説明

透明体検査装置および透明体検査方法

【課題】検査対象となる透明体の内部に欠陥が存在する場合に、その欠陥がどのくらい深い位置に存在しているかを特定できる透明体検査装置を提供する。
【解決手段】撮影駆動手段3は、撮影手段2を透明体17に近づく方向および透明体から遠ざかる方向に移動させる。撮影手段2は、透明体17に近づく方向または透明体17から遠ざかる方向に移動している間に複数回撮影を行う。欠陥判定手段12は、撮影手段2が撮影した画像中の画素の輝度が不均一である場合、その画像を撮影した時の被写界深度内に欠陥があると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明体検査装置および透明体検査方法に関し、特に、複屈折のない透明体を検査する透明体検査装置および透明体検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明体を検査する検査方法として、特許文献1に記載された板ガラスの欠点検査方法がある。特許文献1に記載された板ガラスの欠点検査方法では、板ガラスの側端面から照明を当て、板ガラスの表面側から板ガラスの表面を撮像光学系により撮像して一定面積あたりの画像の明るさを検出して、欠点判定を行う。この検査方法は、板ガラスに泡や異物などの内部欠点があると、そこで光が乱反射して板ガラスの上下面から外部に出ることを利用している。
【0003】
また、特許文献1には、板ガラスの一方の面側に照射光源を設置し、板ガラスのもう一方の面側に撮像光学系を配置して、撮像光学系が板ガラスを撮像し、透過光に基づく画像を処理することにより欠点を検出する方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、透明性の瓶(空瓶または透明な液体の入った瓶)の内部における透明異物を検出する透明体検出システムが記載されている。特許文献2に記載された透明体検出システムは、縦におかれた瓶に面状光を照射する照明装置と、その照明装置の投光面上に設けられ、面状光を特定方向に偏光する投光側偏光板とを備える。また、瓶を中心にして、投光側偏光板とは反対側に受光偏光板と、テレビカメラとを備える。投光側偏光板と受光偏光板は偏光方向が一致するように設定される。特許文献2に記載された透明体検出システムは、瓶を回転させて、瓶が一回転する間にテレビカメラにより撮像を繰り返し、テレビカメラが撮影した画像に、暗い塊となって映る部分があれば、透明異物があると判定する。また、特許文献2には、投光側偏光板と受光偏光板を直交するように設定し、画像に明るい塊となって映る部分があれば、透明異物があると判定する場合も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−294749号公報(段落0024、0035、図1、図3、図9)
【特許文献2】特開2002−98650号公報(段落0081−0098、図22−24)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された発明では、欠陥の有無を検査できる。しかし、欠陥が存在していると判定できても、板ガラスの表面からどれくらい深い位置に欠陥が存在しているかを特定できなかった。
【0007】
検査対象の厚みが大きい場合、検査対象の表面に沿った平面内における欠陥の位置だけでなく、表面からどれくらい深い部分に欠陥があるのかについても特定できることが好ましい。しかし、特許文献1に記載された方法では、欠陥がある場所の深さまで特定することはできない。
【0008】
また、特許文献2に記載された発明では、透明性の瓶中における透明異物の有無を検査できる。しかし、特許文献2に記載された発明においても、検査対象の表面からどれくらい深い位置に欠陥(透明異物)が存在しているのかを特定できなかった。
【0009】
そこで、本発明は、検査対象となる透明体の内部に欠陥が存在する場合に、その欠陥がどのくらい深い位置に存在しているかを特定できる透明体検査装置および透明体検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様1は、透明体に対して光を照射する光照射手段(例えば、第1光源4、第2光源5)と、透明体を撮影する撮影手段であって被写界深度が透明体の高さより浅い撮影手段(例えば、撮影手段2)と、撮影手段を透明体に近づく方向および透明体から遠ざかる方向に移動させる撮影駆動手段(例えば、撮影駆動手段3)と、撮影手段が撮影した画像中の画素の輝度が不均一であるか否かにより透明体の欠陥の有無を判定する欠陥判定手段(例えば、欠陥判定手段12)とを備え、撮影手段が、透明体に近づく方向または透明体から遠ざかる方向に移動している間に複数回撮影を行い、欠陥判定手段が、撮影手段が撮影した画像中の画素の輝度が不均一である場合、その画像を撮影した時の被写界深度内に欠陥があると判定することを特徴とする透明体検査装置を提供する。
【0011】
本発明の態様2は、態様1において、欠陥判定手段が、撮影手段が一方向に移動しながら撮影した複数の画像の中に、画素の輝度が不均一な画像である欠陥撮影画像が連続している場合、欠陥撮影画像の中で最もコントラストが高い欠陥撮影画像を撮影した時の被写界深度内に欠陥が存在すると判定する透明体検査装置を提供する。
【0012】
本発明の態様3は、態様1または態様2において、撮影駆動手段が、撮影手段を透明体に近づく方向および透明体から遠ざかる方向に移動させるときに、撮影手段を等速移動させ、撮影手段が、等速移動しながら透明体を撮影する透明体検査装置を提供する。
【0013】
本発明の態様4は、態様1から態様3のいずれかにおいて、光照射手段として、透明体の上面に対して垂直であり複数の点光源が配置された側壁を有する光照射手段(例えば、第1光源4)を少なくとも備え、撮影手段に近い方の端部の点光源(例えば、点光源13)が、透明体における撮影手段側の面よりも撮影手段に近い位置に配置され、撮影手段から遠い方の端部の点光源(例えば、点光源13)が、透明体における撮影手段とは反対側の面よりも撮影手段から離れた位置に配置される透明体検査装置を提供する。
【0014】
本発明の態様5は、態様4において、複数の点光源が、複数の列をなして隣接する列同士で点光源の位置が互いにずれるように配置される透明体検査装置を提供する。
【0015】
本発明の態様6は、透明体に対して光を照射し、被写界深度が透明体の高さより浅い撮影手段(例えば、撮影手段2)を透明体に近づく方法および透明体から遠ざかる方向に移動させ、透明体の撮影を複数回行い、撮影手段が撮影した画像中の画素の輝度が不均一である場合、当該画像を撮影した時の被写界深度内に欠陥があると判定することを特徴とする透明体検査方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、検査対象となる透明体の内部に欠陥が存在する場合に、その欠陥がどのくらい深い位置に存在しているかを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態の例を示すブロック図。
【図2】被写界深度を示す説明図。
【図3】第1光源と透明体の位置関係を示す説明図。
【図4】第1光源における点光源の配置例を示す説明図。
【図5】透明体を囲む第1光源の例を示す上面図。
【図6】撮影手段が画像を撮影する動作の例を示すフローチャート。
【図7】撮影手段の動きを模式的に示す説明図。
【図8】散乱判定用画像撮影時の設定としたときにおける散乱欠陥存在時の光の進行状態を示す説明図。
【図9】散乱判定用画像の例を模式的に示す説明図。
【図10】散乱欠陥の欠陥撮影画像の例を示す説明図。
【図11】遮光判定用画像撮影時の設定としたときにおける遮光欠陥存在時の光の進行状態を示す説明図。
【図12】遮光判定用画像の例を模式的に示す説明図。
【図13】遮光欠陥の欠陥撮影画像の例を示す説明図。
【図14】偏光解消判定用画像撮影時の設定としたときにおける偏光解消欠陥存在時の光の進行状態を示す説明図。
【図15】偏光解消欠陥の欠陥撮影画像の例を示す説明図。
【図16】第1の実施の形態の派生形態を示すブロック図。
【図17】本発明の第2の実施の形態の例を示すブロック図。
【図18】撮影手段が画像を撮影する動作の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
