説明

透明ポリオレフィン組成物

重量%で、A)25%以下の曇り度、および130℃以上の溶融温度を示す、プロピレンホモポリマーまたはコポリマーを70〜98%と、B)0.5〜30%の1種以上のコモノマー(類)を含有するブテン−1コポリマーを2〜30%とを含み、良好な透明性および機械特性示すポリオレフィン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的特性および機械的特性に価値あるバランスを示す透明ポリオレフィン組成物に関し、特に射出成形物品の製造に適した透明ポリオレフィン組成物に関する。特に本発明の組成物は、耐衝撃性、引っ張り特性および透明性(低曇り度)の格別なバランスを示す。
【背景技術】
【0002】
当業界ではポリプロピレンの特性、特に、可撓性および耐衝撃性を改質することが知られている。ポリプロピレンに一定量のエラストマーオレフィンコポリマーを加えることが可能であるが(例えば、エチレン−プロピレンゴム:EPR)、しかし、EPRの屈折率がポリプロピレンの屈折率と異なるので、双方の成分が最初透明であっても、当該ポリオレフィンブレンドは、通常、不透明である。このような問題を克服するために、ポリプロピレンとエラストマーオレフィンコポリマー類との前記ブレンドに一定量のエチレンポリマー類を添加することが提案されている(EP−A−0557953号公報に開示)。
【発明の概要】
【0003】
プロピレンポリマー類とブテンコポリマー類とをブレンドすることにより、前述した、曇り特性および引っ張り特性に特に関連する、価値あるバランス特性が達成されることが見出された。
【0004】
したがって、本発明は、良好な透明特性および機械特性を示すポリオレフィン組成物を提供する。当該組成物は、重量%で、
A) 25%以下、好ましくは、23%以下の曇り度、および130℃以上、好ましくは、135℃以上、より好ましくは、140℃以上の溶融温度を示す、プロピレンホモポリマーまたはコポリマーを70〜98%、好ましくは、80〜98%、より好ましくは、82〜98%と、
B) 0.5〜30%、好ましくは、0.5〜18%、より好ましくは、0.5〜15%の1種以上のコモノマー(類)を含有するブテン−1コポリマーを2〜30%、好ましくは、2〜20%、より好ましくは、2〜18%と
からなる。
【0005】
前記曇り値は1mm厚さの試験標本を用いて測定する。前記溶融温度値は、加熱速度20℃/分を用いる、ASTM D3417に準拠して、示差走査熱量計により決定する。
前記のような組成物では、(A)がプロピレンコポリマーの場合、当該コポリマーはエチレンおよびCH=CHRα−オレフィン類(式中、RはC−Cアルキル基である)から好ましくは選択される1種以上のコモノマー類を含有する。
【0006】
前記α−オレフィン類の具体例は、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘキセン−1およびオクテン−1である。エチレン、ブテン−1およびヘキセン−1が好適である。
【0007】
ブテン−1コポリマー(B)中のコモノマー(類)は、好ましくは、エチレン、プロピレンおよびCH=CHRα−オレフィン類(式中、RはC−Cアルキル基である)から選択される。前記α−オレフィン類の具体例は、ペンテン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘキセン−1およびオクテン−1である。エチレンおよびプロピレンが好適である。
【0008】
上記定義から、用語「コポリマー」には2以上の種類のコモノマーを含有するポリマーがあることは明らかである。
プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A)についてのその他の好適な特徴は、
− (A)がコポリマーのとき、コモノマー(類)含量は0.5〜15重量%、より好ましくは、1〜12重量%、特に、コモノマーがエチレンもしくはヘキセン−1のとき0.5〜6重量%;
− 4以上、具体的には4〜20、より好ましくは、4〜15の多分散指数;
− 1〜100g/10分、特に8〜50g/10分のメルトフローレート(MFR、荷重2.16kg、230℃で、ASTM D1238に準拠して測定);
− 85重量%以上、より好ましくは、90重量%以上、特に、プロピレンホモポリマーの場合、95重量%以上の室温におけるキシレン不溶性画分の量;
− 600MPa、より好ましくは、900MPaを超える曲げ弾性率
である。
【0009】
本発明で使用するプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A)は、1以上の重合工程の重合により製造できる、かかる重合は、チグラー・ナッタ触媒の共存下で行うことができる。好ましくは、重合は、高度に立体特異性の不均一チグラー・ナッタ触媒の共存下で行う。
【0010】
前記、チグラー・ナッタ触媒は、少なくとも1個のチタン−ハロゲン結合を有する少なくとも1種のチタン化合物、および少なくとも1種の電子供与化合物(内部供与体)を含み、双方とも塩化マグネシウムに担持された固体触媒成分を含む。チグラー・ナッタ触媒系は、必須助触媒として有機アルミニウム化合物を含み、場合により、外部電子供与化合物をさらに含む。
