説明

透明不燃材及びその製造方法

【課題】透明性に優れ、不燃性であり、軽量で割れにくく、耐衝撃性を有し、熱暴露を受けても有害ガスが発生しない、透明不燃材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の上下面を粘土膜で積層被覆した構造を有し、ガラス繊維織布の上下面に、粘土膜を配し、成形型に設置後、熱硬化樹脂を注入一体化し、粘土膜に、ガス抜き用の貫通孔を設けた透明不燃材。
【効果】主として屋内・屋外用建材、照明装置用部材、照明式看板、及び太陽電池、表示素子等の保護カバーに使用される新素材・新技術を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維強化プラスチック(以下、GFRPと記載することがある。)と粘土膜からなる積層体に関するものであり、さらに詳しくは、透明な粘土膜で積層被覆されたGFRPであって、透明性に優れ、かつ光拡散効果を併せ持つ、不燃で、熱暴露を受けても有害ガスが発生しない、軽量で割れにくく、耐衝撃性を有する、透明不燃材、及びその製造方法に関するものである。本発明は、主として防火シャッター類、防炎垂壁、照明式看板、各種照明器具用カバー類及び太陽電池、液晶(LCD)、有機EL等の表示素子の保護カバーに使用される透明不燃材に関する新素材・新技術を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
屋内・屋外用建材、列車・自動車等の車両用材料、内装材、照明装置用部材として、不燃性、透明性、軽量性、安全性のすべてを併せ持つ材料が求められており、表示素子等の保護カバーにおいても同様の特性が要求されている。透明性、不燃性と、割れにくさは、ガラスとプラスチックの例から分かるように、一般的には、トレードオフの関係にあり、これら三つの性質を同時に具備させることは至難である。
【0003】
プラスチックは、有機材料であり、その分子骨格は、炭素と水素が主たる構成元素である。したがって、一般的には、燃えやすい。燃えにくいプラスチックとするために、プラスチックの難燃化は、種々の方法が提案されているが、一般的には、プラスチックの素材である樹脂に、難燃剤を練り込む方法が知られている。
【0004】
難燃剤としては、臭素化合物や塩素化合物等のハロゲン含有化合物、芳香族リン酸エステルや赤燐等のリン含有化合物が知られており、特許文献1には、無黄変性ポリウレタン系樹脂を主成分とし、難燃剤として、リン系難燃剤及び/又は臭素系難燃剤を含有する透明で、自己修復性及び耐摩耗性を備えた難燃性樹脂フィルムが開示されている。しかし、成形加工時や燃焼時に多量の有害ガスが発生し、機器の腐食や人体への影響等安全面で問題がある。
【0005】
ポリオレフィン系樹脂のノンリン・ノンハロゲン難燃化技術として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム等の金属化合物を添加する方法が、例えば、特許文献2、3に提案されている。しかしながら、難燃性を付与するためには、かなり多量の金属化合物を添加する必要があり、その結果、成形性が悪く、成形体の機械的強度が著しく低下し実用性に劣る。
【0006】
これまで、耐火・耐熱性に優れ、軽量で割れにくいシート状成形体として、ガラス繊維に樹脂を含浸させる方法が知られている。特許文献4には、ガラス繊維織物に軟質塩化ビニルを片面又は両面に付与し、特に膜材料等の建築材料向けとして提案している。また、特許文献5には、ガラス繊維より耐熱性の高いシリカクロス(二酸化ケイ素を主成分とするガラス繊維布帛)に難燃性樹脂をコーティングした、フレキシブルな膜材が、耐火スクリーンとして、防火シャター等への適用を提案している。
【0007】
しかしながら、建築材料としての防火シャターは、不燃性が求められており、ガラス繊維やシリカクロスの基材に樹脂コーティングした材料は、火炎の熱暴露によって繊維の強度劣化が起り、最後にはコーティング樹脂が焼失する。したがって、火炎の通り抜けを防ぐ目的で繊維密度を上げ、材料の厚みを増やす必要があり、結果的に、フレキシビリティーを阻害し、材料が重くなる欠点がある。防火シャッターは、金属製が一般的であるが、難燃処理した木製のシャッターも使用されている。しかし、防火シャッターは、透視性に欠け、高温の火炎に長時間さらされた場合、燃焼の恐れがあり信頼性に劣る。
【0008】
防炎垂壁は、火災時に天井に留まる煙を一時的に溜め避難を容易にする目的があり、一般的に金属繊維入りのガラス板が使用されている。これは、無論、不燃材であるが、相応に重量があり、且つ人の頭上に設置されているために、地震の際や、経年劣化等による落下を想定した場合、人災の原因となりうる問題を有する。また、ガラス板は、重いガラス板を保持するための工事費や材料費が高くなる問題もある。
【0009】
