説明

送電装置、受電装置およびそれを備える車両、電力伝送システム、ならびに電力伝送システムの制御方法

【課題】送電装置から受電装置へ非接触で電力を伝送する電力伝送システムにおいて、送電部に対する受電部の位置ずれを正確に検出する。
【解決手段】送電部130は、電源部110から供給される交流電力を受電部210へ非接触で出力するように構成される。インピーダンス整合器120は、電源部110と送電部130との間に設けられる。ECU160は、送電部130から受電部210への送電状況に基づいて送電部130に対する受電部210の位置ずれを検出する。そして、ECU160は、上記位置ずれ検出の実施前に、通信部170によって車両200から受信した車両200の負荷情報に基づいて、インピーダンス整合器120のインピーダンスを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送電装置から受電装置へ非接触で電力を伝送する電力伝送システムの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
環境に配慮した車両として、電気自動車やハイブリッド自動車などの電動車両が大きく注目されている。これらの車両は、走行駆動力を発生する電動機と、その電動機に供給される電力を蓄える再充電可能な蓄電装置とを搭載する。なお、ハイブリッド自動車は、電動機とともに内燃機関をさらに動力源として搭載した自動車や、車両駆動用の直流電源として蓄電装置とともに燃料電池をさらに搭載した自動車等である。
【0003】
ハイブリッド自動車においても、電気自動車と同様に、車両外部の電源から車載の蓄電装置を充電可能な車両が知られている。たとえば、家屋に設けられた電源コンセントと車両に設けられた充電口とを充電ケーブルで接続することにより、一般家庭の電源から蓄電装置を充電可能ないわゆる「プラグイン・ハイブリッド自動車」が知られている。
【0004】
一方、送電方法として、電源コードや送電ケーブルを用いない非接触電力伝送が近年注目されている。この非接触電力伝送技術としては、有力なものとして、電磁誘導を用いた送電、マイクロ波を用いた送電、および所謂共鳴型の送電の3つの技術が知られている。
【0005】
たとえば、特開2010−141976号公報(特許文献1)は、共鳴型の非接触電力伝送装置を開示する。この非接触電力伝送装置は、交流電源と、交流電源に接続された一次コイルと、一次側共鳴コイルと、二次側共鳴コイルと、負荷(二次電池)が接続された二次コイルとを備え、交流電源と一次コイルとの間に設けられたインピーダンス可変回路をさらに備える。一次コイル、一次側共鳴コイル、二次側共鳴コイル、二次コイルおよび負荷は、共鳴系を構成する。そして、共鳴周波数における共鳴系の入力インピーダンスと、一次コイルより交流電源側のインピーダンスとが合うように、インピーダンス可変回路のインピーダンスが調整される。
【0006】
この非接触電力伝送装置によれば、共鳴コイル間の距離や電力を受ける負荷が変化しても、交流電源の周波数を変更することなく交流電源から負荷へ効率よく電力を供給することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−141976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
送電部(上記公報の一次側共鳴コイル)に対する受電部(二次側共鳴コイル)の位置ずれが生じると、送電部と受電部との間の距離が変化することによりインピーダンスが変化し、送電装置から受電装置(車両)への電力伝送効率が低下する。上記公報に開示される非接触電力伝送装置では、一次側共鳴コイルと二次側共鳴コイルとの間の距離が距離センサによって測定され、その測定結果に基づいてインピーダンス可変回路によりインピーダンスが調整される。しかしながら、送電部と受電部との間の距離を測定する距離センサを別途設けると、設備コストが増加する。
【0009】
そこで、送電装置から受電装置への送電状況(たとえば、送電装置における反射電力の大きさ等)に基づいて送電部に対する受電部の位置ずれを検出することにより、距離センサを不要とすることができる。しかしながら、送電状況は、インピーダンスの調整状況によって変化する。すなわち、インピーダンスの調整と、送電状況に基づく位置ずれの検出とは、相互に影響し合う。このような状況について上記公報では特に検討されていない。
【0010】
それゆえに、この発明の目的は、送電装置から受電装置へ非接触で電力を伝送する電力伝送システムにおいて、送電部と受電部との間の距離を測定する距離センサを設けることなく、送電部に対する受電部の位置ずれを正確に検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明によれば、送電装置は、受電装置へ非接触で電力を出力する送電装置であって、電源部と、送電部と、インピーダンス可変部と、通信部と、制御部とを備える。電源部は、交流電力を生成する。送電部は、電源部から供給される交流電力を受電装置の受電部へ非接触で出力するように構成される。インピーダンス可変部は、電源部と送電部との間に設けられる。通信部は、受電装置において送電装置から受電する負荷に関する負荷情報を受電装置から受信する。制御部は、送電部から受電部への送電状況に基づいて送電部に対する受電部の位置ずれを検出する。制御部は、位置ずれを検出する前に、通信部によって受電装置から受信した負荷情報に基づいてインピーダンス可変部のインピーダンスを調整する。
【0012】
好ましくは、制御部は、位置ずれを検出する処理の実行中、インピーダンスの調整を非実施とする。
【0013】
好ましくは、受電装置の負荷は、再充電可能な蓄電部を含む。負荷情報は、蓄電部の電圧を含む。
【0014】
好ましくは、送電装置は、電源部への反射電力を検出するための検出部をさらに備える。制御部は、反射電力と位置ずれとの予め求められた関係を用いて、検出部により検出される反射電力に基づいて位置ずれを検出する。
【0015】
好ましくは、送電部の固有周波数と、受電部の固有周波数との差は、送電部の固有周波数または受電部の固有周波数の±10%以下である。
【0016】
さらに好ましくは、送電部と受電部との結合係数は0.1以下である。
好ましくは、送電部は、送電部と受電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する磁界と、送電部と受電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて、受電部へ電力を伝送する。
【0017】
また、この発明によれば、送電装置は、受電装置へ非接触で電力を出力する送電装置であって、電源部と、送電部と、インピーダンス可変部と、通信部と、制御部とを備える。電源部は、交流電力を生成する。送電部は、電源部から供給される交流電力を受電装置の受電部へ非接触で出力するように構成される。インピーダンス可変部は、電源部と送電部との間に設けられる。通信部は、受電装置において送電装置から受電する負荷に関する負荷情報を受電装置から受信する。制御部は、送電部から受電部へ調整用電力を送電し、送電部に対する受電部の位置ずれを検出する。制御部は、調整用電力の送電前に、負荷情報を受信してインピーダンス可変部のインピーダンスを調整する。
