る。
【0106】
さらに、本発明の装置は、間質液以外の流体をサンプリングするために使用されてもよい。例えば装置を、例えば口腔内の粘膜に適用することにより、直接的な血液サンプリングが可能となる。
【0107】
このような装置の適切な実施形態において、その装置は検出手段を含んでもよい。適切には、好ましい実施形態において、皮膚間質液内の成分を検出するための検出手段は、電気的または光学的であってもよい。
【0108】
特定の実施形態において、最小限の侵襲的モニタリングに使用される装置は、目的の検体を検出するためのセンサと通信してもよく、および/またはそのようなセンサを含んでもよく、生成された信号を解明するためのプロセッサと通信してもよく、および/またはそのようなプロセッサを含んでもよい。
【0109】
皮膚間質液の抽出は単純な受動拡散を介して起こり得、電気的に支援または機械的に支援されてもよい。抽出が電気的に支援される実施形態において、電流が皮膚に印加されてもよい。この装置の実施形態において、装置はダイヤフラムポンプを備えてもよく、使用中、皮膚から流体を抽出する電流の代わりに、使用者が作動するダイヤフラムポンプがマイクロ突起アレイに取り付けられてもよい。
【0110】
本発明の別の態様において、本発明は、皮膚間質液またはその成分を抽出し、その後、目的の検体の濃度を測定するための逆イオン泳動装置を含む。このような実施形態において、皮膚間質液またはその成分を抽出するための装置は、第1の電極および前記第1の電極と異なる位置において第2の電極をさらに備えてもよく、両方の電極は、前記回収チャンバ、電源、電気コントローラー、中央処理回路および可視的表示器に近接する。電極間の電位差の印加は、イオン泳動または電気浸透流による前記膨張性基部要素およびマイクロ突起を介する皮膚の間質液またはその成分の抽出を促進する。
【0111】
特定の実施形態において、この装置は第3の電極を備えてもよく、また、前記回収チャンバに近接し、前記の最初の2つの電極と異なる位置にある。適切には、この第3の電極は、生物電気化学センサとして作動してもよい。
【0112】
さらなる代替の実施形態において、検体の検出および定量化が、化学反応の手段、基質への結合、または酵素によって媒介される反応によってなされてもよい。
【0113】
例えば、回収チャンバは、グルコースを検出および定量化するためのグルコースオキシダーゼを負荷されたヒドロゲルを含んでもよい。
【0114】
着色性標識またはデジタル式の読み取りの形態で、ディスプレイユニットが、目的の検体の測定レベルについての情報を与えてもよい。目的の検体は、例えば、限定されないが、グルコースまたは治療活性剤などの内因性化学物質であってもよい。
【0115】
イオン注入装置のさらなる代替の実施形態において、第1の2つの電極は、装置の一部、その装置に存在する全ての他の要素を含まなくてもよい。実際に、角質層の穿刺後、皮膚間質液またはその成分は、前記膨張性基部要素および膨張性ヒドロゲルマイクロ突起を介して回収チャンバに受動的に拡散できる。
【0116】
あるいは、マイクロ突起自体が検出要素を備えてもよい。それらは、適切な電解質を導入することによって電気的に誘導され得、それによって、皮膚の細胞外液の組成の化学変化を電気化学的に検出する。あるいは、基部要素およびマイクロ突起のマトリクスは、グルコースを検出および定量化するためのグルコースオキシダーゼを負荷されてもよい。化学反応に基づいた検出のための用途において、基質への結合体または酵素によって媒介される反応体、関連する化学反応体、基質または酵素は、基部要素およびマイクロ突起のマトリクス内に固定されてもよい。導波管もまた、例えば、着色性評価のためのpH感受性色素などの手段を用いて検出するために、皮膚へ光を導くようにマイクロ突起アレイに導入されてもよい。同様に、光は、赤外線スペクトルに基づいて血糖を測定するためにマイクロ突起を介して送信されてもよい。
【0117】
本発明の別の態様において、本開示は、1つ以上の治療活性薬剤を生体界面に送達し、その後、皮膚間質液中の送達した薬剤の濃度を測定するための閉ループのイオン注入経皮薬物送達システムに関する。そのようなシステムは、基部要素およびそれに形成される複数のマイクロ突起を含む。特定の実施形態において、前記基部要素は第1の側および第2の側を有し、前記複数のマイクロ突起は、前記基部要素に対して一定の角度で長手方向軸に沿って、前記基部要素の第2の側から突き出る複数の要素を含む。適切には、特定の実施形態において、前記基部要素および複数のマイクロ突起は、水分の吸収時にヒドロゲルを形成するために公知のポリマー材料から製造される。適切には、このシステムの実施形態において、このシステムはリザーバーをさらに含んでもよく、そのリザーバーは基部要素の第1の側に取り付けられてもよく、前記リザーバーは、マトリクス型(粘着剤中の薬物)リザーバーまたは流体を含むリザーバーであってもよく、あるいは前記リザーバーに注入される液体によって再構成するための固形治療活性薬剤を含んでもよい。使用中、皮膚への挿入時に、前記マイクロ突起および基部要素は水分を吸収し、膨張性ヒドロゲルを形成するためにサイズが増加し、治療活性薬剤は、前記膨張性基部要素および膨張性ヒドロゲルマイクロ突起を介してリザーバーから送達され得る。
【0118】
このシステムは、第1の電極および前記第1の電極と異なる位置で第2の電極をさらに含んでもよく、両方の電極は前記リザーバー、電源、電子制御装置、中央処理回路、および可視的表示器に近接する。電極間の電位差の印加は、イオン泳動または電気浸透流によって、前記膨張性基部要素およびマイクロ突起を介して前記リザーバーから皮膚への治療活性薬剤の送達を促進する。このシステムは、基部要素の第1の側に取り付けられる回収チャンバ、または別の基部要素ならびに第3の電極および前記第3の電極と異なる位置に第4の電極をさらに含んでもよく、両方の電極は、前記回収チャンバ、第3の電極および第4の電極に近接し、回収チャンバは、第1の電極および第2の電極ならびにリザーバーとは異なる基部要素の異なる領域に位置するか、または別の基部要素に取り付けられる。使用中、第3の電極および第4の電極の間の電位差の印加は、イオン泳動または電気浸透流による前記膨張性基部要素およびマイクロ突起を介する皮膚間質液またはその成分の抽出を促進する。第5の電極もまた、前記回収チャンバに近接し、前記の最初の4つの電極とは異なる位置にあり、生物化学電気センサとして作動するように設けられてもよい。あるいは、検出および定量化は、別の化学反応の手段、基質への結合、または酵素によって媒介される反応によってなされてもよい。着色性標識またはデジタル式の読み取りの形態で、ディスプレイユニットが、目的の治療活性薬剤の測定レベルについての情報を与えてもよい。
【0119】
特定の実施形態において、装置の送達部分は、個々の患者への送達を調整するように、装置の一部を検出することによって測定された薬剤のレベルに従って治療活性薬剤を送達できる。あるいは、治療活性薬剤は、予め規定された速度または使用者に規定された速度で送達されてもよく、薬剤のレベルは簡単にモニターされることができる。
【0120】
特定の実施形態において、皮膚間質液のサンプリングは、膨張性マイクロ突起を介して逆イオン泳動によって行われてもよい。特定の実施形態において、イオン注入装置は、電気信号を検出できる電極を備えてもよい。このような実施形態において、電子制御装置は、逆イオン泳動によってマイクロ突起を介して皮膚からの体液のサンプリングを促進することができ、電極は、生物電気化学センサの様式で電気信号を検出できる。
【0121】
あるいは、イオン注入装置の実施形態において、マイクロ突起は検出機能を有するゲルを含んでもよい。
【0122】
基質への結合または酵素によって媒介される反応に基づいて検出するための装置の実施形態において、その基質または酵素は、マイクロ突起内またはマイクロ突起上に固定されてもよい。これらまたは他の実施形態において、導波管もまた、光を特定の部位に導くために、または例えば着色性評価のためのpH感受性色素などの手段を用いて検出するためにマイクロ突起またはイオン注入装置内に導入されてもよい。同様に、光は、赤外線スペクトルに基づいて血糖を測定するためにマイクロ突起を介して送信されてもよい。あるいは、色の変化は、固定化したグルコースオキシダーゼの存在下で測定されてもよい。
【0123】
このようなイオン注入装置はリストバンドに組み込まれて、薬物送達、生体液のサンプリングまたはその両方の間、患者によって簡便に装着されてもよい。
【0124】
(検体)
本質的に、任意の薬物、生物活性剤または内因性生化学物質は本発明を用いてサンプリングされ得る。目的の検体は、その検体の血漿濃度と正確に関連し得るレベルで皮膚間質液に存在しなければならないことが唯一の制限である。例としては、限定されないが、グルコース、ナトリウム、カリウム、アルコール、乳酸塩(運動選手にとっては重要)、乱用薬物(例えば、カンナビノイド、アンフェタミン、コカインおよびオピオイド)、およびニコチン代謝産物(例えば、コチニン)ならびに患者が1つ以上の医療状態のために取り得る治療薬物が挙げられる。本発明は特に、狭い治療範囲での薬物に有用である。
【0125】
薬物送達の目的のための用途と同様に、マイクロ突起ベースの装置の特性は、目的物を検出するための所望の特性を達成するように適切に変更されてもよい。送達システムの間、閉ループを形成する、単一装置への機能の送達および検出の両方を組み込むことが可能である。このように、患者のモニタリングおよび薬物送達の反応性は、単一の統合システムから達成され得、それによって、前例のない疾患制御および健康に関連する生活の質の根本的な改善が達成される。
【0126】
(さらなる用途)
マイクロ構造装置の潜在的用途は、経皮薬物送達および間質液サンプリングに限定されない。
【0127】
商業的な目的の非常に多くの予想される用途のうちの1つは、化粧品産業、特に、皮膚科学的および美容的製品であると考えられる。化粧品用化合物または栄養物または種々の皮膚構造改変物質を送達するための本発明のマイクロ突起アレイの使用は、前記薬剤を受ける被験者が、美容整形外科医院を訪れる必要がないため、利点がある。
【0128】
特定の実施形態において、本発明のマイクロ突起は、皮膚に半永久的または永久的にマーキングを適用するため、あるいは皮膚に半永久的な皮膚用の化粧品または他の化粧品用化合物を適用するために使用されてもよい。これは特に、本発明のマイクロ突起アレイを用いることにより、タトゥー用の絵または他の識別、皮膚用の化粧品、調整剤および皮膚の外観に影響を与える可能性のある薬剤の用途(例えば、限定されないが、γアミノ酪産酸(GABA)およびボツリヌス毒素(「Botox」)を含む)が、典型的に、皮膚の真皮層を貫通しないため、有益であり得る。このように、この適用手順は比較的痛みがない。
【0129】
本明細書に記載される技術の適用は、詳細に記載されるものに限定されることを決して意図しない。実際に、この技術の他の使用が当業者に明らかであろう。それらの適用には、限定されないが、組織操作の足場としての使用、生物膜モデルの形成、およびステントを介する活性薬剤の経皮送達が含まれる。本発明は、ここで、添付の図面になされた参照とともに以下の非限定的な実施例においてさらに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】図1は、マイクロモールド突起に使用されるシリコンマスターの部分断面における正面図である(1−シリコンで製造されるマイクロ突起を断面図に示し、2−シリコンで製造される隣接するマイクロ突起を断面図に示し、3−シリコンベースプレート、L1−ベースプレートの上面4より上のマイクロ突起の高さ、D1−マイクロ突起1と2との頂点間の距離)。
【図2】図2は、成形手順の第2の工程における図1のシリコンマスターの外形を複製することを意図する鋳造材料で覆った部分断面における正面図である(4−重ねたシリコーンエラストマー材料、3−シリコンで製造されたマイクロ突起アレイ)。
【図3】図3は、図2の3から取り除かれたエラストマー材料4の部分断面における正面図であり、成形手順の第3の工程におけるマイクロ突起1および2のレリーフ5の断面を示す(5−マイクロ突起のレリーフ、4−エラストマーモールド)。
【図4】図4は、成形手順の第4の工程における図3で調製されたモールド4に導入される鋳造高分子溶液6の部分断面における正面図である(6−鋳造高分子溶液、4−図3に示す調製されたエラストマーモールド)。
【図5】図5は、成形手順の第5の工程における図4のモールドから取り除かれた架橋されたマイクロ突起アレイの部分断面における正面図である(4−高分子マイクロ突起の頂点、8−高分子マイクロ突起の本体、7−支持ベースプレートに沿って測定されるマイクロ突起間の間隔、8−支持高分子ベースプレートの上面)。
【図6】図6は、水和により誘導された外形の変化および薬物拡散の変化を受けた架橋されたマイクロ突起アレイの部分断面における正面図である(10−水和膨張性支持ベースプレート、9−膨張性ベースプレートに沿った水和膨張性マイクロ突起間の間隔、L2−水和膨張性マイクロ突起の高さ、D3−水和膨張性マイクロ突起の最大の厚さの半分、D2−水和膨張性マイクロ突起間の頂点距離)。
【図7】図7は、本発明の原理を用いて構成される架橋されたマイクロ突起アレイの部分断面における正面図であり、有用な物質を送達するための経皮送達システムの一部を形成する(11−保護バッキング層、12−医薬ビヒクルに溶液または懸濁液のいずれかとして有用な物質を含むリザーバー、13−架橋されたマイクロ突起アレイ、14−皮膚の角質層、15−生存表皮)。
【図8】図8は、本発明の原理を用いて構成され、図7に示す架橋されたマイクロ突起アレイの部分断面における正面図であり、水和により誘導された物理的特性の変化を受けている(11−保護バッキング層、12−医薬ビヒクルに溶液または懸濁液のいずれかとして有用な物質を含むリザーバー、16−水和により誘導された外形の変化および薬物拡散の変化を受けた架橋されたマイクロ突起アレイ、14−皮膚の角質層、15−生存表皮)。
【図9】図9は、ブタの皮膚から除去された後の膨張性ポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)マイクロニードル(A)を示し、膨張性マイクロニードルのマトリクスを介する蛍光化合物メソ−テトラ(N−メチル−4−ピリジル)ポルフィンテトラトシレート(MW1363.6Da)の拡散も示す。
【図10】図10は、ポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)マイクロニードル層、水、ポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸)およびトリプロピレングリコールモノメチルエーテルからなるマトリクス型薬物リザーバー、ならびに医薬グレードのポリ(塩化ビニル)からなる不浸透性バッキング層からなる一体型経皮パッチシステムを示す。
【図11】図11は、一体型ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)(PMVMA)マイクロニードル(MN)アレイを用いるものと用いないものの19.0mgのTMP cm−2を含む水性ベースのマトリクス型薬物リザーバーからの完全な厚さのマウスの皮膚を通過するメソ−テトラ(N−メチル−4−ピリジル)ポルフィンテトラトシレート(TMP)の送達を示す。
【図12】図12は、一体型ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)(PMVMA)マイクロニードル(MN)アレイを用いるものと用いないものの38,000μgのALA cm−2を含む水性ベースのマトリクス型薬物リザーバーからの完全な厚さのマウスの皮膚を通過する5−アミノレブリン酸(ALA、MW167Da)の累積輸送を示す。
【図13】図13は、10,000μgのBSA cm−3を含む水性の液体薬物リザーバーに取り付けられたポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)(PMVMA)マイクロニードル(MN)での穿刺後、角質層モデルとして一般に使用されるSilescol(登録商標)膜を通過するウシ血清アルブミン(BSA、MW66,000Da)の累積輸送を示す。
【図14】図14は、PMVE/MAおよびPEGならびに他の一般に使用される親水性ポリマー、すなわち、アミロペクチン、CMC、ポリ(HEMA)、PVAおよびHECから製造されるフィルムのポリマー濃度を示す。
【図15】図15Aは、TA−XT2テクスチャ分析器の概略図を示す。図15Bは、分解前後のポリマーフィルム、分解後に移動した距離、およびTA−XT2テクスチャ分析器を用いてフィルムの分解点での偏向の角度を示す概略図である。
【図16】図16は、アミロペクチン、CMC、ポリ(HEMA)、PVAおよびHECの膨張の割合を示す。
【図17】図17は、PMVE/MAおよびPEG(2:1)の架橋フィルムの膨張の割合を示す。
【図18】図18は、アミロペクチン、CMC、ポリ(HEMA)、PVA、HECおよびPMVE/MAとPEGとの架橋フィルムの座屈強度を示す。
【図19】図19は、PMVE/MAとPEGとの架橋フィルム、アミロペクチン、CMC、ポリ(HEMA)、PVAおよびHECから製造される高分子マイクロ突起アレイの機械的強度を示す。
【図20】図20は、調製時(左側の画像)およびTA−XT2テクスチャ分析器での機械的試験後(右側の画像)の高分子マイクロニードルアレイを示す。
【図21】図21は、ヒトボランティア(n=5)の角質層でシリコンマイクロニードルアレイを用いる経表皮水分喪失(TEWL)の測定を示す。
【図22】図22A〜Fは、柔軟性のあるスラブ型マイクロニードルアレイ(A、B)、ならびに折り畳んだ位置(C、D)および拡大した位置(E、F)でのステントの正面図および断面図を示す。
