説明

送風装置及び覚醒装置

【課題】送風開始直後から適切に温度調節された空気が吹き出す送風装置や覚醒装置を提供する。
【解決手段】座席70は空気の吹出口として、ヘッドレスト71に配置されたヘッドレスト吹出口2、着座者の首筋へ向けたノズル3、着座面に配置された着座面吹出口4を備え、おのおのの近傍に空気の温度調節のためのペルチェ素子20、40等を備えて送風ユニット6から送風された送風空気の温度を送風開始直後から調節する。送風は、例えば自動車の乗員である着座者が座席70に着座した直後か、着座者の覚醒状態が低下した場合に開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風装置及び覚醒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日空調装置は広く普及しているが、例えば車両用空調装置においては、通常車室前面に設けられた送風口から送風して空気調和が行われる。下記特許文献1ではこうした車両用空調装置を補助する空調装置が提案されている。特許文献1で提案された空調装置はシートに装備された空調装置であり、着座者が着座するシートの着座面や背当て部に複数の空気吹出口が形成されて、そこから空調空気が吹出すように構成されている。
【0003】
また下記特許文献2では、特許文献1と類似した構成によって車両の運転者等の着座者を覚醒させる装置が提案されている。特許文献2に提案された技術では、着座者の覚醒状態が低下したことが検知されたら、シートのヘッドレストの張出部から着座者の後頭部あるいは側頭部に斜め後ろ方向から空気を吹き出して着座者を覚醒させる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−283403号公報
【特許文献2】特開2007−106360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両における空調では、車室内が高温状態あるいは低温状態にあるときに乗員が乗車して直ちに空調装置をオン状態にしても、通常空調装置は最初ウォームアップが必要なこともあって、しばらくの間は不快な高温状態あるいは低温状態が解消されない。上記特許文献1等のシート空調装置を、こうした問題を解消するために用いたとしても、シート空調装置をオンにした直後はシート空調装置のダクト内に滞留した温度調節されていない空気が吹出口から吹き出すので、乗車直後の乗員の不快感を解消することは難しい。
【0006】
また特許文献2の乗員覚醒装置においても同様の問題が生じる。すなわち乗員が覚醒低下状態にあることが検出されたら直ちに空気を吹き出して乗員を覚醒することが望まれるが、空気吹き出し直後はダクト内に滞留した温度調節されていない空気が吹出口から吹き出すので、十分に冷却された空気が吹き出される場合よりも、覚醒効果は低いものとなる。以上のような問題を解消したシート空調装置や覚醒装置は提案されていない。
【0007】
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記問題点に鑑み、送風開始直後から適切に温度調節された空気が吹き出す送風装置や覚醒装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明に係る送風装置は、着座者が着座する座席に備えられた送風装置であって、空気を送風する送風部と、前記座席に備えられ、前記送風部から送風された空気を前記座席に着座した着座者の近傍から送出する送出口と、前記送出口から空気を送出する際の送出の開始時から所定の温度範囲の空気を前記送出口から送出するように制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
これにより本発明に係る送風装置では、制御部が、送出口から空気を送出する際の送出の開始時から所定の温度範囲の空気を送出するように制御するので、送風開始直後から着座者に送風による快適感を与えることができる。さらに、まだ空調装置による空調の効果があらわれていない期間で本装置を用いることによって、空調の効果開始前にも関わらず着座者に快適感を与えることができる。
【0010】
また前記制御部は、前記送出口の近傍に配置されて、前記送出口から送出される空気の温度を調節する温度調節部を備えたとしてもよい。
【0011】
これにより送出口の近傍に配置されて送出口から送出される空気の温度を調節する温度調節部によって、送出口から送出される空気の温度を適切に調節することができる。したがって、送出口の近傍に配置された温度調節部により温度調節された空気を送出することにより、送風開始直後から着座者に送風による快適感を与えることができる。さらにまだ空調装置による空調の効果があらわれていない期間で本装置を用いることによって、空調の効果開始前にも関わらず着座者に快適感を与えることができる。