軽量で透明なプラスチックは、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート等々種類は多い。照明カバー、照明式看板、広告灯には、従来アクリル成形品が使われてきたが、アクリル板は、極めて燃えやすく、割れる等の問題があり、安全面から適切でなく、光源からの熱に曝されるので、十分な耐熱性が必要である。耐熱性がなければ、照明カバーとしての強度が維持できなくなり、また、退色等が生じて美観を損ねることがある。特に市街地ビルの袖看板では、建築基準法改正により、不燃材であることが求められており、プラスチック単体では、不適当である。合成繊維やガラス繊維に樹脂を含浸又は積層したプラスチックが多く使用されている。
【0010】
また、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や、蛍光灯を用いた各種表示器具のレンズやカバー、照明式看板、広告灯等は均一な光照射が要求され、光拡散性を持つレンズやカバーが必要である。家庭用照明装置も、光源からの光を和らげるために、光拡散照明カバーが取付けられているものが多い。
【0011】
絵画、彫刻等を展示する美術館の展示室等では、光が各展示品に均一に当たることが望まれる。この場合、蛍光灯等の光源が視認されずに、天井面全体から光が照射されることが好ましい。光拡散性カバー、シートを通した照明は、輝度ムラがなく、柔らかい光を放つ。照明光が均一で、面積が広く、軽量化された照明装置が、色々な施設・用途において要求されている。
【0012】
前述のように、照明装置用カバーは、光透過性と同時に高い光拡散性が求められる。換言すれば、全光線透過率が高く、且つヘイズ(拡散光線透過率/全光線透過率)が高く、光分散度の高いものが適切である。従来、アクリル樹脂、スチロール樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂シートや艶消しガラス等が用いられてきた。また、これらの透明な樹脂に、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン等の無機質充填材を分散させたものが提案されているが、全光線透過率が低下して、暗い照明カバーしか得られなかった。また、添加量を増やすと樹脂の強度も低下する。
【0013】
太陽電池の受光面は、ガラス等の透明な材料が保護カバーとして使用され、熱強化白板ガラスが利用されている。液晶(LCD)、有機EL等の表示素子の発光面にはガラス基板やPET等の透明プラスチックが一般的に用いられている。いずれも透明性に優れているが、周知のように、ガラスは、柔軟性がなく、PETは、柔軟性があるものの、耐熱性は劣り、連続使用温度は高々150℃である。
【0014】
合成繊維やガラス繊維を基材とし、これに樹脂を含浸又は積層した膜材は、耐熱性と同時に高い光拡散性、柔軟性、耐久性等の特質から、大面積化と軽量・薄型化とを両立させることが可能である。しかしながら、不燃性ではなく、また、施工時に不用意な曲げ力が加わると、屈曲部に曲げ跡が残りやすく、この部位に光透過斑が生ずる。また、この状態で長期間使用すると、屈曲部にひび割れが生じたり、基材である繊維が折損することが懸念される。
【0015】
防火シャッター類、防炎垂壁、照明カバー類や照明式看板おいては、防火上の問題から性能要求基準が設けられている。不燃材料を評価する試験としては、不燃性試験、発熱性試験、及びガス有害性試験の3種類があげられる。不燃性試験、発熱性試験のどちらかに加え、ガス有害試験を行うのが原則である。ただし、ガス有害性試験は、基材における化粧層の有機質量が200g/m以下である場合等、条件によっては省略される。
【0016】
不燃性試験は、ISO1182に準拠し、発熱性試験は、ISO5660−1コーンカロリーメーター法に準拠している。試験の概略は、100×100mm角の試料に対して25mmの距離より100kW/mの均一な熱放射を与えて加熱すると同時に、高電圧火花を発生させて、試料から所定時間内に発生する総発熱量が8MJ/m以下であることと、加熱開始後20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がないこと、また、加熱開始後20分以内に、最高発熱速度が、10秒間継続して200kW/mを超えないことが規定されている。
【0017】
コーンカロリーメーター試験は、約700℃のヒーター加熱を20分間受けるために、基材の多くは、鉱物繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維等が用いられるが、コーティング樹脂は、燃焼し、かつ基材は、甚だしく劣化する。したがって、熱暴露を受けても強度が落ちない基材が求められるが、一般的には、熱暴露を受けることを想定した基材設計がされ、基材部分を厚くすること、単位面積当たりの繊維密度上げる工夫が成されている。そのために、光透過量を自由に変えられないのが現状である。
【0018】