【0018】
また、この発明によれば、受電装置は、送電装置から非接触で電力を受ける受電装置であって、受電部と、負荷と、通信部とを備える。受電部は、送電装置の送電部から出力される電力を非接触で受電するように構成される。負荷は、受電部によって受電された電力を受ける。通信部は、送電部から受電部への送電状況に基づいて送電部に対する受電部の位置ずれが送電装置において検出される前に、負荷に関する負荷情報を送電装置へ送信する。
【0019】
好ましくは、送電装置は、電源と送電部との間に設けられるインピーダンス可変部によりインピーダンスを調整可能に構成される。送電装置において、位置ずれが検出される処理の実行中、インピーダンスの調整は非実施とされる。
【0020】
好ましくは、負荷は、再充電可能な蓄電部を含む。負荷情報は、蓄電部の電圧を含む。
好ましくは、受電部の固有周波数と、送電部の固有周波数との差は、受電部の固有周波数または送電部の固有周波数の±10%以下である。
【0021】
さらに好ましくは、受電部と送電部との結合係数は0.1以下である。
好ましくは、受電部は、受電部と送電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する磁界と、受電部と送電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて、送電部から受電する。
【0022】
また、この発明によれば、受電装置は、送電装置から非接触で電力を受ける受電装置であって、受電部と、負荷と、通信部とを備える。受電部は、送電装置の送電部から出力される電力を非接触で受電するように構成される。負荷は、受電部によって受電された電力を受ける。通信部は、送電部に対する受電部の位置ずれ検出用に送電部から受電部へ調整電力が送電される前に、負荷に関する負荷情報を送電装置へ送信する。
【0023】
また、この発明によれば、車両は、上述したいずれかの受電装置を備える。
また、この発明によれば、電力伝送システムは、送電装置から受電装置へ非接触で電力を伝送する電力伝送システムである。受電装置は、受電部と、負荷と、第1の通信部とを備える。受電部は、送電装置から出力される電力を非接触で受電するように構成される。負荷は、受電部によって受電された電力を受ける。第1の通信部は、負荷に関する負荷情報を送電装置へ送信する。送電装置は、電源部と、送電部と、インピーダンス可変部と、第2の通信部と、制御部とを備える。電源部は、交流電力を生成する。送電部は、電源部から供給される交流電力を受電部へ非接触で出力するように構成される。インピーダンス可変部は、電源部と送電部との間に設けられる。第2の通信部は、負荷情報を受電装置から受信する。制御部は、送電部から受電部への送電状況に基づいて送電部に対する受電部の位置ずれを検出する。受電装置は、送電装置において位置ずれが検出される前に、第1の通信部によって負荷情報を送電装置へ送信する。制御部は、位置ずれを検出する前に、第2の通信部によって受電装置から受信した負荷情報に基づいてインピーダンス可変部のインピーダンスを調整する。
【0024】
また、この発明によれば、制御方法は、送電装置から受電装置へ非接触で電力を伝送する電力伝送システムの制御方法である。送電装置は、電源部と、送電部と、インピーダンス可変部とを備える。電源部は、交流電力を生成する。送電部は、電源部から供給される交流電力を受電装置へ非接触で出力するように構成される。インピーダンス可変部は、電源部と送電部との間に設けられる。受電装置は、受電部と、負荷とを備える。受電部は、送電部から出力される電力を非接触で受電するように構成される。負荷は、受電部によって受電された電力を受ける。そして、制御方法は、負荷に関する負荷情報に基づいてインピーダンス可変部のインピーダンスを調整するステップと、インピーダンスの調整後、送電部から受電部への送電状況に基づいて送電部に対する受電部の位置ずれを検出するステップとを含む。
【発明の効果】
【0025】
この発明においては、送電部に対する受電部の位置ずれを検出する前に、受電装置において送電装置から受電する負荷に関する負荷情報が受電装置から送電装置へ送信され、その負荷情報に基づいてインピーダンス可変部のインピーダンスが調整される。そして、インピーダンスの調整後、送電部から受電部への送電状況に基づいて位置ずれが検出される。これにより、送電状況が安定した状態で位置ずれの検出が行なわれる。したがって、この発明によれば、送電部と受電部との間の距離を測定する距離センサを設けることなく、送電部に対する受電部の位置ずれを正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態1による電力伝送システムの全体構成図である。
【図2】図1に示すインピーダンス整合器の回路構成の一例を示した回路図である。
【図3】電力伝送システムのシミュレーションモデルを示した図である。
【図4】送電部および受電部の固有周波数のズレと電力伝送効率との関係を示した図である。
【図5】送電装置から車両への電力伝送時の等価回路図である。
【図6】電流源(磁流源)からの距離と電磁界の強度との関係を示した図である。
【図7】蓄電部への充電電流と充電電圧との関係を示した図である。
【図8】スミスチャートと呼ばれる、複素インピーダンスを示す円形の図表である。
【図9】図1に示す送電装置のECUの機能ブロック図である。
【図10】反射電力と位置ずれ量との関係を示した図である。
【図11】図1に示す電力伝送システムにおける調整処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図12】図11に示す位置ずれ検出処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図13】図12に示す停止処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図14】実施の形態2による電力伝送システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0028】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による電力伝送システムの全体構成図である。図1を参照して、この電力伝送システムは、送電装置100と、受電装置としての車両200とを備える。
【0029】
送電装置100は、電源部110と、電力センサ115と、インピーダンス整合器120と、送電部130と、電子制御ユニット(以下「ECU(Electronic Control Unit)」と称する。)160と、通信部170とを含む。
【0030】
電源部110は、所定の周波数を有する交流電力を発生する。一例として、電源部110は、図示されない系統電源から電力を受けて高周波の交流電力を発生する。電源部110は、ECU160から受ける指令に従って、電力の発生および停止ならびに出力電力を制御する。電力センサ115は、電源部110における反射電力を検出し、その検出値をECU160へ出力する。なお、反射電力は、電源部110から出力された電力が反射して電源部110へ戻った電力である。なお、電力センサ115には、電源における反射電力を検出可能な種々の公知のセンサを用いることができる。