透明体の内部の欠陥は、3種類に分類できる。第1の欠陥は、光を散乱させる欠陥である。具体的には、透明体内部に入射して透明体内部を進む光を散乱させる欠陥である。第2の欠陥は、光を遮断する欠陥である。具体的には、透明体内部に入射して透明体内部を進む光を遮断する欠陥である。第3の欠陥は、透明体の内部で屈折率が変化している欠陥である。第1の欠陥を散乱欠陥と記し、第2の欠陥を遮光欠陥と記す。また、第3の欠陥は、偏光解消を引き起こす欠陥ということもでき、以下、偏光解消欠陥と記す。以下に示す各実施の形態では、散乱欠陥、遮光欠陥および偏光解消欠陥のそれぞれに関して、欠陥の有無を判定する透明体検査装置を例にして説明する。
【0019】
本発明による透明体検査装置は、複屈折のない透明体を検査対象とする。また、延伸して形成されたフィルムや平板形状の透明体には複屈折が生じるので本発明による透明体検査装置の検査対象には含まれない。なお、複屈折率が0.3nm/cm以下の透明体であれば、複屈折のない透明体ということができる。複屈折のない透明体の具体例として、例えば、合成石英ガラスが挙げられる。以下、本発明の各実施の形態を説明する。
【0020】
[実施の形態1]図1は、本発明の第1の実施の形態の例を示すブロック図である。第1の実施の形態の透明体検査装置は、支持手段1と、撮影手段2と、撮影駆動手段3と、第1光源4と、第2光源5と、偏光板8と、偏光板駆動手段10と、切替手段11と、欠陥判定手段12とを備える。
【0021】
図1に示す透明体17は、検査対象となる合成石英ガラス等の透明体である。複屈折がない透明体であれば、合成石英ガラス以外の透明体を検査対象として配置してもよい。透明体17は、円柱等の柱体のブロックであり、上面および底面の一方が撮影手段2側を向き、他方が第2光源5側を向くように支持手段1上に配置される。透明体17の高さは、例えば、数10mm〜数100mmである。ただし、この高さは例示であり、透明体17の高さはこの高さに限定されない。
【0022】
支持手段1は、透明体17を下方から支持する透明な支持部材である。支持手段1は、透明であるので、第1光源4の下側の端部から照射された光や、第2光源から照射された光を透明体17の方向に透過させることができる。
【0023】
撮影手段2は、検査対象となる透明体17を撮影する。撮影手段2は、撮像素子を備えたカメラによって実現される。撮影手段2の被写界深度は、透明体17の高さ(柱体のブロックの高さ)よりも浅い。被写界深度とは、撮影手段2の焦点が合う範囲である。図2は、被写界深度を示す説明図である。撮影手段2は、被写界深度の範囲内に存在する物体に焦点を合わせて撮影を行う。従って、被写界深度内に存在する物体の画像は焦点のあった画像となり、被写界深度外に存在する物体の画像は、焦点の合わない画像となる。
【0024】
撮影駆動手段3は、撮影手段2を移動させる駆動装置であり、撮影手段2を透明体17の上面に近づく方向および透明体17の上面から遠ざかる方向に移動させる。すなわち、図1において矢印で示すA方向およびB方向に撮影手段2を移動させる。撮影手段2は、撮影駆動手段3に駆動され移動しながら透明体を撮影する。具体的には、撮影駆動手段3は、撮影手段2を透明体の上面に近づく方向および透明体の上面から遠ざかる方向に移動させる場合、撮影手段2を等速移動させ、撮影手段2は等速移動しながら透明体17の撮影を一定時間毎に繰り返す。撮影手段2の移動に伴い、被写界深度の位置(図2参照)も移動する。従って、撮影手段2は、透明体17内部の様々な深さにおける画像を撮影できる。
【0025】
また、撮影駆動手段3は、撮影手段2を透明体17の上面に対し平行な方向にも移動させる。撮影駆動手段3は、撮影手段2を透明体17の面内で種々の位置に移動させ、その位置において撮影手段2を図1に矢印で示すA方向およびB方向に移動させる。
【0026】
第1光源4は、図1に示すように、透明体17の側方に存在し、透明体17に対して側方から光を照射する。ここでは、図1に示すように撮影手段2が透明体17の上面に対して垂直方向に存在する場合を例に説明する。従って、本例では、第1光源4は、撮影手段2の光軸方向から90°ずれた方向から透明体に光を照射する。
【0027】
第1光源4は、図1に示すように、透明体17の上面に対して垂直な側壁を有する。この第1光源4の側壁は、支持手段1が透明体17を支持する面(支持面)にも垂直である。第1光源4は、その側壁に複数の点光源13を備え、各点光源13から透明体17に光を照射する。各点光源13は、点光源自身から、側壁15に遮られていない各方向に光を照射する。すなわち、指向性のある光を照射するのではなく、水平方向や斜め方向等の種々の方向に光を照射する。
【0028】
図3は、第1光源4と、支持手段1に支持されている透明体17の位置関係を示す説明図である。なお、図3では、図1に示す偏光板8の図示を省略している。本実施の形態に示す例では、点光源13が配置されている側壁15の高さは、透明体17の高さよりも高い。従って、側壁15に配置された各点光源13のうち、撮影手段2に近い方の端部の点光源13は、透明体17における撮影手段2側の面よりも撮影手段2に近い位置に配置される。換言すれば、上方の端部の点光源13は、透明体17における撮影手段2側の面よりも高い位置に存在する。そして、点光源13から斜め下の方向に照射された光が透明体17に入射することができる。同様に、側壁15に配置された各点光源13のうち、撮影手段2から遠い方の端部の点光源13は、透明体17における撮影手段2とは反対側の面よりも撮影手段2から離れた位置に配置される。換言すれば、下方の端部の点光源13は、透明体17における撮影手段2とは反対側の面よりも低い位置に存在する。そして、点光源13から斜め上の方向に照射された光が透明体17に入射することができる。このとき、透明体1を下から支える支持手段1は透明であるので、下方の点光源から照射された光は、支持手段1を通過して透明体17に入射することができる。
【0029】
このように、透明体17の高さよりも広い範囲に配置された複数の点光源13から光が照射されるので、透明体17に入射して透明体17の内部を進む光の方向の多様性を確保できる。点光源13が配置されている側壁15の高さが透明体17の高さよりも高いという関係が成立していなくてもよいが、上記のような光の方向の多様性を確保するために、点光源13が配置されている側壁15の高さは、透明体17の高さよりも高くすることが好ましい。
【0030】
図4は、第1光源4における点光源13の配置例を示す説明図である。例えば、各点光源13は、図4に例示するように、第1光源4の壁面15上に列をなすように配置される。さらに、各点光源13は、隣接する列同士で点光源の位置が互いにずれるように配置される。すなわち、複数の点光源13は、列をなし、かつ、千鳥掛けとなるように配置される。隣接する列同士で点光源の位置を互いにずらすことによっても、透明体17に入射して透明体17の内部を進む光の方向の多様性を向上できる。図4は、点光源の配置の一例であり、点光源の配置は図4に示す態様に限定されないが、光の方向の多様性を向上させるために、図4に示す態様で点光源を配置することが好ましい。
【0031】
また、図1に示す例では、透明体17の左側のみに第1光源4を配置した場合を示しているが、第1光源4は、透明体17を囲む構成であってもよい。図5は、透明体17を囲む第1光源4の例を示す上面図である。図5に示す例では、透明体17は円柱であり、その上面を図示している。また、その円柱状の透明体17の側面全体を囲む第1光源4の上面図を表している。図5に示すように、第1光源4が透明体17を囲み、各方向から光を照射することで、透明体17の内部における光の強度を均一にできる。
【0032】
図1に示す第2光源5は、撮影手段2との間に透明体17を挟むようにして、撮影手段2とは反対側から透明体17に光を照射する。図1に示すように撮影手段2が透明体17の上面側に存在し上面に対して垂直な方向から透明体17を撮影する場合、第2光源5は、透明体17に対して下方から光を照射する。支持手段1は透明であるので、第2光源5が照射した光は、支持手段1を通過して透明体17に入射する。
【0033】
第2光源5は、透明体17に対して一様に偏光を照射する。第2光源5は、例えば、図1に示すように、光を照射する照射手段6と、照射手段6の光照射方向に設けられる偏光板7とを備え、照射手段6が照射した光を偏光板7が偏光に変化させる構成である。
【0034】
第1の実施の形態では、第1光源4の各点光源13および第2光源の照射手段6がそれぞれ白色光を照射し、撮影手段2が、グレースケールの画像を生成するモノクロカメラである場合を例にして説明する。
【0035】
以下、第2光源5が備える偏光板7を光源側偏光板7と記し、撮影手段2側に設けられる偏光板8を撮影側偏光板8と記し、2つの偏光板7,8を区別する。
【0036】
