説明

送風機

【課題】吐出口を全閉状態としても、送風機内に空気の流れを生させ、モータの冷却を図ることのできる送風機を提供する。
【解決手段】送風機10は、モータ20と、モータ20のシャフト22に取り付けられた送風用ファン30と、送風用ファン30を囲んで配置されるとともに吸入口51が形成された吸気カバー50と、吸気カバー50に結合されモータ20を囲んで配置されるともに吐出口41が形成されたケーシング40と、を備える。そして、ケーシング40とモータ20のステータ24を固定するブッシング21のフランジ部21Aにケーシング40とともに形成されたベントホール70と、ブッシング21のフランジ部21Aの送風用ファン30側の端面に配置したプレート80と、プレート80のベントホールと対向する箇所にスリットの形成による弁部81と、が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は送風機に係り、特に、たとえば遠心ブロア等のような送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
送風機は、モータの回転によって駆動される送風用ファンを備え、この送風用ファンによって、吸入口から空気を取り入れるともに吐出口から空気を吐き出させるように構成されている。
【0003】
この場合、たとえば下記特許文献1に示すように、吸入口から吐出口の間の空気の流路内に、送風用ファンはもちろんのこと、該送風用ファンを回転させるモータも配置させた構成のものが知られている。
【0004】
なお、本発明に関連する他の公知文献としては、下記特許文献2および特許文献3がある。特許文献2には、低風量状態となった際に、ファン側の空気圧がモータケース側より相対的に小さくなり、整流板に設けられたリーク弁によって、モータケース側からファン側へと空気が流れ、整流板の熱変形を防止した技術が開示されている。また、特許文献3には、管路の一部に、形状記憶合金にスリットを形成することによって構成される弁が設けられ、管路を流れる気体が所定温度になると、該弁が開動して気体を放出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-346890号公報
【特許文献2】特開2005-113711号公報
【特許文献3】特開平6-221453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した送風機は、たとえば吐出口を全閉した場合に、モータが配置されている送風機の内部に空気が流入されなくなるため、モータの冷却効果が損なわれるようになっていた。
【0007】
この場合、送風機の改良を安価に行うためにも、極めて簡単な構成によって上記不都合を解消することが望まれる。
【0008】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、簡単な構成にも拘わらず、吐出口を全閉状態としても、送風機内に空気の流れを生じさせ、モータの冷却を図ることのできる送風機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明は、吐出口を全閉状態とした場合、送風機内の気圧が大きく変化することに鑑み、スリットで形成した弁が開動し、これにより送風機内に空気が流れ、送風機内に配置されたモータを冷却できるように構成したものである。
【0010】
本発明は、以下のような構成によって把握される。
(1)本発明の送風機は、モータと、前記モータのシャフトに取り付けられた送風用ファンと、前記送風用ファンを囲んで配置されるとともに吸入口が形成された吸気カバーと、 前記吸気カバーに結合され前記モータを囲んで配置されるともに吐出口が形成されたケーシングと、を備える送風機であって、前記ケーシングと前記モータのステータを固定するブッシングのフランジ部に前記ケーシングとともに形成されたベントホールと、前記ブッシングの前記フランジ部の前記送風用ファン側の端面に配置した第1プレートと、該第1プレートの前記ベントホールと対向する箇所にスリットの形成による弁部と、が設けられていることを特徴とする。
(2)本発明の送風機は、(1)の構成において、前記吸気カバーの吸気方向に面する箇所に設けられた吸気孔と、前記吸気カバーの内側に配置された第2プレートと、該第2プレートの前記吸気孔と対向する箇所にスリットの形成による弁部と、が設けられていることを特徴とする。
(3)本発明の送風機は、(1)の構成において、前記プレートに形成される前記スリットからなる弁部は、前記吸気カバーと前記ケーシングで囲まれる空間の圧力が所定の値以上になると弾性変形して開動することを特徴とする。
(4)本発明の送風機は、(1)の構成において、前記第1プレートに形成されたスリットからなる弁部は、モータのシャフトの周囲に複数個形成されていることを特徴とする。