【0031】
インピーダンス整合器120は、電源部110と送電部130との間に設けられ、内部のインピーダンスを変更可能に構成される。インピーダンス整合器120は、ECU160から受ける指令に従ってインピーダンスを変更することにより、送電装置100のインピーダンスを車両200のインピーダンスと整合させる(インピーダンスマッチング)。
【0032】
図2は、図1に示したインピーダンス整合器120の回路構成の一例を示した回路図である。図2を参照して、インピーダンス整合器120は、可変コンデンサ122,124と、コイル126とを含む。可変コンデンサ122は、電源部110(図1)に並列に接続される。可変コンデンサ124は、送電部130(図1)に並列に接続される。コイル126は、電源部110と送電部130との間に配設される電力線対の一方において、可変コンデンサ122,124の接続ノード間に接続される。
【0033】
このインピーダンス整合器120においては、ECU160(図1)から受ける指令に従って可変コンデンサ122,124の少なくとも一方の容量が変更されることにより、インピーダンスが変化する。これにより、送電装置100のインピーダンスを車両200のインピーダンスと整合させることができる。
【0034】
なお、特に図示しないが、コイル126を可変コイルで構成し、可変コイルのインダクタンスを変更することによってインピーダンスを変更可能としてもよい。
【0035】
再び図1を参照して、送電部130は、電磁誘導コイル142と、共振コイル144と、キャパシタ146とを含む。電磁誘導コイル142は、共振コイル144と所定の間隔をおいて共振コイル144と略同軸上に配設される。電磁誘導コイル142は、電磁誘導により共振コイル144と磁気的に結合し、電源部110から供給される高周波電力を電磁誘導により共振コイル144へ供給する。
【0036】
共振コイル144は、キャパシタ146とともにLC共振回路を形成する。なお、後述するように、車両200の受電部210においてもLC共振回路が形成される。共振コイル144およびキャパシタ146によって形成されるLC共振回路の固有周波数と、受電部210のLC共振回路の固有周波数との差は、前者の固有周波数または後者の固有周波数の±10%以下である。そして、共振コイル144は、電磁誘導コイル142から電磁誘導により電力を受け、車両200の受電部210へ非接触で送電する。
【0037】
なお、電磁誘導コイル142は、電源部110から共振コイル144への給電を容易にするために設けられるものであり、電磁誘導コイル142を設けずに共振コイル144に電源部110を直接接続してもよい。また、キャパシタ146は、共振回路の固有周波数を調整するために設けられるものであり、共振コイル144の浮遊容量を利用して所望の固有周波数が得られる場合には、キャパシタ146を設けない構成としてもよい。
【0038】
ECU160は、通信部170によって車両200と無線通信することができる。そして、ECU160は、車両200において送電装置100から受電する負荷(具体的には蓄電部280)に関する負荷情報(たとえば蓄電部280の電圧等)を通信部170によって車両200から受ける。また、ECU160は、送電装置100から車両200への送電時、電力センサ115から反射電力の検出値を受ける。
【0039】
そして、ECU160は、予め記憶されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)で実行することによるソフトウェア処理および/または専用の電子回路によるハードウェア処理により、所定の処理を実行する。概略的には、ECU160は、車両200の負荷情報に基づいてインピーダンス整合器120のインピーダンスを調整する。また、ECU160は、電源部110の動作を制御する。さらに、ECU160は、送電装置100から車両200への送電時における反射電力の検出値に基づいて、送電部130に対する車両200の受電部210の位置ずれを検出する。なお、ここでは、送電部130の共振コイル144と受電部210の共振コイル222とは中心軸が互いに略平行になるように配設され、共振コイル144の中心軸と共振コイル222の中心軸とにオフセットが生じていることを「位置ずれ」と称する。
【0040】
ここで、車両200の負荷情報に基づくインピーダンスの調整は、位置ずれ検出の実施前に実行され、位置ずれ検出処理の実行中は、インピーダンス整合器120のインピーダンス調整は非実施とされる。これにより、送電装置100から車両200への送電状況が安定した状態で位置ずれの検出が行なわれる。なお、ECU160の構成については、後ほど詳しく説明する。
【0041】
通信部170は、車両200と通信を行なうための通信インターフェースである。通信部170は、車両200の負荷情報を車両200から受信してECU160へ出力する。また、通信部170は、インピーダンスの調整および位置ずれの検出を含む一連の処理(以下、単に「調整処理」とも称する。)の間、車両200と適宜通信を行なう。
【0042】
一方、車両200は、受電部210と、整流器240と、電圧センサ250と、電流センサ260と、充電リレー270と、蓄電部280と、動力出力装置285と、ECU290と、通信部300とを含む。
【0043】
受電部210は、共振コイル222と、キャパシタ224と、電磁誘導コイル226とを含む。共振コイル222は、キャパシタ224とともにLC共振回路を形成する。上述のように、共振コイル222およびキャパシタ224によって形成されるLC共振回路の固有周波数と、送電装置100の送電部130における、共振コイル144およびキャパシタ146によって形成されるLC共振回路の固有周波数との差は、前者の固有周波数または後者の固有周波数の±10%以下である。そして、共振コイル222は、送電装置100の送電部130から非接触で受電する。
【0044】
電磁誘導コイル226は、共振コイル222と所定の間隔をおいて共振コイル222と略同軸上に配設される。電磁誘導コイル226は、電磁誘導により共振コイル222と磁気的に結合し、共振コイル222によって受電された電力を電磁誘導により取出して整流器240へ出力する。
【0045】
なお、電磁誘導コイル226は、共振コイル222からの電力の取出しを容易にするために設けられるものであり、電磁誘導コイル226を設けずに共振コイル222に整流器240を直接接続してもよい。また、キャパシタ224は、共振回路の固有周波数を調整するために設けられるものであり、共振コイル222の浮遊容量を利用して所望の固有周波数が得られる場合には、キャパシタ224を設けない構成としてもよい。
【0046】