【0011】
適当な触媒系は、欧州特許出願EP45977、EP361494、EP728769、EP1272533号に、さらに国際特許出願WO00/63261号に記載されている。好ましくは、固体触媒成分は、Mg、Ti、ハロゲンおよびモノもしくはポリカルボン酸のエステル類から選択される電子供与体(脂肪族もしくは芳香族のいずれかであることができる)を含む。脂肪酸のエステル中、マロネート、グルタレートが好適であり、特に式(I):
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、RおよびR基は、等しいかもしくは互いに異なり、C−C20線状もしくは分枝状アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルもしくはアルキルアリール基であり、場合により、ヘテロ原子を含有でき、R〜R基は互いに等しいかもしくは異なり、水素もしくはC−C20線状もしくは分枝状アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルもしくはアルキルアリールであり、場合により、ヘテロ原子を含有でき、そして、同一炭素原子に結合されるR〜R基は共に結合して環を形成できる)のサクシネートが好適である。
【0014】
およびR基は、好ましくは、C−Cアルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよびアルキルアリール基である。特に好適なものは、RおよびRがプライマリーアルキル類、特に分枝状プリマリーアルキル類から選択される化合物である。適切なRおよびR基の例はメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、ネオペンチル、2−エチルヘキシルである。特に、エチル、イソブチル、およびネオペンチルが好適である。
【0015】
式(I)で記載した化合物の好適な群の一つは、R〜Rは水素であり、Rは分枝状アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよびアルキルアリール基であり、3〜10個の炭素原子を有する。式(I)の化合物の別の好適群は、RからRまでの少なくとも2つの基は水素と異なり、C−C20線状もしくは分枝状アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリールであり、場合により、ヘテロ原子を含有できる。水素と異なる2個の基が同じ炭素原子に結合している化合物が特に好適である。さらに、水素と異なる少なくとも2個の基が異なる炭素原子すなわち、RおよびRまたはRおよびR、に結合している化合物も特に好適である。芳香族酸のエステル中、EP45977号に開示されているベンゾエート類およびフタレート類が好適であり、特に、ジイソブチルフタレートまたはジヘキシルフタレートまたはジエチルフタレートおよびその混合物が好ましい。
【0016】
好適な方法では、固体触媒成分は、式Ti(OR)n−y(式中、nはチタンの価数であり、yは1〜nの数である)のチタン化合物(好ましくは、TiCl)と式MgCl・pROH(式中、pは0.1〜6、好ましくは2〜3.5の数であり、Rは1〜18個の炭素原子を有する炭化水素である)のアダクトから誘導される塩化マグネシウムとを反応させることにより製造できる。アダクトは、アダクトと不混和性不活性炭化水素の共存下で、攪拌条件下、アダクトの溶融温度(100〜130℃)で操作する、アルコールと塩化マグネシウムとを混合することにより球形に製造することができる。次いで、エマルションを急冷し、それにより球状粒子形のアダクトの凝固をもたらす。この方法に従って製造した球形アダクトの例は米国特許第4,399,054号および第4,469,648号明細書に記載されている。こうして得たアダクトはTi化合物と直接反応でき、またはアルコールのモル数が概して3未満、好ましくは0.1〜2.5であるアダクトを得るように熱制御脱アルコール処理(80〜130℃)に予め付すことができる。Ti化合物との反応は、冷TiCl4(通常、0℃)中にアダクト(脱アルコール処理したまたはそのまま)を懸濁させることにより行うことができ;混合物を80〜130℃に加熱し、0.5〜2時間この温度を維持する。TiClを用いる処理は1回以上行うことができる。TiClを用いる処理の間、内部供与体を加えることができ、この電子供与体を用いる処理を1回以上繰り返すことができる。一般に、式(I)のサクシネートを、MgClに対して0.01〜1好ましくは0.05〜0.5のモル比で使用する。球形の触媒成分の製造は、例えば、欧州特許出願EP−A−395083号公報および国際特許出願WO98/44009号公報に記載されている。上記方法に従って得られる固体触媒成分は、通常、20〜500m/g、そして好ましくは50〜400m/gの表面積(B.E.T.法による)を示し、総多孔度(B.E.T.法による)が0.2cm/gを超え、好ましくは、0.2〜0.6cm/gを示す。10.000Åまでの半径を有する孔のため多孔度(Hg法)の範囲は0.3〜1.5cm/g、好ましくは、0.45〜1cm/gである。
