説明

逆止弁

【課題】逆止弁において、弁を開きやすくするとともに、弁全開状態で大流量を得る。
【解決手段】本体継手1内にて弁座部材2とストッパ部4との間に弁体3を内挿する。弁体3を、円板部31、円柱体32、略円錐体をなす整流用突部33、ガイド部34及び整流板35で構成する。円板部31の平面シール部31aの内側に凹溝31bを形成する。円柱体32の径を弁座部材2の弁ポート21の径より小さくするとともに、凹溝31bの径を弁ポート21の径より大きくする。導入管部11からの冷媒の圧力を凹溝31bで受けるようにする。弁開状態で、弁ポート21からの冷媒を整流用突部33で整流して、冷媒を円板部31の周知に導き、ガイド部34の間の通路を介して後方に導く。また、ガイド34の間で整流板35により冷媒の流れを導出管部12と平行になるように整流する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の順方向の流れの圧力で弁開状態とし、流体の逆方向の流れの圧力で弁閉状態とする逆止弁に関する。
【0002】
従来、蒸気圧縮式冷凍サイクルにおいて、サイクルの回路を構成する要素として逆止弁が多用されている。逆止弁は、流体の順方向の流れによって弁開状態となって流路を形成し、逆方向の流れによって弁閉状態として流路を閉止することを目的とするものであり、このような逆止弁として、例えば実開昭63−37873号公報(特許文献1)に開示されたものがある。
【0003】
この特許文献1のものは、弁体が円板形状の円板部を備え、この円板部はシール面が流体の流れ方向に対して垂直に配置されるため、抗力係数が非常に大きく、低差圧でも弁が開き易いものである。しかしながら、弁の全開時には逆に抗力係数が大きいため、大流量を確保できなくなるという問題がある。
【0004】
これを解消するために、例えば特開2001−81651号公報(特許文献2)に開示されているように、弁の先端に突起を設け、乱流の発生を抑制し、流量を確保することが考えられる。
【特許文献1】実開昭63−37873号公報
【特許文献2】特開2001−81651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1のような逆止弁に対して特許文献2のような技術を適用しても、最大流量を確保するという観点からは不十分であり、改良の余地がある。また、逆に、特許文献1の弁体の円板部に特許文献2のような突起を単に設けた形状では、円板形状の場合に比して抗力係数が小さいので低差圧で弁開しにくいという現象が生じる。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、低差圧でも弁開しやすく、かつ、大流量を確保できる逆止弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の逆止弁は、円板部と該円板部の外周より突出させた複数のガイド部とを有する弁体を、パイプ内に設けられた弁座部とストッパ部との間に内挿し、隣接する前記ガイド部間により前記円板部の外周に流体の通路を形成した逆止弁において、前記弁座部のシール面と前記円板部のシール面とが共に平面シール部を有し、かつ、前記円板部の平面シール部の内側に、前記弁座部の弁ポートの直径より径の大なる凹溝が当該円板部と同軸に形成され、該凹溝内に前記弁座部の弁ポートの径よりも径の小なる円柱体が当該円板部の同軸上に立設され、該円柱体の端面に、底面の径が該円柱体の外径と同一の整流用突部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2の逆止弁は、請求項1に記載の逆止弁であって、前記整流用突部は円錐体であり、前記円柱体の高さが、該円錐体の側面の傾斜角度の仮想延長線が前記円板部の外径縁に接するような高さ以上であることを特徴とする。
【0009】
請求項3の逆止弁は、請求項1に記載の逆止弁であって、前記凹溝の内径が、前記弁座部の弁ポートの直径に、前記パイプの前記弁体の位置における内径と前記ガイド部の外径との隙間を足した以上の内径であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の逆止弁によれば、弁閉状態では、該円柱体の周囲の凹溝の一部が該弁ポートの内側に位置するので、この凹溝により流体の圧力を受けることができ、低差圧でも弁開とすることができる。また、弁全開状態では、円柱体により弁体の平面シール部よりも弁ポート側に前記整流用突部が位置することになり、該整流用突部で整流された流体が円柱体の周囲及び前記通路を介して流れるので、大流量を得ることができる。
【0011】