撮影側偏光板8は、透明体17が配置されていない場合や透明体17に偏光解消欠陥が存在しない場合に、第2光源5から照射され撮影手段2へ向かう偏光を遮断する偏光板である。偏光板駆動手段10は、撮影側偏光板8の配置状態を変化させる駆動装置である。上記のように、撮影側偏光板8は、透明体17が配置されていない場合や透明体17に偏光解消欠陥が存在しない場合に、第2光源5から照射された偏光を遮断するが、偏光板駆動手段10によって配置状態を変えられると、偏光は撮影側偏光板8によって遮断されずに通過する。
【0037】
例えば、光源側偏光板7が光を直線偏光に変える直線偏光板であるとする。この場合、直線偏光板を撮影側偏光板8として用いればよい。そして、偏光板駆動手段10が光源側偏光板7と撮影側偏光板8とがクロスニコルとなるように撮影側偏光板8を配置すれば、第2光源5から照射された偏光は、撮影側偏光板8で遮断される。クロスニコルとは、一方の偏光板(ここでは光源側偏光板7)の偏光軸と、他方の偏光板(ここでは撮影側偏光板8)の偏光軸とが直交することである。なお、この状態において、偏光板駆動手段10は、撮影側偏光板8を撮影手段2の正面に配置し、撮影手段2に向かう偏光を遮断させる。また、偏光板駆動手段10は、撮影側偏光板8が撮影手段2に向かう偏光を遮断する状態から、撮影手段2に向かう偏光が遮断されない状態に撮影側偏光板8の配置を変化させる。例えば、撮影手段2による撮影範囲の外側まで撮影側偏光板8を、透明体17の上面に対して平行な方向に移動させる。この結果、撮影手段2の正面に撮影側偏光板8が存在しなくなるので、撮影手段2へ向かう偏光は遮断されなくなる。また、偏光板駆動手段10は、光源側偏光板7の偏光軸と撮影側偏光板8の偏光軸とが平行になるように、撮影側偏光板8を回転させてもよい。2枚の偏光板7,8の偏光軸が平行となることで、撮影手段2の正面に撮影側偏光板8が存在していたとしても、撮影手段2へ向かう偏光は撮影側偏光板8を通過できる。
【0038】
また、光源側偏光板7は、直線偏光板に限定されず、光を円偏光または楕円偏光に変える偏光板であってもよい。
【0039】
光源側偏光板7が光を円偏光に変える円偏光板である場合、光をその円偏光とは逆向きの円偏光に変える円偏光板を撮影側偏光板8として配置すればよい。偏光板駆動手段10が撮影側偏光板8を撮影手段2の正面に配置すれば、撮影手段2に向かう偏光は撮影側偏光板8によって遮断され、偏光板駆動手段10が撮影側偏光板8を撮影手段2の範囲外に移動させると、撮影手段2に向かう偏光は遮断されない。
【0040】
また、光源側偏光板7が光を楕円偏光に変える楕円偏光板である場合、光をその楕円偏光と楕円率が等しく向きが逆向きの楕円偏光に変える楕円偏光板を撮影側偏光板8として配置すればよい。この場合も、偏光板駆動手段10が撮影側偏光板8を撮影手段2の正面に配置すれば、撮影手段2に向かう偏光は撮影側偏光板8によって遮断され、偏光板駆動手段10が撮影側偏光板8を撮影手段2の範囲外に移動させると、撮影手段2に向かう偏光は遮断されない。以下の説明では、各偏光板7,8が直線偏光板である場合を例にして説明する。
【0041】
切替手段11は、散乱欠陥の有無を判定するための画像(以下、散乱判定用画像と記す。)を撮影手段2が撮影する場合、遮光欠陥の有無を判定するための画像(以下、遮光判定用画像と記す。)を撮影手段2が撮影する場合、および、偏光解消欠陥の有無を判定するための画像(以下、偏光解消判定用画像と記す。)を撮影手段2が撮影する場合の各場合に応じて、偏光板駆動手段10、第1光源4および第2光源5の状態を切り替える。また、切替手段11は、上記の各場合において、それぞれ、移動制御手段3に撮影手段2を、透明体の上面に近づく方向または透明体の上面から遠ざかる方向に移動させる。
【0042】
欠陥判定手段12は、撮影手段2が撮影した画像中の画素の輝度が不均一であるか否かにより、透明体17の欠陥の有無を判定する。すなわち、画像中の画素の輝度が一様であれば、欠陥がないと判定し、画像中の画素の輝度が一様ではなく、画像の背景に対して明るくなる部分あるいは暗くなる部分が存在している場合には、欠陥が存在すると判定する。画像中における背景と欠陥を表す部分の輝度の明暗は、欠陥の種類によって異なる。
【0043】
また、撮影手段2は、一つの種類の欠陥を調べるための画像を生成する場合、透明体17の上面に近づく方向または透明体17の上面から遠ざかる方向に等速移動しながら、一定時間毎に撮影を繰り返して、複数の画像を生成する。撮影手段2の被写界深度内に欠陥が入っていれば、その画像中に輝度の明暗が生じる。また、被写界深度内に欠陥が入っていなくても、欠陥が被写界深度の近傍に存在する場合にも、画像中に輝度の明暗が生じる。ただし、被写界深度内に欠陥が入っていない場合、画像の明暗のコントラストは低い。従って、被写界深度が欠陥に近づくにつれ、コントラストは上昇していき、欠陥が被写界深度内に収まったときにコントラストが最大となり、さらに、被写界深度が欠陥から遠ざかると、コントラストは低下していく。欠陥判定手段12は、撮影手段2が一方向(透明体17の上面に近づく方向または透明体17の上面から遠ざかる方向)に移動しながら複数回撮影を行って得た複数の画像に、画素の輝度が不均一な画像である欠陥撮影画像が連続している場合、その欠陥撮影画像の中で最もコントラストが高い欠陥撮影画像を撮影した時点における被写界深度内に欠陥が存在すると判定する。
【0044】
次に、動作について説明する。図6は、撮影手段2が画像を撮影する動作の例を示すフローチャートである。また、図7は、撮影手段2の動きを模式的に示す説明図である。初期状態において、撮影手段2は、図7に示す透明体17の上面における位置Pの上方であって、透明体17の上面に垂直な方向から透明体17を撮影する位置に存在しているものとする。また、透明体17は水平な支持手段1(図1参照)上に配置され、透明体17の上面は水平であり、撮影駆動手段3が撮影手段2を透明体17の上面に対して水平および垂直に移動させる場合を例にして説明する。
【0045】
検査対象となる透明体17は、予め支持手段1上に載せられる。切替手段11は、偏光板駆動手段10、第1光源4および第2光源5を、散乱判定用画像撮影時の設定、遮光判定用画像撮影時の設定、偏光解消判定用画像撮影時の設定のいずれかに設定する(ステップS1)。なお、ここでは、散乱判定用画像撮影時の設定、遮光判定用画像撮影時の設定、偏光解消判定用画像撮影時の設定の順番に切り替える場合を例にして説明する。従って、最初にステップS1に移行した場合、遮光判定用画像撮影時の設定とする。また、散乱判定用画像撮影時、遮光判定用画像撮影時、偏光解消判定用画像撮影時における具体的な設定内容については後述する。
【0046】
ステップS1の設定完了後、切替手段11は、撮影駆動手段3に撮影手段2の等速移動を開始させる。撮影駆動手段3は、切替手段11に従って、透明体17の上面に近づく方向または透明体17の上面から遠ざかる方向に、撮影手段2を等速移動させる(ステップS2)。ここでは、図7に示す水平面内の位置Pにおいて、まず、撮影手段2を下方向に等速移動させる場合を例にする。
【0047】
撮影手段2の等速移動開始後、切替手段11は、撮影手段2の等速移動の終了タイミングとなったか否かを判定する(ステップS3)。例えば、撮影手段2の等速移動の終点に達したか否かを判定すればよい。
【0048】
等速移動の終了タイミングとなっていない場合(ステップS3におけるNo)、撮影手段2は、前回の撮影から一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS4)。このとき、未だ撮影を行っていない場合には、等速移動開始時から一定時間が経過したか否かを判定してもよい。前回の撮影時(未だ撮影を行っていない場合は等速移動開始時)から一定時間が経過していなければ(ステップS4におけるNo)、ステップS3以降の処理を繰り返す。また、前回の撮影時(未だ撮影を行っていない場合は等速移動開始時)から一定時間が経過したならば(ステップS4におけるYes)、撮影手段2は透明体17を撮影し、撮影画像を生成する(ステップS5)。このとき、撮影駆動手段3は撮影手段2の移動を停止させず、撮影手段2は等速移動しながら撮影を行う。撮影手段2は、撮影を行うと、撮影画像および、撮影時点での撮影手段2の位置を欠陥判定手段12に出力する。ステップS5の後、ステップS3以降の処理を繰り返す。ステップS3〜S5の処理を繰り返すことで、撮影手段2は、第1光源4、第2光源5、および撮影側偏光板8の状態が一定のままで、等速移動しながら透明体17の内部を順次撮影していく。
【0049】
