説明

逆止弁およびこれを用いた貯湯式給湯機

【課題】圧力緩和機能を有する小型のものを低コストの下に製造し易い逆止弁を得ること。
【解決手段】圧力緩和機能を有する逆止弁100を構成するにあたり、一次側と二次側とに連通する本流路25と逆止弁座13とが形成された弁外郭体1に逆止弁体30を摺動自在に設け、該逆止弁体内には二次側から一次側への逃し流路35と逃し弁体50とを設け、逆止弁体は、第1の弾性部材40により二次側から一次側に向かって付勢することで閉弁可能とし、逃し弁体は、第2の弾性部材60により一次側から二次側に向かって付勢することで閉弁可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次側での異常な圧力上昇を抑制する圧力緩和機能を備えた逆止弁およびこれを用いた貯湯式給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水栓器具や給湯管、給水管等に用いられる逆止弁には、流体の逆流を防止する機能の他に、当該逆止弁の二次側でウォーターハンマーや流体の体積膨張等により異常昇圧が起きたときに、逆止弁自体や二次側の流路に配置されている流路部品等が破壊されたり故障を起こしたりするのを防止する圧力緩和機能を有するものがある。
【0003】
例えば特許文献1には、流路内に配置した摺動弁座体を該摺動弁座体よりも一次側に配置したバネで二次側に押圧し、摺動弁座体内に配置した逆止弁体を二次側から一次側にバネで押圧して摺動弁座体内の弁座に着座可能にし、逆止弁体には逃し用弁座を設け、該逃し用弁座に着座する逃し用弁体を一次側から二次側にバネで押圧して、二次側の昇圧に伴って摺動弁座体が二次側から一次側に移動した後に逃し用弁体が逃し用弁座から離れるように構成することで上記の圧力緩和機能を付与した逆止弁が記載されている。
【0004】
この逆止弁では、二次側の昇圧に伴って摺動弁座体が二次側から一次側に移動するので、当該逆止弁内での二次側の容積が増大して二次側での圧力上昇が緩和される。また、その後に二次側の圧力が更に増大したときには、逃し用弁体が開弁して二次側の水が一次側に放出されるので、二次側での異常昇圧が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−187567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された逆止弁では、逆止弁体を収容した摺動弁座体よりも一次側に配置したバネにより当該摺動弁座体を一次側から二次側に摺動させることができるよう、比較的広いスペースを内部に確保しなければならないため、その長さが長くなって当該逆止弁が大型化する。結果として、この逆止弁を水栓器具に組み込むと該水栓器具が大型化し易く、管路に配置すると管路長が長くなり易くなる。また、摺動弁座体を押圧するバネ、逆止弁体を押圧するバネ、および逃し用弁体を押圧するバネの計3つのバネを用いるので、その製造および組付け作業が煩雑化し、製造コストの低減を図り難い。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、圧力緩和機能を有する小型のものを低コストの下に製造し易い逆止弁およびこれを用いた貯湯式給湯機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の逆止弁は、一次側と二次側とに連通する本流路および逆止弁座が形成された弁外郭体と、弁外郭体内に摺動自在に設けられ、二次側から一次側への逃し流路が内部に形成され、第1の弾性部材により二次側から一次側に向かって付勢されて逆止弁座に着座して閉弁する逆止弁体と、逃し流路内に設けられ、第2の弾性部材により一次側から二次側に向かって付勢されて逃し流路を閉塞する逃し弁体とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の給湯機は、給水管路により貯湯タンクに供給した低温水を熱源器で湯に沸き上げて貯湯タンクに貯留し、貯湯タンクに貯留された湯を給湯管路により所望の給湯先に供給する貯湯タンクであって、貯湯タンクに接続された管路の少なくとも1つには、上記本発明の逆止弁が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の逆止弁では、逆止弁体内に逃し流路を形成すると共に該逃し流路内に逃し弁体を配置するので、逆止弁体よりも一次側および二次側のいずれにもバネ等の弾性部材を配置することなく圧力緩和機能を付与することが可能である。