【図23】図23A〜Fは、剛性の単一のフィルム型マイクロニードルアレイ(A、B)、ならびに折り畳んだ位置(C、D)および拡大した位置(E、F)でのステントの正面図および断面図を示す。
【実施例】
【0131】
(実施例1.ヒドロゲルを形成することが公知のポリマーからのマイクロ突起アレイの調製)
膨張性ポリマーから構成されるマイクロ突起アレイの調製を図1〜6に概略的に示す。図7は、本発明の原理を用いて構成され、有益な物質を送達するための経皮送達システムの一部を形成する架橋されたマイクロ突起アレイを示す。図8は、本発明の原理を用いて構成され、図7に示す架橋されたマイクロ突起アレイ上の水和の効果を示し、水和により誘導される物理的特性の変化を示す。構成要素のシリコンマイクロニードルアレイを、水酸化カリウムエッチングを用いるウェットエッチングプロセスを用いて調製した。次いで、このようなアレイを、適切な円形のモールド中で液体ポリ(ジメチルシロキサン)エラストマーで覆った。次いで、そのエラストマーを硬化(60℃、2時間)し、シリコンアレイを除去して、マイクロモールドを得た。次いで、このマイクロモールドを、20%w/wポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)および10%w/wグリセロールを含む水性ゲルで充填した。そのマイクロモールドを外側が円形のモールドに入れ、蓋を付けた。全てのアセンブリを遠心分離(3600g,15分)して、完全な充填を確実にした。蓋をはずし、水を蒸発させた。次いで、複製したポリマーアレイを、4時間、60℃まで加熱することによって架橋して、エステル反応を開始した(McCarronら(2004),J Appl Polym Sci,91,1576−1589)。このように、架橋されたポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)マイクロニードルを生成した。
【0132】
(実施例2.皮膚におけるマイクロ突起アレイの膨張および膨張したマイクロ突起のマトリクスを介する薬物拡散の研究)
ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)マイクロニードルを、穏やかな圧力によって新生(生後28日未満)のブタの皮膚に挿入し、4時間後に取り除き、その後、光学顕微鏡を用いて可視化した(図9A)。同様の実験において、19.0mg cm−2の蛍光増感剤メソ−テトラ(N−メチル−4−ピリジル)ポルフィンテトラトシレート(MW 1363.6Da)を含む水性マトリクスタイプの薬物リザーバー(図10)を取り付けたポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)マイクロニードルを、穏やかな圧力によって新生(生後28日未満)のブタの皮膚に挿入し、4時間後に取り除き、その後、光学顕微鏡を用いて可視化した(図9B)。これにより、マイクロ突起の基部要素に取り付けられたリザーバーに含まれる薬物が、膨張性ヒドロゲルを介して拡散できることが確実に実証される。拡散しているメソ−テトラ(N−メチル−4−ピリジル)ポルフィンテトラトシレートは、全てのマイクロニードルに対して特徴的な赤色蛍光を与える。
【0133】
(実施例3.全層皮膚を通す大きな水溶性薬物の送達)
光増感剤薬物メソ−テトラ(N−メチル−4−ピリジル)ポルフィンテトラトシレート(TMP)(MW 1363.6Da)の物理化学特性(MW>600Da、非常に水溶性)は、皮膚の角質層障壁を通して効果的に輸送するのに適さない。この研究において、19.0mgのTMP cm−2を含むマトリクスタイプの薬物リザーバーを調製し、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)(PMVMA)マイクロニードルアレイに取り付けた。このシステムは、フランツ型拡散セル内で障壁膜として埋め込まれたマウスの皮層角質層に穏やかな圧力によって圧力を加えた。リザーバー部分に現れるTMPを、25時間にわたって蛍光分光により測定した。その結果を図11に示し、皮層角質層を通すTMPの持続性送達が可能であることを示す。重要なことは、これにより、ヒドロゲルマイクロニードルが、長時間、角質層の開口部において穿刺孔を維持し、膨張性ヒドロゲルマイクロニードルの圧縮または閉塞が起こらないことが示されることである。
【0134】
(実施例4.全層皮膚を通す小さな非常に水溶性薬物の送達)
実施例3に記載したものと同一の実験を再び実施した。唯一異なるのは、TMPの代わりに小さな非常に水溶性の光増感剤前駆体5−アミノレブリン酸(ALA、MW 167Da)を使用したことであった。ALAは、正常な角質層にわたって不十分な浸透を示すことが周知である。38,000μgのALA cm−2を含む水性マトリクスタイプの薬物リザーバーからの迅速、かつ非常に向上した、マウスの角質層を通すALA送達を、一体化したポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)マイクロニードルアレイを用いて観測した(図12)。
【0135】
(実施例5.モデル膜を通す大きなタンパク質の送達)
ペプチドおよびタンパク質薬物の高分子量および水溶性により、有用な経皮投与ができなくなる。しかしながら、この実施例において、角質層模倣物として世界中で使用されているSilescol(登録商標)膜を通す顕著なレベルの大きなタンパク質のウシ血清アルブミン(BSA、MW66,000Da)の送達は、10,000μgのBSA cm−3を含む水性液体薬物リザーバーに取り付けられたポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)(PMVMA)マイクロニードル(MN)を用いることにより可能であることを示した(図13)。
【0136】
(実施例6.PMVE/MAおよびPEGならびに他の一般に使用される親水性ポリマーから調製されたマイクロニードルアレイの機械的特性と膨張特性の比較)
以下の実施例は、ポリ(メチル/ビニル/エーテル/マレイン酸)(PMVE/MA)または多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール(ポリ(エチレングリコール))(PEG))を用いて必要に応じて架橋された同様の関連するポリマー(例えば、ポリ(メチル/ビニルエーテル/無水マレイン酸))の水性ゲルから調製されたマイクロニードルアレイが、他の一般に使用される親水性ポリマーから調製されたマイクロニードルアレイより特に良好な機械的および膨張特性を示す多くの実験を記載する。
【0137】
(方法)
1.高分子フィルムの調製
(a)PMVE/MAおよびPEGからの架橋フィルムの調製
2:1のポリマー:架橋剤の比で(10%、15%、および20%w/wで)PMVE/MAおよびPEG10,000を含む水性ゲルを調製し、ゲルを、ステンレス製クランプを用いてPerspexベースプレートに固定したリリースライナー(シリコン処理した側部)からなるモールドにゆっくり注ぐことによってフィルムを調製した。そのゲルを、ラベルした表面に置くことによってモールド領域にわたって均一に分散させ、室温で48時間乾燥させてフィルムを生成した。次いで、それらを24時間、80℃で架橋(「硬化」)した。
【0138】
(b)他の高分子フィルムの調製
5つの異なる親水性ポリマー(アミロペクチン、カルボキシメチルセルロース、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシルエチルセルロースおよびポリ(HEMA))を、膨張特性の調査のために選択した。フィルムを、2時間、80℃にて、適切な三面立体モールドにおいて、2%w/wの開始剤である過酸化ベンゾイルおよび5%w/wの架橋剤であるエチレングリコール−ジメタクリレートを含む、液体HEMAモノマーを加熱することにより調製したポリ(HEMA)を除いて、図14のポリマー濃度を用いて上記のように調製した。
【0139】
(膨張性研究)
各タイプのフィルムのセグメント(1.0cm2)はそれらの初期重量を有した。すなわち初期重量をm0と記録した。次いで、そのフィルムサンプルを、室温で30mlの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)中で膨張させた。一定の間隔で、フィルムセグメントを取り除き、過剰な表面の水を取り除くために濾紙で拭い、それらの膨張した重量、すなわちmtを記録した。次いで、膨張の割合を式1:
【数1】
を用いて決定した。
【0140】
(フィルムの座屈試験)
各々のフィルム形成を破損するのに必要とする力を、2.0Kgの負荷重量で事前に較正したTA−XT2テクスチャ分析器(Stable Microsystems,Haslemere,UK)を用いて試験した(図15A)。フィルムセグメント(1.0cm×1.5cm)をステージに固定し、そのフィルムが中央で破損するまで、プローブを2.0mm/秒の速度で動かした(図15B)。
【0141】
(マイクロニードルアレイの調製および機械的試験)
マイクロニードルアレイを、上記に概説したゲル調製物を用いて調製した。そのようなゲルを、シリコンマイクロ突起アレイマスターテンプレートを用いて製造された反対のポリ(ジメチルシロキサン)モールドに入れて、遠心分離した(3600g、15分)。次いで形成されたポリマーアレイを、48時間、周囲条件で乾燥させた。ポリ(HEMA)マイクロニードルアレイを、高分子フィルムについて上記の改変した技術を用いて調製した。次いで、PEG10,000を用いて調製したアレイを、24時間、80℃で架橋した。
【0142】
高分子マイクロニードルの機械的破壊に必要な力を測定するために、テクスチャ分析器を再度利用した。軸圧縮負荷(すなわち、垂直のマイクロニードル軸に平行に付与された力)を、アレイの構造で生じる変化を推定するためにアレイに加えた。マイクロニードルアレイを、両面粘着テープを用いて移動試験プローブに取り付けた。試験装置により、30秒間、0.05Nの既知の力で0.5mm/sの速度にて9.2cm×5.2cm寸法のアルミニウムの平らなブロックに対してアレイに圧力を加えた。予備試験および事後試験の速度を1.0mm/sにし、トリガー力を0.049Nに設定した。破壊試験前に、各アレイの全てのマイクロニードルを、倍率180倍でデジタル顕微鏡(GE−5デジタル顕微鏡、View Solutions Inc,オンタリオ州,カナダ)を用いて試験した。破壊試験後、全てのマイクロニードルもまた、付与された力の影響を測定し、記録した画像を表すために同じ方法で可視化した。試験後にマイクロニードルの高さを、顕微鏡ソフトウェアのルーラー機能を用いて測定し、それにより、マイクロニードルの高さの変化の割合が計算できる。データを、マイクロニードルを変形させるのに必要とする1つのマイクロニードルあたりの力として報告した。機械的破壊試験のために使用した全てのマイクロニードルは280μmの高さであり、一定のチップの半径、壁の厚さおよび壁の角度を有した。
【0143】
図16は、アミロペクチンおよびCMCから調製されたフィルムにおいてわずかな膨張が観測されたことを示し、次いでそれらを6時間以内に溶解した。HECフィルムは膨張しなかったが、15分以内に急速に溶解した。ポリ(HEMA)フィルムは、比較的ゆっくり膨張し、6時間後に46%の重量が増加したのみであった。PVAフィルムは、6時間後に4倍の重量になった。対照的(図17)に、PEG10,000で架橋したPMVE/MAから調製したフィルムは、急速な膨張を示した。これは特に、10%w/wPMVE/MAを含むゲルから調製したフィルムにおいて明らかであり、わずか15分後にほぼ2倍の重量になった。6時間で、PEG10,000で架橋したPMVR/MAから調製したフィルムは、それらの元の重量より10倍以上増加した。
【0144】
アミロペクチンおよびCMCから調製したフィルムは、乾燥時に感知できる程度の収縮を示し、形成されたフィルムは極度に硬く、かなりの歪みを示した。PVAおよびヒドロキシメチルセルロース(HEC)から調製したフィルムは硬くなく、かなり柔軟性があった。架橋後、PEG10,000で架橋されたPMVE/MAから調製された膜は、自然の状態で柔軟性がなく、硬く、剛性であった。アミロペクチンフィルムは比較的もろく、機械的試験に供さなかった。CMCフィルムは、ポリ(HEMA)フィルム(4.0N)と対照的に、破壊するのにかなりの力(77.0N)を必要とし、かなり強固であった。自然の状態でもろくないPEG10,000で架橋されたPMVE/MAから調製されたフィルムを破壊するのに必要とする力は、元のゲル内のポリマー含有量を増加させると増加した(図18)。
【0145】
PEG(この場合、PEG10,000)で架橋されたPMVE/MAから調製したマイクロニードルアレイは完全に形成され、元のシリコン構造の良好な複製を与えた。歪みまたは垂下は観測されなかった。図19から見られ得るように、このようなマイクロニードルアレイは、所定の付与された力について高さの減少がより低いことによって証明されるように他のポリマーから調製されたものよりかなり大きな機械的強度を示した。重要なことに、PEGで架橋されたPMVE/MAから調製されたマイクロニードルアレイは破砕しなかった。これは、ポリ(HEMA)から調製されたものと対照的であり、図20に示すように隣に最適な機械的強度を示した。図20(A〜F)は、調製時(左側の画像)およびTA−XT2テクスチャ分析器を用いる機械的試験後(右側の画像)の高分子マイクロニードルアレイを示す。アミロペクチンからなるマイクロニードルは鋭いが、薄く、一方、基部が不均一に変形し、波形であり、壊れやすい(図20A)。CMCから作製されたものは、マイクロニードルチップがわずかに片側の方へ曲がるが、基部は、くぼまずに均一であることを示す(図20B)。HECマイクロ突起は薄く、わずかに曲がり、基部は非常に柔軟性があり、薄い(図20C)。pHEMAMNから調製されたそれらのマイクロニードルは、平らな基部を有し適切に鋭くなっている;しかしながら、チップは力の適用時に粉砕される(図20D)。PVAマイクロニードルは、鋭く、適切に形成されるが、その基部は、波形であり、多くの気泡を有し不均一である(図20E)。PMVE/MA20%:PEG10,000からなるそれらのマイクロニードルは、均一である平らな基部を有して完全に形成され、一定の形であり、力の付与の際にわずかに曲がる(図20F)。これらのマイクロニードルはインタクトなままである。
【0146】
高分子マイクロニードルアレイは、角質層を刺すために硬くなければならないが、適用時に破損または曲がってはいけない。好ましくは、いったん挿入されると、それらは、急速に膨張し、溶解せずに有意な程度まで、それらの膨張マトリクスを介して持続性薬物送達を可能にする。本発明は、ここで、PMVE/MAなどのGantrez(登録商標)型ポリマーが、必要に応じて、例えば、PEG10,000で架橋され、膨張性能力、機械的強度、マイクロニードルアレイの形成および形成されたアレイの強度の観点で特に優れた材料であることを完全に証明した。試験された材料、PEG10,000で架橋されたPMVE/MAは、本明細書に記載されるマイクロニードルアレイに使用するために最も理想的な材料の品質を有することを示すが、本発明に使用するために特許請求されるポリマーのいずれかが、必要に応じて、例えば、PEG10,000などの多価アルコールで架橋され、このようなマイクロニードル(すなわち、マイクロ突起)アレイに使用するために適用されることが想定される。
【0147】
(実施例7.TEWLの測定を用いるシリコンマイクロニードルアレイでの角質層浸透性の評価)
ヒトのボランティア(n=5)による予備実験により、約5分以内に角質層近くにマイクロ突起によりつくられた孔が示された。1cm2あたり、100マイクロニードルを有するシリコンマイクロニードルアレイを、指の圧力のみを用いてボランティアの腕の上部に30秒間付与した。各マイクロニードルはピラミッド形であり;約250μmの基部の幅および約280μmの高さを有する。角質浸透性を、このような目的のために世界中で使用される技術である、経表皮水分喪失(TEWL)の測定を用いて評価した。その結果はTEWLの一時的増加のみを示し、すぐに正常に戻る(図21)。このように、適用され、取り除かれるシステムに基づいたシリコンマイクロニードルに関する問題が生じる場合がある。
【0148】
(実施例8:ステント)
図22(A〜C)は本明細書に記載される本発明の実施形態を示し、柔軟性のあるスラブ型のマイクロニードルアレイを備えるステントを示す。図22は、本明細書に記載される柔軟性のあるスラブ型マイクロニードルアレイ(1)の正面図(A)および断面図(B)を示す。断面図(A)は、マイクロニードルアレイの凸面屈曲を示す。図22Cは、金属ガイドワイヤ(4)によってステント(3)内に一体化された金属フレームのステント(3)および図22Aの柔軟性のあるスラブ型マイクロニードル(1)を含む折り畳んだ位置のステントの正面図を示す。図22Dは図22Cの断面図を示し、ステント(3)の外部周辺より下の図22Aの凸面アレイ(2)を示し、凸面アレイ(2)は、金属ガイドワイヤ(4)に支持される。
【0149】
図22Eは、バルーンで膨らませた拡大した位置におけるステント(3)の正面図であり、図22Fは、図22Eの断面図であり、ステント(3)のフレーム拡大後の平らになったアレイ(5)を示す。ここで、マイクロニードルは、外部周辺を越えて突出する。
【0150】
図23(A〜F)は本明細書に記載される本発明のステントの改変を示し、剛性の単一のファイル型のマイクロニードルアレイストリップを備えるステントを示す。図23は、剛性の単一のファイル型のマイクロニードルアレイストリップの正面図(A)および断面図(B)を示す。
