説明

逆回転防止機能を有する誘導電動機

【課題】初期駆動時に同期ロータ及び誘導ロータの逆回転を防止すると共に、構造を簡単にして製作コストを低減し得る逆回転防止機能を有する誘導電動機を提供する。
【解決手段】逆回転防止機能を有する誘導電動機は、電流によりフラックスを発生させる巻線コイル510が備えられたステータ500と、ケージ610が備えられ、内部に回転軸が結合されてステータ500の内部に回転自在に挿入される誘導ロータ600と、永久磁石710が備えられ、ステータ500と誘導ロータ600の間に回転自在に結合される同期ロータ700と、同期ロータ700を軸方向に移動させる力を発生する誘導力発生ユニットと、同期ロータ700に逆回転力が作用すると、誘導力発生ユニットにより移動する同期ロータ700を固定して逆回転を防止する回転防止ユニット800とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導電動機に関し、特に、初期駆動時に同期ロータ及び誘導ロータの逆回転を防止すると共に、構造を簡単にして製作コストを低減し得る逆回転防止機能を有する誘導電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電動機は、電気エネルギーを運動エネルギーに変換させるものであって、家電製品等の多様な分野に適用され、これらの製品の動力源として使用されている。このような電動機は、例えば、冷蔵庫に使用された場合、ファンを回転させて冷蔵庫内部の冷気を循環させ、エアコンに使用された場合、ファンを回転させて蒸発器で形成された冷気を室内に流動させる。
【0003】
また、このような電動機の種類は使用分野によって多様であるが、そのうち、誘導電動機は、回転磁界を形成するステータと、該ステータの内部に回転自在に挿入される誘導ロータとを含む。一方、近年、誘導電動機の効率を向上させるために、ステータと誘導ロータの間に永久磁石が挿入された誘導電動機が開発されている。
【0004】
図11は本出願人が研究開発中の誘導電動機を示す正断面図で、図12は本出願人が研究開発中の誘導電動機を示す側断面図である。
【0005】
図11及び図12に示すように、誘導電動機は、巻線コイルが備えられたステータ100と、ステータ100の内部に回転自在に挿入される誘導ロータ200と、ステータ100と誘導ロータ200の間に回転自在に挿入される同期ロータ300とを含む。
【0006】
ステータ100は、所定長さを有するように形成されたステータコア110と、ステータコア110の内部に形成された複数の歯部111に巻回されて回転磁界を形成する巻線コイル120とを含む。ここで、ステータコア110は、複数枚のシートが積層されてなる積層体である。
【0007】
また、誘導ロータ200は、所定長さと外径を有するロータコア210と、ロータコア210の内部に挿入されるケージ220とを含む。ここで、ロータコア210は、複数枚のシートが積層されてなる積層体であり、ロータコア210の中央には回転軸230が結合される。ケージ220は、ロータコア210の両側面にそれぞれ位置する環状のエンドリング部221と、ロータコア210の内部に位置してこれら2つのエンドリング部221を連結する複数の連結ロッド部222とからなる。複数の連結ロッド部222は、所定間隔をなしており、エンドリング部221の中心線と平行に配列される。ケージ220は導体であり、ロータコア210にインサート成形により形成される。
【0008】
さらに、誘導ロータ200は、ステータ100の挿入孔に挿入される。
【0009】
また、同期ロータ300は、所定厚さを有する中空円筒状の永久磁石310と、永久磁石310を支持するコップ状のホルダ320とを含む。永久磁石310は、ステータ100と誘導ロータ200の間の空隙に回転自在に挿入され、ホルダ320の一側には軸受330が結合され、軸受330には回転軸230が結合される。
【0010】
また、ステータ100は、モータケーシング400の内部に装着され、モータケーシング400の両側面には軸受410がそれぞれ備えられ、各軸受410には回転軸230が結合される。
【0011】
誘導電動機は、回転軸230を介して回転力が負荷へ伝達され、図11は回転軸230に負荷としてファン240が装着された場合を示している。
【0012】
以下、このように構成された誘導電動機の動作について説明する。
【0013】
ステータ100に電源が供給されて回転磁界が形成されると、永久磁石310が備えられた同期ロータ300は、その回転磁界によって回転軸230に対して相対回転し、同期ロータ300の回転により発生する永久磁石310のフラックスにより、誘導ロータ200のケージ220に誘導電流が流れる。すると、ステータ100の回転磁界と、同期ロータ300の永久磁石310及び誘導ロータ200に誘起される誘導電流等の影響により、誘導ロータ200が回転する。