なお、上記の例では、一定時間経過したか否かの判定(ステップS4)を撮影手段2が行う場合を示したが、このステップS4の判定を撮影手段2以外の手段(例えば、切替手段11や撮影駆動手段3)が行い、一定時間が経過したときに撮影手段2に撮影を行わせてもよい。
【0050】
また、等速移動の終了タイミングとなったならば(ステップS3におけるYes)、切替手段11は、撮影駆動手段3に撮影手段2の等速移動を終了させる。撮影駆動手段3は、切替手段11に従って、撮影手段2の等速移動を停止させる(ステップS6)。
【0051】
次に、切替手段11は、水平面内における撮影手段2の位置において、3種類全ての設定(散乱判定用画像撮影時、遮光判定用画像撮影時、偏光解消判定用画像撮影時の設定)で撮影が完了したか否かを判定する(ステップS7)。この3種類全ての設定での撮影が完了していなければ(ステップS7におけるNo)、ステップS1以降の処理を繰り返す。本例では、図7に示す位置Pで、散乱判定用画像撮影時の設定で撮影しただけであるので、ステップS1以降の処理を繰り返す。
【0052】
再度ステップS1に移行した場合、切替手段11は、偏光板駆動手段10、第1光源4および第2光源5の設定を、散乱判定用画像撮影時の設定から遮光判定用画像撮影時の設定に切り替える(ステップS1)。そして、ステップS2以降の処理を開始する。ただし、撮影駆動手段3は、撮影手段2を等速移動させる場合、前回の等速移動とは逆方向に等速移動させる。前回の等速移動で位置P(図7参照)において撮影手段2を下方向に移動させ、撮影手段2が透明体17の上面に近づいた状態となっているので、撮影駆動手段3は、位置Pにおいて、撮影手段2を上方向に等速移動させる。ステップS2〜S6のその他の点については、既に説明した動作と同様である。撮影手段2は、等速移動の終了タイミングとなるまで、等速移動しながら透明体17の内部を順次撮影していく。等速移動の終了タイミングとなり、撮影手段2の等速移動を終了させた後(ステップS6)、切替手段11は、再度、3種類全ての設定での撮影が完了したか否かを判定する(ステップS7)。本例では、まだ、偏光解消判定用画像撮影時の設定での撮影が完了していないので(ステップS7におけるNo)、ステップS1以降の処理を繰り返す。
【0053】
3度目のステップS1を行う場合、切替手段11は、偏光板駆動手段10、第1光源4および第2光源5の設定を、遮光判定用画像撮影時の設定から偏光解消判定用画像撮影時の設定に切り替える(ステップS1)。そして、ステップS2以降の処理を開始する。前回の等速移動では、位置Pにおいて撮影手段2を上方向に移動させ、撮影手段2が透明体17の上面から遠ざかった状態となっているので、撮影駆動手段3は、位置Pにおいて、撮影手段2を下方向に等速移動させる。ステップS2〜S6のその他の点については、既に説明した動作と同様である。等速移動の終了タイミングとなり、撮影手段2の等速移動を終了させた後(ステップS6)、切替手段11は、再度、3種類全ての設定での撮影が完了したか否かを判定する(ステップS7)。
【0054】
この時点で、位置Pでは、3種類全ての設定での撮影が完了しているので(ステップS7におけるYes)、ステップS8に移行する。このように、ステップS8に移行するまでに、撮影手段2は、図7に示す位置Pにおいて下方向、上方向、下方向に3回等速移動する。
【0055】
ステップS8では、水平面内で、未だ撮影を行っていない箇所があるか否かを判定する。換言すれば、水平面内で未だ撮影範囲に入っていない領域があるか否かを判定する。撮影を行っていない箇所がなければ(ステップS8におけるNo)、処理を終了する。
【0056】
まだ撮影を行っていない箇所があれば(ステップS8におけるYes)、切替手段11は、撮影駆動手段3に撮影手段2を、水平方向に移動させる。例えば、図7に示す位置Pから位置Qまで撮影手段2を水平に移動させる。撮影駆動手段3は、切替手段11に従って、撮影手段2を水平方向に移動させる(ステップS9)。このとき、切替手段11は、水平面内において、水平移動前の撮影範囲と水平移動後の撮影範囲とが一部重なるように、撮影駆動手段3に撮影手段2を移動させる。ステップS9の後、ステップS1以降の動作を繰り返す。すなわち、水平移動した位置において等速移動を3回繰り返し、散乱判定用画像、遮光判定用画像、および偏光解消判定用画像を、位置P(図7参照)の場合と同様に生成する。
【0057】
なお、図7に示す位置Pにおいて下方向、上方向、下方向に3回等速移動していたので、水平移動後の位置Qでは、撮影手段2は透明体17の上面に近づいた状態になっている。従って、位置Qでは、上方向、下方向、上方向の順に3回等速移動を行って、散乱判定用画像、遮光判定用画像、および偏光解消判定用画像を順に得る。
【0058】
以降、ステップS8において水平面内で撮影を行っていない箇所がないと判定するまで、ステップS1〜S9の動作を繰り返す。この結果、水平方向に沿った撮影領域毎に、透明体17の内部の画像群が3種類得られる。また、個々の画像群は、いずれも透明体17の内部における深さを一定間隔で変えて撮影した画像である。
【0059】
各撮影領域で3種類の画像群(複数の散乱判定用画像、複数の遮光判定用画像、および複数の偏光解消判定用画像)を生成した後、欠陥判定手段12は、生成された画像に基づいて、散乱欠陥、遮光欠陥および偏光解消欠陥のそれぞれの有無を判定し、欠陥がある場合には透明体17内部におけるどの程度の深さに欠陥があるのかを判定する。
【0060】
以下、散乱判定用画像撮影時、遮光判定用画像撮影時、偏光解消判定用画像撮影時における偏光板駆動手段10、第1光源4および第2光源5の具体的な設定内容について説明した上で、欠陥判定手段12の判定動作について説明する。
【0061】
ステップS1において、偏光板駆動手段10、第1光源4および第2光源5を散乱判定用画像撮影時の設定にする場合、切替手段11は、第1光源4に光を照射させ、第2光源5に光照射を停止させる。また、切替手段11は、撮影側偏光板8が撮影手段2の撮影範囲から外れるように、偏光板駆動手段10に撮影側偏光板8を駆動させる。あるいは、切替手段11は、撮影側偏光板8が撮影手段2の正面に位置し、撮影側偏光板8の偏光軸が光源側偏光板7の偏光軸と平行になるように、偏光板駆動手段10に撮影側偏光板8を駆動させてもよい。
【0062】
図8は、散乱判定用画像撮影時の設定としたときにおける散乱欠陥存在時の光の進行状態を示す説明図である。第1光源4から透明体17に入射した光は、散乱欠陥となる箇所31に達すると、その箇所で各方向に散乱する。その結果、図8に示すように、透明体17から撮影手段2の方向に向かう光が生じる。一方、散乱欠陥が存在しなければ、第1光源4から透明体17に入射した光は、そのまま透明体17の内部を進み、撮影手段2の方向に向かう光は生じない。
【0063】
図9(a)は散乱欠陥がない場合の画像を模式的に示し、図9(b)は散乱欠陥がある場合の画像を模式的に示す。散乱欠陥がなければ、撮影手段2の方向に向かう光は生じないので、撮影画像は図9(a)に示すように一様に暗い画像となる。一方、散乱欠陥があれば、その箇所における散乱で撮影手段2の方向に向かう光が生じるので、図9(b)に示すように暗い背景の中に明るい部分が生じた欠陥撮影画像となる。散乱欠陥の欠陥撮影画像の例を図10に示す。
【0064】
また、散乱判定用画像撮影時において、切替手段11は、撮影側偏光板8が光源側偏光板7に対してクロスニコルとなり撮影手段2の正面に位置するように、偏光板駆動手段10に撮影側偏光板8を駆動させてもよい。このように、撮影側偏光板8を配置したとしても、散乱した光は撮影側偏光板8を通過するので、撮影手段2は、散乱によって生じた光を撮影できる。なお、散乱判定用画像撮影時には、第1光源4から照射され、散乱により撮影手段2の方向に向かう光の有無を撮影できればよい。従って、上記のように偏光板7,8をクロスニコルとする場合には、第1光源4だけでなく第2光源5にも光を照射させてもよい。ただし、偏光解消欠陥がある場合、第2光源5の光が撮影手段2に到達してしまうので、第2光源5の光照射を停止させることが好ましい。
【0065】
ステップS1において、偏光板駆動手段10、第1光源4および第2光源5を遮光判定用画像撮影時の設定にする場合、切替手段11は、第1光源4に光照射を停止させ、第2光源5に光を照射させる。また、切替手段11は、撮影側偏光板8が撮影手段2の撮影範囲から外れるように、偏光板駆動手段10に撮影側偏光板8を駆動させる。あるいは、切替手段11は、撮影側偏光板8が撮影手段2の正面に位置し、撮影側偏光板8の偏光軸が光源側偏光板7の偏光軸と平行になるように、偏光板駆動手段10に撮影側偏光板8を駆動させてもよい。
