説明

透明基板

【課題】寸法安定性に優れ、かつ無機ガラスのクラックの進展および破断を著しく防止し、屈曲性に優れる透明基板を提供する。
【解決手段】透明基板は、10μm〜100μmの無機ガラスと、該無機ガラスの片側または両側に樹脂層を備える透明基板であって、該樹脂層の厚みの総厚の割合が、該無機ガラスの厚みに対して、0.9〜4であり、該樹脂層の25℃における弾性率が、1.5GPa〜10GPaであり、該樹脂層の25℃における破壊靭性値が、1.5MPa・m−1/2〜10MPa・m−1/2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明基板に関する。より詳細には、本発明は、寸法安定性に優れ、かつ無機ガラスのクラックの進展を著しく防止し、屈曲性に優れる透明基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイ(FPD:例えば、液晶表示素子、有機EL表示素子)のような表示素子および太陽電池は、搬送性、収納性、デザイン性等の観点から、軽量・薄型化が進んでおり、また屈曲性の向上も求められている。従来、表示素子および太陽電池に用いられる透明基板には、多くの場合ガラス基板が用いられている。ガラス基板は、透明性や耐溶剤性、ガスバリア性、耐熱性に優れる。しかし、ガラス基板を構成するガラス材の軽量・薄型化を図ると、ある程度の屈曲性を示すが十分ではなく、また、耐衝撃性が不十分となりハンドリングが困難となる問題が生じる。
【0003】
薄型ガラス基板のハンドリング性を向上させるため、ガラス表面に樹脂層が形成された基板が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、これらの技術を用いてもなお十分な寸法安定性および屈曲性を示す透明基板は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−329715号公報
【特許文献2】特開2008−107510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、寸法安定性に優れ、かつ無機ガラスのクラックの進展および破断を著しく防止し、屈曲性に優れる透明基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の透明基板は、厚みが10μm〜100μmの無機ガラスと、該無機ガラスの片側または両側に樹脂層を備える透明基板であって、該樹脂層の厚みの総厚の割合が、該無機ガラスの厚みに対して、0.9〜4であり、該樹脂層の25℃における弾性率が、1.5GPa〜10GPaであり、該樹脂層の25℃における破壊靭性値が、1.5MPa・m1/2〜10MPa・m1/2である。
好ましい実施形態においては、上記樹脂層が、樹脂を含み、該樹脂のガラス転移温度が150℃〜350℃である。
好ましい実施形態においては、上記樹脂層が、上記無機ガラスの表面に熱可塑性樹脂の溶液を塗工することにより得られる。
好ましい実施形態においては、上記無機ガラス上にカップリング剤層をさらに有する。
好ましい実施形態においては、上記カップリング剤層が、アミノ基含有カップリング剤、エポキシ基含有カップリング剤またはイソシアネート基含有カップリング剤を硬化させて得られるカップリング剤層であり、上記樹脂層が、エステル結合を含む熱可塑性樹脂を含む。
好ましい実施形態においては、上記カップリング剤層が、エポキシ基末端カップリング剤を硬化させて得られるカップリング剤層であり、上記樹脂層が、末端に水酸基を有する熱可塑性樹脂を含む。
好ましい実施形態においては、上記無機ガラスと上記樹脂層とが接着層を介して配置され、該接着層の厚みが10μm以下である。
好ましい実施形態においては、上記カップリング剤層と上記樹脂層とが接着層を介して配置され、該接着層の厚みが10μm以下である。
好ましい実施形態においては、上記透明基板の総厚が、150μm以下である。
好ましい実施形態においては、本発明の透明基板は、表示素子または太陽電池の基板として用いられる。
本発明の別の局面によれば、本発明の透明基板を用いて作製された、表示素子が提供される。
本発明の別の局面によれば、本発明の透明基板を用いて作製された、太陽電池が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無機ガラスの片側または両側に特定の弾性率および破壊靭性値を有する樹脂層を無機ガラスに対して特定の割合の厚みで備えることにより、寸法安定性に優れ、かつ無機ガラスのクラックの進展および破断を著しく防止し、屈曲性に優れる透明基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(a)は本発明の好ましい実施形態による透明基板の概略断面図であり、(b)は本発明の別の好ましい実施形態による透明基板の概略断面図である。
【図2】(a)は本発明のさらに別の実施形態による透明基板の概略断面図であり、(b)は本発明のさらに別の好ましい実施形態による透明基板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.透明基板の全体構成
図1(a)は、本発明の好ましい実施形態による透明基板の概略断面図である。この透明基板100aは、無機ガラス10と、無機ガラス10の片側または両側(好ましくは、図示例のように両側)に配置された樹脂層11、11´とを備える。図1(b)は、本発明の別の好ましい実施形態による透明基板の概略断面図である。この透明基板100bは、無機ガラス10と樹脂層11、11´との間にカップリング剤層12、12´をさらに備える。図2(a)は、本発明のさらに別の好ましい実施形態による透明基板の概略断面図である。この透明基板100cは、無機ガラス10と樹脂層11、11´との間に接着層13、13´をさらに備える。図2(b)は、本発明のさらに別の好ましい実施形態による透明基板の概略断面図である。この透明基板100dは、無機ガラス10と樹脂層の間にカップリング剤層12、12´および接着層13、13´をさらに備える。図示しないが、上記透明基板は、必要に応じて、上記樹脂層の上記無機ガラスとは反対側に、任意の適切なその他の層を備え得る。上記その他の層としては、例えば、透明導電性層、ハードコート層等が挙げられる。
【0010】
本発明の透明基板は、上記無機ガラスと上記樹脂層とが、図1(b)に示すように上記カップリング剤層を介して配置(無機ガラス/カップリング剤層/樹脂層)されていてもよく、図2(a)に示すように接着層を介して配置(無機ガラス/接着層/樹脂層)されていてもよい。また、本発明の透明基板は、図2(b)に示すように、上記カップリング剤層および接着層を有し、無機ガラスと、カップリング剤層と、接着層と、樹脂層とがこの順で配置されていてもよい。好ましくは、上記カップリング剤層は、上記無機ガラス上に直接形成される。さらに好ましくは、上記無機ガラスと上記樹脂層とは、上記カップリング剤層のみを介して配置(無機ガラス/カップリング剤層/樹脂層)される。このような構成であれば、上記無機ガラスと上記樹脂層とを強固に密着させることができるので、寸法安定性に優れ、かつクラックが進展し難い透明基板を得ることができる。
【0011】
上記カップリング剤層は、好ましくは、上記無機ガラスと化学結合(代表的には、共有結合)している。その結果、上記無機ガラスと上記カップリング剤層との密着性に優れる透明基板を得ることができる。
【0012】
上記樹脂層または接着層は、好ましくは、上記カップリング剤層と化学結合(代表的には、共有結合)により結合、または相互作用している。その結果、上記カップリング剤層と上記樹脂層または接着層との密着性に優れる透明基板を得ることができる。
【0013】
上記透明基板の総厚は、好ましくは150μm以下であり、さらに好ましくは140μm以下であり、特に好ましくは80μm〜130μmである。本発明によれば、上記のように樹脂層を有することにより、無機ガラスの厚みを、従来のガラス基板よりも格段に薄くすることができる。すなわち、上記樹脂層は薄くても耐衝撃性および靭性の向上に寄与し得るので、当該樹脂層を有する本発明の透明基板は軽量・薄型で、かつ優れた耐衝撃性を有する。無機ガラスおよび樹脂層の厚みは後述する。
【0014】
上記透明基板にクラックを入れ屈曲させた際の破断直径は、好ましくは50mm以下であり、さらに好ましくは40mm以下である。
【0015】
上記透明基板の波長550nmにおける光透過率は、好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上である。好ましくは、上記透明基板は、180℃で2時間の加熱処理を施した後の光透過率の減少率が5%以内である。このような減少率であれば、表示素子および太陽電池の製造プロセスにおいて必要な加熱処理を施しても、実用上許容可能な光透過率を確保できるからである。
【0016】
上記透明基板の表面粗度Ra(実質的には、上記樹脂層または上記その他の層の表面粗度Ra)は、好ましくは50nm以下であり、さらに好ましくは30nm以下、特に好ましくは10nm以下である。上記透明基板のうねりは、好ましくは0.5μm以下であり、さらに好ましくは0.1μm以下である。このような特性の透明基板であれば、品質に優れる。なお、このような特性は、例えば、後述する製造方法により実現され得る。
