説明

逆止弁

【課題】出口側流路に常時通じる弁室が内部に形成されるとともに入口側流路を開口させた弁座が前記弁室に臨んで設けられる弁ハウジングと、前記弁座に着座可能な弁部ならびに前記入口側流路と反対側で前記弁部に連設される軸部を有する弁体と、該弁体を前記弁座に着座する側に付勢する付勢部材とを備え、前記入口側流路から前記弁室を経て前記出口側流路に流れる流体からの流動抵抗を前記弁体に付与する流動抵抗部が弁体に設けられる逆止弁において、組立を容易とするとともに小型化を図りつつ弁体の振動を抑制可能とする。
【解決手段】流動抵抗部44が、弁部40と、ガイド部材26のガイド孔36との間で軸部41Aに設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出口側流路に常時通じる弁室が内部に形成されるとともに入口側流路を開口させた弁座が前記弁室に臨んで設けられる弁ハウジングと、前記弁座に着座可能な弁部ならびに前記入口側流路と反対側で前記弁部に連設される軸部を有する弁体と、該弁体を前記弁座に着座する側に付勢する付勢部材とを備え、前記入口側流路から前記弁室を経て前記出口側流路に流れる流体からの流動抵抗を前記弁体に付与する流動抵抗部が前記弁体に設けられる逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
図9において、入口側流路61を中央部に開口させる弁座62が弁ハウジング63に設けられ、前記弁座62に着座可能な弁体64が弁座62に着座する側にばね65で付勢されて成る逆止弁では、弁体64が、その軸線を入口側流路61の軸線に対して傾けた姿勢で弁座62に着座することがあり、その場合、弁体64の周囲に不均等な圧力分布が生じることによって、図10で示すように、弁体64の重心Gを中心として入口側流路61の軸線に対して角度φで横方向に往復作動する横振動(振り子振動)と、入口側流路61の軸線に沿って移動量xで往復する縦振動とを含む振動が持続的に発生し、しかも横振動および縦振動は連成するものであり、それぞれ独立では発生し難いものである。
【0003】
このような自励振動を抑えるために、特許文献1で開示されたものでは、弁ハウジングに固定されたガイド部材でガイドされるようにして弁体に一体に設けられる軸部に、ガイド部材に関して前記弁座とは反対側に位置する流動抵抗部材が、流体からの流動抵抗を前記弁体に付与するようにして取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−185645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1で開示されるように、ガイド部材に関して弁座とは反対側で弁体の軸部の端部に流動抵抗部材が取付けられる構成では、軸部をガイド部材に嵌合せしめた後に流動抵抗部材を軸部に取付ける作業が必要であるので組立作業が煩雑となる。しかもガイド部材から軸部を突出させ、その軸部のガイド部材からの突出部に流動抵抗部材を取付けるので、流動抵抗部材の移動を許容すべくハウジングも大型化する必要があり、逆止弁の大型化を招く可能性がある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、組立を容易とするとともに小型化を図りつつ弁体の振動を抑制し得るようにした逆止弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、入口側流路を開口させた弁座が設けられる弁ハウジングと、出口側流路に常時通じる弁室を前記弁座との間に形成して前記弁ハウジングに設けられるとともにガイド孔を有するガイド部材と、前記弁座に着座可能な弁部ならびに前記ガイド孔に摺動自在に嵌合されるようにして前記弁部に連設される軸部を有する弁体と、該弁体を前記弁座に着座する側に付勢する付勢部材とを備え、前記入口側流路から前記弁室を経て前記出口側流路に流れる流体からの流動抵抗を前記弁体に付与する流動抵抗部が前記弁体に設けられる逆止弁において、前記流動抵抗部が、前記弁部と、前記ガイド部材のガイド孔との間で前記軸部に設けられることを第1の特徴とする。
【0008】
また本発明は、出口側流路に常時通じる弁室が内部に形成されるとともに入口側流路を開口させた弁座が前記弁室に臨んで設けられる弁ハウジングと、前記弁座に着座可能な弁部ならびに前記入口側流路と反対側で前記弁部に連設される軸部を有する弁体と、該弁体を前記弁座に着座する側に付勢する付勢部材とを備え、前記入口側流路から前記弁室を経て前記出口側流路に流れる流体からの流動抵抗を前記弁体に付与する流動抵抗部が前記弁体に設けられる逆止弁において、前記流動抵抗部が、前記軸部の周方向に間隔をあけた複数箇所に配置されて該軸部の軸方向に沿って長く形成されるとともに前記弁部に連なる複数の壁部から成ることを第2の特徴とする。