【0014】
誘導電動機は、回路構成によって、初期駆動時、同期ロータ300の永久磁石310及び巻線コイル120を構成するサブ巻線コイルに流れる電流により、誘導ロータ200を同期速度まで回転させ、その後、巻線コイル120を構成するメイン巻線コイルに流れる電流により、誘導ロータ200を回転させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、このような誘導電動機は、初期電源投入時、電圧位相と不平衡な回転磁界の影響等により、同期ロータ300及び誘導ロータ200が逆回転するという欠点があった。同期ロータ300及び誘導ロータ200は、負荷慣性が小さいほど、また、電圧が大きいほど逆回転する傾向がある。
【0016】
一方、このような誘導電動機の同期ロータ300及び誘導ロータ200の逆回転を防止するために、誘導電動機に逆回転防止回路を備えて、同期ロータ300及び誘導ロータ200の逆回転を防止する方法が提案されたが、逆回転防止回路の構成が複雑で製作コストが高いという問題があった。
【0017】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、初期駆動時に同期ロータ及び誘導ロータの逆回転を防止すると共に、構造を簡単にして製作コストを低減し得る逆回転防止機能を有する誘導電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このような目的を達成するために、本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機は、電流によりフラックスを発生させる巻線コイルが備えられたステータと、ケージが備えられ、内部に回転軸が結合されてステータの内部に回転自在に挿入される誘導ロータと、永久磁石が備えられ、ステータと誘導ロータの間に回転自在に結合される同期ロータと、同期ロータを軸方向に移動させる力を発生する誘導力発生ユニットと、同期ロータに逆回転力が作用すると、誘導力発生ユニットにより移動する同期ロータを固定して逆回転を防止する回転防止ユニットとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機は、誘導電動機の初期駆動時、印加された電圧の位相又は不平衡な回転磁界等に起因して、誘導ロータに逆回転力が作用した場合、同期ロータの負荷慣性を増加させて同期ロータ及び誘導ロータの逆回転を防止することにより、誘導電動機の信頼性を向上し得るという効果がある。
【0020】
また、誘導電動機の逆回転を防止する構成が簡単であり、その構成部品点数が少ないため、製作が容易であるだけでなく製作コストが安価であり、製品の価格競争力を向上し得るという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機の好ましい実施形態について添付の図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機の第1実施形態を示す正断面図である。
【0023】
図1に示すように、本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機の第1実施形態は、電流によりフラックスを発生させる巻線コイル510が備えられたステータ500と、ケージ610が備えられ、内部に回転軸630が結合されてステータ500の内部に回転自在に挿入される誘導ロータ600と、永久磁石710が備えられ、ステータ500と誘導ロータ600の間の空隙に回転自在に結合される同期ロータ700と、同期ロータ700を軸方向に移動させる力を発生する誘導力発生ユニットと、同期ロータ700に逆回転力が作用すると、誘導力発生ユニットにより移動する同期ロータ700を固定して逆回転を防止する回転防止ユニット800とを含む。
【0024】
ステータ500は、所定長さを有するように形成されたステータコア520と、ステータコア520に巻回された複数の巻線コイル510とを含み、複数の巻線コイル510は、ステータコア520の内部に形成された歯部(図示せず)に巻回されている。
【0025】
また、誘導ロータ600は、所定長さと外径を有するロータコア620と、ロータコア620の内部に挿入されるケージ610とを含む。ロータコア620は、複数枚のシートが積層されてなる積層体であり、ロータコア620の中央には回転軸630が結合され、回転軸630には、負荷として、例えば、ファン640が結合される。
【0026】
また、ケージ610は導体であり、ロータコア620にインサート成形により形成される。ケージ610の材料は、アルミニウムであることが好ましい。
【0027】