透明性、不燃性と、割れにくさは、一般的に、トレードオフの関係にあることは前述した。本発明者らは、アスペクト比の大きい平板な無機微細結晶(粘土粒子)を、ナノサイズレベルで、少量の有機化合物をバインダーとして、鎖状に連結すると同時に多層化すれば、透明性、不燃性と、割れにくさの三つの性質を同時に具備することが可能と考え、これを実証し、さらに、粘土粒子並びに膜化技術の高度化を進め、透明性の付与、粘土では困難であった耐水性の付与にも成功した(例えば、特許文献6)。しかし、当技術分野においては、さらに、素材を高度化して、透明性、不燃性と、割れにくさの三つの性質を同時に具備することが可能な新しい技術を開発することが強く要請されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平7−268125号公報
【特許文献2】特開昭57−165437号公報
【特許文献3】特開昭61−36343号公報
【特許文献4】特開2003−276113号公報
【特許文献5】特開2001−79104号公報
【特許文献6】特開2007−63118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、従来技術の問題点を確実に解決することができる新しい不燃材を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、GFRPと粘土膜からなる積層材からなる不燃材を開発することに成功し、本発明を完成するに至った。本発明は、透明粘土膜で積層被覆されたGFRPからなり、透明性に優れ、不燃性であり、軽量で割れにくく、耐衝撃性を有し、熱暴露を受けても有害ガスが発生しない透明不燃材及びその製造方法を提供することを目的とするものである。さらに、本発明は、主として、防火シャッター類、防炎垂壁、照明式看板、各種照明器具用カバー類及び太陽電池、表示素子等の各種電子デバイスの保護カバーに使用される新素材・新技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)ガラス繊維強化プラスチックを基材として、その上下面に積層被覆された粘土膜を有し、かつこれらが、一体化した複合多層構造を有する成形体であって、(1)700℃×20分の燃焼試験において、着火することがない、高い不燃性を有し、(2)全光線透過率が少なくとも90%であり、(3)光拡散性を有し、(4)従来品に比べて、軽量で、割れにくい、ことを特徴とする透明不燃材。
(2)前記ガラス繊維強化プラスチックの素材が、熱硬化性樹脂である、前記(1)記載の透明不燃材。
(3)前記熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、及びビニルエステル樹脂のうちの一種である、前記(2)記載の透明不燃材。
(4)前記ガラス繊維強化プラスチックにおける、ガラス繊維の全固体に対する重量割合が、少なくとも25%である、前記(1)記載の透明不燃材。
(5)前記粘土膜の主要構成成分が、天然粘土又は合成粘土である、前記(1)記載の透明不燃材。
(6)前記天然粘土又は合成粘土が、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディアイト、アイラライト、及びカネマイトのうちの一種以上である、前記(5)記載の透明不燃材。
(7)前記粘土膜が、添加物として水可溶性樹脂を含む粘土からなる、前記(1)記載の透明不燃材。
(8)前記添加物が、セルロース系樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル樹脂、及びポリアクリル酸樹脂のうちの1種以上であって水可溶性である、前記(7)記載の透明不燃材。
(9)前記添加物の粘土膜に対する重量割合が、多くても30%である、前記(1)記載の透明不燃材。
(10)複合多層構造を有する成形体の形態が、シート状、平板状又は立体形状である、前記(1)記載の透明不燃材。
(11)厚みが、5mm又はそれを下回る値である、前記(1)記載の透明不燃材。
(12)複合多層構造を有する成形体の片面あるいは両面の粘土膜に貫通孔を設けた、前記(1)記載の透明不燃材。
(13)成形型に粘土膜、ガラス繊維織布、粘土膜の順に配置し、熱硬化性樹脂を注入して、一体に成形して複合多層構造を有する成形体を作製することを特徴とする透明不燃材の製造方法。
(14)前記複合多層構造を有する成形体を、レジントランスファーモールド成形法、インフュージョン成形法、又はライトレジントランスファーモールド成形法で成形する、前記(13)記載の透明不燃材の製造方法
(15)前記(1)から(12)のいずれかに記載の透明不燃材を用いたことを特徴とする光拡散性部材。
(16)
透明不燃材を、発光ダイオード、蛍光灯を光源とする照明器具又は表示器具に用いる、前記(15)記載の光拡散性部材。
(17)前記(1)から(12)のいずれかに記載の透明不燃材を用いたことを特徴とする保護カバー。
(18)透明不燃材を、太陽電池受光面、液晶、又は有機ELの表示素子の透明保護基板に用いた、前記(17)記載の保護カバー。
【0022】
次に、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の透明不燃材は、図1に示すような断面構造からなり、図2から分かるように、透明であり、光拡散効果があり、軽量で、割れにくく、耐衝撃性を持っている。以下、本発明の各構成とその製造方法について説明する。