このため、逆止弁体を収容した摺動弁座体よりも一次側にバネを配置する特許文献1の逆止弁に比べ、小型化を図り易い。また、特許文献1の逆止弁に比べて部品点数が低減されるので、低コストの下に製造し易い。したがって、本発明によれば、圧力緩和機能を有する小型の逆止弁を低コストの下に製造し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の逆止弁の一例を概略的に示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示した逆止弁で一次側から二次側に流体が流れるときの各部材の位置を概略的に示す断面図である。
【図3】図3は、図1に示した逆止弁での圧力緩和時の状態を概略的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の貯湯式給湯機の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の逆止弁および貯湯式給湯機それぞれの実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の逆止弁の一例を概略的に示す断面図であり、図2は、図1に示した逆止弁で一次側から二次側に流体が流れるときの各部材の位置を概略的に示す断面図であり、図3は、図1に示した逆止弁での圧力緩和時の状態を概略的に示す断面図である。これらの図に示す逆止弁100は、圧力緩和機能を有するものであり、弁外郭体1、逆止弁体30、第1の弾性部材40、逃し弁体50、および第2の弾性部材60を備えている。
【0014】
上記の弁外郭体1は、長手方向の両端が解放された筒状を呈する弁ケース10と、該弁ケース10内に固定された第1キャップ20とを含み、弁ケース10での一次側(流体が流入する側)に一次側配管が、また二次側(流体が流出する側)に二次側配管が接続される。弁ケース10の内径は一次側開口部11から二次側開口部12にかけて3段階に分かれて拡大しており、内径が最も小さい一次側の領域での二次側端には、二次側に突出した環状の逆止弁座13が設けられている。また、内径が二番目に小さい領域での二次側端およびその近傍は、第1キャップ20を固定するためのキャップ固定部14となっている。
【0015】
第1キャップ20は、弁ケース10内に配置されて逆止弁体30を摺動自在に保持する円板状の部材であり、上記のキャップ固定部14に取り外しが可能な状態で嵌合している。当該第1キャップ20の中央部には、弁ケース10内で軸線方向Dxに延在する柱状のボス部21が設けられており、このボス部21には該ボス部21をその長手方向に貫通する逆止弁体挿入孔21aが設けられている。また、ボス部21の周囲には、一次側から二次側、二次側から一次側への流体の流通を可能にする少なくとも1つの流体流通孔22が設けられている。流体流通孔22は、弁ケース10での逆止弁座13と第1キャップ20での二次側端との間に位置する本流路25を構成する。この本流路25は、逆止弁体30が開弁しているとき、一次側と二次側とに連通する。
【0016】
逆止弁体30は、上記の逆止弁体挿入孔21aに摺動自在に挿入される柱状の軸部31と、該軸部31での一次側の領域に設けられた本体部32と、該本体部32に隣接して軸部31での一次側端部に装着されたパッキン33と、該パッキン33の一次側で軸部31の一次側端部に装着された第2キャップ34と、軸部31の内部に形成された逃し流路35とを有しており、逃し流路35の途中には狭窄部35aが設けられている。
【0017】