また、誘導ロータ600は、ステータ500の内部に形成された挿入孔に回転自在に挿入される。
【0028】
また、同期ロータ700は、所定厚さを有する中空円筒状の永久磁石710と、永久磁石710を支持するコップ状のホルダ720とを含む。永久磁石710は、ステータ500と誘導ロータ600の間の空隙に回転自在に挿入され、ホルダ720の一側には軸受730が結合され、軸受730には回転軸630が結合される。ここで、同期ロータ700に結合される軸受730は、軸方向に移動可能なブッシュ軸受であることが好ましい。
【0029】
また、ステータ500は、モータケーシング900の内部に装着され、モータケーシング900の両側面には軸受910がそれぞれ備えられ、各軸受910には回転軸630が結合される。
【0030】
誘導力発生ユニットは、誘導ロータ600のケージ610に誘導される電流が、誘導ロータ600の回転中心軸方向に対して傾斜して流れるようにする。このような誘導力発生ユニットは、複数の傾斜連結ロッド部612が備えられたケージ610により実現される。
【0031】
すなわち、ケージ610は、図2に示すように、ロータコア620の両側面にそれぞれ位置する環状のエンドリング部611と、ロータコア620の内部に位置し、これら2つのエンドリング部611の中心線に対して傾斜するように、これら2つのエンドリング部611の間を連結する複数の傾斜連結ロッド部612とを含む。複数の傾斜連結ロッド部612は、ケージ610を水平に位置させた状態で、同一中心線を有する2つのエンドリング部611の中心線を基準に、右側部分がその中心線より上方に位置し、左側部分がその中心線より下方に位置するように傾斜して配列される。ケージ610に誘導電流が流れるとき、ケージ610の傾斜連結ロッド部612に沿って流れることによって、その誘導電流は回転中心軸に対して傾斜して流れる。
【0032】
また、回転防止ユニット800は、同期ロータ700に逆回転力が作用すると、誘導力発生ユニットにより移動する同期ロータ700を誘導ロータ600に噛み合わせて一体とし、同期ロータ700の負荷慣性を増加させることにより、同期ロータ700の回転を防止する。
【0033】
このような回転防止ユニット800は、図3及び図4に示すように、誘導ロータ600の端面に所定間隔で突出形成される複数の係止突起810と、複数の係止突起810が形成された誘導ロータ600の一面と対向する同期ロータ700の一面に形成され、同期ロータ700の逆回転時、各係止突起810と噛み合う複数の係止突条820とを含む。係止突起810は、誘導ロータ600を構成するケージ610のエンドリング部611に形成されることが好ましい。また、係止突条820は、同期ロータ700を構成するコップ状のホルダ720の内側の底面に形成されることが好ましい。
【0034】
また、誘導ロータ600に形成される係止突起810は、リング状に配列されることが好ましい。
【0035】
また、回転軸630には、同期ロータ700の正回転時、同期ロータ700の設定位置を維持するストッパ830が備えられる。ストッパ830は、所定厚さを有するリング状に形成され、同期ロータ700のホルダ720の外側に位置するように回転軸630に結合される。同期ロータ700のホルダ720とストッパ830とが接触する面は、それぞれ軸受面で形成されることが好ましい。
【0036】
一方、回転防止ユニット800の変形例として、図5に示す回転防止ユニット800は、誘導ロータ600の一面に設けられる第1摩擦部材840と、第1摩擦部材840が位置する誘導ロータ600の一面と対向する同期ロータ700の一面に設けられ、同期ロータ700の逆回転時、第1摩擦部材840と接触する第2摩擦部材850とを含む。
【0037】
第1摩擦部材840及び第2摩擦部材850は、所定厚さを有するリング状に形成され、ゴム材料で形成されることが好ましい。
【0038】
以下、このように構成された本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機の第1実施形態の動作について図1〜図7を用いて説明する。
【0039】
本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機は、図1に示すステータ500に電源が供給されて回転磁界が形成されると、永久磁石710が備えられた同期ロータ700は、その回転磁界によって回転軸630に対して相対回転し、同期ロータ700の回転により発生する永久磁石710のフラックスにより、誘導ロータ600のケージ610に誘導電流が流れる。すると、ステータ500の回転磁界と、同期ロータ700の永久磁石710及び誘導ロータ600に誘起される誘導電流等の影響により、誘導ロータ600が回転する。
【0040】