【0012】
また前記制御部は、前記送出口よりも送風経路の上流側に配置されて、前記送出口へ向けて送出する空気の温度を調節する温度調節部と、前記温度調節部から前記送出口への空気の送風経路から分岐して前記座席の着座した着座者とは異なる方向へ向けて空気を送出する副送出口と、前記送風部からの空気の送風の開始時においては、まず前記副送出口から空気を送出し、その後前記送出口からの空気の送出へと切り替える切替部と、を備えたとしてもよい。
【0013】
これにより送風部からの空気の送風の開始時においては着座者とは異なる方向へ向けて空気を送出する副送出口から空気を送出し、その後前記送出口からの空気の送出へと切り替えるので、送風開始直後においては送風経路に滞留していた温度調節されていない空気が着座者に向かって送出することが回避される。よって送風開始直後に着座者が不快感をもつ可能性が抑制できる。さらに、まだ空調装置による空調の効果があらわれていない期間で本装置を用いることによって、空調の効果開始前において着座者に不快感を与えることが回避できる。
【0014】
また前記送出口は前記着座者の首筋部位へ空気を送出する首筋部送出口を含むとしてもよい。
【0015】
これにより着座者の着座直後に通常皮膚が露出し温度感覚が敏感な首筋部位に送風することにより送風開始直後から着座者に効果的に快適感を与えることができる。
【0016】
また前記送出口は前記着座者の後頭部へ空気を送出する後頭部送出口を含むとしてもよい。
【0017】
これにより温度感覚が敏感な後頭部に送風することにより送風開始直後から着座者に効果的に快適感を与えることができる。
【0018】
また前記送出口は前記座席において前記着座者が着座する着座面から空気を送出する着座面送出口を含むとしてもよい。
【0019】
これにより送風開始直後から着座者に腿部や尻部から効果的に快適感を与えることができる。
【0020】
また前記着座者が着座したことを検出する着座検出部と、前記着座検出部が前記着座者の着座を検出したら前記送出口からの空気の送出を開始する送出開始制御手段と、を備えたとしてもよい。
【0021】
これにより着座直後から送風を開始し、かつ送風開始直後から着座者に送風による快適感を与えることができる。さらに着座者の着座直後のまだ空調装置による空調の効果があらわれていない期間で本装置を用いることによって、空調の効果開始前にも関わらず着座者に快適感を与えることができる。
【0022】
また前記座席は車両の座席であるとしてもよい。ここで車両とは、自動車(オープンカーも含む)や建設機械等も意味する。
【0023】
これにより車両の乗員に対して送風し、かつ送風開始直後から着座者に送風による快適感を与えることができる。さらに車両の乗員の乗車直後のまだ空調装置による空調の効果があらわれていない期間で本装置を用いることによって、空調の効果開始前にも関わらず乗員に快適感を与えることができる。したがって乗車直後に車室内温度が不快であっても、乗員に快適感を与えることができる。また、車室内温度が快適温度になりにくい、例えば、幌付きのオープンカーや安全確認のためガラス部の多いため日射が遮りにくい建設機械や、或いは例えば、屋根開時のオープンカーや、屋根のない建設機械でも、乗員に快適感を与えることができる。
【0024】
また本発明の覚醒装置は、上記の送風装置を備え、前記座席に着座した着座者が覚醒低下状態にあることを検出する覚醒低下状態検出部と、前記覚醒低下検出部が着座者が覚醒低下状態にあることを検出した場合に前記送出口からの空気の送出を開始する覚醒手段と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
これにより本発明の覚醒装置では、着座者の覚醒状態が低下したら着座者に向けて送風して覚醒を行う際に、送風開始直後から適切な温度範囲の空気が送風されるので、覚醒処理開始直後から高い覚醒効果を有する覚醒装置が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。まず図1は、本発明に係る自動車車両用の補助空調装置1(空調装置、送風装置)の実施例1における概略構成図である。なお後述するように、この空調装置1は車両の乗員を覚醒させるための覚醒装置としても使用可能である。
【0027】
空調装置1は着座者が着座する座席(シート)70に対して装備されている。座席70は車両の任意の座席とすればよい。運転席のみとしてもよく、運転席と助手席としてもよく、全ての座席としてもよい。シート70は着座者が頭部をもたせ掛けるためのヘッドレスト71を備える。
【0028】
空調装置1は、ヘッドレスト吹出口2(吹出口)、ノズル3(吹出口)、着座面吹出口4(吹出口)、送風ユニット6、切替ダンパ7、切替弁8、ダクト9を備えて、補助空調ECU5によって制御される。ヘッドレスト吹出口2は、ヘッドレスト71において着座者の後頭部に対向する面に形成された孔部であり、ヘッドレスト吹出口2から着座者の後頭部へ向けて空気が送出される。ヘッドレスト吹出口2は複数形成された孔部の集合とすればよい。