【0066】
図11は、遮光判定用画像撮影時の設定としたときにおける遮光欠陥存在時の光の進行状態を示す説明図である。第2光源5から透明体17に入射した光は、遮光欠陥となる箇所32に達すると、その箇所で遮断され(図11参照)、撮影手段2に光は到達しない。一方、遮光欠陥が存在しなければ、第2光源5から透明体17に入射した光は、そのまま透明体17を通過し、撮影手段2に達する。
【0067】
図12(a)は遮光欠陥がない場合の画像を模式的に示し、図12(b)は遮光欠陥がある場合の画像を模式的に示す。遮光欠陥がなければ、第2光源5が照射した光は撮影手段2に到達するので、撮影画像は図12(a)に示すように一様に明るい画像となる。一方、遮光欠陥があれば、その個所の光は遮断されるので、図12(b)に示すように、明るい背景の中に暗い部分が生じた欠陥撮影画像となる。遮光欠陥の欠陥撮影画像の例を図13に示す。
【0068】
ステップS1において、偏光板駆動手段10、第1光源4および第2光源5を偏光解消判定用画像撮影時の設定にする場合、切替手段11は、第1光源4に光照射を停止させ、第2光源5に偏光を照射させる。また、切替手段11は、撮影側偏光板8が光源側偏光板7に対してクロスニコルとなり撮影手段2の正面に位置するように、偏光板駆動手段10に撮影側偏光板8を駆動させる。
【0069】
図14は、偏光解消判定用画像撮影時の設定としたときにおける偏光解消欠陥存在時の光の進行状態を示す説明図である。第2光源5から透明体17に入射した偏光は、偏光解消欠陥がなければ、偏光状態が変わることなく透明体17を通過し、撮影側偏光板8で遮断される。一方、偏光解消欠陥となる箇所33がある場合、第2光源5から透明体17に入射した偏光は、その箇所で偏光状態が変化し、透明体17を通過する。偏光解消欠陥によって偏光状態が変化した光は、撮影側偏光板8で遮断されず、撮影手段2に到達する。
【0070】
このように、偏光解消欠陥がなければ、第2光源5から照射された偏光は遮断されるので、偏光解消欠陥がない場合の画像は図9(a)に示す場合と同様に、一様に暗い画像となる。一方、偏光解消欠陥がある場合、偏光は撮影側偏光板8を通過して撮影手段2に到達するので、図9(b)に示す場合と同様に、暗い背景の中に明るい部分が生じた欠陥撮影画像となる。偏光解消欠陥の欠陥撮影画像の例を図15に示す。
【0071】
欠陥判定手段12は、散乱判定用画像を用いて散乱欠陥の有無を判定する。欠陥判定手段12は、散乱判定用画像の各画素の輝度を比較し、各画素の輝度が一様に低い場合(例えば、予め定めた散乱判定用閾値より低い場合)、その画像の撮影時における被写界深度内に散乱欠陥はないと判定する。また、欠陥判定手段12は、散乱判定用画像の各画素の輝度を比較し、散乱判定用画像の各画素のうちの一部の画素の輝度が周りの画素の輝度よりも高くなっている場合、散乱欠陥があると判定する。例えば、一部の画素の輝度が散乱判定用閾値以上であり、その周りの画素の輝度が散乱判定用閾値より低い場合に散乱欠陥があると判定する。また、その欠陥撮影画像を撮影した時の被写界深度内に散乱欠陥が存在すると判定する。
【0072】
ただし、そのような欠陥撮影画像が連続している場合、欠陥判定手段12は、その連続する欠陥撮影画像のうち、コントラストが最高となっている欠陥撮影画像を撮影した時の被写界深度内に散乱欠陥が存在し、他の欠陥撮影画像撮影時における被写界深度内には散乱欠陥は存在していないと判定する。
【0073】
また、欠陥判定手段12は、遮光判定用画像を用いて遮光欠陥の有無を判定する。欠陥判定手段12は、遮光判定用画像の各画素の輝度を比較し、各画素の輝度が一様に高い場合(例えば、予め定めた遮光判定用閾値より高い場合)、その画像の撮影時における被写界深度内に遮光欠陥はないと判定する。また、欠陥判定手段12は、遮光判定用画像の各画素の輝度値を比較し、遮光判定用画像の各画素のうちの一部の画素の輝度が周りの画素の輝度よりも低くなっている場合、遮光欠陥があると判定する。例えば、一部の画素の輝度が遮光判定用閾値以下であり、その周りの画素の輝度が遮光判定用閾値より高い場合に遮光欠陥があると判定する。また、その欠陥撮影画像を撮影した時の被写界深度内に遮光欠陥が存在すると判定する。
【0074】
ただし、そのような欠陥撮影画像が連続している場合、欠陥判定手段12は、その連続する欠陥撮影画像のうち、コントラストが最高となっている欠陥撮影画像を撮影した時の被写界深度内に遮光欠陥が存在し、他の欠陥撮影画像撮影時における被写界深度内には遮光欠陥は存在していないと判定する。
【0075】
また、欠陥判定手段12は、偏光解消判定用画像を用いて偏光解消欠陥の有無を判定する。欠陥判定手段12は、偏光解消判定用画像の各画素の輝度を比較し、各画素の輝度が一様に低い場合(例えば、予め定めた偏光解消判定用閾値より低い場合)、その画像の撮影時における被写界深度内に偏光解消欠陥はないと判定する。また、欠陥判定手段12は、偏光解消判定用画像の各画素の輝度を比較し、偏光解消判定用の各画像のうちの一部の画素の輝度が周りの画素の輝度よりも高くなっている場合、偏光解消欠陥があると判定する。例えば、一部の画素の輝度が偏光解消判定用閾値以上であり、その周りの画素の輝度が偏光解消判定用閾値より低い場合に偏光解消欠陥があると判定する。
【0076】
ただし、そのような欠陥撮影画像が連続している場合、欠陥判定手段12は、その連続する欠陥撮影画像のうち、コントラストが最高となっている欠陥撮影画像を撮影した時の被写界深度内に偏光解消欠陥が存在し、他の欠陥撮影画像撮影時における被写界深度内には偏光解消欠陥は存在していないと判定する。
【0077】
いずれの欠陥の場合にも、このようにコントラストが最も高くなっている欠陥撮影画像を特定することにより、欠陥の存在する深さを適切に判定できる。なお、欠陥撮影画像撮影時における被写界深度の位置は、例えば、撮影時における撮影手段2の位置から求めればよい。
【0078】
第1の実施の形態の効果について説明する。
第1の実施の形態によれば、撮影駆動手段3が、撮影手段2を透明体17の上面に近づく方向および透明体17の上面から遠ざかる方向に移動させ、撮影手段2がその移動中に透明体17を複数回撮影する。よって、撮影手段の被写界深度の位置を透明体17内における複数の箇所に合わせて撮影することになる。そして、撮影された画像中の画素の輝度が不均一である場合、欠陥判定手段12が、その画像を撮影した時の被写界深度内に欠陥があると判定する。従って、透明体17の内部のどの程度の深さに欠陥が存在しているのかを判定できる。
【0079】
また、欠陥判定手段12は、撮影手段2が一方向に移動しながら撮影した複数の画像の中に、画素の輝度が不均一な欠陥撮影画像が連続している場合、その欠陥撮影画像の中で最もコントラストが高い欠陥撮影画像を撮影した時の被写界深度内に欠陥があると判定する。従って、透明体17の内部における欠陥の位置をより正確に判定できる。
【0080】
また、撮影駆動手段3が、撮影手段2を等速移動させ、撮影手段2は等速移動しながら透明体17を撮影する。従って、撮影手段2を移動させるために要する時間を少なくし、全ての画像の取得に要する時間を短縮できる。その結果、タクトが短縮される。仮に、撮影毎に撮影手段2を停止させると、その分、撮影完了までの時間がかかってしまうが、第1の実施の形態ではそのような時間の増大を防止できる。また、撮影を行う度に撮影手段2を減速し撮影後に加速することも考えられるが、その場合、撮影の度に撮影手段2に加速度がかかる。すると、撮影時点の加速度が一定に保たれるとは限らず、加速度が変化すると撮影条件が変化してしまうことになる。本実施の形態では、等速移動中に撮影手段2が撮影するので、撮影条件(加速度)を一定にできる。
【0081】
また、第1光源4において、点光源13が配置されている側壁15(図3参照)の高さは、透明体17の高さよりも高い。そして、撮影手段2に近い方の端部の点光源13(図3参照)は、透明体17の撮影手段2側の面よりも高い位置に存在し、撮影手段2から遠い方の端部の点光源13(図3参照)は、透明体17の撮影手段2とは反対側の面よりも低い位置に存在する。従って、透明体17の内部を進む光の方向を多様化できる。さらに、透明体17の上面や底面付近であっても、光の進行方向を多様化できる。欠陥の中には、特定方向から光が入射した場合に散乱を生じさせない欠陥もある。例えば、水平方向から入射した光は散乱させずに、他の方向から入射した光は散乱させる散乱欠陥等がある。透明体17の内部を進む光の方向を多様化することで、そのような欠陥であっても高感度で検出できる。また、そのような欠陥が透明体17の上面や底面付近に存在したとしても、高感度で検出できる。なお、図3において、側壁15の高さを透明体17の高さより高くしすぎると、側壁15上方に配置されている点光源からの光が透明体17の上面で正規反射され、反射光が撮影手段2に達し、欠点検出の障害となることがある。従って、側壁15の高さは、側壁15で最も上方に配置されている点光源からの光が透明体17の上面で正規反射された場合であっても、撮影手段2に達しない高さ以下にすることが好ましい。