整流器240は、電磁誘導コイル226から出力される電力(交流)を整流する。電圧センサ250は、整流器240から出力される受電電圧Vを検出し、その検出値をECU290へ出力する。電流センサ260は、整流器240から出力される受電電流Iを検出し、その検出値をECU290へ出力する。充電リレー270は、整流器240と蓄電部280との間に設けられる。そして、送電装置100による蓄電部280の充電時、ECU290からの指令に従って充電リレー270がオンされる。
【0047】
蓄電部280は、再充電可能な直流電源であり、たとえばリチウムイオンやニッケル水素などの二次電池によって構成される。蓄電部280は、整流器240から受ける電力を蓄えるほか、動力出力装置285によって発電される回生電力も蓄える。そして、蓄電部280は、その蓄えた電力を動力出力装置285へ供給する。なお、蓄電部280として大容量のキャパシタも採用可能である。
【0048】
動力出力装置285は、蓄電部280に蓄えられる電力を用いて車両200の走行駆動力を発生する。特に図示しないが、動力出力装置285は、たとえば、蓄電部280から電力を受けるインバータ、インバータによって駆動されるモータ、モータによって駆動される駆動輪等を含む。なお、動力出力装置285は、蓄電部280を充電するための発電機と、発電機を駆動可能なエンジンを含んでもよい。
【0049】
ECU290は、受電電圧Vおよび受電電流Iの検出値をそれぞれ電圧センサ250および電流センサ260から受ける。また、ECU290は、蓄電部280の電圧VBを蓄電部280から受ける。なお、蓄電部280の電圧VBは、図示されない電圧センサによって検出される。さらに、ECU290は、通信部300によって送電装置100と無線通信することができる。
【0050】
そして、ECU290は、予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理および/または専用の電子回路によるハードウェア処理により、充電リレー270の制御や、蓄電部280の充電管理等を行なう。また、ECU290は、車両200の負荷情報(蓄電部280の電圧VB等)を通信部300によって送電装置100へ送信する。
【0051】
この電力伝送システムにおいては、送電装置100の送電部130と車両200の受電部210とを電磁界によって共振(共鳴)させることで、送電装置100から車両200へ非接触で電力が伝送される。送電装置100から車両200への送電時、送電装置100において検出される反射電力に基づいて、送電部130に対する受電部210の位置ずれが検出される。
【0052】
また、この電力伝送システムにおいては、車両200において送電装置100から受電する負荷(蓄電部280)に関する負荷情報が車両200から送電装置100へ送信される。そして、上記の位置ずれ検出が行なわれる前に、車両200の負荷情報に基づいてインピーダンス整合器120のインピーダンスが調整される。これにより、送電装置100から車両200への送電状況が安定した状態で、位置ずれ検出を正確に行なうことができる。
【0053】
次に、送電装置100から車両200への電力伝送について説明する。この電力伝送システムにおいては、送電部130の固有周波数と、受電部210の固有周波数との差は、送電部130の固有周波数または受電部210の固有周波数の±10%以下である。このような範囲に送電部130および受電部210の固有周波数を設定することで電力伝送効率を高めることができる。一方、上記の固有周波数の差が±10%よりも大きくなると、電力伝送効率が10%よりも小さくなり、電力伝送時間が長くなるなどの弊害が生じる。
【0054】
なお、送電部130(受電部210)の固有周波数とは、送電部130(受電部210)を構成する電気回路(共振回路)が自由振動する場合の振動周波数を意味する。なお、送電部130(受電部210)の共振周波数とは、送電部130(受電部210)を構成する電気回路(共振回路)において、制動力または電気抵抗を零としたときの固有周波数を意味する。
【0055】
図3および図4を用いて、固有周波数の差と電力伝送効率との関係とを解析したシミュレーション結果について説明する。図3は、電力伝送システムのシミュレーションモデルを示す図である。また、図4は、送電部および受電部の固有周波数のズレと電力伝送効率との関係を示す図である。
【0056】
図3を参照して、電力伝送システム89は、送電部90と、受電部91とを備える。送電部90は、第1コイル92と、第2コイル93とを含む。第2コイル93は、共振コイル94と、共振コイル94に設けられたキャパシタ95とを含む。受電部91は、第3コイル96と、第4コイル97とを備える。第3コイル96は、共振コイル99とこの共振コイル99に接続されたキャパシタ98とを含む。
【0057】
共振コイル94のインダクタンスをインダクタンスLtとし、キャパシタ95のキャパシタンスをキャパシタンスC1とする。また、共振コイル99のインダクタンスをインダクタンスLrとし、キャパシタ98のキャパシタンスをキャパシタンスC2とする。このように各パラメータを設定すると、第2コイル93の固有周波数f1は、下記の式(1)によって示され、第3コイル96の固有周波数f2は、下記の式(2)によって示される。
【0058】
f1=1/{2π(Lt×C1)1/2}・・・(1)
f2=1/{2π(Lr×C2)1/2}・・・(2)
ここで、インダクタンスLrおよびキャパシタンスC1,C2を固定して、インダクタンスLtのみを変化させた場合において、第2コイル93および第3コイル96の固有周波数のズレと電力伝送効率との関係を図4に示す。なお、このシミュレーションにおいては、共振コイル94および共振コイル99の相対的な位置関係は固定とし、さらに、第2コイル93に供給される電流の周波数は一定である。
【0059】
図4に示すグラフのうち、横軸は固有周波数のズレ(%)を示し、縦軸は一定周波数での電力伝送効率(%)を示す。固有周波数のズレ(%)は、下記の式(3)によって示される。
【0060】
(固有周波数のズレ)={(f1−f2)/f2}×100(%)・・・(3)
図4からも明らかなように、固有周波数のズレ(%)が0%の場合には、電力伝送効率は100%近くとなる。固有周波数のズレ(%)が±5%の場合には、電力伝送効率は40%程度となる。固有周波数のズレ(%)が±10%の場合には、電力伝送効率は10%程度となる。固有周波数のズレ(%)が±15%の場合には、電力伝送効率は5%程度となる。すなわち、固有周波数のズレ(%)の絶対値(固有周波数の差)が、第3コイル96の固有周波数の10%以下の範囲となるように第2コイル93および第3コイル96の固有周波数を設定することで、電力伝送効率を実用的なレベルに高めることができることがわかる。さらに、固有周波数のズレ(%)の絶対値が第3コイル96の固有周波数の5%以下となるように第2コイル93および第3コイル96の固有周波数を設定すると、電力伝送効率をさらに高めることができるのでより好ましい。なお、シミュレーションソフトしては、電磁界解析ソフトウェア(JMAG(登録商標):株式会社JSOL製)を採用している。
【0061】