上記の軸部31での一次側端部には、パッキン33が装着される外周溝31aが形成されており、該外周溝31aよりも一次側には第2キャップ34が装着される溝状のキャップ係合部31bが形成されている。また、軸部31の内周面のうち、狭窄部35aでの一次側の側面となる領域は、逃し弁体50が密着するシール面31cとなっている。本体部32は、軸部31の外周に設けられて該軸部31の径方向外側にフランジ状に張り出しており、当該本体部32での二次側の面には、第1の弾性部材40を係止するための円環溝32aが形成されている。円環溝32aの外径は前述のボス部21の外径よりも大きい。
【0018】
パッキン33は円板状を呈し、前述した逆止弁座13の全周に亘って該逆止弁座13に密着可能な大きさを有している。第2キャップ34は、上述したキャップ係合部31bに係合可能な係合部34aと、第2バネ60を外嵌可能なボス部34bとを二次側に有し、軸部31での一次側の端面31dとの間に連通路36を形成した状態で係合部34aをキャップ係合部31bに係合させて、軸部31に固定されている。逃し流路35の狭窄部35aでの流路径は、例えば逆止弁100を貯湯式給湯機に用いる場合には概ね0.5〜2mmφに設定される。
【0019】
上述した軸部31、本体部32、パッキン33、第2キャップ34、および逃し流路35を有する逆止弁体30は、第1キャップ20の逆止弁体挿入孔21aに軸部31を摺動自在に挿入することで弁外郭体1内に摺動自在に設けられ、第1の弾性部材40により二次側から一次側に向かって押圧付勢される。
【0020】
第1の弾性部材40としては例えばコイルバネ等のバネが用いられ、その一端は逆止弁体30に係止され、他端は第1キャップ20での一次側に係止される。図示の例では、第1の弾性部材40としてコイルバネが用いられており、当該コイルバネは、その一端がボス部21に外嵌され、他端が円環溝32aに挿入されて、弁ケース10内に配置されている。第1の弾性部材40は、逆止弁体30を二次側から一次側に向かって押圧付勢し、逆止弁体30での二次側の受圧面積と二次側の圧力との積で表される力と当該第1の弾性部材40の付勢力との合力が、逆止弁体30での一次側の受圧面積と一次側の圧力との積で表される力よりも大きいときに、パッキン33を逆止弁座13に着座させて逆止弁体30を閉弁させる。
【0021】
逃し弁体50は、例えばEPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合体)等のゴム材料や弾性材料により作製される。この逃し弁体50は、一次側から逃し流路35内に挿入され、第2の弾性部材60により一次側から二次側に向かって押圧付勢されて上述のシール面31cに一次側から密着する。
【0022】
上記第2の弾性部材60としては例えばコイルバネ等のバネが用いられ、その一端は逃し弁体50での一次側に係止され、他端は第2キャップ34の二次側に係止される。図示の例では、第2の弾性部材60としてコイルバネが用いられており、当該コイルバネは、その一端が逃し弁体50に外嵌され、他端が第2キャップ34のボス部34bに外嵌されて、逃し流路35内に配置されている。第2の弾性部材60は、逃し弁体50を一次側から二次側に向かって押圧付勢し、逃し弁体50での一次側の受圧面積と一次側の圧力との積で表される力と当該第2の弾性部材60の付勢力との合力が、逃し弁体50での二次側の受圧面積と二次側の圧力との積で表される力より大きいときに、逃し弁体50を閉弁させる。
【0023】
上述した各部材により構成された逆止弁100は、例えば、給湯機内の配管や、給湯機や浴槽循環具等に用いられる水栓器具の内部、あるいは水栓器具に接続される給水管や給湯管等に組み込まれて使用される。
【0024】
図1に示すように、一次側と二次側との差圧が0(ゼロ)のときには、逆止弁体30での二次側の受圧面積と二次側の圧力との積で表される力と第1の弾性部材40の付勢力との合力が、逆止弁体30での一次側の受圧面積と一次側の圧力との積で表される力より大きくなるので、逆止弁体30が閉弁する。このとき、逃し弁体50での一次側の受圧面積と一次側の圧力との積で表される力と第2の弾性部材60の付勢力との合力が、逃し弁体50での二次側の受圧面積と二次側の圧力との積で表される力より大きくなるので、逃し弁体50も閉弁する。したがって、二次側から一次側および一次側から二次側のいずれの向きにも流体が流れない。