【0082】
また、第1光源4の点光源は、列をなし、さらに、隣接する列同士で点光源の位置が互いにずれるように配置される。この結果、透明体17の内部を進む光の方向の多様性を向上でき、欠陥の検出精度をより高められる。
【0083】
また、第1の実施の形態では、透明体17の配置位置の側方に第1光源4を備え、下方に第2光源5を備える。そして、欠陥判定手段12は、第1光源4が透明体17に光を照射した状態で撮影された画像中の画素の輝度が不均一であるか否かを判定するとともに、第2光源5が透明体17に光を照射した状態で撮影された画像中の画素の輝度が不均一であるか否かを判定するので、複数種類の欠陥について検査できる。よって、欠陥の種類毎に検査装置を用意して透明体を他の検査装置に移し替えなくても、1台で複数の欠陥に関する検査を行える。
【0084】
第1の実施の形態では、切替手段11が散乱判定用画像撮影時の設定、遮光判定用画像撮影時の設定、偏光解消判定用画像撮影時の設定を行うことで、散乱欠陥、遮光欠陥および不屈折欠陥の3種類について1台の装置で検査を行える。
【0085】
次に、第1の実施の形態の派生形態について説明する。図16は、第1の実施の形態の派生形態を示すブロック図である。図1と同様の構成要素については、図1と同一の符号を付し説明を省略する。本変形例の透明体検査装置は、図1に示す構成要素に加えて、判定結果登録手段51と、結果記憶手段52とを備える。
【0086】
結果記憶手段52は、検査対象となる透明体17の製造条件等のパラメータと、欠陥判定手段12による判定結果とを記憶する記憶装置である。欠陥判定手段12による判定結果とは、欠陥判定手段12によって検出された欠陥の種類およびその位置である。
【0087】
判定欠陥登録手段51には、検査対象となる透明体17の製造条件等のパラメータが、例えば透明体検査装置のオペレータから入力される。透明体17の製造条件等のパラメータの例として、透明体17を製造した装置の設定や環境条件等が挙げられるが、パラメータの種類は限定されない。判定欠陥登録手段51は、パラメータが入力され、欠陥判定手段12が判定結果を導出したならば、パラメータおよび判定結果(検出された欠陥の種類およびその位置)を対応付けて、結果記憶手段52に記憶させる。
【0088】
この結果、結果記憶手段52に、パラメータおよび検査結果の情報の集合を蓄積できる。この情報の集合をデータベースとして、オペレータは、どのようなパラメータの場合、どのような種類の欠陥が、どのような位置に生じるか等を解析して、透明体の製造過程にフィードバックできる。
【0089】
また、オペレータは、結果記憶手段52に記憶された結果を用いて、検査対象となった透明体17を次の行程に移すか、あるいは、欠陥部分を除外する行程に移すか等を判定できる。
【0090】
次に、第1の実施の形態の他の派生形態について説明する。欠陥判定手段12が、透明体17の上面に存在する異物(例えば、微小なごみ等)を欠陥と区別して検出してもよい。具体的には、撮影手段2が一方向に移動しながら複数回撮影を行って得た複数の画像において、画素の輝度が不均一な画像が連続しており、それらの画像のコントラストが単調減少または単調増加であるならば、欠陥判定手段12は、透明体17の内部に欠陥が存在するのではなく、透明体17の上面に異物が存在すると判定してもよい。また、コントラストが一旦、増加してから減少している場合には、既に説明したように、欠陥判定手段12は、画素の輝度が不均一な、連続する画像の中で最もコントラストが高い画像を撮影した時点における被写界深度内に欠陥が存在すると判定すればよい。
【0091】
透明体17の上面に存在する異物が被写界深度に収まった状態で撮影された画像においても、輝度は不均一となる。また、被写界深度が透明体17の内部に移動した場合にも、その異物の影響により、撮影された画像の輝度が不均一となり得る。ただし、異物が被写界深度に収まった状態の方がコントラストは大きい。また、被写界深度が透明体17の上面よりも高い位置に存在している状態で撮影された画像は、欠陥の有無の判定対象から除外される。従って、透明体17の上面に異物が存在する場合に、その異物に起因する画像のコントラストは、異物が被写界深度に収まった状態で最大となる。よって、透明体17の上面に存在する異物に起因して、画素の輝度が不均一な画像が連続して得られる場合、その連続する画像のコントラストは単調減少または単調増加となる。具体的には、撮影手段2が下方向に移動しながら画像を撮影する場合にはコントラストは単調減少となり、撮影手段2が上方向に移動しながら画像を撮影する場合にはコントラストは単調増加となる。従って、欠陥判定手段12は、画素の輝度が不均一な画像が連続している場合に、それらの画像のコントラストが単調減少または単調増加であることに基づいて、透明体17の内部に欠陥が存在するのではなく、透明体17の上面に異物が存在すると判定することができる。
【0092】
また、欠陥判定手段12は、他の方法で、透明体17の上面に存在する異物を検出してもよい。例えば、透明体検査装置が、透明体の内部に存在する欠陥を撮影した画像と、透明体の上面に存在する異物を撮影した画像とをそれぞれ複数記憶しておいたり、あるいは、透明体の内部に存在する欠陥を撮影した複数の画像の特徴量と、透明体の上面に存在する異物を撮影した複数の画像の特徴量とを画像毎にそれぞれ記憶しておく。これらの画像もしくは画像の特徴量は、それぞれ予め用意して透明体検査装置の記憶装置(図示略)に記憶させておけばよい。そして、ステップS5(図6参照)の撮影によって得た画像の輝度が不均一である場合、欠陥判定手段12は、その画像と、予め用意された欠陥の画像および異物の画像とを比較し、その画像が、欠陥の画像および異物の画像のどちらに該当する確率が高いかを判定すればよい。あるいは、その画像の特徴量と、予め用意された欠陥の画像の特徴量および異物の画像の特徴量とを比較することによって、この判定を行ってもよい。その画像が、異物の画像よりも欠陥の画像に該当する確率が高いと判定した場合には、欠陥判定手段12は、その画像の撮影時における被写界深度内に欠陥が存在すると判定すればよい。また、その画像が、欠陥の画像よりも異物の画像に該当する確率が高いと判定した場合には、欠陥判定手段12は、透明体17の上面に異物が存在していると判定すればよい。なお、画素の輝度が不均一な画像が連続して得られた場合、欠陥判定手段12は、その中で最もコントラストが高い画像と、予め用意された欠陥の画像および異物の画像とを比較すればよい。また、撮影によって得た画像が予め用意された欠陥の画像および異物の画像のどちらに該当するかを判定する方法は、特に限定されない。例えば、国際公開第WO2008/004559号に記載された方法で、撮影によって得た画像が、欠陥と異物のどちらの画像に該当するのかを判定してもよい。
【0093】
[実施の形態2]図17は、本発明の第2の実施の形態の例を示すブロック図である。第2の実施の形態の透明体検査装置は、支持手段1と、撮影手段22と、撮影駆動手段23と、第1光源24と、第2光源25と、偏光ビームスプリッタ28と、欠陥判定手段32とを備える。検査対象となる透明体17は、第1の実施の形態と同様である。
【0094】
支持手段1は、第1の実施の形態と同様に、透明体17を支持する透明な支持部材である。
【0095】
撮影手段22は、第1の実施の形態における撮影手段2と同様に、被写界深度が透明体17の高さよりも浅いカメラである。ただし、撮影手段22は、カラー画像を生成するカメラである。
【0096】
撮影駆動手段23は、撮影手段22を移動させる駆動装置であり、撮影手段22を透明体17の上面に近づく方向および透明体17の上面から遠ざかる方向に移動させる。このとき、撮影駆動手段23は、第1の実施の形態と同様に、撮影手段22を等速移動させ、撮影手段2は等速移動しながら一定時間毎に透明体17を撮影する。また、撮影駆動手段23は、撮影手段22を水平方向にも移動させる。撮影駆動手段23は、撮影手段22を水平面内の種々の位置に移動させ、その位置で撮影手段22を透明体17の上面に近づく方向または透明体17の上面から遠ざかる方向に等速移動させる。
【0097】