【0023】
(I)GFRPの構成と製造方法
本発明の透明不燃材の主要構成成分は、GFRPと粘土膜である。繊維強化プラスチック(FRP)には、補強繊維として、鉱物繊維、ガラス繊維(グラスウール)、セラミック繊維、有機高分子系繊維等が用いられる。透明性を著しく阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、一般的には、ガラス繊維が用いられる。ガラス繊維は、連続繊維、織布、不織布等の形状で使用され、その厚みは、種々のものが市販されている。ガラス繊維の形状、厚みは、用途に応じて、適宜選定できる。
【0024】
プラスチックの素材となる樹脂は、その性質上、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に分類される。熱可塑性樹脂は、加熱すると溶けて液状になる性質を持っている。また、機械的強度が弱く、温度環境に左右されるため、寸法精度が精密ではない。他方、熱硬化性樹脂は、熱に強く、一度固化すれば、再加熱しても軟化溶融はしない。熱硬化性樹脂は、金属より軽く、ガラスや陶器よりも強い熱硬化性樹脂成形品は、機械的強度、寸法精度も高く、機能部品として、あらゆる産業分野において利用されている。
【0025】
熱硬化樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ユリア樹脂、メラミン樹脂等が例示されるが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、及びビニルエステル樹脂が透明性に優れ好適である。硬化剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKPO)やアミン系等、種々挙げられる。
【0026】
ガラス繊維と熱硬化性樹脂からなるGFRPの製造方法は、型に補強繊維を敷き、硬化剤を混合した樹脂を脱泡しながら多重積層してゆくハンドレイアップ法や、吐出ガンで補強繊維と樹脂を同時に吹き付け、ロール等で成形するスプレーアップ法のほか、あらかじめ骨材と樹脂を混合したシート状のものを金型で圧縮成型するシートモールディングコンパウンド(SMC)法、インジェクション成形のように、繊維を敷き詰めた合わせ型に樹脂を注入するレジントランスファーモールディング(RTM)法、等々が知られている。
【0027】
近年、環境に配慮した成形方法として、インフュージョン(Infusion)成形法等の真空注入成形法が注目されている。これは、真空圧によって、樹脂を充填、強化繊維に含浸させる成型方法で、具体的には、成形型の上に強化繊維を置き、必要に応じて、離型シート及び樹脂拡散材を配置した状態で、強化繊維を気密性フィルムで覆い、気密空間内の空気を吸引排気し、減圧状態にする。
【0028】
この方法は、この減圧状態で、気密空間内に樹脂を注入して、樹脂を強化繊維に含浸させた後、樹脂を硬化させて成形品を得る方法であり、真空圧によって、樹脂充填、含浸させるクローズドモールド成形法で、樹脂の流れが目視で確認できる。この方法は、環境にやさしく、汚れない、臭気のない成形法で、大型成形品、厚物成形品等、高強度の成形品の成形に適している。ハンドレイアップ、スプレーアップ成形法、RTM成形法から転換が図れる成形法である。
【0029】
さらに、改良された方法として、ライト−レジントランスファーモールディング(L−RTM)成形法が開発されている。基本的には、Infusion成形法とRTM法を組み合わせた成形方法であって、凹凸で構成された型の凹型に強化繊維を設置し、凸型を被せ、外周フランジ部と型の中央部にて減圧する。型の内部を真空にして型締めを行い、外周から樹脂を注入する。余分な樹脂は型中央のポット(Catch Pot)に溜まる。樹脂は、外周から押し込む状態となり、成形は、減圧と加圧の複合成形となる。
【0030】
本発明の透明不燃性材の構造は、GFRPを挟んで、上下面に粘土膜を積層被覆した積層体である。上記の公知の成形方法で、製造は可能であるが、RTM成形法、Infusion成形法、又はL−RTM成形法が好適であり、所定の型に、粘土膜、ガラス繊維織布、粘土膜の順に配置し、硬化剤を調合し、脱泡した樹脂をそれぞれの成形法にあった方法で注入する。所定の温度条件で、樹脂を硬化し、一体化した成形体を作製する。本発明の透明不燃性材の製造方法の特徴は、一工程で三層構造の成形体を成形する点にある。
【0031】
(II)透明粘土膜の製造方法
次に、粘土膜の製造方法について説明する。
透明性の高い天然あるいは合成粘土と少量の透明性の高い水可溶性樹脂を水あるいは水を主成分とする液に分散させ、ダマを含まない均一な分散液を得た後、この分散液を、表面が平坦、且つ撥水性の支持体に塗布し、粘土粒子を沈積させるとともに、分散媒である液体を種々の固液分離方法、例えば、遠心分離、ろ過、真空乾燥、凍結真空乾燥又は加熱蒸発法等で分離し、膜状に成形した後、これを、必要に応じ乾燥・加熱・冷却する等の方法によって、支持体から剥離することにより、粘土粒子が配向し、透明性が高く、柔軟性があり、ガスバリア性に優れ、耐熱性・耐火性も高い粘土膜が得られることを見出し、好適な粘土と水可溶性樹脂、及びその最適混合比率、分散液の最適固液比、好適な支持体材料、好適な分散方法等を見出し、膜の柔軟性、透明性及び耐火性を向上させた粘土膜を完成させた。
