説明

送風機、室外ユニット及び冷凍サイクル装置

【課題】風量に係る損失を少なくし、騒音、電力増加を抑制する送風機などを得る。
【解決手段】回転軸を中心に回転して気体の流れを発生させる複数の羽根を有するプロペラファン1と、プロペラファン1の羽根の回転方向に沿って、羽根の外周端より外側に壁面を形成し、気体を整流するためのベルマウス2とを備え、ベルマウス2は、吸込開口部3に形成された湾曲面における曲率半径を全周にわたって積算した値が、搭載又は設置に係る条件の範囲内において最大となるような湾曲面とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロペラファンとベルマウスとを有する送風機等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
羽根(プロペラ)を有するプロペラファンを回転させて空気の流れを発生させて、送風(冷却、排熱等)を行う送風機(ファンユニット)がある。このようなプロペラファンを有する送風機は、冷凍空気調和装置の室外機(室外ユニット)、冷蔵庫、換気扇、コンピュータ等の冷却装置等、幅広い分野で使われている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
このような送風機において、例えばプロペラファンの回転方向に沿って壁面を形成するベルマウスを有するものがある。このようなベルマウスは、空気の吸い込みが円滑に行えるように開口部分を拡げていることが多い。このとき、ベルマウスの内周側が湾曲面を形成していることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−301451号公報
【特許文献2】特開2008−089271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、上記のような送風機において、吸い込み側の湾曲面における曲率半径Rが小さいと、騒音が大きくなり、またファン効率が小さくなる。例えば、上述のような送風機を空気調和装置の室外ユニットに搭載して用いる場合、プロペラファンの回転により室外ユニットから発生する騒音が近隣住民へ迷惑をかけることがある。このため、室外ユニットの低騒音化が求められている。一方で、近年、地球温暖化防止のために空気調和装置の省エネルギー化が求められている。省エネルギー化をはかるためには室外ユニットにおける風量を多くすることが有効な手段である。しかしながら、基本的には風量に基づいて騒音も増加する。また、空気調和装置、換気扇、コンピュータ等の冷却装置等では、運転を停止させない又は運転時間が長いことが多いので、送風機自体の低電力化も重要となる。しかしながら、従来の送風機では、吸込側の開口部分における湾曲面について十分な対応がなされておらず、曲率半径Rが小さいままのものが多かった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、例えば風量を多くした場合でも騒音、電力増加を抑制する送風機などを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る送風機は、回転軸を中心に回転して気体の流れを発生させる複数の羽根を有するプロペラファンと、プロペラファンの羽根の回転方向に沿って、羽根の外周端より外側に壁面を形成し、気体を整流するためのベルマウスとを備え、ベルマウスは、吸込側の開口部分に形成された湾曲面における曲率半径を全周にわたって積算した値が、搭載又は設置に係る条件の範囲内において最大となるような湾曲面を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係わる送風機では、ベルマウスが、吸込側の開口部分に形成された湾曲面における曲率半径を全周にわたって積算した値が、搭載又は設置に係る条件の範囲内において最大となるような湾曲面を有するようにしたので、例えば、最大風量駆動時の動作点における比騒音、ファン効率と最小比騒音、最大ファン効率との差が少なくなり、これにより、ファン入力の低減、低騒音化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の本発明の実施の形態1に係る送風機の概略を表す図である。