第1光源24は、撮影手段22の光軸方向から90°ずれた方向から透明体に光を照射する。第2の実施の形態における第1光源24は、特定の波長(以下、第1の波長と記す。)の光を透明体17に照射する。
【0098】
第1光源24は、第1の実施の形態と同様に、撮影手段22が透明体17の上面に近づくときおよび透明体17の上面から遠ざかるときの移動方向と平行な側壁を有する。第1光源24は、その側壁に、第1の波長の光を照射する点光源33を複数備える。第1光源4と、支持手段1上の透明体17の位置関係は、第1の実施の形態と同様である。側壁に配置された各点光源33のうち、撮影手段22に近い方の端部の点光源は、透明体17における撮影手段22側の面よりも高い位置に配置されていることが好ましい。また、側壁に配置された各点光源33のうち、撮影手段23から遠い方の端部の点光源は、透明体17における撮影手段22とは反対側の面よりも低い位置に配置されていることが好ましい。また、各点光源33は、列をなし、隣接する列同士で点光源の位置が互いにずれるように配置されることが好ましい。
【0099】
第2光源25は、撮影手段22との間に透明体17を挟むようにして、撮影手段22とは反対側から透明体17に偏光を照射する。第2の実施の形態における第2光源25は、第1の波長とは異なる2種類の波長(それぞれ第2の波長、第3の波長と記す。)の光のP波を照射する。第2光源25は、例えば、第2の波長の光と第3の波長の光を照射する照射手段26と、照射手段26の光照射方向に設けられる偏光板27とを備え、照射手段26が照射した2種類の波長の光を、偏光板27がP波の光に変化させる。
【0100】
透明体17に側方から入射する光は散乱欠陥判定に用いられるので、第1光源24は、第1の波長の光として短波長の光(例えば、波長が550nm程度までの光)を照射することが好ましい。短波長の光を用いることで散乱欠陥を精度よく検出できる。
【0101】
また、第2の波長の光は遮光欠陥判定に用いられるので、第2光源25は、第2の波長の光として中波長の光(例えば、波長が550nm近傍の光)の光を照射することが好ましい。中波長の光を用いることで遮光欠陥を精度よく検出できる。第2光源25は、第3の波長の光として、第1の波長および第2の波長と異なる長波長の光を照射すればよい。
【0102】
具体的には、第1光源24は、第1の波長の光として青色光を照射すればよい。第2光源25は、第2の波長の光として緑色光を照射し、第3の波長の光として赤色光を照射すればよい。以下、このように第1光源24および第2光源25が光を照射する場合を例にして説明する。
【0103】
ただし、第1光源24および第2光源25が照射する光の波長は、上記のように限定されるわけではなく、3種類の波長に分類されていればよい。例えば、第1光源24が緑色光を照射し、第2光源25が青色光および赤色光を照射してもよい。
【0104】
本例では、第1光源24および第2光源25は、青色光、緑色光のP波および赤色光のP波を同時に照射する。
【0105】
偏光ビームスプリッタ28は、特定の波長の光のP波のみを反射し、他の波長の光は透過させる。また、特定の波長の光であってもS波は透過させる。ここでは、偏光ビームスプリッタ28が、赤色光のP波のみを反射する場合を例にして説明する。従って、赤色光のS波や、青色光および緑色光は、偏光ビームスプリッタ28を通過する。
【0106】
欠陥判定手段32は、3種類の波長の光が同時に照射された状態で撮影手段22が透明体17を撮影して生成したカラー画像を用いて、散乱欠陥、遮光欠陥および偏光解消欠陥についてそれぞれ検査する。欠陥判定手段32は、画像中における第1の波長に応じた色の画素(青色の画素)の輝度が均一であるか否かにより、散乱欠陥の有無を判定する。同様に、画像中における第2の波長に応じた色の画素(緑色の画素)の輝度が均一であるか否かにより、遮光欠陥の有無を判定し、第3の波長に応じた色の画素(赤色の画素)の輝度が均一であるか否かにより、偏光解消欠陥の有無を判定する。
【0107】
次に、動作について説明する。図18は、撮影手段22が画像を撮影する動作の例を示すフローチャートである。検査対象となる透明体17は、予め支持手段1上に載せられる。また、第1光源24は透明体17に青色光を照射し続ける。このとき、同時に、第2光源25は透明体17に緑色光のP波および赤色光のP波を照射し続ける。第2光源25では、照射手段26が緑色光および赤色光を照射し、偏光板27がその緑色光および赤色光をそれぞれP波に変化させる。この結果、透明体17には、緑色光のP波、赤色光のP波、および青色光が同時に照射される。
【0108】
この状態で、撮影駆動手段23は、撮影手段22に等速移動を開始させる(ステップS21)。ここでは、最初に撮影手段22を下方向に等速移動させる場合を例にする。
【0109】
撮影手段2の等速移動開始後、撮影駆動手段23は、撮影手段22の等速移動の終了タイミングとなったか否かを判定する(ステップS22)。例えば、撮影手段22の等速移動の終点に達したか否かを判定すればよい。
【0110】
等速移動の終了タイミングとなっていない場合(ステップS22におけるNo)、撮影手段22は、一定時間毎に透明体17を撮影する(ステップS23,S24)。ステップS22〜S24の動作は、第1の実施の形態におけるステップS3〜S5(図6参照)と同様である。等速移動の終了タイミングとなるまで撮影駆動手段3は撮影手段2の移動を停止させず、撮影手段2は等速移動しながら撮影を繰り返す。撮影手段22は、ステップS24で撮影を行うと、撮影画像および、撮影時点での撮影手段22の位置を欠陥判定手段32に出力する。一定時間経過したか否かの判定(ステップS23)は、撮影手段22以外の手段(例えば、撮影駆動手段23)が行って、一定時間が経過したときに撮影手段22に撮影を行わせてもよい。
【0111】
等速移動の終了タイミングとなったならば(ステップS22におけるYes)、撮影駆動手段23は、撮影手段2の等速移動を停止させる(ステップS25)。
【0112】
次に、撮影駆動判定手段23は、水平面内で、未だ撮影を行っていない箇所があるか否かを判定する(ステップS26)。すなわち、水平面内で未だ撮影範囲に入っていない領域があるか否かを判定する。この判定処理は、第1の実施の形態におけるステップS8(図6参照)と同様である。撮影を行っていない箇所がなければ(ステップS26におけるNo)、処理を終了する。
【0113】
まだ撮影を行っていない箇所があれば(ステップS26におけるYes)、撮影駆動手段3は、撮影手段22を水平移動させる(ステップS27)。このとき、撮影駆動手段3は、水平面内において、水平移動前の撮影範囲と水平移動後の撮影範囲とが一部重なるように撮影手段22を移動させる。
【0114】
以降、ステップS26において水平面内で撮影を行っていない箇所がないと判定するまで、ステップS21〜S27の処理を繰り返す。ステップS21に戻った場合、前回のステップS21とは逆方向に撮影手段22を等速移動させる。例えば、前回のステップS21で下方向に撮影手段22を移動させて撮影手段22が透明体17の上面に近づいた状態であるならば、撮影手段21を上方向に等速移動させればよい。また、前回のステップS21で上方向に撮影手段22を移動させていたならば、下方向に等速移動させればよい。
【0115】
以上の処理の結果、水平方向に沿った撮影領域毎に、透明体17の内部のカラー画像群が得られる。この画像群は、透明体17の内部における深さを一定間隔で変えて撮影した画像である。欠陥判定手段12は、このカラー画像を用いて、散乱欠陥、遮光欠陥および偏光解消欠陥のそれぞれの有無を判定し、欠陥がある場合には透明体17内部におけるどの程度の深さに欠陥があるのかを判定する。
【0116】
ここで、各波長の光の進み方について説明する。第1光源24から照射された青色光は、散乱欠陥に達すると、その箇所で各方向に散乱する。また、散乱欠陥がなければ、透明体17の内部を進み、撮影手段22の方向に向かう光は生じない。よって、散乱欠陥があれば、カラー画像の青色の画素中に、輝度が周りの青色の画素より高くなっている画素が存在することになる。
【0117】
第2光源25から照射された緑色光のP波は、遮光欠陥に達すると、そこで遮断される。一方、遮光欠陥がなければ、透明体17および偏光ビームスプリッタ28を通過して、撮影手段22に到達する。よって、遮光欠陥があれば、カラー画像の緑色の画像中に、輝度が周りの緑色の画素よりも低くなっている画素が存在することになる。
【0118】