【0032】
本発明では、粘土として、天然あるいは合成物、好適には、天然スメクタイト及び合成スメクタイトのいずれか、あるいはそれらの混合物を用いる。粘土としては、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディアイト、アイラライト、及びカネマイトの群のうちの一種以上を用いることができる。
【0033】
これを、水あるいは水を主成分とする液体に加えて、希薄で均一な分散液を調製する。粘土分散液の濃度は、好適には0.3〜10重量%、より好ましくは、0.5〜1重量%である。このとき、粘土の濃度が薄すぎる場合、乾燥に時間がかかりすぎるという問題が生じ、濃度が高すぎるに場合には、粘土が良好に分散しないために、粘土粒子の配向が悪く、緻密な均一な膜とならない。また、乾燥時に、収縮によるクラックや表面粗れ、膜厚の不均一性等が生じる。
【0034】
また、本発明で用いる水可溶性樹脂としては、主鎖あるいは側鎖に極性基を有し、そのため、親水性であり、あるいは、カチオン性、アニオン性又はノニオン性であり、水への溶解性が高いものであれば、特に限定されるものではないが、好適には、例えば、セルロース系樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル樹脂及びポアクリル酸樹脂のうちの1種以上である。
【0035】
本発明で用いる粘土も、また親水性であり、水によく分散する。このような水可溶性樹脂と粘土とは、互いの親和性があり、両者を水中で混合すると、容易に結合し複合化する。水可溶性樹脂の全固体に対する重量割合は、30%以下であり、好ましくは5〜20%である。このとき、水可溶性樹脂の割合が低すぎる場合、使用の効果が現れず、水可溶性樹脂の割合が高すぎる場合、得られる膜の耐熱性が低下する。
【0036】
分散方法としては、できるだけ激しく分散できる方法であれば特に限定されるものではないが、撹拌翼を備えた撹拌装置、振とう撹拌装置、ホモジナイザー等があり、特に小さなダマをなくすためには、分散の最終段階でホモジナイザーを用いる方法が好ましい。ダマが分散液に残存している場合、膜表面の粗れ、あるいは膜組成の不均一の原因となり、光の表面散乱あるいは内部散乱の原因となる。
【0037】
次に、粘土及び水可溶性樹脂を含む分散液を脱気する。真空引き、加熱、遠心等があるが、真空引きを含む方法がより好ましい。脱気後、遠心分離等によって、細かな気泡を取り除くことが、膜の透明性を向上させるのに有効である。遠心分離の条件としては、例えば、5500回転、20分間である。
【0038】
脱気後、遠心分離等によって、細かな気泡を取り除くことが、膜の透明性を向上させるのに有効である。遠心分離の条件としては、例えば、5500回転、20分間である。脱気した分散液を支持体表面に一定厚みで塗布する。支持体は、平坦で、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等の撥水性材料でできているトレイが好ましい。
【0039】
次に、分散媒である液体をゆっくりと蒸発させて、シート状に成形する。乾燥は、水平を保った状態で、強制送風式オーブン中において、30〜90℃の温度条件下、好ましくは30〜50℃の温度条件下で、10分から3時間程度、好ましくは20分から1時間、乾燥して、水可溶性樹脂を含む複合粘土膜を得る。
【0040】
乾燥条件は、液体分を蒸発によって取り除くに十分であるように設定される。このとき、温度が低すぎると、乾燥に時間がかかるという問題が生じ、また、温度が高すぎると、分散液の対流が起こり、膜が均一な厚みにならず、また、粘土粒子の配向度が低下するという問題がある。
【0041】
本発明の粘土膜の厚さについては、分散液に用いる固体量を調整することによって、任意の厚さの膜を得ることができる。厚みについては、うすく製膜した方が表面粗れが起らず、光透過性に優れる傾向がある。その他、膜が厚くなることによって、柔軟性が低下するという問題があり、厚みは0.2mm以下であることが望ましい。
【0042】
また、乾燥後粘土膜がトレイ等の支持体から自然に剥離しない場合は、例えば、約80℃から200℃の温度条件下で乾燥し、剥離を容易にして自立膜を得る。乾燥は、1時間あれば十分である。このとき、温度が低すぎる場合には、剥離が起こりにくく、温度が高すぎる場合には、水可溶性樹脂が劣化し、結果として、膜の着色や機械的強度が低減する等の問題が生じる。得られた膜は、膜厚が3〜200μmであり、光透過性は、可視光(波長500nm)の透過度が90%以上である。
【0043】
(III)透明不燃材の製造方法