(5)本発明の送風機は、(2)の構成において、前記第2プレートに形成されたスリットからなる弁部は、前記吸入口の周囲に複数個形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように構成した送風機によれば、簡単な構成にも拘わらず、吐出口を全閉状態としても、送風機内に空気の流れを生じさせ、モータの冷却を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の送風機の実施態様1を示す上面図および断面図である。
【図2】本発明の送風機に具備されるプレートを示した平面図である。
【図3】プレートの弁部の構成を示す拡大図である。
【図4】図3のIV(a)−IV(a)線における断面図、IV(b)−IV(b)線における断面図である。
【図5】本発明の送風機の実施態様2を示す断面図である。
【図6】実施態様2に示す送風機に具備されるプレートを示した平面図である。
【図7】本発明の実施態様4における構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施態様1)
図1(a)、(b)は、本発明による送風機の実施態様1を示す図である。図1(a)は上面図、図1(b)は図1(a)のb−b線における断面図である。図1(a)、(b)において、送風機10には、まず、たとえばブラシレスDCモータからなるモータ20が具備されている。このモータ20は、円筒状のブッシング21を備え、このブッシング21の中心軸に沿った内部にはシャフト22が配置されている。シャフト22は、ブッシング21の両端側のそれぞれにおいて軸受23A、23Bを介してブッシング21に軸支され、その一端はブッシング21から比較的長く突出されて形成されている。
【0014】
ブッシング21の外周には、モータ20のステータ24が配置され、このステータ24は、コア(図示せず)と、このコアに装着される絶縁膜(図示せず)と、この絶縁膜に巻回されるコイル25とから構成されている。
【0015】
ステータ24の外周には、ロータ26が取り付けられている。このロータ26は、シャフト22のブッシング21から突出した箇所において固定された有底円筒状のヨーク27と、このヨーク27の内周面に固着されたマグネット28とから構成されている。これにより、ヨーク27はステータ24の外周面を包囲し、マグネット28はステータ24の外周面と半径方向の隙間を介して対向して構成されている。
【0016】
モータ20のシャフト22には、ヨーク27が取り付けられた箇所から先端の間において送風用ファン30が取り付けられている。
【0017】
そして、上述のように構成されたモータ20の周辺にはケーシング40が配置されている。ケーシング40はたとえば有底円筒形状の該底面の中央にブッシング21の一端を露出させるようにして形成され、その周側面の一部には吐出口41が設けられるようになっている。ブッシング21の前記一端の近傍には、その外周を取り巻くフランジ部21Aが設けられ、このフランジ部21Aの送風用ファン30側と反対の端面においてケーシング40との固定がなされるようになっている。
【0018】
また、送風用ファン30の周辺には吸気カバー50が配置されている。吸気カバー50は前記ケーシング40の側において開口端を有し、この開口端はケーシング40の開口端と結合されるようになっている。ケーシング40と吸気カバー50の結合は、それぞれの開口端にフランジ50A、40Aが設けられ、これらフランジ50A、40Aの部分において螺子60が螺入されることによってなされている。また、吸気カバー50には、たとえばモータ20のシャフト22と同軸となるように形成された円形の吸入口51が形成されている。
【0019】
このように構成された送風機10は、吸入口51から吐出口41の間の空気の流路内に、送風用ファン30、該送風用ファン30を回転させるモータ20が配置され、モータ20が駆動されることによって、送風用ファン30が回転し、空気は吸入口51から送風用ファン30、モータ20の周辺を通過して吐出口41から吐出されるようになっている。
【0020】
ここで、ブッシング21のフランジ部21Aにケーシング40とともにたとえば同軸に形成されたベントホール70が形成されている。このベントホール70は、図示されていないが、ブッシングのフランジ部の周方向に沿って等間隔にたとえば3個設けられている(図1(a)参照)。
【0021】
そして、ブッシング21のフランジ部21Aの前記送風用ファン30側の端面にはプレート(この明細書において第1プレートと称する場合がある)80が配置されている。このプレート80は、たとえば、フランジ部21Aと内径および外径がほぼ同様の円環状の部材から構成されている。
【0022】
このプレート80は、図2に示すように、周方向に沿ってたとえば3個の弁部81が等間隔に設けられている。これら各弁部81は、ブッシング21のフランジ部21Aに形成されたベントホール70に対向する箇所に設けられるようになっている。なお、プレート80には、互いに隣接する弁部81の間に、ブッシング21のフランジ部21Aとの固定を図るための螺子挿入孔84が設けられている。
