説明

逆止弁

【課題】弁プレートの閉止部が開き過ぎるのを防止する手段を、簡単な構成で部品点数を増やすことなく実現することができる逆止弁を提供する。
【解決手段】逆止弁20は、通路形成部材21と、通路形成部材21の外周部の取付部24に取り付けられた弁プレート30とを備えている。弁プレート30は、流出口21bを開閉する閉止部31と、弁プレート30の外周部から折曲形成され取付部24に取り付けるための被取付部34とを備え、閉止部31を閉弁方向に付勢力を加える弾性を有する薄板から一体に形成されている。通路形成部材21の流出口21b側は、所定角度θの傾斜部23になり、取付部24に近接して開度規制部27が棒状に突設されており、閉止部31が所定角度θになったときに当たってそれ以上開くことを規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の燃料タンクに燃料を導入するための給油管などに装着される逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の燃料タンクには、給油のストップ時に、上昇したタンク内圧により燃料が戻されて外部に流出するのを防止するための逆止弁を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、逆止弁は、通路から燃料を流出する流出口を備えた通路形成部材と、該通路形成部材に取り付けられ流出口を開閉する弁プレートとを備えている。弁プレートは、閉止部の一端部に被取付部を折曲形成し、この被取付部を通路形成部材の外周部に形成された取付部に取り付けることにより、閉止部で流出口を開閉している。
【0003】
上記逆止弁において、弁プレートの閉止部が通路の燃料の流れを受けて開き過ぎると、閉止部と被取付部との折曲部分が塑性変形して、閉止体が流出口を完全に閉じない可能性がある。こうした閉止体の開き過ぎを防止するための手段が種々検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−245824
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題を解決するものであり、流出口を開閉する弁プレートの閉止部が開き過ぎるのを防止する手段を、簡単な構成で部品点数を増やすことなく実現することができる逆止弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
適用例1は、通路および該通路を流れる流体を流出する流出口を備えた管状の通路形成部材と、弾性を有する薄板を切断および折曲することにより形成され上記流出口を開閉する弁プレートとを備えた逆止弁において、
上記通路形成部材は、該通路形成部材の外周部に形成され上記弁プレートを取り付けるための取付部と、上記通路の中心軸に対して上記流出口の全面で所定角度傾斜した傾斜部とを有し、
上記弁プレートは、上記流出口を開閉する閉止部と、該弁プレートの外周部から折曲形成され上記取付部に取り付けるための被取付部とを備え、上記閉止部が上記流体で押されたときに上記被取付部を支点として傾くことにより流出口を開くように構成され、
さらに、上記通路形成部材は、上記流出口の開口端部でかつ上記被取付部の付近から上記中心軸と平行に突設された開度規制部を有し、該開度規制部は、上記傾斜部に対して所定角度で傾斜した状態で対向し、上記閉止部が上記支点で傾いたときに当たることで上記流出口を開く角度を規制する棒状部材であること、を特徴とする。
【0008】
適用例1に記載の逆止弁を燃料タンクに使用した場合において、通路形成部材は、通路の中心軸に対して流出口の全面で所定角度傾斜した傾斜部を有し、流出口を弁プレートで開閉する。弁プレートは、弾性を有する薄板を用いて、閉止部および閉止部の外周の一部から折曲された被取付部を一体的に形成し、被取付部で通路形成部材の取付部に取り付けられている。被取付部は、閉止部をシート部に着座させる方向へ付勢力を与えるばねとして作用し、閉止部に流体の力が加わったときに、閉止部との連結部位を支点として傾斜することで閉止部を開き動作させる。そして、閉止部の開き動作により、燃料が燃料タンクに流出する。このとき、閉止部の開き角度が所定角度になると、通路形成部材から突設された開度規制部により閉止部の開き動作が規制される。すなわち、開度規制部は、閉止部に当たることで閉止部の開き角度を、傾斜部と開度規制部とのなす角度の範囲を超えないように規制する。よって、閉止部と被取付部との連結部位で塑性変形することがなく、閉止部の閉じ動作を確実に行なえる。また、開度規制部は、通路形成部材の流出口の端部から突設されているので、部品点数が増加することもなく、構成が簡単である。
【0009】
[適用例2]