【0017】
上記透明基板は、その線膨張係数が、好ましくは15ppm/℃以下であり、さらに好ましくは10ppm/℃以下であり、特に好ましくは1ppm/℃〜10ppm/℃である。上記透明基板は、上記無機ガラスを備えることにより、優れた寸歩安定性(例えば、上記のような範囲の線膨張係数)を示す。より具体的には、上記無機ガラス自体が剛直であることに加えて、上記樹脂層が該無機ガラスに拘束されることにより樹脂層の寸法変動も抑制することができる。その結果、上記透明基板は全体として優れた寸法安定性を示す。
【0018】
B.無機ガラス
本発明の透明基板に用いられる無機ガラスは、板状のものであれば、任意の適切なものが採用され得る。上記無機ガラスは、組成による分類によれば、例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウ酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。また、アルカリ成分による分類によれば、無アルカリガラス、低アルカリガラスが挙げられる。上記無機ガラスのアルカリ金属成分(例えば、NaO、KO、LiO)の含有量は、好ましくは15重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0019】
上記無機ガラスの厚みは、好ましくは80μm以下であり、さらに好ましくは20μm〜80μmであり、特に好ましくは30μm〜70μmである。本発明においては、無機ガラスの片側または両側に樹脂層を有することによって、無機ガラスの厚みを薄くしても、耐衝撃性に優れる透明基板を得ることができる。
【0020】
上記無機ガラスの波長550nmにおける光透過率は、好ましくは85%以上である。上記無機ガラスの波長550nmにおける屈折率は、好ましくは1.4〜1.65である。
【0021】
上記無機ガラスの密度は、好ましくは2.3g/cm〜3.0g/cmであり、さらに好ましくは2.3g/cm〜2.7g/cmである。上記範囲の無機ガラスであれば、軽量の透明基板が得られる。
【0022】
上記無機ガラスの成形方法は、任意の適切な方法が採用され得る。代表的には、上記無機ガラスは、シリカやアルミナ等の主原料と、芒硝や酸化アンチモン等の消泡剤と、カーボン等の還元剤とを含む混合物を、1400℃〜1600℃の温度で溶融し、薄板状に成形した後、冷却して作製される。上記無機ガラスの薄板成形方法としては、例えば、スロットダウンドロー法、フュージョン法、フロート法等が挙げられる。これらの方法によって板状に成形された無機ガラスは、薄板化したり、平滑性を高めたりするために、必要に応じて、フッ酸等の溶剤により化学研磨されてもよい。
【0023】
上記無機ガラスは、市販のものをそのまま用いてもよく、あるいは、市販の無機ガラスを所望の厚みになるように研磨して用いてもよい。市販の無機ガラスとしては、例えば、コーニング社製「7059」、「1737」または「EAGLE2000」、旭硝子社製「AN100」、NHテクノグラス社製「NA−35」、日本電気硝子社製「OA−10」、ショット社製「D263」または「AF45」等が挙げられる。
【0024】
C.樹脂層
上記樹脂層の厚みは、好ましくは5μm〜100μmであり、さらに好ましくは10μm〜80μmであり、特に好ましくは15μm〜60μmである。上記樹脂層が上記無機ガラスの両側に配置される場合、それぞれの樹脂層の厚みは同一であってもよく異なっていてもよい。好ましくは、それぞれの樹脂層の厚みは同一である。さらに、それぞれの樹脂層は、同一の樹脂または同一の特性を有する樹脂で構成されてもよく、異なる樹脂で構成されてもよい。好ましくは、それぞれの樹脂層は、同一の樹脂で構成される。したがって、最も好ましくは、それぞれの樹脂層は、同一の樹脂で同一の厚みになるように構成される。このような構成であれば、加熱処理されても、無機ガラスの両面に熱応力が均等に掛かるため、反りやうねりがきわめて生じ難くなる。
【0025】
上記樹脂層の総厚の割合は、上記無機ガラスの厚みに対して、0.9〜4であり、好ましくは0.9〜3であり、さらに好ましくは0.9〜2.2である。上記樹脂層の総厚の割合がこのような範囲であれば、屈曲性および寸法安定性に優れる透明基板を得ることができる。なお、本発明の透明基板が上記無機ガラスの両側に樹脂層を備える場合、本明細書において「樹脂層の総厚」とはそれぞれの樹脂層の厚みの和を意味する。
【0026】
上記樹脂層の25℃における弾性率は、1.5GPa〜10GPaであり、好ましくは1.7GPa〜8GPaであり、さらに好ましくは1.9GPa〜6GPaである。上記樹脂層の弾性率がこのような範囲であれば、無機ガラスを薄くした場合でも、当該樹脂層が変形時の欠陥への引き裂き方向の局所的な応力を緩和するので、無機ガラスへのクラックや破断が生じ難くなる。
【0027】
上記樹脂層の25℃における破壊靭性値は、1.5MPa・m1/2〜10MPa・m1/2であり、好ましくは2MPa・m1/2〜6MPa・m1/2であり、さらに好ましくは2MPa・m1/2〜5MPa・m1/2である。上記樹脂層の破壊靭性値がこのような範囲であれば、樹脂層は、十分な粘り強さを有するので、上記無機ガラスを補強して無機ガラスのクラックの進展および破断を防ぎ、屈曲性に優れる透明基板を得ることができる。また、仮に無機ガラスが透明基板内部で破断した場合においても、樹脂層は破断し難いので、樹脂層により無機ガラスの飛散が防止され、かつ透明基板の形状が保たれるため、表示素子および太陽電池の製造工程における施設の汚染を防止し得、歩留まりを向上させることができる。
【0028】
上記樹脂層に含まれる樹脂のガラス転移温度は、好ましくは150℃〜350℃であり、さらに好ましくは180℃〜320℃であり、特に好ましくは210℃〜290℃である。上記樹脂層に含まれる樹脂のガラス転移温度が、このような範囲であれば、耐熱性に優れる透明基板を得ることができる。
【0029】
上記樹脂層の波長550nmにおける光透過率は、好ましくは80%以上である。上記樹脂層の波長550nmにおける屈折率は、好ましくは1.3〜1.7である。
【0030】
上記樹脂層を構成する材料は、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な樹脂が採用され得る。上記樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱または活性エネルギー線により硬化する硬化性樹脂等が挙げられる。好ましくは、熱可塑性樹脂である。上記樹脂の具体例としては、ポリエーテルサルホン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;エポキシ系樹脂;アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミドアミド系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリサルホン系樹脂;ポリエーテルイミド系樹脂等が挙げられる。
【0031】
上記樹脂層は、好ましくは、下記一般式(1)および/または(2)で表される繰り返し単位を有する熱可塑性樹脂(A)を含む。熱可塑性樹脂(A)を含むことにより、上記無機ガラス、カップリング剤層または接着層との密着性に優れ、かつ靭性にも優れる樹脂層を得ることができる。その結果、切断時にクラックが進展し難い透明基板を得ることができる。また、このように無機ガラス、カップリング剤層または接着層との密着性に優れる熱可塑性樹脂(A)は、無機ガラスに強力に拘束されて、寸法変動が小さくなる。その結果、熱可塑性樹脂(A)を含む樹脂層を備える透明基板は、優れた寸法安定性を示す。
【0032】
【化1】


式(1)中、Rは炭素数6〜24の置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、炭素数4〜14の脂環式炭化水素基または炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素数6〜20の置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、炭素数4〜12の脂環式炭化水素基または炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数6〜18の置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基または炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基である。Rは炭素数6〜24の置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜12の脂環式炭化水素基、または水素原子であり、好ましくは炭素数6〜20の置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基、または水素原子である。式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基、水素原子、または炭素数5〜12の脂環式炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜5の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基、水素原子、または炭素数5〜10の脂環式炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基、水素原子、または炭素数5〜8の脂環式炭化水素基である。Aはカルボニル基または炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基であり、好ましくはカルボニル基または炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくはカルボニル基または炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基である。mは0〜8の整数を表し、好ましくは0〜6の整数を表し、さらに好ましくは0〜3の整数を表す。nは0〜4の整数を表し、好ましくは0〜2の整数を表す。