【0017】
有機アルミニウム化合物は、好ましくは、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム化合物から選択されるアルキル−Alである。トリアルキルアルミニウム化合物類と、アルキルアルミニウムハライド類、アルキルアルミニウムハイドライド類またはアルキルアルミニウムセスキクロリド類(例えばAlEtClやAlEtCl)との混合物を使用することもできる。有機アルミニウム化合物は、通常、Al/Ti比が1〜1000であるような量で使用する。
【0018】
好適な外部電子供与体化合物には、シリコン化合物類、エーテル類、エステル類(例えば、エチル4−エトキシベンゾエート)、アミン類、複素環式化合物類そして特に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ケトン類および1,3−ジエーテル類等がある。好適な外部電子供与体化合物の別のクラスは、式RSi(ORのシリコン化合物(式中、aおよびbは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数であり、(a+b+c)の総計は4であり;R、R、およびRは1〜18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、場合により、ヘテロ原子を有しても良い)である。特に好適なものは、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチル−t−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、2−エチルピペリジニル−2−t−ブチルジメトキシシラン、1,1,1,トリフルオロプロピル−2−エチルピペリジニル−ジメトキシシランおよび1,1,1,トリフルオロプロピル−メチル−ジメトキシシランである。外部電子供与体化合物は、有機アルミニウム化合物および当該外部電子供与体化合物間のモル比が0.1〜500を与えるような量で使用する。
【0019】
プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A)を製造するのに通常使用する触媒は、室温でキシレン不溶性の値が90重量%を超え、好ましくは95重量%を超えるポリプロピレンを生成できる。プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A)を製造するに使用する重合プロセスは、液相(例えば、稀釈剤として液体プロピレンを使用する)、気相または液−気相で起こる。
【0020】
反応温度は、好ましくは40〜120℃であり;より好ましくは、反応温度は50〜80℃である。
重合を液体プロピレン中で行うとき、圧力は、使用する操作温度で液体プロピレンの蒸気圧と競争する圧力であり、触媒混合物を供給するのに使用する少量の不活性稀釈剤の蒸気圧により、任意モノマー類の過圧により、そして分子量調節剤として使用する水素により修正することができる。重合圧力は大気圧またはそれ以上であることができる。連鎖移動剤(例えば、水素やZnEt)のような、当業界で公知の慣用分子量調節剤を使用できる。
【0021】
特に、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A)は、少なくとも2つの連結重合領域を含む気相重合反応器中で行われる重合プロセスにより製造できる。好適な重合プロセスはEP出願782587号に例証されている。
【0022】
詳細には、触媒系の共存下、プロピレンと任意コモノマーが供給される第1および第2連結重合領域中で行い、そこから生成したポリマーを排出する。当該プロセスでは、成長しつつあるポリマー粒子を速い流動化条件下、前記重合領域の一つ(第1)より上方に流れ(上昇管)、上昇管を去り、別の(第2)重合領域(下降管)に入り、そこから比重の作用下で該粒子は濃縮化された形態で下方に流れ、当該下降管を去り、上昇管に再導入され、こうして、上昇管および下降管間のポリマーの再循環を確立する。
【0023】
下降管中で、固体の密度が高値となり、ポリマーの嵩密度に近づく。こうして、流れ方向に沿って、圧力の正利得(positive gain)を得ることができ、その結果、特別の機械的手段の助けがなくても上昇管中にポリマーを再導入することが可能となる。このようにして、「ループ」循環が設定され、2つの重合領域間の圧力のバランスによりそして系内に導入されたヘッドロスによりループ循環が確定される。
【0024】
通常、上昇管中の速い流動化条件は、関連モノマー類を含むガス混合物を上昇管に供給することにより確立する。ガス混合物の供給は、適切な場合、ガス分配手段の使用により、前記上昇管中にポリマーの再導入の点より下方で行うのが好適である。上昇管中への移送ガスの速度は、操作条件下の移送速度よりも高く、好ましくは2〜15m/秒である。