再び図1を参照して、送電部130および受電部210は、送電部130と受電部210との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する磁界と、送電部130と受電部210との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて、非接触で電力を授受する。送電部130と受電部210との結合係数κは0.1以下であり、送電部130と受電部210とを電磁界によって共振(共鳴)させることで、送電部130から受電部210へ電力が伝送される。
【0062】
上記のように、この電力伝送システムにおいては、送電部130と受電部210とを電磁界によって共振(共鳴)させることで、送電部130と受電部210との間で非接触で電力が伝送される。電力伝送における、このような送電部130と受電部210との結合を、たとえば、「磁気共鳴結合」、「磁界(磁場)共鳴結合」、「電磁界(電磁場)共振結合」、「電界(電場)共振結合」等という。「電磁界(電磁場)共振結合」は、「磁気共鳴結合」、「磁界(磁場)共鳴結合」、「電界(電場)共振結合」のいずれも含む結合を意味する。
【0063】
送電部130と受電部210とが上記のようにコイルによって形成される場合には、送電部130と受電部210とは、主に磁界(磁場)によって結合し、「磁気共鳴結合」または「磁界(磁場)共鳴結合」が形成される。なお、送電部130と受電部210とに、たとえば、メアンダライン等のアンテナを採用することも可能であり、この場合には、送電部130と受電部210とは、主に電界(電場)によって結合し、「電界(電場)共鳴結合」が形成される。
【0064】
図5は、送電装置100から車両200への電力伝送時の等価回路図である。図5を参照して、送電装置100において、共振コイル144は、キャパシタ146とともにLC共振回路を形成する。車両200においても、共振コイル222は、キャパシタ224とともにLC共振回路を形成する。そして、共振コイル144およびキャパシタ146によって形成されるLC共振回路の固有周波数と、共振コイル222およびキャパシタ224によって形成されるLC共振回路の固有周波数との差は、前者の固有周波数または後者の固有周波数の±10%以下である。
【0065】
送電装置100において、電源部110から電磁誘導コイル142へ高周波の交流電力が供給され、電磁誘導コイル142を用いて共振コイル144へ電力が供給される。そうすると、共振コイル144と車両200の共振コイル222との間に形成される磁界を通じて共振コイル144から共振コイル222へエネルギー(電力)が移動する。共振コイル222へ移動したエネルギー(電力)は、電磁誘導コイル226を用いて取出され、車両200の負荷350(蓄電部280)へ伝送される。
【0066】
図6は、電流源(磁流源)からの距離と電磁界の強度との関係を示した図である。図6を参照して、電磁界は主に3つの成分から成る。曲線k1は、波源からの距離に反比例した成分であり、「輻射電磁界」と称される。曲線k2は、波源からの距離の2乗に反比例した成分であり、「誘導電磁界」と称される。また、曲線k3は、波源からの距離の3乗に反比例した成分であり、「静電磁界」と称される。
【0067】
「静電磁界」は、波源からの距離とともに急激に電磁波の強度が減少する領域であり、共鳴法では、この「静電磁界」が支配的な近接場(エバネッセント場)を利用してエネルギー(電力)の伝送が行なわれる。すなわち、「静電磁界」が支配的な近接場において、互いに近接する固有周波数を有する一対の共振器(たとえば一対の共振コイル)を共振させることにより、一方の共振器(一次側共振コイル)から他方の共振器(二次側共振コイル)へエネルギー(電力)を伝送する。この「静電磁界」は遠方にエネルギーを伝播しないので、遠方までエネルギーを伝播する「輻射電磁界」によりエネルギー(電力)を伝送する電磁波に比べて、共鳴法は、より少ないエネルギー損失で送電することができる。
【0068】
図7は、蓄電部280への充電電流と充電電圧との関係を示した図である。図7を参照して、線PUは、最大充電電力の定出力線を示し、線PLは、最小充電電力の定出力線を示す。線SLは、蓄電部280の充電状態を示す状態量(以下「SOC(State Of Charge)」と称する。)が下限である定SOC線を示し、線SUは、蓄電部280のSOCが上限である定SOC線を示す。線PU,PLおよび線SL,SUで囲まれる領域Aが充電電圧および充電電流の取り得る範囲となる。線Im1,Im2は、定インピーダンス線の一例である。線Im2に沿うインピーダンスは、線Im1に沿うインピーダンスよりも大きい。
【0069】
たとえば、線PUに沿って最大充電電力で蓄電部280の充電が行なわれる場合、充電が進むにつれてSOCが上昇し、蓄電部280のインピーダンスは上昇する。また、送電装置100から給電を受ける車両が異なれば、送電装置100から見た負荷インピーダンスも異なる。このような状況下で送電装置100から車両200への送電状況に基づいて位置ずれを検出する場合、負荷インピーダンスによって送電状況が異なるので、位置ずれを正確に検出できない可能性がある。
【0070】
図8は、スミスチャートと呼ばれる、複素インピーダンスを示す円形の図表である。このスミスチャートは、インピーダンス整合を設計する際に用いられるものである。図8を参照して、水平軸は複素インピーダンスの実数部を示しており、水平軸の左端は0Ω(短絡)を示し、水平軸の右端は∞Ω(開放)を示す。垂直軸は複素インピーダンスの虚数部を示す。
【0071】
スミスチャートの円の中央部から離れるほど、電源部110への反射電力が大きくなり、電力伝送効率は低下する。そして、インピーダンス整合を行なわない場合、送電装置100からの送電時の負荷である蓄電部280の電圧が高くなるほど、反射電力が大きくなるとともに電力伝送効率は低下する。
【0072】
このように、負荷である蓄電部280の状態によってインピーダンスが変化する。インピーダンスが変化すると送電装置100から車両200への送電状況が変化するので、送電状況に基づく位置ずれ検出も影響を受ける。そこで、この実施の形態1では、位置ずれを検出する前に、車両200の負荷情報(蓄電部280に関する情報)が車両200から送電装置100へ送信され、その負荷情報に基づいて、インピーダンス整合器120を用いてインピーダンスが調整される。一例として、上記のスミスチャートを用いて、円の中央P0のインピーダンスとなるように、可変コンデンサ122,124が調整される。そして、車両200の負荷情報に基づいてインピーダンス整合器120の調整が行なわれた後、送電装置100から車両200への送電(調整用電力)が開始され、送電状況(たとえば反射電力の大きさ)に基づいて位置ずれが検出される。
【0073】
図9は、図1に示した送電装置100のECU160の機能ブロック図である。図9を参照して、ECU160は、通信制御部410と、整合器調整部420と、位置ずれ検出部430と、電力制御部440とを含む。
【0074】
通信制御部410は、通信部170(図1)による車両200との通信を制御する。送電装置100と車両200との間では、送電装置100から車両200への電力伝送に関する様々な情報がやり取りされるが、特に、通信制御部410は、車両200の負荷情報(蓄電部280の情報等)を通信部170によって車両200から受信する。
【0075】