【0009】
本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、前記流動抵抗部が前記軸部に一体に形成されることを第3の特徴とする。
【0010】
本発明は、第1または第3の特徴の構成に加えて、前記付勢部材であるコイルばねが前記ガイド部材および前記弁部間に設けられ、前記流動抵抗部が前記コイルばねの内方に配置されることを第4の特徴とする。
【0011】
本発明は、第1〜第4の特徴の構成のいずれかに加えて、前記弁部に重心が位置するように前記弁体が形成され、前記流動抵抗部が、前記軸部の軸方向中央位置よりも前記弁部寄りで前記軸部に設けられることを第5の特徴とする。
【0012】
本発明は、第1〜第5の特徴の構成のいずれかに加えて、前記弁体が、前記弁部および前記軸部を一体に有してゴムから成ることを第6の特徴とする。
【0013】
本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記流動抵抗部が、前記軸部の軸線と直交する平面に沿って前記軸部の外周から半径方向外方に張り出す鍔状に形成されることを第7の特徴とする。
【0014】
さらに本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記流動抵抗部が、前記軸部の軸線と直交する平面に沿って前記軸部の外周から半径方向外方に張り出すとともに前記軸部の軸線方向に間隔をあけて配置される複数の鍔部から成ることを第8の特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の特徴によれば、弁体の軸部に設けられた流動抵抗部で弁体に流動抵抗を付与するようにして弁体の振動を抑制することが可能であり、弁部と、ガイド部材のガイド孔との間で軸部に流動抵抗部が設けられるので、流動抵抗部が設けられた状態にある軸部をガイド孔に嵌合させるようにしてガイド部材を弁ハウジングに取付けることができ、組立性が向上する。しかも流動抵抗部を弁体の弁部と、ガイド部材のガイド孔との間に配置することで弁ハウジングの大型化を回避して、逆止弁の小型化を図ることができる。
【0016】
また本発明の第2の特徴によれば、流動抵抗部が、軸部の周方向に間隔をあけた複数箇所に配置されて軸部の軸方向に沿って長く形成される複数の壁部から成り、弁部に連なるよにして軸部に設けられるので、流動抵抗部を弁ハウジング内にコンパクトに収容することができ、軸部の半径方向での弁ハウジングの大型化を抑制することができる。また軸部を嵌合させるガイド孔を有するガイド部材を備えた逆止弁を採用する場合であっても、流動抵抗部を弁室内に配置することが容易であり、しかも軸部の軸方向に沿う流動抵抗部は、弁体の横振動を抑えることができ、その横振動に連成する縦振動も抑制することができる。
【0017】
本発明の第3の特徴によれば、流動抵抗部が軸部に一体に形成されるので、部品点数を低減することが可能であり、また流動抵抗部の取付け作業も不要となるので組み付け作業工数の低減を図ることができる。
【0018】
本発明の第4の特徴によれば、ガイド部材と、弁体の弁部との間に設けられるコイルばねの内方に流動抵抗部が配置されるので、逆止弁をより一層小型化することができる。
【0019】
本発明の第5の特徴によれば、流動抵抗部が軸部の軸方向中央位置よりも弁部寄りで軸部に設けられており、弁部に重心が在るので、弁体の慣性モーメントを小さくすることができ、弁体の振動を効果的に抑制することができる。
【0020】
本発明の第6の特徴によれば、弁部および軸部を一体に有する弁体がゴム製であるので、部品点数を少なくして構造の簡素化を図ることができる。またゴム製であることから軸部に撓みが生じ易いが、軸部の軸方向中央位置よりも弁部寄りで軸部に流動抵抗部が設けられるので、撓みの影響を受け難い位置で軸部に流動抵抗部を設けることができる。
【0021】
本発明の第7の特徴によれば、流動抵抗部が、軸部の軸線と直交する平面に沿って軸部の外周から半径方向外方に張り出す鍔状に形成されるので、弁体の縦振動を抑えることができ、その縦振動に連成する横振動も抑制することができ、しかも弁体の軸線方向移動量を確保し易くなる。
【0022】