請求項2の逆止弁によれば、請求項1の効果に加えて、円錐体(整流用突部)の側面に倣う流線が円板部の外径縁よりも外側を通る傾向になり、弁全開状態で流体の流れが円板部により阻害される傾向を少なくでき、さらに大流量を得ることができる。
【0012】
請求項3の逆止弁によれば、請求項1の効果に加えて、弁体がパイプ内で軸と直交する方向にずれても、そのずれ量は最大でもパイプの前記内径とガイド部の外径との隙間であるので、この最大ずれた状態でも、凹溝の内径縁が弁ポートの内側に入ることがない。したがって、弁座部のシール面と円板部のシール面とが常に平面シール部を構成するので、弁体の平面シール部に弁ポートの縁による凹凸等が生じることがなく、経年変化による漏れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の逆止弁の実施形態を図面を参照して説明する。図1は実施形態の逆止弁10の一部断面側面図であり、図1(A) は弁全開状態を示す図、図1(B) は弁閉状態を示す図。図1(C) は図1(B) のA−A断面図である。図2は同逆止弁10の弁体3を示す図であり、図2(A) は斜視図、図2(B) は一部破砕側面図である。図3は同逆止弁10の弁座部材2と弁体3の円板部31の詳細断面図である。
【0014】
この逆止弁10は、「パイプ」としての本体継手1と、「弁座部」としての弁座部材2及び弁体3を備えている。本体継手1は、円筒形のストレート管の両側を縮管して径の小さな導入管部11と導出管部12を形成するとともに、その中央部に径の大きな弁室13を形成したものである。また、この本体継手1の縮管により導出管部12と弁室13との境界部分にストッパ部4が形成されている。弁座部材2には中央に弁ポート21が形成されており、この弁座部材2は弁室13内で導入管部11側に配置されて、かしめ部1aによりかしめ固着されている。また、弁室13の内面と弁座部材2との間はOリング5により封止されている。そして、弁体3は弁座部材2とストッパ部4との間に挿入配置されている。
【0015】
図2に示すように、弁体3は、円板状の円板部31、円板部31から弁座部材2側に立設された円柱体32(図2(B) )、この円柱体32の仮想的な端面32aから弁座部材2側に突出した略円錐体状の整流用突部33、円板部31の円柱体32と反対側に形成された3つのガイド部34、及びガイド部34の内側を連結する整流板35とを備えている。また、弁体3は合成樹脂部材であり、上記各部が一体成形されている。ガイド部34は円板部31の外周より突出されており、このガイド部34が弁室13の内周面により摺動案内されることで、弁体3は図1(A) 及び図1(B) の2つの位置間を移動する。
【0016】
以上の構成により、弁体3は、そのガイド部34を弁室13の内周面に摺接し、この弁室13の内周面により弁開閉方向(図1の左右方向)の移動を案内される。導出管部12から冷媒(流体)が流入する場合は、その流体圧力により弁体3は弁座部材2に着座して弁ポート21を閉じる。一方、冷媒の流れが逆になり、導入管部11から冷媒が流入すると、弁ポート21内の冷媒の圧力が弁体3の反対側すなわち弁室13の圧力より高くなる。そして、両圧力の差圧により、弁体3は弁座部材2から離間して弁室13内を移動し、弁体3のガイド部34の端部がストッパ部4に当接し、弁体3は図1(A) の開状態となる。
【0017】
そして、後述説明するようにこの弁体3が弁座部材2から離間するとき、弁体3は冷媒の流体圧力を十分に受けることができ、容易に離間することができる。また、図1(A) の全開状態では、矢印で示すように、冷媒は弁体3の整流用突部33に倣って円柱体32から離れて円板部31の外側を通り、ガイド部34,34の間の通路を通って導出管部12側に流入する。このとき、冷媒は、円柱体32により円板部31から離れた位置に配置された整流用突部33の作用により弁体3の周囲をなめらかに流れる。さらに、ガイド部34の内側に形成された整流板35により弁体3の後方をなめらかに流れる。
【0018】
図3に示すように、弁座部材2には弁ポート21の開口の周囲に平面シール部2aが形成されている。また、円板部31の弁座部材2側の面は略平面であり、その面の外周側にはリング状の平面シール部31aが形成されている。さらに、平面シール部31aの内側に、僅かに窪んだ凹溝31bが形成されており、この凹溝31b内に前記円柱体32が立設されている。そして、平面シール部31a、凹溝31b及び円柱体32は、円板部31の中心軸L1と同軸になっている。なお、弁体3が弁座部材2に着座すると、円柱体32(及び整流用突部33)が弁ポート21内に挿入した状態で平面シール部31aが弁座部材2の平面シール部2aに当接し、弁ポート21が閉状態(弁閉状態)となる。
【0019】