【0151】
図23Cは、金属フレームステント(3)および金属ガイドワイヤ(4)によって前記金属フレームステント(3)内に一体化された図23Aの3つの剛性の単一のファイル型マイクロニードルアレイストリップ(1)を備える、折り畳んだ位置におけるステントの正面図を示す。図23Dは図23Cの断面図を示し、ステント(3)の周辺より下のマイクロニードルストリップ(1)を示し、マイクロニードルストリップ(1)は金属ガイドワイヤ(4)により支持される。
【0152】
図23Eおよび23Fは、それぞれ、バルーンで膨らませた拡大位置におけるステント(3)の正面図および断面図を示す。図23Fは、フレーム拡大後の持ち上げられたストリップ(5)を示す。ここで、マイクロニードルは、外部周辺を越えて突出する。
【0153】
本明細書に参照される全ての文献は、本明細書において参照により援用される。本発明の実施形態に対して記載される種々の改変および変更は、本発明の範囲および趣旨から逸脱せずに当業者に明らかになるだろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して記載されているが、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことは理解されるべきである。実際に、本発明を実施する記載された方法の種々の改変は、当業者に明らかであり、本発明に含まれることが意図される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮送達手段、特に、皮膚を通して、または皮膚内に有益な物質を送達するため、あるいは体内の診断目的の物質のレベルをモニタリングするためのマイクロ突起ベースの装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物を皮膚内または皮膚を通して送達するための経皮貼布の世界市場は40億ドルに近づいているが、少数の薬物のみにしか基づいていない。慣例的に経皮に投与される薬物の数の限定は主に、組織の最外部分10〜15μm(乾燥状態において)である角質層(SC)が原因となる。このように、SCは、薬物を含む外因性物質に対する主要な障壁を構成する。真皮上層における血管によって吸収される前に、また、体循環に入る前に、皮膚に浸透する物質は、SCの高度に組織化された細胞間脂質二重層を通って拡散しなければならない。親油性であるこの細胞間の微細経路は、送達ビヒクルとSCとの間の濃度勾配に従って受動拡散によってSC障壁を外因性物質が通過するための主要な経路である。効果的に受動拡散でき、それによって、SC障壁を通して浸透できる分子の理想的な特性は、以下のように知られている。
1.600Da未満の分子量。
2.濃度勾配に従って受動薬物拡散についての力を推進する膜濃度勾配が、高くなり得るような油および水の両方における適切な溶解性。
3.薬物がビヒクルから拡散し、SCに分配し、そのSC内に隔離されずに、SCを通して移動することができるような分配係数。
4.理想的な溶解性理論によって予測されるように、十分な溶解性と関連している低融点。
【0003】
不十分な経口生物学的利用能を受けるか、または初回通過代謝を受けやすい薬物分子は、多くの場合、経皮送達についての理想的な候補であるが、多くの場合、それらの臨床的用途を理解されていない。なぜならそれらは、上記の条件のうちの1つ以上を満たさないからである。ペプチド、タンパク質および核酸フラグメントなどの高分子薬物は、それらの大きなサイズだけではなく、それらの極端な親水性にもより、有用な経皮投与から排除されている。十分な水溶性を有する薬物、例えば、酸または塩基部分を有する薬物の水溶性塩は、それらが、SC障壁を通して親油性細胞間微小経路を通ることができないことにより、有用な経皮投与から排除されている。
【0004】
いくつかのアプローチが、SCを通して薬物輸送を高めるために使用されている。しかしながら、多くの場合において、適度に有用なものが達成されているのみであり、各アプローチは重要な問題に直面している。
【0005】
化学的浸透の向上は浸透における適度な改善のみを可能にする。親油性を増加させる浸透剤の化学的修飾は、必ずしも可能ではなく、いずれの場合にも、新しい化学物質の生成に起因する規制認可についてのさらなる研究を必要とする。多数の薬物の送達における意味のある向上は、イオン注入を用いることと報告されている。しかしながら、特殊な装置が必要とされ、送達される薬剤が皮膚の付属器に蓄積する傾向がる。この方法は現在、急性の用途に最も適している。エレクトロポレーションおよび超音波導入は、経皮送達を増加させることが知られている。しかしながら、それらは痛みおよび局所的な皮膚反応の両方を引き起こす場合があり、超音波導入は治療物の分解を引き起こす場合がある。テープストリッピングおよび吸引/レーザー/熱剥離などのSC障壁を取り除くことを目的とする技術は実用的ではなく、一方で、針のない注射は、今までのところ、例えば、インスリンの従来の針ベースの送達にとって代わることができない。明らかに、強力な代替の戦略が、SCを通す薬物輸送を高めるために必要とされ、それにより、広い範囲の薬物の経皮送達が可能となる。
【0006】
(最小限の侵襲的モニタリング)
最小限の侵襲的モニタリング、それによるグルコースおよび薬物などの検体の血中濃度は、直接的な血液サンプルに頼らずに間接的に評価することができ、患者にとって痛み、不便さおよび感染の危険性をほとんど生じず、臨床および看護時間を省く。しかしながら、角質層は、血液成分の外側への移動に対して優れたほとんど不浸透性の障壁となる。通常の条件下で生じる少量の汗および皮脂は、それらの回収および分析が実用的ではないということを意味する。いずれの場合においても、それらの組成は、ほとんどの場合、目的の検体の血中濃度を正確に反映しない。最小限の侵襲的モニタリングにおいて、皮膚中の間質液が抽出され、血中検体濃度を正確に評価するために使用される。この技術は困難を伴い、しばしば、非常に特殊な装備を必要とする。血糖のみの直接モニタリングのための従来の指で刺す分析装置の販売は、1年あたり合計で20億ドルあり、この分野における進歩が臨床的に望まれる。
【0007】
角質層障壁を破壊するために複数のマイクロ突起からなるマイクロ構造装置を用いる概念は、1970年代に最初に提案されている。中実のマイクロ突起を含む種々の装置が、微細な孔を残し、その後、内部への薬物送達または間質液の外部への移動を可能にする角質層を穿刺するシステムをつくるために開発されている。例えば、シリコンを用いる中実のマイクロ突起およびマイクロニードルアレイの製造は当該分野において記載されている。例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21、特許文献22、特許文献23、特許文献24、特許文献25を参照のこと。
【0008】
デキストリン、コンドロイチンおよびアルブミンから中実のマイクロ突起を調製するための方法は、京都薬科大学(非特許文献1;非特許文献2)により開示されている。この「スレッドフォーミング(thread forming)」方法は、平らな面で公知の「スレッドフォーミング」材料を含む溶液を分散させる工程を含む。次いで、溶液は、突起によって接触される表面を有し、その突起は迅速に上方へ動かされ、連続したポリマーである「スレッド」を形成し、次いで、マイクロ突起を形成するために乾燥される。しかしながら、溶解された炭水化物材料(例えば、デキストリン、マルトース)から調製されるマイクロ突起は、非常に吸湿性であり、周囲条件下で急速に水分を吸収し、それらの形状を損失し、軟らかくなり、極度に粘着性になる。皮膚の穿刺時に、炭水化物ベースのマイクロ突起は、急速に粘着性マトリクスを形成し、形成された孔を遮断し、適切な薬物送達を防ぐ。さらに、薬物損失は、そのようなマイクロ突起の製造と関連する。なぜなら薬物が炭水化物材料などの融点まで高温に加熱される必要があるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6743211号明細書
【特許文献2】アイルランド特許出願公開第2005/0825号明細書
【特許文献3】米国特許第60/749,086号明細書
【特許文献4】米国特許第6924087号明細書
【特許文献5】米国特許第6663820号明細書
【特許文献6】米国特許第6767341号明細書
【特許文献7】米国特許第6652478号明細書
【特許文献8】米国特許第6749792号明細書
【特許文献9】米国特許第6451240号明細書
【特許文献10】米国特許第6230051号明細書
【特許文献11】米国特許第6908453号明細書
【特許文献12】米国特許第7108681号明細書
【特許文献13】米国特許第6931277B1号明細書
【特許文献14】欧州特許第1517722B1号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第20060200069A1号明細書
【特許文献16】米国特許第6611707号明細書
【特許文献17】米国特許第6565532号明細書
【特許文献18】米国特許第6960193号明細書
【特許文献19】米国特許第6379324号明細書
【特許文献20】国際公開第2007/040938A1号
【特許文献21】米国特許第6256533号明細書
【特許文献22】米国特許第6591124号明細書
【特許文献23】米国特許第7027478号明細書
【特許文献24】米国特許第6603987号明細書
【特許文献25】米国特許第6821281号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Itoら,J Drug Target 14(5):255−261,2006年
【非特許文献2】Itoら,Eur J Pharm Sci 29:82−88,2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、マイクロ突起の分野において、かなりの公開された研究があるにもかかわらず、有益な物質の皮膚への送達のため、または体内における診断目的の物質のレベルをモニタリングするために現在市場に出ているマイクロ突起ベースの製品について特に注目すべきものはない。これは、現在、当該分野において公知のこのようなシステムの使用が、それらの目的についての多くの重要な問題に関連しているからである。すなわち、以下のような問題がある。
1 以前に特許された方法のほとんどによるマイクロ突起の製造は費用がかかる。
2 マイクロ突起についての材料として広範に使用される基本成分のシリコンは、FDAにより承認された生体材料ではなく、破損したシリコンまたは金属マイクロ突起は、皮膚の問題を引き起こす場合がある。これは特に、シリコンの乾式エッチングによって生成されたもろいマイクロ突起で顕著な問題である。
3 中実のコーティングされていないニードルは、2段階の適用プロセスを必要とし、それは望ましくない。
4 正確にマイクロ突起をコーティングすることは難しく、それらのコーティングされたマイクロ突起は、その後、ボーラスとして非常に少量の薬物を送達するのみである。
5 ヒトボランティア(n=5)による本発明者らの実験室で行った予備実験により、角質層の浸透性の指標として世界中で使用されている尺度である経表皮水分喪失(TEWL)が、マイクロ突起で穿刺するとすぐに約30g m−2h−1まで増加したが、約5分以内でバックグランド(10g m−2h−1)まで戻ったことが示された。
6 中空のマイクロ突起は1つの出口のみを有し、圧縮された皮膚組織によって遮断されてしまう場合がある。
7 生体分子は、融解されたポリマーまたは炭水化物から高分子のマイクロ突起を生成するために使用される熱によって著しく分解される場合がある。
8 炭水化物および高分子のマイクロ突起の強度は、薬物の導入によって著しく落ちる場合がある。
【0012】
このように、従来のマイクロ突起ベースの装置の使用は、非常に多くの問題に関連している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、本発明者らは、水の存在下で膨張する特定のポリマーが、角質層の障壁を穿刺できるマイクロ突起として機能するために十分な機械的強度を有することを見出した。この驚くべき発見により、角質層の障壁を飛び越えて進む方法に使用するための膨張性ポリマーのマイクロ突起アレイの提供が可能となり、さらに、皮膚を通して、または皮膚内に有用な物質の送達が可能となる。
【0014】
従って、本発明の第1の態様において、生物学的障壁を通して物質を輸送するのに使用するためのマイクロ突起アレイが提供され、ここで、前記アレイは、基部要素および当該基部要素から突出する複数のマイクロ突起を含み、前記マイクロ突起は、ポリマー組成物を形成する膨張性ヒドロゲルからなる。
【0015】
皮膚の角質層を浸透でき、かつ、液体の存在下で膨張できるヒドロゲルポリマー組成物が、本発明において使用され得る。
【0016】
一実施形態において、本発明の、および本発明に使用するためのマイクロ突起アレイは、1つ以上の親水性官能基を含有する1つ以上のヒドロゲル形成ポリマーから製造される。適切なポリマーの例としては、ポリ(ビニルアルコール)、アミロペクチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)キトサン、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(ポリHEMA)、ポリ(アクリル酸)、およびポリ(カプロラクトン)、またはGantrez(登録商標)型ポリマーが挙げられるが、必ずしもそれらに限定されない。Gantrez(登録商標)型ポリマーとしては、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)、そのエステル、および類似物、関連ポリマー(例えば、ポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸無水物))が挙げられる。
【0017】
本発明の特定の実施形態において、ヒドロゲル形成ポリマーは、ポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸)(PMVEMA)、そのエステル、またはポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸無水物)(PMVEMAH)などのGantrez(登録商標)型ポリマーである。
【0018】
ポリマーの架橋は、マイクロ突起の強度および膨張特性、ならびに活性剤を送達するためのマイクロ突起の放出特性をさらに変化させるために使用されてもよい。例えば、軽く架橋されたヒドロゲルマイクロ突起は、迅速に、薬物ボーラスを送達でき、1つの用量のみが、例えば、ワクチン送達のために必要とされる。必要に応じて、適度に架橋されたヒドロゲルマイクロ突起は、長時間の薬物送達、それによる一定の血漿中の薬物レベルの促進を可能にするために使用され得る。必要に応じて、適度に架橋されたヒドロゲルマイクロ突起は、SC開口部における孔を穿刺し続けることができる。実際に、適度に架橋されたヒドロゲルマイクロ突起は、必要に応じて、組織からの水分の吸収、およびマイクロ突起の膨張の結果として穿刺孔を幅広くすることができる。
【0019】
マイクロ突起および/または基部要素のポリマー組成物は、当該分野において公知の任意の適切な技術を用いて架橋され得る。架橋は、物理的または化学的あるいはそれらの両方の組み合わせであってもよい。適切な架橋剤としては、多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール(ポリ(エチレングリコール)))、またはポリマーの反応基とアミドを形成し得るポリアミノ化合物が挙げられる。
【0020】
本発明の一実施形態において、ヒドロゲル形成ポリマーは、多価アルコールを用いて架橋されたGantrez(登録商標)型ポリマーである。
【0021】
本発明のマイクロ突起アレイのマイクロ突起は、それらが、皮膚への挿入時に破損せずに哺乳動物の皮膚の角質層を突き抜けることができるように任意のサイズおよび形状であってもよい。
【0022】
一実施形態において、本発明のマイクロ突起アレイのマイクロ突起は、1〜3000μmの高さである。一実施形態において、マイクロ突起は50〜500μmの幅(または、実質的に円形の断面を有するマイクロ突起の場合、直径)を有する。
【0023】
基部要素およびマイクロ突起は、同じまたは異なる材料からなってもよい。
【0024】
典型的に、基部要素はマイクロ突起と同じポリマー組成物からなる。
【0025】
本発明のマイクロ突起アレイのマイクロ突起の機械的強度および膨張速度は、マイクロ突起の形状、およびマイクロ突起を構成するポリマーを含む、多くの要因によって決定される。
【0026】
本発明のマイクロ突起アレイは、多くの異なる目的のために使用され得る。一実施形態において、それらは、活性剤、例えば、薬物などの有益な物質の皮膚への経皮送達の使用のためである。
【0027】
従って、本発明の第2の態様において、本発明の第1の態様によるマイクロ突起アレイを備える経皮送達装置が提供される。
【0028】
このような経皮送達装置において、活性剤は、マイクロ突起アレイが連通するリザーバーまたはマトリクス内に含まれてもよい。使用中、皮膚へのマイクロ突起アレイの挿入時に、活性剤は、マイクロ突起を介してリザーバーまたはマトリクスから皮膚まで移動する。
【0029】
さらに、または代替として、活性剤は、マイクロ突起アレイのポリマー組成物内に含まれてもよい。このことは、薬物が皮膚へ挿入するとほぼすぐに薬物送達が開始され得る、マイクロニードル内のチャネルを介して送達される従来のマイクロニードルアレイとは異なる利点を有する。
【0030】