【0025】
通常、上昇管を去るポリマーおよびガス混合物は固/気分離領域に運ばれる。固/気分離を、慣用の分離手段を使用することにより行うことができる。分離領域から、ポリマーは下降管に入る。分離領域を去るガス混合物は圧縮され、冷却され上昇管に移送される(適切な場合、補給モノマー類および/または分子量調節剤の添加を伴う)。移送は、ガス混合物のための再循環ラインにより行うことができる。
【0026】
2つの重合領域間のポリマー循環の制御は、機械弁のような固体流を制御するのに適切な手段を使用して下降管を去るポリマーの量を量ることにより行うことができる。
温度のような操作パラメーターは、たとえば、50〜120℃のようなオレフィン重合プロセスに普通であるものである。プロセスは、0.5〜10MPa、好ましくは1.5〜6MPaの操作圧力下で行うことができる。
【0027】
場合により、窒素や脂肪族炭化水素のような1種以上の不活性ガスを、重合領域中に、不活性ガスの部分圧の総計が好ましくはガスの総圧力の5〜80%であるような量に維持する。
【0028】
種々の触媒を、上昇管のいずれかの点で上昇管に供給する。しかし、それらの触媒を下降管のいずれかの点で供給することもできる。触媒はどのような物理状態であってもよく、したがって、固体または液体の触媒を使用できる。
【0029】
プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A)は、通常、25%以下の前記曇り値を達成するために、清澄剤とブレンドする。「清澄剤」という用語は、ポリマー結晶性が顕著に小さい可視光を散乱させ、したがって、光学的に清澄なポリオレフィン部を得ることができるような小さいポリマー結晶性をもたらすいずれかの添加剤を意図する。普通、前記清澄剤は核剤のクラスに属する。適切な清澄剤には、ソルビトールやキシリトールのアセタール類、並びにホスフェートエステル塩類等がある。多くのこのような清澄剤は米国特許第5,310,950号明細書に開示されている。ソルビトールアセタールの特定例にはジベンジリデンドソルビトールまたはそのC−C−アルキル置換誘導体、例えば、メチルジベンジリデンソルビトール、エチルジベンジリデンソルビトールもしくはジメチルジベンジリデンソルビトール等がある。適切な市販ソルビトール−アセタール清澄剤の例は、Millad3940およびMillad3988(双方とも、Milliken Chemicalから入手できる)として指定されているものである。ホスフェートエステル塩類の特定例には2,2’−メチレンビス(4,6,−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートナトリウムまたはリチウム塩等がある。清澄剤として使用されるための市販ホスフェートエステル塩類の例には、ADK安定剤NA−71およびADK安定剤NA−21(双方ともAmfine Chemical Corp.から入手できる)等がある。特定の好適な清澄剤は、3,4−ジメチルジベンジリデンソルビトール;アルミニウム−ヒドロキシ−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート];ナトリウム2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル〜ホスフェートならびにソルビトールおよびホスフェートエステル塩類と異なるその他の清澄剤、例えば、N,N’,N”−トリス−イソペンチル−1,3,5−ベンゼン−トリカルボキサミド、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸ジナトリウムもしくはカルシウム塩(1R、2R、3R、4S)または市販核剤NJ Star PCl等がある。上記のいずれかの組み合わせも使用できる。
【0030】
清澄剤は、例えば、清澄剤およびプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A)を慣用押出機中で剪断条件下で溶融ブレンドによるような公知の方法により、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A)に加えることができる。好ましくは、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A)は2500重量ppmまで、より好ましくは、100〜2000重量ppmの少なくとも1種の清澄剤を含む。このような量はポリマーおよび清澄剤の総重量に関する。
【0031】
ブテン−1コポリマー(B)は、好ましくは、アイソタクチック指数が少なくとも60%の結晶性もしくは半結晶性ポリマーである。前記アイソタクチック指数は13C−NMRを使用するmmmmペンタド/総ペンタドとしておよび0℃のキシレン中に可溶な物質の重量としての双方で決定する。
【0032】
ブテン−1コポリマー(B)のその他の好適な特徴は:
− 1〜100/10分、特に、0.5〜50g/10分のメルトフローレート(MFR、荷重2.16kg、190℃でASTM D 1238に準拠して測定);