【図2】プロペラファン1単体のP−Q特性及びKs−Q特性を表す図である。
【図3】プロペラファン1単体のP−Q特性及びη−Q特性を表す図である。
【図4】P−Q特性及びKs−Q特性と径との関係を表す図である。
【図5】P−Q特性及びη−Q特性と径との関係を表す図である。
【図6】ベルマウス2の吸込開口部3を表す図である。
【図7】P−Q特性の一例を表す図である。
【図8】P−Q特性とR/D値との関係を表す図である。
【図9】風量Q2 における比騒音KsとR/D値の関係を表す図である。
【図10】風量Q2 におけるファン効率ηとR/D値の関係を表す図である。
【図11】送風機を搭載した空気調和装置の室外ユニット100を表す図である。
【図12】室外ユニット100のベルマウス2における径の関係を表す図である。
【図13】ファン入力、騒音と曲率半径Rの積算値との関係を示す図である。
【図14】実施の形態2に係るベルマウス2の長さの関係を表す図である。
【図15】ファン入力、騒音とL/L0 の値との関係を表す図である。
【図16】実施の形態3に係る送風機の概略を表す図である。
【図17】ファン入力、騒音と斜め部5aに係る角度θとの関係を表す図である。
【図18】斜め部5aの別形状例を表す図である。
【図19】実施の形態4に係るプロペラファン1を表す図である。
【図20】リブ6を有さない場合の翼端渦の流跡線を表す図である。
【図21】リブ6を有する場合の翼端渦の流跡線を表す図である。
【図22】本発明の実施の形態5に係る冷凍空気調和装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る送風機の概略を表す図である。図1では、プロペラファン1とベルマウス2の断面図により表している。特に限定するものではないが、ここでは空気調和装置の室外ユニットに搭載する送風機であるものとして説明する。
【0011】
プロペラファン1は、電力を受けたモータ等(図示せず)の駆動により複数の羽根(プロペラ、翼)が回転軸を中心に回転して空気(流体)の流れを発生させる軸流ファンである。特に限定するものではないが、ここではプロペラファン1は前進翼形状のファンであるものとして説明する。
【0012】
ベルマウス2は、プロペラファン1の周方向(回転方向)に沿ってプロペラファン1を覆い(プロペラファン1の周囲を囲み)、プロペラファン1の回転による空気の整流をはかる。このため、プロペラファン1の周囲に、円管状に壁面が形成されることになる。図1に示すように、本実施の形態のベルマウス2は、プロペラファン1の回転軸方向(高さ方向)の約50%を覆っている。吸込開口部3はベルマウス2の上流側(吸込側)において、空気を吸い込むために開口している部分である。ここで、ベルマウス2は、プロペラファン1の回転軸と吸込開口部3の終端との間の距離が、回転軸と直管部4の面との間の距離よりも長い(吸込開口部3終端が拡がりを有している)。そして、直管部4から吸込開口部3終端に到る内壁面(プロペラファン1との対向面)を湾曲面としている(断面形状は円弧状になる)。湾曲面は曲率半径Rを有しているものとし、吸込開口部3の湾曲面部分をR部3aとする。ここで、本実施の形態においてはR部3aにおける曲率半径Rは全周にわたって一律でなくてもよい。吸込開口部3の形状等については後述する。
【0013】
直管部4は、ベルマウス2の内壁面が、プロペラファン1の回転軸と並行になっている部分である。吹出開口部5はベルマウス2の下流側(吹出側)において、空気を吹き出すために開口している部分である。ここで、吹出開口部5終端も拡がりを有している。そして、直管部4の吹出側終端から吹出開口部5終端に到る内壁面を、断面形状がテーパ状になるように形成している。このテーパ状の部分を斜め部5aとする。ここで、本実施の形態のベルマウス2は直管部4を有しているものとするが、斜め部5aとR部3aとにより内壁面を形成するベルマウス2であってもよい。