さらに本発明の第8の特徴によれば、流動抵抗部が、軸部の軸線と直交する平面に沿って軸部の外周から半径方向外方に張り出す複数の鍔部から成るので、流動抵抗部の面積を増大することができ、各鍔部間の間隔を調整するだけで弁体の縦振動をより効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施の形態の逆止弁が設けられた燃料ポンプの一部切欠き側面図である。
【図2】図1の逆止弁の拡大図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】流動抵抗部の有無による横振動の比較を示すグラフである。
【図5】流動抵抗部の有無による縦振動の比較を示すグラフである。
【図6】第2の実施の形態の逆止弁の縦断面図である。
【図7】第3の実施の形態の逆止弁の縦断面図である。
【図8】第4の実施の形態の逆止弁の縦断面図である。
【図9】自励振動が生じる状態を説明するための従来の逆止弁の縦断面図である。
【図10】従来の逆止弁で生じる横振動および縦振動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら説明する。
【0025】
本発明の第1の実施の形態について図1〜図5を参照しながら説明すると、先ず図1において、この燃料ポンプPは、たとえば車両に搭載される燃料タンク内に収納されるものであり、この燃料ポンプPのハウジング11は、該ハウジング11の下部を嵌合せしめる有底円筒状のポンプホルダ12と、前記燃料タンクの天井壁に取付けられる取付けベース部材13とで協働して保持されるものであり、前記燃料ポンプPの下部には前記燃料タンク内の燃料を濾過するフィルタ14が接続される。
【0026】
前記ハウジング11は、円筒状のハウジング主体15と、該ハウジング主体15の下部に固定される下部ブラケット(図示せず)と、前記ハウジング主体15の上部にかしめ結合される上部ブラケット17とで構成される。前記取付けベース部材13には、前記上部ブラケット17の一部を液密に嵌合せしめる連結筒18と、外側方に突出する燃料吐出管19とが一体に設けられており、連結筒18および燃料吐出管19内には出口側流路20が形成される。また前記取付けベース部材13には、前記出口側流路20から分岐した調圧通路21が形成されており、この調圧通路21は、前記出口側流路20を流通する流体としての燃料を圧力を所定圧力に調整するようにして前記取付けベース部材13に保持されるレギュレータ弁22に接続される。
【0027】
前記上部ブラケット17には、前記燃料ポンプPから吐出される燃料の燃料ポンプP側への逆流を阻止する逆止弁24Aが設けられるものであり、この逆止弁24Aの弁ハウジング25は、前記上部ブラケット17の一部を構成して前記取付けベース部材13の連結筒18内に液密に嵌合される。
【0028】
図2において、前記逆止弁24Aは、前記燃料ポンプPから吐出される燃料を導く入口側流路29ならびに該入口側流路29を中央部に開口させた弁座30が設けられる前記弁ハウジング25と、出口側流路20に常時通じる弁室31を前記弁座30との間に形成して前記弁ハウジング25に設けられるガイド部材26と、前記弁座30に着座することを可能とするとともに前記ガイド部材26でガイドされる弁体27Aと、該弁体27Aを前記弁座30に着座する側に付勢する付勢部材としてのコイルばね28とを備える。
【0029】
前記弁ハウジング25には、一端を前記燃料ポンプPのハウジング11内に通じさせる前記入口側流路29と、該入口側流路29の他端開口部を囲んで環状に形成される前記弁座30と、該弁座30側を小径端としたテーパ孔32と、該テーパ孔32の大径端に同軸に連なる挿入孔33と、該挿入孔33の他端に同軸に連なって該挿入孔33よりも大径に形成される嵌合孔34とが設けられており、前記挿入孔33および前記嵌合孔34間には環状の段部35が形成される。しかも前記弁ハウジング25の突出端には、前記嵌合孔34の一部を形成する薄肉円筒部25aが一体に設けられる。
【0030】
前記ガイド部材26は、前記嵌合孔34に嵌合されるリング板部26aと、前記挿入孔33に挿入されるようにして前記リング板部26aの内周部に連なる円筒部26bと、該円筒部26bと同軸のガイド孔36を有して前記円筒部26bの前記弁座30側の端部に同軸に連なる支持筒部26cとを一体に有し、前記嵌合孔34に嵌合された前記リング板部26aを、前記弁ハウジング25における前記挿入孔33および前記嵌合孔34間の段部35と、前記リング板部26aの外周部に係合するようにかしめられる前記薄肉円筒部25aとの間に挟持することで、前記ガイド部材26が前記弁ハウジング25に取付けられる。