【0029】
ノズル3はヘッドレスト71の下部に例えば着座者の左右片側あるいは両側に配置されている。または、ヘッドレスト71に埋め込み、中央に配置してもよい。ノズル3から着座者の首筋部分に空気が送出される。また着座面吹出口4はシート70の着座面に形成された孔部であり、着座面吹出口4から着座者の腿部や尻部に向けて空気が送出される。着座面吹出口4は複数形成された孔部の集合とすればよい。
【0030】
送風ユニット6が以上のヘッドレスト吹出口2、ノズル3、着座面吹出口4に向けて空気を送出する。送風ユニット6は、周方向に配置されて軸周りに回転する複数のファンと同ファンを回転させるモータからなる周知の構成とすればよい。
【0031】
切替ダンパ7は、送風ユニット6から送出された空気の方向を着座面吹出口4方向と、ヘッドレスト吹出口2、ノズル3方向とに切り替える。送風ユニット6からヘッドレスト吹出口2、ノズル3へ送出される空気はダクト9を通って送出される。切替弁8は、ダクト9を通って送出されてきた空気の方向をヘッドレスト吹出口2方向と、ノズル3方向とに切り替える。
【0032】
ヘッドレスト吹出口2と着座面吹出口4とにはペルチェ素子20、40が配置されている。ペルチェ素子は、通電されることによって一端側で吸熱し、多端側で放熱する機能を有する素子である。ペルチェ素子へ通電する電圧の極性を反転させることで冷房と暖房とが切り替えられる。
【0033】
図2にはヘッドレスト71が示されている。同図のとおり、ヘッドレスト吹出口2にはヘッドレスト温度センサ21(センサ)が備えられている。センサ21によってヘッドレスト吹出口2から吹出される空気の温度が計測される。
【0034】
図3にはノズル3が示されている。ノズル3はペルチェ素子30、首筋方向吹出口31、熱交換部32、ノズル口温度センサ33を備える。ノズル3へ送られた空気は首筋方向吹出口31から吹き出される。首筋方向吹出口31から吹き出される空気は、ペルチェ素子30を用いて熱交換部32で熱が交換されることにより温度調節される。ノズル口温度センサ33(センサ)で首筋方向吹出口31から吹き出される空気の温度が計測される。
【0035】
図4には空調装置1の情報処理に係るシステム構成の概要図が示されている。補助空調ECU5は通常のコンピュータの構造を有するとし、各種演算や各種指令送信を含む情報処理を実行するCPUやその作業領域としてのRAMや不揮発性の記憶部(メモリ)を備えるとすればよい。上述のセンサ21、33の計測値は補助空調ECU5に送られる。また補助空調ECU5から送風ユニット6、切替ダンパ7、切替弁8、ペルチェ素子20、30、40を制御する指令が送信される。センサ21、33の計測値はフィードバックされてペルチェ素子による送風温度の制御で用いられるとすればよい。
【0036】
また補助空調ECU5は多重通信バス100を介してエンジンECU60、エアコンECU61、ドアECU62と通信可能に接続されている。エンジンECU60は車両のエンジン制御を司るECUであり、本発明に関わる部分としてはエンジンを始動するためのイグニションスイッチ63(イグニションSW)と接続され、イグニションSW63のオンオフ状態の情報を取得することができる。
【0037】
エアコンECU61は内気センサ64、外気センサ65と接続され、各センサの計測値を取得できる。内気センサ64は例えば座席の下などに配置されて、車室内の温度を計測する。外気センサ65は例えば車両前面のラジエータの前などに配置されて、外気の温度を計測する。また、外気センサ65はエンジンECUに接続している場合もある。またドアECU62はドアの開閉情報を取得することができる。
【0038】
また図4のとおり、補助空調ECU5は着座センサ80、覚醒状態検出部81と接続されて、これらから情報を取得する。着座センサ80は例えばシート70の着座面に配置されて乗員が着座しているか否かの情報を検出する。着座センサが他のボデー系ECUと接続している場合は、多重通信バス100を介して情報を取得してもよい。覚醒状態検出部81は乗員の覚醒状態が高いか低いかを検出する。覚醒状態検出部81は例えば乗員の心拍数から乗員の覚醒状態の低下を検出するとすればよい。その場合、乗員の心拍数はステアリングホイールに設置された電極によって計測し、さらに心拍数を周波数解析して、予め取得された覚醒時のピーク周波数から設定された覚醒度合指標帯域と眠気度合指標帯域におけるスペクトル強度から覚醒低下状態を検出すればよい。また、覚醒状態検出部を持つECUから多重通信バス100を介して覚醒低下状態情報を取得してもよい。
【0039】