【0033】
上記熱可塑性樹脂(A)の重合度は、好ましくは10〜6000であり、さらに好ましくは20〜5000であり、特に好ましくは50〜4000である。
【0034】
上記熱可塑性樹脂(A)の具体例としては、例えば、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、エステル基含有シクロオレフィンポリマーが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0035】
上記樹脂層は、好ましくは、1つ以上の下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有する熱可塑性樹脂(B)を含む。熱可塑性樹脂(B)を含むことにより、上記無機ガラス、カップリング剤層または接着層との密着性に優れ、かつ靭性にも優れる樹脂層を得ることができる。その結果、切断時にクラックが進展し難い透明基板を得ることができる。また、このように無機ガラス、カップリング剤層または接着層との密着性に優れる熱可塑性樹脂(B)は、無機ガラスに強力に拘束されて、寸法変動が小さくなる。その結果、熱可塑性樹脂(B)を含む樹脂層を備える透明基板は、優れた寸法安定性を示す。
【0036】
【化2】

式(3)中、Rは炭素数6〜24の置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜14の脂環式炭化水素基または酸素原子であり、好ましくは炭素数6〜20の置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜12の脂環式炭化水素基または酸素原子であり、さらに好ましくは炭素数6〜18の置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基または酸素原子である。Rは炭素数6〜24の置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜12の脂環式炭化水素基または水素原子であり、好ましくは炭素数6〜20の置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基または水素原子である。
【0037】
上記熱可塑性樹脂(B)の重合度は、好ましくは10〜6000であり、さらに好ましくは20〜5000であり、特に好ましくは50〜4000である。
【0038】
上記熱可塑性樹脂(B)の具体例としては、例えば、ポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネートが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0039】
上記樹脂層は、好ましくは、末端に水酸基を有する熱可塑性樹脂(C)を有する。熱可塑性樹脂(C)は、透明基板がエポキシ基末端カップリング剤により形成されるカップリング剤層を備える場合に、好適に用いられる。熱可塑性樹脂(C)の具体例としては、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート等を末端水酸基変性した熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。このような熱可塑性樹脂を用いれば、エポキシ基末端カップリング剤により形成されるカップリング剤層との密着性に優れ、かつ靭性にも優れる樹脂層を得ることができる。その結果、切断時にクラックが進展し難い透明基板を得ることができる。また、このようにエポキシ基末端カップリング剤により形成されるカップリング剤層との密着性に優れる熱可塑性樹脂(C)は、無機ガラスに強力に拘束されて、寸法変動が小さくなる。その結果、熱可塑性樹脂(C)を含む樹脂層を備える透明基板は、優れた寸法安定性を示す。なお、上記末端水酸基変性は、任意の適切な方法が用いられ得る。また、エポキシ基末端カップリング剤の詳細については、後述する。
【0040】
上記熱可塑性樹脂(C)の重合度は、好ましくは90〜6200であり、さらに好ましくは130〜4900であり、特に好ましくは150〜3700である。
【0041】
上記熱可塑性樹脂(C)の重量平均分子量は、ポリエチレンオキサイド換算で、好ましくは2.0×10〜150×10であり、さらに好ましくは3×10〜120×10であり、特に好ましくは3.5×10〜90×10である。上記熱可塑性樹脂(C)の重量平均分子量が2.0×10未満であると、上記樹脂層の靭性が不足し、無機ガラスを補強するという効果が不十分となるおそれがあり、150×10を超えると高粘度になりすぎるためハンドリング性が悪くなるおそれがある。
【0042】
上記水酸基は、好ましくは、フェノール性水酸基である。フェノール性水酸基を有する熱可塑性樹脂(C)であれば、上記樹脂層とエポキシ基末端カップリング剤により形成されるカップリング剤層とを強固に密着させることができる。
【0043】
上記水酸基の含有量は、熱可塑性樹脂(C)100重合度あたり、好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.5〜2.0である。水酸基の含有量がこのような範囲であれば、上記エポキシ基末端カップリング剤との反応性に優れる熱可塑性樹脂を得ることができる。
【0044】
上記樹脂層が熱可塑性樹脂(C)を含む場合、上記樹脂層は、好ましくは、イミダゾール類、エポキシ類および/またはオキセタン類をさらに含有する。上記樹脂層が、イミダゾール類、エポキシ類および/またはオキセタン類を含有すれば、当該樹脂層と上記エポキシ基末端カップリング剤層を有する無機ガラスとを安定的に密着させることができるので、高い歩留まりで透明基板を得ることができる。上記イミダゾール類の含有量としては、熱可塑性樹脂(C)に対して、好ましくは0.5重量%〜5重量%、さらに好ましくは1重量%〜4重量%である。上記エポキシ類の含有量としては、熱可塑性樹脂(C)に対して、好ましくは1重量%〜15重量%、さらに好ましくは3重量%〜10重量%である。上記オキセタン類の含有量としては、熱可塑性樹脂(C)に対して、好ましくは0.5重量%〜10重量%、さらに好ましくは1重量%〜5重量%である。
【0045】
上記イミダゾール類としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、エポキシイミダゾールアダクト、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2´−メチルイミダゾリル−(1´)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2´−ウンデシルイミダゾリル−(1´)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2´−エチル−4´−メチルイミダゾリル−(1´)]−エチル−s−トリアジン等が挙げられる。
【0046】
上記エポキシ類としては、分子中にエポキシ基を持つものであれば、任意の適切なものが使用できる。上記エポキシ類としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型及びこれらの水添加物等のビスフェノール型;フェノールノボラック型やクレゾールノボラック型等のノボラック型;トリグリシジルイソシアヌレート型やヒダントイン型等の含窒素環型;脂環式型;脂肪族型;ナフタレン型、ビフェニル型等の芳香族型;グリシジルエーテル型、グリシジルアミン型、グリシジルエステル型等のグリシジル型;ジシクロペンタジエン型等のジシクロ型;エステル型;エーテルエステル型;およびこれらの変性型等のエポキシ系樹脂が挙げられる。これらのエポキシ系樹脂は、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。好ましくは、上記エポキシ類は、ビスフェノールA型エポキシ系樹脂、脂環式型エポキシ系樹脂、含窒素環型エポキシ系樹脂、またはグリシジル型エポキシ系樹脂である。
【0047】
上記オキセタン類は、好ましくは、下記一般式(4)、(5)または(6)で表わされる化合物である。
【0048】
【化3】

【0049】