− 0.90〜0.88g/cmの密度(例えば、ASTM D 1505に準拠して測定)
である。
【0033】
前記ブテン−1コポリマーは、公知のプロセスおよび重合触媒を使用して得ることができる;例えば、ブテン−1の共重合はチグラー・ナッタ触媒を使用して行うことができる。
【0034】
上述のブテン−1ポリマーを得るための一例として、TiCl系触媒および助触媒としてアルミニウム誘導体、例えば、アルミニウムハライド、並びに、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A)の製造のために上記した触媒系を使用できる。重合プロセスは、例えば、稀釈剤として不活性液状炭化水素を使用するスラリー重合または反応媒体として例えば液状ブテン−1を使用する溶液重合のような公知法に準じて行うことができる。さらに、1基以上の流動化もしくは機械攪拌床反応器中で操作する、気相中の重合プロセスを行うこともできる。反応媒体として液状ブテン−1中で行う重合は非常に好ましい。前記ブテン−1コポリマーおよびその製造方法の例は、WO9945043号、WO03099883号およびWO2004048424号各公報に開示されている。
【0035】
例えば、WO03042258号公報に開示されているように、ブテン−1コポリマーは、メタロセン化合物とアルモキサンとを接触させることにより得られる触媒の共存下で重合することによっても得ることができる。
【0036】
本発明の組成物はオレフィンポリマー類に慣用的に使用される添加剤、充填剤および顔料、例えば、核剤(微細化タルク等)、エックステンションオイル類、無機充填剤、有機および無機顔料等も含有できる。
【0037】
本発明の組成物の好適な特徴は:
− 25%以下の曇り値;
− 1〜100g/10分、特に、5〜50g/10分のメルトフローレート(MFR、2.16kg荷重、230℃におけるASTM D1238に準拠して測定);
− 500MPaを超える、より好ましくは800MPaを超える曲げ弾性率;
− 500%を超える破断点伸び
である。
【0038】
本発明の組成物は、プロピレンホモポリマーもしくはコポリマー(A)およびブテン−1コポリマー(B)をそれらの融点もしくは軟化点よりも高い温度、例えば、好ましくは150〜250℃の温度でブレンドすることによる、公知方法にしたがって製造できる。その他の成分および添加剤類を前記ブレンドプロセスの間に添加できる。バンバリーミキサーやスクリュー押出機のような、当業界で普通使用されているブレンド装置を使用できる。
【0039】
少なくとも2つの逐次重合工程(ここで、(A)および(B)が1もしくはそれ以上の工程で別個に製造される)を用いて直接全組成物を製造することもできる。
ポリマー成分(A)および(B)ならびに本発明組成物の所望のMFR値は、分子量調節剤(例えば、水素)を適切に調節することによる重合において直接得ることができるか、あるいは、前記ポリマー成分または組成物をビスブレーキングに付すことにより得ることができる。当該ポリマー鎖切断もしくはビスブレーキングは周知の技術を使用することにより行われる。これらのうちの1は、過酸化物を使用して、通常、押出機中で加熱し、所望の程度のビスブレーキングを与えるのに足る量の過酸化物類をポリマーに加えることからなる。
【0040】
ポリマービスブレーキングプロセスに最も都合良く使用される過酸化物は、好ましくは150℃〜250℃の範囲の分解温度を示す。当該過酸化物の例は、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペロキシ)ヘキシンおよびLuperox 101 2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペロキシ)ヘキサンであり、これらのすべては商業的に入手できる。ビスブレーキングプロセスに必要な過酸化物の量は、好ましくは、ポリマーの0.001〜0.5重量%の範囲であり、より好ましくは、0.001〜0.2重量%の範囲である。
【0041】
上述したように、本発明の組成物は、通例、形成物品(例えば、家庭用品)、ボトルおよびコンテナーのような、射出成形物品、射出吹込成形、射出延伸ブロー成形物品に適している。
【0042】
したがって、本発明は、前記組成物を含む射出成形物品も提供する。このような射出成形物品は、好ましくは、0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上の壁厚により特徴付けられる。射出成形物品は、典型的には、当業界で周知の方法および装置を使用することにより製造される。一般に、射出成形プロセスは、ポリマーを溶融する工程、続いて溶融したポリマーを加圧下モールド中に射出する工程を含む。射出成形管状構造を製造し、適当な温度で軟化させながら、軟化させた管をモールドの内部壁に合致させるために、前記管状構造中に空気を吹き込む。
【0043】
温度および圧力は射出成形プロセスに通常使用される温度および圧力である。特に、180〜230℃の溶融温度、1〜150MPaの射出圧力で操作することができる。
【実施例】
【0044】