また補助空調ECU5は電子負荷情報取得部50を備える。電子負荷情報取得部50は、多重通信バス100を通じて電子負荷情報、すなわち車両各部において現時点で電子機器がどれだけ使用されているかの情報を取得する。
【0040】
図5には空調装置1による乗員乗車時の補助空調のための処理手順を示すフローチャートが示されている。図5に示された各種処理は明示されない限り補助空調ECU5によって自動的に順次処理されるとすればよい。
【0041】
まず手順S10で車両のドアが開いたとの情報を補助空調ECU5が取得する。この情報は多重通信バス100を通じてドアECU62から取得すればよい。次にS20で、ドアが開いたことを受けて補助空調ECU5が起動する。ドアが開いたとの情報を補助空調ECU5が取得したら補助空調ECU5が自動的に起動するように設定しておけばよい。
【0042】
次にS30では各種センサ計測値等を取得する。各種センサ計測値等とはセンサ21、33、着座センサ80、覚醒状態検出部81、電子負荷情報検出部50の計測値、出力値とすればよい。次にS40では送風を開始するか否かを判断する。送風を開始する場合(S40:YES)はS50に進み、送風を開始しない場合(S40:NO)は再びS30に戻る。S40で送風を開始する条件としては、例えばS30で着座センサ80によって乗員の着座が検出されたこととしてもよい。これにより着座直後から着座者に向けて送風される。
【0043】
次にS50では切替弁8、切替ダンパ7の開度を設定する。次にS60では送風ユニット6から送風される風量を設定する。次にS70ではペルチェ素子20、30、40を制御する。つまりペルチェ素子20、30、40へ印加する電圧の値及び極性を決定する。以上によりS50からS70でヘッドレスト吹出口2、ノズル3、着座面吹出口4から送出される送風風量、送風温度、及びヘッドレスト吹出口2、ノズル3、着座面吹出口4への風量配分が決定される。S50からS70ではS30で取得したセンサ計測値に基づいて、そして予め定めておいたルールに従って、例えば以下のように送風風量、送風温度、及び風量配分を決定すればよい。
【0044】
例えば、冷房の場合には、内気センサ64によって計測された車室内温度よりも所定値以上低く送風温度を設定してもよい。あるいは冷房の場合に、外気センサ65によって計測された車外温度よりも所定値以上低く送風温度を設定してもよい。あるいは冷房の場合に、内気センサ64、あるいは外気センサ65によって計測された車室内温度、車外温度が高いほど、送風温度を低下させてもよい。ペルチェ素子20、30、40が吹出口2、3、4近傍に配置されているので、これにより、十分に冷却された空気が送風開始直後(つまり着座直後)から着座者に向けて吹出される。よって着座者の快適感が高まる。
【0045】
同様に暖房の場合には、内気センサ64、あるいは外気センサ65によって計測された車室内温度、車外温度よりも所定値以上高く送風温度を設定してもよい。また暖房の場合に内気センサ64、あるいは外気センサ65によって計測された車室内温度、車外温度が低いほど、送風温度を上昇させてもよい。これにより十分に暖められた空気が送風開始直後から着座者に向けて吹出されるので、着座者の快適感が高まる。
【0046】
また冷房の場合に、内気センサ64、あるいは外気センサ65によって計測された車室内温度、車外温度が高いほど、ノズル3への送風配分を高くしてもよい。逆に冷房の場合に、内気センサ64、あるいは外気センサ65によって計測された車室内温度、車外温度が低いほど、ヘッドレスト吹出口2、ノズル3、着座面吹出口4への風量配分を均等にしてもよい。これにより車室内温度、車外温度が高いほど、送風開始直後から、通常皮膚が露出し冷感に対して敏感な首筋部に向けて、十分に冷却された空気がより多く吹出される。よって着座者の快適感が高まる。
【0047】
また暖房の場合には、内気センサ64、あるいは外気センサ65によって計測された車室内温度、車外温度が低いほど、着座面吹出口4への送風配分を高くしてもよい。これにより車室内温度、車外温度が低いほど、送風開始直後から、十分に暖められた空気が着座者の腿部、尻部に向けてより多く吹出される。よって着座者は腿部、尻部から大きな温感を得ることができる。
【0048】
また冷房の場合、内気センサ64、あるいは外気センサ65によって計測された車室内温度、車外温度が高いほど、風量を大きくすればよい。暖房の場合は、内気センサ64、あるいは外気センサ65によって計測された車室内温度、車外温度が低いほど、風量を大きくすればよい。これにより、送風開始直後から十分冷やされた、あるいは暖められた空気が、より大きな風量で着座者に向けて吹出すので、着座者の快適感が高まる。
【0049】
また電子負荷情報取得部50が取得された現在車内で使用されている電子負荷の値と車両の電源遷移情報(イグニションSW63がオンか否か等)とを補助空調ECU5が取得して、電子負荷の値が送風装置1に現時点で供給できる電力と比較して相対的に大きいほど風量を小さくしてもよい。これにより本発明が車両の他の機器の作動に影響を与えることが回避できる。ペルチェ素子が消費する電力は無視できないので、こうした優先順位の判断は重要である。