上記式(4)中、Rは水素原子、脂環式炭化水素基、フェニル基、ナフチル基または炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を表わす。
【0050】
【化4】

【0051】
【化5】

【0052】
上記式(6)中、Rは脂環式炭化水素基、フェニル基、ナフチル基または炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を表わす。pは1から5までの整数を表す。
【0053】
上記オキセタン類としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(オキセタンアルコール)、2−エチルヘキシシルオキセタン、キシリレンビスオキセタン、3−エチル−3(((3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ)メチル)オキセタン等が挙げられる。
【0054】
上記熱可塑性樹脂(A)、上記熱可塑性樹脂(B)および上記熱可塑性樹脂(C)は、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0055】
上記樹脂層は、単層であってもよく、多層体であってもよい。1つの実施形態においては、上記樹脂層は、上記熱可塑性樹脂(A)を含む層と上記一般式(1)および(2)で表される繰り返し単位を有さない熱可塑性樹脂を含む層とを有する多層体である。別の実施形態においては、上記樹脂層は、上記熱可塑性樹脂(B)を含む層と上記一般式(3)で表される繰り返し単位を有さない熱可塑性樹脂を含む層とを有する多層体である。樹脂層がこれらのような多層体であれば、機械的強度および耐熱性に優れる透明基板を得ることができる。
【0056】
上記樹脂層は、耐薬品性を有することが好ましい。具体的には、表示素子および太陽電池作製の際の洗浄工程、レジスト剥離工程等に用いられる溶剤に対して、耐薬品性を有することが好ましい。表示素子作製の際の洗浄工程等に用いられる溶剤としては、イソプロピルアルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)等が挙げられる。
【0057】
上記樹脂層は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。上記添加剤としては、例えば、希釈剤、老化防止剤、変成剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤、柔軟剤、安定剤、可塑剤、消泡剤、補強剤等が挙げられる。上記樹脂層に含有される添加剤の種類、数および量は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0058】
D.カップリング剤層
上記カップリング剤層は、例えば、上記無機ガラス上でカップリング剤を硬化させることにより形成される。上記カップリング剤としては、例えば、アミノ基含有カップリング剤、エポキシ基含有カップリング剤、エポキシ基末端カップリング剤、イソシアネート基含有カップリング剤、ビニル基含有カップリング剤、メルカプト基含有カップリング剤、(メタ)アクリロキシ基含有カップリング剤等が挙げられる。
【0059】
上記樹脂層がエステル結合を有する熱可塑性樹脂(例えば、上記熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B))を含む場合、上記カップリング剤としては、アミノ基含有カップリング剤、エポキシ基含有カップリング剤またはイソシアネート基含有カップリング剤が好適に用いられる。これらのカップリング剤が有する置換基の置換位置は、分子の末端であってもよく、末端でなくてもよい。このようなカップリング剤により形成されたカップリング剤層のみを介して(すなわち、接着層を介さずに)、エステル結合を有する熱可塑性樹脂を含む樹脂層と上記無機ガラスとを配置すれば、エステル結合を有する熱可塑性樹脂を含む樹脂層は、該カップリング剤層を介して上記無機ガラスと強固に密着し得る。なお、該カップリング剤中のアミノ基、エポキシ基またはイソシアネート基は上記樹脂層と化学結合または相互作用すると推測され、かつカップリング剤中のシリル基は上記無機ガラスの有する置換基(例えば、水酸基)と化学結合し得る。その結果、上記のような強固な密着性が得られると考えられる。
【0060】
上記樹脂層が水酸基を有する熱可塑性樹脂(例えば、上記熱可塑性樹脂(C))を含む場合、上記カップリング剤としては、エポキシ基末端カップリング剤が好適に用いられる。このようなカップリング剤により形成されたカップリング剤層のみを介して(すなわち、接着層を介さずに)、水酸基を有する熱可塑性樹脂を含む樹脂層と上記無機ガラスとを配置すれば、水酸基を有する熱可塑性樹脂を含む樹脂層は、該カップリング剤層を介して上記無機ガラスと強固に密着し得る。なお、該カップリング剤中のエポキシ基は上記樹脂層と化学結合または相互作用すると推測され、かつカップリング剤中のシリル基は上記無機ガラスの有する置換基(例えば、水酸基)と化学結合し得る。その結果、上記のような強固な密着性が得られると考えられる。
【0061】
上記アミノ基含有カップリング剤は、好ましくはアミノ基を有するアルコキシシランまたはアミノ基を有するハロゲン化シランである。特に好ましくはアミノ基を有するアルコキシシランである。
【0062】
上記アミノ基を有するアルコキシシランの具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、6−アミノへキシルトリメトキシシラン、6−アミノへキシルトリエトキシシラン、11−アミノウンデシルトリメトキシシラン、11−アミノウンデシルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン等が挙げられる。
【0063】
上記アミノ基を有するハロゲン化シランの具体例としては、3−アミノプロピルトリクロロシラン、3−アミノプロピルメチルジクロロシラン、3−アミノプロピルジメチルクロロシラン、6−アミノへキシルトリクロロシラン、11−アミノウンデシルトリクロロシラン等が挙げられる。
【0064】
上記エポキシ基含有カップリング剤およびエポキシ基末端カップリング剤の具体例としては、2−(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0065】
上記イソシアネート基含有カップリング剤の具体例としては、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0066】
上記ビニル基含有カップリング剤の具体例としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0067】
上記メルカプト基含有カップリング剤の具体例としては、メルカプトメチルジメチルエトキシシラン、(メルカプトメチル)メチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0068】
上記(メタ)アクリロキシ基含有カップリング剤の具体例としては、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0069】
上記カップリング剤は、市販品を用いてもよい。市販のアミノ基含有カップリング剤としては、例えば、信越化学工業社製、商品名「KBM−602」(N―2−(アミノエチル)―3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、商品名「KBM−603」(N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、商品名「KBE−603」(N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、商品名「KBM−903」(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、商品名「KBE−903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、商品名「KBM−573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)および商品名「KBE−9103」(3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン)が挙げられる。市販のエポキシ基含有カップリング剤(およびエポキシ基末端カップリング剤)としては、例えば、信越化学工業社製、商品名「KBM−303」(2―(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)、商品名「KBM−403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、商品名「KBE−402」(3―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン)、商品名「KBE−403」(3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)が挙げられる。市販のイソシアネート基含有カップリング剤としては、例えば、信越化学工業社製、商品名「KBE−9007」(3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)が挙げられる。