整合器調整部420は、車両200の負荷情報に基づいて、送電装置100のインピーダンスを車両200のインピーダンスと整合させるように、インピーダンス整合器120のインピーダンスを調整する。この整合器調整部420によるインピーダンス調整は、後述の位置ずれ検出部430による位置ずれ検出前に実行される。
【0076】
なお、一例として、車両200の負荷情報は、蓄電部280の電圧VBの検出値を含み、整合器調整部420は、送電装置100から車両200へ送電される電力と電圧VBとから送電電流を算出し、その送電電流と電圧VBとから蓄電部280の負荷インピーダンスを算出する。そして、整合器調整部420は、算出された負荷インピーダンスに送電装置100のインピーダンスを整合させるように、インピーダンス整合器120のインピーダンスを調整する。
【0077】
位置ずれ検出部430は、整合器調整部420によるインピーダンスの調整後、電力センサ115(図1)により検出される反射電力に基づいて、送電部130に対する車両200の受電部210の位置ずれを検出する。この反射電力は、送電部130から受電部210への送電状況を示す。すなわち、反射電力が小さいときは、送電部130から受電部210への送電状況は良好であるものと判断され、反射電力が大きいときは、送電部130から受電部210への送電状況は不良であると判断される。なお、位置ずれ検出の実行時、位置ずれ検出部430は、電力制御部440へその旨を通知する。また、位置ずれ検出の完了時にも、位置ずれ検出部430は、電力制御部440へその旨を通知する。
【0078】
図10は、反射電力と位置ずれ量との関係を示した図である。図10を参照して、整合器調整部420によりインピーダンスが調整されたもとでの位置ずれ量と反射電力との関係が、予めマップ等によって準備される。そして、電力センサ115(図1)による反射電力の検出値に基づいて位置ずれが検出される。
【0079】
すなわち、図10に示したように、位置ずれ量の許容値L1が設定され、その許容値L1に対応する反射電力の許容値P1と、電力センサ115による反射電力の検出値とが比較される。そして、反射電力が許容値P1を超えると、位置ずれの発生が検知される。
【0080】
再び図9を参照して、電力制御部440は、電源部110を制御することによって車両200への送電電力を制御する。ここで、位置ずれ検出部430による位置ずれ検出中は、電力制御部440は、蓄電部280を充電するための本格的な給電時よりも小さい電力(調整用電力)を出力するように電源部110を制御する。
【0081】
図11は、図1に示した電力伝送システムにおける調整処理の手順を説明するためのフローチャートである。図11とともに図1を参照して、まず、送電装置100側の処理について説明する。
【0082】
送電装置100のECU160は、まず、通信部170による車両200との通信を確立する(ステップS10)。次いで、ECU160は、車両200の負荷情報としての蓄電部280の情報を通信部170によって車両200から受信する(ステップS20)。なお、蓄電部280の情報には、たとえば、蓄電部280の電圧VBの検出値やSOC等が含まれる。
【0083】
次いで、ECU160は、ステップS20において受信した蓄電部280の情報に基づいて、送電装置100のインピーダンスを車両200のインピーダンスと整合させるように、インピーダンス整合器120のインピーダンスを調整する(ステップS30)。具体的には、ECU160は、送電装置100から車両200へ送電される電力の設定値と蓄電部280の情報に含まれる電圧VBの検出値とから送電電流を算出し、その送電電流と電圧VBとから負荷である蓄電部280のインピーダンスを算出する。そして、ECU160は、算出された負荷インピーダンスに送電装置100のインピーダンスを整合させるように、インピーダンス整合器120のインピーダンスを調整する。
【0084】
インピーダンスの調整が完了すると(ステップS40においてYES)、ECU160は、調整完了フラグをオンにして車両200へ送信する(ステップS50)。そして、ECU160は、送電装置100の送電部130に対する車両200の受電部210の位置ずれを検出する位置ずれ検出処理を実行する(ステップS60)。この位置ずれ検出処理については、後ほど説明する。
【0085】
一方、車両200においても、ECU290は、まず、通信部300による送電装置100との通信を確立する(ステップS110)。次いで、ECU290は、送電装置100から車両200への充電要求に応じて、充電開始トリガをオンにする(ステップS120)。続いて、ECU290は、車両200の負荷情報としての蓄電部280の情報を通信部300によって送電装置100へ送信する(ステップS130)。そして、ECU290は、充電リレー270をオンにする(ステップS140)。
【0086】
その後、ECU290は、送電装置100においてインピーダンスの調整が完了したことを示す調整完了フラグを送電装置100から受信すると、充電開始フラグをオンにして送電装置100へ送信する(ステップS150)。そして、ECU290は、車両200のECU160とともに、位置ずれ検出処理を実行する(ステップS160)。
【0087】
図12は、図11に示した位置ずれ検出処理の手順を説明するためのフローチャートである。図12を参照して、ECU160は、電源部110を制御することによって、送電装置100から車両200へ調整用電力を出力する(ステップS210)。調整用電力の出力が開始されると、ECU160は、電力センサ115から反射電力の検出値を受ける(ステップS220)。
【0088】
次いで、ECU160は、反射電力が所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS230)。具体的には、反射電力の検出値が、図10に示した許容値P1よりも小さいか否かが判定される。反射電力が所定範囲内であると判定されると(ステップS230においてYES)、ECU160は、位置ずれは小さいものと判定し、電源部110を制御することによって調整用電力の出力を終了する(ステップS240)。その後、ECU160は、電源部110を制御することによって、車両200の蓄電部280を充電するための充電電力を出力する(ステップS260)。これにより、送電装置100から車両200への給電が開始される。
【0089】
ステップS230において反射電力が所定範囲内にないと判定されると(ステップS230においてNO)、ECU160は、送電装置100から車両200への送電を停止するための停止処理を実行する(ステップS250)。
【0090】
図13は、図12に示した停止処理の手順を説明するためのフローチャートである。図13を参照して、送電装置100において、ECU160は、電源部110へ停止指令を出力して車両200への送電を停止する(ステップS310)。次いで、ECU160は、停止処理によって送電が停止されたことについて警報を出力する(ステップS320)。
【0091】
一方、車両200においては、ECU290は、電圧センサ250によって検出される受電電圧Vを監視し、受電電圧Vがしきい値よりも低くなったか否かを判定する(ステップS410)。なお、このしきい値は、送電装置100からの送電が停止されたか否かを判定するためのしきい値であり、十分小さい値に設定される。