【0031】
前記円筒部26bの周方向複数箇所には、前記弁室31を前記出口側流路20に通じさせる連通孔37,37…が設けられ、前記支持筒部26cの外面のうち前記円筒部26b寄りの部分は、前記連通孔37,37…に燃料を円滑に導くべく前記連通孔37,37…側に向かうにつれて大径となるテーパ面38として形成される。
【0032】
前記弁体27Aは、前記弁座30に着座可能な弁部40と、前記ガイド部材26における支持筒部26cのガイド孔36に摺動自在に嵌合することで該ガイド部材26で摺動自在に支持されるようにして前記弁部40に同軸に連なる軸部41Aを一体に有してゴムから成り、前記弁部40に弁体27Aの重心Gが位置するように弁体27Aが形成される。
【0033】
前記コイルばね28は、前記弁部40およびガイド部材26間に設けられるものであり、ガイド部材26における支持筒部26cの外周に前記コイルばね28の一端を受ける環状段部42が設けられ、前記弁部40の前記弁座30とは反対側の端部外周部には前記コイルばね28の他端を受ける環状の受け面43が形成される。
【0034】
前記弁体27Aには、入口側流路29から前記弁室31を経て前記出口側流路20に流れる燃料からの流動抵抗を前記弁体27Aに付与する流動抵抗部44が設けられるものであり、該流動抵抗部44は、前記弁部40と、前記ガイド部材26のガイド孔36との間で前記軸部41Aに設けられる。
【0035】
前記流動抵抗部44は、前記軸部41Aの軸方向中央位置CPよりも前記弁部40寄りで前記軸部41Aに設けられるものであり、この実施の形態では、前記軸部41Aに一体に形成され、前記ガイド部材26および前記弁部40間に設けられる前記コイルばね28の内方に前記流動抵抗部44が配置される。
【0036】
図3を併せて参照して、前記流動抵抗部44は、前記軸部41Aの周方向に間隔をあけた複数箇所に配置されて前記軸部41Aの軸方向に沿って長く形成される複数の壁部45,45…から成るものであり、それらの壁部45,45…は、剛性を確保すべく前記弁部40に連なるように形成される。而して、この実施の形態では、前記軸部41Aの周方向に等間隔をあけた複数箇所に凹部46,46…を設けることで形成される4個の壁部45,45…が横断面形状を略十字状とするようにして前記軸部41Aの周方向に等間隔をあけた4箇所に配置される。しかも各壁部45,45…は、前記軸部41Aの軸線に直交する方向で該軸部41Aよりも外側方に大きく突出するように形成されており、この壁部45,45…の前記弁部40とは反対側の端部は、弁部40から離反するにつれて軸部41Aの外面に近づくように傾斜して形成される。
【0037】
次にこの第1の実施の形態の作用について説明すると、弁部40に重心Gが位置するように形成される弁体27Aに流動抵抗部44が設けられるので弁体27Aに流動抵抗を付与するようにして弁体27Aの振動を抑制することが可能であり、弁部40と、ガイド部材26のガイド孔36との間で軸部41Aに流動抵抗部44が設けられるので、流動抵抗部44が設けられた状態にある軸部41Aをガイド孔36に嵌合させるようにしてガイド部材26を弁ハウジング25に取付けることができ、組立性が向上する。しかも流動抵抗部44を弁体27Aの弁部40と、ガイド部材26との間に配置することで弁ハウジング25の大型化を回避して、逆止弁24Aの小型化を図ることができる。
【0038】
また流動抵抗部44が軸部41Aに一体に形成されるので、部品点数を低減することが可能であり、また流動抵抗部44の取付け作業も不要となるので組み付け作業工数の低減を図ることができる。
【0039】
またガイド部材26と、弁体27Aの弁部40との間に設けられるコイルばね28の内方に流動抵抗部44が配置されるので、逆止弁24Aをより一層小型化することができる。
【0040】
また流動抵抗部44が軸部41Aの軸方向中央位置CPよりも弁部40寄りで軸部41Aに設けられており、弁部40に重心Gが在るので、弁体27Aの慣性モーメントを小さくすることができ、弁体27Aの振動を効果的に抑制することができる。
【0041】
またゴムから成る弁体27Aに流動抵抗部44が一体に形成されるので、流動抵抗部44を含む弁体27Aを、部品点数を少なくして簡素化することができる。またゴム製であることから軸部41Aに撓みが生じ易いが、軸部41Aの軸方向中央位置CPよりも弁部40寄りで軸部41Aに流動抵抗部44が固設されているので、撓みの影響を受け難い位置で軸部41Aに流動抵抗部44を設けることができる。