特定の実施形態において、活性剤は、マイクロ突起および/または基部要素を構成するポリマーに化学的に結合され得る。この場合において、活性剤は、マイクロ突起の溶解、その活性剤をポリマーに保持する結合の加水分解、酵素的分解または自然発生による非触媒的分解によって皮膚への挿入時に放出され得る。従って、薬物放出の速度は、反応/結合の分解の速度によって決定され得る。
【0031】
本発明の経皮送達装置の実施形態において、マイクロ突起アレイからの活性剤の皮膚への移動は、受動的に起こり得る。あるいは、移動は、例えば、イオン注入により外部から制御されてもよい。従って、本発明の第3の態様において、本発明の第1の態様のマイクロ突起アレイを備えるイオン注入装置が提供される。
【0032】
本発明の第4の態様において、皮膚を通して、または皮膚の中に活性剤を送達する方法が提供され、その方法は、
本発明の第1の態様によるマイクロ突起アレイ、または本発明の第2の態様による経皮治療装置を提供する工程であって、そのマイクロ突起アレイまたは経皮治療装置は前記活性剤を含む、工程と、
マイクロ突起アレイを皮膚に適用し、それによって、そのマイクロ突起が、角質層を通して、または角質層の中に突き出る工程と、
そのマイクロ突起を膨張させる工程と、
そのマイクロ突起アレイを介して活性剤を皮膚へ流入させる工程と、
を含む。
【0033】
本発明の、および本発明に使用するための経皮送達装置は、連続して、または断続的に活性剤を送達するために、例えば、数秒〜数時間または数日の間、皮膚または他の組織に取り付けられ得る。
【0034】
本発明の、および本発明に使用するためのアレイは、互いと異なる特性を有する、例えば、異なる形状、ポリマー組成物、架橋剤または架橋の程度を有するマイクロ突起の群を含んでもよく、それにより、単一のマイクロ突起アレイが、活性剤、例えば薬物を異なる速度で送達できる領域を有するようにすることができる。これにより、例えば、マイクロ突起アレイの配置時に、患者に迅速にボーラスを送達し、その後、同じ活性剤のゆっくりとした持続放出が可能となる。実際に、本発明のマイクロ突起アレイは、同じ経皮治療装置から1つ以上の活性剤を送達するために使用され得る。例えば、第1の活性剤は、マイクロ突起を構成するポリマー内に含まれ、第2の活性剤はリザーバー内に収容されてもよい。皮膚に配置し、角質層を穿刺すると、マイクロ突起は膨張し、活性剤がマイクロ突起から放出される。その後、第2の活性剤がリザーバーから放出され得、マイクロ突起を介して皮膚に侵入する。
【0035】
マイクロ突起自体に含まれる薬物は、マイクロ突起の表面における薬物に起因して最初にバースト放出として膨張時に迅速に放出される。その後の放出の程度は、架橋密度および薬物の物理化学的特性によって決定される。薬物リザーバーからの薬物の放出は、マイクロ突起をその薬物リザーバーまで膨張するのに必要とされる時間の結果として最初によりゆっくりと生じ、その後、薬物の膨張性マイクロ突起への分配および膨張性マトリクスを介して薬物の拡散が生じる。このように、マイクロアレイは、1つまたは両方の活性剤の送達時間を変化させるために、適用される組成物を用いて、例えば、マイクロ突起の組成物の架橋によって、連続して2つの活性剤を送達するために適用されてもよい。
【0036】
本発明のマイクロ突起アレイを用いて角質層を通して送達され得る活性剤としては、薬物、栄養物または化粧品薬剤が挙げられる。
【0037】
経皮送達装置に使用するのに適切であるのと同様に、本発明のマイクロ突起アレイは、逆方向に皮膚を通して物質を移動すること、例えば、体内の診断目的の物質のレベルのモニタリング、および皮膚から物質のサンプリングを容易にすることに利用されてもよい。
【0038】
従って、本発明の第5の態様において、皮膚間質液中の検体をサンプリングする方法が提供され、その方法は、
a.本発明の第1の態様のマイクロ突起アレイを提供する工程と、
b.マイクロ突起アレイを皮膚に適用し、それによって、マイクロ突起が角質層を通して突き出る工程と、
c.マイクロ突起を膨張させる工程と、
d.マイクロ突起を介して検体を皮膚から回収チャンバまで流出させる工程と、
e.前記回収チャンバ内に前記検体の存在を検出する工程と、
を含む。
【0039】
本発明のマイクロ突起アレイを用いるサンプリングは、受動的に、または代替の実施形態において、能動的に、例えば、逆イオン泳動によって行われてもよい。
【0040】
本発明の第6の態様によれば、本発明の第1の態様によるマイクロ突起アレイ、本発明の第2の態様による経皮送達装置または本発明の第3の態様によるイオン注入装置を介して、薬物を必要とする被験体に提供する工程を含む、処置方法が提供される。
【0041】
本発明はまた、活性剤を必要とする被験体の皮膚にその活性剤を投与するために、本発明の第1の態様によるマイクロ突起アレイ、本発明の第2の態様による経皮送達装置、または本発明の第3の態様によるイオン注入装置の使用を提供する。
【0042】
本発明のマイクロ突起アレイはまた、膜不浸透性分子の細胞内への送達、分子生物学における用途、神経組織および他の組織への薬物送達、例えば、皮膚への送達、または局所的治療効果、または血管内送達、例えば、浸透およびその後の抗再狭窄薬剤のアテローム性動脈硬化の動脈への送達のために使用され得る。このような用途はまた、医療装置上、例えば、膨張時に、組織に浸透させ、有益な物質を送達させるために使用され得るカテーテルおよびステント上の機能的(治療活性剤の検知、送達)表面としての使用を含む。
【0043】
実際に、特定の実施形態において、本発明のマイクロ突起アレイは、血管内送達装置、例えば、カテーテルまたはステントを介して、活性剤を身体の内腔に送達するために使用され得る。
【0044】
従って、本発明の第7の態様において、本発明の第1の態様による1つ以上のマイクロ突起アレイを備える血管内送達装置が提供される。
【0045】
血管内送達装置は、薬剤の身体の内腔(例えば、動脈、静脈、尿道などの他の管状構造)への送達に適切な任意の装置であってもよい。その血管内送達装置は、カテーテルまたはステントであってもよいし、またはそれらから構成されてもよい。
【0046】
血管内送達装置は、使用時に配置されるマイクロ突起アレイを、標的とする内腔表面、例えば、特定の血管の内皮表面に送達するため、および/または標的表面と接触させるための任意の適切な支持手段とともに提供されてもよい。
【0047】
例えば、適切に、使用する目的部位への血管などの内腔を通す送達の間、アレイに対する損傷を防ぐため、および実際には、血管内送達装置が送達される血管に対する損傷を防ぐために、血管内送達装置のその所望の位置までの挿入の間にアレイが支持手段に提供されてもよく、アレイと、血管内送達装置が通る内腔表面との間に最低限接触するような位置またはほとんど接触しないような位置にアレイを維持してもよい。好ましくは、一旦、例えば、標的血管内に正確に配置されると、支持手段は、アレイを所望の内腔表面と接触させるように操作され得る。
【0048】
これを達成するための任意の適切な支持手段が使用されてもよい。例えば、支持手段は従来のステントであってもよく、それは、ステントが第1の直径を有する閉じた位置からステントの直径が大きくなる開口位置まで拡張され得る。ステントを配置するのに従来使用される任意の適切な手段が、マイクロ突起アレイを送達するために使用または適用されてもよい。例えば、アレイは閉じた支持手段上に配置されてもよく、その位置で開口する。すなわち、例えば、閉じた支持手段内での血管形成術用バルーンの膨張によって周囲に拡張する。一旦、アレイが所望の内腔表面に配置されると、バルーンは収縮し、引き抜かれ得る。
【0049】
上記のように、支持手段は、任意の適切な構造、例えば、ステントおよびステント送達に使用されるものを含んでもよい。例えば、支持手段は、ワイヤまたはスプリングを支持する1つ以上の折り畳み可能な金属フレームを有してもよい。
【0050】
送達の間に血管および/またはアレイに対する損傷を防ぐために、アレイはカバー手段、例えば、保護鞘内に維持されてもよく、標的血管への血管内送達手段の送達時にアレイが標的血管壁と接触し得るように引き抜かれる。
【0051】
一実施形態において、アレイは支持手段に配置されてもよく、配置手段および/または血管内送達装置の引き抜き時に、従来のステントと同様に支持機能を血管に提供するように血管内の位置に残ったままになる。現在、使用中のステントは、しばしば、血管形成術用バルーンの間に血管壁を支持するのに役立つように使用され、それにより、ステントが、血管内の位置で操作され、拡張され得る。本発明のこのような実施形態の血管内送達装置は、従来のステントに対する利点を有し、装置を介して血管に対する支持を提供するだけでなく、そのような血管壁を通す治療活性剤の局所的送達をさらに可能とする。
【0052】
代替の実施形態において、マイクロ突起アレイ支持手段は、一度、送達手段が引き抜かれると所定の位置に残ったままになるが、血管自体に対する支持機能を提供しない。さらなる実施形態において、アレイの配置後の血管内送達装置の引き抜き時に、いずれかの支持手段もまた引き抜かれる。このような実施形態において、アレイは、元の位置のままに残り得、実際にマイクロ突起は、血管壁におけるアレイを固定する。
【0053】
マイクロ突起アレイは、任意の適切な構造で血管内送達装置またはその支持手段に配置されてもよい。例えば、マイクロ突起アレイは、スラブ型アレイ構造として提供されてもよい。そのような構造において、アレイの基部は、好ましくは、使用中に血管壁と接触するアレイ全体にわたるマイクロ突起の操作を可能にする程度まで柔軟性がある。
【0054】
代替の実施形態において、マイクロ突起アレイは、2つ以上のマイクロ突起の単列を含むストリップに提供されてもよい。そのようなストリップは剛性であり得る。
【0055】
使用中に、支持手段は、血管の内皮を突き通すためにマイクロ突起アレイのストリップまたはスラブを配置するのに役立つ。
【0056】
各々の血管内送達装置は、ストリップまたはスラブあるいはそれらの混合物に配置された1つ以上のマイクロ突起アレイを備えてもよい。そのアレイは、送達装置から等距離に実質的に配置されてもよいか、または、1つ以上の局所的領域、例えば、そのような送達装置の外面の4分の1の領域に集中してもよい。
【0057】
本発明の血管内送達装置は、いずれかの身体血管の内腔壁を通して薬物などの物質を送達するために使用されてもよい。一実施形態において、ステントが、心臓血管疾患を処置するために血管内の活性剤の経内皮送達に使用される。
【0058】
本発明の第8の態様において、組織を浸透することによって活性剤を送達する方法が提供され、その方法は、
本発明の第7の態様による血管内送達装置を提供する工程と、
血管内送達装置を標的血管に導入する工程と、
マイクロ突起アレイを血管壁組織と接触させ、それにより、マイクロ突起が血管壁を通して、または血管壁内に突き出る工程と、
血管を通して、または血管内にマイクロ突起を介して活性剤を流入させる工程と、
を含む。
【0059】
本発明の第9の態様において、本発明の第7の態様による血管内送達装置を介して活性剤を必要とする被験体に投与する工程を含む、処置方法が提供される。
【0060】
本発明の各態様の好ましい特徴は、文脈が他に要求しない限り、他の態様の各々に関して、変更すべきところは変更される。
【0061】
(詳細な説明)
以下に例示するように、本発明者らは、マイクロ突起が膨張性ポリマーから構成されるマイクロ突起アレイが、皮膚への挿入時に破損することなく、哺乳動物の皮膚の角質層を穿刺でき、従来の中実マイクロニードルの使用に関連する多くの問題を有さずに角質層を通して活性物質を効果的に送達するために使用され得ることを示す。
【0062】
例えば、FDAにより認可されたヒドロゲル材料を、マイクロ突起を形成するために利用することができ、そしてそのようなヒドロゲル材料は安価であり、生体適合性があり得る。薬物はマイクロ突起アレイの上面に取り付けられた薬物リザーバーに含まれることができるので、マイクロ突起によって提供され得る薬物用量は、マイクロ突起に負荷され得る量によって制限されるわけではない。
【0063】
皮膚への侵入時のマイクロ突起の膨張は、従来のマイクロニードルアレイまたは実際の糖類のマイクロニードルより多くの利点を有する。例えば、マイクロ突起アレイが薬物送達に使用される場合、角質層の下部の表皮層と接触するマイクロ突起の増加した表面領域により、マイクロ突起の膨張が、角質層の下部の表皮層への薬物の向上された送達を可能にする。特定の実施形態において、膨張性ポリマーのマイクロ突起アレイは、皮膚への挿入時に水分を吸収でき、外部環境と皮膚の微小循環との間に連続した水性チャネルを形成させるために膨張でき、それにより、親油性角質層障壁を通る「水性ブリッジ」を形成する。そのようなチャネルは、中にチャネルを有する従来のシリコンベースのマイクロニードル装置と対照的に、アレイを配置する際に遮断する傾向を有さない。必要に応じて、マイクロ突起は、マイクロ突起の表面上のあらゆる点から薬物を放出でき、組織によるマイクロ突起の遮断をさらに最小化する。必要に応じて、ヒドロゲルマイクロ突起アレイは、迅速なボーラス投与を与えるために薬物リザーバーと一体化でき、治療血漿中濃度を達成し、その後、制御され、長時間の送達を達成して、このレベルを維持する。必要に応じて、膨張性ヒドロゲル材料は、70%より多い、例えば80%より多い、例えば90%より多い水を含むことができる。高含有量の水を有することにより、薬物拡散が促進され、ポリマー鎖との衝突に起因する薬物移動の障害の機会がほとんどない。さらに、水はイオンおよび極性物質の通過を可能にし、電位勾配の下で電気浸透流を促進する。従って、帯電物質および/または極性物質の伝導ならびに電気浸透流による流体移動が可能である。
【0064】
(膨張性ポリマー)
マイクロ突起は任意の適切な膨張性ポリマーから製造されることができ、その乾燥状態は、角質層の穿通を可能にするために硬く、かつ、もろいが、水分を取り込むと、治療活性薬剤の拡散を可能にするために膨張する。例えば、マイクロ突起は、限定されないが、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(カプロラクトン)を含むヒドロゲルを形成するために公知の1つ以上の数のポリマーから構成されてもよい。
【0065】
特定の実施形態において、マイクロ突起のポリマーは、物理的、化学的またはその両方で架橋される。マイクロ突起アレイは、マイクロ突起アレイの群を含んでもよく、ここで、第1の群は、少なくとも第2の群とは異なる少なくとも1つの架橋剤を含む。
【0066】
特定の実施形態において、マイクロ突起は架橋されなくてもよく、角質層を穿刺する際の最初の膨張段階の後に溶解し、皮膚の水分と接触する。この場合において、治療活性剤は、マイクロ突起の溶解速度によって決定される速度で皮膚に放出されることができる。特定のマイクロ突起の溶解速度は、所定の用途または所望の薬物放出速度に適するように調整され得るそれらの物理化学特性に依存する。
【0067】
架橋されていないマイクロ突起、軽く架橋されたマイクロ突起、および非常に架橋されたマイクロ突起の組み合わせは、活性薬剤、例えば治療物質のボーラス用量を送達するように単一の装置に組み合わされてもよく、治療血漿中濃度、その後、そのレベルを維持するために制御された送達が達成される。この戦略は、治療物質がマイクロ突起および基部要素または取り付けられたリザーバーに含まれるか否かに関わらず、首尾よく利用され得る。
【0068】
さらなる実施形態において、基部要素およびマイクロ突起は、1つ以上の水溶性賦形剤の量を規定するそれらのマトリクスに含まれてもよい。皮膚への挿入時に、それらの賦形剤は溶解し、基部要素およびマイクロ突起のマトリクスの後方の孔から流出する。これにより、放出速度が向上され得、さらに賦形剤、その濃度および/またはその粒子サイズを変更することによって放出速度が制御され得る。適切な賦形剤としては、限定されないが、グルコース、デキストロース、硫酸デキストラン、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムまたは当該分野において公知の他の水溶性賦形剤が挙げられる。
【0069】
上記のように、経皮送達に使用するために、または体内の物質のレベルをモニターするために、マイクロ突起アレイは、角質層障壁に開口部を生じさせることができなければならず、それを通して有益な物質が移動できる。従って、挿入の力は、マイクロ突起を破損するのに必要とされる力よりも小さい。
【0070】
適切には、5.0N cm−2未満、例えば3.0N cm−2未満、例えば、0.5N cm−2未満の挿入圧力が、マイクロ突起の長さに沿ってマイクロ突起に与えられる場合、マイクロ突起は破壊しない。
【0071】
マイクロ突起は、角質層を穿刺するためのアレイに使用するために任意の適切なサイズおよび形状であってもよい。本発明の第1の態様のマイクロ突起アレイは、角質層を刺し、必要に応じて角質層を通過するように設計される。適切には、マイクロ突起の高さは、上面表皮、表皮の深さ、または真皮上層までへの貫通を可能にするように変更され得るが、出血を引き起こすほどの皮膚内の深さまで貫通しない。一実施形態において、マイクロ突起は、基部より上のマイクロ突起の高さの点まで先細になる円形基部を有する円錐形である。
【0072】
マイクロ突起アレイの実施形態において、そのマイクロ突起は、1μm〜3000μmの高さの範囲であり得る。例えば、そのマイクロ突起は、50μm〜400μm、例えば50〜100μmの範囲の高さを有してもよい。適切には、本発明のアレイの実施形態において、マイクロ突起は幅(例えば、円形断面のマイクロ突起の場合においてマイクロ突起の基部にて1〜500μmの直径)を有してもよい。一実施形態において、本発明の、および本発明に使用するためのマイクロ突起は、50〜300μm、例えば100〜200μmの範囲の直径を有してもよい。別の実施形態において、本発明のマイクロ突起は、1μm〜50μmの範囲、例えば20〜50μmの範囲の直径であってもよい。