【0092】
受電電圧Vがしきい値よりも低くなったと判定されると(ステップS410においてYES)、ECU290は、充電リレー270をオフにする(ステップS420)。そして、ECU290は、停止処理によって送電が停止されたことについて警報を出力する(ステップS430)。
【0093】
以上のように、この実施の形態1においては、送電装置100の送電部130に対する車両200の受電部210の位置ずれを検出する前に、車両200において送電装置100から受電する負荷(蓄電部280)に関する負荷情報が車両200から送電装置100へ送信され、その負荷情報に基づいてインピーダンス整合器120のインピーダンスが調整される。そして、インピーダンスの調整後、送電部130から受電部210への送電状況に基づいて送電部130に対する受電部210の位置ずれが検出される。これにより、送電状況が安定した状態で位置ずれの検出が行なわれる。したがって、この実施の形態1によれば、送電部130と受電部210との間の距離を測定する距離センサを設けることなく、送電部130に対する受電部210の位置ずれを正確に検出することができる。
【0094】
また、位置ずれ検出の実行中は、インピーダンス整合器120のインピーダンス調整は非実施とされるので、インピーダンス調整に伴なう反射電力の変化が位置ずれ検出中に発生することがない。したがって、この点からも、送電部130に対する受電部210の位置ずれを正確に検出することができる。
【0095】
[実施の形態2]
実施の形態1では、インピーダンス整合器は、送電装置100に設けられるものとしたが、車両側に設けてもよい。
【0096】
図14は、実施の形態2による電力伝送システムの全体構成図である。図14を参照して、この電力伝送システムは、送電装置100Aと、受電装置としての車両200Aとを備える。
【0097】
送電装置100Aは、インピーダンス整合器120を含まない点を除いて、図1に示した送電装置100の構成と同じである。車両200Aは、図1に示した車両200の構成において、インピーダンス整合器310をさらに含み、ECU290に代えてECU290Aを含む。
【0098】
インピーダンス整合器310は、受電部210と整流器240との間に設けられ、内部のインピーダンスを変更可能に構成される。インピーダンス整合器310は、ECU290Aから受ける指令に従ってインピーダンスを変更することにより、車両200Aのインピーダンスを送電装置100Aのインピーダンスと整合させる。なお、インピーダンス整合器310の回路構成は、図2に示したインピーダンス整合器120の回路構成と同じである。
【0099】
ECU290Aは、車両200Aの負荷情報(蓄電部280の情報)に基づいて、インピーダンス整合器310のインピーダンスを調整する。また、ECU290Aは、送電装置100Aから車両200Aへの送電時における反射電力の検出値に基づいて、送電装置100Aの送電部130に対する車両200Aの受電部210の位置ずれを検出する。ここで、実施の形態1と同様に、インピーダンス整合器310のインピーダンス調整は、位置ずれ検出の実施前に実行され、位置ずれ検出処理の実行中は、インピーダンス整合器310のインピーダンス調整は非実施とされる。なお、反射電力の検出値は、送電装置100Aから車両200Aへ送信される。
【0100】
ECU290Aのその他の機能は、図1に示した実施の形態1におけるECU290と同じである。なお、反射電力に代えて車両200Aの受電状況(受電電圧Vや受電電力等)に基づいて位置ずれを検出してもよい。この場合には、送電装置100Aから車両200Aへ反射電力の検出値を送信する必要はない。
【0101】
以上のように、この実施の形態2によっても、送電部130に対する受電部210の位置ずれを正確に検出することができる。
【0102】
なお、特に図示しないが、送電装置と車両との双方にインピーダンス整合器を設けてもよい。この場合も、各インピーダンス整合器のインピーダンス調整は、位置ずれ検出の前に実行され、位置ずれ検出処理の実行中は、インピーダンス調整は非実施とされる。
【0103】
なお、上記の実施の形態においては、一例として、蓄電部280の電圧VBに基づいてインピーダンス整合器120(310)のインピーダンスを調整するものとしたが、たとえば、蓄電部280の電圧VBと相関があるSOC(State Of Charge)に基づいてインピーダンスを調整してもよい。
【0104】
また、上記においては、送電装置100(100A)の送電部130と車両200(200A)の受電部210とを電磁界によって共振(共鳴)させることで、送電部130から受電部210へ非接触で電力が伝送されるものとしたが、電磁誘導により送電装置から車両へ電力を伝送するシステムにもこの発明は適用可能である。すなわち、たとえば、図1に示した電力伝送システムでは、送電部130と受電部210との間の結合係数κが0.1以下になるように送電部130および受電部210を設計するものとしたが、送電部130および受電部210の各々を一つのコイルで構成するとともに結合係数κが1.0に近くなるように各コイルを設計することによって、電磁誘導により送電装置から車両へ電力が伝送される。
【0105】
また、上記の実施の形態では、送電装置100(100A)から車両200(200A)へ電力を伝送するものとしたが、この発明は、受電装置が車両以外の電力伝送システムにも適用可能である。
【0106】
なお、上記において、インピーダンス整合器120は、この発明における「インピーダンス可変部」の一実施例に対応し、ECU160は、この発明における「制御部」の一実施例に対応する。また、電力センサ115は、この発明における「検出部」の一実施例に対応し、蓄電部280は、この発明における「負荷」の一実施例に対応する。
【0107】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0108】
110 電源部、115 電力センサ、120,310 インピーダンス整合器、122,124 可変コンデンサ、126 コイル、130 送電部、142,226 電磁誘導コイル、144,222 共振コイル、146,224 キャパシタ、160,290,290A ECU、170,300 通信部、200,200A 車両、210 受電部、240 整流器、250 電圧センサ、260 電流センサ、270 充電リレー、280 蓄電部、285 動力出力装置、350 負荷、410 通信制御部、420 整合器調整部、430 位置ずれ検出部、440 電力制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置へ非接触で電力を出力する送電装置であって、
交流電力を生成する電源部と、
前記電源部から供給される交流電力を前記受電装置の受電部へ非接触で出力するように構成された送電部と、
前記電源部と前記送電部との間に設けられるインピーダンス可変部と、
前記受電装置において当該送電装置から受電する負荷に関する負荷情報を前記受電装置から受信する通信部と、