【0025】
図2に示すように、一次側の圧力が二次側の圧力よりも高くなって一次側と二次側とに差圧が生じ、逆止弁体30での一次側の受圧面積と一次側の圧力との積で表される力が、逆止弁体30での二次側の受圧面積と二次側の圧力との積で表される力と第1の弾性部材40の付勢力との合力より大きくなると、逃し弁体50は閉弁したままであるが、逆止弁体30が第1の弾性部材40の付勢力に抗して二次側に移動して開弁する。そのため、同図中に矢印Aで示すように、流体が一次側から本流路25に流れて二次側に流出する。すなわち、一次側開口部11から弁ケース10内に流れ込んだ流体が逆止弁体30および第2キャップ34の各々と弁ケース10の内周面との間隙を流れて流体流通孔22から二次側開口部12に達し、ここから二次側に流出する。
【0026】
逆止弁体30は、二次側の受圧面積と二次側の圧力との積で表される力と第1の弾性部材40の付勢力との合力が、逆止弁体30での一次側の受圧面積と一次側の圧力との積で表される力よりも大きいとき、図1に示したように閉弁するが、二次側の圧力が一次側の圧力よりも更に高くなって逃し流路35での二次側と一次側との差圧が所定の条件値を超えると、図3に示すように、逆止弁体30が閉弁したまま逃し弁体50が開弁する。すなわち、逃し弁体50での二次側の受圧面積と二次側の圧力との積で表される力が、逃し弁体50での一次側の受圧面積と一次側の圧力との積で表される力と第2の弾性部材60の付勢力との合力より大きくなると、逆止弁体30は閉弁したままであるが、逃し弁体50が第2の弾性部材60の付勢力に抗して一次側に移動して開弁する。そのため、同図中に矢印Bで示すように、二次側開口部12から弁ケース10内に流れ込んだ流体が逃し流路35および連通路36を流れて一次側開口部11に達し、ここから一次側に流れる。
【0027】
したがって、逆止弁100では、二次側でウォーターハンマーや流体の体積膨張等により異常昇圧が起きたときに圧力逃し弁体50が開弁するよう狭窄部35aでの流路断面積、第2の弾性部材60の弾性特性、および取付け時の第2の弾性部材60の縮み量を適宜選定することにより、二次側の異常圧力を一次側に解放させることができる。その結果として、逆止弁100自体や該逆止弁100の二次側の流路に設けられた流路部品等が上記の異常圧力により破壊されたり故障を起こしたりするのを防止することができる。逃し弁体50が開弁する際の上述の条件値は、二次側での異常昇圧により逆止弁100自体や該逆止弁100の二次側の流路に設けられた流路部品等が破壊ないし故障を起こさないよう、逆止弁100が設けられる管路や水栓器具の機械的特定等に応じて適宜選定される。
【0028】
例えば、最大水圧が0.75MPaの上水道に接続された貯湯式給湯機での給湯管路や給水管路に逆止弁100を設ける場合には、逃し流路35での二次側の水圧が1.5MPa程度以上になって二次側と一次側の差圧が0.75MPa程度になったときに逃し弁体50が開弁するように、狭窄部35aでの流路断面積、第2の弾性部材60の弾性特性、および取り付け時の第2の弾性部材60の縮み量を選定することができる。
【0029】
この逆止弁100では、内部に逃し流路35が形成された軸部31、逃し流路35内に配置された逃し弁体50、軸部31に装着された第2キャップ34、および第2の弾性部材60により、圧力緩和機構が構成される。逆止弁体30での一次側の外側および二次側の外側のいずれにも弾性部材や摺動弁座体を設けなくてよいので、当該逆止弁100では、逆止弁体を収容した摺動弁座体と該摺動弁座体よりも一次側に配置されて該摺動弁座体を二次側に付勢するバネとを用いて圧力緩和機構を構成する特許文献1の逆止弁に比べて小型化を図り易い。また、特許文献1の逆止弁に比べて部品点数が低減されるので、低コストの下に製造し易い。したがって、逆止弁100では小型のものを低コストの下に製造し易い。また、生産に係るエネルギー消費量の低減および製造歩留りの向上も図り易い。
【0030】
実施の形態2.