【0042】
さらに流動抵抗部44が、軸部41Aの軸方向に沿って長く形成されて周方向に間隔をあけて配置されるとともに前記弁部40に連なる複数の壁部45,45…から成るので、流動抵抗部44を弁ハウジング25内にコンパクトに収容することができ、軸部41Aの半径方向での弁ハウジング25の大型化を抑制することができる。また軸部41Aを嵌合させるガイド孔36を有するガイド部材26を備えた逆止弁24Aであっても、流動抵抗部44を弁室31内に配置することが容易であり、しかも軸部41Aの軸方向に沿う流動抵抗部44は、弁体27Aの横振動を抑えることができ、その横振動に連成する縦振動も抑制することができる。
【0043】
ここで流動抵抗部が設けられていない弁体と、流動抵抗部44が設けられている弁体27Aとで、横方向の振動を実験によって確認すると図4で示すようになり、縦方向の振動を実験によって確認すると図5で示すようになる。
【0044】
図4において実線で示すのが流動抵抗部44が設けられている弁体27Aで生じる横方向の振動であり、二点鎖線で示すのが流動抵抗部44が設けられていない弁体で生じる横方向の振動であり、流動抵抗部44が設けられることで横方向の振動を抑制し得ることが確認できる。
【0045】
また図5において実線で示すのが流動抵抗部44が設けられている弁体27Aで生じる縦方向の振動であり、二点鎖線で示すのが流動抵抗部44が設けられていない弁体で生じる縦方向の振動であり、流動抵抗部44が設けられることで縦方向の振動を抑制し得ることが確認できる。
【0046】
本発明の第2の実施の形態について図6を参照しながら説明するが、上記第1の実施の形態に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみで詳細な説明は省略する。
【0047】
逆止弁24Bは、入口側流路29ならびに該入口側流路29を中央部に開口させた弁座30が設けられる弁ハウジング25と、弁室31を前記弁座30との間に形成して前記弁ハウジング25に設けられるガイド部材26と、前記弁座30に着座することを可能とするとともに前記ガイド部材26でガイドされる弁体27Bと、該弁体27Bを前記弁座30に着座する側に付勢するコイルばね28とを備える。
【0048】
前記弁体27Bは、前記弁座30に着座可能な弁部40と、前記ガイド部材26における支持筒部26cのガイド孔36に摺動自在に嵌合することで該ガイド部材26で摺動自在に支持されるようにして前記弁部40に一体に連なる軸部41Bを一体に有してゴムから成り、弁部40に弁体27Bの重心Gが位置するように弁体27Bが形成される。
【0049】
前記弁体27Bには、入口側流路29から前記弁室31を経て前記出口側流路20に流れる燃料からの流動抵抗を前記弁体27Bに付与する流動抵抗部48が設けられるものであり、該流動抵抗部48は、前記弁部40と、前記ガイド部材26のガイド孔36との間で前記軸部41Bに設けられる。
【0050】
前記流動抵抗部48は、前記軸部41Bの軸方向中央位置CPよりも前記弁部40寄りで前記軸部41Bに設けられるものであり、この実施の形態では、前記軸部41Bに一体に形成され、前記ガイド部材26および前記弁部40間に設けられる前記コイルばね28の内方に前記流動抵抗部48が配置される。
【0051】
而して前記流動抵抗部48は、前記軸部41Bの周方向に間隔をあけた複数箇所に配置されて前記軸部41Bの軸方向に沿って長く形成されるとともに前記弁部40に連なる複数の壁部49,49…から成るものであり、この実施の形態では、前記軸部41Bの周方向に等間隔をあけた4箇所の外周から前記壁部49,49…が突出される。
【0052】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0053】
本発明の第3の実施の形態について図7を参照しながら説明するが、上記第1および第2の実施の形態に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみで詳細な説明は省略する。
【0054】
逆止弁24Cは、入口側流路29ならびに該入口側流路29を中央部に開口させた弁座30が設けられる弁ハウジング25と、弁室31を前記弁座30との間に形成して前記弁ハウジング25に設けられるガイド部材26と、前記弁座30に着座することを可能とするとともに前記ガイド部材26でガイドされる弁体27Cと、該弁体27Cを前記弁座30に着座する側に付勢するコイルばね28とを備える。
【0055】