【0014】
図2はプロペラファン1単体のP−Q特性及びKs−Q特性を表す図である。また、図3はプロペラファン1単体のP−Q特性及びη−Q特性を表す図である。ここで、Pは静圧、Qは風量、Ksは比騒音[dB]、ηはファン効率(ファン入出力比率)[%]を表す。また、比騒音Ks及びファン効率ηは、静圧P及び風量Qと次式(1)、(2)を満たす関係となる。ここで、SPLはプロペラファン1から所定の距離離れた位置での騒音[dB]、Tはトルク[Nm]、ωは角速度[rad/s]を表す。また、(1)式における静圧P1 の単位は[mmAq]、風量Q1 の単位は[m3 /min]である。一方、(2)式における静圧P2 の単位は[Pa]、風量Q2 の単位は[m3 /s]である。
【0015】
Ks=SPL−10log10(P1・Q12.5) …(1)
η=100×P2・Q2/Tω …(2)
【0016】
図2及び図3に基づいて、静圧P、風量Q、比騒音Ks、ファン効率ηの関係について説明する。P−Q特性はプロペラファン1のファン回転数を一定として、通風抵抗である静圧Pと風量Qとの関係を表したものである。ここで、低風量、高静圧側を締切側、高風量、低静圧側を開放側と呼ぶ。一般的に、通風抵抗が小さいほど風は流れやすくなり(静圧Pが低いほど風量Qは多くなり)、通風抵抗が大きいほど風は流れにくくなる(静圧Pが高いほど風量Qは少なくなる)。
【0017】
しかし、風量Qと静圧Pとの間はこの関係を有しているわけではなく、風量Qに対して静圧Pの変化が小さくなる領域がある。この領域をサージング領域と呼び、どのプロペラファン1を回転させても、サージング領域付近では比騒音Ksが最小となり、ファン効率ηが最大となる。
【0018】
図4はP−Q特性及びKs−Q特性とプロペラファン1のファン径(ファン回転半径)との関係を表す図である。また、図5はP−Q特性及びη−Q特性とプロペラファン1の径との関係を表す図である。図4及び図5に示すように、サージング領域はファン径を大きくすると開放側へ移動する。このため、最小比騒音点、最大ファン効率点も開放側へ移動する。逆にファン径を小さくすると締切側へ移動するため、最小比騒音点、最大ファン効率点も締切側へ移動する。
【0019】
次に動作点について説明する。プロペラファン1を備えた送風機において、所定風量Q0 のときの、プロペラファン1のファン回転数をN0 とする。そして、ファン回転数N0 のときのプロペラファン1単体のP−Q特性から、風量Q0 のときの静圧P0 を求め、(P0 ,Q0 )を動作点とする。
【0020】
ここで、例えば空気調和装置の省エネルギー化のために風量が多くなるようにする。このため、本実施の形態においては、サージング領域よりも開放側に最大風量運転時を含む動作点が位置するようにする。送風機において、動作点がサージング領域よりも開放側にある場合、動作点における比騒音Ksは最小比騒音点における比騒音よりも大きく、ファン効率ηは最大ファン効率点におけるファン効率よりも小さくなる。この場合、ファン径を大きくすれば、前述したようにサージング領域が開放側へ移動し、動作点に近づくため、動作点における比騒音Ks、ファン効率ηは、最小比騒音点における比騒音、最大ファン効率点におけるファン効率に近づき、騒音、ファン入力(電力供給)を抑えることができる。
【0021】
しかし、ファン径を大きくすると送風機のサイズが大きくなる。ひいては送風機を搭載する機器のサイズを大きくしなければならなくなる。このため、サイズアップによるコスト増加、意匠性の低下、設置スペース増大等の問題が生じる。
【0022】