一方、誘導電動機の初期駆動時、印加された電圧の位相又は不平衡な回転磁界等に起因して、同期ロータ700に逆回転力が発生し、これと同時に誘導ロータ600に作用する誘導電流により、同期ロータ700が誘導ロータ600側に移動する。このような過程をより詳しく説明すると、図6に示すように、誘導ロータ600のケージ610の傾斜連結ロッド部612に誘導される電流と同期ロータ700の永久磁石710のフラックスにより、誘導ロータにファン640の逆方向(図6における右)に軸方向の力が作用し、その力の大きさによって同期ロータ700の永久磁石710に反力が作用して、同期ロータ700が誘導ロータ600側(図6における左)に移動する。同期ロータ700が誘導ロータ600側に移動することによって、図7に示すように、回転防止ユニット800を構成する誘導ロータの何れか2つの係止突起810(図3参照)と同期ロータ700の各係止突条820(図4参照)とが噛み合う。誘導ロータ600の係止突起810と同期ロータ700の各係止突条820とが噛み合うことによって、同期ロータ700がファン640、回転軸630、及び誘導ロータ600と一体になり、同期ロータ700が他の部品と一体になることによって、負荷慣性(質量慣性)が非常に大きくなるため、同期ロータ700の逆回転が防止される。
【0041】
また、誘導電動機の初期駆動時、印加された電圧の位相が変わるか、又は不平衡な回転磁界等が解消されると、誘導ロータケージ610の傾斜連結ロッド部612に誘導される電流の方向が変わって、同期ロータ700の永久磁石710に作用する力が逆方向に変わることによって、同期ロータ700が誘導ロータ600の反対側(図6における右)に移動する。よって、噛み合っていた誘導ロータ600の係止突起810と同期ロータ700の係止突条820とが離脱して、同期ロータ700が正回転する。このとき、同期ロータ700は、回転軸630に結合されたストッパ830により移動が制限される。
【0042】
同期ロータ700が正回転すると共に誘導ロータ600が正回転し、誘導ロータ600の正回転により、回転軸630及び該回転軸630に結合されたファン640が正回転する。
【0043】
一方、図5に示すように、回転防止ユニット800が第1摩擦部材840と第2摩擦部材850とを含む場合、第1摩擦部材840と第2摩擦部材850の摩擦力により、同期ロータ700と誘導ロータ600とが一体になる。
【0044】
このように、本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機の第1実施形態は、誘導電動機の初期駆動時、印加された電圧の位相又は不平衡な回転磁界等に起因して、誘導ロータ600に逆回転力が作用した場合、同期ロータ700と誘導ロータ600とが一体に結合されることによって、負荷慣性を増加させて逆回転を防止する。
【0045】
また、前記誘導電動機の初期駆動時、印加された電圧の位相又は不平衡な回転磁界等に起因して、誘導ロータ600に逆回転力が作用したとき、その逆回転を防止する構成要素が、ケージ610、複数の係止突起810及び複数の係止突条820等から構成されるため、構成部品及び構造が簡単になる。
【0046】
図8は本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機の第2実施形態を示す正断面図である。第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付す。
【0047】
図8に示すように、本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機の第2実施形態は、電流によりフラックスを発生させる巻線コイル510が備えられたステータ500と、ケージ610が備えられ、内部に回転軸が結合されてステータ500の内部に回転自在に挿入される誘導ロータ600と、永久磁石710が備えられ、ステータ500と誘導ロータ600の間に回転自在に結合される同期ロータ700と、同期ロータ700を軸方向に移動させる力を発生する誘導力発生ユニットと、同期ロータ700に逆回転力が作用すると、誘導力発生ユニットにより移動する同期ロータ700を固定して逆回転を防止する回転防止ユニット800とを含む。
【0048】
第2実施形態の構成は、前述の誘導力発生ユニット及び回転防止ユニット800を除いては第1実施形態と同様である。
【0049】
誘導力発生ユニットは、誘導ロータ600のケージ610に誘導される電流が、誘導ロータ600の回転中心軸方向に対して傾斜して流れるようにする。このような誘導力発生ユニットは、ケージ610を構成する複数の傾斜連結ロッド部613が、第1実施形態の傾斜連結ロッド部612の傾斜方向と逆に配列される。
【0050】