【0073】
アレイ中の個々のマイクロ突起の各々の間の頂点の分離距離は、皮膚の貫通を確実にするために変更されてもよいが、高い経皮輸送率を与えるように十分に小さな分離距離を有する。この装置の実施形態において、マイクロ突起間の頂点の分離距離の範囲は、50〜1000μm、例えば100〜300μm、例えば100〜200μmの範囲であってもよい。これにより、角質層の効果的な貫通と、治療活性薬剤の向上した送達、あるいは間質液またはその成分の通過との間の関係を達成することが可能となる。
【0074】
本発明のマイクロ突起が、限定されないが、マイクロニードル、錐体、棒および/または柱を含む任意の適切な形状を取り得ることは当業者に明らかであろう。このようなものとして、マイクロ突起は、基部の頂点で同じ直径を有してもよいか、または頂点までの方向において先細の直径になってもよい。マイクロ突起は、少なくとも1つの鋭い端部を有してもよく、頂上で鋭くなってもよい。マイクロ突起は、中実であってもよく、少なくとも1つの長手軸に基部要素まで一定の角度で下がり、基部要素の第1の側まで延びる中空の孔を有してもよく、それらは穴であってもよく、または頂上から基部要素まで少なくとも1つの外表面に流れる少なくとも1つのチャネルを有してもよい。
【0075】
使用中、マイクロ突起は、穏やかに加えられた圧力によって、または予め規定された力を加える特別に設計された機械的アプリケータを使用することによって皮膚内に挿入されてもよい。さらなる装置が、マイクロ突起の挿入を促進するように皮膚の表面を伸ばすか、挟むか、または引っ張ることによって皮膚の弾力性を減少させるために使用されてもよい。この後者の機能は、通常、マイクロ突起アレイの挿入のための単一の一体化された装置を製造するためにアプリケータの機能と組み合わせられ得る。
【0076】
マイクロニードルベースの送達のための多くの用途は当該分野において公知である。例えば、米国特許出願公開第20046743211号は、マイクロニードル−アレイベースの経皮薬物送達システムが適用される、より剛性で、ほとんど変形しない表面領域を引き起こすために、皮膚を伸ばすこと、引っ張ること、または挟むことによって皮膚の弾力性を制限するための方法および装置を記載している。米国特許出願公開第20060200069号は、皮膚に対してコーティングされたマイクロ突起アレイの適用のためにスプリングを負荷した衝突アプリケータを記載している。当該分野において公知のさらなる適用は、特別に設計されたスプリングを負荷されたアプリケータ(Alza Corporation,2007)を用いて皮膚に適用されるAlza Macroflux(登録商標)装置である。
【0077】
(製造方法)
ヒドロゲルを形成するために公知のポリマーからなるマイクロ突起は、当該分野に公知のいずれかのような方法により製造され得る。例えば、それらは、限定されないが、例えば、シリコン、高分子金属材料を含む1つ以上の種々の材料から製造されるマイクロ突起アレイなどのマスターテンプレートを用いるマイクロモールド技術により製造され得る。マスターテンプレートは、限定されないが、電気化学エッチング、シリコンのディーププラズマエッチング、電気めっき、ウェットエッチングプロセス、マイクロモールド、マイクロエンボス、「スレッドフォーミング」方法を含む多くの方法によって、ならびに連続的な逐次堆積および放射線感受性ポリマーのx線照射の使用によって製造されて、中実のマイクロ突起アレイを得ることができる。
【0078】
マイクロモールドは、後で硬化される液体モノマーまたはポリマーを含むマスターテンプレートをコーティングすることによって製造され得、そのマスタープレートは、マスタープレートの詳細を含むモールドを残すように除去される。マイクロモールド技術において、開始剤および/または架橋剤を含んでも含まなくてもよい液体モノマーがモールドに入れられ、それは、重力流、真空または遠心力の付与によって、圧力の付与によって、あるいは射出成形によって充填される。次いで、モノマーは、熱または照射(例えば光、UV照射、x線)の適用によってモールド内で硬化され得、マスターテンプレートの正確な複製である形成されたマイクロ突起アレイが取り除かれる。あるいは、架橋剤を含んでも含まなくてもよいポリマーの溶液は、モールドに入れられ、それは、重力流、真空または遠心力の付与によって、圧力の付与によって、あるいは射出成形によって充填される。次いで、溶媒は、乾燥マイクロ突起アレイの後方から出ていくように蒸発されて、マスターテンプレートの正確な複製になり、次いで、モールドから取り除かれ得る。使用され得る溶媒としては、限定されないが、水、アセトン、ジクロロメタン、エーテル、ジエチルエーテル、酢酸エチルが挙げられる。他の適切な溶媒は当業者に明らかであるだろう。マイクロモールドはまた、例えばマイクロマシニング方法によって、およびまた当業者に明らかである他の方法によってマスターテンプレートを必要とせずに製造されてもよい。
【0079】
例えば、一実施形態において、マイクロ突起アレイは、所望のマイクロ突起の形状が適切なモールド材料に、例えば、レーザーを用いてドリルされる方法を用いて製造されたマイクロモールドを用いて調製されてもよく、次いで、そのモールドは当該分野において公知または本明細書に記載の技術を用いて充填される。
【0080】
ヒドロゲルを形成するために公知のポリマーからなるマイクロ突起はまた、「自己モールド」法を用いて製造されてもよい。この方法において、ポリマー材料はまず、例えば、限定されないが、鋳造、成形およびモールディングを含む、当該分野において周知の技術を用いて薄膜に製造される。その材料は、「自己モールディング」プロセスの前に架橋されても、されなくてもよい。このプロセスにおいて、薄膜は以前に製造されたマイクロ突起アレイに入れられ、加熱される。重力に起因する塑性変形により、ポリマー膜が変形し、硬化時に所望のマイクロ突起構造が製造する。
【0081】
中空の孔を有するマイクロ突起は、中空のマスタープレートから製造されたモールドを用いることによって、またはマイクロマシン法もしくは中実のマイクロ突起を製造するために使用される他の方法を適切に変更することによって製造されてもよい。中空の孔はまた、機械的にまたはレーザーによって、形成されるマイクロ突起にドリルされてもよい。頂上から基部要素まで少なくとも1つの外表面で下方へ少なくとも1つのチャネル直線を有するマイクロ突起もまた、中実のマイクロ突起を製造するために使用される方法の適切な変更により製造され得る。このような変更は当業者に明らかであろう。チャネルはまた、機械的に、またはレーザーによって、形成されるマイクロ突起にドリルされてもよい。
【0082】
ヒドロゲルを形成するために公知のポリマーからなるマイクロ突起はまた、「スレッドフォーミング」方法を用いて製造され得、それにより、平らな表面に拡散されるポリマー溶液が、突起によって接触されるその表面を有し、次いで、迅速に上方に移動し、連続したポリマー「スレッド」を形成し、次いで、マイクロ突起を形成するために乾燥される。
【0083】
上記の方法の全てにおいて、マイクロ突起自体に組み込まれる物質(例えば、活性治療剤、孔を形成する薬剤、酵素など)は、製造プロセスの間、液体モノマーまたはポリマー溶液に加えられてもよい。あるいは、そのような物質は、形成されたマイクロ突起アレイを膨張させるために使用される溶液中のそれらの溶液状態から水分を吸収され得、その後乾燥されるか、または形成されたアレイは、目的の薬剤を含む溶液に浸され得るか、または目的の薬剤を含む溶液で噴霧され得る。これらの溶液を作製するために使用される溶媒としては、水、アセトン、ジクロロメタン、エーテル、ジエチルエーテル、酢酸エチルが挙げられる。他の適切な溶媒は、マイクロ突起アレイを乾燥させるために使用されるプロセスと同様に当業者に明らかであろう。マイクロ突起および/または基部要素が粘着性になる場合、形成されるアレイは粘着剤を含む溶液に浸され得るか、または粘着剤を含む溶液で噴霧され得る。使用される粘着剤は、感圧粘着剤または生体粘着剤であってもよい。これらの物質は周知であり、当業者に明らかであろう。
【0084】
マイクロ突起が形成される基部要素は、例えば、限定されないが、製造プロセスに使用される液体モノマーまたはポリマー溶液の量を増加させることを含む、製造方法の適切な改変により厚さが変更されてもよい。このように、治療活性薬剤および/または目的の検体の拡散/輸送に対する障壁は、例えば迅速な送達またはサンプリングまたは持続放出を達成するように制御され得る。治療活性薬剤がマイクロ突起および基部要素のマトリクス内に含まれる場合、基部要素の厚さは、完全に一体化されたリザーバーとして機能するように有用に増加されてもよい。
【0085】
(架橋結合)
架橋は物理的であっても、化学的であっても、分子間であっても、分子内であってもよい。ポリマーを架橋するための方法は当該分野において周知である。架橋は、隣接するポリマー鎖、または同じポリマー鎖の隣接する部分が結合するプロセスであり、互いから離れて移動することを防ぐ。物理的架橋は、もつれあい、または他の物理的相互作用に起因して起こる。化学的架橋に関して、官能基は化学結合を生じるように反応する。そのような結合は、ポリマー鎖上の官能基間で直接的であってもよいか、または架橋剤は、鎖を連結するために使用されてもよい。このような架橋剤は、ポリマー鎖上の基と反応できる少なくとも2つの官能基を有さなければならない。架橋はポリマー溶解を防ぐが、ポリマー系が流体を吸収し、その元のサイズに何度も膨張することを可能にする。
【0086】
(経皮送達装置)
本発明の第1の態様は、1つ以上の活性薬剤および/または有益な物質(例えば薬物)を生体界面に送達するための経皮薬物送達システムに関する。このようなシステムは、基部要素およびそれに形成される複数のマイクロ突起を含み得る。特定の実施形態において、前記基部要素は第1の側および第2の側を有してもよく、前記複数のマイクロ突起は、一定の角度で前記基部要素の第2の側から突き出る複数の要素を含む。前記基部要素に関連する一実施形態において、前記角度は45°〜90°の範囲、例えば70°〜90°の範囲である。特定の実施形態において、前記角度は約90°である。この装置の特定の実施形態において、前記基部要素および複数のマイクロ突起は、水分の吸収の際にヒドロゲルを形成するために公知のポリマー材料から形成され得る。適切には、好ましい実施形態において、使用中、皮膚への挿入の際に、前記マイクロ突起および基部要素のポリマー材料は、水分を吸収し、サイズを増加させて、膨張性ヒドロゲルを形成することができ、治療活性薬剤は、前記膨張性基部要素および膨張性ヒドロゲルマイクロ突起を通して拡散することができる。特定の実施形態において、治療活性薬剤はリザーバーから提供されてもよく、ここで、前記リザーバーは基部要素の第1の側に取り付けられてもよい。この装置の特定の実施形態において、リザーバーは、適切なマトリクス材料、例えば適切な接着性または非接着性ポリマーマトリクスに分散された薬物であってもよいか、あるいは流体含有リザーバーであってもよいか、前記リザーバー内に注入される液体によって再構成するための固形の治療活性薬剤を含んでもよい。
【0087】
本発明の経皮送達装置の代替の実施形態において、取り付けられたリザーバーは存在しない。このような実施形態において、1つ以上の治療薬物または他の有用な物質が、前記基部要素および複数のマイクロ突起の膨張性ポリマー組成物内に含まれてもよい。前記物質は膨張性ポリマー組成物内に溶解されてもよいか、または微粒子形態で懸濁されてもよい。皮膚への挿入およびマイクロ突起の膨張時に、治療活性薬剤が、マイクロ突起の架橋の程度および治療活性薬剤自体の水溶性により決定される速度で皮膚へ放出され得る。
【0088】
マイクロ突起の基部要素の領域の後方に延びる接着縁を有するバッキング層は、長時間、例えば72時間以上、マイクロ突起ベースの装置を皮膚表面上の所定の位置に維持するために使用され得る。基部要素、および必要に応じてマイクロ突起自体の表面は、適用部位での保持を促進するように接着性材料でコーティングされる。
【0089】
特定の実施形態において、活性剤は、マイクロ突起および基部要素を構成するポリマーに化学的に結合され得る。この場合において、マイクロ突起の溶解、ポリマーを保持する結合の加水分解、酵素的分解または自然発生による非触媒的分解によって、薬物は皮膚への挿入時に放出され得る。従って、薬物放出の速度は、反応/結合分解の速度によって決定され得る。
【0090】
代替の実施形態において、マイクロ突起および/または基部要素のポリマー組成物は、刺激応答性であり得るように調製され得る。例えば、pHまたは温度の局所的な変化は、マイクロ突起および基部要素の特性(例えば、水分を吸収する際に膨張する能力)を変化させ得、それにより、治療活性薬剤の送達速度の変化が起こる。あるいは、光照射などの外部刺激は、マイクロ突起および基部要素の特性の変化に影響を与えるように使用され得、それにより、治療活性薬剤の送達速度の変化が生じる。
【0091】
本発明のアレイの実施形態において、マイクロ突起および基部要素のポリマー組成物は、装置の表面特性が変化し、より親水性、親油性、アニオン性、またはカチオン性の特徴になるように調節されてもよい。
【0092】
(活性薬剤)
本発明のマイクロ突起アレイおよび経皮送達装置は、任意の適切な活性薬剤を送達するように使用されてもよい。例えば、活性薬剤は、薬物、栄養物または化粧品薬剤であってもよい。薬物という用語は、疾患の処置または予防のための「有用な物質」、例えば薬物、皮膚の全体的な健康を改善できる物質、例えばビタミンおよびミネラル、ならびに例えば、しわの出現を減少させるか、または皮膚の水和の程度を改善することによって皮膚の美的外観を改善できる物質を含む。
【0093】
このような装置を用いて送達するのに適切な薬物の非限定的な例としては、オリゴヌクレオチド、タンパク質、酵素、抗原、核酸、増殖因子、多糖ならびに低分子、抗生物質、抗感染薬、ホルモン、強心作用および血流に関する薬物、疼痛コントロールのための薬物、ステロイド、および鎮痛剤などの合成有機化合物および無機化合物が挙げられる。投与される薬物は、局所的処置あるいは局所的治療または全身的治療であってもよい。医薬の治療的に活性な用量は、マイクロ突起アレイによって提供されてもよい。
【0094】
必要に応じて、薬物は水溶性であってもよい。実際に、経口送達のために開発されている大多数の薬物はある程度の水溶性を有するが、間質液に溶解される診断物質もまた、水溶性である。薬物分子は、生存する皮膚層からの水分によって膨張されるマイクロ突起のマトリクスを通して拡散でき、膨張の程度は薬物拡散の速度を制御する。
【0095】
経皮送達装置の実施形態において、経皮送達装置はマイクロ突起が取り付けられるリザーバーまたはマトリクスを含んでもよい。特定の実施形態において、使用中、皮膚へのマイクロ突起の挿入時にリザーバーまたはマトリクスは、送達されるべき薬剤、例えば、薬物を含んでもよく、マイクロ突起を介してリザーバーまたはマトリクスから送達部位へ流入する。
【0096】
特定の実施形態において、薬剤送達は単純な受動拡散を介して起こり得るか、または電気的に支援され得るか、もしくは圧力的に支援され得る。
【0097】
支援される送達を利用する実施形態において、支援される送達は、圧力駆動手段、例えば、限定されないが、シリンジまたはポンプを介してでもよく、特定の実施形態において、そのシリンジまたはポンプは電気駆動であってもよい。
【0098】
本発明のマイクロ突起によって媒介される薬剤、例えば薬物の受動的または支援経皮送達は、薬剤を含むリザーバーに取り付けられるマイクロ突起アレイからなるシステムから起こり得る。
【0099】
特定の実施形態において、マイクロ突起を介して流入する前に、送達されるべき薬剤はリザーバーまたはマトリクス内に保存されてもよい。リザーバーは変形可能であってもよい。特定の実施形態において、リザーバーは多くのチャンバに細かく分けられてもよく、各チャンバが同時または連続して送達部位に異なる薬剤を供給する。あるいはまたはさらに、マイクロ突起自体は送達されるべき薬剤でコーティングされてもよい。適切には、このような実施形態において、皮膚への挿入後、薬剤は溶解されて、マイクロ突起から拡散できる。
【0100】
特定の実施形態において、本発明の装置および必要に応じてリザーバーまたはマトリクスは、リストバンドに組み込まれて、簡便に患者によって装着されてもよい。
【0101】
薬物送達速度は、アレイの可変の1つ以上の設計を変更することにより制御され得る。例えば、マイクロ突起の数を変化させてもよく、同様にそれらの直径および/または高さを変化させてもよい。力の付与が薬物流入を駆動するために使用されてもよいか、または一部のマイクロ突起が拡散を制限する材料で充填されてもよい。
【0102】
さらに、皮膚を通して薬物の送達速度を調節するために、本発明のマイクロ突起アレイによって送達可能な薬剤、例えば薬物は、ポリマーナノ粒子内にカプセル化されて、膨張性マイクロ突起からそれらの放出をさらに調節してもよい。
【0103】
(イオン注入装置)
本開示の第1の態様は、1つ以上の治療活性薬剤を生体界面に送達するためのイオン注入経皮薬物送達システムに関する。そのようなシステムは、本発明の第2の態様による経皮送達装置を含んでもよい。特定の実施形態において、治療活性薬剤はリザーバーから提供されてもよい。前記リザーバーはマトリクス型(粘着剤中の薬物)リザーバーまたは流体を含むリザーバーであってもよいか、前記リザーバー内に注入される液体によって再構成される固形治療薬剤を含んでもよい。このような実施形態において、その装置は、第1の電極および前記第1の電極と異なる位置に第2の電極をさらに含んでもよく、両方の電極は前記リザーバー、電源、電子制御装置および中央処理回路に近接する。電極間の電位差の印加は、イオン泳動または電気浸透流による前記膨張性基部要素およびマイクロ突起を介する前記リザーバーから皮膚への治療活性薬剤の送達を促進する。