本発明の透明不燃材は、公知のプラスチック成形方法で製造は可能であるが、粘土膜−ガラス繊維織布−粘土膜の多層体を一工程で成形するには、RTM成形法又はInfusion成形法あるいはL−RTM成形法が有効である。成形型にガラス繊維織布の上下面に粘土膜を配置し、所定量の硬化剤を調合した樹脂を注入する。
【0044】
RTM成形法は、樹脂注入口から樹脂を加圧しながら注入する。Infusion成形法の場合は、成形型に粘土膜とガラス繊維織布を同様に配置し、バッグフィルムで覆ってから型内を真空減圧し、樹脂注入を行う方法である。L−RTM成形法は、同様に粘土膜とガラス繊維織布を配置し、成形型を外周部と中央部から減圧し、成形型の外周から樹脂を押し込む。成形型内の減圧・加圧の調整を行いながら成形する。
【0045】
硬化剤調合樹脂は、あらかじめ脱気を十分に行い、ボイドの発生を防ぐ必要があり、光透過率、光拡散性を制御する上で重要である。また、真空度を急激に上げると、ガラス繊維内の空気が抜ける前に樹脂が流延し、ガラス繊維に十分に含浸しない場合がある。樹脂の硬化は、使用する硬化剤や硬化促進剤の種類・濃度で当然変わってくる。メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKPO)系硬化剤の樹脂では、濃度0.5〜2重量%の添加で、温度20〜25℃、24時間程度で硬化する。
【0046】
必要に応じて、50〜80℃に温度を上げると、短時間で硬化できる。あまり急激な硬化は、ひび割れ等が生じる場合があり好ましくない。常温硬化の場合は、硬化促進剤を用いると有効である。一般的な加熱乾燥器も可能であるが、ボイドの発生を防ぐために、完全に硬化するまで、真空減圧下におくことが望ましい。
【0047】
なお、樹脂硬化剤の揮発成分や成形時の脱気が不十分であると、急激な温度上昇によって、樹脂成分からガスや気泡の発生により、粘土膜の膨れ、剥離等を起こす場合がある。これを防ぐために、成形後に、成形体の片面あるいは両面の粘土膜に、直径が0.05〜0.15mmの貫通孔を、全体的に均一に開けることが望ましい。
【0048】
開孔方法は、打ち抜き加工方式のような一般的な機械加工で可能である。設けられる貫通孔の数量は、少な過ぎるとガス抜きが不十分となり、多すぎると本来の特徴である不燃性を損なうことになる。GFRPの厚さにもよるが、その数量は、1cm当たり1〜80個である。
【0049】
透明不燃材の別の製造方法として、GFRPを公知の方法で成形し、平坦なトレイ、好ましくはプラスチックあるいは金属製のトレイに、GFRPを敷き、事前に脱気処理した粘土分散液を注入し、水平を保った状態で所定の条件で乾燥し二層構造の積層体を得る。次に、この積層体を裏返しにし、上記と同様の処理を行うことによって、GFRPの両面に粘土層が形成された積層体、透明不燃材が得られる。
【0050】
この方法では、アスペクト比の大きい平板な粘土粒子が、鎖状に連結すると同時に高度に配向し、多層化されるために、粘土膜の機械的強度が増すと共にガスバリア性も出現する。また、GFRPに粘土分散液を刷毛塗り、吹き付け、ロール等の一般的な塗工方法による積層被覆も可能である。
【0051】
また、別の例として、GFRPと粘土膜を接着剤によって多層化することも可能である。接着剤としては、天然物接着剤、無機接着剤、ゴム系、エポキシ系、シアノアクリレート系接着剤、耐熱性接着剤等がある。必要に応じて、粘土層とGFRPの清浄化を行う。また、粘土層とGFRP間にプライマーを塗布し、表面の親和性改良を行うことも効果的であるが、不燃性を確保するために、耐熱性の優れた接着剤を選択する必要がある。
【0052】
さらに、別の例として、成形型に粘土膜を載置し、その上にガラス等の補強繊維を敷き、硬化剤を混合した樹脂を脱泡しながら多重積層してゆくハンドレイアップ法、吐出ガンで補強繊維と樹脂を同時に吹き付け(スプレーアップ法)、ロール等で整形し、不燃化のために、粘土膜を貼る成形方法、また、あらかじめ骨材と樹脂を混合したシート状のものを金型で圧縮成形するシートモールディングコンパウンド(SMC)法等々で成形し、成形体に粘土膜を積層する製造方法が挙げられる。
【0053】
(IV)透明不燃材の評価
前述のように、不燃材料を評価する試験としては、建築基準法では、不燃性試験、発熱性試験、及びガス有害性試験の3種類があげられる。本発明の透明不燃膜の不燃性評価試験では、100mm×100mmの試験片を作製し、温度700〜750℃のガスバーナーの炎を20分間当てて、試験片が燃焼しないことを確認した。
【0054】
本発明の透明不燃材は、厚さ5mmにおいて、JIS K7105(1981)に基づく全光線透過率は、90%以上であり、光拡散性に優れている。また、別の評価方法として、LED光源から10cmのところに、試料片を設置し、目視にて評価した。複数の点光源が、ほぼ一体化し、優れた光拡散効果があることを確認した。
【0055】