すなわち、ケージ610は、ロータコア620の両側面にそれぞれ位置する環状のエンドリング部614と、ロータコア620の内部に位置し、これら2つのエンドリング部614の中心線と傾斜するように、これら2つのエンドリング部614の間を連結する複数の傾斜連結ロッド部613とを含み、複数の傾斜連結ロッド部613は、ケージ610を水平に位置させた状態で、同一中心線を有する2つのエンドリング部614の中心線を基準に、右側部分がその中心線より下方に位置し、左側部分がその中心線より上方に位置するように傾斜して配列される。
【0051】
また、回転防止ユニット800は、同期ロータ700に逆回転力が作用すると、前記誘導力発生ユニットにより移動する同期ロータ700をモータケーシング900に噛み合わせて一体とし、同期ロータ700の負荷慣性を増加させることにより、同期ロータ700の回転を防止する。
【0052】
このような回転防止ユニット800は、同期ロータ700の端面に所定間隔で突出形成される複数の係止突起860と、誘導電動機を収容するモータケーシング900の一面に形成され、同期ロータ700の逆回転時、何れかの係止突起860と噛み合う複数の係止突条870とを含む。係止突起860は、同期ロータ700のホルダ720の一面に形成され、係止突条870は、係止突起860が形成されたホルダ720の一面と対向するモータケーシング900の内面に形成される。
【0053】
また、誘導ロータ600に形成される係止突起860は、リング状に配列されることが好ましい。
【0054】
また、回転軸630には、同期ロータ700の正回転時、同期ロータ700の設定位置を維持するストッパ830が備えられる。ストッパ830は、所定厚さを有するリング状に形成され、誘導ロータ600の一面と同期ロータ700のホルダ720の内面の間に位置するように回転軸630に結合される。同期ロータ700のホルダ720とストッパ830とが接触する面は、それぞれ軸受面で形成されることが好ましい。
【0055】
一方、回転防止ユニット800の変形例として、図9に示す回転防止ユニット800は、同期ロータ700のホルダ720の外面に設けられる第1摩擦部材880と、第1摩擦部材880が位置する同期ロータ700のホルダ720の外面と対向するモータケーシング900の内面に設けられ、同期ロータ700の逆回転時、第1摩擦部材880と接触する第2摩擦部材890とを含む。
【0056】
第1摩擦部材880及び第2摩擦部材890は、所定厚さを有するリング状に形成され、ゴム材料で形成されることが好ましい。
【0057】
以下、このように構成された逆回転防止機能を有する誘導電動機の第2実施形態の動作について図8〜図10を用いて説明する。
【0058】
まず、誘導電動機の初期駆動時、印加された電圧の位相又は不平衡な回転磁界等に起因して、図8に示す同期ロータ700に逆回転力が発生し、これと同時に誘導ロータ600に作用する誘導電流により、同期ロータ700が誘導ロータ600の反対側に移動する。
【0059】
すなわち、誘導ロータ600を構成するケージ610の傾斜連結ロッド部613の方向が、第1実施形態のケージ610の傾斜連結ロッド部612の方向と逆方向であるため、同期ロータ700に作用する力は、第1実施形態の逆方向である。同期ロータ700が誘導ロータ600の反対側に移動することによって、図10に示すように、回転防止ユニット800を構成する同期ロータ700の係止突起860とモータケーシング900の係止突条870とが噛み合う。同期ロータ700の係止突起860とモータケーシング900の係止突条870とが噛み合うことによって、同期ロータ700がモータケーシング900と一体になり、負荷慣性(質量慣性)が非常に大きくなるため、同期ロータ700の逆回転が防止される。また、誘導電動機の初期駆動時、印加された電圧の位相が変わるか、又は不平衡な回転磁界等が解消されると、誘導ロータケージ610の傾斜連結ロッド部613に誘導される電流の方向が変わって、同期ロータ700の永久磁石710に作用する力が逆方向に変わることによって、同期ロータ700が誘導ロータ600側(図10における左)に移動する。よって、噛み合っていた同期ロータ700の係止突起860とモータケーシング900の係止突条870とが離脱して、同期ロータ700が正回転する。このとき、同期ロータ700は、回転軸630に結合されたストッパ830により移動が制限される。
【0060】
同期ロータ700が正回転すると共に誘導ロータ600が正回転し、誘導ロータ600の正回転により、回転軸630及び該回転軸630に結合されたファン640が正回転する。
【0061】
一方、図9に示すように、回転防止ユニット800が第1摩擦部材880と第2摩擦部材890とを含む場合、第1摩擦部材880と第2摩擦部材890の摩擦力により、同期ロータ700とモータケーシング900とが一体になる。