【0104】
本発明のこの態様は、必要な場合、上述の態様のうちの1つ以上と合わせられてもよいことは当業者に明らかであろう。
【0105】
(サンプリング法)
本明細書に記載する場合、本発明のマイクロ突起は、体内における診断目的の物質のレベルをモニタリングし、皮膚から物質をサンプリングするために使用されてもよい。従って、本発明の一態様において、皮膚間質液またはそれらの成分を抽出するための装置が提供され、前記装置は本発明のマイクロ突起アレイおよび回収チャンバを含む。使用中、皮膚への挿入時に、マイクロ突起は水分を吸収し、膨張性マイクロ突起を形成するためにサイズを増加させ、皮膚間質液またはその成分は、前記膨張性基部要素および膨張性ヒドロゲルマイクロ突起を介して回収チャンバに抽出され得る。
【0106】
さらに、本発明の装置は、間質液以外の流体をサンプリングするために使用されてもよい。例えば装置を、例えば口腔内の粘膜に適用することにより、直接的な血液サンプリングが可能となる。
【0107】
このような装置の適切な実施形態において、その装置は検出手段を含んでもよい。適切には、好ましい実施形態において、皮膚間質液内の成分を検出するための検出手段は、電気的または光学的であってもよい。
【0108】
特定の実施形態において、最小限の侵襲的モニタリングに使用される装置は、目的の検体を検出するためのセンサと通信してもよく、および/またはそのようなセンサを含んでもよく、生成された信号を解明するためのプロセッサと通信してもよく、および/またはそのようなプロセッサを含んでもよい。
【0109】
皮膚間質液の抽出は単純な受動拡散を介して起こり得、電気的に支援または機械的に支援されてもよい。抽出が電気的に支援される実施形態において、電流が皮膚に印加されてもよい。この装置の実施形態において、装置はダイヤフラムポンプを備えてもよく、使用中、皮膚から流体を抽出する電流の代わりに、使用者が作動するダイヤフラムポンプがマイクロ突起アレイに取り付けられてもよい。
【0110】
本発明の別の態様において、本発明は、皮膚間質液またはその成分を抽出し、その後、目的の検体の濃度を測定するための逆イオン泳動装置を含む。このような実施形態において、皮膚間質液またはその成分を抽出するための装置は、第1の電極および前記第1の電極と異なる位置において第2の電極をさらに備えてもよく、両方の電極は、前記回収チャンバ、電源、電気コントローラー、中央処理回路および可視的表示器に近接する。電極間の電位差の印加は、イオン泳動または電気浸透流による前記膨張性基部要素およびマイクロ突起を介する皮膚の間質液またはその成分の抽出を促進する。
【0111】
特定の実施形態において、この装置は第3の電極を備えてもよく、また、前記回収チャンバに近接し、前記の最初の2つの電極と異なる位置にある。適切には、この第3の電極は、生物電気化学センサとして作動してもよい。
【0112】
さらなる代替の実施形態において、検体の検出および定量化が、化学反応の手段、基質への結合、または酵素によって媒介される反応によってなされてもよい。
【0113】
例えば、回収チャンバは、グルコースを検出および定量化するためのグルコースオキシダーゼを負荷されたヒドロゲルを含んでもよい。
【0114】
着色性標識またはデジタル式の読み取りの形態で、ディスプレイユニットが、目的の検体の測定レベルについての情報を与えてもよい。目的の検体は、例えば、限定されないが、グルコースまたは治療活性剤などの内因性化学物質であってもよい。
【0115】
イオン注入装置のさらなる代替の実施形態において、第1の2つの電極は、装置の一部、その装置に存在する全ての他の要素を含まなくてもよい。実際に、角質層の穿刺後、皮膚間質液またはその成分は、前記膨張性基部要素および膨張性ヒドロゲルマイクロ突起を介して回収チャンバに受動的に拡散できる。
【0116】
あるいは、マイクロ突起自体が検出要素を備えてもよい。それらは、適切な電解質を導入することによって電気的に誘導され得、それによって、皮膚の細胞外液の組成の化学変化を電気化学的に検出する。あるいは、基部要素およびマイクロ突起のマトリクスは、グルコースを検出および定量化するためのグルコースオキシダーゼを負荷されてもよい。化学反応に基づいた検出のための用途において、基質への結合体または酵素によって媒介される反応体、関連する化学反応体、基質または酵素は、基部要素およびマイクロ突起のマトリクス内に固定されてもよい。導波管もまた、例えば、着色性評価のためのpH感受性色素などの手段を用いて検出するために、皮膚へ光を導くようにマイクロ突起アレイに導入されてもよい。同様に、光は、赤外線スペクトルに基づいて血糖を測定するためにマイクロ突起を介して送信されてもよい。
【0117】
本発明の別の態様において、本開示は、1つ以上の治療活性薬剤を生体界面に送達し、その後、皮膚間質液中の送達した薬剤の濃度を測定するための閉ループのイオン注入経皮薬物送達システムに関する。そのようなシステムは、基部要素およびそれに形成される複数のマイクロ突起を含む。特定の実施形態において、前記基部要素は第1の側および第2の側を有し、前記複数のマイクロ突起は、前記基部要素に対して一定の角度で長手方向軸に沿って、前記基部要素の第2の側から突き出る複数の要素を含む。適切には、特定の実施形態において、前記基部要素および複数のマイクロ突起は、水分の吸収時にヒドロゲルを形成するために公知のポリマー材料から製造される。適切には、このシステムの実施形態において、このシステムはリザーバーをさらに含んでもよく、そのリザーバーは基部要素の第1の側に取り付けられてもよく、前記リザーバーは、マトリクス型(粘着剤中の薬物)リザーバーまたは流体を含むリザーバーであってもよく、あるいは前記リザーバーに注入される液体によって再構成するための固形治療活性薬剤を含んでもよい。使用中、皮膚への挿入時に、前記マイクロ突起および基部要素は水分を吸収し、膨張性ヒドロゲルを形成するためにサイズが増加し、治療活性薬剤は、前記膨張性基部要素および膨張性ヒドロゲルマイクロ突起を介してリザーバーから送達され得る。
【0118】
このシステムは、第1の電極および前記第1の電極と異なる位置で第2の電極をさらに含んでもよく、両方の電極は前記リザーバー、電源、電子制御装置、中央処理回路、および可視的表示器に近接する。電極間の電位差の印加は、イオン泳動または電気浸透流によって、前記膨張性基部要素およびマイクロ突起を介して前記リザーバーから皮膚への治療活性薬剤の送達を促進する。このシステムは、基部要素の第1の側に取り付けられる回収チャンバ、または別の基部要素ならびに第3の電極および前記第3の電極と異なる位置に第4の電極をさらに含んでもよく、両方の電極は、前記回収チャンバ、第3の電極および第4の電極に近接し、回収チャンバは、第1の電極および第2の電極ならびにリザーバーとは異なる基部要素の異なる領域に位置するか、または別の基部要素に取り付けられる。使用中、第3の電極および第4の電極の間の電位差の印加は、イオン泳動または電気浸透流による前記膨張性基部要素およびマイクロ突起を介する皮膚間質液またはその成分の抽出を促進する。第5の電極もまた、前記回収チャンバに近接し、前記の最初の4つの電極とは異なる位置にあり、生物化学電気センサとして作動するように設けられてもよい。あるいは、検出および定量化は、別の化学反応の手段、基質への結合、または酵素によって媒介される反応によってなされてもよい。着色性標識またはデジタル式の読み取りの形態で、ディスプレイユニットが、目的の治療活性薬剤の測定レベルについての情報を与えてもよい。
【0119】
特定の実施形態において、装置の送達部分は、個々の患者への送達を調整するように、装置の一部を検出することによって測定された薬剤のレベルに従って治療活性薬剤を送達できる。あるいは、治療活性薬剤は、予め規定された速度または使用者に規定された速度で送達されてもよく、薬剤のレベルは簡単にモニターされることができる。
【0120】
特定の実施形態において、皮膚間質液のサンプリングは、膨張性マイクロ突起を介して逆イオン泳動によって行われてもよい。特定の実施形態において、イオン注入装置は、電気信号を検出できる電極を備えてもよい。このような実施形態において、電子制御装置は、逆イオン泳動によってマイクロ突起を介して皮膚からの体液のサンプリングを促進することができ、電極は、生物電気化学センサの様式で電気信号を検出できる。
【0121】
あるいは、イオン注入装置の実施形態において、マイクロ突起は検出機能を有するゲルを含んでもよい。
【0122】
基質への結合または酵素によって媒介される反応に基づいて検出するための装置の実施形態において、その基質または酵素は、マイクロ突起内またはマイクロ突起上に固定されてもよい。これらまたは他の実施形態において、導波管もまた、光を特定の部位に導くために、または例えば着色性評価のためのpH感受性色素などの手段を用いて検出するためにマイクロ突起またはイオン注入装置内に導入されてもよい。同様に、光は、赤外線スペクトルに基づいて血糖を測定するためにマイクロ突起を介して送信されてもよい。あるいは、色の変化は、固定化したグルコースオキシダーゼの存在下で測定されてもよい。
【0123】
このようなイオン注入装置はリストバンドに組み込まれて、薬物送達、生体液のサンプリングまたはその両方の間、患者によって簡便に装着されてもよい。
【0124】
(検体)
本質的に、任意の薬物、生物活性剤または内因性生化学物質は本発明を用いてサンプリングされ得る。目的の検体は、その検体の血漿濃度と正確に関連し得るレベルで皮膚間質液に存在しなければならないことが唯一の制限である。例としては、限定されないが、グルコース、ナトリウム、カリウム、アルコール、乳酸塩(運動選手にとっては重要)、乱用薬物(例えば、カンナビノイド、アンフェタミン、コカインおよびオピオイド)、およびニコチン代謝産物(例えば、コチニン)ならびに患者が1つ以上の医療状態のために取り得る治療薬物が挙げられる。本発明は特に、狭い治療範囲での薬物に有用である。
【0125】
薬物送達の目的のための用途と同様に、マイクロ突起ベースの装置の特性は、目的物を検出するための所望の特性を達成するように適切に変更されてもよい。送達システムの間、閉ループを形成する、単一装置への機能の送達および検出の両方を組み込むことが可能である。このように、患者のモニタリングおよび薬物送達の反応性は、単一の統合システムから達成され得、それによって、前例のない疾患制御および健康に関連する生活の質の根本的な改善が達成される。
【0126】
(さらなる用途)
マイクロ構造装置の潜在的用途は、経皮薬物送達および間質液サンプリングに限定されない。
【0127】
商業的な目的の非常に多くの予想される用途のうちの1つは、化粧品産業、特に、皮膚科学的および美容的製品であると考えられる。化粧品用化合物または栄養物または種々の皮膚構造改変物質を送達するための本発明のマイクロ突起アレイの使用は、前記薬剤を受ける被験者が、美容整形外科医院を訪れる必要がないため、利点がある。
【0128】
特定の実施形態において、本発明のマイクロ突起は、皮膚に半永久的または永久的にマーキングを適用するため、あるいは皮膚に半永久的な皮膚用の化粧品または他の化粧品用化合物を適用するために使用されてもよい。これは特に、本発明のマイクロ突起アレイを用いることにより、タトゥー用の絵または他の識別、皮膚用の化粧品、調整剤および皮膚の外観に影響を与える可能性のある薬剤の用途(例えば、限定されないが、γアミノ酪産酸(GABA)およびボツリヌス毒素(「Botox」)を含む)が、典型的に、皮膚の真皮層を貫通しないため、有益であり得る。このように、この適用手順は比較的痛みがない。
【0129】
本明細書に記載される技術の適用は、詳細に記載されるものに限定されることを決して意図しない。実際に、この技術の他の使用が当業者に明らかであろう。それらの適用には、限定されないが、組織操作の足場としての使用、生物膜モデルの形成、およびステントを介する活性薬剤の経皮送達が含まれる。本発明は、ここで、添付の図面になされた参照とともに以下の非限定的な実施例においてさらに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】図1は、マイクロモールド突起に使用されるシリコンマスターの部分断面における正面図である(1−シリコンで製造されるマイクロ突起を断面図に示し、2−シリコンで製造される隣接するマイクロ突起を断面図に示し、3−シリコンベースプレート、L1−ベースプレートの上面4より上のマイクロ突起の高さ、D1−マイクロ突起1と2との頂点間の距離)。
【図2】図2は、成形手順の第2の工程における図1のシリコンマスターの外形を複製することを意図する鋳造材料で覆った部分断面における正面図である(4−重ねたシリコーンエラストマー材料、3−シリコンで製造されたマイクロ突起アレイ)。
【図3】図3は、図2の3から取り除かれたエラストマー材料4の部分断面における正面図であり、成形手順の第3の工程におけるマイクロ突起1および2のレリーフ5の断面を示す(5−マイクロ突起のレリーフ、4−エラストマーモールド)。
【図4】図4は、成形手順の第4の工程における図3で調製されたモールド4に導入される鋳造高分子溶液6の部分断面における正面図である(6−鋳造高分子溶液、4−図3に示す調製されたエラストマーモールド)。
【図5】図5は、成形手順の第5の工程における図4のモールドから取り除かれた架橋されたマイクロ突起アレイの部分断面における正面図である(4−高分子マイクロ突起の頂点、8−高分子マイクロ突起の本体、7−支持ベースプレートに沿って測定されるマイクロ突起間の間隔、8−支持高分子ベースプレートの上面)。
【図6】図6は、水和により誘導された外形の変化および薬物拡散の変化を受けた架橋されたマイクロ突起アレイの部分断面における正面図である(10−水和膨張性支持ベースプレート、9−膨張性ベースプレートに沿った水和膨張性マイクロ突起間の間隔、L2−水和膨張性マイクロ突起の高さ、D3−水和膨張性マイクロ突起の最大の厚さの半分、D2−水和膨張性マイクロ突起間の頂点距離)。
【図7】図7は、本発明の原理を用いて構成される架橋されたマイクロ突起アレイの部分断面における正面図であり、有用な物質を送達するための経皮送達システムの一部を形成する(11−保護バッキング層、12−医薬ビヒクルに溶液または懸濁液のいずれかとして有用な物質を含むリザーバー、13−架橋されたマイクロ突起アレイ、14−皮膚の角質層、15−生存表皮)。
【図8】図8は、本発明の原理を用いて構成され、図7に示す架橋されたマイクロ突起アレイの部分断面における正面図であり、水和により誘導された物理的特性の変化を受けている(11−保護バッキング層、12−医薬ビヒクルに溶液または懸濁液のいずれかとして有用な物質を含むリザーバー、16−水和により誘導された外形の変化および薬物拡散の変化を受けた架橋されたマイクロ突起アレイ、14−皮膚の角質層、15−生存表皮)。
【図9】図9は、ブタの皮膚から除去された後の膨張性ポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)マイクロニードル(A)を示し、膨張性マイクロニードルのマトリクスを介する蛍光化合物メソ−テトラ(N−メチル−4−ピリジル)ポルフィンテトラトシレート(MW1363.6Da)の拡散も示す。
【図10】図10は、ポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)マイクロニードル層、水、ポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸)およびトリプロピレングリコールモノメチルエーテルからなるマトリクス型薬物リザーバー、ならびに医薬グレードのポリ(塩化ビニル)からなる不浸透性バッキング層からなる一体型経皮パッチシステムを示す。
【図11】図11は、一体型ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)(PMVMA)マイクロニードル(MN)アレイを用いるものと用いないものの19.0mgのTMP cm−2を含む水性ベースのマトリクス型薬物リザーバーからの完全な厚さのマウスの皮膚を通過するメソ−テトラ(N−メチル−4−ピリジル)ポルフィンテトラトシレート(TMP)の送達を示す。
【図12】図12は、一体型ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)(PMVMA)マイクロニードル(MN)アレイを用いるものと用いないものの38,000μgのALA cm−2を含む水性ベースのマトリクス型薬物リザーバーからの完全な厚さのマウスの皮膚を通過する5−アミノレブリン酸(ALA、MW167Da)の累積輸送を示す。
【図13】図13は、10,000μgのBSA cm−3を含む水性の液体薬物リザーバーに取り付けられたポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)(PMVMA)マイクロニードル(MN)での穿刺後、角質層モデルとして一般に使用されるSilescol(登録商標)膜を通過するウシ血清アルブミン(BSA、MW66,000Da)の累積輸送を示す。
【図14】図14は、PMVE/MAおよびPEGならびに他の一般に使用される親水性ポリマー、すなわち、アミロペクチン、CMC、ポリ(HEMA)、PVAおよびHECから製造されるフィルムのポリマー濃度を示す。
【図15】図15Aは、TA−XT2テクスチャ分析器の概略図を示す。図15Bは、分解前後のポリマーフィルム、分解後に移動した距離、およびTA−XT2テクスチャ分析器を用いてフィルムの分解点での偏向の角度を示す概略図である。