【0050】
以上のとおり決定された風量、温度、及び風量の配分のもとで、S80では送風を実行する。S85では再び各種センサ計測値等を取得する。S90では補助空調を継続するか否かを判断する。補助空調を継続する場合(S90:YES)は再びS50に戻り、補助空調を継続しない場合(S90:NO)はS100に進む。
【0051】
S90で送風を継続しない条件としては、例えばS85で着座センサ80により補助空調ECU5が離席と判断したこととすればよい。S100では送風を停止する。次にS110では補助空調ECU5をスリープ状態にする。以上が補助空調における処理手順である。
【0052】
図6には空調装置1による乗員の覚醒のための処理手順を示すフローチャートが示されている。図6に示された各種処理は明示されない限り補助空調ECU5によって自動的に順次処理されるとすればよい。以下では乗員は例えば運転者とすればよい。
【0053】
まず手順S200で運転者が覚醒低下状態にあることが検出される。この手順では覚醒状態検出部81の検出出力を取得すればよい。これを受けて優先的に乗員の覚醒のための処理に入り、S210に移行してただちに送風を実行する。したがって運転者が覚醒低下状態にあることが検出されたら直ちに送風が開始される。またS210における送風ではノズル3にのみ風量を配分するとしてもよい。さらに風量は所定の最大値とし、送風温度は所定の最低温度とすればよい。これにより覚醒装置1の持つ最大限の機能を用いて乗員を覚醒させるシステムとできるので好適である。次にS220で各種センサ計測値(上述と同様)を取得する。
【0054】
次にS230で送風を継続するか否かを判断する。送風を継続する場合(S230:YES)は再びS210に戻り、送風を継続しない場合(S230:NO)はS240に進む。S230で送風を継続しない条件としては、例えばS220で覚醒状態検出部81によって運転者が運転に必要な覚醒状態にあることが検出されたこととすればよい。S240では送風を停止して、乗員の覚醒のための処理を終了し、通常処理のS30へ移行する。以上が図6の処理手順である。図6の処理においても、ペルチェ素子30等が吹出口3等の近傍に配置されていることにより、送風開始直後から十分冷却された空気が送風されるので、高い覚醒効果を有する。また、覚醒低下状態は乗員にとっては緊急状態であるため、覚醒状態の低下傾向を察知して、例えばヘッドレストのみに冷風を送風して穏やかに覚醒を促してもよい。
【0055】
次に本発明の実施例2を説明する。実施例1ではペルチェ素子20、30、40を3つの吹出口2、3、4の近傍に配置することで送風開始直後から適切に温度調節された空気が送風されたが、実施例2ではダクト9内に滞留した空気を送風開始直後に着座者に向かわない方向に排出することで不快な温度の滞留空気が着座者に送風されることを回避する。実施例2は図7、8、9に示されている。以下で実施例1と異なる部分のみを説明する。
【0056】
図7は実施例2の空調装置1bの概略構成図である。空調装置1bでは、ヘッドレスト吹出口2が装備されていない。そしてノズル3がノズル3bに置き換えられている。また空調装置1bでは、ペルチェ素子としてはペルチェ素子40のみが用いられて、図7で示された位置に配置されている。
【0057】
図8には実施例2におけるノズル3bの詳細が示されている。ノズル3bは、3つの吹出口すなわち、首筋方向吹出口34、ヘッドレスト方向吹出口35、滞留空気排出口36を有し、この3つの吹出口を切り替えるための吹出口切替モータ37を備える。
【0058】
図9には、こうした構成による乗員乗車時の補助空調のための処理手順を示すフローチャートが示されている。図5のフローチャートと異なる点を以下で説明する。まず手順S40の次でS45として、滞留空気の排出が実行される。この手順ではノズル3bにおいて滞留空気排出口36のみから送風するように制御すればよい。
【0059】
またS70の次にS75吹出口切替制御の手順が追加されている。この手順ではノズル3bにおいて滞留空気排出口36から首筋方向吹出口34、ヘッドレスト方向吹出口35の吹出しへ切り替える制御を行う。これにより着座者に向けて適切に温度調節された空気が送風される。また図9のS50では切替ダンパの開度のみを設定する。これは単に空調装置1bでは切替弁8が装備されていないことからくる変更である。
【0060】
以上の構成及び処理手順により実施例2では、上述のとおり送風開始直後には滞留空気排出口36のみから送風するように制御するので、送風開始直後にダクト9内に滞留した不快な温度の空気が着座者に向けて送風されることが回避できる。またヘッドレスト方向吹出口35を装備することで、実施例1におけるヘッドレスト吹出口2の装備が省略されており、低コスト化に資する。