前記送電部から前記受電部への送電状況に基づいて前記送電部に対する前記受電部の位置ずれを検出する制御部とを備え、
前記制御部は、前記位置ずれを検出する前に、前記通信部によって前記受電装置から受信した前記負荷情報に基づいて前記インピーダンス可変部のインピーダンスを調整する、送電装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記位置ずれを検出する処理の実行中、前記インピーダンスの調整を非実施とする、請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記受電装置の前記負荷は、再充電可能な蓄電部を含み、
前記負荷情報は、前記蓄電部の電圧を含む、請求項1または2に記載の送電装置。
【請求項4】
前記電源部への反射電力を検出するための検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記反射電力と前記位置ずれとの予め求められた関係を用いて、前記検出部により検出される反射電力に基づいて前記位置ずれを検出する、請求項1から3のいずれかに記載の送電装置。
【請求項5】
前記送電部の固有周波数と、前記受電部の固有周波数との差は、前記送電部の固有周波数または前記受電部の固有周波数の±10%以下である、請求項1から4のいずれかに記載の送電装置。
【請求項6】
前記送電部と前記受電部との結合係数は0.1以下である、請求項5に記載の送電装置。
【請求項7】
前記送電部は、前記送電部と前記受電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する磁界と、前記送電部と前記受電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて、前記受電部へ電力を伝送する、請求項5または6に記載の送電装置。
【請求項8】
受電装置へ非接触で電力を出力する送電装置であって、
交流電力を生成する電源部と、
前記電源部から供給される交流電力を前記受電装置の受電部へ非接触で出力するように構成された送電部と、
前記電源部と前記送電部との間に設けられるインピーダンス可変部と、
前記受電装置において当該送電装置から受電する負荷に関する負荷情報を前記受電装置から受信する通信部と、
前記送電部から前記受電部へ調整用電力を送電し、前記送電部に対する前記受電部の位置ずれを検出する制御部とを備え、
前記制御部は、前記調整用電力の送電前に、前記負荷情報を受信して前記インピーダンス可変部のインピーダンスを調整する、送電装置。
【請求項9】
送電装置から非接触で電力を受ける受電装置であって、
前記送電装置の送電部から出力される電力を非接触で受電するように構成された受電部と、
前記受電部によって受電された電力を受ける負荷と、
前記送電部から前記受電部への送電状況に基づいて前記送電部に対する前記受電部の位置ずれが前記送電装置において検出される前に、前記負荷に関する負荷情報を前記送電装置へ送信する通信部とを備える受電装置。
【請求項10】
前記送電装置は、電源と前記送電部との間に設けられるインピーダンス可変部によりインピーダンスを調整可能に構成され、
前記送電装置において、前記位置ずれが検出される処理の実行中、前記インピーダンスの調整は非実施とされる、請求項9に記載の受電装置。
【請求項11】
前記負荷は、再充電可能な蓄電部を含み、
前記負荷情報は、前記蓄電部の電圧を含む、請求項9または10に記載の受電装置。
【請求項12】
前記受電部の固有周波数と、前記送電部の固有周波数との差は、前記受電部の固有周波数または前記送電部の固有周波数の±10%以下である、請求項9から11のいずれかに記載の受電装置。
【請求項13】
前記受電部と前記送電部との結合係数は0.1以下である、請求項12に記載の受電装置。
【請求項14】
前記受電部は、前記受電部と前記送電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する磁界と、前記受電部と前記送電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて、前記送電部から受電する、請求項12または13に記載の受電装置。
【請求項15】
送電装置から非接触で電力を受ける受電装置であって、
前記送電装置の送電部から出力される電力を非接触で受電するように構成された受電部と、
前記受電部によって受電された電力を受ける負荷と、
前記送電部に対する前記受電部の位置ずれ検出用に前記送電部から前記受電部へ調整電力が送電される前に、前記負荷に関する負荷情報を前記送電装置へ送信する通信部とを備える受電装置。
【請求項16】
請求項9から15のいずれかに記載の受電装置を備える車両。
【請求項17】
送電装置から受電装置へ非接触で電力を伝送する電力伝送システムであって、
前記受電装置は、
前記送電装置から出力される電力を非接触で受電するように構成された受電部と、
前記受電部によって受電された電力を受ける負荷と、
前記負荷に関する負荷情報を前記送電装置へ送信する第1の通信部とを備え、
前記送電装置は、
交流電力を生成する電源部と、
前記電源部から供給される交流電力を前記受電部へ非接触で出力するように構成された送電部と、
前記電源部と前記送電部との間に設けられるインピーダンス可変部と、
前記負荷情報を前記受電装置から受信する第2の通信部と、
前記送電部から前記受電部への送電状況に基づいて前記送電部に対する前記受電部の位置ずれを検出する制御部とを備え、
前記受電装置は、前記送電装置において前記位置ずれが検出される前に、前記第1の通信部によって前記負荷情報を前記送電装置へ送信し、
前記制御部は、前記位置ずれを検出する前に、前記第2の通信部によって前記受電装置から受信した前記負荷情報に基づいて前記インピーダンス可変部のインピーダンスを調整する、電力伝送システム。
【請求項18】
送電装置から受電装置へ非接触で電力を伝送する電力伝送システムの制御方法であって、
前記送電装置は、
交流電力を生成する電源部と、
前記電源部から供給される交流電力を前記受電装置へ非接触で出力するように構成された送電部と、
前記電源部と前記送電部との間に設けられるインピーダンス可変部とを備え、
前記受電装置は、
前記送電部から出力される電力を非接触で受電するように構成された受電部と、
前記受電部によって受電された電力を受ける負荷とを備え、
前記制御方法は、
前記負荷に関する負荷情報に基づいて前記インピーダンス可変部のインピーダンスを調整するステップと、
前記インピーダンスの調整後、前記送電部から前記受電部への送電状況に基づいて前記送電部に対する前記受電部の位置ずれを検出するステップとを含む、電力伝送システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−74673(P2013−74673A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210681(P2011−210681)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】