そこで、ファン径を大きくせず、動作点における比騒音Ks、ファン効率ηを最小比騒音、最大ファン効率に近づけるためには、サージング領域よりも開放側の領域においてP−Q特性の勾配を緩やかにするのがよい。この場合、Ks−Q特性、η−Q特性の勾配も緩やかになり、勾配が急な場合に比べて、動作点における比騒音Ks、ファン効率ηと、最小比騒音点の比騒音、最大ファン効率点のファン効率との乖離が少なくなるため、騒音、ファン入力を抑えることができる。また、Ks−Q特性、η−Q特性の勾配が緩やか場合、例えば、送風機の風量設定を変更等して動作点が変化した場合でも、比騒音Ks、ファン効率ηの変化を小さくすることができるため、効率的な運転をすることができる。
【0023】
ここで、機器サイズの寸法制約により、ファン径を大きくできないものの、風量を複数段階に変化するような設定がある場合がある。このような場合には、Ks−Q特性、η−Q特性において、最大風量運転時の動作点と、最小比騒音点、最大ファン効率点とが乖離し、騒音、ファン入力が増加しやすい。これは上述のようにファン径を十分大きくできない場合、サージング領域は締切側にあり、最大風量運転時の動作点は開放側にあるためである。
【0024】
図6はベルマウス2の吸込開口部3におけるR部3aの曲率半径Rについて表す図である。図6では曲率半径Rが異なる2つの吸込開口部3の形状について示している。
【0025】
図7はP−Q特性の一例を表す図である。図7において、風量Q1 はサージング領域付近における風量を表し、風量Q2 はサージング領域よりも開放側にある動作点における風量を表す。ここで、プロペラファン1の回転数はN0 である。
【0026】
図8はP−Q特性とR/Dとの関係を表す図である。ここではファン径D、回転数N0 を一定とし、ベルマウス2の吸込開口部3の終端位置を固定した状態で、R部3aの曲率半径Rの大きさを変えていったときのR/Dの値(以下、R/Dという)に基づくものとする。図8では、P−Q特性については、風量Q1 、Q2 におけるR/Dを表す。
【0027】
図8に示すように、風量Q1 においては、R/Dに依らず静圧Pは大差がない。また、特に図示しないものの、Q1 における比騒音Ks、ファン効率ηについても、R/Dが変化してもあまり差がない。
【0028】
図9は風量Q2 における比騒音KsとR/Dの関係を表す図である。また、図10は風量Q2 におけるファン効率ηとR/Dの関係を表す図である。
【0029】
しかし、図8〜図10に示すように、風量Q2 においては、R/Dを大きくするほど、静圧P、ファン効率ηは高くなり、比騒音Ksは小さくなる。また、P−Q特性、Ks−Q特性、η−Q特性の開放側における勾配が緩やかになる。従って、ベルマウス2において、R部3aの曲率半径Rが大きいほど、開放側の動作点における静圧P、ファン効率ηは向上し、比騒音Ksは小さくなるため、回転数、ファン入力、騒音の低減を図ることができる。
【0030】
図11は送風機を搭載した空気調和装置の室外ユニット100を表す図である。例えば図11のような室外ユニット100は、室外側熱交換器(図示せず)を有し、通過する冷媒と空気(外気)との熱交換を行う。このとき、送風機により室外側熱交換器を通過させる空気の流れを形成し、熱交換を促進する。図11において吸込開口部3の終端と、水平面7の高さ位置は等しい。
【0031】
ここで、前述したように、吸込開口部3のR部3aにおける曲率半径Rが大きいほど、ファン効率ηは向上し、比騒音Ksは小さくなる。しかし、プロペラファン1、ベルマウス2を備えた送風機について、例えば室外ユニット100の寸法制約等により、ベルマウス2の吸込開口部3において無制限にR部3aの曲率半径Rを大きくすることはできない。また、例えば、室外ユニット100の例えば幅と奥行き(縦横)の長さ(サイズ)が異なる筐体では、全周均一にR部3aの曲率半径Rを定めようとすると、全体的に曲率半径Rが小さくなってしまう。
【0032】
そこで、ファン中心を点O、ベルマウス2の外径上の2点を点A、Bとし、点Aを固定し、OAとOBとのなす角度をθとしたとき、次式(3)に基づく値が最大となるように、全周にわたって曲率半径Rを定める。ここで、(3)式は吸込開口部3の全周にわたるR部3aの曲率半径Rにおける積算値を表している。