【0061】
なお実施例2では着座面吹出口4から送風ユニットまでのダクトは短いことから、ノズル3bのような滞留空気排出口を着座面吹出口4には設けていないが、着座面吹出口4にも、送風開始直後に滞留空気を着座者に向かわない方向に排出するための滞留空気排出口を装備してもよい。これにより送風開始時の着座者の不快感回避がより確実になる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施例1における車両用補助空調装置あるいは覚醒装置の概略構成図。
【図2】ヘッドレストを示す図。
【図3】ノズルを示す図。
【図4】本発明のシステム構成を示す図。
【図5】補助空調における処理手順を示すフローチャート。
【図6】覚醒処理における処理手順を示すフローチャート。
【図7】実施例2における車両用補助空調装置あるいは覚醒装置の概略構成図。
【図8】実施例2のノズルを示す図。
【図9】実施例2の補助空調における処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0063】
1、1b 補助空調装置(送風装置、覚醒装置)
2 ヘッドレスト吹出口
3、3b ノズル
4 着座面吹出口
5 補助空調ECU
6 送風ユニット
7 切替ダンパ
8 切替弁
9 ダクト
20、30、40 ペルチェ素子
21 ヘッドレスト吹出口
31 首筋方向吹出口
32 熱交換部
33 ノズル口温度センサ
60 エンジンECU
61 エアコンECU
62 ドアECU
70 座席
71 ヘッドレスト
80 着座センサ
81 覚醒状態検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者が着座する座席に備えられた送風装置であって、
空気を送風する送風部と、
前記座席に備えられ、前記送風部から送風された空気を前記座席に着座した着座者の近傍から送出する送出口と、
前記送出口から空気を送出する際の送出の開始時から所定の温度範囲の空気を前記送出口から送出するように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする送風装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記送出口の近傍に配置されて、前記送出口から送出される空気の温度を調節する温度調節部を備えた請求項1に記載の送風装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記送出口よりも送風経路の上流側に配置されて、前記送出口へ向けて送出する空気の温度を調節する温度調節部と、
前記温度調節部から前記送出口への空気の送風経路から分岐して前記座席の着座した着座者とは異なる方向へ向けて空気を送出する副送出口と、
前記送風部からの空気の送風の開始時においては、まず前記副送出口から空気を送出し、その後前記送出口からの空気の送出へと切り替える切替部と、
を備えた請求項1に記載の送風装置。
【請求項4】
前記送出口は前記着座者の首筋部位へ空気を送出する首筋部送出口を含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載の送風装置。
【請求項5】
前記送出口は前記着座者の後頭部へ空気を送出する後頭部送出口を含む請求項1乃至4のいずれか一項に記載の送風装置。
【請求項6】
前記送出口は前記座席において前記着座者が着座する着座面から空気を送出する着座面送出口を含む請求項1乃至5のいずれか一項に記載の送風装置。
【請求項7】
前記着座者が着座したことを検出する着座検出部と、
前記着座検出部が前記着座者の着座を検出したら前記送出口からの空気の送出を開始する送出開始制御手段と、
を備えた請求項1乃至6のいずれか一項に記載の送風装置。
【請求項8】
前記座席は車両の座席である請求項1乃至7のいずれか一項に記載の送風装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項の送風装置を備え、
前記座席に着座した着座者が覚醒低下状態にあることを検出する覚醒低下状態検出部と、
前記覚醒低下検出部が着座者が覚醒低下状態にあることを検出した場合に前記送出口からの空気の送出を開始する覚醒手段と、
を備えたことを特徴とする覚醒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−76652(P2010−76652A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248519(P2008−248519)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】