ここで、弁室13(本体継手1の弁体3が配置される空間)の内径とガイド部34の外径との隙間、すなわち弁体3が中心軸Lから最大ずれた場合(図3では左側にずれた状態)の弁室13とガイド部34の隙間を(d)とすると、凹溝31bの内径(D1)は、弁座部2の弁ポート21の直径(D2)に隙間(d)を足した値(D2+d)よりも大きくなっている。したがって、弁体3が弁室13内で軸Lから上記隙間(d)分移動しても、円板部31の平面シール部31aは弁座部材2の平面シール部2aの範囲から外れることがない。したがって、弁体3側の平面シール部31aが弁ポート21の開口の縁に当接することはなく、長期使用していてもこの平面シール部31aに凹凸等が形成されることなく、弁閉状態を確実に保って漏れ等を生じることがない。
【0020】
また、弁閉状態で、円柱体32と弁ポート21との間には十分な間隙があり、さらに、この弁ポート21の開口部分に対して凹溝31bが対向しており、この凹溝31bの内側と整流用突部33は弁ポート21の開口断面積分の圧力を十分に受ける。したがって、弁体3は弁座部材2から容易に離間し、弁が開き易くなっている。
【0021】
図4は実施形態の弁体3と従来の弁体との構造に違いによる弁の開き易さ(離間し易さ)を比較して説明する図であり、図4(B) は実施形態の弁体3、図4(A) 及び(C) は従来の例である。図4(C) の弁体7は弁ポート21内にニードル部7aが挿入されるものであり、冷媒の流れ(矢印)はニードル部7aの斜面に倣って弁ポート21の内壁の方に流れている。これに対して、図4(B) の実施形態の弁体3では、冷媒の流れは整流用突部33から円柱体32と弁ポート21の内壁との間に流れ、さらに凹溝31b内に流れる。そして、この凹溝31bが主に冷媒の圧力を受けることで、図4(C) の場合よりも弁体が開き易くなる。なお、図4(A) の弁体6は弁ポート21に対し平面部6aを対向させたものであるが、この場合には冷媒の流れを平面部6aの全面で受けるので実施形態と同等やそれよりさらに開き易くなる。すなわち、図4(A) 、図4(B) 及び図4(C) のそれぞれの開き易さを例えば開き始めの冷媒圧力をPA 、PB 、PC とすると、
A ≦PB <PC となる。
【0022】
図5は実施形態の弁体3と従来の弁体との構造に違いによる冷媒の流れ方を比較して説明する図であり、図5(C) は実施形態の弁体3、図5(A) 及び(B) は前記図4(A) 及び図4(C) と同様な従来の例である。図5(A) の弁体6は冷媒の流れ(矢印)に対し平面部6aが正面で対向するので、この場合には冷媒の流れの障害となりやすい。また、図5(B) の弁体7では、冷媒の流れはニードル部7aの斜面に倣って弁体7の外周方向に流れ、図5(A) の場合よりはなめらかに流れる。
【0023】
これに対して、図5(C) の実施形態の弁体3では次のように作用する。図6は整流用突部33と円板部31との位置関係を説明する図である。整流用突部33は円錐体の形状で、その側面33aの仮想的な延長線pが円板部31の外径縁311に接するような高さ以上となっている。すなわち、整流用突部33は、円柱体32により円板部31から離れた位置に配置されている。このため、図5(C) に示すように、冷媒の流れは、整流用突部33に倣って流線をとり、この整流用突部33の作用でできる流線により、冷媒の流れは円板部31の外周側を迂回するような流れとなり、この弁体3の周囲をなめらかに流れる。すなわち、図5(A) 、図5(B) 及び図5(C) のそれぞれの流量係数をQA 、QB 、QC とすると、
A <QB <QC となる。
【0024】
また、冷媒がガイド部34,34の間の通路を流れるとき、整流板35に沿って弁体3の後方に流れる。このような流れは3つの通路で生じ、それぞれの流れが弁体3の後方の部分において、導出管部12と略平行な方向を向いてまとまって導出管部12を流れていく。このような冷媒の流れにより大流量が得られる。
【0025】
図7は実施形態の弁体3を用いた逆止弁10と、前記図5(A) のプレート形状の弁体6及び図5(B) の先端ニードル形状の弁体7を用いた逆止弁の流量係数の計測試験例を示す図である。なお、この流量係数Cvは、「JIS規格B2005−2−3に記載の工業プロセス用調整弁−第2部:流れの容量−第3節:試験手順」に規定された試験装置にて試験した実施例である。図7(A) は弁開き始め付近の流量係数であり、図(B) は全開時の流量係数である。また、流量係数Cvは、差圧が1psiのとき、バルブを流れる40〜100°Fの水が1分間に流れるU.S.Galの数として表されたもので、周知の係数である。
【0026】