【0070】
上記カップリング剤層の厚みは、好ましくは0.001μm〜10μm、さらに好ましくは0.001μm〜2μmである。
【0071】
E.接着層
上記接着層を構成する材料としては、任意の適切な樹脂を採用し得る。上記接着層を構成する材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂等が挙げられる。このような樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ基、グリシジル基またはオキセタニル基等を有する環状エーテル類、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂およびこれらの混合物が挙げられる。また、上記接着層に上記カップリング剤を添加してもよい。上記接着層は、上記カップリング剤を添加することにより、無機ガラスおよび/または樹脂層(透明基板が上記カップリング剤層を有する場合は、カップリング剤層および/または樹脂層)との接着性が向上し得る。
【0072】
上記接着層の厚みは、好ましくは10μm以下であり、さらに好ましくは0.01μm〜10μmであり、特に好ましくは0.1μm〜7μmである。上記接着層の厚みがこのような範囲であれば、透明基板の屈曲性を損なわずに、上記無機ガラスと上記樹脂層の優れた密着性を実現することができる。
【0073】
F.その他の層
上記透明基板は、必要に応じて、上記樹脂層の上記無機ガラスとは反対側に、任意の適切な他の層を備え得る。上記他の層としては、例えば、透明導電性層、ハードコート層等が挙げられる。
【0074】
上記透明導電性層は、上記透明基板を表示素子および太陽電池の基板として使用する際に、電極または電磁波シールドとして機能し得る。
【0075】
上記透明導電性層に用いられ得る材料としては、例えば、銅、銀等の金属;インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)等の金属酸化物;ポリチオフェン、ポリアニリン等の導電性高分子;カーボンナノチューブを含む組成物等が挙げられる。
【0076】
上記ハードコート層は、上記透明基板に耐薬品性、耐擦傷性および表面平滑性を付与させる機能を有する。
【0077】
上記ハードコート層を構成する材料としては、任意の適切なものを採用し得る。上記ハードコート層を構成する材料としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂およびこれらの混合物が挙げられる。なかでも好ましくは、耐熱性に優れるエポキシ系樹脂である。上記ハードコート層はこれらの樹脂を熱または活性エネルギー線により硬化させて得ることができる。
【0078】
G.透明基板の製造方法
本発明の透明基板の製造方法としては、例えば、溶液塗工により上記無機ガラス上に樹脂層を形成して透明基板を得る方法、接着層を介して上記無機ガラス上に樹脂フィルムを貼着することにより樹脂層を形成して透明基板を得る方法等が挙げられる。好ましくは、溶液塗工により上記無機ガラス上に樹脂層を形成して透明基板を得る方法である。このような方法であれば、溶液塗工により形成された樹脂層が無機ガラスにより直接拘束されるので、寸法安定性により優れた透明基板を得ることができる。
【0079】
上記溶液塗工により上記無機ガラス上に樹脂層を形成して透明基板を得る方法は、好ましくは、樹脂の溶液を上記無機ガラスの片側または両側に塗工し塗工層を形成する塗工工程と、該塗工層を乾燥させる乾燥工程と、および乾燥後の塗工層を熱処理して上記樹脂層を形成する熱処理工程を含む。用いられる樹脂は、C項で説明したとおりである。
【0080】
上記塗工工程の際に使用される塗工溶媒は、塩化メチレン、塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン等のハロゲン系溶媒;トルエン、ベンゼン、フェノール等の芳香族系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒等が挙げられる。なかでも好ましくは、ハロゲン系溶媒、芳香族系溶媒、セロソルブ系溶媒またはエーテル系溶媒である。塗工溶媒としてこのような溶媒を用いれば、高温高湿下においても上記樹脂層と上記無機ガラスとの密着性を十分に維持し、耐久信頼性に優れる透明基板を得ることができる。
【0081】
上記樹脂の溶液の塗工方法としては、エアドクターコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、電着コーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティング法;フレキソ印刷等の凸版印刷法、ダイレクトグラビア印刷法、オフセットグラビア印刷法等の凹版印刷法、オフセット印刷法等の平版印刷法、スクリーン印刷法等の孔版印刷法等の印刷法が挙げられる。
【0082】
上記乾燥工程としては、任意の適切な乾燥方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)が採用され得る。例えば、加熱乾燥の場合には、乾燥温度は代表的には100℃〜200℃であり、乾燥時間は代表的には1分〜10分である。
【0083】
上記熱処理工程としては、任意の適切な熱処理方法が採用され得る。代表的には、熱処理温度は100℃〜300℃であり、熱処理時間は5分〜45分である。透明基板がカップリング剤層を有する場合、該熱処理によりカップリング剤と樹脂層に含まれる樹脂とを化学結合または相互作用させることができる。
【0084】
好ましくは、上記塗工工程の前に、上記無機ガラスの表面をカップリング処理することを含む。カップリング処理をして、カップリング剤層を形成させることにより、上記樹脂層は、該カップリング剤層を介して上記無機ガラスと強固に密着し得る。用いられるカップリング剤は、D項で説明したとおりである。
【0085】
上記カップリング処理の方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体的には、例えば、上記カップリング剤の溶液を上記無機ガラスの表面に塗工した後、熱処理する方法が挙げられる。
【0086】
上記カップリング剤の溶液を調製する際に使用する溶媒としては、カップリング剤と反応しない溶媒であれば、任意の適切な溶媒を使用できる。該溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘキサデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;メタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒;アセトン、2−ブタノン等のケトン系溶媒および水が挙げられる。
【0087】
上記カップリング処理の際の熱処理方法は、任意の適切な熱処理方法が採用され得る。代表的には、熱処理温度は50℃〜150℃であり、熱処理時間は1分〜10分である。熱処理により、カップリング剤と上記無機ガラス表面とを化学結合により結合させることができる。
【0088】
上記無機ガラス上に樹脂フィルムを貼着することにより樹脂層を形成して透明基板を得る方法においては、任意の適切な基材に樹脂の溶液を塗工して樹脂フィルムを形成させた後、当該樹脂フィルムを上記無機ガラスの表面に転写して無機ガラスと樹脂フィルムとを貼着させることにより樹脂層を形成させてもよい。また、上記樹脂フィルムを貼着する前に、上記無機ガラスをカップリング処理してもよい。カップリング処理の方法としては、上述の方法が採用され得る。
【0089】
上記樹脂フィルムには、上記無機ガラスに貼着する前または貼着した後に、アニール処理を行ってもよい。アニール処理を行うことにより残存溶媒や未反応のモノマー成分等の不純物を効率的に除去することができる。上記アニール処理の温度は、好ましくは、100℃〜200℃である。また、上記アニール処理の処理時間は、好ましくは、5分〜20分である。
【0090】
上記樹脂フィルムは、好ましくは、接着層を介して、無機ガラスの表面に貼着される。上記接着層は樹脂フィルム上に形成させた後に無機ガラスの表面に貼着してもよく、無機ガラス上に接着層を形成させた後に樹脂フィルムを貼着してもよい。
【0091】
上記接着層の形成方法としては、例えば、上記無機ガラスまたは樹脂フィルムの表面に熱硬化性樹脂または活性エネルギー線硬化性樹脂を塗工した後、無機ガラスと樹脂フィルムとを貼着させ、その後、熱硬化性樹脂または活性エネルギー線硬化性樹脂を紫外光照射または加熱処理により硬化させる方法が挙げられる。上記紫外光照射の照射条件は、代表的には、照射積算光量が100mJ/cm〜2000mJ/cmで、照射時間が5分〜30分である。上記加熱処理の条件は、代表的には、加熱温度が100℃〜200℃で、加熱時間が5分〜30分である。なお、上記無機ガラスまたは樹脂フィルムの表面に熱硬化性樹脂または活性エネルギー線硬化性樹脂を塗工した後、無機ガラスと樹脂フィルムとを貼着させる前に、熱硬化性樹脂または活性エネルギー線硬化性樹脂を半硬化させてもよい。半硬化は、例えば、1mJ/cm〜10mJ/cmの紫外光を1秒〜60秒間照射させて行うことができる。