【0023】
前記各弁部81は、ブッシング21のフランジ部21Aに形成されたベントホール70に対向する箇所(図中点線丸で示す)において、ほぼx状に切り欠かれたスリット82によって構成されている。このようなスリット82によって、弁82Pが形成されることになり、吸気カバー50とケーシング40で囲まれる空間(送風機内)の圧力が所定の値以上になると弾性変形して開動するように構成させることができる。
【0024】
図3(a)は、弁部81におけるスリット82を拡大して示した斜視図である。図3(a)に示すように、スリット82の形成により、弁部81には、円弧形の2個の弁82Pが先端部を対向させて形成されるようになっている。そして、図3(b)は、プレート80の表裏側のそれぞれに圧力差(図中プレート80の裏側において圧力が大きい)が生じた場合に、弁82Pのそれぞれの先端が図中表側に移動して変形し、これによりスリット32が開口し、プレート80の裏側からプレート80の表側への空気流路が形成されることになる。図3(b)中、矢印αは、空気がスリット32の開口を通してプレート80の裏側から表側に流れている状態を示している。
また、図4(a)は、図3(a)のIV(a)−IV(a)における断面図を、図4(b)は、図3(b)のIV(b)−IV(b)における断面図を示している。
図4(a)で示すように、たとえば、プレート80の裏面(送風用ファン30側の面)における弁部81の形成領域にはたとえば球面からなる凹陥部83が形成されている。この凹陥部83により、各弁部81は基端側から先端にかけて厚さが徐々に小さくなるように形成されるようになっている。これにより、プレート80の表裏面側の圧力差による弁82Pの弾性変形の程度を調整することができる。しかし、この凹陥部83は、必ずしも形成しなくてもよい。弁82Pの弾性変形の調整はプレート80の肉厚を所定の値に設定することによってもできるからである。また、図4(b)は、プレート80の表裏側の圧力差によって弁82Pがプレート80の表側(図中矢印A方向)に変形し、スリット82に開口が形成される状態を示している。
【0025】
このように構成した送風機10は、たとえ、吐出口41を全閉状態でモータ20を駆動させて運転しても、吸気カバー50とケーシング40で囲まれる空間の気圧が上昇する結果、プレート80の弁部81が開き、ベントホール70を通して空気が排出されるため、送風機10内に空気の流れが生じ、モータ20の冷却が留まってしまう不都合を回避させることができるようになる。
【0026】
また、このような効果は、ベントホール70の形成、およびプレート80におけるスリット82の弁部81の形成によって実現できることから、極めて簡単な構成とすることができる。
なお、前記ベントホール70、およびスリット82の弁部81は、モータ20のブッシング21の周囲であって、モータ20のコイル25の直上に設けるようになっている。これにより、吸入口51から弁部81およびベントホール70に至って空気が流れる際に、モータ20のコイル25の周辺には比較的大量の空気が流れ、モータ20の冷却効果の向上を図ることができるようになる。
(実施態様2)
実施態様1では、吐出口41側の周辺において弁部81を構成し、吐出口41が全閉状態となっても該弁部81を自動的に開くようにして、モータ20の周辺に空気を流すことができるようにしたものである。しかし、図5に示すように、さらに、吸入口51が全閉状態となっても、同様に、モータ20の周辺に空気を流すことができるように構成するようにしてもよい。
【0027】
図5は、本発明の送風機の実施態様2を示す構成図で、図1(a)と対応づけて描いた図となっている。
【0028】
図5において、図1と異なる構成は、まず、吸気カバー50の吸入口51の周辺に沿って等間隔にたとえば3個のベントホール70’が形成されている(図3では1個のベントホール70’が図示されている)。また、吸気カバー50の内側面において、吸入口51と対向する部分に開口が形成された円環状のプレート(この明細書において第2プレートと称する場合がある)80’が配置されている。
このプレート80’は、図6に示すように、周方向に沿ってたとえば3個の弁部81’が等間隔に設けられている。これら各弁部81’は、吸気カバー50に形成されたベントホール70’に対向する箇所に設けられるようになっている。
【0029】
前記各弁部81’は、吸気カバー50に形成されたベントホール70’に対向する箇所において、図2に示したように、ほぼx字状に切り欠いたスリット82’によって構成されている。このようなスリット82’によって、弁82P’が形成されることになり、吸気カバー50とケーシング40で囲まれる空間(送風機内)の圧力が所定の値に以上になると弾性変形して開動するように構成させることができる。
【0030】