図7(A) の開き始め付近では、弁体が全開していないので、微少に弁体が弁座部材から離れた状態における流量係数(Cv値)であり、一次側圧力(導入管部11側圧力)に対し、流量係数が大きい方が弁開し易いことを表している。図7(A) のように、実施形態の弁体3はプレート形状の弁体6と略同等な開き易さを示している。また、図7(B) の全開流量の場合には、弁体3は全開しているので一次側圧力が変動しても、流量係数自体は変動しないものとなる。そして、実施形態の逆止弁10が従来のものよりも大流量となることが解る。
【0027】
図8は弁体の他の実施形態を示す図である。図8(A) は整流用突部33が円錐体の形状をしたものである。図8(B) は整流用突部33が半球形状をしたものである。図8(C) は整流用突部33が尖塔形状をしたものである。いずれの場合も、整流用突部33の側面の仮想的な延長線pが円板部31の外径縁311に接するような高さ以上となっている。これにより、矢印で示すように、冷媒は弁体3の整流用突部33に倣って円柱体32から離れて円板部31の外側を通るようになり、大流量が得られる。
【0028】
図9は弁体のさらに他の実施形態を示す図であり、図9(A) は3つのガイド部34,34,34が一体に形成され、前記整流板を厚くした形状のものである。図9(B) は前記整流板35を無くしたものである。なお、図9(B) のように、整流板35がない場合には、このガイド部34の内側で3方の流れが互いに干渉して渦等が生じ易いので、前記実施形態のように整流板35が有る場合よりも大流量を得るという点では不利である。ただし、弁体としては、円板部31、円柱体32、整流用突部33、平面シール部31a、凹溝31bを備えていれば、整流板35がなくても、これらの部材により弁体の離れやすさや大流量が得られることは前述の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態の逆止弁の一部断面側面図である。
【図2】同逆止弁の弁体を示す図でである。
【図3】同逆止弁の弁座部材と弁体の円板部の詳細断面図である。
【図4】実施形態の逆止弁と従来の逆止弁の弁体の構造に違いによる弁の開き易さを比較して説明する図である。
【図5】実施形態の逆止弁と従来の逆止弁の弁体の構造に違いによる冷媒の流れ方を比較して説明する図である。
【図6】実施形態の整流用突部と円板部との位置関係を説明する図である。
【図7】実施形態の弁体を用いた逆止弁と従来の逆止弁の流量係数の計測試験例を示す図である。
【図8】弁体の他の実施形態を示す図である。
【図9】弁体のさらに他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 本体継手(パイプ)
2 弁座部材(弁座部)
3 弁体
4 ストッパ部
21 弁ポート
31 円板部
31a 平面シール部
31b 凹溝
32 円柱体
33 整流用突部
34 ガイド部
35 整流板
L 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板部と該円板部の外周より突出させた複数のガイド部とを有する弁体を、パイプ内に設けられた弁座部とストッパ部との間に内挿し、隣接する前記ガイド部間により前記円板部の外周に流体の通路を形成した逆止弁において、
前記弁座部のシール面と前記円板部のシール面とが共に平面シール部を有し、かつ、前記円板部の平面シール部の内側に、前記弁座部の弁ポートの直径より径の大なる凹溝が当該円板部と同軸に形成され、該凹溝内に前記弁座部の弁ポートの径よりも径の小なる円柱体が当該円板部の同軸上に立設され、該円柱体の端面に、底面の径が該円柱体の外径と同一の整流用突部が設けられている
ことを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
請求項1に記載の逆止弁であって、
前記整流用突部は略円錐体であり、前記円柱体の高さが、該円錐体の側面の傾斜角度の仮想延長線が前記円板部の外径縁に接するような高さ以上であることを特徴とする逆止弁。
【請求項3】
請求項1に記載の逆止弁であって、
前記凹溝の内径が、前記弁座部の弁ポートの直径に、前記パイプの前記弁体の位置における内径と前記ガイド部の外径との隙間を足した以上の内径である
ことを特徴とする逆止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−250366(P2009−250366A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100073(P2008−100073)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】