【0092】
H.用途
本発明の透明基板は、表示素子または太陽電池に好適に用いられ得る。表示素子としては、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等が挙げられる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、厚みはアンリツ製デジタルマイクロメーター「KC−351C型」を使用して測定した
【実施例1】
【0094】
ポリアリレート(U−ポリマー U−100、ユニチカ社製)、トリクロロエタンおよびレベリング剤(BYK−302、ビックケミー社製)を重量比(ポリアリレート:トリクロロエタン:レベリング剤)15:85:0.01で混合し、キャスティング溶液(A)を得た。
別途、厚み50μm、縦10cm×横4cmの無機ガラス(D263、ショット社製)の片面表面をメチルエチルケトンで洗浄後、コロナ処理を行い、続けてアミノ基含有カップリング剤(KBM−603、 信越化学工業社製)を塗工し、110℃で5分間熱処理した。このようにカップリング処理された上記無機ガラス表面に上記キャスティング溶液(A)を塗工し、160℃で10分間乾燥後、200℃で30分間熱処理を行い、厚み25μmの樹脂層を得た。同様の処理を無機ガラスのもう一方の表面にも行い、総厚み100μmの透明基板を得た。
なお、無機ガラスの両面に形成された樹脂層は、それぞれ縦10cm×横3cmの大きさとし、上記無機ガラスの縦10cm×横1cm部分は露出させた。
【実施例2】
【0095】
樹脂層の厚みを40μmとした以外は、実施例1と同様にして、総厚み130μmの透明基板を得た。
【実施例3】
【0096】
樹脂層の厚みを50μmとした以外は、実施例1と同様にして、総厚み150μmの透明基板を得た。
【実施例4】
【0097】
10℃でメチルエチルケトン100mL中の4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェノール(23.53g、0.07モル)、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ビスフェノール(8.4g、0.03モル)およびトリエチルアミン(22.3g、0.22モル)の撹拌混合物に、メチルエチルケトン60mL中の塩化テレフタロイル(19.29g、0.095モル)と塩化イソフタロイル(1.02g、0.005モル)との溶液を添加した。添加後に、温度を室温まで上昇させ、溶液を4時間窒素下で撹拌し、その間に塩酸トリエチルアミンがゼラチン形態で沈降し、溶液は粘性をもつようになった。その後、溶液をトルエン160mLで希釈し、希塩酸(2%の酸200mL)で洗浄しその後水200mLで3回洗浄した。その後溶液を勢いよく撹拌してエタノール中に注ぎ込み、ビーズ様の樹脂を沈殿させ、これを収集して50℃で乾燥した。この樹脂のガラス転移温度を示差走査熱量測定法で測定すると270℃であった。
得られた樹脂、シクロペンタノンおよびレベリング剤(BYK−302 ビックケミー社製)を重量比(樹脂:シクロペンタノン:レベリング剤)10:90:0.01で混合し、キャスティング溶液(B)を得た。
別途、厚み50μm、縦10cm×横4cmの無機ガラス(D263、ショット社製)の片面表面をメチルエチルケトンで洗浄後、コロナ処理を行い、続けてアミノ基含有カップリング剤(KBM−603 信越化学工業社製)を塗工し、110℃で5分間熱処理した。このようにカップリング処理された上記無機ガラス表面に上記キャスティング溶液(B)を塗工し、160℃で10分間乾燥後、200℃で30分間熱処理を行い、厚み50μmの樹脂層を得た。同様の処理を無機ガラスのもう一方の表面にも行い、総厚み150μmの透明基板を得た。
なお、無機ガラスの両面に形成された樹脂層は、それぞれ縦10cm×横3cmの大きさとし、上記無機ガラスの縦10cm×横1cm部分は露出させた。
【実施例5】
【0098】
末端水酸基変性されたポリエーテルサルホン(スミカエクセル 5003P、住友化学社製)、シクロペンタノン、ジメチルスルホキシドおよびレベリング剤(BYK−307、ビックケミー社製)を重量比(ポリエーテルサルホン:シクロペンタノン:ジメチルスルホキシド:レベリング剤)140:658:42:0.105で混合し、キャスティング溶液(C)を得た。
別途、厚み50μm、縦10cm×横4cmの無機ガラス(D263、ショット社製)の片面表面をメチルエチルケトンで洗浄後、コロナ処理を行い、続けてエポキシ基末端カップリング剤(KBM−403、信越化学工業社製)を塗工し、110℃で5分間熱処理した。このようにカップリング処理された上記無機ガラス表面に上記キャスティング溶液(C)を塗工し、160℃で10分間乾燥後、200℃で30分間熱処理を行い、厚み35μmの樹脂層を得た。同様の処理を無機ガラスのもう一方の表面にも行い、総厚み120μmの透明基板を得た。
なお、無機ガラスの両面に形成された樹脂層は、それぞれ縦10cm×横3cmの大きさとし、上記無機ガラスの縦10cm×横1cm部分は露出させた。
【実施例6】
【0099】
樹脂層の厚みを50μmとした以外は、実施例5と同様にして、総厚み150μmの透明基板を作製した。
【実施例7】
【0100】
エポキシ系樹脂(セロキサイド2021P、ダイセル化学工業社製)、オキセタン系樹脂(アロンオキセタン OXT−221、東亜合成社製)、光カチオン重合開始剤(アデカオプトマー SP−170、ADEKA社製)およびメチルエチルケトンを重量比(エポキシ系樹脂:オキセタン系樹脂:光カチオン重合開始剤:メチルエチルケトン)90:10:3:100の割合で混合して得られた混合溶液を厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーT60、東レ社製)に塗工した後、40℃で1分間乾燥し、上記ポリエチレンテレフタレートフィルム上に厚み5μmの接着層を形成した。
別途、厚み50μm、縦10cm×横4cmの無機ガラス(D263、ショット社製)の片面表面をメチルエチルケトンで洗浄後、コロナ処理を行い、続けてエポキシ基末端カップリング剤(KBM−403 信越化学工業社製)を塗工し、110℃で5分間熱処理した。このようにカップリング処理された上記無機ガラスの表面に、上記ポリエチレンテレフタレートフィルムを接着層側から貼着し、紫外光を照射(400mJ/cm以上)することにより接着層を硬化させ、さらに150℃で15分間熱処理した。同様の処理を無機ガラスのもう一方の表面にも行い、総厚み110μmの透明基板を得た。
なお、無機ガラスの両面に形成された樹脂層(ポリエチレンテレフタレート層)は、それぞれ縦10cm×横3cmの大きさとし、上記無機ガラスの縦10cm×横1cm部分は露出させた。
【実施例8】
【0101】
ジイソプロピルフマレートをガラスアンプル中に10gとり、ラジカル重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリルを0.1g添加し、次にアンプル内を窒素置換および脱気を繰り返した後密封し、40℃で48時間塊状重合を行った。重合後、得られた内容物をベンゼンに溶解した後、大量のメタノールに投入してポリマーを沈殿させた。次いで、当該沈殿物を濾別し十分メタノール洗浄を行った後、減圧乾燥して、重量平均分子量が235000のポリ(ジイソプロピルフマレート)を得た。
その後、ポリ(ジイソプロピルフマレート)およびトルエンを重量比(ポリ(ジイソプロピルフマレート):トルエン)1:9で混合し、キャスティング溶液(D)を得た。
別途、厚み50μm、縦10cm×横4cmの無機ガラス(D263、ショット社製)の片面表面をメチルエチルケトンで洗浄後、コロナ処理を行い、続けてアミノ基含有カップリング剤(KBM−603、 信越化学工業社製)を塗工し、110℃で5分間熱処理した。このようにカップリング処理された上記無機ガラス表面に上記キャスティング溶液(D)を塗工し、100℃で15分間乾燥した。その後150℃で10分間、200℃で20分間熱処理を行い、厚みが45μmの樹脂層を得た。同様の処理を無機ガラスのもう一方の表面にも行い、総厚み140μmの透明基板を得た。
なお、無機ガラスの両面に形成された樹脂層は、それぞれ縦10cm×横3cmの大きさとし、上記無機ガラスの縦10cm×横1cm部分は露出させた。
【実施例9】
【0102】
ポリアリレート(U−ポリマー U−100、ユニチカ社製)、トリクロロエタンおよびレベリング剤(BYK−302 ビックケミー社製)を重量比(ポリアリレート:トリクロロエタン:レベリング剤)15:85:0.01で混合し、キャスティング溶液(E)を得た。
ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にキャスティング溶液(E)を塗工し、110℃で10分間乾燥した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、25μmの樹脂フィルムを得た。その後、得られた樹脂フィルムを150℃で10分間のアニール処理を行った。