下記の非制限的実施例は、本発明をより良く例証するために与える。
下記の特徴付け方法はポリマー物質を試験するために使用する。
コモノマー成分の決定:赤外分光(IR分光)による。
溶融温度:ISO 11357/3法に準拠する示差走査熱分析により決定。
6±1mg秤量した試料を20℃/分の速度で200±1℃に加熱し、窒素流中2分間200±1℃に維持し、その後、20℃/分の速度で40℃に冷却し、それにより、2分間この温度に維持して試料を結晶化させる。次いで、この試料を、20℃/分の速度で200±1℃にして再度溶融する。溶融走査を記録し、サーモグラムを得、これからピークに相当する温度を読む。第2溶融の間に記録された最も強い溶融ピークに相当する温度を溶融温度として採用する。
メルトフローレート(MFR):プロピレンポリマーおよびコポリマー類についてASTM D1238、条件L(230℃/2.16kg荷重)に準拠して、そして、ブテン−1コポリマー類についてASTM D1238、条件E(190℃/2.16kg荷重)に準拠して決定。
多分散指数(PI):RHEOMETRICS(米国)により市販されている平行板レオメーターモデルRMS−800を使用し、0.1ラド/秒〜100ラド/秒の増加する振動数で操作して、200℃の温度で決定する。式:
P.I.=10/Ge
(式中、Geはクロスオーバーモジュラスであり、G’=G”、ここで、G’はストレージモジュラスであり、G”はロスモジュラスである、における(Paで表現される)値として確定される)により、クロスオーバーモジュラスからP.I.を誘導する。
曇り度(1mmプラーク):1mmプラークを用いASTM D1003に準拠して測定。使用する方法では、5×5cm標本を1mm厚さの成形プラークから切断し、曇り値はHazemeter型UX−10に連結したGardner測光単位か、フィルター“C”を用いるG.E.1209光源を備えた同等の装置を使用して測定する。既知曇り度の標準試料を使用して装置を較正する。試験しようとするプラークは次の方法に従って製造する。75×75×1mmプラークをGBF Plastiniector G235/90 Injection Molding Machineを用いて、下記の処理条件下、90トンで成形する。
スクリュー回転速度: 120rpm
背圧: 10バール
溶融温度: 260℃
射出時間: 5秒
圧力を保持するスイッチ:50バール
第1段階保持圧力: 30バール
第2段階圧力: 20バール
保持圧力プロフィール: 第1段階5秒
第2段階10秒
冷却時間: 20秒
成形水温度: 40℃。
アイゾッド耐衝撃性:48時間後、0℃そして23℃において、ISO 180/1A法に準拠して決定。
曲げ弾性率(FEM)および引張弾性率(TEM):48時間後、ISO178法に準拠して決定。
引張強度ならびに降伏伸びおよび破断点伸び:48時間後、ISO527に準拠して決定。
加熱撓み温度(HDT):48時間後、ISO75に準拠して決定。
【0045】
実施例に使用した製品
PP−1(成分(A)):下記の特徴を有するプロピレンホモポリマー:
− 溶融温度:163℃;
− MFR:10.3g/10分;
− P.I.:7.3;
− 曇り度:21.8%(清澄剤含有);
− 0℃におけるアイゾッド:1.3kJ/g;
− 23℃におけるアイゾッド:2.6kJ/g;
− FEM:1915MPa;
− TEM:2220MPa;
− 降伏点引張強度:41MPa;
− 降伏点伸び:7.1%;
− 破断点引張強度:38.9MPa;
− 破断点伸び:12%;
− HDT:120.5℃。
PP−2(成分(A)):1.5重量%のエチレンを含有し、下記の特性を有するプロピレン/エチレンコポリマー:
− 溶融温度:157.8℃;
− MFR:2g/10分;
− P.I.:6;
− 曇り度:18%(清澄剤含有)。
【0046】
重合装置を含むプラント中で連続条件下で触媒を共存させてプロピレンを重合(PP−1)させ、そしてプロピレンとエチレンとを共重合(PP−2)させることにより、前記プロピレンポリマー類を製造する。
【0047】
2基の連結した円筒形反応器、上昇管および下降管を含む重合装置に触媒を送る。気−固分離器から再循環ガスにより上昇管中で迅速流動化条件を確立する。使用される触媒は、EP−A−728769号公報の実施例5に類似するが、MgCl・2.1COHの代わりに微球形MgCl・1.7COHを使用することにより製造される触媒成分を含む。このような触媒成分は、外部供与体としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)およびトリエチルアルミニウム(TEA)と共に使用する。
【0048】
これらのポリマー類は、液体バリヤーを使用して得られる広分布の分子量を示す。高分子量画分は下降管中で重合化され、一方、低分子量画分は上昇管中で得られる。