図4は、本発明の貯湯式給湯機の一例を示す概略図である。同図に示す貯湯式給湯機150は、貯湯タンク110と、上水道等の水源(図示せず)からの低温水を貯湯タンク110の下部から該貯湯タンク110に供給する給水管路120と、熱源器として機能するヒートポンプユニット125と、貯湯タンク110の下部からヒートポンプユニット125を経由して貯湯タンク110の上部に達する沸上循環管路130と、貯湯タンク110に貯留された湯を所定の給湯先に導く給湯管路140とを有している。
【0031】
上記の貯湯タンク110は、給水管路120から供給される低温水を貯留すると共にヒートポンプユニット125で沸き上げられた湯を貯留するものであり、常に満水状態に保たれる。貯湯式給湯機150の運転時には、貯湯タンク110内に温度成層が形成される。給水管路120は、上述のように水源からの低温水を貯湯タンク110に供給する管路であり、貯湯タンク110の下部に一端が接続された第1給水管部120aと、該第1給水管部120aから分岐して後述の混合弁141に上記の低温水を導く第2給水管部120bとを有している。
【0032】
ヒートポンプユニット125は、二酸化炭素等の冷媒を用いた冷凍サイクルシステムを備え、該冷凍サイクルシステム中の熱交換器により水を湯に沸き上げる。沸上循環管路130は、貯湯タンク110の下部から低温水を取水して該低温水を上記の熱交換器に導く往き管130aと、上記の熱交換器で沸き上げられた湯を貯湯タンク110の上部から該貯湯タンク110に戻す戻り管130bと、図示を省略した循環ポンプとを有している。
【0033】
給湯管路140は、貯湯タンク110に貯留された湯を所定の給湯先に導く管路であり、給湯管部140aと、混合給湯管部140bと、混合弁141と、逆止弁143とを有している。給湯管部140aは貯湯タンク110の上部と混合弁141とを繋ぎ、混合給湯管部140bは混合弁141と給湯先とを繋ぐ。逆止弁143は混合弁141の下流側に設けられており、当該逆止弁143としては本発明の逆止弁、例えば図1〜図3に示した逆止弁100と同じ構成のものが用いられる。
【0034】
貯湯タンク110の上部から給湯管部140aに流入した湯は、使用者がリモートコントローラ(図示せず)により設定した給湯温度となるように制御部(図示せず)により開度調整された混合弁141で第2給水管部120bからの低温水と混合され、その後に混合給湯管部140bに流入して所定の給湯先に供給される。図示の例では、上記の給湯先として1つの蛇口160が示されている。なお、図4では図示を省略しているが、貯湯タンク110、混合弁141、および逆止弁143はユニットケースに収容されており、給水管路120、沸上循環管路130、および給湯管路140の各々は、一部の区間が上記のユニットケースに収容され、残りの区間が上記のユニットケースの外側に延在している。
【0035】
このように構成された貯湯式給湯機150では、混合給湯管部140bに上述の逆止弁143が設けられているので、使用者が蛇口160を急激に開閉したときにウォーターハンマーが発生して逆止弁143の二次側で異常昇圧が起きても、あるいは蛇口160およびその近傍で水の凍結に伴う体積膨張が生じて逆止弁143の二次側で異常昇圧が起きても、逆止弁143の二次側で生じた異常圧力は当該逆止弁143の一次側(混合弁141側)に解放される。このため、逆止弁143自体や、混合給湯管路140bでの逆止弁143より下流の区間や、蛇口160が上記の異常圧力により破壊されたり故障を起こしたりすることが防止される。
【0036】
また、逆止弁143は本発明の逆止弁に含まれるものであり、本発明の逆止弁は実施の形態1で説明したように小型を図り易く、低コストの下に製造し易いので、貯湯式給湯機150では、上述したユニットケースの小型を図り易いと共に製造コストを抑え易い。
【0037】
以上、本発明の逆止弁および貯湯式給湯機について実施の形態を挙げて説明したが、前述のように、本発明は上述の形態に限定されるものではない。本発明の逆止弁は、逆止弁体内に逃し流路が設けられ、該逃し流路内に逃し弁体が配置され、逆止弁体を付勢する弾性部材および逃し弁体を付勢する弾性部材の各々が逆止弁体での一次側端と二次側端との間に配置されたものであれば基本的によく、その構成は適宜変更可能である。例えば、第2の弾性部材での一次側端を逆止弁体に固定するための固定部を逆止弁体の軸部の一次側端部に形成すれば、第2キャップを省略することも可能である。第2キャップを用いる場合には、第2キャップに一次側から二次側に亘る貫通孔を形成し、逃し流路と本流路とを連通させる連通路の一部または全部として上記の貫通孔を用いることもできる。