適用例2は、上記閉止部は、上記開度規制部を貫通させる貫通穴を有する構成である。この弁プレートに形成した貫通穴は、弁プレートを通路形成部材の取付部に取り付ける際のガイドとして作用するから、取付作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】自動車の燃料タンクに燃料を供給するための給油装置を示す概略図である。
【図2】燃料タンクの燃料タンク用管接続体および逆止弁を拡大した断面図である。
【図3】図2の逆止弁を拡大した断面図である。
【図4】通路形成部材に弁プレートを組み付ける前の状態を示す斜視図である。
【図5】弁プレートを示す平面図である。
【図6】図5の矢印ADから見た図である。
【図7】通路形成部材の取付部および弁プレートの被取付部の付近を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1) 給油装置FSの概略構成
図1は自動車の燃料タンクFTに燃料を供給するための給油装置FSを示す概略図である。図1に示すように、給油装置FSは、燃料タンクFTに接続され、給油ガン(図示省略)から供給される燃料を燃料タンクFTに送るものであり、燃料キャップFCにより開閉される注入口を有するフィラーネックFNと、フィラーネックFNの一端に接続され金属製または樹脂製のインレットパイプIPと、インレットパイプIPに接続されゴム製のインレットホースHと、インレットホースHの一端に接続されかつ燃料タンクFTに溶着された燃料タンク用管接続体10と、燃料タンク用管接続体10に装着された逆止弁20とを備えている。インレットホースHは、燃料タンク用管接続体10に圧入されるとともにクランプCPにより締結されている。上記給油装置FSの構成により、給油時に燃料キャップFCを外して、給油ガンから燃料をフィラーネックFNに注入すると、燃料は、インレットパイプIP、インレットホースH、燃料タンク用管接続体10を流れて、さらに逆止弁20を開いて燃料タンクFT内に供給される。一方、給油ストップ時では、逆止弁20は、閉弁状態にあるから、上昇したタンク内圧により燃料が押し戻されて外部へ流出するのを防止する。
【0012】
(2) 各部の構成および作用
以下、各部の構成について説明する。
(2)−1 燃料タンクFT
燃料タンクFTは、耐燃料透過性に優れたエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)から形成されたバリア層と、ポリエチレン(PE)で形成された外層とを含む複数の樹脂層から形成されている。燃料タンクFTの側壁の上部には、タンク開口FTaが形成されており、このタンク開口FTaを囲むように燃料タンク用管接続体10が溶着されている。
【0013】
(2)−2 燃料タンク用管接続体10
図2は燃料タンクFTの燃料タンク用管接続体10および逆止弁20を拡大した断面図である。燃料タンク用管接続体10は、通路形成部12と、接続用溶着部14とを備え、これらを2色成形により一体に形成している。通路形成部12は、インレットホースHに接続される通路を形成する通路部12aを備えている。通路部12aの一端は、該通路部12aの外周端から拡張されることでインレットホースH(図1)を抜止するための抜止拡張部12bになっている。通路部12aの他端には、フランジ12cが形成されている。フランジ12cの一方の面は、接続用溶着部14に内壁に溶着される面になっており、その他面は、逆止弁20の一端を溶着するための溶着部12dになっている。通路形成部12は、例えば、ナイロン−12などのポリアミド(PA)から形成されている。
接続用溶着部14は、外筒部14aと、外筒部14aの一端外周から拡張されたフランジ14bと、フランジ14bの一端面に環状に突設された溶着端14cとを備えている。接続用溶着部14は燃料タンクFTに熱溶着可能である変性ポリエチレンから形成されている。変性ポリエチレンは、ポリエチレン(PE)に極性官能基、例えばマレイン酸変性された官能基を付加した樹脂材料であり、PAと射出成型時の熱により反応接着する材料である。よって、接続用溶着部14は、2色成形により通路形成部12と反応接着により溶着一体化している。
【0014】
(2)−3 逆止弁20の構成
逆止弁20は、通路形成部材21と、この通路形成部材21の一端に装着されかつ流出口21bを開閉する弁プレート30とを備えている。通路形成部材21は、通路形成部12と同じPAから形成された管状であり、その内部にインレットホースHに接続される通路21aを有し、そのインレットホースH側が流入口21cになっている。通路形成部材21の流入口21cの端部には、フランジ22を有し、通路形成部12の溶着部12dに溶着により一体になって流路を形成している。
【0015】