【0033】
【数1】

【0034】
図12は室外ユニット100におけるベルマウス2における内径と吸込開口部3の終端位置(外径)との関係を表す図である。図11に示す室外ユニット100のように、筐体における縦横の比率が異なる場合は、拡げられる部分のR部3aを拡げるようにして吸込開口部3の終端位置が異なるようにし、曲率半径Rの積算値が最大になるようにする。
【0035】
図13は室外ユニット100が有する送風機の所定風量時におけるファン入力、騒音とR部3aの曲率半径Rの積算値との関係を示す図である。図13に示すように、R部3aの曲率半径Rの積算値が大きいほど、ファン入力、騒音とも小さくなる。このことから、室外ユニット100に収容できる範囲で、吸込開口部3におけるR部3aの曲率半径Rの積算値を最大にするようにベルマウス2を構成するとよい。
【0036】
ここで、例えば、前述したように、R/D≧0.125であれば、開放側の動作点における静圧P、ファン効率ηは向上し、比騒音Ksは小さくなる。R/Dを大きくするためにファン径Dを小さくすると、前述したようにサージング領域が締切側に移動し、また、最小比騒音点、最大ファン効率点も移動してしまうことになる。したがって、所定のファン径Dを保ちつつ、吸込開口部3における曲率半径Rの最大値R0 において、R0 /Dの値を0.125以上とするとよい。また、R/Dを0.125より大きくしても、ファン効率ηの向上、比騒音Ksの低減は限定的である。そこでファン径Dをできるだけ大きくしたい場合には、制約条件の下でファン径Dを大きくしつつ、R/Dをできる限り0.125に近づけるようにする。これにより、ファン入力の低減(低電力)、低騒音をはかることができる。
【0037】
以上のように、実施の形態1の送風機によれば、吸込開口部3におけるR部3aの曲率半径Rを全周にわたって積算した値が、例えば室外ユニット等の筐体における寸法制約等の下で、最大となるようにベルマウス2を構成するようにしたので、例えば、最大風量駆動時の動作点における比騒音、ファン効率と最小比騒音、最大ファン効率との差が少なくなり、これにより、ファン入力の低減、低騒音化を図ることができる。特に、吸込開口部3における曲率半径Rの最大値R0 とプロペラファン1の径Dとにおいて、R0 /D≧0.125を満たすようにすれば、さらに効率よくファン入力の低減、低騒音をはかることができる。
【0038】
実施の形態2.
上述した実施の形態1では、プロペラファン1の回転軸方向について、ベルマウス2がプロペラファン1を約50%を覆っている場合について説明した。本実施の形態では、ベルマウス2がプロペラファン1を覆っている部分の長さを変えた場合について説明する。
【0039】
図14はプロペラファン1の回転軸方向に対するプロペラファン1とベルマウス2の長さの関係を表す図である。ここでは、ベルマウス高さをLとし、ファン高さをL0 としている。本実施の形態では、実施の形態1において説明したように、全周における曲率半径Rの積算値を最大限にして吸込開口部3を形成したベルマウス2において、L/L0 を変化させる。ここでは、ファン高さL0 を一定とし、ベルマウス高さLを変化させるものとする。
【0040】
図15は、図11に示した室外ユニットにおいて所定風量時におけるファン入力[W]、騒音Ks[dB]とL/L0 の値との関係を表す図である。図15に示すように、0<L/L0 <1では、L/L0 の値が大きいほど、ファン入力、騒音の低減をはかることができるが、L/L0 ≧1では値によって変わらなくなる。
【0041】
このように実施の形態2の送風機によれば、ベルマウス2がプロペラファン1の軸方向全体を覆うようにする(L/L0 の値をほぼ1にする)ことで、ファン入力の低減をはかることができ、また、騒音を抑えることができる。
【0042】
実施の形態3.