【0038】
また、本発明の貯湯式給湯機は、貯湯タンクに接続された管路の少なくとも1つに本発明の逆止弁が設けられているものであればよく、逆止弁以外の構成は適宜選定可能である。例えば、水を湯に沸き上げる熱源器としては、ヒートポンプユニットに代えて、貯湯タンク内に配置されたヒータを用いることもできる。また、貯湯タンク内の湯を熱源として用いる熱交換器を設け、該熱交換器により浴槽の浴水を追い焚きしたり、温水式床暖房装置の湯水を再加熱したりする機能を付加することもできる。勿論、逆止弁を設ける箇所も適宜選定可能であり、沸上循環管路を構成する往き管や戻り管、給水管路での第1給水管部や第2給水管部、給湯管路での給湯管部等に逆止弁を設けてもよい。本発明の逆止弁および貯湯式給湯機については、上述した以外にも様々な変形、装飾、組み合わせ等が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の逆止弁は、二次側から一次側への流体の逆流および二次側での異常昇圧の各々を抑制することが望まれる種々の用途の管路に設けることができ、本発明の貯湯式給湯機は、家庭用または業務用の給湯機として用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 弁外郭体
10 弁ケース
11 一次側開口部
12 二次側開口部
13 逆止弁座
14 キャップ固定部
20 第1キャップ
21 ボス部
21a 逆止弁体挿入孔
22 流体流通孔
25 本流路
30 逆止弁体
31 軸部
32 本体部
33 パッキン
34 第2キャップ
35 逃し流路
35a 狭窄部
36 連通路
40 第1の弾性部材
50 逃し弁体
60 第2の弾性部材
100 逆止弁
110 貯湯タンク
120 給水管路
125 ヒートポンプユニット
130 沸上循環管路
140 給湯管路
143 逆止弁
150 貯湯式給湯機
160 蛇口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側と二次側とに連通する本流路および逆止弁座が形成された弁外郭体と、
前記弁外郭体内に、流れに略平行方向に設けた軸部により摺動自在に設けられ、第1の弾性部材により二次側から一次側に向かって付勢されて前記逆止弁座に着座して閉弁する逆止弁体と、
前記軸部の内部に前記逆止弁体の摺動方向と平行に形成されて前記逆止弁体の前記一次側と前記二次側とを連通させる逃し流路と、
前記逃し流路内に設けられ、第2の弾性部材により一次側から二次側に向かって付勢されて前記逃し流路を閉塞する逃し弁体と、を備え、
前記逃し流路の前記二次側の端部は、前記摺動方向と平行に開放されていることを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
給水管路により貯湯タンクに供給した低温水を熱源器で湯に沸き上げて前記貯湯タンクに貯留し、該貯湯タンクに貯留された湯を給湯管路により所望の給湯先に供給する貯湯タンクであって、
前記貯湯タンクに接続された管路の少なくとも1つには、請求項1に記載の逆止弁が設けられていることを特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項3】
前記熱源器は、循環管路により前記貯湯タンク内の湯水を取り出して加熱し、該循環管路により前記貯湯タンクへ加熱した湯水を戻すヒートポンプユニットであることを特徴とする請求項2に記載の貯湯式給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−180935(P2012−180935A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−89423(P2012−89423)
【出願日】平成24年4月10日(2012.4.10)
【分割の表示】特願2008−268535(P2008−268535)の分割
【原出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】