これにより、さらに、吸入口51を全閉状態でモータ20を駆動させて運転した場合、吸気カバー50とケーシング40で囲まれる空間の吸入口51付近の圧力が外気圧よりも低下する結果、弁部81’が開き、ベントホール70’を通して、該空間に空気の流れが生じることからモータ20の冷却が留まってしまうことを回避させることができるようになる。
(実施態様3)
実施態様2では、吐出口41および吸入口51のいずれが全閉状態となっても、送風機内に空気が流れるように構成したものである。しかし、実施態様2で示した構成において、ベントホール、スリットからなる弁は、吸入口51の近傍においてのみ設け、吐出口41の近傍に設けないように構成するようにしてもよいことはいうまでもない。
(実施態様4)
上記実施態様では、プレート80にほぼx字状に切り欠いたスリット82、82’を形成することにより弁82P、82P’を構成するようにしたものである。しかし、これに限定されることはなく、たとえば、図7(a)に示すように、ほぼ円形状でその一部を連結させることのない形状のスリット82を形成することにより、図7(b)に示すように、1個の円弧形状の弁82Pを形成するようにしてもよい。このような趣旨から、弁部81は、その弁82Pの形状、および個数に限定されることはなく、種々の形状のスリット82によって構成できるものであればよい。
【0031】
以上説明したことから明らかとなるように、本発明の送風機によれば、簡単な構成にも拘わらず、吐出口を全閉状態としても、送風機内に空気の流れを生じさせ、モータの冷却を図ることができるようになる。
【0032】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の送風機は、たとえば丁合機あるいは紙折機等に適用させることができる。これら丁合機あるいは紙折機等は、重ねて配置される複数の用紙をエアーで浮かせ、浮き上がった用紙の一枚目を、エアーでロータに吸い付かせ、そのままロータが回転することによって、用紙を送り出す機構を備えて構成される。この場合、前記エアーの供給において本発明の送風機を適用させることによって好適となる。また、吸込みを用途とする集塵機、掃除機や吹き出しを用途とする送風機等、使用上全閉状態が生じる送風機においても好適となる。
【符号の説明】
【0034】
10……送風機、20……モータ、21……ブッシング、21A……フランジ部、22……シャフト、23A、23B……軸受、24……ステータ、25……コイル、26……ロータ、27……ヨーク、28……マグネット、30……送風用ファン、50……吸気カバー、40A……フランジ、41……吐出口、40……ケーシング、50A……フランジ、51……吸入口、60……螺子、70、70’……ベントホール、80、80’……プレート、81、81’……弁部、82、82’……スリット、82P、82P’……弁、83……凹陥部、84……螺子挿入孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータのシャフトに取り付けられた送風用ファンと、前記送風用ファンを囲んで配置されるとともに吸入口が形成された吸気カバーと、 前記吸気カバーに結合され前記モータを囲んで配置されるともに吐出口が形成されたケーシングと、を備える送風機であって、
前記ケーシングと前記モータのステータを固定するブッシングのフランジ部に前記ケーシングとともに形成されたベントホールと、前記ブッシングの前記フランジ部の前記送風用ファン側の端面に配置した第1プレートと、該第1プレートの前記ベントホールと対向する箇所にスリットの形成による弁部と、が設けられていることを特徴とする送風機。
【請求項2】
前記吸気カバーの吸気方向に面する箇所に設けられた吸気孔と、前記吸気カバーの内側に配置された第2プレートと、該第2プレートの前記吸気孔と対向する箇所にスリットの形成による弁部と、が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
前記第1プレートに形成されたスリットからなる弁部は、前記吸気カバーと前記ケーシングで囲まれる空間の圧力が所定の値以上になると弾性変形して開動することを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項4】
前記第1プレートに形成されたスリットからなる弁部は、モータのシャフトの周囲に複数個形成されていることを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項5】
前記第2プレートに形成されたスリットからなる弁部は、前記吸入口の周囲に複数個形成されていることを特徴とする請求項2に記載の送風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−104382(P2013−104382A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249914(P2011−249914)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】