本発明の透明不燃材は、屈折率の異なる三種類の素材から構成されており、そのため、膜厚全体で高度に光の反射・屈折が起こり高い光拡散効果を示すものとみられる。また、光源の光は、GFRPのガラス繊維に沿ってトラバースし、光が分散し均一化された光が照射されると考えられる。本発明の透明不燃材の比重は、1.5〜1.6である。ガラスの比重は、一般に、2.2〜2.6であるから、本発明の透明不燃材は、ガラスの60〜70%の重さであり、軽量であり、弾力性を有し、耐衝撃性にも優れ、割れにくく、取扱いやすい。
【発明の効果】
【0056】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)GFRPと粘土膜からなる積層体で、GFRPを透明粘土膜で積層被覆した構造を有している新規な透明不燃材を提供することができる。
(2)本発明の透明不燃材は、耐火・耐熱性に優れ、弾性率が高く、軽量で、割れにくく、不燃である。
(3)本発明の積層体は、透明性と光拡散効果があり、軽量で、割れにくく、耐衝撃性を有し、不燃であり、熱暴露を受けた後も、強度保持率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の透明不燃材の断面を示す概略図である。
【図2】本発明の透明不燃材の外観写真である。
【図3】本発明の透明不燃材の成形方法の一例、インフュージョン成形を示す写真である。(a)は樹脂注入途中、(b)は樹脂注入完了
【図4】本発明の透明不燃材の燃焼試験を示す写真である。
【図5】GFRPの燃焼試験を示す写真である。
【図6】本発明の透明不燃材の光拡散効果を示す写真である。(a)LED光源直視、(b)本発明実施例の透明不燃材I、(c)本発明実施例の透明不燃材II
【図7】GFRPの光拡散効果を示す写真(比較例)である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0059】
(1)透明粘土膜の作製
粘土として、11.2gの合成スメクタイト(クニミネ工業製)を、純水400cmに加え、添加物として、ポリアクリル酸ナトリウム2.8gを、純水900cmに溶解した溶液を混合し、25℃で、2時間、振盪機で激しく振盪し、合成スメクタイトとポリアクリル酸ナトリウムを含む均一な分散液を得た。真空脱泡装置により、この粘土ペーストの脱気を十分に行った。
【0060】
次に、5500rpm、20分間、遠心分離器で、懸濁物質を除去し、この粘土ペーストを、フッ素樹脂シートを底面に敷いた容器に流し入れ、60℃の温度条件下で24時間乾燥することで、厚さ15μmの粘土膜を得た。作製した粘土膜を、フッ素樹脂シートから剥離して、自立したフレキシビリティーに優れた透明膜を得た。波長500nmにおける光透過率は、89.4%であった。
【0061】
(2)透明不燃材の作製
ガラス繊維としては、無アルカリガラスを原料とした、繊維密度(本/25mm)経糸19、緯糸18、厚さ0.24mmの平織の織布(セントラル硝子製 EGW210TH)を用い、樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂(昭和高分子製リゴラック)を使用した。硬化剤としては、MEKPOを用いた。成形は、インフュージョン成形法を利用した。
【0062】
あらかじめ不飽和ポリエステル樹脂500gに、スチレン25g、及び硬化剤5gを加え、混練し、脱気した。アクリル板上に、下型として繊維強化プラスチック(FRP)を用い、その上に上記(1)で作製した透明粘土膜を敷き、次いで、前述のガラス繊維、透明粘土膜の順で積層し、全体をバッグフィルムで覆い、気密にした。
【0063】
バッグフィルム内を真空減圧し、樹脂を一端から注入し、ガラス繊維織布に含浸させた(図3)。成形体を、20〜25℃の室温で、24時間、減圧しながら硬化した。透明不燃材は、以下に示すガラス繊維織布1枚の場合と2枚重ねの2種類を作製した。
I.透明不燃材の総厚み0.28mm:ガラス繊維織布1枚、粘土膜厚0.03mm
II.透明不燃材の総厚さ0.56mm:ガラス繊維織布2枚、粘土膜厚0.06mm
【0064】
(3)透明不燃材の評価
得られたシート状成形体IIを、10cm×10cmに切り出し、700〜750℃のガスバーナーの炎を当てた。図4から分かるように、20分後も燃えることはなく、不燃性を実証した。図5に、比較例として、大きさ10cm×10cm、厚さ0.48mmのGFRPのみからなる試料を、同様にガスバーナーで燃焼試験を試みたが、樹脂分は、40秒で燃え尽き、ガラス繊維のみ残った。このような高い不燃性は、粘土を樹脂に練り込んだ粘土ポリマーナノコンポジットで実現することはできず、本新規材料に特徴的な多層構造によってもたらされている。
【0065】
また、光源に3個のLEDを用い、光拡散効果を調べた。図6(a)は、LED光源を直視したものである。光源から距離10cmに試料を置き、目視にて観察した結果、図6(b)から分かるように、本発明の透明不燃材I(総厚み0.28mm)のもので、3個の光源はほぼ一体化した。さらに、透明不燃材II(図6(c))では、光源の一体化が進み、ほぼ均一光となった。
【0066】