図3は図2の逆止弁20を拡大した断面図、図4は通路形成部材21に弁プレート30を組み付ける前の状態を示す斜視図である。通路形成部材21の流出口21b側は、該通路形成部材21の中心線CLに対して傾斜した傾斜部23になっている。傾斜部23は、中心線CLに対して角度θで傾斜している(図3)。傾斜部23の流出口21bの開口周縁部に沿って、弁プレート30が着離するシート面23aが長円形状に形成されている。また、通路形成部材21の流出口21bの上部の外周部には、弁プレート30を取り付けるための取付部24が突設されている。また、取付部24に近接した流出口21bの周縁上部には、開度規制部27が突設されている。開度規制部27は、取付部24の開口端と周方向でほぼ同じ位置にて、中心線CLと平行に突出し、傾斜部23の周縁に形成されたシート面23aに対向している。すなわち、傾斜部23は、そのシート面23aのうち開度規制部27と中心線CLを点対称とする周方向で180゜の位置が開度規制部27に対してなす角度がθとなるように傾斜している。なお、取付部24および開度規制部27の構成については、後述する。
【0016】
図5は弁プレート30を示す平面図、図6は図5の矢印ADから見た図である。弁プレート30は、金属製の薄板をプレス切断して折曲することにより、閉止部31、アーム部32、連結部33、および被取付部34を一体的に板ばねとして形成したものである。閉止部31は、シート面23a(図4)の外形とほぼ同一の形状で、通路形成部材21の流出口21bを開閉するものであり、つまりシート面23aに着離するように形成されている。アーム部32は、閉止部31の外周部のほぼ半円を囲むように形成されている。アーム部32の一端部の各々は、連結部33を介して閉止部31にそれぞれ連結され、他端部の各々は、被取付部34により連結されている。被取付部34は、通路形成部材21の取付部24に挿入されることにより、閉止部31を開閉可能に支持する部位である。被取付部34は、閉止部31に対して、図3の角度αで取り付けられる場合に、角度αより小さい角度β(図4参照)で折曲され、これにより、通路形成部材21に取り付けられたときにシート面23aに押し付けられるように形成されている。
【0017】
図7は通路形成部材21の取付部24および弁プレート30の被取付部34の付近を拡大した断面図である。図4および図7に示すように、取付部24は、通路形成部材21の外周部からほぼ平行に立設された側壁部25を備えている。各々の側壁部25は、立壁25aと、この立壁25aの上端から互いに向き合うように延設された押さえ部25bとを備え、立壁25aと押さえ部25bとにより断面L字形に形成されている。また、押さえ部25bにまたがってブリッジ部25cが形成されている。また、側壁部25の間は、被取付部34を収納するための取付溝26となっている。取付溝26の底には、挿入口26aから奥側に向けて上方へ傾斜した傾斜面26bが形成され、被取付部34の挿入作業性を高めている。また、傾斜面26bの一端から凹所に形成された係合部26cが形成されている。
【0018】
一方、弁プレート30の被取付部34は、矩形の本体板34aと、抜止部34bと、弾性片34cとを備えている。抜止部34bおよび弾性片34cは、本体板34aからプレス成形などで切り起こされることにより形成されている。抜止部34bは、係合部26cに係合することにより被取付部34を取付部24からの抜止めの作用を果たし、また、弾性片34cは、押さえ部と取付溝26との溝底とで圧縮することにより径方向へのガタツキを抑制している。
【0019】
弁プレート30の被取付部34を通路形成部材21の取付部24に取り付けるには、被取付部34を傾斜面26bに沿わせつつ挿入口26aへ挿入する。抜止部34bおよび弾性片34cがブリッジ部25cと取付溝26の溝底との間で圧縮されつつ、被取付部34が取付溝26の奥側へ挿入される。抜止部34bが係合部26cに達して弾性力により係合部26cに挿入されることで被取付部34が取付部24に固定される。
【0020】
図3および図4において、通路形成部材21の流出口21bの開口端部には、中心軸と平行に開度規制部27が棒状に突設されている。開度規制部27は、閉止部31が取付部24を支点で傾いたときに当たることで流出口21bを開く角度を規制する部材であり、その断面は、長方形の上方に正方形を合わせた形状として、断面積に対する断面係数を大きくして剛性を高めている。開度規制部27は、閉止部31に形成された貫通穴35を貫通している。
【0021】
(2)−4 逆止弁の動作
次に、逆止弁20の動作について説明する。図1および図3に示すように、給油時に、通路形成部材21の流入口21cから入った燃料は、通路21aを通って流出口21bに達し、弁プレート30の閉止部31を押す。弁プレート30は、被取付部34で通路形成部材21の取付部24に取り付けられているから、被取付部34を支点として開弁する。すなわち、燃料により閉止部31が押されると、閉止部31は、連結部33を中心にアーム部32に対して傾斜して、流出口21bとの間に間隙を形成し、燃料が流出する。このとき、閉止部31の開き角度が所定角度θになると、閉止部31が開度規制部に当たることで閉止部31の開き角度が規制される。