【図16】図16は、アミロペクチン、CMC、ポリ(HEMA)、PVAおよびHECの膨張の割合を示す。
【図17】図17は、PMVE/MAおよびPEG(2:1)の架橋フィルムの膨張の割合を示す。
【図18】図18は、アミロペクチン、CMC、ポリ(HEMA)、PVA、HECおよびPMVE/MAとPEGとの架橋フィルムの座屈強度を示す。
【図19】図19は、PMVE/MAとPEGとの架橋フィルム、アミロペクチン、CMC、ポリ(HEMA)、PVAおよびHECから製造される高分子マイクロ突起アレイの機械的強度を示す。
【図20】図20は、調製時(左側の画像)およびTA−XT2テクスチャ分析器での機械的試験後(右側の画像)の高分子マイクロニードルアレイを示す。
【図21】図21は、ヒトボランティア(n=5)の角質層でシリコンマイクロニードルアレイを用いる経表皮水分喪失(TEWL)の測定を示す。
【図22】図22A〜Fは、柔軟性のあるスラブ型マイクロニードルアレイ(A、B)、ならびに折り畳んだ位置(C、D)および拡大した位置(E、F)でのステントの正面図および断面図を示す。
【図23】図23A〜Fは、剛性の単一のフィルム型マイクロニードルアレイ(A、B)、ならびに折り畳んだ位置(C、D)および拡大した位置(E、F)でのステントの正面図および断面図を示す。
【実施例】
【0131】
(実施例1.ヒドロゲルを形成することが公知のポリマーからのマイクロ突起アレイの調製)
膨張性ポリマーから構成されるマイクロ突起アレイの調製を図1〜6に概略的に示す。図7は、本発明の原理を用いて構成され、有益な物質を送達するための経皮送達システムの一部を形成する架橋されたマイクロ突起アレイを示す。図8は、本発明の原理を用いて構成され、図7に示す架橋されたマイクロ突起アレイ上の水和の効果を示し、水和により誘導される物理的特性の変化を示す。構成要素のシリコンマイクロニードルアレイを、水酸化カリウムエッチングを用いるウェットエッチングプロセスを用いて調製した。次いで、このようなアレイを、適切な円形のモールド中で液体ポリ(ジメチルシロキサン)エラストマーで覆った。次いで、そのエラストマーを硬化(60℃、2時間)し、シリコンアレイを除去して、マイクロモールドを得た。次いで、このマイクロモールドを、20%w/wポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)および10%w/wグリセロールを含む水性ゲルで充填した。そのマイクロモールドを外側が円形のモールドに入れ、蓋を付けた。全てのアセンブリを遠心分離(3600g,15分)して、完全な充填を確実にした。蓋をはずし、水を蒸発させた。次いで、複製したポリマーアレイを、4時間、60℃まで加熱することによって架橋して、エステル反応を開始した(McCarronら(2004),J Appl Polym Sci,91,1576−1589)。このように、架橋されたポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)マイクロニードルを生成した。
【0132】
(実施例2.皮膚におけるマイクロ突起アレイの膨張および膨張したマイクロ突起のマトリクスを介する薬物拡散の研究)
ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)マイクロニードルを、穏やかな圧力によって新生(生後28日未満)のブタの皮膚に挿入し、4時間後に取り除き、その後、光学顕微鏡を用いて可視化した(図9A)。同様の実験において、19.0mg cm−2の蛍光増感剤メソ−テトラ(N−メチル−4−ピリジル)ポルフィンテトラトシレート(MW 1363.6Da)を含む水性マトリクスタイプの薬物リザーバー(図10)を取り付けたポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)マイクロニードルを、穏やかな圧力によって新生(生後28日未満)のブタの皮膚に挿入し、4時間後に取り除き、その後、光学顕微鏡を用いて可視化した(図9B)。これにより、マイクロ突起の基部要素に取り付けられたリザーバーに含まれる薬物が、膨張性ヒドロゲルを介して拡散できることが確実に実証される。拡散しているメソ−テトラ(N−メチル−4−ピリジル)ポルフィンテトラトシレートは、全てのマイクロニードルに対して特徴的な赤色蛍光を与える。
【0133】
(実施例3.全層皮膚を通す大きな水溶性薬物の送達)
光増感剤薬物メソ−テトラ(N−メチル−4−ピリジル)ポルフィンテトラトシレート(TMP)(MW 1363.6Da)の物理化学特性(MW>600Da、非常に水溶性)は、皮膚の角質層障壁を通して効果的に輸送するのに適さない。この研究において、19.0mgのTMP cm−2を含むマトリクスタイプの薬物リザーバーを調製し、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)(PMVMA)マイクロニードルアレイに取り付けた。このシステムは、フランツ型拡散セル内で障壁膜として埋め込まれたマウスの皮層角質層に穏やかな圧力によって圧力を加えた。リザーバー部分に現れるTMPを、25時間にわたって蛍光分光により測定した。その結果を図11に示し、皮層角質層を通すTMPの持続性送達が可能であることを示す。重要なことは、これにより、ヒドロゲルマイクロニードルが、長時間、角質層の開口部において穿刺孔を維持し、膨張性ヒドロゲルマイクロニードルの圧縮または閉塞が起こらないことが示されることである。
【0134】
(実施例4.全層皮膚を通す小さな非常に水溶性薬物の送達)
実施例3に記載したものと同一の実験を再び実施した。唯一異なるのは、TMPの代わりに小さな非常に水溶性の光増感剤前駆体5−アミノレブリン酸(ALA、MW 167Da)を使用したことであった。ALAは、正常な角質層にわたって不十分な浸透を示すことが周知である。38,000μgのALA cm−2を含む水性マトリクスタイプの薬物リザーバーからの迅速、かつ非常に向上した、マウスの角質層を通すALA送達を、一体化したポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)マイクロニードルアレイを用いて観測した(図12)。
【0135】
(実施例5.モデル膜を通す大きなタンパク質の送達)
ペプチドおよびタンパク質薬物の高分子量および水溶性により、有用な経皮投与ができなくなる。しかしながら、この実施例において、角質層模倣物として世界中で使用されているSilescol(登録商標)膜を通す顕著なレベルの大きなタンパク質のウシ血清アルブミン(BSA、MW66,000Da)の送達は、10,000μgのBSA cm−3を含む水性液体薬物リザーバーに取り付けられたポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸−co−グリセリド)(PMVMA)マイクロニードル(MN)を用いることにより可能であることを示した(図13)。
【0136】
(実施例6.PMVE/MAおよびPEGならびに他の一般に使用される親水性ポリマーから調製されたマイクロニードルアレイの機械的特性と膨張特性の比較)
以下の実施例は、ポリ(メチル/ビニル/エーテル/マレイン酸)(PMVE/MA)または多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール(ポリ(エチレングリコール))(PEG))を用いて必要に応じて架橋された同様の関連するポリマー(例えば、ポリ(メチル/ビニルエーテル/無水マレイン酸))の水性ゲルから調製されたマイクロニードルアレイが、他の一般に使用される親水性ポリマーから調製されたマイクロニードルアレイより特に良好な機械的および膨張特性を示す多くの実験を記載する。
【0137】
(方法)
1.高分子フィルムの調製
(a)PMVE/MAおよびPEGからの架橋フィルムの調製
2:1のポリマー:架橋剤の比で(10%、15%、および20%w/wで)PMVE/MAおよびPEG10,000を含む水性ゲルを調製し、ゲルを、ステンレス製クランプを用いてPerspexベースプレートに固定したリリースライナー(シリコン処理した側部)からなるモールドにゆっくり注ぐことによってフィルムを調製した。そのゲルを、ラベルした表面に置くことによってモールド領域にわたって均一に分散させ、室温で48時間乾燥させてフィルムを生成した。次いで、それらを24時間、80℃で架橋(「硬化」)した。
【0138】
(b)他の高分子フィルムの調製
5つの異なる親水性ポリマー(アミロペクチン、カルボキシメチルセルロース、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシルエチルセルロースおよびポリ(HEMA))を、膨張特性の調査のために選択した。フィルムを、2時間、80℃にて、適切な三面立体モールドにおいて、2%w/wの開始剤である過酸化ベンゾイルおよび5%w/wの架橋剤であるエチレングリコール−ジメタクリレートを含む、液体HEMAモノマーを加熱することにより調製したポリ(HEMA)を除いて、図14のポリマー濃度を用いて上記のように調製した。
【0139】
(膨張性研究)
各タイプのフィルムのセグメント(1.0cm2)はそれらの初期重量を有した。すなわち初期重量をm0と記録した。次いで、そのフィルムサンプルを、室温で30mlの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)中で膨張させた。一定の間隔で、フィルムセグメントを取り除き、過剰な表面の水を取り除くために濾紙で拭い、それらの膨張した重量、すなわちmtを記録した。次いで、膨張の割合を式1:
【数1】
を用いて決定した。
【0140】
(フィルムの座屈試験)
各々のフィルム形成を破損するのに必要とする力を、2.0Kgの負荷重量で事前に較正したTA−XT2テクスチャ分析器(Stable Microsystems,Haslemere,UK)を用いて試験した(図15A)。フィルムセグメント(1.0cm×1.5cm)をステージに固定し、そのフィルムが中央で破損するまで、プローブを2.0mm/秒の速度で動かした(図15B)。
【0141】
(マイクロニードルアレイの調製および機械的試験)
マイクロニードルアレイを、上記に概説したゲル調製物を用いて調製した。そのようなゲルを、シリコンマイクロ突起アレイマスターテンプレートを用いて製造された反対のポリ(ジメチルシロキサン)モールドに入れて、遠心分離した(3600g、15分)。次いで形成されたポリマーアレイを、48時間、周囲条件で乾燥させた。ポリ(HEMA)マイクロニードルアレイを、高分子フィルムについて上記の改変した技術を用いて調製した。次いで、PEG10,000を用いて調製したアレイを、24時間、80℃で架橋した。
【0142】
高分子マイクロニードルの機械的破壊に必要な力を測定するために、テクスチャ分析器を再度利用した。軸圧縮負荷(すなわち、垂直のマイクロニードル軸に平行に付与された力)を、アレイの構造で生じる変化を推定するためにアレイに加えた。マイクロニードルアレイを、両面粘着テープを用いて移動試験プローブに取り付けた。試験装置により、30秒間、0.05Nの既知の力で0.5mm/sの速度にて9.2cm×5.2cm寸法のアルミニウムの平らなブロックに対してアレイに圧力を加えた。予備試験および事後試験の速度を1.0mm/sにし、トリガー力を0.049Nに設定した。破壊試験前に、各アレイの全てのマイクロニードルを、倍率180倍でデジタル顕微鏡(GE−5デジタル顕微鏡、View Solutions Inc,オンタリオ州,カナダ)を用いて試験した。破壊試験後、全てのマイクロニードルもまた、付与された力の影響を測定し、記録した画像を表すために同じ方法で可視化した。試験後にマイクロニードルの高さを、顕微鏡ソフトウェアのルーラー機能を用いて測定し、それにより、マイクロニードルの高さの変化の割合が計算できる。データを、マイクロニードルを変形させるのに必要とする1つのマイクロニードルあたりの力として報告した。機械的破壊試験のために使用した全てのマイクロニードルは280μmの高さであり、一定のチップの半径、壁の厚さおよび壁の角度を有した。
【0143】
図16は、アミロペクチンおよびCMCから調製されたフィルムにおいてわずかな膨張が観測されたことを示し、次いでそれらを6時間以内に溶解した。HECフィルムは膨張しなかったが、15分以内に急速に溶解した。ポリ(HEMA)フィルムは、比較的ゆっくり膨張し、6時間後に46%の重量が増加したのみであった。PVAフィルムは、6時間後に4倍の重量になった。対照的(図17)に、PEG10,000で架橋したPMVE/MAから調製したフィルムは、急速な膨張を示した。これは特に、10%w/wPMVE/MAを含むゲルから調製したフィルムにおいて明らかであり、わずか15分後にほぼ2倍の重量になった。6時間で、PEG10,000で架橋したPMVR/MAから調製したフィルムは、それらの元の重量より10倍以上増加した。
【0144】
アミロペクチンおよびCMCから調製したフィルムは、乾燥時に感知できる程度の収縮を示し、形成されたフィルムは極度に硬く、かなりの歪みを示した。PVAおよびヒドロキシメチルセルロース(HEC)から調製したフィルムは硬くなく、かなり柔軟性があった。架橋後、PEG10,000で架橋されたPMVE/MAから調製された膜は、自然の状態で柔軟性がなく、硬く、剛性であった。アミロペクチンフィルムは比較的もろく、機械的試験に供さなかった。CMCフィルムは、ポリ(HEMA)フィルム(4.0N)と対照的に、破壊するのにかなりの力(77.0N)を必要とし、かなり強固であった。自然の状態でもろくないPEG10,000で架橋されたPMVE/MAから調製されたフィルムを破壊するのに必要とする力は、元のゲル内のポリマー含有量を増加させると増加した(図18)。
【0145】
PEG(この場合、PEG10,000)で架橋されたPMVE/MAから調製したマイクロニードルアレイは完全に形成され、元のシリコン構造の良好な複製を与えた。歪みまたは垂下は観測されなかった。図19から見られ得るように、このようなマイクロニードルアレイは、所定の付与された力について高さの減少がより低いことによって証明されるように他のポリマーから調製されたものよりかなり大きな機械的強度を示した。重要なことに、PEGで架橋されたPMVE/MAから調製されたマイクロニードルアレイは破砕しなかった。これは、ポリ(HEMA)から調製されたものと対照的であり、図20に示すように隣に最適な機械的強度を示した。図20(A〜F)は、調製時(左側の画像)およびTA−XT2テクスチャ分析器を用いる機械的試験後(右側の画像)の高分子マイクロニードルアレイを示す。アミロペクチンからなるマイクロニードルは鋭いが、薄く、一方、基部が不均一に変形し、波形であり、壊れやすい(図20A)。CMCから作製されたものは、マイクロニードルチップがわずかに片側の方へ曲がるが、基部は、くぼまずに均一であることを示す(図20B)。HECマイクロ突起は薄く、わずかに曲がり、基部は非常に柔軟性があり、薄い(図20C)。pHEMAMNから調製されたそれらのマイクロニードルは、平らな基部を有し適切に鋭くなっている;しかしながら、チップは力の適用時に粉砕される(図20D)。PVAマイクロニードルは、鋭く、適切に形成されるが、その基部は、波形であり、多くの気泡を有し不均一である(図20E)。PMVE/MA20%:PEG10,000からなるそれらのマイクロニードルは、均一である平らな基部を有して完全に形成され、一定の形であり、力の付与の際にわずかに曲がる(図20F)。これらのマイクロニードルはインタクトなままである。
【0146】
高分子マイクロニードルアレイは、角質層を刺すために硬くなければならないが、適用時に破損または曲がってはいけない。好ましくは、いったん挿入されると、それらは、急速に膨張し、溶解せずに有意な程度まで、それらの膨張マトリクスを介して持続性薬物送達を可能にする。本発明は、ここで、PMVE/MAなどのGantrez(登録商標)型ポリマーが、必要に応じて、例えば、PEG10,000で架橋され、膨張性能力、機械的強度、マイクロニードルアレイの形成および形成されたアレイの強度の観点で特に優れた材料であることを完全に証明した。試験された材料、PEG10,000で架橋されたPMVE/MAは、本明細書に記載されるマイクロニードルアレイに使用するために最も理想的な材料の品質を有することを示すが、本発明に使用するために特許請求されるポリマーのいずれかが、必要に応じて、例えば、PEG10,000などの多価アルコールで架橋され、このようなマイクロニードル(すなわち、マイクロ突起)アレイに使用するために適用されることが想定される。
【0147】
(実施例7.TEWLの測定を用いるシリコンマイクロニードルアレイでの角質層浸透性の評価)
ヒトのボランティア(n=5)による予備実験により、約5分以内に角質層近くにマイクロ突起によりつくられた孔が示された。1cm2あたり、100マイクロニードルを有するシリコンマイクロニードルアレイを、指の圧力のみを用いてボランティアの腕の上部に30秒間付与した。各マイクロニードルはピラミッド形であり;約250μmの基部の幅および約280μmの高さを有する。角質浸透性を、このような目的のために世界中で使用される技術である、経表皮水分喪失(TEWL)の測定を用いて評価した。その結果はTEWLの一時的増加のみを示し、すぐに正常に戻る(図21)。このように、適用され、取り除かれるシステムに基づいたシリコンマイクロニードルに関する問題が生じる場合がある。
【0148】
(実施例8:ステント)