比較例として、図7に、GFRPのみの光拡散の例を示した。本発明の透明不燃材と同等の光拡散を示すには、厚さ0.48mmと約2倍の厚さ寸法が必要である。本発明の粘土膜に、光拡散効果があることを示している。本発明の透明不燃材は、屈折率の異なる三種類の素材から構成されており、そのために、膜厚全体で、高度に光の反射・屈折が起こり、かつ、入射光がガラス繊維に沿ってトラバースし、ほぼ均一な面光源となるとみられる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上詳述したように、本発明は、透明不燃材及びその製造方法に係るものであり、本発明により、透明性に優れ、かつ光拡散効果を併せ持ち、軽量で割れにくく、耐衝撃性に優れ、取扱いやすい新規材料を提供することができる。本発明の透明不燃材は、屋内・屋外用建材、列車・自動車等の車両用材料、内装材、照明装置用部材の新材料として適用することができ、具体的には、建築内装材、防火シャッター類、防炎垂壁、照明式看板、各種照明器具用カバー類、液晶(LCD)、有機EL等の表示素子用のカバー、太陽電池、特にフレキシブル太陽電池の保護カバーとして使用することができる。本発明は、例えば、車両用エアデフレクターやサンルーフに設置した太陽電池の保護カバーとして好適に使用できる透明不燃材を提供するものとして有用である。
【符号の説明】
【0068】
(図1の符号)
1 GFRP
2 透明粘土膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維強化プラスチックを基材として、その上下面に積層被覆された粘土膜を有し、かつこれらが、一体化した複合多層構造を有する成形体であって、(1)700℃×20分の燃焼試験において、着火することがない、高い不燃性を有し、(2)全光線透過率が少なくとも90%であり、(3)光拡散性を有し、(4)従来品に比べて、軽量で、割れにくい、ことを特徴とする透明不燃材。
【請求項2】
前記ガラス繊維強化プラスチックの素材が、熱硬化性樹脂である、請求項1記載の透明不燃材。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、及びビニルエステル樹脂のうちの一種である、請求項2記載の透明不燃材。
【請求項4】
前記ガラス繊維強化プラスチックにおける、ガラス繊維の全固体に対する重量割合が、少なくとも25%である、請求項1記載の透明不燃材。
【請求項5】
前記粘土膜の主要構成成分が、天然粘土又は合成粘土である、請求項1記載の透明不燃材。
【請求項6】
前記天然粘土又は合成粘土が、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディアイト、アイラライト、及びカネマイトのうちの一種以上である、請求項5記載の透明不燃材。
【請求項7】
前記粘土膜が、添加物として水可溶性樹脂を含む粘土からなる、請求項1記載の透明不燃材。
【請求項8】
前記添加物が、セルロース系樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル樹脂、及びポリアクリル酸樹脂のうちの1種以上であって水可溶性である、請求項7記載の透明不燃材。
【請求項9】
前記添加物の粘土膜に対する重量割合が、多くても30%である、請求項1記載の透明不燃材。
【請求項10】
複合多層構造を有する成形体の形態が、シート状、平板状又は立体形状である、請求項1記載の透明不燃材。
【請求項11】
厚みが、5mm又はそれを下回る値である、請求項1記載の透明不燃材。
【請求項12】
複合多層構造を有する成形体の片面あるいは両面の粘土膜に貫通孔を設けた、請求項1記載の透明不燃材。
【請求項13】
成形型に粘土膜、ガラス繊維織布、粘土膜の順に配置し、熱硬化性樹脂を注入して、一体に成形して複合多層構造を有する成形体を作製することを特徴とする透明不燃材の製造方法。
【請求項14】
前記複合多層構造を有する成形体を、レジントランスファーモールド成形法、インフュージョン成形法、又はライトレジントランスファーモールド成形法で成形する、請求項13記載の透明不燃材の製造方法
【請求項15】
請求項1から12のいずれかに記載の透明不燃材を用いたことを特徴とする光拡散性部材。
【請求項16】
透明不燃材を、発光ダイオード、蛍光灯を光源とする照明器具又は表示器具に用いる、請求項15記載の光拡散性部材。
【請求項17】
請求項1から12のいずれかに記載の透明不燃材を用いたことを特徴とする保護カバー。
【請求項18】
透明不燃材を、太陽電池受光面、液晶、又は有機ELの表示素子の透明保護基板に用いた、請求項17記載の保護カバー。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−16875(P2012−16875A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155298(P2010−155298)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(510188986)株式会社宮城化成 (1)
【Fターム(参考)】