図16は実施の形態3に係る送風機の概略を表す図である。図16において、上述した実施の形態で説明した部分は同様の機能を果たす。本実施の形態では、図16に示すように、吹出開口部5における斜め部5aのテーパ形状をなす方向が、プロペラファン1の回転軸方向との間でなす角度をθとする。
【0043】
図17は、図11に示した室外ユニットにおいて所定風量時における、ファン入力、騒音と斜め部5aに係る角度θとの関係を表す図である。本実施の形態では、ベルマウス2については、上述の実施の形態において説明したように、例えば全周における曲率半径Rの積算値を最大限にして吸込開口部3を形成する。また、ベルマウス高さLとファン高さL0 を同じ(L/L0 =1)にする。このとき、回転軸方向における吸込開口部3の終端の位置とプロペラファン1の上流側における位置とがほぼ等しくなるようにする。図17によれば、角度θが約45°〜50°のとき、ファン入力、騒音とも最低となる。これは、斜め部5bの角度θが約45°〜50°の場合には、斜め部5bに沿わせる形で効率的に空気の吹き出しを行うことができるからである。
【0044】
図18は斜め部5aの別形状例を表す図である。斜め部5aを断面形状で直線となるように形成する場合だけではなく、製造、意匠、寸法制約等の理由により、斜め部5aの両端を結んだ直線が約45°〜50°になるようにすれば、例えば凹状、凸状の略円弧形状にしてもよい。
【0045】
以上のように、実施の形態3の送風機においては、直管部4の上流側終端を略45°〜50°拡大させた斜め部5aを有するベルマウス2を備えることにより、停電力化、低騒音化をはかることができる。
【0046】
実施の形態4.
図19は実施の形態4に係るプロペラファン1を表す図である。本実施の形態ではプロペラファン1の形状について説明する。本実施の形態のプロペラファン1は、プロペラファン1の負圧面外周端から、軸方向上流側へリブ6を備えている。
【0047】
ここで、プロペラファン1がリブ6を有する送風機と有さない送風機において、図11に示した室外ユニットにおいて所定風量時における、ファン入力、騒音に係る値を表1に示す。ベルマウス2については、上述の実施の形態において説明したように、例えば全周における曲率半径Rの積算値を最大限にして吸込開口部3を形成する。また、ベルマウス高さLとファン高さL0 を同じ(L/L0 =1)にする。
【0048】
【表1】

【0049】
表1より、ファン入力はほぼ同一であるが、リブ6を有している方が騒音は小さいことがわかる。以下にこの理由を説明する。まず、ベルマウス2の直管部4壁面における静圧変動のrms値を静圧Ps(t) に基づいて次式(4)及び(5)のように定義する。静圧変動のrms値が大きいほど壁面から発生する騒音が大きくなる。
【0050】
【数2】

【0051】
静圧変動のrms値は、静圧差によりプロペラファン1の外周端付近で生じる、圧力面から負圧面への漏れ流れである翼端渦の渦度が大きいほど大きくなり、騒音源となる。翼端渦の、圧力面から負圧面への漏れ流れにとって、リブ6は通風抵抗となり、流路が狭まるため、翼端渦の生成を抑制することができる。
【0052】
図20はリブ6を有さない場合のプロペラファン1回転による翼端渦の流跡線を表す図である。また、図21はリブ6を有する場合の翼端渦の流跡線を表す図である。そして、リブ6の有無における静圧変動のrms値を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
図21に示すように、リブ6を有する場合、翼端渦の渦度がリブ6を有さない場合に比べて小さくなる。このため、表2に示すように、ベルマウス2の壁面における静圧変動のrms値が小さくなり、騒音を小さくすることができる。
【0055】
実施の形態5.