エポキシ系樹脂(セロキサイド2021P、ダイセル化学工業社製)、オキセタン系樹脂(アロンオキセタン OXT−221、東亜合成社製)、重合開始剤(アデカオプトマー SP−170、ADEKA社製)およびメチルエチルケトンを重量比(エポキシ系樹脂:オキセタン系樹脂:重合開始剤:メチルエチルケトン)90:10:3:100の割合で混合して得られた混合溶液を上記樹脂フィルムに塗工し、40℃で1分間乾燥し、上記樹脂フィルム上に厚み5μmの接着層を形成した。
別途、厚み50μm、縦10cm×横4cmの無機ガラス(D263、ショット社製)の片面表面をメチルエチルケトンで洗浄後、コロナ処理を行い、続けてエポキシ基末端カップリング剤(KBM−403 信越化学工業社製)を塗工し、110℃で5分間熱処理した。このようにカップリング処理された上記無機ガラスの表面に、上記樹脂フィルムを接着層側から貼着し、高圧水銀ランプにより紫外光を照射(波長:365nm、強度:1000mJ/cm以上)することにより接着層を硬化させ、さらに150℃で15分間熱処理した。同様の処理を無機ガラスのもう一方の表面にも行い、総厚み110μmの透明基板を得た。
なお、無機ガラスの両面に形成された樹脂層(樹脂フィルム)は、それぞれ縦10cm×横3cmの大きさとし、上記無機ガラスの縦10cm×横1cm部分は露出させた。
【実施例10】
【0103】
エポキシ系樹脂(セロキサイド2021P、ダイセル化学工業社製)、オキセタン系樹脂(アロンオキセタン OXT−221、東亜合成社製)、光カチオン重合開始剤(アデカオプトマー SP−170、ADEKA社製)およびメチルエチルケトンを重量比(エポキシ系樹脂:オキセタン系樹脂:光カチオン重合開始剤:メチルエチルケトン)90:10:3:100の割合で混合して得られた混合溶液を、厚み25μmのポリエチレンナフタレートフィルム(テオネックス Q51DW、帝人デュポンフィルム社製)に塗工した後、40℃で1分間乾燥し、上記ポリエチレンナフタレートフィルム上に厚み5μmの接着層を形成した。次に、接着層のポリエチレンナフタレートフィルムが形成されていない側に紫外光を照射(5mJ/cm以下)し、接着層を半硬化状態にした。
別途、厚み50μm、縦10cm×横4cmの無機ガラス(D263、ショット社製)の片面表面をメチルエチルケトンで洗浄後、コロナ処理を行い、続けてエポキシ基末端カップリング剤(KBM−403、信越化学工業社製)を塗工し、110℃で5分間熱処理した。このようにカップリング処理された上記無機ガラスの表面に、上記ポリエチレンナフタレートフィルムを接着層側から貼着し、150℃で15分間熱処理することにより接着層を完全硬化させた。同様の処理を無機ガラスのもう一方の表面にも行い、総厚み110μmの透明基板を得た。
なお、無機ガラスの両面に形成された樹脂層(ポリエチレンナフタレート)は、それぞれ縦10cm×横3cmの大きさとし、上記無機ガラスの縦10cm×横1cm部分は露出させた。
【0104】
(比較例1)
厚み50μm、縦10cm×横4cmの無機ガラスを準備した。
【0105】
(比較例2)
固形分濃度が30重量%で、重量比(メチルエチルケトン:イソプロピルアルコール)が2:1のメチルエチルケトンとイソプロピルアルコールとの混合溶媒であるウレタンシリカハイブリッド樹脂(ユリアーノU201、荒川化学工業社製)を準備し、キャスティング溶液(F)とした。
厚み50μm、縦10cm×横4cmの無機ガラス(D263、ショット社製)の片面表面をメチルエチルケトンで洗浄後、キャスティング溶液(F)を塗工し、90℃で10分間乾燥し、130℃で30分間熱処理することにより硬化させて、25μmの樹脂層を得た。同様の処理を無機ガラスのもう一方の表面にも行い、総厚み100μmの積層体を得た。
なお、無機ガラスの両面に形成された樹脂層は、それぞれ縦10cm×横3cmの大きさとし、上記無機ガラスの縦10cm×横1cm部分は露出させた。
【0106】
(比較例3)
脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021P、ダイセル化学工業社製)および脂環式エポキシ樹脂(EHPE3150、ダイセル科学工業社製)を重量比(脂環式エポキシ樹脂:脂環式エポキシ樹脂)1:1で混合して得られた混合溶液100重量部に、光カチオン重合開始剤(アデカオプトマー SP−170、ADEKA社製)3重量部とレベリング剤(BYK−307、ビックケミー社製)0.15重量部を添加し、キャスティング溶液(G)を得た。
別途、厚み50μm、縦10cm×横4cmの無機ガラス(D263、ショット社製)の片面表面をメチルエチルケトンで洗浄後、コロナ処理を行い、続けてエポキシ基末端カップリング剤(KBM−403 信越化学工業社製)を塗工し、110℃で5分間熱処理した。このようにカップリング処理された上記無機ガラスの表面に、キャスティング溶液(G)を塗工し、紫外光を照射(400mJ/cm以上)することによりキャスティング溶液(G)中の樹脂を硬化させ、さらに150℃で15分間熱処理を行い、厚み30μmの樹脂層を得た。同様の処理を無機ガラスのもう一方の表面にも行い、総厚み110μmの積層体を得た。
なお、無機ガラスの両面に形成された樹脂層は、それぞれ縦10cm×横3cmの大きさとし、上記無機ガラスの縦10cm×横1cm部分は露出させた。
【0107】
(比較例4)
ゴム粒子分散エポキシ樹脂(カネエース MX951 カネカ社製)100重量部に、光カチオン重合開始剤(アデカオプトマー SP−170 ADEKA社製)3重量部添加したキャスティング溶液(H)を得た。
別途、厚み50μm、縦10cm×横4cmの無機ガラス(D263、ショット社製)の片面表面をメチルエチルケトンで洗浄後、コロナ処理を行い、続けてエポキシ基末端カップリング剤(KBM−403 信越化学工業社製)を塗工し、110℃で5分間乾燥した。このようにカップリング処理された上記無機ガラスの表面に、キャスティング溶液(H)を塗工し、紫外光を照射(400mJ/cm以上)することによりキャスティング溶液(H)中の樹脂を硬化させ、さらに150℃で15分間熱処理することにより、厚み45μmの樹脂層を得た。同様の処理を無機ガラスのもう一方の表面にも行い、総厚み140μmの積層体を得た。
なお、無機ガラスの両面に形成された樹脂層は、それぞれ縦10cm×横3cmの大きさとし、上記無機ガラスの縦10cm×横1cm部分は露出させた。
【0108】
(比較例5)
キャスティング溶液(G)に代えて、キャスティング溶液(G)100重量部に対してガラス繊維(PF E−301、日東紡績社製)10重量部を添加したキャスティング溶液(I)を用い、厚み35μmの樹脂層を形成した以外は、比較例3と同様にして、総厚み120μmの積層体を得た。
【0109】
(比較例6)
キャスティング溶液(G)に代えて、キャスティング溶液(G)100重量部に対して、ガラス繊維(PF E−301、日東紡績社製)30重量部を添加したキャスティング溶液(J)を用い、厚み50μmの樹脂層を形成した以外は、比較例3と同様にして、総厚み150μmの積層体を得た。
【0110】
(比較例7)
キャスティング溶液(G)に代えて、脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021P、ダイセル化学工業社製)25重量部、脂環式エポキシ樹脂(EHPE3150、ダイセル化学工業社製)25重量部およびオキセタン樹脂(OXT−221、東亜合成社製)50重量部を混合し、さらに光カチオン重合開始剤(アデカオプトマー SP−170、ADEKA社製)3重量部とレベリング剤(BYK−307、ビックケミー社製)0.15重量部を添加して得られたキャスティング溶液(K)を用い、厚み35μmの樹脂層を形成した以外は、比較例3と同様にして、総厚み120μmの積層体を得た。
【0111】
(比較例8)
キャスティング溶液(G)に代えて、脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021P、ダイセル化学工業社製)40重量部、脂環式エポキシ樹脂(EHPE3150、ダイセル化学工業社製)40重量部およびオキセタン樹脂(OXT−221、東亜合成社製)20重量部を混合し、さらに光カチオン重合開始剤(アデカオプトマー SP−170、ADEKA社製)3重量部とレベリング剤(BYK−307、ビックケミー社製)0.15重量部を添加して得られたキャスティング溶液(L)を用い、厚み35μmの樹脂層を形成した以外は、比較例3と同様にして、総厚み120μmの積層体を得た。
【0112】
(比較例9)
キャスティング溶液(G)に代えて、脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021P、ダイセル化学工業社製)40重量部、脂環式エポキシ樹脂(EPICRON HP7200、DIC社製)40重量部およびオキセタン樹脂(OXT−221、東亜合成社製)20重量部を混合し、さらに光カチオン重合開始剤(アデカオプトマー SP−170、ADEKA社製)3重量部とレベリング剤(BYK−307、ビックケミー社製)0.15重量部を添加して得られるキャスティング溶液(M)を用い、厚み35μmの樹脂層を形成した以外は、比較例3と同様にして、総厚み120μmの積層体を得た。
【0113】
(比較例10)
樹脂層の厚みを12.5μmとした以外は、実施例1と同様にして、総厚み75μmの積層体を得た。
【0114】
(比較例11)
樹脂層の厚みを20μmとした以外は、実施例1と同様にして、総厚み90μmの積層体を得た。