図22(A〜C)は本明細書に記載される本発明の実施形態を示し、柔軟性のあるスラブ型のマイクロニードルアレイを備えるステントを示す。図22は、本明細書に記載される柔軟性のあるスラブ型マイクロニードルアレイ(1)の正面図(A)および断面図(B)を示す。断面図(A)は、マイクロニードルアレイの凸面屈曲を示す。図22Cは、金属ガイドワイヤ(4)によってステント(3)内に一体化された金属フレームのステント(3)および図22Aの柔軟性のあるスラブ型マイクロニードル(1)を含む折り畳んだ位置のステントの正面図を示す。図22Dは図22Cの断面図を示し、ステント(3)の外部周辺より下の図22Aの凸面アレイ(2)を示し、凸面アレイ(2)は、金属ガイドワイヤ(4)に支持される。
【0149】
図22Eは、バルーンで膨らませた拡大した位置におけるステント(3)の正面図であり、図22Fは、図22Eの断面図であり、ステント(3)のフレーム拡大後の平らになったアレイ(5)を示す。ここで、マイクロニードルは、外部周辺を越えて突出する。
【0150】
図23(A〜F)は本明細書に記載される本発明のステントの改変を示し、剛性の単一のファイル型のマイクロニードルアレイストリップを備えるステントを示す。図23は、剛性の単一のファイル型のマイクロニードルアレイストリップの正面図(A)および断面図(B)を示す。
【0151】
図23Cは、金属フレームステント(3)および金属ガイドワイヤ(4)によって前記金属フレームステント(3)内に一体化された図23Aの3つの剛性の単一のファイル型マイクロニードルアレイストリップ(1)を備える、折り畳んだ位置におけるステントの正面図を示す。図23Dは図23Cの断面図を示し、ステント(3)の周辺より下のマイクロニードルストリップ(1)を示し、マイクロニードルストリップ(1)は金属ガイドワイヤ(4)により支持される。
【0152】
図23Eおよび23Fは、それぞれ、バルーンで膨らませた拡大位置におけるステント(3)の正面図および断面図を示す。図23Fは、フレーム拡大後の持ち上げられたストリップ(5)を示す。ここで、マイクロニードルは、外部周辺を越えて突出する。
【0153】
本明細書に参照される全ての文献は、本明細書において参照により援用される。本発明の実施形態に対して記載される種々の改変および変更は、本発明の範囲および趣旨から逸脱せずに当業者に明らかになるだろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して記載されているが、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことは理解されるべきである。実際に、本発明を実施する記載された方法の種々の改変は、当業者に明らかであり、本発明に含まれることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的障壁を通して物質の輸送に使用するためのマイクロ突起アレイであって、前記アレイは、膨張性ポリマー組成物からなる複数のマイクロ突起を含む、マイクロ突起アレイ。
【請求項2】
前記マイクロ突起は、哺乳動物の皮膚の角質層を穿刺することができ、使用中、前記皮膚への挿入時に、前記マイクロ突起が膨張する、請求項1に記載のマイクロ突起アレイ。
【請求項3】
前記ポリマーは、ヒドロゲルである、請求項1または2に記載のマイクロ突起アレイ。
【請求項4】
前記ポリマーは、架橋ポリマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイ。
【請求項5】
前記アレイは、複数のマイクロ突起の群を含み、前記マイクロ突起の群の各々は、互いの群のものとサイズおよび/または組成が異なる、請求項4に記載のマイクロ突起アレイ。
【請求項6】
前記マイクロ突起の第1の群は、前記マイクロ突起の第2の群の架橋剤とは異なる少なくとも1つの架橋剤を含む、請求項5に記載のマイクロ突起アレイ。
【請求項7】
前記マイクロ突起は、1〜3000μmの高さである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイ。
【請求項8】
前記マイクロ突起は、50〜300μmの直径を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイ。
【請求項9】
前記ポリマーは、例えば、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)およびポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸無水物)のうちの1つから選択される、Gantrez型ポリマーである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイ。
【請求項10】
前記ポリマー組成物は、活性剤を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイを含む、経皮送達装置。
【請求項12】
リザーバーまたはマトリクスをさらに含み、前記リザーバーまたは前記マトリクスは活性剤を含む、請求項11に記載の経皮送達装置。
【請求項13】
使用中、前記マイクロ突起アレイの皮膚への挿入時に、前記活性剤が、前記マイクロ突起を介して前記リザーバーまたは前記マトリクスから前記皮膚まで移動する、請求項12に記載の経皮送達装置。
【請求項14】
前記活性剤は、前記マイクロ突起を介して前記リザーバーまたは前記マトリクスから前記皮膚までイオン注入により移動する、請求項11〜13のいずれか1項に記載の経皮送達装置。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイを含む、イオン注入装置。
【請求項16】
皮膚を通して、または皮膚の中に薬剤を送達する方法であって、
請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイを提供する工程と、
前記マイクロ突起アレイを前記皮膚に適用することによって、前記マイクロ突起が、角質層を通して、または角質層の中に突出する工程と、
前記マイクロ突起を膨張させる工程と、
前記マイクロ突起を介して前記皮膚に前記薬剤を流入させる工程と、
を含む、薬剤を送達する方法。
【請求項17】
皮膚間質液中の検体をサンプリングする方法であって、前記方法は、
a.請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイを提供する工程と、
b.前記マイクロ突起アレイを前記皮膚に適用して、前記マイクロ突起が、角質層を通して突出する工程と、
c.前記マイクロ突起を膨張させる工程と、
d.前記マイクロ突起を介して前記皮膚から回収チャンバに検体を流入させる工程と、
e.前記回収チャンバ中の前記検体の存在を検出する工程と、
を含む、検体をサンプリングする方法。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイ、請求項11〜14のいずれか1項に記載の経皮送達装置、または請求項15に記載のイオン注入装置により、活性剤を必要とする被験体に投与する工程を含む、処置方法。
【請求項19】
活性剤を必要とする被験体の皮膚に投与するための請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイ、請求項11〜14のいずれか1項に記載の経皮送達装置、または請求項15に記載のイオン注入装置の使用。
【請求項20】
前記活性剤は、薬物、化粧品化合物または栄養物である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の1つ以上のマイクロ突起アレイを含む、血管内送達装置。
【請求項22】
前記装置は、前記マイクロ突起アレイを、標的とする内腔表面に送達するための支持手段をさらに含む、請求項21に記載の血管内送達装置。
【請求項23】
前記支持手段は、使用中、前記血管内送達装置の引き抜き時に、前記支持手段が、血管に支持機能を提供するように前記血管内の位置に残ったままになるように配置される、請求項22に記載の血管内送達装置。
【請求項24】
前記支持手段は、折り畳み可能な金属フレームを備える、請求項21〜23のいずれか1項に記載の血管内送達装置。
【請求項25】
前記装置は、カテーテルまたはステントを含む、請求項21〜24のいずれか1項に記載の血管内送達装置。
【請求項26】
組織を浸透することによって活性剤を送達する方法であって、
請求項21〜25のいずれか1項に記載の血管内送達装置を提供する工程と、
前記血管内送達装置を、マイクロ突起アレイが前記血管壁組織に接触する標的血管に導入し、それにより、前記マイクロ突起が、前記血管壁を通して、または前記血管壁内に突出する工程と、
前記マイクロ突起を介して、前記血管壁を通して、または前記血管壁内に、前記活性剤を流入させる工程と、を含む、活性剤を送達する方法。
【請求項27】
請求項21〜25のいずれか1項に記載の血管内送達装置を介して、活性剤を必要とする被験体に投与する工程を含む、疾患、例えば、心臓血管疾患を処置する方法。
【請求項28】
活性剤を必要とする被験体の組織に投与するための請求項21〜25のいずれか1項に記載の血管内送達装置の使用。
【請求項29】
上述に実質的に記載されるマイクロ突起アレイ。
【請求項30】
1つ以上の添付の図面を参照して、上述に実質的に記載されるマイクロ突起アレイ。
【請求項31】
上述に実質的に記載される経皮送達装置。
【請求項32】
1つ以上の添付の図面を参照して、上述に実質的に記載される経皮送達装置。
【請求項33】
上述に実質的に記載される血管内送達装置。
【請求項34】
1つ以上の添付の図面を参照して、上述に実質的に記載される血管内送達装置。
【請求項1】
生物学的障壁を通して物質の輸送に使用するためのマイクロ突起アレイであって、前記アレイは、膨張性ポリマー組成物からなる複数のマイクロ突起を含む、マイクロ突起アレイ。
【請求項2】
前記マイクロ突起は、哺乳動物の皮膚の角質層を穿刺することができ、使用中、前記皮膚への挿入時に、前記マイクロ突起が膨張する、請求項1に記載のマイクロ突起アレイ。
【請求項3】
前記ポリマーは、ヒドロゲルである、請求項1または2に記載のマイクロ突起アレイ。
【請求項4】
前記ポリマーは、架橋ポリマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイ。
【請求項5】
前記アレイは、複数のマイクロ突起の群を含み、前記マイクロ突起の群の各々は、互いの群のものとサイズおよび/または組成が異なる、請求項4に記載のマイクロ突起アレイ。
【請求項6】
前記マイクロ突起の第1の群は、前記マイクロ突起の第2の群の架橋剤とは異なる少なくとも1つの架橋剤を含む、請求項5に記載のマイクロ突起アレイ。
【請求項7】
前記マイクロ突起は、1〜3000μmの高さである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイ。
【請求項8】
前記マイクロ突起は、50〜300μmの直径を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイ。
【請求項9】
前記ポリマーは、例えば、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)およびポリ(メチル/ビニルエーテル/マレイン酸無水物)のうちの1つから選択される、Gantrez型ポリマーである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイ。
【請求項10】
前記ポリマー組成物は、活性剤を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイを含む、経皮送達装置。
【請求項12】
リザーバーまたはマトリクスをさらに含み、前記リザーバーまたは前記マトリクスは活性剤を含む、請求項11に記載の経皮送達装置。
【請求項13】
使用中、前記マイクロ突起アレイの皮膚への挿入時に、前記活性剤が、前記マイクロ突起を介して前記リザーバーまたは前記マトリクスから前記皮膚まで移動する、請求項12に記載の経皮送達装置。
【請求項14】
前記活性剤は、前記マイクロ突起を介して前記リザーバーまたは前記マトリクスから前記皮膚までイオン注入により移動する、請求項11〜13のいずれか1項に記載の経皮送達装置。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイを含む、イオン注入装置。
【請求項16】
皮膚を通して、または皮膚の中に薬剤を送達する方法であって、
請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイを提供する工程と、
前記マイクロ突起アレイを前記皮膚に適用することによって、前記マイクロ突起が、角質層を通して、または角質層の中に突出する工程と、
前記マイクロ突起を膨張させる工程と、
前記マイクロ突起を介して前記皮膚に前記薬剤を流入させる工程と、
を含む、薬剤を送達する方法。
【請求項17】
皮膚間質液中の検体をサンプリングする方法であって、前記方法は、
a.請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイを提供する工程と、
b.前記マイクロ突起アレイを前記皮膚に適用して、前記マイクロ突起が、角質層を通して突出する工程と、
c.前記マイクロ突起を膨張させる工程と、
d.前記マイクロ突起を介して前記皮膚から回収チャンバに検体を流入させる工程と、
e.前記回収チャンバ中の前記検体の存在を検出する工程と、
を含む、検体をサンプリングする方法。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイ、請求項11〜14のいずれか1項に記載の経皮送達装置、または請求項15に記載のイオン注入装置により、活性剤を必要とする被験体に投与する工程を含む、処置方法。
【請求項19】
活性剤を必要とする被験体の皮膚に投与するための請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロ突起アレイ、請求項11〜14のいずれか1項に記載の経皮送達装置、または請求項15に記載のイオン注入装置の使用。
【請求項20】
前記活性剤は、薬物、化粧品化合物または栄養物である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の1つ以上のマイクロ突起アレイを含む、血管内送達装置。
【請求項22】
前記装置は、前記マイクロ突起アレイを、標的とする内腔表面に送達するための支持手段をさらに含む、請求項21に記載の血管内送達装置。
【請求項23】
前記支持手段は、使用中、前記血管内送達装置の引き抜き時に、前記支持手段が、血管に支持機能を提供するように前記血管内の位置に残ったままになるように配置される、請求項22に記載の血管内送達装置。
【請求項24】
前記支持手段は、折り畳み可能な金属フレームを備える、請求項21〜23のいずれか1項に記載の血管内送達装置。
【請求項25】
前記装置は、カテーテルまたはステントを含む、請求項21〜24のいずれか1項に記載の血管内送達装置。
【請求項26】
組織を浸透することによって活性剤を送達する方法であって、
請求項21〜25のいずれか1項に記載の血管内送達装置を提供する工程と、
前記血管内送達装置を、マイクロ突起アレイが前記血管壁組織に接触する標的血管に導入し、それにより、前記マイクロ突起が、前記血管壁を通して、または前記血管壁内に突出する工程と、
前記マイクロ突起を介して、前記血管壁を通して、または前記血管壁内に、前記活性剤を流入させる工程と、を含む、活性剤を送達する方法。
【請求項27】
請求項21〜25のいずれか1項に記載の血管内送達装置を介して、活性剤を必要とする被験体に投与する工程を含む、疾患、例えば、心臓血管疾患を処置する方法。
【請求項28】
活性剤を必要とする被験体の組織に投与するための請求項21〜25のいずれか1項に記載の血管内送達装置の使用。
【請求項29】
上述に実質的に記載されるマイクロ突起アレイ。
【請求項30】
1つ以上の添付の図面を参照して、上述に実質的に記載されるマイクロ突起アレイ。
【請求項31】
上述に実質的に記載される経皮送達装置。
【請求項32】
1つ以上の添付の図面を参照して、上述に実質的に記載される経皮送達装置。
【請求項33】
上述に実質的に記載される血管内送達装置。
【請求項34】
1つ以上の添付の図面を参照して、上述に実質的に記載される血管内送達装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20−1】
【図20−2】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20−1】
【図20−2】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2010−540507(P2010−540507A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526360(P2010−526360)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003280
【国際公開番号】WO2009/040548
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(504389636)ザ クイーンズ ユニヴァーシティ オブ ベルファスト (14)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003280
【国際公開番号】WO2009/040548
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(504389636)ザ クイーンズ ユニヴァーシティ オブ ベルファスト (14)
【Fターム(参考)】
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