図22は本発明の実施の形態5に係る冷凍空気調和装置の構成図である。本実施の形態では、上述した送風機を有する冷凍サイクル装置の一例として冷凍空気調和装置について説明する。図22の冷凍空気調和装置は、前述した室外ユニット(室外機)100と負荷ユニット(室内機)200とを備え、これらが冷媒配管で連結され、主となる冷媒回路(以下、主冷媒回路という)を構成して冷媒を循環させている。冷媒配管のうち、気体の冷媒(ガス冷媒)が流れる配管をガス配管300とし、液体の冷媒(液冷媒。気液二相冷媒の場合もある)が流れる配管を液配管400とする。
【0056】
室外ユニット100は、本実施の形態においては、圧縮機101、油分離器102、四方弁103、室外側熱交換器104、室外側送風機105、アキュムレータ(気液分離器)106、室外側絞り装置(膨張弁)107、冷媒間熱交換器108、バイパス絞り装置109及び室外側制御装置110の各装置(手段)で構成する。
【0057】
圧縮機101は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。ここで、圧縮機101は、インバータ装置等を備え、運転周波数を任意に変化させることにより、圧縮機101の容量(単位時間あたりの冷媒を送り出す量)を細かく変化させることができるものとする。
【0058】
油分離器102は、冷媒に混じって圧縮機101から吐出された潤滑油を分離させるものである。分離された潤滑油は圧縮機101に戻される。四方弁103は、室外側制御装置110からの指示に基づいて冷房運転時と暖房運転時とによって冷媒の流れを切り換える。また、室外側熱交換器104は、冷媒と空気(室外の空気)との熱交換を行う。例えば、暖房運転時においては蒸発器として機能し、室外側絞り装置107を介して流入した低圧の冷媒と空気との熱交換を行い、冷媒を蒸発させ、気化させる。また、冷房運転時においては凝縮器として機能し、四方弁103側から流入した圧縮機101において圧縮された冷媒と空気との熱交換を行い、冷媒を凝縮して液化させる。室外側熱交換器104には、冷媒と空気との熱交換を効率よく行うため、上述の実施の形態1〜4で説明した送風機となる室外側送風機105が設けられている。室外側送風機105についても、インバータ装置によりファンモータの運転周波数を任意に変化させてプロペラファン1の回転速度を細かく変化させるようにしてもよい。
【0059】
冷媒間熱交換器108は、冷媒回路の主となる流路を流れる冷媒と、その流路から分岐してバイパス絞り装置109(膨張弁)により流量調整された冷媒との間で熱交換を行う。特に冷房運転時において冷媒を過冷却する必要がある場合に、冷媒を過冷却して負荷ユニット200に供給するものである。バイパス絞り装置109を介して流れる液体は、バイパス配管を介してアキュムレータ106に戻される。アキュムレータ106は例えば液体の余剰冷媒を溜めておく手段である。室外側制御装置110は、例えばマイクロコンピュータ等からなる。負荷側制御装置204と有線又は無線通信することができ、例えば、冷凍空気調和装置内の各種検知手段(センサ)の検知に係るデータに基づいて、インバータ回路制御による圧縮機101の運転周波数制御等、冷凍空気調和装置に係る各手段を制御して冷凍空気調和装置全体の動作制御を行う。
【0060】
一方、負荷ユニット200は、負荷側熱交換器201、負荷側絞り装置(膨張弁)202、負荷側送風機203及び負荷側制御装置204で構成される。負荷側熱交換器201は冷媒と空気との熱交換を行う。例えば、暖房運転時においては凝縮器として機能し、ガス配管300から流入した冷媒と空気との熱交換を行い、冷媒を凝縮させて液化(又は気液二相化)させ、液配管400側に流出させる。一方、冷房運転時においては蒸発器として機能し、負荷側絞り装置202により低圧状態にされた冷媒と空気との熱交換を行い、冷媒に空気の熱を奪わせて蒸発させて気化させ、ガス配管300側に流出させる。また、負荷ユニット200には、熱交換を行う空気の流れを調整するための負荷側送風機203が設けられている。特に限定するものではないが、負荷側送風機203についても、上述の実施の形態1〜4で説明した送風機で構成してもよい。この負荷側送風機203の運転速度は、例えば利用者の設定により決定される。負荷側絞り装置202は、開度を変化させることで、負荷側熱交換器201内における冷媒の圧力を調整するために設ける。
【0061】
また、負荷側制御装置204もマイクロコンピュータ等からなり、例えば室外側制御装置110と有線又は無線通信することができる。室外側制御装置110からの指示、居住者等からの指示に基づいて、例えば室内が所定の温度となるように、負荷ユニット200の各装置(手段)を制御する。また、負荷ユニット200に設けられた検知手段の検知に係るデータを含む信号を送信する。