【0115】
(比較例12)
シリコーン処理の施された剥離フィルム間に、脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021P、ダイセル化学工業社製)およびビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828、ジャパンエポキシレジン社製)を主成分とする樹脂組成物(脂環式エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂=50:50(重量比))を挟み込み、50μm間隔に固定された金属ロールの間に通して、厚み30μmのエポキシ系樹脂層を含む積層体を得た。次に、紫外線照射装置(コンベア速度:2.5m/分)を用いて、上記積層体の一方の側から、紫外線を照射(照射エネルギー:250mJ/cm)し、エポキシ系樹脂層を半硬化させて半硬化層を形成した。次に、一方の剥離フィルムを除去し、ラミネータを用いて、上記積層体の半硬化層を、厚み50μm、縦10cm×横4cmの無機ガラス(D263、ショット社製)の片面表面に貼着した。無機ガラスのもう一方の側についても同様の操作を行い、半硬化層を貼着した。次いで、残っていた剥離フィルムを取り除いた後、紫外線を再照射(照射エネルギー:5000mJ/cm以上)した。その後、加熱処理(130℃以上,10分以上)を施し、無機ガラスの両面の半硬化層を完全硬化させた。このようにして、樹脂層の厚みが30μmで、総厚が110μmの積層体を得た。
なお、無機ガラスの両面に形成された樹脂層は、それぞれ縦10cm×横3cmの大きさとし、上記無機ガラスの縦10cm×横1cm部分は露出させた。
【0116】
(比較例13)
キャスティング溶液(G)に代えて、キャスティング溶液(G)100重量部に対して、ガラス繊維(マイクログラスファインフレークMTD025FYX、日本板硝子社製)7重量部を添加したキャスティング溶液(N)を用いた以外は、比較例3と同様の方法で作製し、厚みが35μmの樹脂層を得て、総厚み120μmの積層体を得た。
【0117】
(比較例14)
厚み100μmのポリカーボネートフィルム(ピュアエースC110−100、帝人化成社製)を準備した。
【0118】
(比較例15)
厚み100μmのポリエチレンナフレタートフィルム(テオネックスQ65、帝人デュポン社製)を準備した。
【0119】
(比較例16)
厚み200μmのポリエーテルサルフォンフィルム(スミライトFST、住友ベークライト社製)を準備した。
【0120】
〈評価〉
上記で得られた透明基板および積層体を下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
(1)破断直径
(a)実施例および比較例で得られた透明基板、比較例1の無機ガラスおよび比較例2〜13で得られた積層体を評価用試料として準備した。
(b)無機ガラス露出部分の縦辺端部の中央に5mm以下のクラックを入れた。
(c)評価用試料の縦辺を屈曲させ、クラックが、無機ガラス露出部分を進展し、さらに樹脂等の積層領域において1cm進展した時点(比較例1の無機ガラスにおいては、クラックが2cm進展した時点)での、縦辺を円周とする円の直径を破断直径とした。
(2)線膨張係数
実施例1、3、5および10で得られた透明基板、ならびに比較例1、3、7、12および14〜16で得られた積層体またはフィルムから、それぞれ2mm×30mmを切り取り、これを評価用試料とした。
当該評価用試料について、TMA/SS150C(セイコーインスツルメンツ社製)を用い30℃〜170℃におけるTMA値(μm)を測定し、平均線膨張係数を算出した。
【0121】
実施例および比較例で得られた透明基板および積層体の最外層を構成する樹脂の弾性率を以下の方法で評価した。また、実施例および比較例2〜13で得られた透明基板および積層体の最外層を構成する樹脂の破壊靭性値を以下の方法で評価した。
(3)弾性率
厚み50μm、幅2cm、長さ15cmの短冊状樹脂サンプルを作製し、オートグラフ(島津製作所社製、AG−I)を用いて、短冊状樹脂サンプルの長手方向の伸びと応力から弾性率を測定した。試験条件は、チャック間距離を10cm、引っ張り速度を10mm/minとした。
(4)破壊靭性値
厚み50μm、幅2cm、長さ15cmの短冊状樹脂サンプルを作製し、短冊長手方向の端部(中央部分)にクラック(5mm)を入れた。オートグラフ(島津製作所社製、AG−I)により短冊長手方向に引っ張り応力を加えクラックからの樹脂破断時の応力を測定した。試験条件は、チャック間距離を10cm、引っ張り速度を10mm/minとして行った。得られた破断時の引っ張り応力σとクラック長a、サンプル幅bを以下の式(内田老鶴圃発行 岡田明著「セラミックスの破壊学」P.68〜70)に代入し、破断時の破壊靭性値KICを求めた。
【数1】

【0122】
【表1】

【0123】
表1から明らかなように、本発明によれば、特定の弾性率および破壊靭性値を示す樹脂層を有し、かつ樹脂層の総厚と無機ガラスの厚みが特定の比率であることにより、破断直径の小さい、すなわち屈曲性に優れた透明基板を得ることができる。
【0124】
具体的には、本発明の透明基板は、単独の無機ガラス(比較例1)より、格段に破断直径が小さい。また、実施例1〜10と比較例2〜9、12および13とを比較すれば、明らかなように、本発明の透明基板は、特定の破壊靭性値を有することにより、非常に小さい破断直径を示す。さらに、本発明の透明基板は、実施例1〜10と比較例10および11の積層体とを比較すれば明らかなように、樹脂層の総厚と無機ガラスの厚みが特定の比率であることにより、非常に小さい破断直径を示す。
【0125】
また、実施例1、3、5および10と比較例14〜16とを比較すれば明らかなように、本発明によれば、無機ガラスと特定の樹脂層とを組み合わせて構成することにより、線膨張係数が小さい、すなわち寸法安定性に優れる透明基板を得ることができる。
【0126】
このように、本発明の透明基板は、無機ガラスのみでは得られない屈曲性および樹脂層のみでは得られない寸法安定性の両方に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の透明基板は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の表示素子および太陽電池に広く用いられ得る。
【符号の説明】
【0128】
10 無機ガラス
11、11´ 樹脂層
12、12´ カップリング剤層
13、13´ 接着層
100a、100b 透明基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが10μm〜100μmの無機ガラスと、該無機ガラスの片側または両側に樹脂層を備える透明基板であって、
該樹脂層の厚みの総厚の割合が、該無機ガラスの厚みに対して、0.9〜4であり、
該樹脂層の25℃における弾性率が、1.5GPa〜10GPaであり、
該樹脂層の25℃における破壊靭性値が、1.5MPa・m1/2〜10MPa・m1/2である、
透明基板。
【請求項2】
前記樹脂層が、樹脂を含み、該樹脂のガラス転移温度が150℃〜350℃である、請求項1に記載の透明基板。
【請求項3】
前記樹脂層が、前記無機ガラスの表面に熱可塑性樹脂の溶液を塗工することにより得られる、請求項1または2に記載の透明基板。
【請求項4】
前記無機ガラス上にカップリング剤層をさらに有する、請求項1から3のいずれかに記載の透明基板。
【請求項5】
前記カップリング剤層が、アミノ基含有カップリング剤、エポキシ基含有カップリング剤またはイソシアネート基含有カップリング剤を硬化させて得られるカップリング剤層であり、前記樹脂層が、エステル結合を含む熱可塑性樹脂を含む、請求項4に記載の透明基板。
【請求項6】
前記カップリング剤層が、エポキシ基末端カップリング剤を硬化させて得られるカップリング剤層であり、前記樹脂層が、末端に水酸基を有する熱可塑性樹脂を含む、請求項4に記載の透明基板。
【請求項7】
前記無機ガラスと前記樹脂層とが接着層を介して配置され、該接着層の厚みが10μm以下である、請求項1から3のいずれかに記載の透明基板。
【請求項8】
前記カップリング剤層と前記樹脂層とが接着層を介して配置され、該接着層の厚みが10μm以下である、請求項4から6のいずれかに記載の透明基板。
【請求項9】
前記透明基板の総厚が、150μm以下である、請求項1から8のいずれかに記載の透明基板。
【請求項10】
表示素子または太陽電池の基板として用いられる、請求項1から9のいずれかに記載の透明基板。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の透明基板を含む表示素子。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載の透明基板を含む太陽電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−132526(P2010−132526A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101043(P2009−101043)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】