前記弁体27Cは、前記弁座30に着座可能な弁部40と、前記ガイド部材26における支持筒部26cのガイド孔36に摺動自在に嵌合することで該ガイド部材26で摺動自在に支持されるようにして前記弁部40に一体に連なる軸部41Cを一体に有してゴムから成り、弁部40に弁体27Cの重心Gが位置するように弁体27Cが形成される。
【0056】
前記弁体27Cには、入口側流路29から前記弁室31を経て前記出口側流路20に流れる燃料からの流動抵抗を前記弁体27Cに付与する流動抵抗部50が設けられるものであり、該流動抵抗部50は、前記弁部40と、前記ガイド部材26のガイド孔36との間で前記軸部41Cに設けられ、その軸部41Cの軸方向中央位置CPよりも前記弁部40寄りで前記軸部41Cに設けられる。
【0057】
しかも前記流動抵抗部50は、前記軸部41Cの軸線と直交する平面に沿って前記軸部41Cの外周から半径方向外方に張り出す鍔状に形成されるものであり、前記軸部41Cと一体に形成され、前記ガイド部材26および前記弁部40間に設けられるコイルばね28の内方に配置される。
【0058】
この第3の実施の形態によれば、弁体27Cの縦振動を抑えることができ、その縦振動に連成する横振動も抑制することができ、しかも弁体27Cの軸線方向移動量を確保し易くなる。
【0059】
本発明の第4の実施の形態について図8を参照しながら説明するが、上記第1および第2の実施の形態に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみで詳細な説明は省略する。
【0060】
逆止弁24Dは、入口側流路29ならびに該入口側流路29を中央部に開口させた弁座30が設けられる弁ハウジング25と、弁室31を前記弁座30との間に形成して前記弁ハウジング25に設けられるガイド部材26と、前記弁座30に着座することを可能とするとともに前記ガイド部材26でガイドされる弁体27Dと、該弁体27Dを前記弁座30に着座する側に付勢するコイルばね28とを備える。
【0061】
前記弁体27Dは、前記弁座30に着座可能な弁部40と、前記ガイド部材26における支持筒部26cのガイド孔36に摺動自在に嵌合することで該ガイド部材26で摺動自在に支持されるようにして前記弁部40に一体に連なる軸部41Dを一体に有してゴムから成り、弁部40に弁体27Dの重心Gが位置するように弁体27Dが形成される。
【0062】
前記弁体27Dには、入口側流路29から前記弁室31を経て前記出口側流路20に流れる燃料からの流動抵抗を前記弁体27Dに付与する流動抵抗部51が設けられるものであり、該流動抵抗部51は、前記弁部40と、前記ガイド部材26のガイド孔36との間で前記軸部41Dに固設され、その軸部41Dの軸方向中央位置CPよりも前記弁部40寄りで前記軸部41Dに設けられる。
【0063】
しかも前記流動抵抗部51は、前記軸部41Dの軸線と直交する平面に沿って前記軸部41Dの外周から半径方向外方に張り出すとともに、前記軸部41Dの軸線方向に間隔をあけて配置される複数(この実施の形態では2つ)の鍔部52,53から成るものであり、前記軸部41Dと一体に形成され、前記ガイド部材26および前記弁部40間に設けられるコイルばね28の内方に配置される。なお鍔部52,53間の間隔は、前記軸部41Dの中心軸線から鍔部52,53の外周短までの半径方向距離に相当する長さ以上を確保することが望ましい。
【0064】
この第4の実施の形態によれば、第3の実施の形態に比べて流動抵抗部51の面積を増大することができ、各鍔部52,53間の間隔を調整するだけで弁体27Dの縦振動をより効果的に抑えることができる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0066】
たとえば上記各実施の形態では、弁体27A〜27Dの軸部41A〜41Dがガイド部材26で摺動自在に支承されるようにした逆止弁について説明したが、図9で示す従来例と同様に、ガイド部材でガイドされることのない軸部が弁部に同軸に連なってなる弁体を備える逆止弁にも本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
20・・・出口側流路
24A,24B,24C,24D・・・逆止弁
25・・・弁ハウジング
26・・・ガイド部材
27A,27B,27C,27D・・・弁体
28・・・付勢部材であるコイルばね
29・・・入口側流路
30・・・弁座
31・・・弁室
36・・・ガイド孔
40・・・弁部
41A,41B,41C,41D・・・軸部
44,48,50,51・・・流動抵抗部
45,49・・・壁部