反応器を出るポリマー粒子を蒸気処理に付し、反応性モノマーおよび揮発性物質を除去し、次いで、乾燥させる。ポリマー粒子を、溶融温度215℃で、Werner押出機中で、通常の安定剤パッケージ、すなわち、0.05重量%のステアリン酸カルシウムおよび0.15重量%のIrganox B215(ペンタエリトリル−テトラキス[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートおよびトリス(2,4−ジtert−ブチルフェニル)ホスフェートを1:1の割合]と、このような安定剤に加えて、0.18重量%の清澄剤(Millad 3988、ビス−3,4−ジメチルジベンジリデン)ソルビトール)および過酸化物と共に押出する。過酸化物はLuperox 101(2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペロキシ)ヘキサン)であり、PP−1ついて0.015重量%をPP−2について0.02重量%の量で使用する。前記重量はポリマーおよび添加剤の総重量を基準に言及する。
【0049】
PB−1(成分(B)):4.3重量%のエチレンを含有し、1g/10分のMFRを示すブテン−1/エチレンコポリマー。それは、5.5重量%のエチレンを含有し、0.24のMFRを示すブテン−1/エチレンコポリマー画分60重量%、および2.6重量%重量%のエチレンを含有するブテン−1/エチレンコポリマー画分40重量%からなる反応器ブレンドである。このような反応器ブレンドは、別々にこれらの2種のコポリマーを、高立体特異性チグラー・ナッタ触媒の共存下で連続重合段階で製造することにより、重合において直接製造する。
【0050】
EPR(比較成分(B)):18.5重量%のエチレンを含有し、10のMFR(230℃/2.16kg)を示すエチレンとプロピレンとのコポリマー。
実施例1および比較例1
ポリオレフィン組成物およびフィルムの製造
実施例に使用するポリオレフィン組成物は、それぞれ、成分(A)として上述PP−1およびPP−2ポリマー、ならびにコポリマー(B)としてPB−1コポリマーおよびEPRそして比較成分(B)からなるブレンドである。これらのブレンドはWerner押出機を使用して製造し、溶融温度215℃だった。ブレンドの組成は下記の表1で報告する。
【0051】
【表1】

【0052】
下表2に特性を列挙する。
【0053】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、
A) 25%以下の曇り度、および130℃以上の溶融温度を示す、プロピレンホモポリマーまたはコポリマーを70〜98%と、
B) 0.5〜30%の1種以上のコモノマー(類)を含有するブテン−1コポリマーを2〜30%と
を含むポリオレフィン組成物。
【請求項2】
(A)が、ソルビトール類およびキシリトール類のアセタール類ならびにホスフェートエスエル塩から選択される清澄剤を含有する、請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項3】
(A)のメルトフローレート(MFR、ASTM D 1238に準拠し、230℃、荷重2.16kgで測定)が1〜100g/10分である、請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項4】
(A)の多分散指数が4以上である、請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項5】
(A)がプロピレンホモポリマーである、請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項6】
(A)が、0.5〜15重量%のコモノマー(類)を含有するプロピレンコポリマーである、請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項7】
(A)が、エチレンおよびCH=CHRα−オレフィン類(式中、RはC−Cアルキル基である)から選択される1種以上のコモノマー類を含有するプロピレンコポリマーである、請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項8】
コポリマー(B)が、エチレン、プロピレンおよびCH=CHRα−オレフィン類(式中、RはC−Cアルキル基である)から選択される1種以上のコモノマー類である、請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のポリオレフィン組成物を含む射出成形物品。
【請求項10】
0.1mm以上の壁厚を有する、請求項9に記載の射出成形物品。
【請求項11】
ボトルまたはコンテナーの形態である、請求項9に記載の射出成形物品。

【公表番号】特表2011−506716(P2011−506716A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538534(P2010−538534)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066103
【国際公開番号】WO2009/077293
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【Fターム(参考)】