【0062】
以上のように実施の形態5の冷凍空気調和装置では、実施の形態1〜4において説明した送風機である室外側送風機105を室外ユニット100に用いることで、低騒音を実現しつつ、風量を多くすることができ、冷凍空気調和装置(冷凍サイクル装置)の省エネルギー化をはかることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
前述した実施の形態では、本発明に係る送風機を冷凍サイクル装置の室外ユニット100等に搭載する例について説明したが、これに限定するものではない。例えば冷蔵庫、換気扇等にも適用することができる。また、コンピュータ等において空冷等を行う場合に適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 プロペラファン、2 ベルマウス、3 吸込開口部、3a R部、4 直管部、5 吹出開口部、5a 斜め部、6 リブ、7 水平面、100 室外ユニット、101 圧縮機、102 油分離器、103 四方弁、104 室外側熱交換器、105 室外側送風機、106 アキュムレータ、107 室外側絞り装置、108 冷媒間熱交換器、109 バイパス絞り装置、110 室外側制御装置、200 負荷ユニット、201 負荷側熱交換器、202 負荷側絞り装置、203 負荷側送風機、204 負荷側制御装置、300 ガス配管、400 液配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転して気体の流れを発生させる複数の羽根を有するプロペラファンと、
該プロペラファンの羽根の回転方向に沿って、前記羽根の外周端より外側に壁面を形成し、前記気体を整流するためのベルマウスとを備え、
該ベルマウスは、吸込側の開口部分に形成された湾曲面における曲率半径を全周にわたって積算した値が、搭載又は設置に係る条件の範囲内において最大となるような前記湾曲面を有することを特徴とする送風機。
【請求項2】
前記ベルマウス全周にわたる前記湾曲面の曲率半径における最大値R0 と前記プロペラファンのファン回転半径Dとが、R0 /D≧0.125の関係を有するような、前記吸込側開口部分の湾曲面を形成した前記ベルマウスと前記プロペラファンとを備えることを特徴とする請求項1記載の送風機。
【請求項3】
前記ベルマウスは、前記回転軸方向に対して、前記プロペラファンの前記羽根全体を前記壁面で覆うことを特徴とする請求項1又は2に記載の送風機。
【請求項4】
前記回転軸と並行な壁面を有する前記ベルマウスの直管部の吹出側の終端部分と、前記プロペラファンの吹出側終端との、前記回転軸方向における位置を略等しくし、
前記ベルマウスは、前記直管部の吹出側終端から略直線状に45°拡大させる方向に、吹出側開口部の終端部分を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の送風機。
【請求項5】
前記プロペラファンは、各羽根の外周端の全体又は外周端の両端を除く部分から前記羽根車の回転軸と略並行に前記吸込側に延びるリブを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の送風機。
【請求項6】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
冷媒と空気との熱交換を行う室外熱交換器と、
該室外側熱交換器に前記空気を通過させるための請求項1〜5のいずれかに記載の送風機とを備える室外ユニットであって、
前記圧縮機、前記室外熱交換器及び前記送風機を収容する筐体の寸法を条件として、前記送風機の吸込側の開口部分に形成された湾曲面を規定することを特徴とする室外ユニット。
【請求項7】
熱交換対象と冷媒とを熱交換する複数の負荷側熱交換器及び該負荷側熱交換器に流入させる冷媒の流量を調整するための流量調整手段を有する負荷ユニットと、
請求項6に記載の室外ユニットと
を配管接続して冷媒回路を構成することを特徴とする冷凍サイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図22】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−136941(P2012−136941A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287686(P2010−287686)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】