52,53・・・鍔部 CP・・・軸部の軸方向中央位置
G・・・重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口側流路(29)を開口させた弁座(30)が設けられる弁ハウジング(25)と、出口側流路(20)に常時通じる弁室(31)を前記弁座(30)との間に形成して前記弁ハウジング(25)に設けられるとともにガイド孔(36)を有するガイド部材(26)と、前記弁座(30)に着座可能な弁部(40)ならびに前記ガイド孔(36)に摺動自在に嵌合されるようにして前記弁部(40)に連設される軸部(41A,41B,41C,41D)を有する弁体(27A,27B,27C,27D)と、該弁体(27A〜27D)を前記弁座(30)に着座する側に付勢する付勢部材(28)とを備え、前記入口側流路(29)から前記弁室(31)を経て前記出口側流路(20)に流れる流体からの流動抵抗を前記弁体(27A〜27D)に付与する流動抵抗部(44,48,50,51)が前記弁体(27A〜27D)に設けられる逆止弁において、前記流動抵抗部(44,48,50,51)が、前記弁部(40)と、前記ガイド部材(26)のガイド孔(36)との間で前記軸部(41A〜41D)に設けられることを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
出口側流路(20)に常時通じる弁室(31)が内部に形成されるとともに入口側流路(29)を開口させた弁座(30)が前記弁室(31)に臨んで設けられる弁ハウジング(25)と、前記弁座(30)に着座可能な弁部(40)ならびに前記入口側流路(29)と反対側で前記弁部(40)に連設される軸部(41A,41B)を有する弁体(27A,27B)と、該弁体(27A,27B)を前記弁座(30)に着座する側に付勢する付勢部材(28)とを備え、前記入口側流路(29)から前記弁室(31)を経て前記出口側流路(20)に流れる流体からの流動抵抗を前記弁体(27A,27B)に付与する流動抵抗部(44,48)が前記弁体(27A,27B)に設けられる逆止弁において、前記流動抵抗部(44,48)が、前記軸部(41A,41B)の周方向に間隔をあけた複数箇所に配置されて該軸部(41A,41B)の軸方向に沿って長く形成されるとともに前記弁部(40)に連なる複数の壁部(45,49)から成ることを特徴とする逆止弁。
【請求項3】
前記流動抵抗部(44,48,50,51)が前記軸部(41A〜41D)に一体に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の逆止弁。
【請求項4】
前記付勢部材であるコイルばね(28)が前記ガイド部材(26)および前記弁部(40)間に設けられ、前記流動抵抗部(44,48,50,51)が前記コイルばね(28)の内方に配置されることを特徴とする請求項1または3記載の逆止弁。
【請求項5】
前記弁部(40)に重心(G)が位置するように前記弁体(27A〜27D)が形成され、前記流動抵抗部(44,48,50,51)が、前記軸部(41A〜41D)の軸方向中央位置(CP)よりも前記弁部(40)寄りで前記軸部(41A〜41D)に設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の逆止弁。
【請求項6】
前記弁体(27A〜27D)が、前記弁部(40)および前記軸部(41A〜41D)を一体に有してゴムから成ることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の逆止弁。
【請求項7】
前記流動抵抗部(50)が、前記軸部(41C)の軸線と直交する平面に沿って前記軸部(41C)の外周から半径方向外方に張り出す鍔状に形成されることを特徴とする請求項1記載の逆止弁。
【請求項8】
前記流動抵抗部(51)が、前記軸部(41D)の軸線と直交する平面に沿って前記軸部(41D)の外周から半径方向外方に張り出すとともに前記軸部(41D)の軸線方向に間隔をあけて配置される複数の鍔部(52,53)から成ることを特徴とする請求項1記載の逆止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−96497(P2013−96497A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239638(P2011−239638)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】