第2光源25から照射された赤色光のP波は、偏光解消欠陥に達すると、そこで旋光されS波が生じる。赤色光のS波は、偏光ビームスプリッタ28を通過して、撮影手段22に到達する。一方、偏光解消欠陥がなければ、赤色光のP波は旋光されずに透明体17を通過し、偏光ビームスプリッタ28で反射されるので撮影手段22に達しない。よって、偏光解消欠陥があれば、カラー画像の赤色の画素中に、輝度が周りの赤色の画素より高くなっている画素が存在することになる。
【0119】
欠陥判定手段32は、画像の青色の各画素の輝度を比較し、その輝度が一様に低い場合(例えば、予め定めた散乱判定用閾値より低い場合)、その画像の撮影時における被写界深度内に散乱欠陥はないと判定する。また、欠陥判定手段32は、画像の青色の各画素の輝度を比較し、青色の各画素のうちの一部の画素の輝度が周りの青色の画素の輝度よりも高くなっている場合、散乱欠陥があると判定する。例えば、一部の青色の画素の輝度が散乱判定用閾値以上であり、その周りの青色の画素の輝度が散乱判定用閾値より低い場合に散乱欠陥があると判定する。また、欠陥判定手段32は、その画像の撮影時の被写界深度内に散乱欠陥が存在すると判定する。ただし、そのような画像が連続している場合、欠陥判定手段32は、その画像(欠陥撮影画像)のうち、青色のコントラストが最高となっている画像を撮影した時の被写界深度内に散乱欠陥が存在し、他の欠陥撮影画像撮影時における被写界深度内には散乱欠陥は存在していないと判定する。
【0120】
また、欠陥判定手段32は、画像の緑色の各画素の輝度を比較し、その輝度が一様に高い場合(例えば、予め定めた遮光判定用閾値より高い場合)、その画像の撮影時における被写界深度内に遮光欠陥はないと判定する。また、欠陥判定手段32は、画像の緑色の各画素の輝度を比較し、緑色の各画素のうちの一部の画素の輝度が周りの緑色の画素の輝度よりも低くなっている場合、遮光欠陥があると判定する。例えば、一部の緑色の画素の輝度が遮光判定用閾値以下であり、その周りの緑色の画素の輝度が遮光判定用閾値より高い場合に遮光欠陥があると判定する。また、欠陥判定手段32は、その画像の撮影時の被写界深度内に遮光欠陥が存在すると判定する。ただし、そのような画像が連続している場合、欠陥判定手段32は、その画像(欠陥撮影画像)のうち、緑色のコントラストが最高となっている画像を撮影した時の被写界深度内に遮光欠陥が存在し、他の欠陥撮影画像撮影時における被写界深度内には遮光欠陥は存在していないと判定する。
【0121】
欠陥判定手段32は、画像の赤色の各画素の輝度を比較し、その輝度が一様に低い場合(例えば、予め定めた偏光解消判定用閾値より低い場合)、その画像の撮影時における被写界深度内に偏光解消欠陥はないと判定する。また、欠陥判定手段32は、画像の赤色の各画素の輝度を比較し、赤色の各画素のうちの一部の画素の輝度が周りの赤色の画素の輝度よりも高くなっている場合、偏光解消欠陥があると判定する。例えば、一部の赤色の画素の輝度が偏光解消判定用閾値以上であり、その周りの赤色の画素の輝度が偏光解消判定用閾値より低い場合に偏光解消欠陥があると判定する。また、欠陥判定手段32は、その画像の撮影時の被写界深度内に偏光解消欠陥が存在すると判定する。ただし、そのような画像が連続している場合、欠陥判定手段32は、その画像(欠陥撮影画像)のうち、赤色のコントラストが最高となっている画像を撮影した時の被写界深度内に偏光解消欠陥が存在し、他の欠陥撮影画像撮影時における被写界深度内には偏光解消欠陥は存在していないと判定する。
【0122】
第2の実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果が得られる。また、第2の実施の形態では、欠陥の種類毎に、対応する光の波長を定める。そして、3種類の波長の光を同時に透明体17に照射し、各波長に応じた色の画素の輝度に基づいて、3種類の欠陥の有無を判定する。従って、撮影手段22が等速移動しながら透明体17を撮影して得た画像から、3種類の欠陥それぞれについての判定を行える。そのため、撮影手段22の移動量を第1の実施の形態よりも少なくして、検査に用いる全画像を取得する時間を短縮できる。
【0123】
また、第1の実施の形態の派生形態(図16参照)で説明した判定結果登録手段51および結果記憶手段52が第2の実施の形態でも設けられていてもよい。
【0124】
また、第1の実施の形態の他の派生形態で説明したように、欠陥判定手段12が、透明体17の上面に存在する異物を欠陥とは区別して検出してもよい。例えば、撮影手段2が一方向に移動しながら複数回撮影を行って得た複数の画像において、画素の輝度が不均一な画像が連続しており、それらの画像のコントラストが単調減少または単調増加であるならば、欠陥判定手段12は、透明体17の上面に異物が存在すると判定してもよい。
【0125】
あるいは、透明体の内部に存在する欠陥を撮影した画像と、透明体の上面に存在する異物を撮影した画像とをそれぞれ透明体検査装置に記憶させておいてもよい。そして、輝度が不均一な画像が得られた場合に、欠陥判定手段12が、その画像と、予め用意された欠陥の画像および異物の画像とを比較し、その画像が、欠陥の画像および異物の画像のどちらに該当する確率が高いかを判定し、その判定に基づいて、異物を検出してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、複屈折のない透明体の欠陥を検査する透明体検査装置に好適に適用される。
【符号の説明】
【0127】
1 支持手段
2 撮影手段
3 撮影駆動手段
4 第1光源
5 第2光源
6 照射手段
7 光源側偏光板
8 撮影側偏光板
10 偏光板駆動手段
11 切替手段
12 欠陥判定手段
13 点光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明体に対して光を照射する光照射手段と、
透明体を撮影する撮影手段であって被写界深度が透明体の高さより浅い撮影手段と、
撮影手段を透明体に近づく方向および透明体から遠ざかる方向に移動させる撮影駆動手段と、
撮影手段が撮影した画像中の画素の輝度が不均一であるか否かにより透明体の欠陥の有無を判定する欠陥判定手段とを備え、
撮影手段は、透明体に近づく方向または透明体から遠ざかる方向に移動している間に複数回撮影を行い、
欠陥判定手段は、撮影手段が撮影した画像中の画素の輝度が不均一である場合、当該画像を撮影した時の被写界深度内に欠陥があると判定する
ことを特徴とする透明体検査装置。
【請求項2】
欠陥判定手段は、撮影手段が一方向に移動しながら撮影した複数の画像の中に、画素の輝度が不均一な画像である欠陥撮影画像が連続している場合、前記欠陥撮影画像の中で最もコントラストが高い欠陥撮影画像を撮影した時の被写界深度内に欠陥が存在すると判定する
請求項1に記載の透明体検査装置。
【請求項3】
撮影駆動手段は、撮影手段を透明体に近づく方向および透明体から遠ざかる方向に移動させるときに、撮影手段を等速移動させ、
撮影手段は、等速移動しながら透明体を撮影する
請求項1または請求項2に記載の透明体検査装置。
【請求項4】
光照射手段として、透明体の上面に対して垂直であり複数の点光源が配置された側壁を有する光照射手段を少なくとも備え、
撮影手段に近い方の端部の点光源は、透明体における撮影手段側の面よりも撮影手段に近い位置に配置され、撮影手段から遠い方の端部の点光源は、透明体における撮影手段とは反対側の面よりも撮影手段から離れた位置に配置される
請求項1、2または3に記載の透明体検査装置。
【請求項5】
複数の点光源は、複数の列をなして隣接する列同士で点光源の位置が互いにずれるように配置される
請求項4に記載の透明体検査装置。
【請求項6】
透明体に対して光を照射し、
被写界深度が前記透明体の高さより浅い撮影手段を前記透明体に近づく方法および前記透明体から遠ざかる方向に移動させ、前記透明体の撮影を複数回行い、
前記撮影手段が撮影した画像中の画素の輝度が不均一である場合、当該画像を撮影した時の被写界深度内に欠陥があると判定する
ことを特徴とする透明体検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図10】
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【図13】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−151802(P2010−151802A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259976(P2009−259976)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】