【0062】
このように、本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機の第2実施形態は、誘導電動機の初期駆動時、印加された電圧の位相又は不平衡な回転磁界等に起因して、誘導ロータ600に逆回転力が作用した場合、同期ロータ700とモータケーシング900とが一体に結合されることによって、負荷慣性を増加させて逆回転を防止する。
【0063】
また、誘導電動機の初期駆動時、印加された電圧の位相又は不平衡な回転磁界等に起因して、誘導ロータ600に逆回転力が作用したとき、その逆回転を防止する構成要素が、ケージ610、複数の係止突起860及び複数の係止突条870等から構成されるため、構成部品及び構造が簡単になる。
【0064】
また、本発明の他の実施形態として、誘導力発生ユニットを構成するとき、ケージの傾斜連結ロッド部を傾斜させずに回転中心軸と平行に配列し、同期ロータを構成する永久磁石に着磁される極を傾斜して配列することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機の第1実施形態を示す正断面図である。
【図2】本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機を構成するケージを示す斜視図である。
【図3】本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機を構成する回転防止ユニットを示す側断面図である。
【図4】本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機を構成する回転防止ユニットを示す側断面図である。
【図5】本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機を構成する回転防止ユニットの変形例を示す正断面図である。
【図6】本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機の誘導ロータに作用する力を示す図である。
【図7】本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機の作動状態を示す正断面図である。
【図8】本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機の第2実施形態を示す正断面図である。
【図9】本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機の第2実施形態を構成する回転防止ユニットの変形例を示す正断面図である。
【図10】本発明に係る逆回転防止機能を有する誘導電動機の第2実施形態の作動状態を示す正断面図である。
【図11】本出願人が研究開発中の誘導電動機を示す正断面図である。
【図12】本出願人が研究開発中の誘導電動機を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0066】
500 ステータ
510 巻線コイル
600 誘導ロータ
610 ケージ
611、614 エンドリング部
612、613 傾斜連結ロッド部
630 回転軸
700 同期ロータ
710 永久磁石
800 回転防止ユニット
810、860 係止突起
820、870 係止突条
840、880 第1摩擦部材
850、890 第2摩擦部材
830 ストッパ
900 モータケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流によりフラックスを発生させる巻線コイルが備えられたステータと、
ケージが備えられ、内部に回転軸が結合されて前記ステータの内部に回転自在に挿入される誘導ロータと、
永久磁石が備えられ、前記ステータと前記誘導ロータの間に回転自在に結合される同期ロータと、
前記同期ロータを軸方向に移動させる力を発生する誘導力発生ユニットと、
前記同期ロータに逆回転力が作用すると、前記誘導力発生ユニットにより移動する前記同期ロータを固定して逆回転を防止する回転防止ユニットと、
を含むことを特徴とする逆回転防止機能を有する誘導電動機。
【請求項2】
前記誘導力発生ユニットは、前記誘導ロータのケージに誘導される電流が、前記誘導ロータの回転中心軸方向に対して傾斜して流れるようにすることを特徴とする請求項1に記載の逆回転防止機能を有する誘導電動機。
【請求項3】
前記誘導力発生ユニットは、着磁された磁極が前記誘導ロータの回転中心軸方向に対して傾斜して配列される前記永久磁石を含むことを特徴とする請求項1に記載の逆回転防止機能を有する誘導電動機。
【請求項4】
前記誘導力発生ユニットが、誘導電流が発生する前記誘導ロータのケージを含み、