【0022】
(3) 上記実施例による逆止弁によれば、以下の作用・効果を得ることができる。
【0023】
(3)−1 弁プレート30は、閉止部31の開き角度が所定角度θになると、閉止部31が開度規制部に当たることで、閉止部31の開き角度が規制される。よって、閉止部31が開き過ぎることがなく、閉止部31と被取付部34との連結部位で塑性変形することがなく、閉止部31の閉じ動作を確実に行なえる。ここで、角度θは、上述の作用効果、つまり、流体の流量および耐塑性変形性を考慮して、30〜60°が好ましい。
【0024】
(3)−2 開度規制部27は、通路形成部材21の流出口21bの端部から突設されているので、部品点数が増加することもなく、構成が簡単である。
【0025】
(3)−3 開度規制部27は、取付部24への挿入方向と同じ方向に突設され、しかも弁プレート30の貫通穴35に挿入されているから、弁プレート30を通路形成部材21の取付部24に取り付ける際のガイドになり、よって取付作業性を向上させることができる。
【0026】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
上記開度規制部の断面形状は、棒状であれば、丸、三角など各種の形状をとることができる。また、弁プレートの閉止部は、燃料通路の形状に合わせて種々の形状を採ることができ、上述したように円やそれを分割した扇形のほか、三角形や四角形などの多角形で形成してもよい。さらに、弁プレートの材料として、ステンレス綱を用いたが、これに限らず、ばね特性を有する材質であればよく、例えば、樹脂であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
10…燃料タンク用管接続体
12…通路形成部
12a…通路部
12b…抜止拡張部
12c…フランジ
12d…溶着部
14…接続用溶着部
14a…外筒部
14b…フランジ
14c…溶着端
20…逆止弁
21…通路形成部材
21a…通路
21b…流出口
21c…流入口
22…フランジ
23…傾斜部
23a…シート面
24…取付部
25…側壁部
25a…立壁
25b…押さえ部
25c…ブリッジ部
26…取付溝
26a…挿入口
26b…傾斜面
26c…係合部
27…開度規制部
30…弁プレート
31…閉止部
32…アーム部
33…連結部
34…被取付部
34a…本体板
34b…抜止部
34c…弾性片
35…貫通穴
CP…クランプ
FC…燃料キャップ
FN…フィラーネック
FS…給油装置
FT…燃料タンク
FTa…タンク開口
H…インレットホース
IP…インレットパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路(21a)および該通路(21a)を流れる流体を流出する流出口(21b)を備えた管状の通路形成部材(21)と、弾性を有する薄板を切断および折曲することにより形成され上記流出口(21b)を開閉する弁プレート(30)とを備えた逆止弁において、
上記通路形成部材(21)は、該通路形成部材(21)の外周部に形成され上記弁プレート(30)を取り付けるための取付部(24)と、上記通路(21a)の中心軸に対して上記流出口(21b)の全面で所定角度傾斜した傾斜部(23)とを有し、
上記弁プレート(30)は、上記流出口(21b)を開閉する閉止部(31)と、該弁プレート(30)の外周部から折曲形成され上記取付部(24)に取り付けるための被取付部(34)とを備え、上記閉止部(31)が上記流体で押されたときに上記被取付部(34)を支点として傾くことにより流出口(21b)を開くように構成され、
さらに、上記通路形成部材(21)は、上記流出口(21b)の開口端部でかつ上記被取付部(34)の付近から上記中心軸と平行に突設された開度規制部(27)を有し、該開度規制部(27)は、上記傾斜部(23)に対して所定角度で傾斜した状態で対向し、上記閉止部(31)が上記支点で傾いたときに当たることで上記流出口(21b)を開く角度を規制する棒状部材であること、を特徴とする逆止弁。
【請求項2】
請求項1に記載の逆止弁において、
上記閉止部(31)は、上記開度規制部(27)を貫通させる貫通穴(35)を有する逆止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−173484(P2010−173484A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18538(P2009−18538)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】