前記ケージが、環状を有する2つのエンドリング部と、これら2つのエンドリング部の中心線に対して傾斜して位置し、これら2つのエンドリング部を連結する複数の傾斜連結ロッド部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の逆回転防止機能を有する誘導電動機。
【請求項5】
前記ケージの傾斜連結ロッド部が、前記ケージを水平に位置させた状態で、前記2つのエンドリング部の中心線を基準に、右側部分がその中心線より上方に位置し、左側部分がその中心線より下方に位置するように傾斜することを特徴とする請求項4に記載の逆回転防止機能を有する誘導電動機。
【請求項6】
前記ケージの傾斜連結ロッド部が、前記ケージを水平に位置させた状態で、前記2つのエンドリング部の中心線を基準に、右側部分がその中心線より下方に位置し、左側部分がその中心線より上方に位置するように傾斜することを特徴とする請求項4に記載の逆回転防止機能を有する誘導電動機。
【請求項7】
前記回転軸に、前記同期ロータの正回転時、該同期ロータの設定位置を維持するストッパが備えられることを特徴とする請求項1に記載の逆回転防止機能を有する誘導電動機。
【請求項8】
前記回転防止ユニットは、前記同期ロータに逆回転力が作用すると、前記誘導力発生ユニットにより移動する前記同期ロータを前記誘導ロータに噛み合わせて一体とし、前記同期ロータの負荷慣性を増加させることにより、該同期ロータの回転を防止することを特徴とする請求項1に記載の逆回転防止機能を有する誘導電動機。
【請求項9】
前記回転防止ユニットは、前記同期ロータに逆回転力が作用すると、前記誘導力発生ユニットにより移動する前記同期ロータを誘導電動機を収容するモータケーシングに噛み合わせて一体とし、前記同期ロータの負荷慣性を増加させることにより、該同期ロータの回転を防止することを特徴とする請求項1に記載の逆回転防止機能を有する誘導電動機。
【請求項10】
前記回転防止ユニットは、
前記誘導ロータの一面に所定間隔で突出形成される複数の係止突起と、
前記複数の係止突起が形成された誘導ロータの一面と対向する前記同期ロータの一面に形成され、該同期ロータの逆回転時、前記各係止突起と噛み合う複数の係止突条と、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の逆回転防止機能を有する誘導電動機。
【請求項11】
前記係止突起が、前記誘導ロータのケージのエンドリング部に形成されることを特徴とする請求項10に記載の逆回転防止機能を有する誘導電動機。
【請求項12】
前記回転防止ユニットは、
前記誘導ロータの一面に設けられる第1摩擦部材と、
前記第1摩擦部材が位置する誘導ロータの一面と対向する前記同期ロータの一面に設けられ、該同期ロータの逆回転時、前記第1摩擦部材と接触する第2摩擦部材と、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の逆回転防止機能を有する誘導電動機。
【請求項13】
前記回転防止ユニットは、
前記同期ロータの一面に所定間隔で突出形成される複数の係止突起と、
前記誘導電動機を収容するモータケーシングの一面に形成され、前記同期ロータの逆回転時、前記各係止突起と噛み合う複数の係止突条と、
を含むことを特徴とする請求項9に記載の逆回転防止機能を有する誘導電動機。
【請求項14】
前記係止突起が、リング状に配列されることを特徴とする請求項10または13に記載の逆回転防止機能を有する誘導電動機。
【請求項15】
前記回転防止ユニットは、
前記同期ロータの一面に設けられる第1摩擦部材と、
前記誘導電動機を収容するモータケーシングの一面に設けられ、前記同期ロータの逆回転時、前記第1摩擦部材と接触する第2摩擦部材と、
を含むことを特徴とする請求項9に記載の逆回転防止機能を有する誘導電動機。
【請求項16】
前記第1摩擦部材及び前記第2摩擦部材が、ゴム材料で形成されることを特徴とする請求項12または15に記載の逆回転防止機能を有する誘導電動機。
【請求項17】
前記第1摩擦部材及び前記第2摩擦部材が、所定厚さを有するリング状に形成されることを特徴とする請求項12または15に記載の逆回転防止機能を有する誘導電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−217792(P2006−217792A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28623(P2006−28623)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(590001669)エルジー電子株式会社 (296)
【Fターム(参考)】